2015年11月30日月曜日

「速すぎる発展」がもたらしたもの(1):イノベーション不足・人材教育の遅れを生み出した中国製造業の黄昏

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サーチナニュース 2015-11-29 18:34
http://biz.searchina.net/id/1595527?page=1

中国の製造業「速すぎる発展はイノベーション不足を生み出した」, 

 これまでうまくいっていた最善の方法が今や通用しない--。
 この種の言葉は過去から現代にいたるまで誰もが耳にするものだ。
 過去には無敵とされていた武田騎馬隊を織田信長の鉄砲隊が打ち破った例などがある。

 そして、この競争の原理は国際社会における製造業にもあてはまる。
 自らが有している競争力と時流を分析し、未来に向けて態勢を整える必要があるが、中国メディアの中国経済導報網は米国の大学で教鞭をとる中国人教授の見解として、中国の製造業は
 「速すぎる発展がイノベーション不足、外国頼み、
人材教育の後れなどの諸問題を生み出した」
と指摘する記事を掲載した。

 記事は、人材教育の後れについて、
 「製造業で人材が必要となる速度は、学校が人材を社会に送り出す速度をはるかに超えている」
とし、中国の製造業はイノベーション能力を備える人材を大量に必要とする逼迫した情勢であることを説明し、産学連携を強化する必要があると論じた。

 一方で、中国の製造業は多くの問題を抱えながらも大量生産型の製造からイノベーションを重視する製造に少しずつ変化してきていると主張。
 また、製造業回帰を目指す米国の「先進製造イニシアティブ」にも触れ、
 米国にとっても製造業のイノベーションが重要となっている今、
 労働集約型の製造業からの脱却を目指す中国にとっては尚更イノベーションが重要であり、
 量から質を重視する製造業に転換すべきであると論じた。

 また記事は、中国の製造業が未来における競争のために必要となる要素として、「自国の中小企業やビジネスパートナーがより多く国際市場に参入できるプラットフォーム作り」を挙げている
 。例えば、任天堂のゲーム機を中心に開発会社が数多く生まれた日本のゲーム産業などはその良い例だろう。
 ファミコンというプラットフォームをベースに数多くのゲームメーカーが生まれた。

 近年ではスマートフォンというプラットフォームがベースとなり、さまざまなサービスが各国で生まれているが、果たして中国から世界に影響をあたえるようなプラットフォームは生まれるのだろうか。
 中国製造業は生き残りに向けた努力が求められている。



サーチナニュース 2015-11-29 20:32
http://biz.searchina.net/id/1595529?page=1

日本家電メーカーを飲み込む中国の家電メーカー、
イノベーションかそれとも模倣か

 中国家電大手「四川長虹電器」はこのほどパナソニックの子会社である三洋電機が中国で手がけていた液晶テレビ事業を買収することで合意した。
 また、中国家電大手「海信集団(ハイセンス・グループ」は2015年8月にシャープのメキシコ液晶工場を買収することを発表するなど、近年は中国メーカーが日本企業から事業を買収する事例が増えている。

 中国メディアの今日頭条は24日、中国企業が日本企業の事業を買収する一連の事例を取り上げ、
 「中国製電化製品はいまや憧れの日本製と同じ品質を有し、国際市場に打って出る勢いだ」
と論じている。

 例えば2015年10月に「四川長虹電器」が三洋電機の中国での液晶テレビ事業を買収することで合意した事例だが、この買収には中国現地での開発・生産・販売・サービスを行う権利、さらには研究開発部や営業部、販売チャネルや三洋ブランドの期限付き使用の権利まで含まれる。

 つまり、中国人が中国国内で「憧れの日本製」と思い込んで購入した三洋ブランドの液晶テレビが実は中国国産だったということが生じ得るわけだ。
 記事はこのような買収の事例を通して
 「もはや日本製に憧れる必要はない。
 それは中国人の手によって作られた製品だ」
と指摘した。

 また記事はこうした買収の目的について
 「日本製品の国際市場におけるブランド力や販売チャネル、すでに獲得している市場などを買収することは、中国製品が国際市場を開拓するうえで非常に効率的な手段である」
と指摘。
 中国の家電メーカーがいまや日本家電メーカーを飲み込み、国際競争のトップランナーに躍り出ようとしている様子を伝えた。

 しかし、
 こうした買収は中国企業に欠けているとされる「イノベーション」をも手にすることを意味するだろうか。
 一見すると「模倣」の域を出ないようにも思える。
 しかし三洋電機の白物家電事業を買収したハイアールの大型液晶ディスプレイ付き冷蔵庫「DIGI」を開発したのは三洋のメンバーだったとの報道もあり、買収が「イノベーション」を生み出した事例と言えるだろう。

 中国企業による買収がこのようにイノベーションを生み出してゆくことができるなら、
 中国家電メーカーが国際競争のトップ集団に踊り出る可能性も現実味が増してくる。



サーチナニュース 2015-11-28 14:58
http://biz.searchina.net/id/1595504?page=1

中国企業によって市場から追いやられる日本企業、
残るは自動車とカメラだけ=中国

 中国家電大手の海爾集団(ハイアール)が三洋電機の一部事業を買収したように、中国企業が日本企業を買収するケースは近年、珍しいことではなくなっている。

 確かな技術を持ちながらも、経営面での体力がなくなった日本企業を中国企業に買収されれば、技術の流出という事態が起きることが懸念される。
 逆に中国企業からすれば、日本の技術を手に入れつつ、ひいては日本ブランドも手にすることができるなど買収のメリットは大きいだろう。

 中国メディアの中華網は23日、テレビやパソコンなどの分野において中国企業が著しく成長していることを指摘する一方、日本企業が中国企業によって市場から追いやられるケースが増えていると報じた。

 記事は、かつて日本企業が強さを見せた家電、パソコン、携帯電話などの分野で中国企業が存在感を強めると同時に、日本企業が市場から姿を消していると主張。
 現在の中国で競争力のある製品を作れないのは自動車とカメラだけ
だとしつつも、
 「それもあと10年もすれば可能になり、日本企業はこの分野でも存在感を失うかも知れない」
と主張した。

 続けて、中国が高性能なカメラを製造できない理由の1つとして「特許」などの技術的な障壁を挙げる一方、人工衛星に搭載されている光学カメラの存在を指摘し、中国は高性能なカメラを製造するだけの技術はあると主張。
 消費者向けのカメラを製造しようとしても特許などの障壁のほか、コスト面で競争力が保てないため製造しないだけの話だと主張した。



サーチナニュース 2015-11-28 07:35
http://news.searchina.net/id/1595495?page=1

市場を席巻する日本製のデジカメ、
中国企業は「あえて作らない」と強弁=中国メディア

 中国メディア・中華網は23日、日本メーカーが優位に立っている
 デジタル一眼レフカメラ市場について、中国企業が「作れない」のではなく、あえて「作らない」
のだと主張する文章を掲載した。 

 文章は、デジタルカメラの構造が複雑かつ精細であるとしたうえで、「しかし、われわれ中国にも作れるのである」と説明。
 中国企業が製造技術を持ちながらも実際に作らない理由として
 「フィルムカメラ開発の道を選んでしまったことで、外国ブランドによるデジカメ市場独占を招いた。
 大量の資金や人力を投入して製品を急造しても、キヤノンやニコンに対する優位性は得られないため、多くの企業が興味を示さないのだ」
と解説した。

 一方、
 「光学写真技術は民間用の一眼レフだけがハイエンドなのだろうか」
と疑問を呈したうえで、
 「離軸角が大きい偵察機用ワイドカメラ」、
 「対地光学観察衛星用の高解像度カメラ」、
 「大陸間弾道ミサイル用の天測航法システム」、
 「宇宙空間観察用の可視光スペクトル望遠鏡カメラ」
の4点を挙げ
 「中国は全部作れるが、日本はいくつ作れるのか」
と論じた。
 そして
 「軍事用光学偵察衛星のレンズや感光チップこそ真のハイテクなのである」
とした。

 この文章は、日本にとって中国の技術力が脅威になっており、自動車やカメラなど日本が現在も優位に立つ分野で、あと10年もあれば中国が逆転するという趣旨で書かれたものである。
 ただ、非軍用分野における国内デジカメ産業の発展を放棄しているとも取れるその論理は、いささか強がっているような印象が否めない。



サーチナニュース 2015-08-01 06:02
http://biz.searchina.net/id/1583667?page=1

中国企業「お手上げ」状態
・・・日本の「デジカメ」に太刀打ちできぬ!=中国メディア

 中国メディアの中国産経新聞報は7月29日、スマートフォンやパソコンといった製品において中国ブランドの存在感が世界的に高まっていることを指摘する一方、デジタルカメラの分野では中国ブランドはキヤノンやニコン、ソニーといった日本企業に太刀打ちできていないと論じる記事を掲載した。

 記事は、デジタルカメラ市場において中国ブランドの姿はほとんど見えないと伝え、中国の消費者もデジタル一眼レフカメラなどにおいては中国ブランドを購入の選択肢にすら入れていないと指摘。
 中国の消費者もデジタルカメラ市場に中国ブランドがほとんど存在しないことにすっかり慣れてしまったと論じた

 続けて、中国でカメラ産業が興ったのは1956年からだとし、当時の中国の工業力は非常に脆弱だったと指摘。
 それでも国の政策の影響によって中国全土にカメラの生産工場が林立したと紹介し、58年には初の中国産カメラが誕生したと伝えた。

 一方で、当時の中国産カメラの大半はドイツ製カメラの模倣だったと伝えたほか、計画性のない盲目的な生産によって競争力のない製品が数多く誕生しては消えていったと伝え、淘汰のすえに「鳳凰」と「海鴎と」いう2つのブランドが生き残ったと紹介した。さらに、鳳凰と海鴎は中国国内で高い人気を獲得しただけでなく、大量に輸出もされたと伝える一方、デジタルカメラの登場によって鳳凰と海鴎も市場から姿を消してしまったと論じた。

 また記事は、デジタルカメラは光学、機械、電子といった複数の分野の技術が複合的に組み合わせられた製品であると伝え、デジタルカメラ分野においては
 「日本企業の技術が非常に高く、数多くの特許も押さえている」
と指摘。
 そのため中国企業はデジタルカメラ市場で先行する日本企業を追う力もないとし、もはや中国企業はデジタルカメラ製品において「市場に参入する時機を逸してしまった」と伝えた。



レコードチャイナ 配信日時:2015年12月6日(日) 6時30分
http://www.recordchina.co.jp/a124511.html

パソコン・デジタルカメラは“斜陽産業”、
撤退の動きを見せるサムスン―中国紙

 2015年12月4日、北京商報は記事「サムスン、デジタル市場から逐次撤退か」を掲載した。
 韓国のサムスン電子は英国でのデジタルカメラ、ビデオカメラの販売中止を発表した。
 以前にもノートパソコンの販売を中止しており、英国での電子機器事業を大きく整理する内容だ。

 この撤退は英国だけにとどまらないと業界関係者は指摘する。
 需要が縮小しているノートパソコンやデジタルカメラから撤退し、今後も成長が見込めるスマートフォンやスマートウォッチに経営資源を集中するのがサムスン電子の戦略だと分析している。
 かつては人気商品だったパソコンやデジタルカメラだが、いまや斜陽産業に変わっているという。



サーチナニュース 2015-12-12 09:32
http://biz.searchina.net/id/1596876?page=1

日本がハイテク製品の輸出をけん引する時代は終わった 
中国が終わらせた

 日本は技術大国であり、ハイテク製品の製造においても世界で有数の競争力を持つと考える人は少なくないだろう。

 しかし、香港メディアの鳳凰網は8日、アジア開発銀行の発表を引用し、日本がアジアのハイテク製品の輸出をけん引する時代はもう終わったと伝え、その時代を終わらせたのは中国だと主張する記事を掲載した。

 記事は、医療機器や航空機、通信機器など、
★.アジアにおけるハイテク製品の輸出シェアで中国が占める割合が2000年の9.4%から14年は43.7%まで急増した
と紹介。
 さらに、
★.日本は2000年は25.5%だったものが、14年は7.7%まで減少した
と伝え、マレーシアなど東南アジアの国もシェアを減らしたと紹介した。

 続けて、中国のハイテク製品輸出シェアが急激に上昇したことは、
★.中国の製造業がバリューチェーンの川上への進出に成功し、
 イノベーションと技術力を経済のけん引役に育てようとする中国政府の取り組みが成功した
ことを示すものだと論じた。

 さらに記事は、HSBCホールディングスの関係者の話として、中国は基幹部品を今なお国外からの輸出に依存しているとしつつも、「中国国内で生産されるハイテク製品は確実に増加している」と主張。
★.熟練労働者が中国製品の競争力を高めているとしたうえで、
 研究開発部門を中国に設置する他国籍企業も増えている
と論じた。

 中国は旅客機など一部の分野では基幹部品を輸入しているものの、高速鉄道の事例を見れば分かるとおり、当初は外部から技術を調達しつつも、一定期間の経過後に技術を内製化して競争力を高めるケースが多い。
 中国はもはや世界の工場ではなく、ハイテク分野においても日本にとって手強い競合相手になりつつある。



サーチナニュース 2015-12-22 10:57
http://news.searchina.net/id/1597768?page=1

日本に中国は敵わない!
日中のイノベーション、「力の差」は教育のせい?

 中国製造業はイノベーションという点で日本の製造業にまだまだ追い付いていないとする主張は中国国内で広く目にする分析だ。
 ではこうした両国のイノベーションの差はどこから生じるのだろうか。
 中国メディアの捜狐はこのほど、同問題の原因を日中両国の「受験教育の違い」に見出そうと試みる記事を掲載した。

 中国と日本の大学入試制度にはどのような違いがあるのだろうか。
 日本の場合は大学入試センター試験と二次試験があるが、センター試験と違い、二次試験は志望学科により受験科目が大きく異なる。
 しかし中国の場合は「高考」と呼ばれる日本のセンター試験に相当する入試制度があるのみだ。
 受験科目も文系志望か理系志望かによって変わる程度であり、志望学部によって大きく異なるということはない。

 記事はこうした日中の大学受験制度の違いに注目し、日本の受験教育は優れた人材を育てる点で「とても融通が利いている」と指摘している。
 日本の受験教育は基礎知識をただ詰め込むだけではなく、学生自身がより能動的に自らが希望する専門性を身に着けていくという点で、中国の受験教育とまったく異なっていると主張した。

 さらに日中の授業終了時間と課外活動にも記事は注目している。
 日本の高校の場合は午後4時前後に授業が終わり、その後は学生にとって自由な時間にあたり、部活動やアルバイトをする学生も多い。
 もちろん塾に通う生徒もいるが、それは人それぞれ自由だ。
 しかし中国の高校の場合はたいてい午後6時ごろまで授業があり、また課外活動に参加したりアルバイトに参加する学生は少数だ。
 「大量の宿題」が学生の生活を支配しており、夜10時ごろまで宿題に追われるのが普通だからだ。
 彼らは将来待ち受けている「高考」を中心に勉強漬けの生活を送っている。

 こうした教育の違いについて、学生に「現実的な知恵」や「融通性」を身に着けさせる点で日本の受験教育は中国に比べて優れていると指摘、
★.中国の現在の受験教育は「人材」を育てているのでなく
「道具」を育てているに過ぎない
と論じた。

 中国は人口が多いぶん、競争も激しい。
 都会の子どもたちは幼少のころからさまざまな習い事をさせられ、さらに勉強漬けの毎日を送る。
 幼少期から思春期にかけての多感な時期における教育の違いは、自由な発想に基づくイノベーションを生み出す人材育成に大きな影響があるという分析はあながち間違っていない。



サーチナニュース 2015-12-12 17:36
http://biz.searchina.net/id/1596882?page=1

中国製品は「日本製品のように」、高品質の代名詞となれるのか

 現代においてメード・イン・ジャパンといえば高品質の代名詞だが、かつては決してそうではなかった。
 過去には低品質の代名詞だった時代も存在し、現在のように世界が認めるまでに品質を高めることができたのは、戦後の日本人の努力の賜物と言えよう。

 一方の中国製品は現在、「安かろう悪かろう」の代名詞として認識されることが一般的ではないだろうか。
 中国メディアの千龍網は「鉄を打つには自分が強くなるべき」だと主張する記事を掲載した
 。「鉄は熱いうちに打て」という諺があるが、まず鉄を打つ力が自分になければならず、技術力がなければ商機を逸してしまうと論じた。

 記事は、経済のグローバル化が日増しに進み、多くの輸入品が中国市場で流通するようになったと指摘し、
 「国外製の電子機器、粉ミルク、家電、アパレル商品などが中国人消費者に支持され始めている」
と紹介。
 同時に、
 中国製品は品質面でも、信頼の点でも国外製品に劣っているのが現実だ
と指摘した。

 11月11日は中国で「独身の日(双十一)」と呼ばれ、各ネット通販サイトでは毎年、大規模なセールが行われる。
 こうしたセールでは日本や米国などの国外ブランド品が大きな人気を集めている。
 中国人消費者の生活水準が向上するなか、より良い物を求めるのは自然と言えるだろう。

 中国は2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟して以降、徐々に経済の自由化を求められている。
 さらに、複数の国とFTA(自由貿易協定)も締結していることから、
 今後は現在以上に国外から良質な商品がより安価に中国に流入することになる
だろう。
 消費者にとっては利益だが、中国製品にとって巨大な挑戦にほかならない。

 中国でも年末商戦や、「独身の日」に続く大型商戦日である12月12日の「双十二」の商戦が始まっているほか、中国の春節(旧正月)も間近に迫っている。
 将来、中国製品は日本製品のように高品質の代名詞となれるのだろうか。
 中国製品にとって鉄を打つべき時期が目の前に来ている。



サーチナニュース 2015-12-18 07:33
http://news.searchina.net/id/1597452?page=1

「世界の工場」が終焉へ、
中国OEM製造業の30%で給与支払い遅延?=中国メディア

 中国メディア・第一財経日報は16日、従来の製造業を中心とした
 産業構造の転換を目指す中国で、OEM企業が厳しい冬の時代を迎えている
とする記事を掲載した。

 記事は、
 「冬の寒気が製造業においてさらに蔓延しており、
 一部企業では長年の生産能力拡大に伴う資金不足が、会社の負担能力を超えてしまっている」
と説明。
 「現状、遅れることなく給料を出せる企業は製造業界の30%程度しかない」
という業界関係者の話を紹介した。

 また、従業員の給与を出すための資金確保が難しくなるとともに、生産者物価指数(PPI)低下により、工場を存続させるために製品の出荷価格を引き下げざるを得ないという状況もOEM企業の経営を苦しくしているとした。

 そして、専門家が
 「OEM企業は請け負い元からの制約を受けるうえ、
 自らのブランドを持っていないほか、
 エンドユーザーのニーズも理解していない。
 今後これらの企業が発展するうえで抱える負荷はますます大きくなる」
と解説したことを伝えた。

 これまでは廉価な労働力を武器に国内外の大手企業向けのOEM製品を作ることで成長してきた中国の製造業。
 しかし、近年は人件費の上昇によってアドバンテージが薄れ、
 技術や研究開発力、マーケティング力といった面での優位性がなければたちまち経営が行き詰まる
という状況に変化しつつある。
 サプライチェーンの中でなかば「相手のいいなり」になってきた彼らが、
 自ら考えて製品を開発するという習慣を身に着けるのは、決して容易なことではなさそうだ。



サーチナニュース 2015-12-19 14:34
http://biz.searchina.net/id/1597587?page=1

日本人から見て「中国企業は寿命が短すぎる」、
その理由はなぜなのか

 日本のある自動車用軸受メーカーの社員は、自社製品について語るときに目がきらきら輝く――。
 中国メディアの今日頭条は14日、中国が「真の経済強国」になるためには日本企業が持つ「お金ではなく、製品を愛する精神」を身に着ける必要があると論じている。

 中国の中小企業の平均寿命は2.5年、大企業は7-8年。
 また欧米企業の平均寿命は40年、日本企業は58年であると記事は紹介、企業の平均寿命に「はなはだしい開きがある」としている。
 これほどの差が生まれるのはなぜだろうか。
 それは中国企業と日本企業が追い求めているものがまったく違うからだ。

 記事は、中国人にはある種の「天性」が備わっているとする。
 それは「お金儲け」の才能だ。
 どういうことかと言えば、多くの人は本業がちょっと成功するとすぐにビジネスを多元化し、不動産投資や株式投資を始める。
 できるだけ早く、そして大きく儲けようとするのが中国人の特性
であると記事は指摘している。

 一方、日本企業の場合は「お金よりも製品そのものの方に大きな関心がある」と記事は分析。
 冒頭の「日本のある自動車用軸受メーカーの社員は、自社製品について語るときに目がきらきら輝く」という中国人による言葉はその一例だ。
 この感想を語った中国人が、自動車用軸受メーカーの幹部社員に「ビジネスを多元化しないのか」と質問したところ、その質問に対する答えは
 「研究しなくてはならないことが多すぎて何世代かかるかわからないのに、他のことをするエネルギーがあると思いますか」
というものだったという。

 このコメントを聞くと日本人の多くは心に響くものを感じるであろうが、
 お金儲けを中心に考える人にとっては「遠回りで賢くないやり方」と感じる
かもしれない。
 しかしこのコメントが示しているのはそもそもお金儲けの方法などではなく「生き方」だ。
 この「生き方」の違いが企業の平均寿命にはっきり表れるというのはうなずけるところだ。
 そして中国企業が「ブランド」を造り出すのが苦手という事象にはこうした要素が関係しているであろうことも理解できる。

 中国は「お金儲けに関する天性の賢さ」によって経済大国に成長したが、真の経済強国になるには「こうした賢さを捨てなくてはならない」と記事は警告している。
 そのためには根本的に変化し、「生き方」を変えることが求められる。



サーチナニュース 2015-12-22 08:33
http://news.searchina.net/id/1597731?page=1

日本人は本当に上手だ・・・中国が褒め称える「改善の能力」

 他人に指摘されて初めて「自分の長所」に気づくことがある。
 中国メディアの捜狐はこのほど、日本独自の長所として「改善癖」を挙げ、こうした長所は日本のさまざまな商品や生活習慣に表れていることを紹介している。

 記事はまず日本の電車・路線バスに見ることができる時刻表に言及、分単位で正確に運行するシステムに日本人の細やかな配慮が表れていると指摘するが、続いて次の興味深い事例を紹介している。
 料理道具の1つにフライ返しがあるが、中国では1種類のフライ返ししか持っていない家庭も少なくない。

 一方、日本では100円ショップにおいても何十種類ものフライ返しが販売されていて、それぞれに特定の用途がある。
 この事例を中国の観点で見てみると「時代の流行商品でもないフライ返しになぜここまでエネルギーを注ぎ込み細やかな配慮を払う必要があるのか」という疑問が生じるかもしれない。

 しかし記事はこの事例から、
★.日本人の「何事においても」不便な点を見つけるのが上手で、
★.それをどんどん改善していこうとする「改善癖」的な性向
を読み取ることができると主張。
 この性向は文房具屋に何種類ものノートが販売されている点にも表れていると記事は分析している。
 常に改善点を考え、思いついたらすぐメモする日本人の姿が想像されるのだろう。

 日本人のこうした改善癖はフライ返しだけでなく、テレビ・冷蔵庫・洗濯機といった家電製品の省エネルギー化にも表れている。
 そしてこの日本独自とも言える長所は
 「資源を最も効果的に用いる能力」
となって発揮されていると分析した。

 日本人の改善に関する能力は省エネ以外にも発揮されている。
 例えば、日本製のペン先の鋭い筆記しやすいボールペンを考えてみると、ボールペンに使われている資源(材料)そのものを入手する点では中国と日本企業に違いはないかもしれない。
 しかし筆記しやすい製品を造り出す点で明らかに日本は「効果的な資源の活用」をしている。
 世界的に見ても、「大量生産」、「大量消費」の時代はすでに過去のものだ。
 環境保護や省エネが世界的な課題となっている現代において、日本企業および日本人の改善を通じて省エネ、エコにつなげる能力は今後、大きな武器になるに違いない。











2015年11月29日日曜日

過剰人口の日本(5):人類史上初の『熟成世代』の登場、成長から熟成へ「役立ちプレミアム団塊世代」

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 2つの対立した論説。


 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2015年11月29日(Sun)  足立倫行 (ノンフィクションライター)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5669

プレミアム世代の落ちこぼれ?
「人類史上初めての熟成世代」と言われる団塊世代

 この11月に、熊本大学名誉教授の徳野貞雄さんが東京新聞にエッセイ(上・下編)を掲載していて、ちょっと気になる言葉があったため切り抜いておいた(私はいまだに新聞2紙を購買し、スクラップする世代である)。

 徳野さんは日本村落研究学会会長であり「道の駅」の命名者として知られるが、「暮らしの視点からの人口減少社会」と題した今回のエッセイでは、
 現代の人口減少を政府のように「国家の危機」として捉え、地方自治体に補助金がらみで無理な人口目標を追わせるのではなく、
 少子・高齢化は成熟社会の証しと認識し、
 人口減少を前提とした「縮小型社会モデル」を構築・模索していくことこそ政策的に急務、
と提言している。

 私が注目したのはその下編。
 人口減少社会の典型は農山村の過疎地だが、徳野さんはそんな過疎地に大量出現している60~75歳の人たちを「プレミアム世代」と呼び、地域社会の担い手として大いに期待するのだ。

■人類史上初めての熟成世代の登場

 というのも、この「プレミアム世代」は腰も曲がっておらず身体的にカクシャクとしていて、しかも、それぞれが技術・知恵や人生経験を有し、「おカネも持っている」。
 また、子育てのしがらみや会社・組織の縛りがなく、家族や地域のために自由に行動ができ、同時に自分の力の限界も知っているからだ。

 1960年に日本全体で660万人(人口の7.1%)だった60~74歳は、
 2010年には2500万人(19.7%)と約4倍に増えた。
 この変化を「高齢化社会の不安・危機」と煽るのではなく、
 「人類史上初めての熟成世代の登場」と捉えよう、
と徳野さんは提唱する。

 現に、「集落の維持」「環境の維持」などの「地域活動」にもっとも熱心に取り組んでいるのがこの熟成世代。
 そういう人々こそ「役立ちプレミアム世代」なのだ、と。

 なるほど、と私は思った。
 私の暮らす相模原市は首都圏の外縁部に位置し、緑は多いけれど農山村地域ではない。
 それでも平日に自宅周辺を歩くと、白髪・禿頭の高齢者だらけである。
 コンビニやスーパー、バス停や駅前では右を見ても左を見ても年輩者ばかり。

 こうした情景を嘆息とともに受け止めずに、「人類史上初めての熟成世代の登場」と見方を変えれば、確かに予想外の知恵も湧いてくるのかもしれない。

 そもそも、現在60代後半で団塊世代の私は「プレミアム世代」のド真ん中。
 自分自身の足許を見つめ、来し方行く末を考えるためにも、自らを人類史上初めての熟成世代」の一員と捉える方が、新鮮で有意義、かつ面白い気がする。

 熟成の「プレミアム世代」と言えば、先日の高校同窓会で思い当たることがあった。

■「花の乙女」や「紅顔の美少年」
“あれから50年”の変貌は想定内

 私は神奈川県立多摩高等学校出身なのだが、今年は卒業50周年ということで何年ぶりかの同期会があり、新宿の高層ホテルのホール会場に約90名が集まったのである。

 「花の乙女」や「紅顔の美少年」の“あれから50年”の変貌は想定内。
 改めて驚いたのは、会場入口で配られた出席者90名の近況を綴った<交流コメント集>だった。

 親の介護や孫の世話、趣味三昧(ゴルフ、水泳、園芸、囲碁、旅行、コーラス、美術館巡りなど)は当然としても、意外に何かを「勉強中」やボランティア活動が多いのだ。

 書道や写真、『論語』の教室に通ったり大学の公開講座を受講したり、外国人の子供の学習支援や小学校、図書館での本の読み聞かせ、少年野球の球団代表、東日本大震災復興支援の海岸林再生プロジェクトへの参加など、知的好奇心の方向や地域活動の分野が多岐にわたっている。

 今も現役で仕事を続けているのは私を含め10人ほどで、大半の同期性は退職した年金生活者なのだが、自分の少年時代、青年時代を振り返っても、当時の年輩者がこれほど多彩にして充実(?)した退職生活を送っていたという記憶はない。
 「一番の楽しみは孫と一緒に信州の別荘で過ごすこと」
 「秋には(夫と)また南仏で2~3カ月滞在」
などサラリと記されたコメントを読むと、
 「イマドキの庶民の老後はどれほど優雅なのだ!?」
と唖然とする。

 こういう例を紹介すると「それは出席できた幸運な少数者」という声が必ず上がるが、今回は出席できなかった137名のコメント集も<その2>に載っており、そちらを読んでも「意気軒昂な退職者」像は変わらない。

 もちろん「病気療養中」や「体調不良」も散見するが、地域ボランティア活動や習い事と重なっての欠席がかなりあり、中には
 「脱サラして有機農業のプロ百姓」や
 「約40坪の庭を入手してバラの庭作り」
 「今回はカナダ行とぶつかって欠席」
など、旺盛な行動力が垣間見える様子は出席者たちと大差ないのだ。

 当日は、誰彼となく熱に浮かされたように喋っていたので頭の中が整理できなかったものの、日が経って10ページに及ぶ<交流コメント集>を読み直してみると、
 我々ジジババ世代が社会的にいかに「プレミアム(付加価値付きの熟成)世代」が、よくわかる。

 過去に例がないほどの、豊かで、自由で、年を取った連中の大量出現なのだ。

■生きている限り働き続けねばならない

 もっとも、私個人は、「プレミアム世代に属していても例外的存在では?」と思う。
 何より、無年金者だ。
 大学を中退してから一度も会社勤務がなく、ずっと収入不安定なフリーなので、厚生年金も国民年金も無縁。
 旧友たちのように「まだ仕事中」なのではなく、生きている限り働き続けねばならない。

 家はあるが、亡父から相続したもの。
 しかも実際住み始めたのは今年の夏からだ。
 それに私は多摩高校の卒業生ではない。
 多摩高校に入学はしたが、在学は2年生の終わりまでで、卒業したのは長崎県の高校だ。

 そのあたりのハミ出し具合は、これからいずれ触れることになるだろう。
 ともあれ私は、
 「プレミアム世代」のド真ん中にいる「こぼれプレミアム」
ということになる。



ダイヤモンドオンライン 2015年12月4日 有井太郎
http://diamond.jp/articles/-/82697

老後に夢も希望もない!
現役世代に忍び寄る「下流中年」の足音

 足もとで「下流老人」の増加が社会問題化しつつある。
 しかし、このような“下流化”は決して高齢者に限った話ではない。
 まだ「現役」と言える中年世代にも起き始めている現象なのだ。
 さらに今の中年世代が高齢化すると、今よりも厳しい“下流老人”になってしまう可能性もあるという。
 中年世代に忍び寄る「下流化」の現実をお伝えしよう。(取材・文/有井太郎、編集協力/プレスラボ)

◆「このままではやっていけない」、中年世代を襲う“下流化”の現実

 “下流化”は、決して高齢者に限った現象ではない。
 まだ現役と言える中年世代にも起き始めているのだ
  「大学を出た娘は実家でニート生活。
 この状態が続けば、ウチは本当にやっていけません」

 高齢者たちの貧困化が止まらない。
 たとえば、受給者が近年増え続けている生活保護において、最も受給率が高いのは「高齢者世帯」だ。
 今年8月の厚労省の発表を見ると、高齢者世帯が全体の49.3%を占めているという。
 日本人の“老後”は、想像以上に厳しいものとなっている。
 また、今年6月には、71歳の男性が新幹線の車内で焼身自殺するという衝撃的なニュースがあった。
 報道によれば、事件を引き起こした高齢者も「生活苦を嘆いていた」という。

 このような状況に警鐘を鳴らし、ベストセラーとなった本がある。
 それが、今年6月に刊行された著書『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新聞出版)だ。
 著者は、NPO法人ほっとプラスの代表理事を務める藤田孝典氏。
 同氏は、生活困窮者の相談支援を行っており、その中で出会った貧困に喘ぐ“下流老人”たちの実態を紹介。
 下流化を生んだ原因や、社会的な問題点を指摘した。

 ではなぜ、このような高齢者の下流化が起きたのか。
 藤田氏は、その理由をこう考えている。
  「かつての高齢者は、年金に加えて、子世代のサポートや夫婦での助け合いなどにより老後の生計を立てていました。
 しかし現代では、家族機能の低下やワーキングプアの増加によって子世代の助けがなくなったり、未婚者が増加したりと、老後の経済的な助けを受けられる要素が少なくなっています。
 これにより、生活が貧しくなっているんです」

 これまで高齢者を支えていた様々な要素が、時代を経るにつれてなくなってきている。
 その結果、下流老人が生まれているようなのだ。
 こういった下流老人の話を聞いたところで、現役で働く30代後半~50代の中年世代は、どこか他人事に感じるかもしれない。
 だが、その考えは捨てたほうがよさそうだ。
 というのも、藤田氏によれば「下流化は中年世代にも起きている」という。

  「高齢者だけでなく、その下の世代の下流化も顕著です。
 中年世代で貧困に苦しんでいる人は多く、相談件数も増えていますから。
 さらに深刻なのは、今の中年世代がシニアになったとき。貧困化は急速に増し、今よりもずっと厳しくなるのは確実です。
 だからこそ、中年世代はすぐに対策を考えなくてはなりません」

 まさに“今”起きているという「中年の下流化」。
  「下流老人」ならぬ「下流中年」も増えているようなのだ。
 このままいくと“未来”には、「さらに深刻な下流老人の増加」が待ち受けているという。
 中年世代の老後は、より一層厳しいものになるのだろうか。

  下流中年という「今」の問題と、その中年世代を待ち受ける「過酷な下流老人」という「未来」の問題。中年世代にとっては、決して無視できないテーマと言えよう。
 そこで本記事では、「今」と「未来」の2つのテーマを軸に、「中年×下流化」について考えたい。

◆給料が若手よりも少ない!
今そこにある「下流中年」という現実

 まず取り上げるのは、すでに起きている「下流中年」という現実だ。
  下流化は高齢者に限った話ではなく、現役のビジネスパーソンである中年世代にも広がっているのだ。
 国税庁による「民間給与実態統計調査」を見ると、1人あたりの年間平均給与は継続的に下がり続けている。
 平成16年には438.8万円だったのが、平成26年には415.0万円となっているのだ。
 この調査で対象とされた人々の平均年齢は平成26年版で45.5歳だから、中年世代の給与減は明確と言える。
 年齢階層別に見ても、平均給与は35歳~59歳まで一様に減少している。
 このデータを見る限り、世間で実際に下流中年が増えていてもおかしくはない。

 実際、筆者がリサーチしてみると、「下流中年」と呼べる事態に陥っている人は少なからずいた。
 その何例かを紹介していこう。
 まずは、データにも見られるように「給料の少なさ」が原因で下流化した例だ。
 人材支援企業で働くMさん(39歳)は、35歳のときに転職を決断。
 新卒から勤めていた企業を辞めて、現在の会社に入った。
 このとき、Mさんは結婚して3年目。前の会社では残業が多く、休日出勤もおぼつかなかったため、「子どもをつくることも控えていた」という。
 そのこともあって転職をしたのだが、この判断は決して良い結果を生まなかったようだ。
 Mさんがその理由を説明する

 転職した企業は、一見問題なさそうだったのですが、入ってみるととにかく転職組には厳しく、給料が全然上がらないんです。
 話をよく聞いてみると、新卒で入った20代中盤の社員のほうが多くもらっている状態でした。
 結局は、前の会社の方が高収入だったという結末です。
 転職してからしばらくして子どもも授かったのですが、これからやっていけるか不安です」
 今の状況を変えるには、「待遇の良い企業へもう一度転職するくらいしか手はない」とMさんは肩を落とす。
 しかし、一度転職した彼にとって、さらにもう1回会社を変えるのは「さすがにリスクがある」という。
 子どもがいることからも、失敗はできない。
 このような“がんじがらめ”の状況が、彼を下流中年へと陥れているのだ。

 ブラック企業での勤務により、下流化の波にのまれている人もいる。
 都内の広告制作会社で働くKさん(42歳)は、今の会社に勤めて16年目。
 大学卒業後、あてもなく暮らしていたが、今の会社の社長に拾ってもらったとのこと。
 彼はそれを感謝している。

 ただし、その会社は典型的なブラック企業で、「給料はほとんど上がらない」とKさんは嘆く。
 さらに、彼自身の意識が自らに下流化を促しているとおぼしき側面もある。
  「今の会社を辞めたところで、自分が特有のスキルを持っているわけではありません。
 ですから、再就職が見つかると思えないんです。
 そう考えると、結局この会社に残り続けるしかないんですよね」
 なお、Kさんによれば「社長は最近、この会社の解散を考えている様子」とのこと。
 もしそれが現実になれば、彼はいよいよ本格的な下流中年のリスクを背負うことになる。

 20代前半の若者ならまだしも、中年世代の転職で給料が上がらないのは苦しい。
 実際に転職して給料が上がらなかったMさんと、給料の上昇が見込めず転職できないKさんには、似たようなリスクが根本にあるのかもしれない。
 そもそもMさんやKさんの年齢では、世の中の求人ニーズは若手と比べてかなり少ないのも現実。
 よしんば熱心に転職活動をしたところで、拾ってくれる会社があるかどうかもわからない。

◆ストレスやうつによる離職が致命傷に、なんとなく下流化していく人たち

 30代前半までの「離職」が、中年での下流化につながるケースもある。
 Sさん(36歳)は、現在フリーター状態だ。
 彼は4年前まで一流企業に勤めていたが、日々の仕事にストレスを感じて退社。
 それからフリーターを続けているという。

  「会社を辞めるときは、もう会社員にウンザリして『一生フリーターでいい』と思いました。
 それで2年ほど暮らしたのですが、実際にフリーターになってみると、生活を切り詰めるのは辛く、また将来も不安になってきます。
 ただ、いざ会社員として復帰しようにも、なかなか再雇用してくれる企業はなく……。
 今考えると、4年前の決断は安易でしたね」

 会社員のストレス問題は、ここ数年の間にことさら論じられるようになった。
 そしてそのストレスは、働きざかりの社員の離職を生んでしまう。
 だが、そういった離職は、生涯のキャリアを考える上で“致命傷”になる可能性も低くない。
 そしてその致命傷が、下流中年のきっかけをつくるのだ。

 離職のキズに悩まされている人は他にもいる。
 Nさん(38歳)は30代前半でうつを発症し、最終的に中途採用で入った企業を退社してしまった。
 その後、時間をかけて復帰を目指したが、「なかなか雇ってくれる会社は見つからなかった」という。
 結局、彼はアルバイトとしてカラオケ店に勤め、そこから社員になった。一安心かと思いきや、「給料は契約社員のようなもので、同年代と比べるとかなり低い」という。
 かといって再転職するのはさらに難しく、「切り詰めてやっていくしかない」と憂いている。

◆親の介護や子どものニート化
思わぬ家庭問題で下流化することも

  堅実に働いている人でも、予期しなかった原因により下流化してしまうケースはある。
 その1つが「親の介護」だ。
 金属メーカーの営業担当であるHさん(46歳)は、独身で75歳の母親と2人暮らしをしている。
 姉は結婚して地方に嫁いでおり、Hさんが母の面倒を見ている状態だ。
 70歳を過ぎるまでは元気だったHさんの母だが、病を患ったのを機に、めっきり活力をなくしてしまった。
 用を足すにもHさんが面倒を看なければならないこともあって、いわば介護が必要な状態となったのである。
 Hさんは未婚のため、自分の妻に母のサポートを任せることはできない。
 姉も遠方に住んでおり、まだ小学生の子どもがいる。
 彼は仕事を続けながら母を看ていたが、それも難しくなってついには会社を辞めてしまった。

 Hさんは「このまま仕事を続けるのは厳しいので仕方なかったです」と語る。
 しかし、今の生活に入ってからもう3年が経とうとしており、貯金を切り崩して生活している状況。
 母親を施設に入れるのもためらわれ、「自分の生活を見直すしかない」と話している。

 親の介護だけでなく、予期せぬ「子どもへの援助」が下流中年を生むケースもある。
 Aさん(49歳)は2人の子を持つ父親で、製造会社に勤務するサラリーマンだ。
 高校卒業後にすぐ社会に出たAさんは、
 「子どもを大学に入れるとこんなにお金がかかるなんて思わなかった」
と言う。
 「うちは娘が2人いて、歳は2つ違い。
 なので、姉妹2人とも大学に通っている期間は厳しかったですね。
 2人とも東京の大学だから、家賃と授業料、生活費を含めると、月何十万円と出ていきます。
 これには焦りました」

 それでも、長女は大学を昨年卒業し、苦しい状況は終わったかと思われた。
 が、本当に「予想外」だったのはそれから。
 大学を卒業した長女が、働かずに実家にいるのである。

  「正直なところ困っています……。
 社会人になったら、今度は娘たちが働いて僕らをサポートしてくれると思っていましたから。でも現実は、ニート状態の娘を援助している状態。
 妻もパートで毎日遅くまで働いていますが、このままでは本当にやっていけません」

 たとえ堅実に仕事をしている中年世代でも、親や子などとの関係によって、一気に下流へと転げ落ちる可能性はある。
 これらのエピソードを見ると、誰でも「下流中年」に突然なってしまう恐れを抱くのではないだろうか。

◆死ぬまで働かずに生きていけるのか?
現役世代が考えるべき「老後の生活イメージ」

 ここまでは「下流中年」の事例をいくつか紹介してきた。
 これらは、中年世代にとって「今」の問題であり、いずれも切迫した内容だ。

 とはいえ、あくまで現在そういった悩みを抱えず、堅実に、したたかに暮らしている中年世代もいる。
 そんな人たちからすれば、やはり「下流中年」は他人事に思えるのではないだろうか。
 しかし、安心してはいけない。そんな堅実な中年世代でさえも、あと10年~20年が経って高齢者になると、下流化の渦に巻き込まれているかもしれないのだ。

 これこそが、前述した「未来」の問題である。
 世の中で深刻な下流老人が増え、自分自身もその1人になってしまうのではないかという不安だ。
 冒頭でコメントをもらった藤田氏は、今後「下流老人」問題がさらに深刻になりそうな理由をこう説明する。

  「下流老人の要因となるのは、これまで老後の生活をサポートしていた要素がなくなっていること。
 その傾向は、今の中年世代が老後を迎えたとき、明らかに顕著となります。
 退職金は減るでしょうし、企業年金も次々に解散しています。
 非正規雇用の労働者は4割になり、年金の受給額が減ることも確実。
 今の高齢者よりずっとサポートのない生活が待っています」

 子世代の金銭的な助けはさらに望めなくなり、未婚率の増加で配偶者との支え合いも少なくなる。
 退職金は少なく、年金受給額も減っていくだろう。

 その一方で、我々の平均寿命は伸び続けている。
 今や90歳まで生きる人も珍しくなくなった。
 藤田氏は、
 「60歳から90歳まで、30年間働かずに生きていけるかをきちんとイメージしてほしい」
と中年世代に警鐘を鳴らす。

 「老後も働けばいいと考えている人もいますが、高齢になると雇用状況は厳しいですし、肉体的にも想像以上に働くのは苦しくなります。
 もちろん、病気を患うこともあるでしょう。
 ですから、他人事と思わず今から準備しておくことが大切なのです」

 老後に備えて、今から行うべき“準備”。
 その具体例として、藤田氏は「老後の家計をシミュレーションすること」を挙げる。
  「自分の収入レベルで、将来どのくらいの年金を受給できるのか計算してください。
 たとえば、20歳から60歳まで平均月収25万円の人が40年間厚生年金を払った場合、もらえる年金は月々14万円弱ほどです。
 それを今の生活収支と照らし合わせて、自分に必要な貯蓄を考えておくことが大切です」

 冒頭でも述べたが、これまでの高齢者はもともと「年金だけで生活できていた」のではなく、「年金以外のサポートがあって生活できていた」と言える。
 しかし、そのサポートはどんどんなくなっていくのだ。
 となれば、目減りする分をみずからの貯蓄で補うしかない。
 そのためのシミュレーションが必要と言えよう。

◆下流老人の増加は激しさを増すばかり
もはや自分の老後は自分で守るしかない

 11月27日、安倍晋三首相は平成27年度補正予算案の編成を指示した。
 その中で首相は、低所得世帯の年金受給者を対象に、1人3万円ほどの臨時給付金を出すことを考えているという。
 まさに「下流老人」に向けた措置とも言える。

 だが、政府によるこうした“その場だけ”の対策が、問題の解決につながることは決してないだろう。
 少子高齢化が進み、家族の金銭的な支え合いが薄くなっていく未来では、高齢者の下流化は激しさを増すばかり。
 一時的な給付金は、まさに「焼け石に水」である。
 それほど未来は厳しい状況であり、その予備軍が今の中年世代だと言える。

 我々にとって、高齢者の下流化を防ぐシステムや制度の登場に期待したいのは言うまでもないが、並行して下流老人にならないための自己防衛策を早急に講じるべきだろう。
 それこそが、穏やかな老後を過ごすための大前提と言える。



レコードチャイナ 配信日時:2015年12月15日(火) 19時20分
http://www.recordchina.co.jp/a124978.html

韓国の有効引退年齢は72.9歳!
OECDで最も高い

 2015年12月14日、韓国・中央日報によると、経済協力開発機構(OECD)がこのほど発表した加盟34カ国の「有効引退年齢」に関する報告書で、韓国の引退年齢が加盟国の中で最も高いことが分かった。

 報告書によると、2014年の韓国人男性の「有効引退年齢(労働市場から完全に退出する年齢)」は72.9歳で、OECD加盟国の中で最も高かった。
2位以下には
 (☆韓国:72.9)
 メキシコ(72.0歳)、
 日本(69.3歳)、
 ニュージーランド(67.2歳)、
 スイス(66.3歳)、
 米国(65.9歳)
が続いた。
 一方、韓国人女性の「有効引退年齢」は70.6歳で、OECD加盟国のうち70歳を超えた国は韓国のみ。
 2位以下はメキシコ(68.1歳)、日本(67.6歳)、ニュージーランド(67.0歳)、米国(64.7歳)、スイス(64.5歳)となった。

 また、引退後に余生を楽しむ時間も、韓国は加盟国の中で最も短かった。
 男性は11.4年で加盟国の平均(17.6年)より6年、女性も16.6年で平均(22.3年)より5年ほど短かった。
 さらに高齢者の所得も、加盟国の中で韓国が最も低かった。

 OECDは「国が年金受給者の貧困を予防するためには、年金をはじめとする社会安全網(セーフティーネット)の支出に対する改革が必要」と指摘。
 特に、韓国については「年金改革とともに、労働市場を改革しなければならない」と強調した。



JB Press 2015.11.9(月) 末永 恵
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45184?utm_source=editor&utm_medium=self&utm_campaign=link&utm_content=recommend

アジアの少子高齢化(1)
一人っ子政策やめても焼け石に水、衰退に打つ手なし
日本以上の猛スピードで進む

 中国が40年近く続いた「一人っ子政策」を廃止した。
 遅すぎたという意見もあるが、
 不振に陥っている経済の立て直しを目指すには、
 労働人口減少という構造問題にも積極的に手を打つ必要があった
のだろう。
 しかし、「多子多福(子供が多ければ多いほど、福が積もって、多くなる=福とは老後の保障など)」
という中国の伝統的な考え方は人口集中型の都市部では極端に薄れてきていることも事実。

 「二人っ子政策」に移行しても、今後、中国ではベビーブームは巻き起こらないし、労働人口減少の勢いも止まらない可能性が高い。
 背景には、女性の教育水準向上に伴う社会進出が顕著で、さらに子育てや住宅費用が高騰していることが挙げられる。

■中国だけでなくアジア全域の問題に

 深刻なのは、少子高齢化の動きは、決して中国だけではないということだ。
 世界経済のエンジン役として注目されるアジア地域で、実は日本以上に少子高齢化が進んでいる。
 日本はこれまで世界最速で世界一の「超高齢社会」になったと言われてきたが、どうやら少子高齢化は日本の“専売特許”ではなくなりつつあるようだ。

日本はアジアで最も早く
 人口ボーナス(豊富な生産年齢人口=労働人口の増加で、経済成長を促す状態)
が始まり、最も早く終焉を迎えた。

 その日本を踏襲するように2015年を境に、中国をはじめ、韓国、シンガポール、香港、台湾に加え、成長著しいASEAN(東南アジア諸国連合)のタイも、経済成長を後押ししてきた要因の「人口ボーナス」の終焉を迎えつつある。
 そして、
 「人口オーナス」(高齢人口急増、生産年齢人口減少、少子化で財政、経済成長へ重荷となる状態)
へ移行するだけでなく、
 「高齢化」から「高齢」社会に移行するペースも、日本を抜き「世界最速スピード」となってきている。

 例えば、合計特殊出生率(女性1人が生涯に出産する子供の数)を見るとよく分かる。
 日本は2013年、1.43だったが、
 中国は(2010年)は、1.18、
  韓国も1.18、
 シンガポールが1.19、
 香港が1.12で、
 タイでも1.39
となっている。

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JB Press 2015.11.16(月) 末永 恵
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45255?page=2

アジアの少子高齢化(2)
老人の国へまっしぐら、高学歴女性ほど結婚しないタイ
~バンコクの合計特殊出生率は0.8

 政府がお見合い会を主催しなければならなくなった国、シンガポールのケースを前回は見てきた。
 しかし、「笛吹けども踊らず」で、少子化対策に特効薬はないようである。

 ASEAN(東南アジア諸国連合)で第2位の経済大国、さらにこれからも投資拡大が期待されているタイも、実は少子高齢化問題が重くのしかかってきた。
 タイと言えば、日本と二人三脚で発展してきたと言ってもよいほど日本企業の進出が著しい。
 タイで大規模なデモが発生して放火されるような事件があっても、日系企業の入っているビルは絶妙に避けるとも言われている。

 日本にとってもアジアの拠点として最も重要な国と言ってもいい。
 しかし、この国でも少子高齢化が急ピッチだ。
 いまや日系企業がタイに進出する際の問題は、賃金やカントリーリスクの上昇ではなく、実は人手不足(高度人材含む)にある。

■あと15年で高齢者率25%に

 タイ国家統計局によると、2014年の60歳以上は6500万人の人口のうち約1000万人で、全人口の約15%にも上り、6.5人に1人が60歳以上という、すでに立派な高齢化社会となってしまった。
 1994年に約7%だった60歳以上人口が2012年には約12%へと跳ね上がった。
 高齢者数は2030年には1760万人(総人口の約25%)、
 2040年には2050万人(30%)
に達すると見込まれている。

 また、合計特殊出生率も1.39と日本より低く、首都バンコクに限っては0.8とも言われ、
 平均年齢も他のアジア諸国よりはるかに高い34歳
 (ASEAN域内で2番目、トップはシンガポール)。
 ASEAN域内では、
 イスラム国家ゆえに人口増が見込まれるインドネシアやマレーシアを除けば、タイはシンガポールに次いでいち早く、“超”少子高齢化社会へ向かうのは間違いないだろう。

 他のアジアの国と同様、
1].医療技術発展に伴い平均寿命が伸び、高齢化に拍車がかかり、一方、
2].人口抑制策を進めるなか、女性の高学歴化による社会進出拡大で晩婚化、未婚化が急増していること
が背景にある。

 筆者の友人のタイ女性も独身生活を謳歌している。
 30代前半の彼女は、タイの東大と呼ばれる最難関のチュラロンコン大学を卒業し、米スタンフォード大学で経営学修士を取得。
 現在バンコクの欧米企業で管理職を務めている。
 月収は日本円に換算して約80万円。

 彼女によると、タイ、特に都市部の高学歴の女性は本当に結婚しないという。

 彼女曰く、
 「皆、結婚したくないのではない。
 だけど、特にタイの男性は働かないし、女性が家計を支えて働いているケースも多い。
 タイに理想の相手がいないだけ。
 今の生活を切り詰めてまで、という結婚願望がないとも言えるかな」
とあっけらかん。

 日本では「ワーキングプア」層の拡大で結婚できない男性が増えているが、
 タイでは女性や男性で年収が低いほど結婚率が高く、
 その反対に年収が高いほど結婚率が低いという現象が起きている。

■地方でも子供は最大2人まで

 タイの場合、上述の友人のケースだけでなく、本人が高収入だから結婚しないというより、贈与税(2016年2月施行予定)や固定資産税(2017年施行予定)もないタイでは
 一族の資産が多く、裕福なステイタスや生活を手放したくないという社会構造事情も左右しているかもしれない。
 また、「結婚しない女」だけでなく、晩婚化で「子供を生まない女」も増えてきており、今では都市部に比べ子供が多いはずの地方ですら、夫婦の間に子供は2人までというのが常識化しているという。

 そんななか、政府(軍事政権下)は政治経済の制度改革を図る「国家改革議会」が少子高齢化対策を重点施策と位置づけ、このほど同対策のため2017年度(2016年10から2017年9月)から、個人所得税の控除枠拡大計画を明らかにし、子育て支援目的の「年少扶養控除拡大」を盛り込んだ。
 現行では年少扶養控除は「子供3人が限度」(子供1人当たり1万5000バーツ=約5万円)だが、これを「無制限」に変更することで、4人目以降の多産出産にインセンティブを与えようというもの。
 指定教育機関就学の場合は、「25歳まで」が控除対象。
 今後は「年収の40%、最大6万バーツ(約19万円)」の基礎控除拡大も検討中だという。

 また、少子化対策だけでなく高齢社会に向けた取り組みも、まだ始まったばかりだ。
 最大の問題は、高齢者の低所得問題。タイの国家統計局などの調べでは、高齢者のうち、貯蓄のある人は34%にとどまり、その半数以上が貯金が全くない状態で、「貧困高齢者」が増えているという。
 経済発展に伴う物価上昇などで、公的年金では賄えず、生活費などのほとんどを子供や孫からの仕送りなどに依存し、医療費などへの将来不安などを理由に高齢者の自殺が20%近くにまで増加し、年々増加傾向にあるという。

 首都バンコクには、24時間体制の高齢者専門医療施設があるが、破格な入居料で富裕層に限定されているのが現状だ。
 とりわけタイでは、高齢化対策は少子化を上回る緊急課題。医療や介護サービス、さらには年金問題など取り組む問題は目白押しだ。
 高齢者基金は設立されたものの、高齢者医療保険や老齢年金についてはまだまだ検討の段階。

■年老いた親が孤独死するケースも

 制度面の問題だけでなく、少子高齢化問題は、タイの伝統的な家族制度の「大家族主義」も変えようとしている。
 都市部でも農村部でも共働きの両親に変わって祖父母が子供の面倒を見て、家族を支えてきたが、その大家族主義も崩壊危機寸前だという。
 経済成長の発展で農村の若い世代は都市部に移住、年老いた親が孤独死するケースも増えてきたという。

 現在のタイの1人当たりのGDPは約5426ドル(IMF統計、2015年10月時点)。
 今年にも人口ボーナス期が終焉すると見られるが、
 先進国との経済や技術力と後発新興国の追い上げの狭間で、このままいくと、豊かになる前に老いていく事態に陥ることが予想され、まさに
 「中所得国の罠」にはまってしまった
と言える。

 こうした事態は、中国リスクを避けるためもあっていまなお進出が絶えない日本企業にとって厄介な問題だ。
 アジアは日本と違って若い働き手がいっぱいいる、しかも賃金は安い――。
 このような考えをいまだ持っているとしたら、それは幻想に過ぎない。

 さて、次回はお隣の国、韓国と中国を取り上げる。
 これらの国もまた深刻な事態に発展している。



JB Press 2015.11.24(火) 末永 恵
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45324

アジアの少子高齢化(3)
貧乏老大国が目前の中国、夢も希望も捨てた韓国
~国家消滅の危機にも

 日本以上の猛スピードで進み始めたアジアの少子高齢化。
 前々回は政府があの手この手で対策を打ちながらも一向に成果の見えないシンガポール、
 前回は日本との関わりが非常に深いタイのケースを取り上げた。

 今回は、お隣の国、韓国と中国の実情を見てみよう。
 アジアの中でも日本以上に少子高齢化が加速・大問題化しており、とりわけ韓国はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で2002年 (1.17人)から13年間、出生率最下位という汚名記録を更新中だ。

 昨年の合計特殊出生率は「1.21人」で、日本の1.43をはるかに下回り、前年よりは0.02人増加したものの、「国連人口基金(UNFPA)における世界人口現況報告書」によると、
 韓国の2010~2015年の推計年間平均出生率は1.3人で、世界で3番目に低かった。

 さらに、高齢化率は11.8%(2012年)で、日本の約24%に比べるとまだ低いが、高齢化社会(人口比率で65歳以上が7%以上)から高齢社会(同14%以上)へ移行する年数(倍化年数)スピードが異常に速い。

■世界屈指の超高齢社会が目前

 2025年には20%、2037 年には30%、さらに2050年には約37%までに急上昇すると予測されており、
 日本を超える世界屈指の「超少子高齢社会」になることはほぼ確実だ。

 OECDによると、2050年までに韓国の65歳以上の高齢者人口は、15歳から64歳の人口を4分の3上回ると分析。
 さらには、高齢者の約半数が国民平均所得の半分以下で生活を強いられているというから、タイと同様、「貧困高齢者」の問題も深刻だ。

 仏教社会のタイと同じく、儒教社会の韓国でも、親の世話をするのが子供の務めとされる伝統が崩壊し、高齢者の自殺も同じく急増しているという。
 英オックスフォード大学のデビッド・コールマン教授が
 「韓国は世界で初めて、少子化で消滅する国となるだろう」
と発表しただけでなく、韓国の国会立法調査処も2014年、少子化が改善しない場合
 「2750年に、韓国は消滅する」
という見解を明らかにしている。

 こうした状況に韓国政府は「低出産高齢社会基本法」(2005年)を制定し、日本の少子化対策を参考に、低所得層への保育費補助、育休制度活性化、短時間勤務制度導入、保育所拡充などといった少子化対策を試みた。
 しかし、これと言った効果がなく、最近は独自に新手の政策も実施し始めた。

★.1つは、無償保育の実施だ。
 2013年から子育て費用削減を目的に、0歳から5歳児を対象に保育施設を無料化した。
 当初は低所得層対象だったが、日本と同様、子供の数が少ないのは中所得者層で効果を疑問視する声が上がり、すべての子供を無償保育の対象に広げた。
 その結果、働くお母さんが増え、女性の労働力拡大にはつながったものの、需要に供給が追いつかないうえに保育の質の悪さが大きな社会問題になっている。

★.さらに韓国政府が支援を拡大したのが国際結婚夫婦への補助策。
 「多文化家庭支援法」を制定し、外国人配偶者には無料で韓国語教育に就業支援などを、また子供には、放課後の特別教育プログラムや相談事業などを実施するほか、韓国企業も奨学金支給、バイリンガル教育なども並行して行っている。

■外国からお嫁さんいらっしゃい

これらは主に「嫁不足」の対策と言える。
 韓国人と結婚した、中国、フィリピン、ベトナム出身の配偶者やその間に生まれた子供たちを国の公的支援や企業の社会貢献支援対象として進めている。
 さらには、高度な技能を持つ外国人や韓国系外国人を対象に、
 二重国籍を認める国籍法の改正も実施。
 また生産年齢人口減少に伴い、朝鮮族などの韓国系外国人の就業を優遇する訪問就業制も導入した。
 サービス業、製造業、建設業など労働人口が減少している業種に、外国人労働者や朝鮮族など韓国系外国人が就労しやすくなった。

 しかし、こうした政策も、あまりにも猛スピードで進む少子高齢化を食い止めるほどの効果は期待できない。
 出生率の低下の主な原因は、
 経済発展に伴う女性の高学歴化と社会進出で、晩婚化と未婚化が進んでいるためだ。

 2014年の初婚年齢平均は、男性が32歳、女性が29歳で、日本以上のペースで晩婚化が進み始めている。
 さらに、「結婚しない男女」も急増中だ。
 急速な社会の変化で、結婚に対する価値観も大きく変わった結果、特に家事や育児などの負担で仕事と家庭の両立ができなくなるだろう、と結婚する前から「非婚」を決めている女性が急増している。

 また、経済低迷に伴う就職難も非婚化に拍車をかけている。
 学生の間では、卒業後も就職試験の勉強を続け、就活する若者が増え続けている。

 加えて儒教社会の韓国では、結婚は「家同士の結婚」とも解釈され、結婚式から、新居、親族との関係など、結婚することは精神的だけでなく、経済的にも負担の大きい人生の選択と捉えられている。

 そんな社会構造事情を憂いで、
 「恋愛」「結婚」「子供を持つ」、この3つを放棄した20代の若者を揶揄して「三抛(放棄)世代
という言葉が最近流行したことがある。
 しかし、その流行語もすでに過去の遺物になりつつあるという。

 放棄するものがこの3つだけでは足りず、これに
 家を持つことを諦め、人間関係も諦めるという「5抛世代」へ“進化”しているというのである。

■夢や希望まで捨てた韓国の若者

 さらには最近は希望や夢までギブアップする「7抛世代」が主流とも言われようになった。
 人生のすべてを諦めることを強いられた「n抛(エヌポ)世代」
という言葉まで流行しているというから、韓国の少子高齢化の深刻度は相当なものと言えるだろう。

 100年前の儒教と家長制度の時代では、韓国人女性の家庭人としての使命は、子孫繁栄を実現させるため、多くの「男の子」を生むことだった。
 しかし、韓国女性がいま求めているのは、男性と同等の雇用機会や価値観であり、政策でそれを押しとどめようとしても不可能に近い。
 韓国の少子高齢化対策はお手上げ状況と言っていい
かもしれない。

 次は世界最大の人口を誇る中国を見てみよう。

 世界経済を牽引してきた中国が人口ボーナス期から人口オーナス期に入ったことは、昨今の経済不振にも色濃く反映されている。
 先頃廃止を決めたものの「一人っ子政策」を長年続けてきた影響で、2015年を境に生産年齢人口(中国の場合、14歳から59歳)は減少し始め、オーナス期に入ったと見込まれる。

 これまで中国の高成長を後押ししたのは、まぎれもなく人口ボーナスだった。
 しかし、同時に高齢化が急速に進行しているため、65歳以上の高齢者はすでに全体の約9%(中国当局)に達している。
 この数字はその他の発展途上国の人口構造と比較すると分かりやすい。
 中国を除くその他の発展途上国では、65歳以上の人口比率は約5%。
 中国はこれらの国々に比べ約2倍の高齢化率となっているわけだ。
 しかも、この比率は2035年には約20%にまで膨らむとされる。
 中国の少子高齢化も韓国に負けず劣らず猛スピードなのである。

 そして中国の高齢化問題は、韓国と違って「単なる高齢化」ではすまない。

■豊かになる前に高齢化

 先進国の仲間入りを果たしている韓国と異なり、中国の場合には国民が豊かになる前に高齢化社会に突入する危険性が極めて高いのだ。
 中国ではこれを「未富先老」と呼んでいる。

 中国の計画生育委員会は合計特殊出生率を長らく1.8と発表してきたが、2010年の国勢調査では、1.18にまで低下していることが判明している。
 一人っ子政策を放棄してもこの数字が簡単には改善しないとみられ、中国の出生率は極端に低迷を続けることは間違いない。
 それはつまり、
 生産年齢人口から見た経済発展の可能性が他の発展途上国より低い
ことを意味する。
 日本企業などは賃金が高くなった中国から東南アジアやその他の発展途上国に生産を移転する動きが加速しているが、人口動態から見てもその動向は強まると考えられる。
 「未富先老」は中国に突きつけられた大問題なのだ。

 高齢化は国内貯蓄の低迷を招き潜在成長率を引き下げる。
 さらには年金や医療費負担の増加という日本が直面している問題が、経済が十分発展する前に訪れる。
 国連などでの調べでは、
 2020年代の潜在成長率は、シンガポールとタイが約2%、
 中国でも約4%にまで低迷し、その後は1%までに減少する
との見方もある。
 2020年まであと5年しかない。
 経済成長の止まった老大国の姿はもう目の前にある。

 少子化対策ではフランスやスウェーデンが成功事例とされるが、その背景には事実婚を認め、婚外子の手当てを厚くすることを認めた社会の意識改革がある。

 親子の同居率が高く、家系を重視する「直系家族系」のアジアにその価値観を組み込むのは簡単ではない。
 その場合、果たしてアジア的で効果的な政策が打ち出せるのか、中国をはじめとするアジアの国々に実は時間の猶予はない。

 有効な対策を打てずに出生率が1.1から1.3前後という水準を続ければ、国家が消滅する危機に直面しかねないのだ。



レコードチャイナ 配信日時:2015年11月26日(木) 14時57分
http://www.recordchina.co.jp/a123897.html

中国の独居者5800万人超、全世帯数の14%占める―中国紙

 2015年11月24日、中国の独居世帯の数は近年大幅に増加しており、独居世帯が全国に占める割合は1990年の6%から2010年には14%に上昇した。
 国家統計年鑑によると、2013年には同割合が14.6%に達している。
 独居世帯の割合が全国で最も高いのは上海市で、4世帯に1世帯が一人暮らしだという。
 西安晩報が伝えた。

▼家族構造の変化で独居老人が増加

 第6回国勢調査によると、2010年、高齢者が「単独」・「夫婦のみ」で暮らす割合は高齢者世帯全体の約半数に達し、高齢者の7割が子どもと同居していた20年前とは大きく変化した。
 遼寧省、山東省、江蘇省、広東省、上海、浙江省の6つの東部都市では、75歳以上の独居老人が特に多かった。

 人口の移動、都市を跨ぐ就業、多世代家族の減少、都市化の発展などが、中国で独居者の数が急増する原因となっている。
 こうした問題に直面し、多くの地方が独居老人問題の解決に積極的に取り組み始めている。

 河南省の中でも高齢化が進んだ地域である開封では、現地の民政部門が「在宅介護サービスセンター」プロジェクトの試行を実施、コミュニティ内の独居老人にサービスを提供している。
 同センターにはラウンジ、絵画室、麻雀ルーム、演劇ルームなどが設けられ、さらに当番の医師が勤務している。

 このほか、多くのコミュニティが独居老人向けの様々なサービスを提供している。
 油坊コミュニティの「ドアノック」サービスは、コミュニティの職員が毎日定時に独居老人の家のドアをたたき、返事があるかどうかを確認するというもので、興味深い取り組みと言える。
 同コミュニティはこのほか、独居老人ボランティアサービスチームを結成し、高齢者の様々なニーズに応えている。

▼独身の若者の一人暮らしも増加

 中国の第4次独身ブームの到来に伴い、独身の若者世代の独居者も日に日に増加している。
 中国では現在5800万人が一人暮らしを送っており、独居世帯は全世帯数の14%を占め、この割合はますます上昇している。

 調査によると、中国の30歳以下の人口のうち、教育水準と経済力が高い人ほど、一人暮らしを選択する可能性が高い。
 また、比較的裕福な地域で独居者(配偶者が他界した場合を除く)が多くなっており、北京では5分の1の世帯が一人暮らしとなっている。
 上海・広州などの大都市では平均初婚年齢が上昇、離婚率も高まっており、独居者の増加につながっている。

 20歳から39歳の若い独居世帯は2000万世帯に近づいている。
 中高齢者の一人暮らしは、女性が男性を上回るのに対し、
 20歳から64歳の一人暮らしは、男性が女性を大きく上回る。
 中高齢者の場合、配偶者の他界や、子供の独立が一人暮らしの原因となっているが、青壮年の一人暮らしは独身のためであることが多い。

 都市の一人暮らしが増える背景には、初婚年齢の上昇がある。
 結婚を先延ばしにする若者が多く、中には結婚せずに一人暮らしを選ぶ人もいる。
 安徽省阜陽市の董医師は、
 「周りには一人暮らしの人がたくさんいる。
 物質的な条件のため一人暮らしを余儀なくされている人もいるが、結婚生活を望まない人もいる」
と語る。

(提供/人民網日本語版・翻訳/SN・編集/武藤)






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2015年11月28日土曜日

英国大異変(2):中国マネーにひざまずく落日の大英帝国、英国は「もはや大国ではない」

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 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2015年11月28日(Sat)  加藤隆俊 (国際金融情報センター理事長、元IMF副専務理事)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5638

中国マネー取り込みに躍起になる
「金融立国」英国の算段
中国マネーにひざまずく落日の大英帝国(3)

 つい数年前まで英国のキャメロン首相は、中国に厳しい態度を取っていた。

 2012年には、チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ14世と面会し、英中の関係はこじれた。
 今の英国の態度は、そのときのマイナスを取り戻そうと他国以上に必死になっているように見える。

 その結果が、今回の習近平国家主席訪英時の王室まで巻き込んだ一連の歓待であり、先進国でもっとも早かった中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)への参加表明であり、人民元建ての英国債発行である。
 加えて今回の訪英時に、英国内で人民元建ての中国国債を発行することまで決まった。
 こちらも先進国で初めての取り組みである。

 また、英国は人民元のSDR(IMFが創設した国際準備資産)構成通貨入りも支持、金融面以外においても中国製原子炉の導入を決定するなど、何から何まで支持・歓迎といった状況で、彼らが言うところの「英中黄金時代の幕開け」を感じさせる。

■譲れない「世界ナンバーワン」の座

 英国にとってロンドンの金融市場、いわゆる「シティ」は世界ナンバーワンの金融センターだという自負があり、事実その通りである。
 だからこそ、市場を支える投資家、アナリスト、弁護士といった人材やインフラがロンドンに集積している。
 シティがナンバーワン金融センターの座を保ち続けるには、何としても人民元関連のビジネスを取り込む必要があった。

 また、英国の足元の経済状況は悪くないが、政権を握る保守党は緊縮財政を強引なまでに進めており、中国マネーは「喉から手が出るほど欲しい」状況にある。

 今や世界中が中国マネーを欲している。
 アジアやアフリカでは既に多くの国が中国マネー取り込みに躍起になっているが、英国の一連の中国に対する対応は、その流れがいよいよ先進国にまで本格的に押し寄せた、ということを感じさせる。
 やや乱暴な言い方をすれば、
 中国マネーに本格的になびいていないのは、日米だけ
ともいえる。

 10月末には、訪中したドイツのメルケル首相が李克強首相との間で、ドイツに人民元建て金融商品を扱う国際取引所を開設することで正式合意したが、英国のみならず、ドイツもフランスもルクセンブルクも、中国マネー取り込みに躍起になっている。

 中国経済の減速は、日本でも報道されている通りだが、それでもなお、世界経済において中国の存在感は圧倒的である。
 IMF(国際通貨基金)が10月に発表したレポートによると、中国の15年の経済成長率は6.8%、16年は6.3%と一時期よりは落ち込んでいるものの、7%台のインドと並び突出した成長率を誇る。

 14年の1人当たりGDPはインドの1608ドルに比べ、中国は7572ドルあることから、やはり中国の存在感は抜きん出ていることがわかる。
 鉄道輸送量や電力消費量などの投資関係の数値は弱まっているが、個人消費関連の数値は底堅く、不動産関連の数値も底打ちの兆しがみえる。

 なお、15年の日本の成長率は0.6%で、円安ということもあるが、GDPの規模では既に中国と倍以上の開きがある。
 マラソンでいえば、抜かれただけでなく、その後も圧倒的な差をつけられている状況にある。

 人民元の国際化を進めたい中国にとってみても英国の「利用価値」は大きい。
 本稿執筆時点ではまだ確定していないが、秒読み段階であり、英国が支持しているSDR構成通貨入りが決定すると、人民元を外貨準備資産として保有する国が増える。
 すると、人民元のオフショア取引が盛んになり、人民元建ての債券も増える。

 いわゆる「基軸通貨」ドルの地位を脅かす存在になることは容易ではないが、国際化に伴う人民元の重要性は高まっていくだろう。

 ただし、人民元が国際通貨となるには制約がありすぎる。
 金利は完全には自由化されていない、為替ヘッジにも制約が課されている、資金の海外移転には種々の制約があるなど「使い勝手の悪さ」は多岐にわたる。
 中国国内の改革派はSDR入りをきっかけに、自由化を進めたい考えなので、今後こうした「制約」が徐々に取り払われ、使いやすい国際通貨になっていくことは間違いないだろう。

■英国が背負う金融立国の宿命

 英国の中国に対する「ご執心」ぶりに世間は驚いているが、歴史を紐解くと、実は英国は似たようなことばかりしていることがわかる。
 かつてはオイルマネーを取り込むために産油国をもてなし、ソ連崩壊後は旧ソ連圏の国のマネー取り込みを図り、我が日本もバブルのときには大層な歓待を受けた。
 そうした関心が今は中国に向かっているだけともいえる。

 もっとも、こうした活動あってこその現在のシティのポジションであり、世界屈指の金融センターに成長したシンガポールも同様の戦略をとっている。
 「金融立国になる」というのは、資金力のある国になびくということと同義である。
 かつて円も国際化を目指していたが、日本にはこうした観点・活動が欠けていた。

 外交面・安全保障面よりも、経済面での実利を優先し、中国の人権問題について言及しない英国の姿勢をみると、「もはや大国ではない」という意見にも納得がいく。



現代ビジネス  2015年10月30日(金) 川口マーン惠美
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46108

太っ腹中国にお金のためにひざまずいたイギリスの「原発プロジェクト」がスリル満点すぎる!
英中黄金時代の到来

■ドイツメディアの豹変ぶりがもの凄い!

  「専門家は警告している。
 よりによって中国、あの常にハッカー攻撃とサイバースパイの嫌疑がかけられている国が、ヨーロッパでこれほど繊細で重要なハイテクノロジーのインフラプロジェクトに参加する?」

 「もちろん目下のところ、イギリスと中国の関係は良好だ。
 しかし、今日の同盟者は必ずしも明日の同盟者であるとは限らない」(サイバー安全保障の専門家)

 「中国が英国での原発に投資することによって得る繊細な情報は、ごく一部でしかない。
 それでも北京のハッカーたちは、将来、何かが起こった時に、攻撃のために使用可能なインサイダー情報を手にする可能性はある」

 産經新聞の記事ではない。
 ドイツのZDF(第二放送)のオンライン・ニュースの記事だ。
 これを読んだ私は心底ビックリ!

 そもそも、これまでメルケル首相に「アジアで一番重要な国」と言わしめ、毎年、首相が大勢の財界のボスを伴って北京を訪問し、たくさんの自動車を売り、エアバスを売り、ヨーロッパではとっくにお払い箱になったハイテク超高速鉄道トランスラピッドも売って、
★.ドイツが蜜月を謳歌していた相手は中国だった。

 そして、その関係を自慢げに報道し、ついでに、中国と仲良くできない日本を見下していた筆頭メディアが、何を隠そう、このZDFだったではないか。

 10月9日付のコラムで、ドイツの中国報道はこれから変わっていくだろうという予測を書いたが、これほど早く、しかもここまで手のひらを返したように激変するとは思わなかった(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45745)。

 今日の同盟者は明日の同盟者であるとは限らない??? 
 これはドイツ自身のこととも思うが、しかし、
 このまじめくさった豹変ぶりには感服した。
 ドイツメディアは凄い!

■中国と英国の「歴史的合意」が実現

 さて、前述の原発プロジェクトだが、10月21日、中国とイギリスの首脳は、イギリスにおける原発建設において、
 建設費180億ポンド(約3.3兆円)のうちの3分の1を中国が出資する
ことで合意した。
 建設と運用は中国とフランスが共同で行う。

 イギリスは、もう20年以上も原発を作っておらず、技術の枯渇と資金不足という二重苦に苛まれており、原発建設を資金調達も含めて外国に丸投げしたようだ。
★.原発が完成した暁には、フランスと中国から電気を買う。
★.1基目の建設地は、イングランド南西部のヒンクリーポイントというところだ。

 今回のイギリスと中国の商談はこれだけでなく、エネルギー大手のBP社との契約120億ポンド、ロールスロイスとの14億ポンド、そして、豪華客船会社カーニバルとの26億ポンドなど盛りだくさん。

 原発建設もこのヒンクリーポイントに加えて、東部のサイズウェル、南東部のブラッドウェルが続く。
 しかも、
★.ブラッドウェルにおいては、中国の国産ブランド「華龍1号(加圧水型軽水炉)」が採用され、出資率も入れ替わって、フランスが3分の1、中国が3分の2となる
という。

★.その「華龍1号」は、先進国への輸出はもちろん初めて。
 それどころか、
 実はまだ中国でも運転が始まっていな
いというから、
 スリル満点だ。

 しかし、キャメロン首相いわく、今回の契約は「歴史的合意」。
 それだけに、習近平国家主席のもてなされ方も凄かった。
 エリザベス女王とともに王宮の馬車でロンドンの街を駆ったり、バッキンガム宮殿に泊まったり、さらにそこで、ハイソサエティー170名を集めて大晩餐会が催されたり・・・。

 ドイツでももちろん、このニュースは大きく報道されたが、一番の話題は、晩餐会で真っ赤なイブニングドレスをまとって習近平主席の隣に座ったキャサリン妃のティアラだった。

 ダイヤモンドがたくさん付いたこのティアラは、エリザベス女王から譲られたものだとか、王女がティアラを付けたのは3度目だとか、大衆紙だけでなく、主要新聞にもそんな記事が載った。

 ドイツ人は、第一次世界大戦の終結時、戦に負けた腹いせに自らのカイザーを追放してしまったため、無い物ねだりなのか、王室の話が大好きなのだ。

■切羽詰まったイギリス、渡りに船の金満中国

 イギリスのエネルギー政策は、どうしようもないほど迷走している。
 太陽光と風力は、買取りのおかげで増えに増えた。
 しかもイギリス政府は、2020年までに再エネ電気の割合を、さらに全電気供給量の3分の1まで引き上げる計画だ。

 これでは当然、火力は出番が減り、儲けが出せない。
 特に、石炭火力は多くが老朽化しており、そのうえ、温暖化防止の見地からも将来性はない。
 そこで現在、石炭火力がどんどん撤退しているのだが、徐々に撤退ならよいが、今年だけで9基も閉鎖されてしまうため、困ったことになっている。

 再エネは容量がいくらたくさんあっても、風のない日、太陽の照らない日は発電できない。
 だから、去年の冬は10~15%あった余剰電力が、今年は2%以下になりそうで、その危うさは今年の夏の関西電力に匹敵する。
 ロンドンで停電など起きれば、産業への打撃は計り知れない。

 そこでイギリス政府は、至急、クリーンな原発、あるいは天然ガスの発電所を建てる必要に迫られているのだが、再エネになされている補助が市場を破壊してしまっている現在、このような不利な条件でガス、あるいは原発の事業に参入しようという投資家はなかなか現れない。

 イギリス政府としては、「国庫は空っぽだし、この際、投資してくれるなら誰でも良い」というほどまでに切羽詰まっていた。
 そこで折しも、お金持ち中国の出番となったわけだ。

 つまり今回のプロジェクトはいわば、
★.お金がなく、技術がなく、そのうち電気も足りなくなるはずのイギリスと、
★.経営状態が悪くて原発産業が停滞しているが、ぜひリベンジを試みたいものの、やはり資金繰りに自信がないフランス、
★.そして、お金があり、しかも原発技術大国になりたい中国
の三者の利害が見事に一致した、世紀のビッグビジネスなのである。

 ヒンクリーポイントの新原発の完成は2025年の予定だ。

■英中黄金時代の到来

 ただ、イギリス国内では、お金のために中国に跪いたとして赤面している人たちも少なくないらしい。
 そういえば、晴れ舞台でのキャメロン首相の笑顔が、心なしか不自然に見えたのは私のやっかみか?

 ドイツの報道では、
 中国が本当に加圧水型軽水炉を作れるかどうかは疑問だと書いてあったが、ひょっとするとこれもドイツのやっかみ
かもしれない。

 ちなみに、ドイツ最大の電力大手RWEは、海外の原子力事業からも一切手を引いてしまった。
 これからは再エネ事業に専念するのだそうだが、せっかくの原発技術が埋もれてしまうのは、ちょっと惜しい気がする。

 一方、習近平主席は大満足の体で、英中関係がますます良好かつ堅固になったと得意満面で強調していた。
 過去のことは水に流したのか、イギリスにアヘン戦争の謝罪を要求したという話も聞かない。

 今や英中黄金時代の到来! 
 太っ腹の中国である。



ニュースソクラ 11月5日(木)10時10分配信 棚橋 啓 (ジャーナリスト)

中国はババをつかまされたのか?

■欧州企業が逃げた3つの「くず案件」

 10月の習近平国家主席の訪問で中国製原発の英国での採用が正式に決まった。
 技術力もモラルも怪しげな中国企業が関与するプロジェクトの先行きを危ぶむ声は高まり、原発建設予定地周辺では住民の反対運動が早くも盛り上がっている。
 おまけに「2030年までに8基の新炉建設」という英政府の計画は「撤退」の歴史で彩られており、
 エネルギー業界では中国企業が「ババをつかまされた」との見方も広がっている。

 中国企業の関与が決まった英国の原発プロジェクトは3つ

1].最初は南西部サマセット州の「ヒンクリー・ポイント原発C計画」。
 出力170万kw級の仏アレバ製EPR(欧州加圧水型原子炉)2基を2025年稼働予定で建設する。
 総建設費は245億ポンド(約4兆5600億円)で、第1期分の投資額として180億ポンド(約3兆3500億円)を見込んでおり、このうち33.5%に相当する60億ドル(約1兆1200億円)を中国広核集団(CGN)が出資する。

2].2つめは東部サフォーク州の「サイズウェルC原発計画」。
 やはり出力170万kw級のEPR2基を建設する。
 当初1号機は2020年、2号機は22年の運転開始予定だったが、現在は建設コストなどを含め「白紙」で、関係者の間では「スケジュールは7~8年遅れる見通し」といわれている。
 このサイズウェルにCGNが20%出資することが今回決まった。

 そして、
3].3つめが南東部エセックス州の「ブラッドウェル原発B計画」。
 ここでは「華龍1号(HPR1000)」と呼ばれる中国製の最新型原子炉の採用が決まった。
 「華龍1号」は旧仏フラマトム(現アレバNP)の技術をベースにCGNと中国核工業集団(CNNC)が共同開発した中小型PWR(加圧水型原子炉)で出力は100万kw級。
 今年4月にパキスタンでの5基建設を決めるなど、中国政府は原発輸出の主力製品とする考え。
 1基あたりの建設費は30億ドル(約3600億円)と最低でも50億ドル(約6000億円)とされるEPRなど欧米製新型炉より低コストに抑えている。
 この「華龍1号」を納めるブラッドウェル原発B計画ではCGNが66.5%出資する。

 10月21日、習近平とともに3つの原発プロジェクトに対する中国の巨額の投資計画を発表したキャメロン英首相は「歴史的な契約だ」と自画自賛したが、それも無理はない。
★.3つとも自国はじめ欧州企業がこぞって逃げ出した「ジャンク(くず)・プロジェクト」
だったからだ。



 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2015年12月01日(Tue)  山本隆三 (常葉大学経営学部教授)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5640?page=1

中国原発の技術とカネにすがる
英国のお寒いエネルギー事情
中国マネーにひざまずく落日の大英帝国(4)

 10月下旬の習近平主席の訪英時、英国政府は原子力発電所の新設に中国資本の受け入れを決め、さらに中国製の原発設備を将来採用する計画を明らかにした。
 翌日の「ガーディアン紙」は、基幹技術である原子力分野に中国を受け入れたことを、
 「中国との原子力取引は、今まででもっとも馬鹿げた合意の一つ」
との記事を掲げ強く非難した。

 一方、中国が参加するヒンクリーポイントC原発において2万5000人の雇用が創出されるとの英国政府発表を歓迎するビジネス界の声もある。
 また、中国の参加により、
 「原子力技術が流出する」、
あるいは
 「いざという時に発電所が停止する恐れがある」
との指摘に対しては、
 「巨額の投資を行った中国が、投資額を捨てる行動を取ることはない」
との反論がある。

 習近平主席と英キャメロン首相との会談で中国との原発取引が発表されたため注目されているが、英国原発への中国の参加は既定路線であり、何も目新しい話ではない。
 ヒンクリーポイントに中国企業が参加することは、2013年10月に英国政府により発表されている。
 正式発表前には、英国地元紙が、「ヒンクリーポイントの設備は中国製になる」と報道し、地元で
 「原発は歓迎だが中国製は困る」
と反対運動が起こった。

 その時期に、たまたま英国政府関係者と面談する機会があり、
 「中国製設備を英国政府は受け入れるのか」
と尋ねたことがある。
 数秒間沈黙があった後、中国製設備が導入されるかどうかの是非を明らかにせず、
 「資金を提供してくれるのであれば、中国でも、どの国の設備でもいい」
と答えてくれた。
 首脳会談では、中国製原子炉華龍1号機がブラッドウエルに建設される予定と発表されたが、今年になり、中国広核集団は、
 「ブラッドウエルでの建設を前提に115万kWの華龍1号の包括設計審査(型式認定)を16年に英国政府に申請する」
と発表している。
 既定路線に沿い英中両国政府は粛々と協力関係を具体化しているだけだが、英国政府が原発建設の資金と技術を中国に依存するには当然理由がある。

■世界を牽引した英国原発
消えたのは何故か

 福島第一原発1号機の事故の後、英国政府関係者から
 「福島事故の際に日本から退避する必要があるか、ロンドンの施設で解析した。
 仮に1号機から4号機まで炉心が全て溶融しても日本から退避する必要はないとの結果だった」
と聞いた。
 話は、
 「遠く離れたロンドンですら解析ができるのに、日本はドタバタしていた。
 危機管理能力がない内閣だったのが、日本の不幸だった」
と続き、
 「世界で最初に商業原子炉を完成させた英国は、この程度の解析はできる」
と自慢で終わった。
 しかし、英国の原子力業界の実態は、自国の原発建設さえも自力でできないほどに衰退している。

 英国では1995年運転開始のサイズウエルBを最後に原発の新設が止まるが、その遠因は90年に行われた電力市場の自由化だった。 
 電力供給を行っていた中央電力庁は分割され、原子力部門は96年に民営化される。
 自由化した市場では将来の電気料金は誰も予測できない。
 巨額な投資を必要とし、減価償却のため40年以上に亘り常に運転を行う必要がある原発の建設には収益面のリスクがあると投資家は考え、自由化市場での原発の建設はなくなっていった。


●民営化で激減した英国の原子力研究開発予算

 民営化後、新会社は石炭火力の買収、米国への進出など積極経営を進めるが、英政府保有の核燃料会社BNFLに支払う米国の6倍もする再処理費用額と、低炭素電源にもかかわらず課せられた気候変動税の負担がやがて重荷になってくる。
 しかも、北海からの安価な天然ガスを燃料とする火力発電により卸電力価格も下落し、新会社は青息吐息になる。
 財務的に行き詰まった新会社を買ったのは、フランス政府が84.5%の株式を保有する仏電力公社(EDF)だった。
 英国の原発は2009年にEDF保有となる。

 自国設計の原発から加圧水型軽水炉型の導入に切り替えた英国BNFLは、99年に技術を持つウエスティングハウスを買収する。
 しかし、北海の石油・ガス生産量が輸出をするほどに増え、02年に政府は原発の新設見送りを決める。
 ウエスティングハウスは東芝に売却され、英国は原子力技術を失った。

 英国政府は、06年になり地球温暖化対策、エネルギー安全保障上、原発の新設が必要との方針を打ち出す。
 第1号案件となったヒンクリーポイントでの新設のために、英政府とEDFが合意したのが、1MW時当たり92.5(1kW時18円)の固定価格での発電した電気の買い取りだった。

 発電した電気を買ってもらってもリスクは残る。
 工事の遅れと工費の増大だ。
 フィンランドで出力172万kWのオルキルオト原発工事を手掛けたアレバを見ればリスクが分かる。
 03年に32億ユーロ(4300億円)の予算で09年の運転開始を目指した工事は遅れ、運開予定が18年に後ろ倒しとなり、工費も85億ユーロ(1兆1500億円)に膨らんだ。
 アレバはEDFの支援を受け、三菱重工業にも資本参加を要請する事態に陥った。

 欧州のエネルギー政策の研究者は、
 「複雑で大規模工事の原発新設には、何よりも継続した工事の経験が必要」
と指摘する。
 福島第一原発の事故以降、世界では原発新設の動きが一時中断した。
 そんな中で短期間の中断後すぐに工事を再開した中国だけが、継続的な工事実績を着実に積んでいる。

 中国で稼働中の原発は29基、建設中は22基ある。
 16年に運開予定の世界の原発16基のうち8基は中国で建設され、17年運開予定では15基中8基だ。
 いま、世界の原発工事の半分は中国が行っている。
 工事を予定通り進められるのは、今や経験を積んでいる中国なのだ。
 20年には発電設備量は5000万kWを超え、日本を抜き、米国、フランスに次ぐ原発保有国になり、30年には設備量は1億5000万kWと世界一になると予想されている。

 中国の原発設備は、東芝が87%の株式を保有するウエスティングハウスとアレバの技術が基になっている。
 10年に国際原子力機関が15カ国のメンバーからなる査察チームを中国に送り、中国の原子力安全のシステムの効果と将来の安全性に、問題なしとお墨付きを与えている。


●世界で建設中の原子力発電所(2015年11月現在)

■中国1強時代の到来か、日本の原発輸出にも脅威

 アレバの原発の建設コストはkW当たり6000米ドル(72万円)と言われている。
 100万kWの原発だと、7200億円だ。
 一方、ウエスティングハウスの原発を改良した中国CAP1400のコストはkW当たり3000ドル、発電コストは1kW時当たり7米セント(8.5円)と中国政府関係者は述べている。
 工期が予定通り、工費もアレバの半分。
 安全性も問題なしとなれば、英国政府が中国製を受け入れるのも無理はない。
 市場自由化の結果、発電設備の建設が進まない英国では、中国製でなければ、電力の安定供給が実現しないのかもしれない。

 英国は自国の電力安定供給強化に、工期と工費を確約できる中国を利用しているようにも見えるが、中国も英国をショーケースにした輸出拡大を考えている。
 中国はパキスタンには原発輸出実績があり、アルゼンチンなどでの建設も合意しているが、さらに中国製を検討する国も出てくると期待している。
 「鉄道車両」と「原発設備」輸出に力を入れる中国政府は、今回の英国との合意を梃子に輸出に一層力を入れる筈だ。

 日本では、原発の再稼働は遅々として進まず、新設はいつになるのか全く見えない。
 政府は30年に電源の20%から22%を原子力で賄うとしているが、その道筋は不透明だ。
 原発の工事を長々と中断すれば、いざ建て替えや新設工事を再開することになっても、アレバのように工費と工期で問題を起こすようになる可能性も高い。
 そうならないようにするには、継続的な工事で着実に力を付けるしかない。

 停電が発生する可能性を避けるため中国企業に工事を依頼するしかないとなれば、英国と同じだ。
 原子力技術が衰退した英国を他山の石として、中国企業との競争をどう勝ち抜くのか、いまから考えなければ、気がつけば、海外市場どころか国内市場も中国に席巻されていることになりかねない。



サーチナニュース 2015-12-04 15:04
http://biz.searchina.net/id/1596159?page=1

政治主導でインフラを売り込む中国
英国の原発事業で日本に焦り=中国報道

 高速鉄道市場で激しく火花を散らしている中国と日本の受注競争は「英国の原子炉」にまで戦線が拡大している。
  中国メディアの参考消息はこのほど英メディアの報道を引用し、日中の英国の原子炉建設をめぐる一連の競争について紹介する記事を掲載した。

 英国内原子炉建設の認可を得るために、日本企業はどれほどの努力を払っているのだろうか。
 例えば日立は2012年、英国の原発事業会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」を買収した。

 当時、日本では日立が「賭けに出た」とする報道も見られたが、これはどれほどの利益がでるか見通しが立ちづらいなかでの投資だったからだ。
 当時は東日本大震災の影響により、日本国内で新規原発建設のめどが立たなかったため、日立は英国に原発建設の希望を見出したのだ。

 現在、ホライズン・ニュークリア・パワーは改良型沸騰水型軽水炉を建設する計画を進めており、同プロジェクトに対する英国の原子炉包括設計審査はすでに第3段階をクリアし、最終段階に進んでいる。

 一方、中国も英国での原子炉建設計画を「政治主導」の形で進めており、英国での原子炉建設を世界市場に参入するための踏み台と見ている。
 中国はすでに英国と中国製原子炉「華竜1号」を輸出することで合意しており、記事は「日本は政治主導の中国に英国市場を奪われないか懸念している」と論じた。

 どのような製品についても言えることだが、結局のところ製品を選ぶのはユーザーであり、ユーザーは自身にどのような利益があるかという点に立脚して製品を選ぶ。
 ユーザーである英国が日本と中国のどちらを選んでいくかは原発の安全性や性能だけではなく、英国の経済的メリットや政治的要素も大きく関係してくる。
 この点において「政治主導」で物事を進める中国は、日本企業にとって技術だけでは勝負できない手強い競争相手となるだろう。



 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2015年12月25日(Fri)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5763

国際社会からの退場思い留まった英国
同盟国の信頼回復なるか

 フィナンシャル・タイムズ紙が、11月23日に公表されたキャメロン首相の2回目の「戦略防衛・安全保障レヴュー(SDSR)」について社説を書き、概ねこれを評価しています。

■伝統的保守党の立場に回帰

 すなわち、今回の「レヴュー」は国防費の実質8%の削減を打ち出した2010年の「レヴュー」とは大きく異なり、ジハード主義者のテロや予測不能のロシアなど多数の脅威に当面して、キャメロンは伝統的な保守党の立場に回帰した。
 パリのテロ事件から間もない時期にあって、キャメロンのこれまでよりも力強いアプローチは世間のムードとも一致するものである。

 軍を無視するかのような5年の後、是正が必要とされていた。
 賢明にもキャメロンは国家の脅威に対する通常型の防衛とテロに対抗する手段のいずれかを選ぶことは許されず、両方が必要と結論付けた。
 今後10年間の120億ポンドの予算増にはロシアの潜水艦の脅威に対抗するための9機の海上哨戒機が含まれると同時に、ISISなどへの対処のためにテロ対策費の30%増が盛り込まれている。

 「レヴュー」は、思慮を欠き拙速であった5年前の予算削減の結果生じたギャップを幾らか埋めるものである。
 例えば、新しい2隻の空母に搭載するF-35 戦闘機の調達の加速化によって空母による攻撃能力を回復する。
 陸軍の海外遠征部隊は2025年までに3万から5万に増強される。

 これらはいずれも歓迎されるべきことであるが、国防能力の急激な向上を意味しない。
 「レヴュー」は「針路を保て」という類の文書である。
 2010年においても5年間の緊縮の後には国防予算の増加は見込まれていたという意味で殆ど変化はない。
 政府は国防費をNATO基準であるGDPの2%を維持するとしているが、これは大方計算の手法によっており新たな支出によるわけではない。
 また、軍の空洞化という心配を解消するものでもない。
 例えば、新たな空母の運用のため450の新たな水兵の徴用が認められているが、必要な4000からは程遠い。
 陸軍の攻撃部隊の野心的な増強も全体の兵力が8万2500に据え置かれることを考えると不可解である。

 「レヴュー」の重要なテストはそれが英国の同盟国の信頼を回復するか否かにある。
 「レヴュー」は英国は世界の舞台から退場しつつあり、フランスの方が信頼に足るパートナーであるという米国のパーセプションを逆転する端緒となろう。
 しかし、多くは英国がシリアでのISISに対する軍事行動に参加することについて、キャメロンが説得的な議論を行い、議会の支持を取り付けられるか否かにかかっている。
 キャメロンが多様な脅威に対応出来る手段を維持すべきだと主張したことは正しいが、引き籠りと怠慢の5年間による損害を逆転させるには時間を要する、と指摘しています。

出典:‘A partial fix for Britain’s hollowed-out military’(Financial Times, November 23, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/f0f31704-91d7-11e5-bd82-c1fb87bef7af.html#axzz3sUJMmDBp

■世界の舞台からの退場は思い留まるも…

 社説は、「レヴュー」が伝統的な保守党の国防政策に立ち戻ったことを歓迎しています。
 同時に5年間の怠慢が害をなしたと慨嘆していますが、このことに対するキャメロンの弁明と思われるものが「レヴュー」の序言に書かれており、5年間の財政と経済再建の努力の結果、国防に更なる投資をすることが可能になった、としています。

 もう一つ、キャメロンが「レヴュー」の背景として挙げているのは、言うまでもなく、ISISの台頭、中東の不安定化、ウクライナの危機、サイバー攻撃、パンデミック(中国には全く言及がない!)によって世界は5年前よりも危険で不確実になったということです。
 ともかく、空母の2隻体制の維持、トライデント潜水艦4隻の更新、海外遠征部隊の増強など、英国がどうやら世界の舞台から完全に降りることは取り敢えず思い止まったらしいことは歓迎すべきことです。

 「米国が今やフランスの方が頼りになる」と思っているかどうかは分かりませんが、社説が言うように、重要なことは米国がパートナーとして英国に信頼を寄せ得るかどうかです。
 シリアにおけるISISに対する空爆作戦に参加しない決定をするようなことがあれば、米英関係の先行きは相当暗いものにならざるを得ないところで







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『一人っ子政策』廃止へ(3):中国の無戸籍者1300万人、全人口の1%に、戸籍付与へ

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 中国でパスポート所有者は7,000万人。
 全人口の5%になる。
 この富裕層が世界各地で爆買をしている、という。
 その裏で1,300万人、全人口の1%が無戸籍者という。
 このすさまじい乖離を突きつけられると、ブルッとしてしまう。
 この国、何が起こっても不思議ではない。
 いまは共産党の鉄の輪で安定を保っているが、それが永遠につづくわけでもない。
 何処かで破綻するとみていい。
 そのこときは、何でもありになる。

 男女比率のアンバランスによって社会は暴力化する可能性もある。
 そして無戸籍者の数がそれを助長するという可能性もある。
 「一人っ子政策」という人類史上の壮大な実験は何をもたらすのか。
 

ロイター 2015年 11月 26日 14:19 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/11/26/idJP00093300_20151126_00920151126

中国の無戸籍者1300万人、全人口の1%に

 中国政府は今後、無戸籍者問題への対策を強化する見通しだ。
 中国の無戸籍者は現在、全人口の1%に当たる1300万人に上るとされる。
 彼らの権利をどのように保護していくのかが今後の課題となっている。
 政府系メディアが24日付で伝えた。

 無戸籍者のうち約6割は、「一人っ子政策」によるものとみられている。
 従来の制度では、2人目以上の子供が生まれた場合、罰金を支払わなければ戸籍を取得できなかったためだ。
 戸籍がないと、「実名制」が導入されている航空機や高速鉄道に乗ることができないほか、公立幼稚園に入ることもできない。
 無料ワクチンの接種も受けられないという。

 公安部は21日、同問題に関する会議を開き、憲法で保障されている基本的人権をいかに保護し、社会の公正性と安定性をいかに確保していくか、さまざまな角度から議論された。
 また、福建省で2008年以降、2人目以上の子供が生まれた場合でも無条件に戸籍を取得できる制度が採用され、50万人の新戸籍者が誕生したことなども報告された。



レコードチャイナ 配信日時:2015年12月6日(日) 5時30分
http://www.recordchina.co.jp/a124506.html

中国の独身者人口、2億人に迫る
―自ら独身を選ぶ女性が増加―中国メディア

 2015年12月4日、界面網によると、中国国家民政局はこのほど発表した人口統計
 「独身の男女が2億人に迫り、特に自ら独身であることを選ぶ女性が増えている」
と発表した。

 中国の独身者人口は1990年の6%から13年には14.6%に倍増。
 単身世帯は5800万人を超えている。
 中国には「第4次独身ブーム」が到来しているとされるものの
 「社会的観念や制度は変化に追いついていない」
との指摘もある。

 中国では都会に暮らす独身女性が、男性たちから「恋愛を遊びととらえている」と指摘される一方、農村では結婚できない男性の増加が深刻となっている。
 独身の男女は11年の時点ですでに1億8000万人に達していた。

 一方、台湾でも独身者が増加している。
 12年に15歳以上の独身者人口は全体の42%(939万人)に増加。
 日本も同様で、30年には独身者が男性の30%、女性の23%に達するとみられている。



レコードチャイナ 配信日時:2015年12月5日(土) 22時4分
http://www.recordchina.co.jp/a124441.html

一人っ子政策廃止で不妊治療ブーム、
体外受精や性別選択も―中国

 2015年12月2日、米華字メディア・僑報によると、中国で人口抑制策の一人っ子政策の廃止が決定されたことで、体外受精などの不妊治療を受ける夫婦が急増している。
 国内の医療機関では対応が間に合わず、海外へ治療に赴く人が増加することが見込まれている。

 中国では体外受精や顕微授精などの治療を行うことは厳しく管理されている。
 子どもの性別選択が禁止されているほか、出産許可証や結婚証明書の提示が求められる。
 一部の先端技術の実施も禁止されていることから、経済力のある夫婦のなかには米国や豪州、タイなど海外の専門的な医療機関や、国内の規制が甘い医療機関を利用する人も少なくない。

 広東省にある深セン南方試管生殖医療センターでは、体外受精により子どもの性別を選ぶことのできるサービスを提供している。
 また、厳しい審査を受けたり、治療の順番をいつまでも待ったりする必要はないとし、規制対象にならないよう細心の注意を払っている。
 一人っ子政策の撤廃が発表されたことで、問い合わせが大幅に増えているという。



ウォールストリートジャーナル 2015 年 12 月 7 日 15:09 JST By aurie Burkitt
http://jp.wsj.com/articles/SB12063707009372514535404581401033862978082?mod=JWSJ_EditorsPicks

中国は「独身者の国」に-家族中心社会に変化も

中国は急速に「独身者の国」になりつつある。
 中国民政部(日本の厚労省に相当)のデータを引用した地元メディアの報道によると、世界最大の人口を抱える同国では独身成人の数が2億人近くに上り、全人口の14.6%を占めている。
 この割合は1990年の6%から急上昇しているという。

 中国で独身者が急増している背景には、離婚率の上昇や晩婚化、結婚しない傾向の強まりがあると、人口統計学者らは指摘する。
 結婚を先延ばしする人は単身、あるいは家族と同居して満ち足りたシングルライフを築き、そこから逃れられなくなるのだ。

 中国では、独身者の割合は他国を大きく下回っている。
 米労働統計局(BLS)によると、米国では昨年、全人口に占める独身者の割合が50.2%に達した。
 英国のイングランドとウエールズでは2011年時点で51%が独身だったという。

 他国と比べて中国の割合が低いのは、中国では若者が結婚の重圧にさらされていることが一因だ。
 年配世代は伝統を重んじ、家族の絆を大切にする傾向が顕著で、子どもや孫に「結婚しろ」とくどくど言い聞かせる。
 それがあまりにもしつこいため、多くの若者は家族からの重圧を避けるため休暇中に実家に帰らないという。
 また、政府も圧力をかけており、27歳以上の未婚女性を「売れ残り」と呼んでいる。

 中国政府が最近廃止した「一人っ子政策」も、男女比率の不均衡や高齢化を生み出すことで結婚に対するトレンドを変化させた。

 中国の膨大な人口を考慮すれば、14.6%という数字は米国の全人口の7割近くに当たり、大きな意味を持ってくる。
 そして独身者の増加は、人口統計学者が警告する中国の出生率低下と同じタイミングで起こっている。

 独身者の増大は中国でいくつかの新たなトレンドを引き起こしている。
 年収の高い人が浪費する「シングルエコノミー」と呼ばれる現象などがそうだ。
 また、海外で卵子を冷凍保存し、シングルマザーになるのを目指す女性の数が増えている。
 そしてもちろん、中国で壮大に行われる電子商取引のイベント「独身の日」は、世界でも最大規模のショッピングデーのひとつになっている。

 中国社会は儒教の伝統と法規制の両面から、一般的に結婚した夫婦が好まれる。
 このため多くの独身者が社会的な汚名に対抗するためオンライン上で徒党を組み、法律が偏っていると主張している。
 上海市や広東省広州市などの都市では、独身者による不動産購入が禁止されている。
 地元メディアによると、雇用主の中には昇格や賃上げで既婚者を優遇するところもあるという。



サーチナニュース 2015-12-09 08:33
http://news.searchina.net/id/1596470?page=1

「一人っ子政策」なくなっても、2人目生みたい夫婦は「わずか3割」=中国

 7日付の中国メディア「毎日経済新聞」によると、旅行商品販売サイト「携日旅行網」の梁建章最高経営責任者(CEO)は5日、出席したフォーラムで、夫婦1組に対して2人目の子の出産が認められるようになったのに、「本当に2人目を生もうと考える人は30%程度」として、社会の高齢化を防止する「補助金政策」が必要などと主張した。

 梁CEOは北京大学教授(専門は経済学)も兼任。
 2012年には同僚の李建新教授との共著「中国人は多すぎるのか?」を発表し、中国の人口構造の変化の経済に及ぼす影響を指摘した。

 中国政府が一人っ子政策の緩和に踏み切ったのは2013年だが、梁CEOはそれ以前から同政策と撤廃を主張していたことで知られる。

 梁CEOは5日に出席したフォーラムで、今後は成長した一人っ子世代が納める税の15%を、高齢者を養うために使わねばならなくなると指摘。
 「社会における公平という面から、国は子が生まれた家庭に対する補助を考えるべきだ。
 補助金の総額は国内総生産(GDP)の15%程度にしてよい」
と述べた。

 中国政府は現在、起業を増やすことで経済の構造変革と活性化を狙っている。
 梁CEOは
 「社会が高齢化すれば、刷新や起業などの活力も低下する」
との考えを示した。

 梁CEOが示した「本当に生もうと考える人は3割」について中国人民大学「人口と発展研究センター」の任杜鵬副主任は、
 「人々の収入が増えると、出生率は低下する傾向が出る」
と指摘。

 任副主任によると、北京、上海、浙江省などの経済先進地域では2人目の子の出産が認められるようになても、出生率が低いままという。

 任副主任がこれまでに行った調査でも、都市部住民の70%-80%の人が「2人目の子をほしい」と回答するが、「本当に2人目を望む人は30%程度しかない」感触だという。

 上記記事を転載した新浪網は7日朝、
 「政府が補助金を出すとしたら、あなたは2人目の子をほしいですか?」
とのアンケート実施した。
 同日午前10時10分(日本時間)現在、
「ほしくない」と回答した人は54.1%で半数を超えた。
「ほしくなるかもしれない」は26.2%、
なんとも言えない」は19.6%
だった。


レコードチャイナ 配信日時:2015年12月10日(木) 20時0分
http://www.recordchina.co.jp/a124839.html

中国政府、無戸籍者1300万人に戸籍を付与へ―英メディア

 2015年12月10日、BBCによると、中国政府は一人っ子政策に反するなどして生まれた国内約1300万人の無戸籍者に対し、戸籍の作成手続きを開始すると表明した。
 参考消息網が伝えた。

 中国では1950年代以降、戸籍管理を厳格化。教育、就職、医療、住居などの公共サービスを受ける際は戸籍を持つことを大前提としてきた。
 しかし、一人っ子政策に反して生まれた無戸籍者が増加。仕事や教育、社会保障を受ける機会を与えられていないことが問題となっていた。

 中国官製メディアによると、無戸籍者は国内全体で約1300万人、人口の1%に達するとみられる。
 習近平(シー・ジンピン)国家主席は9日、国民の戸籍登録を徹底化させるとともに、無戸籍者問題を解決することを強調していた。



サーチナニュース 2015-12-24 15:16
http://biz.searchina.net/id/1598032?page=1

中国で注目される生産人口急減への対応=大和総研

 大和総研経済調査部主席研究員の齋藤尚登氏は12月24日、「中国経済:生産年齢人口急減への対応」というレポート(全2ページ)を発表した。
 中国ではすでに2011年以降に生産年齢(15歳~59歳)がピークを打ち、今後は急速に生産年齢が減少していくと見通されている。
 この経済へのマイナスインパクトを回避するため、中国で来年から始まる「2人っ子政策」や農民工の“真の市民化”などの政策が注目されるとしている。
 レポートの前半部分は以下の通り。

 中国社会科学院人口・労働経済研究所が2015年12月に発表した「人口と労働緑書-中国人口と労働問題報告No16」(主編:蔡昉、張車偉)によると、中国の生産年齢(15歳~59歳)人口は2011年の9.41億人をピークに減少し、2023年には9億人以下に、2050年には6.51億人に急減するとしている。生産年齢人口が全人口に占める割合は7割弱から5割に急低下する計算である。

 「緑書」では、65歳以上の人口が全人口に占める割合が7%から14%に上昇するのに要する期間について、世界平均は40年前後であるのに対して中国は23年程度、14%から21%へ上昇する期間は同様に、平均の50年前後に対して中国は12年~13年程度であるとしている。
 急速な少子高齢化の進展である。

 人口ボーナス値は、一般に、生産年齢人口÷従属人口(14歳以下人口+65歳以上人口)で計算される。
 これが高いと、働き手が多い一方で、養育費のかかる子どもと、年金・医療の社会負担の大きい高齢者が少ない状態であり、人口ボーナス値の上昇により、経済には、労働投入量の増加、社会負担の減少、貯蓄率の上昇といったプラスの効果が期待される。
 しかし、少子高齢化の進展でこの歯車は逆回転していく。
 すなわち、労働投入量の減少、高齢者社会負担の増加、貯蓄率の低下が、経済成長を押し下げるのである。
 中国では2010年前後に人口ボーナス期が終わり、人口オーナス期に入っているが、そのマイナスの効果は今後ますます大きくなっていくことが想定される。

 今後は少子化の進展をより緩やかにすることと、少子高齢化のマイナスの影響を如何にして小さくすることができるかが大きな鍵を握る。



大和総研 2015年12月24日    経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登
http://www.dir.co.jp/research/report/overseas/china/20151224_010473.html

生産年齢人口急減への対応

 中国社会科学院人口・労働経済研究所が2015年12月に発表した「人口と労働緑書-中国人口と労働問題報告No16」(主編:蔡昉、張車偉)によると、中国の生産年齢(15歳~59歳)人口は2011年の9.41億人をピークに減少し、2023年には9億人以下に、2050年には6.51億人に急減するとしている。
 生産年齢人口が全人口に占める割合は7割弱から5割に急低下する計算である。

 「緑書」では、65歳以上の人口が全人口に占める割合が7%から14%に上昇するのに要する期間について、世界平均は40年前後であるのに対して中国は23年程度、14%から21%へ上昇する期間は同様に、平均の50年前後に対して中国は12年~13年程度であるとしている。
 急速な少子高齢化の進展である。

 人口ボーナス値は、一般に、生産年齢人口÷従属人口(14歳以下人口+65歳以上人口)で計算される。
 これが高いと、働き手が多い一方で、養育費のかかる子どもと、年金・医療の社会負担の大きい高齢者が少ない状態であり、人口ボーナス値の上昇により、経済には、労働投入量の増加、社会負担の減少、貯蓄率の上昇といったプラスの効果が期待される。
 しかし、少子高齢化の進展でこの歯車は逆回転していく。
 すなわち、労働投入量の減少、高齢者社会負担の増加、貯蓄率の低下が、経済成長を押し下げるのである。
 中国では2010年前後に人口ボーナス期が終わり、人口オーナス期に入っているが、そのマイナスの効果は今後ますます大きくなっていくことが想定される。


●中国の年齢別人口の予測(単位:億人)

 今後は少子化の進展をより緩やかにすることと、少子高齢化のマイナスの影響を如何にして小さくすることができるかが大きな鍵を握る。

 少子化対策として、生育制限の完全撤廃と生育「奨励」への転換が不可欠であることは言うまでもないが、まずは「二人っ子政策」の効果最大化である。
★.夫婦のいずれか一方が一人っ子の場合、
 第二子の生育を認めるという、
 2013年11月の条件緩和により、全国で1,100万組の夫婦に第二子の生育が認められるようになったが、第二子生育の申請を出したのは、このうちの15.4%にあたる169万組(2015年8月末)にとどまっているのが現状である。
 都市部では、住宅価格や教育費の高騰や、ライフスタイルの変化による未婚比率の上昇や晩婚化など、「一人っ子政策」以外の出生率低下要因も多い。
 今後は、こうした問題への政策対応が必要とされているのである。

 次は、質の高い労働力を如何にして確保するかという問題である。
 「人口ボーナスがなくなる以上、イノベーションがなければ発展はできない」とは、「緑書」の主編者である蔡昉・社会科学院副院長の言葉である。
 産業構造の高度化を担い得る労働力の質的向上(例えば高等教育や職業訓練の充実)が極めて重要となる。
 この他、持続的な社会保障制度の構築や退職年齢の引き上げなども同時並行で行われなければならないだろう。

 以上は経済の供給面から見たものであるが、生産年齢人口が大きく減少すること自体を変えることはできない。
 需要面でもマイナスのインパクトをできるだけ小さくする政策の実行が求められる。
 「緑書」は
 「新型都市化の積極推進と本当の意味でのヒトの都市化
を今後の消費需要の底上げ、ひいては牽引役として特に重要視している。
★.中国の都市化率は2014年末で54.8%で
あるが、これは6ヵ月以上の常住人口で計算したもののであり、都市戸籍保有者の割合は38%にすぎない。
 この差が農民工(農村からの出稼ぎ者)である。

 現状では農民工には都市での社会保障(年金、医療)は提供されず、本来なら無料であるはずの子どもの義務教育も有料であるなど、都市住民としての公共サービスを享受できていない。
 例えば、2014年末時点では、2億7,395万人の農民工のうち実に83.3%が年金に未加入となっている。
 農民工が真の市民として、都市に定住、就職、起業できるようにし、就業サービスと社会保障などを平等に受けられるようにするのが「新型都市化」と呼ばれる概念である。

 2015年12月14日に開催された中国共産党中央政治局会議は、2016年の経済運営を議論し、
 このなかで不動産過剰在庫の解消を重点政策の一つに掲げた。
 同会議では、農民工の市民化など「新しい市民」のニーズを満たすことを出発点とする住宅制度改革を推進するとしている。
 これまで住宅購入層として蚊帳の外に置かれていた農民工が住宅購入支援策の対象となることは、実需増加の面でも注目されよう。

 上記は一例であるが、仮寓の農民工としてではなく、真の市民化が実現すれば、中国の内需が厚みを増していくことになる。
 今後打ち出される政策に注目したい。









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緊迫するロシアとトルコ:シリアで何が起こっているのか

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毎日新聞 11月28日(土)15時1分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151128-00000043-mai-int

<露軍機>撃墜前、2回領空侵犯…トルコ計21回警告


●トルコ、ロシアそれぞれが主張する飛行ルートと墜落現場

   トルコ・シリア国境付近で24日にトルコ軍機に撃墜されたロシア軍機が、2回連続してトルコ領空を侵犯していたことが分かった。
 トルコが加盟する北大西洋条約機構(NATO)の外交筋が、レーダーの航路分析で判明したと毎日新聞に明らかにした。
 ロシア側は
 「警告はなく、シリア上空で撃墜された」
と主張しているが、根拠が揺らぐことになる。


●【トルコ・シリア国境地帯で墜落する戦闘機】

◆NATO分析

 外交筋によると、ロシアの戦闘爆撃機2機は24日午前9時22分(日本時間午後4時22分)ごろ、トルコ南部の領空に侵入。
 旋回して同9時24分、再び領空内に2.52~2.13キロ入り込み、17秒間侵犯した。

 トルコ軍は1回目の領空侵犯時に11回、2回目に10回、計21回警告した後、これを無視して領空にとどまった1機をミサイルで撃墜した。
 この戦闘爆撃機は飛行を続け、シリア領内に墜落した。

 同筋によると、ロシア軍機は10月3、4両日にもシリア側からトルコ領空を侵犯。
 トルコ政府はロシア側に再三にわたり「次の領空侵犯は容認できない」と警告していた。
 10月15日にはロシア空軍幹部がアンカラでトルコ軍幹部と会談し、再発防止を約束していたという。

 トルコ軍は2012年6月、地中海上空で偵察機がシリア軍機に撃墜されて以降、領空侵犯があれば撃墜する方針を取っていた。
 今回のロシア機の撃墜では「原則に従った」という。

◆トルコ防空強化、NATO合意へ

 外交筋は、12月1日から開かれるNATO外相会議が、トルコの防空能力強化やミサイル防衛などを柱にした「支援・保障パッケージ」で合意することも明らかにした。

 過激派組織「イスラム国」(IS)の脅威に対抗するため、今年8月から検討されていたが、ロシアに対する加盟国の防衛もにらんで決定する。

 NATOはシリア内戦の脅威に対抗するため、地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」(PAC3)を12年からシリア国境沿いのトルコに配備している。
 トルコ側は配備に「期限を設けない」よう求めており、来年初めに事実上終了する予定だった配備期間が延長される可能性がある。



ロイター 2015年 11月 27日 15:40 JST Joshua W. Walker
http://jp.reuters.com/article/2015/11/27/walker-syria-column-idJPKBN0TG0CW20151127?sp=true

コラム:緊迫するロシアとトルコ、「第3次大戦」防ぐ処方箋


●写真はロシアのスホイ24戦闘爆撃機。シリアのラタキア近郊の空軍基地で撮影。
 ロシア国防省が7日提供(2015年 ロイター)

[25日 ロイター] -
 加盟国のトルコが24日、ロシア軍機を撃墜したことで、北大西洋条約機構(NATO)は未知の領域へと足を踏み入れた。
 第3次世界大戦を防ぐために、米国政府が双方を和解させることが急務である。
 トルコ政府の「ロシア機は、繰り返し警告を与えたにもかかわらず、シリア国境に近いトルコ領空を侵犯した」という主張の裏付けとなる詳細はこれから明らかになるところだ。

 はっきりしているのは、この事件には長い前触れがあるということだ。
 シリア政策をめぐって、トルコとロシア両政府のあいだでは対立が急激に高まっていた。
 ロシアがアサド政権支援のためにシリア領内での空爆を開始して以来、
 ロシア軍機は繰り返しトルコ領空を侵犯してきた。

 過激派組織「イスラム国」が犯行声明を出したアンカラ、シナイ半島、パリでの爆弾攻撃以降、同組織に対する「大連合」への希望が生まれていたというのに、今や中東にほとんど残されていない平和と安定を救うための緊張緩和が急務になってしまった。

 ロシア政府がただちに、同国機撃墜は「背信行為」でありイスラム国への支援になるとしてトルコ政府を非難し、プーチン大統領が「重大な影響」をもたらすと警告したことは、シリア情勢がすべての当事者にとっていかに重要であるかを却って浮き彫りにしている。
 シリア情勢の波及を食い止められるかもしれないという希望は霧散してしまった。

 ロシア機のパイロットはシリア北部地域に脱出降下した可能性が高いが、トルコが同地に暮らすトルクメン人住民を民族的なつながりゆえに支援していることも、現場での状況をさらに複雑にしている。
 シリアのアサド大統領及びロシアやイランの支援を受けた政権側部隊と戦っているクルド人部隊、イスラム主義者、反政府グループのあいだには対立があり、地上での勝利は期待できない。

 空におけるこれ以上の衝突を避け、ロシアによる何らかの報復措置を防ぐために、NATOはトルコへの支持を再確認するとともに、ただちにシリア上空での一時飛行停止を呼びかけなければならない。

■シリアで何が起こっているか


●シリアで何が起こっているか

 米国にとってトルコはNATOの同盟国、ロシアはライバルだが、仲裁役として米国の独自の立場がこれほどふさわしい例は過去に見られない。

 先日のパリ同時攻撃と、先週トルコで開催されたG20首脳会議での進捗によって、イスラム国打倒に向けた共同アプローチが発展するのではないかと期待していた米政府関係者は多い。
 トルコは、首都アンカラでの爆弾テロの後でさえ、アサド政権排除につながらない形で中東地域に外国が干渉することを懸念している。
 地域の混乱の収拾を押しつけられるのは自分たちではないかという恐れがあるからだ。

 現時点でさえ、トルコは世界で最も多くの難民を受け入れている。
 またシリア内戦は、トルコ政府が数十年にわたり続けているクルド人武装勢力との戦いとも絡んできつつある。
 クルド人武装勢力の一部は現在、米国からの支援を受けている。

 望みうる最善の状況は、トルコとロシア両政府が、お互いの依存関係と対立激化がもたらす高い代償を現実的に注視し、シリア情勢を契機として両国が直接戦火を交える事態に至るのを避けることだ。

 アサド政権の将来を軸とする幅広い地域的・政治的な妥協の一環として、今、ロシアとトルコを同じテーブルにつかせなければならない。
 短期的にはアサド政権の存在を含んではいるが、長期的にはその体制を変革していくことを可能とするような出口戦略を考案することは、困難ではあるが不可能ではなかろう。

 そのような解決策があれば、ロシア政府もイラン政府もメンツを保ち、さまざまな同盟国を再結集することが可能になる。
 トルコが「地域の問題は地域で解決」することを求めていることを踏まえて、NATO諸国はトルコ政府を支え、同国を宗派性のない地域のリーダーにしていくべきである。

 その一環として、イラン及びロシアの影響力に対抗すべく、シリア政府にとって必要不可欠な開発援助を提供させるようアラブ諸国及びスンニ派勢力にプレッシャーをかけなければならない。
 これと平行して、「アサド後」のシリアがどのようになろうと、シリアの地中海沿岸のラタキアにロシアが持つ拠点は維持されるという安心感をロシアに与えなければならない。

 今年前半の激しい選挙戦の影響で、これまでトルコ政府の動きは鈍かった。
 だが、プーチン氏はトルコのエルドアン大統領を軽視していた可能性がある。
 エルドアン氏率いる与党・公正発展党の政治課題は今や明確になった。
 「力による安定」である。

 かつてはお互いを友人と認め合っていた双方の首脳の「顔を立てる」ためには、オバマ米大統領とオランド仏大統領から自制を求めることが必要不可欠であり、かつ最も効果が高いだろう。
 イスラム国掃討を目指す大連合について協議するためにモスクワとワシントンを行き来するのであれば、そこにトルコを加えなければ今や成功は不可能である。

 経済力、軍事力、情報力のいずれをとっても中東地域最大であり、同地域唯一のNATO加盟国であるトルコがロシアと対立したままでは、中東の混乱が加速するばかりだ。

 さらなる戦いを避けるには、すべての関係国が状況をエスカレートさせないという共通の関心事に集中する必要がある。
 共通の敵であるイスラム国に集中しなければならない。
  シリア、イラクを主権国家として政治的に再編するという戦略を促進するためには、イスラム国を軍事的に打倒することだ。

 オバマ氏はイラクにおけるジョージ・W・ブッシュ前大統領の行動を繰り返すことを慎重に避けてきたが、今こそ米国は、さらなる戦いを防ぐために持てる力を尽くさなければならない。

 中東の真ん中での「権力の空白」は、ほぼ必ずと言っていいほど、より悪い結果につながってきた。
 今、地域が主体となる平和を準備することがすべての当事者にとって必須であり、相互の合意を得るべき分野である。

 トルコとロシアを含む地域首脳会議の開催をNATOが呼びかければ、両国が今週の事件を意識の隅に追いやることができ、すべての関係者が共通の敵に集中しやすくなるだろう。

 トルコのロシア軍機撃墜をめぐり、両国の非難合戦がますます熱を帯びている。

*筆者は米ジャーマン・マーシャル基金のトランスアトランティック・フェロー。
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)



ロイター 2015年 11月 27日 08:07 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/11/26/insight-is-putin-idJPKBN0TF0ED20151126?sp=true

焦点:対ISで「不可欠な国」に、プーチン流政治の落とし穴

[ブリュッセル 24日 ロイター] -
 プーチン大統領は、シリアに介入することで、比較的孤立していた状態からロシアを脱却させることに成功。
 そして米国がさらなる関与に二の足を踏むなか、シリアやウクライナ情勢、過激派組織「イスラム国(IS)」との戦いにおいて、同国を「不可欠な国」にしようとしている。

 しかしこのような地政学的なポーカーゲームで、プーチン氏が勝ったままゲームをやめられるかは分からない。
 とりわけ、24日に発生したトルコ空軍によるロシア軍機撃墜のような予期せぬ事態が起きた場合はなおさらだ。
 空爆などによるロシアのシリア介入は、アサド政権側を再び優位に立たせ、イスラム国に対する空爆作戦を行う米国主導の有志連合は劣勢を強いられていた。

 しかし130人が犠牲となったパリ同時多発攻撃と乗客乗員224人全員が死亡したロシア旅客機墜落事件を受け、プーチン氏は狙いの的をイスラム国に移し、フランスに協力を申し出た。
 ロシア国防省は、シリア国内の標的に落とされる、「パリのために」と書かれた爆弾の写真を公開した。
 「フランスは戦う意思はあっても能力を出し切れず、
 米国は能力があるのにやる気に欠けた状態のなか、
 ロシアにはISに対して大規模な武力行使を行う意思と能力がある」
と、パリにある戦略研究財団でシニアリサーチフェローを務めるブルーノ・テルトレ氏は指摘する。

 ウクライナ情勢をめぐる行動で西側諸国からのけ者扱いされていたプーチン氏だが、ハードパワーと外交力を組み合わせた「レアルポリティーク(現実政治)」のおかげで、同氏は今や国際舞台の場で人気者となっている。
 だからと言って、クリミア併合などで受ける西側からの経済制裁をプーチン氏が免れるわけではない。
 トルコで先週末開催された20カ国・地域(G20)首脳会議に出席した西側諸国の首脳らは、ロシアに対する経済制裁をさらに半年間延長し、来年7月までとすることで合意した。

 シリアへの介入も成功を収める保証はない。
 軍事介入は意気揚々と始まっても、失敗に終わることが往々にしてある。
 英米はそれをイラクとアフガニスタンで学び、旧ソ連も1980年代にアフガニスタンで経験した。

 1990年代後半に当時のオルブライト米国務長官が自国を「不可欠な国」と主張したが、その地位にロシアを押し上げたとプーチン氏は考えている。
 だが、プーチン氏は背伸びし過ぎており、国内の武装勢力や中東産油国からもたらされる安全保障上の、そして経済上の危険を蓄積させていると、一部の専門家は指摘する。

 他の大国との関係に影響しかねないのは、プーチン氏が「背後から刺された」と表現したトルコによるロシア軍機撃墜だけとは限らない。
 西側諸国の部隊が関与する「誤射」や多数の民間人が犠牲となるような攻撃も、プーチン氏の作戦をコースから外れさせる可能性を秘めている。

■<優れた戦術家>

 「地政学的に見て、プーチン氏は優れた戦術家だ。
 私は嫌いだが、好き嫌いは別にすれば『プーチン流政治』はかなりうまくいっている」
と、かつて駐ロシア欧州連合(EU)大使を務めたマイケル・エマーソン氏は語った。

 同氏によれば、プーチン氏がシリアで主導権を握ることで米国に不意打ちを食らわせたのはこれが2度目。
 プーチン氏は、軍事的敗北を喫する可能性からアサド政権を救い出し、自身をシリア問題のいかなる解決にも不可避のパートナーとさせた。
 1度目は2013年8月、シリアが化学兵器を使用したことを受け、オバマ米大統領が「越えてはならない一線」を越えたとして空爆を検討していた際、プーチン大統領がオバマ大統領に外交的手段を取るよう説得したときだ。
 空爆をしないという米国のこの決定は「外交的な大きな過ち」であり、同国の中東疲れを暗示していたと、デ・ホープ・スケッフェル元北大西洋条約機構(NATO)事務総長は指摘する。
 ロシアの大国としての地位を取り戻そうとするなか、欧米の弱さを感じ取り、それを利用するというプーチン氏の生まれ持った才能は、同氏の精力的な外交政策の特徴の1つだと言える。

 「彼(プーチン氏)は政治的機会だけでなく、権力にも驚くほど鼻が利く」
と、シンクタンク「欧州外交評議会(ECFR)」のディレクター、マーク・レナード氏は指摘。
 「ウクライナで身動きできなくなり、そこから抜け出す方法を見つけられないでいた。
 ロシアは当初、アサド政権が窮地に陥っているのでシリアへの介入を強化したが、そこへパリで事件が起き、驚くべき方針転換をしてみせた」。

 米主導の対イスラム国空爆作戦では小さな役割しか担っていないフランスのオランド大統領は、シリアでの同組織掃討のためロシアを含む1つの連合を形成するよう訴えている。
 同大統領は26日、ロシアを訪問し、プーチン大統領と協力に向け会談を行う。

 パリ同時攻撃とロシア旅客機墜落事件が起きる以前は、ロシアによる空爆の約90%が、西側の支援するシリア反体制派に対するもので、残りのわずか10%がイスラム国に対するものだったとフランスは考えていたと、前述の戦略研究財団のテルトレ氏は述べた。
 だが先週、その比率はほぼ逆転したという。

 西側が支援する、特に米国製の対戦車ミサイルTOWを手に入れた反体制派への攻撃をロシアは続けているが、少なくともその半分は現在、シリアのイスラム国拠点を標的にしていると、西側の他の専門家たちも指摘する。

 報道によると、ロシアとフランスはイスラム国が資金源とする石油精製施設を攻撃した。

■<下手な戦術家か>

 プーチン氏がシリアで政策を転換し、4年にわたる内戦終結に向け交渉の余地をつくる可能性がある一方で、旧ソ連国境を越えての武力行使はロシアにとってリスクを高める結果となっている。
 「プーチン氏は優れた戦術家ではない。
 イスラム教スンニ派を敵に回している。
 彼らは同氏に恨みを抱くだろう」
と、ロシア専門家で米シンクタンク、ブルッキングス研究所所長のストローブ・タルボット氏は指摘。
 「国内ではすでに、イスラム過激派との問題を抱えていた。
 それがロシア旅客機墜落事件以降、国外でもISという問題に対処しなくてはならなくなった」

 同氏によると、プーチン氏はシーア派が多数を占めるイランやレバノンのシーア派組織「ヒズボラ」と協調することで、西側による制裁でロシア経済が依存する石油の価格を引き下げているサウジアラビアなどスンニ派諸国を敵に回すリスクを負っているという。

 欧州の外交官らは、たとえロシアや欧米諸国がイスラム国掃討で団結し、シリア問題の解決に共通の利益を抱くとしても、トルコやサウジ、そして恐らくイランはシリアで内戦が続くことに利益を見いだす可能性があるとみている。

 「プーチン氏は、アサド政権を継続させるか、ISを壊滅させるかの選択に直面するという、自身が招いた状況で板挟みにあっている」
とタルボット氏は指摘。
 「ISは勢力を拡大しているため、アサド政権退陣の先延ばしはロシアにとって大きな代償となっている」

 ロシア国内では、1990年代のチェチェン紛争以来、モスクワや他の都市で攻撃を繰り返すカフカス地方のイスラム武装勢力が急速に台頭する可能性に直面していると、タルボット氏は付け加えた。

(Paul Taylor記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)



WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2015年11月27日(Fri)  佐々木伸 (星槎大学客員教授)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5665

ロシア機撃墜に2つの理由
エルドアンの深謀遠慮

 トルコによるロシア軍機撃墜は両国の対立を激化させ、シリアをめぐる軍事的な緊張が高まっている。
 撃墜に至った背景には、トルコの”皇帝”と呼ばれるエルドアン大統領の深謀遠慮がある。
 しかし過激派組織「イスラム国」(IS)を攻撃する側のこうした分裂で、ISだけが独り、ほくそ笑んでいる。

■アサド退陣棚上げ論つぶし?

 エルドアン大統領はシリアのアサド大統領の追放を長らく求め、反体制派を支援してきた。
 シリアとの国境管理や物資の補給、石油の不正密売などでISに比較的緩やかな対応を取ってきたのも、ISよりもアサド政権の打倒を優先させていたからだ。

 しかし、シリアに軍事介入し、ISよりも反体制派への攻撃を続けていたロシアは10月末のエジプトでのロシア旅客機爆破テロ、パリの同時爆破テロを受けて、方針を修正しIS攻撃を本格化させた。
 米国のオバマ大統領やフランスのオランド大統領はロシアを取り込んでIS攻撃を一体化させようという絵を描いた。
 米主導の有志連合とロシアとの共闘である。

 こうした空気を反映し、シリアの紛争で欧米とロシアの最大の対立点だったアサド大統領の扱いをめぐって、アサド氏の処遇を一時棚上げにして、ISに米欧ロで一致して当たろうという機運が急速に高まった。
 これに危機感を深めたのがエルドアン大統領である。

 アサド退陣棚上げ論が既定路線になれば、アサド政権を追放し、トルコ寄りの新政権を樹立することを第1に掲げてきたエルドアン氏の戦略は大きく狂ってしまう。
 ベイルートの消息筋は
 「アサド棚上げ論では、結果的にロシアやイランの要求が通り、アサド氏が移行政権でも生き残ってしまう。
 これを恐れて棚上げ論をつぶしにかかったのがロシア機撃墜の理由の一端だ」
と指摘する。

 確かに撃墜事件の後、米欧ロの共闘の雰囲気は一変し、冷戦時代の再来を思わせるような対立状況となった。
 米国とロシアのISに対する戦果をめぐる応酬も激しくなった。
 米国防総省は、ISのタンクローリー1000台を破壊したといったロシア側の発表を誇張しすぎと批判、これにロシアも米国を嘘つき呼ばわりするなどとげとげしいやり取りを繰り広げており、”棚上げ論つぶし”ということであれば、エルドアン氏の狙いはうまくいったことになる。

 もう1つ、撃墜の理由はシリアの少数民族の反体制派、トルコ系のトルクメン人をロシアが攻撃したことに対する怒りである。
 トルクメン人はトルコ国境に近いシリア北部を居住地区とする少数民族で、エルドアン氏が”親類”と呼び、トルコの庇護下にあると見なす部族だ。
 アサド政権の打倒を目指す反体制派として戦闘に加わってきたが、このところ、ロシア軍機によるトルクメン人攻撃が目立っていた。

 トルコ政府はロシア大使を呼んで再三注意したが、ロシア側がこれを軽視したような姿勢を示していたため、愛国主義者にして民族主義者のエルドアン氏が激怒し、ロシア機の領空侵犯には撃墜もやむなし、との決定になったようだ。

■NATOの介入を回避

 プーチン氏は
 「背後から刺された」
 「謝罪の一言もない」
などとトルコを非難、最新の地対空ミサイル・システムをシリアに配備する一方で、ロシアからの天然ガスパイプラインの建設の見直しも含め経済制裁を発動する構えだ。

 エルドアン氏は
 「再び領空侵犯があれば、同じように対応する」
と強気の姿勢を崩していないが、実際のところ、プーチン氏がこれほど強く反発するとは予想していなかったようで、計算違いとの見方も強い。
 特にロシアはトルコにとって最大の輸入先。
 全輸入量の10%(2014年)を依存、輸出も4%を占めている上、ロシアがトルコ旅行の禁止を打ち出したのが打撃だ。

 北大西洋条約機構(NATO)はトルコの要請を受けて緊急理事会を開催し、加盟国であるトルコとの連帯を強調した。
 しかし今回の撃墜事件をロシアとNATOの問題にはしたくない、というのが本音で、エルドアン政権に対して自制を強く促している。
 オランド仏大統領は26日モスクワでプーチン氏と会談し、ロシア側にもトルコとの対立をエスカレートさせないよう求めた。

 トルコとロシアの緊張が高まる中、エジプトやチュニジアではISの分派によると見られるテロが続発するなど、パリの同時多発テロ以降も各地でISの活動が活発化しており、国際的なIS包囲網の亀裂を尻目にISが欧州で新たなテロを画策しているとの懸念も浮上している。



BBC News  2015.11.26 視聴時間 02:00
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45369

IS空爆はどれほど激しいのか 第2次世界大戦などと比較



パリ連続襲撃事件を受け、犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)に対する掃討戦が激しさを増す構えだ。
ISへの空爆は昨年8月から続いているが、第2次世界大戦など過去の例と比べてどのくらい激しい攻撃なのか、拍で表現し比較した。
結果に驚く読者もいるのではないだろうか。



現代ビジネス 2015年11月27日(金) 長谷川 幸洋
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46586

ロシアとトルコは「全面戦争」に突入するのか? 
世界の列強が「対テロ戦後」を睨んで動き始めた!

■なぜトルコはロシア軍機を撃墜したのか

 シリアとトルコの国境付近でトルコ軍機がロシア軍機を撃墜した。
 私は先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/46454)で「世界は『テロと戦争の時代』に完全にモードチェンジした」と書いたが、まさに暴力が瞬く間に加速している。
 世界はどこに向かっていくのか。

 トルコとロシアはつい最近まで友好的な関係にあった。
 トルコの輸入相手国第1位はロシアであり、とりわけ石油や天然ガスの多くはロシアからの輸入に依存している。
 ロシアはトルコとロシア産天然ガスを南欧に輸送するパイプライン建設の交渉も進めてきた。

 これまでのように、両国が互いを必要とする相互依存関係を重視しているのであれば、たとえ一時的な領空侵犯があったとしても、いきなり相手を撃墜するような乱暴な事態は避けられたはずだ。
 北大西洋条約機構(NATO)のメンバー国が、よりによってロシア機を撃墜するような事態は何十年も起きなかった。

 しかし撃墜に至ってしまったのは、相互依存の恩恵を忘れてしまうほど頭に血が上って、あっという間に双方で敵対意識が膨れ上がってしまったからだ。
 燃え盛る戦火は空軍パイロットからも民衆からも冷静さを奪ってしまう。
 代わって激情が支配するようになる。

 ロシアがシリアの空爆を始めたのは、つい2カ月前の9月30日である。
 イスラム国(IS)掃討が目的と説明していたが、まもなくロシアはIS掃討よりもアサド政権の延命を狙って、政権に抗う反体制派勢力を攻撃している実態があきらかになる。

 トルコは、同胞であるシリア内のトルクメン人が反体制派と目され空爆されていると知って、ロシアへの反感を募らせた。
 「仲間の敵は自分の敵」というロジックだ。

 一方、アサド政権に肩入れするロシアの側も、トルコはトルクメン人を支援してアサド政権に敵対させているとみていた。
 こちらも「アサドの敵は自分の敵」である。
 「敵・味方関係」に基づく敵意が「相互依存関係」に基づく理性をおしのけ圧倒していった。
 その結果が今回の撃墜なのだ。

■プーチンも参っている

 いったん敵意に火が点いてしまうと、そう簡単には元に戻らない。
 かりに指導者たちが冷静に判断しようとしたところで、怒りをたぎらせた両国の民衆が許さないからだ。
 とくに兵士2人の死者を出したロシア側はなおさらだろう。

 だからといって、ロシアとトルコの対立がエスカレートするのかといえば、必ずしもそうとは言えない。
 肝心かなめのISが勢力を伸ばしているからだ。

 ロシアはISに対して当初、中途半端な立場を保っていた。
 空爆で狙ったのがISでなくシリアの反体制派だったのは
 「アサド政権を支援することがひいてはIS攻撃につながる」
 「敵の敵を応援するのが敵への打撃になる」
という理屈である。

 だが11月9日、エジプトのシナイ半島上空でロシア旅客機が墜落した事件はISによる爆破テロの可能性があると認めた後、ロシアはIS掃討に本腰を入れるようになった。

 墜落原因をめぐって当初、ロシアがいかにも優柔不断に見えたのは、ISによる犯行と認めてしまうと、ロシア国内で「シリア空爆を始めたのが原因じゃないか」とプーチン政権批判が高まる事態を恐れたためだ。

 今回のロシア軍機撃墜でも、ロシアは当初「地上から撃墜された」と言っていた。
 トルコ軍の関与を認めると、トルコとの関係悪化に加えて、世論が激昂し沈静化が難しくなるのを恐れたからだろう。
 プーチン大統領は強気一辺倒に見えて、実は世論を非常に気にしている。

 そんな曲折はあったが、いまやロシアがISを敵とはっきり位置づけているのは間違いない。
 自国旅客機を爆破されているのに「敵でない」などとはとても言えない。
 それはトルコも同じである。

■日本のマスコミは各国の不協和を願っているのか?

 トルコはISによる犯行とみられる自爆テロ、次いでトルコ軍兵士がISの攻撃で死亡した事件を受けて7月、初めてシリア内のIS拠点を空爆した。

それまでは米国などの空爆に追随していなかったが、自国民と兵士がISのターゲットになって方針転換に踏み切った(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/44454)。
 トルコにとってもロシアにとっても、いまや主要敵はISなのだ。
 ここが肝心だ。

 トルコにとってのトルクメン人やロシアにとってのアサド政権は同胞、盟友にすぎない。
 戦いの渦中にある戦士に向かって
 「戦いの目的は友人を助けるためか、それとも自分の敵を倒すためか」
と問えば、多くの戦士は躊躇なく
 「自分の敵を倒すため」
と答えるのではないか。

 つまり、こういうことだ。
 ISをめぐる「敵味方関係」が激化しているからこそ、ロシアとトルコ、さらにはフランスや米国を含む有志国連合は対IS戦線で協調できる可能性が高い。
 ISは人質殺害やテロなどで米欧はもとよりロシアを含めてあまりに多くの国を敵に回してしまった。
 もちろん日本もその1つである。

 日本のマスコミでは、トルコによるロシア軍機の撃墜事件で「米欧とロシアの結束に亀裂が入った」とみる論調が多い。
 あたかも、各国がうまく協調できない事態を願っているかのようだ。
 そもそもマスコミは失敗やヘマが大好きなのだ。
 だが、私の見立ては違う。

 プーチン大統領がトルコの行為に憤る国内世論に配慮しなければならない難しさはあるだろう。
 だからといって、ロシアが対IS戦線から離脱する事態は考えられない。
 自国の旅客機を撃墜されているのだ。
 いずれ、IS攻撃を再開するに違いない。
 そうでなければ国内世論も収まらない。

■むしろ、真の問題は「ポストIS戦」である。

 かつて第2次大戦で米英仏中ソ連の5大国を中心とする連合国側が日本とドイツに勝利した後、同じ勝者側である米国とソ連の間で冷戦がただちに始まったように、ISに勝利した後は今回のロシアとトルコ、さらには米仏などと新たな主導権争いが始まる可能性が高い。

 各国はみな冷戦の歴史に学んでいる。
 そうだとすれば、IS戦をどう戦うかは、IS戦後の秩序をどう自国有利に作り上げるかに直結していることを理解しているはずだ。

 米仏、仏ロなど相次ぐ首脳会談を皮切りに、これから始まる各国の綱引きは「秩序が失われた世界の新しい秩序作り」をめぐる戦いでもある。











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ありがたや中国解放軍の行動(2):空軍編隊飛行・戦略爆撃機も、下地島に航空自衛隊配備の大義名分に

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 さてさて、解放軍海軍が出没するようになって、待ってましたとばかりに、自衛隊の石垣島駐屯がスケジュールに上がった。
 次に空軍が戦略爆撃機8機を含む編隊飛行するようになったらどうなる。
 答えは簡単なこと。
 自衛隊の積年の願いであった下地島に航空隊が配備が実行されることになる。
 何しろジャンボクラスの民間航空機が利用できる飛行場があるのだから。
 だがこれまで、それを使うことはできなかった。
 しかし、中国の馬鹿でかい戦略爆撃機となれば、いい大義名分ができたというもの。
 自衛隊はホイホイ喜んでいることだろう。
 「中国サマサマ!」と言ったところだろう。
 与那国島にレーダー基地。
 石垣島におそらく擬似海兵隊。
 そして下地島に航空自衛隊。
 着々と整備が進んでいく。
 そのキッカケはなんといっても中国軍の圧力。
 各島の基地内にはそのうち中国神社が建設されるのではないだろうか。
 戦闘機の模擬実務演習ができる
となれば、空自はよだれを流すだろう。
 シュミレーションだけでも訓練の成果は出てくる。

  中国機はいずれ日本を目標とする形でやってくる。
 これは時期だけの問題にすぎない。
 いままだ領空に入ってこないのは、まだその能力が低いということを自覚しているからに過ぎない。
 時間が経ち、中国機の性能が向上していけば、必ず脅しをかけてくる。
 問題はまだ、そのターゲットが日本ではないということである。
 現在は南シナ海が中国の焦点になっている。
 ならばそのうちに防衛対策をするのが順当というものだろう。
 この編隊飛行が日本に大きな衝撃を与え、それが日本における国防のきっかけになるなら、ありがたやである。
 日本をターゲットにした時期に急激に現れたなら対応できない。
 いまなら十分に時間の余裕があるというものである。
 この行動によって空自としては、わずかでも中国軍のデータを集積できればラッキーであろうと思っているのではないか。


JSF 2015年11月27日 21時41分配信
http://bylines.news.yahoo.co.jp/obiekt/20151127-00051889/

中国軍の戦略爆撃機8機に空自戦闘機がスクランブル


●防衛省より、中国空軍H-6戦略爆撃機

 11月27日、防衛省統合幕僚監部の発表によると、中国軍のH-6戦略爆撃機8機、Tu-154情報収集機1機、Y-8情報収集型1機、Y-8早期警戒型1機の大型機11機が沖縄周辺を飛行し、その半数が東シナ海を周回、もう半数は沖縄本島と宮古島の間を通過し戻って行きました。



●防衛省より、中国機の飛行経路

 中国国防省の発表では、H-6K戦略爆撃機と複数の軍用機による西太平洋(フィリピン海)への進出訓練と、東シナ海のパトロール飛行を行ったとあります。

 H-6K戦略爆撃機は新型のDH-10長距離空対地巡航ミサイルを運用できる最新改修型で、フィリピン海に進出した訓練の仮想状況はおそらく、グアムのアメリカ軍の基地を攻撃する想定の演習だったと推定できます。



読売新聞 11月27日(金)22時59分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151127-00050192-yom-soci

中国軍11機、沖縄空域を往復…空自が緊急発進

 防衛省は27日、沖縄本島と宮古島間の空域を往復するなどした中国軍の爆撃機など計11機に対し、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)したと発表した。

 領空侵犯はなかった。

 同省統合幕僚監部によると、中国軍のH6爆撃機やTU154情報収集機などが、同日午前から正午にかけて東シナ海から太平洋に出た後、反転して中国側に戻るなどしたという。これだけ多くの中国軍機が飛来するのは異例で、同省が中国側の狙いを分析している。



朝日新聞デジタル 11月28日(土)23時23分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151128-00000067-asahi-int

中国軍機、東シナ海「防空識別圏のパトロール常態化」

 中国国防省によると、中国空軍の申進科報道官は28日までに、「H6K」爆撃機など複数の空軍機が沖縄本島と宮古島の間の海域上空を抜け西太平洋に入る遠洋訓練を行い、東シナ海上空に中国が設定した防空識別圏(ADIZ)をパトロールした、と発表した。

 申報道官によると、西太平洋に入る遠洋飛行訓練は今年4回目で、訓練とパトロールは27日に行ったという。
 中国が2013年11月に尖閣諸島を含む東シナ海上空に一方的に設定した防空識別圏について
 「設定以来の2年間、パトロールを常態化させており、
 外国機の進入には識別と監視、必要な措置をとり、国の防空安全に努めている」
とした。



レコードチャイナ 配信日時:2015年11月29日(日) 21時42分
http://www.recordchina.co.jp/a124119.html

中国軍機11機が宮古海峡に飛来、
日本は「過去とは異なる動き」と警戒―仏メディア

 2015年11月28日、RFI中国語版サイトは記事
 「中国軍機が日本島嶼部近隣に飛来、自衛隊はスクランブル」
を掲載した。

 日本の防衛省は27日、沖縄本島と宮古島の間、いわゆる宮古海峡の上空に中国軍機11機が飛来したことを発表した。
 爆撃機8機、
 偵察機2機、
 早期警戒機1機
という構成だったという。
 領空侵犯はなかったが、自衛隊機がスクランブル(緊急発進)し警戒にあたった。

 中国軍機は近年、頻繁に日本近隣を飛行しており、自衛隊のスクランブル回数も増加傾向にある。
 日本の防衛省は、11機編隊での飛行だったことを受け、
 過去とは違う動きとして中国側の目的について分析中
だという。





■下地島の資料

● 与那国島、石垣島、下地島、そして沖縄島と一列に並ぶ


wikipediaから
 下地島空港(しもじしまくうこう、英: Shimojishima Airport)は、沖縄県宮古島市(下地島)にある地方管理空港。
 南西航空の那覇線が撤退した1994年(平成6年)以来、定期便の就航が無い。

 実質民間パイロットの訓練専用空港として扱われている。
 そのため日本では数少ない、滑走路両端にILSが設置されている空港である。
 3,000m×60mの滑走路が整備され、航空機の操縦訓練が行われる。

 しかし2011年を最後に日本航空が、2014年を最後に全日本空輸がそれぞれ当空港での訓練を終了したため、2014年4月以降は琉球エアーコミューター(RAC)と海上保安庁が小型機訓練のために使用するのみとなっている。




●下地島


毎日新聞 2013年1月16日 朝刊 
http://www.kamiura.com/whatsnew/continues_1702.html

◆記事の概要◆

政府は尖閣諸島(沖縄県石垣市)の警戒監視を強化するため、航空自衛隊の戦闘機部隊を沖縄本島より西の先島(さきしま)諸島に配備する検討に入った。
中国機が尖閣周辺の日本領空に接近した際、現在は空自那覇基地(那覇市)からF15戦闘機が緊急発進(スクランブル)して対応している。
だが、同基地は尖閣から約420キロと遠く、到着に時間がかかるため、より近い下地島(しもじじま)空港(宮古島市)などへの配備が可能か来年度予算に調査費を計上する。
中国は尖閣諸島の領有権を主張しており、同国機が日本領空に接近する事案が増加している。
しかし、領空接近を空自が察知して発進させるF15は、最高速度で飛んでも現場まで20分程度かかる計算だ。

昨年12月13日には中国機が初めて日本領空を侵犯。
自衛隊レーダーが捕捉できずスクランブルが遅れたことに加え、距離が遠かったことから、F15が到着した時は中国機は領空外に出た後だった。
防衛省幹部は「距離はどうしようもない。
より近くに部隊を展開できるかを考える必要がある」と語る。
このため、防衛省は13年度概算要求に、尖閣により近い先島諸島への部隊配備の調査費として数百万円を計上する方針。
下地島空港や新石垣空港(同県石垣市)や宮古空港(同県宮古島市)など、先島諸島の全既存空港が調査対象となる。

新たな調査を行うこと自体が中国側へのけん制となる点も考慮し、配備先や時期を慎重に検討する。
同省が「第一候補」(自衛隊幹部)として有力視するのは下地島空港だ。
下地島は沖縄本島と台湾の中間地点に位置し、尖閣諸島までの距離は約200キロと那覇基地のほぼ半分。
県内の離島空港で唯一、戦闘機の運用に支障のない3000メートルの滑走路がある。
同空港の民間定期便は利用客の低迷から運休中で、民間の飛行訓練以外にほとんど使われていないことも「好条件」とみている。

しかし、同空港は建設前の71年、当時の琉球政府と日本が交わした「屋良(やら)覚書」で、軍事利用をしないとの取り決めがある。
空港を管理する沖縄県は「覚書は今も有効で、自衛隊の利用は認められない」(知事公室)との立場で、県側の理解を得る作業は難航が予想される。
新石垣、宮古両空港にはそれぞれ2000メートルの滑走路があるが、いずれも戦闘機の運用には十分とは言えない。
近く供用開始となる新石垣空港は民間利用が多く見込まれ、宮古空港は航空保安無線施設などが下地島、新石垣両空港より劣っている。

◆コメント◆

確かに下地島空港を見ると、滑走路などの空港施設は広いし、海に囲まれている感じで、ここに軍用飛行場を作れば騒音などの問題は起きないと考える。
3000メートルという滑走路の長さと利用状況もガラガラの状態も魅力を感じるだろう。来年には宮古島と橋で結ばれる予定も現空港の運用の良さを感じる。
しかし軍事航空施設として考えるなら、中国に近いし、下地島基地を警備する部隊を配置する場所も限られる。
また、戦闘機部隊の整備や補給、防空部隊(対空ミサイル)の展開、それに防空・監視レーダーの設置など、総合的に考えると下地島空港は軍事活用の優先順位が下がる。

例えば、もし軍事施設なら機体を洗うなど大量の真水水が必要になる。
それを下地島で調達することが難しい。
むしろ下地島空港は有事の際の予備基地として活用をされるのではないか。
それに対して、新石垣島空港は軍事の理想に近い機能を秘めている。
2000㍍の滑走路も北東(海方向)に滑走路を延長することで2700メートルクラスにできる。
だから北朝鮮のミサイル騒動の時(先月)、石垣島に空自のPAC3を配備したのは空自が新石垣島空港を使うための地ならしと思っていた。

石垣島の新港湾や埋め立て地など、もう20年以上も前から石垣島は日本の最南端の軍事拠点として整備されているのだ。
これは最近の中国の軍事脅威で急に浮上した配置計画ではない。
20年以上前から石垣島で軍事要塞化計画が進行していた。
(私は25年以上前に「石垣島で密かに進む要塞化工事」というテーマで記事を書いている)
そのとき、現地取材で石垣島のあまりの軍事的な優位(地形的)さに驚いた記憶がある。
そして昨年5月に石垣島に行って、その通りの施設が完成していたので再び驚いた。

でも石垣島には自衛隊部隊を常駐させないと考えていた。
あくまで有事に緊急配備されるものと想定し、それまでには石垣島で機動展開訓練だけを行うものと考えた。
だから、もし新戦闘機部隊の新配備を総合的に考えるなら、空自・戦闘機の軍事拠点は石垣島となるが、あくまで石垣島展開は有事かぎりとして考えるなら、下地島空港に取りあえず配備して、有事には下地島から石垣島に拠点を移すこともありだ。
それほど有事に下地島空港を守ることは難しい。

昔、名将の城を見て戦いの技量がわかったように、石垣島の新空港には軍事的に見て昔の名城を感じさせるものがある。
下地島空港にはその軍事的な美しさがない。



JB Press 2015.12.3(木) 北村 淳
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45408?page=5

中国空軍が編隊飛行で牽制
「南シナ海に近寄るな!」
11機が宮古水道上空を飛行、爆撃機で日本を牽制


●H-6Kミサイル爆撃機(写真:防衛省)

 11機の各種航空機からなる中国空軍航空機編隊が、宮古島と沖縄島の間のいわゆる宮古水道上空を西太平洋に抜けて飛行した。
 編隊は再び東シナ海上空に戻り、一部の航空機は尖閣沖や奄美大島沖上空に接近してから中国に帰投した。

 航空自衛隊は編隊に対して戦闘機を緊急発進させ警戒に当たったが、領空侵犯を企てるといった行為は発生しなかった。
 防衛省は、航空自衛隊が撮影した中国軍機の写真と飛行経路図を公表した。
 一方、中国人民解放軍当局は「今回の編隊飛行は長距離戦闘能力を向上させるための訓練である」と発表した。


●中国航空機編隊が飛行した経路(図:防衛省)

■8機のミサイル爆撃機と早期警戒機、2機の情報収集機

 この航空機編隊を形成していたのは、
 轟炸6K型(H-6K)ミサイル爆撃機8機、
 空警200型(KJ-200)早期警戒機1機、
 運輸8電偵型(Y-8DZ)電子情報収集機1機、
 ツポレフ154M型(TU-154M)情報収集機1機
であった。

 H-6Kミサイル爆撃機は、古くから人民解放軍が使用しているH-6型爆撃機ファミリーの一種であり旧式機との誤解を受けやすいが、2011年に1号機が就役したH-6爆撃機の新型バリエーションである。

 この爆撃機は主翼に6基の大型ミサイルを装着できるようになっており、最大積載量は12トンと言われている。
 そのため、長剣10型(CJ-10)長距離巡航ミサイルを6基装着することができ、日本はもちろん西太平洋地域のアメリカ軍にとっては、恐るべき爆撃機である。
 ちなみにCJ-10巡航ミサイルの射程圏は少なくとも1500キロメートル以上と考えられているため、上海東方沖400キロメートル上空から東京を攻撃することが可能である。

 H-6Kの主たる任務は、長距離対空ミサイルによって西太平洋上空の自衛隊と米軍の早期警戒機や早期警戒管制機を攻撃することにあると言われている。
 また、対艦攻撃ミサイルにより、やはり西太平洋に展開する自衛隊や米軍の艦艇を攻撃することも重要な任務とされている。

 今回の訓練では、航空自衛隊が撮影した写真で明らかなように、H-6Kの主翼には当然のことながらミサイルは装着されておらず、ミサイル装着ポイントを鮮明に見ることができる。
 もっとも、
★.ミサイルを装着したH-6Kミサイル爆撃機が領空に接近してきたならば、
 “専守防衛”の自衛隊といえども撃墜対象としなければならないのは軍事常識である(アメリカ軍ならば当然そうする)。

 8機のミサイル爆撃機にKJ-200早期警戒機が同行したのは「長距離戦闘能力の訓練」である以上当然であるが、Y-8DZ電子情報収集機とTU-154M情報収集機を同行させたのは興味深い。


●KJ-200早期警戒機(写真:防衛省)


●T-8DZ電子情報取集機(写真:防衛省)

★.Y-8DZ電子情報収集機は
 自衛隊や米軍の航空機や艦艇から発せられている「ELINT」と呼ばれる通信以外の各種電子情報を収集するためのハイテク情報収集機である。

 また、
★.TU-154M情報収集機
 合成開口レーダー(SAR)開発テスト用とされている高性能情報収集機である。
 航空自衛隊の写真でも明らかなように、旅客機扱いで登録されているTU-154Mには国際民間機番号(B-4029)が付せられている。


■「A2/AD戦略」実施のための機動訓練

 このような多数の爆撃機編隊による長距離機動訓練は、人民解放軍の対米軍戦略である「接近阻止/領域拒否(A2/AD)戦略」の一環であることは明らかである。
 そのため、この種の中国軍機の動向に、アメリカ海軍をはじめとする米軍関係者たちはピリピリしている。

 すなわち人民解放軍は、第2列島線と第1列島線に囲まれる海域のアメリカ海軍艦艇(もちろん自衛隊艦艇も)に対して、DF-21D対艦弾道ミサイルによって攻撃を仕掛けるとともに、空軍のH-6Kミサイル爆撃機や海軍航空隊のH-6Gミサイル爆撃機などによってもミサイル攻撃を実施して、第1列島線への敵艦の接近を阻止しようというのである。


●第1列島線と第2列島線

南沙諸島での米海軍の活動への牽制

 また今回の編隊飛行は、A2/AD戦略実施のための訓練という意味合いに加えて、南沙諸島でのアメリカ海軍の動きを牽制するという意味合いも持っている。
 なぜならば、今回爆撃機編隊が進出した西太平洋空域への中国大陸からの距離は、海南島の航空基地から南沙諸島の中国人工島周辺空域までの距離に対応しているからだ。

 南沙諸島の中国人工島に3カ所建設されている3000メートル級滑走路(いずれもH-6爆撃機が使用可能)はいまだに航空基地として稼働が始まっていないため、南沙諸島周辺にアメリカ艦隊が展開した場合には、人民解放軍は海南島や西沙諸島の航空基地を本拠地にした戦闘攻撃機や爆撃機によって攻撃することになる。

 今回の訓練には、戦闘攻撃機は同行しなかったが、8機ものミサイル爆撃機を繰り出しての訓練には「アメリカ海軍の南沙人工島周辺海域での活動に対する牽制」という目的があるのは明らかである。

■日本に対する警告、威嚇という側面も

 アメリカの南シナ海での行動への牽制と同時に、巷で取りざたされている、日本政府が海上自衛隊の航空機や艦艇を南シナ海へ派遣することに対して警告を発したという側面があることも否定できない。

 いくら機動訓練と言っても、ミサイル爆撃機8機というのは数が多すぎる。
 米軍関係者には
 「日本政府が南シナ海問題でアメリカに同調して、実際に哨戒機でも派遣したならば、人民解放軍は調子に乗って10機どころか30機の爆撃機編隊による“長距離機動訓練”を実施しかねない」
と中国側によるエスカレートを予測している。

 また、西太平洋上空での訓練の帰途、1機の情報収集機が尖閣諸島空域に接近し、爆撃機1個編隊が沖縄島沖から奄美大島沖空域を北上してから帰投したことは、安倍政権が南西諸島防衛強化にゴーサインを出したことに対応するデモンストレーションであると考えられる(これは逆に言えば、人民解放軍は南西諸島に地対艦ミサイル部隊や地対空ミサイル部隊が配備されることを嫌っているということの何よりの証左であろう)。

 このような日本政府に対する威嚇的意味合い以外にも、Y-8DZ電子情報収集機とTU-154M情報収集機を同行させたということは、自衛隊とこの地域における米軍と自衛隊の対電子戦(ECM)能力の確認とELINT収集という実体的任務もこなしたと考えられる。

■日本へのアメリカの圧力はますます強まる

 今回の多数のミサイル爆撃機による機動訓練だけでなく、人民解放軍は、対アメリカ軍のA2/AD戦略を実施するために、潜水艦や水上艦艇に加えて各種航空機を西太平洋に展開させるノウハウの涵養に多大なる努力を払い始めている。

 その主敵であるアメリカとしては、なんとしてでも中国軍機や艦艇の動きを第1列島線内に封じ込めておきたいと考えるのは当然である。

 しかし、人民解放軍はDF-21D対艦弾道ミサイルにとどまらず、ミサイル爆撃機や戦闘攻撃機から発射する各種ミサイルを質・量ともに飛躍的に強化してきている。
 そのため、かつてはせいぜい中国潜水艦に警戒する程度で比較的安全に第1列島線付近に展開可能であった米海軍空母打撃群による作戦も、厳しい状況になりつつある。

 アメリカ政府はますます日本政府対して南西諸島防衛を強化するよう様々な形で圧力をかけてくることになるだろう。

 ただし、アメリカにとっての南西諸島防衛と、日本自身の南西諸島防衛とは、若干意味合いが違う。
 日本政府がアメリカ政府や、いわゆる「ジャパンハンドラー」(日本を操る人たち)の言う“南西諸島防衛強化”に唯々諾々と従っているだけでは、日本国民に対する責務を果たせないことは明確に認識すべきである。










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