2つの対立した論説。
『
WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2015年11月29日(Sun) 足立倫行 (ノンフィクションライター)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5669
プレミアム世代の落ちこぼれ?
「人類史上初めての熟成世代」と言われる団塊世代
この11月に、熊本大学名誉教授の徳野貞雄さんが東京新聞にエッセイ(上・下編)を掲載していて、ちょっと気になる言葉があったため切り抜いておいた(私はいまだに新聞2紙を購買し、スクラップする世代である)。
徳野さんは日本村落研究学会会長であり「道の駅」の命名者として知られるが、「暮らしの視点からの人口減少社会」と題した今回のエッセイでは、
現代の人口減少を政府のように「国家の危機」として捉え、地方自治体に補助金がらみで無理な人口目標を追わせるのではなく、
少子・高齢化は成熟社会の証しと認識し、
人口減少を前提とした「縮小型社会モデル」を構築・模索していくことこそ政策的に急務、
と提言している。
私が注目したのはその下編。
人口減少社会の典型は農山村の過疎地だが、徳野さんはそんな過疎地に大量出現している60~75歳の人たちを「プレミアム世代」と呼び、地域社会の担い手として大いに期待するのだ。
■人類史上初めての熟成世代の登場
というのも、この「プレミアム世代」は腰も曲がっておらず身体的にカクシャクとしていて、しかも、それぞれが技術・知恵や人生経験を有し、「おカネも持っている」。
また、子育てのしがらみや会社・組織の縛りがなく、家族や地域のために自由に行動ができ、同時に自分の力の限界も知っているからだ。
1960年に日本全体で660万人(人口の7.1%)だった60~74歳は、
2010年には2500万人(19.7%)と約4倍に増えた。
この変化を「高齢化社会の不安・危機」と煽るのではなく、
「人類史上初めての熟成世代の登場」と捉えよう、
と徳野さんは提唱する。
現に、「集落の維持」「環境の維持」などの「地域活動」にもっとも熱心に取り組んでいるのがこの熟成世代。
そういう人々こそ「役立ちプレミアム世代」なのだ、と。
なるほど、と私は思った。
私の暮らす相模原市は首都圏の外縁部に位置し、緑は多いけれど農山村地域ではない。
それでも平日に自宅周辺を歩くと、白髪・禿頭の高齢者だらけである。
コンビニやスーパー、バス停や駅前では右を見ても左を見ても年輩者ばかり。
こうした情景を嘆息とともに受け止めずに、「人類史上初めての熟成世代の登場」と見方を変えれば、確かに予想外の知恵も湧いてくるのかもしれない。
そもそも、現在60代後半で団塊世代の私は「プレミアム世代」のド真ん中。
自分自身の足許を見つめ、来し方行く末を考えるためにも、自らを人類史上初めての熟成世代」の一員と捉える方が、新鮮で有意義、かつ面白い気がする。
熟成の「プレミアム世代」と言えば、先日の高校同窓会で思い当たることがあった。
■「花の乙女」や「紅顔の美少年」
“あれから50年”の変貌は想定内
私は神奈川県立多摩高等学校出身なのだが、今年は卒業50周年ということで何年ぶりかの同期会があり、新宿の高層ホテルのホール会場に約90名が集まったのである。
「花の乙女」や「紅顔の美少年」の“あれから50年”の変貌は想定内。
改めて驚いたのは、会場入口で配られた出席者90名の近況を綴った<交流コメント集>だった。
親の介護や孫の世話、趣味三昧(ゴルフ、水泳、園芸、囲碁、旅行、コーラス、美術館巡りなど)は当然としても、意外に何かを「勉強中」やボランティア活動が多いのだ。
書道や写真、『論語』の教室に通ったり大学の公開講座を受講したり、外国人の子供の学習支援や小学校、図書館での本の読み聞かせ、少年野球の球団代表、東日本大震災復興支援の海岸林再生プロジェクトへの参加など、知的好奇心の方向や地域活動の分野が多岐にわたっている。
今も現役で仕事を続けているのは私を含め10人ほどで、大半の同期性は退職した年金生活者なのだが、自分の少年時代、青年時代を振り返っても、当時の年輩者がこれほど多彩にして充実(?)した退職生活を送っていたという記憶はない。
「一番の楽しみは孫と一緒に信州の別荘で過ごすこと」
「秋には(夫と)また南仏で2~3カ月滞在」
などサラリと記されたコメントを読むと、
「イマドキの庶民の老後はどれほど優雅なのだ!?」
と唖然とする。
こういう例を紹介すると「それは出席できた幸運な少数者」という声が必ず上がるが、今回は出席できなかった137名のコメント集も<その2>に載っており、そちらを読んでも「意気軒昂な退職者」像は変わらない。
もちろん「病気療養中」や「体調不良」も散見するが、地域ボランティア活動や習い事と重なっての欠席がかなりあり、中には
「脱サラして有機農業のプロ百姓」や
「約40坪の庭を入手してバラの庭作り」
「今回はカナダ行とぶつかって欠席」
など、旺盛な行動力が垣間見える様子は出席者たちと大差ないのだ。
当日は、誰彼となく熱に浮かされたように喋っていたので頭の中が整理できなかったものの、日が経って10ページに及ぶ<交流コメント集>を読み直してみると、
我々ジジババ世代が社会的にいかに「プレミアム(付加価値付きの熟成)世代」が、よくわかる。
過去に例がないほどの、豊かで、自由で、年を取った連中の大量出現なのだ。
■生きている限り働き続けねばならない
もっとも、私個人は、「プレミアム世代に属していても例外的存在では?」と思う。
何より、無年金者だ。
大学を中退してから一度も会社勤務がなく、ずっと収入不安定なフリーなので、厚生年金も国民年金も無縁。
旧友たちのように「まだ仕事中」なのではなく、生きている限り働き続けねばならない。
家はあるが、亡父から相続したもの。
しかも実際住み始めたのは今年の夏からだ。
それに私は多摩高校の卒業生ではない。
多摩高校に入学はしたが、在学は2年生の終わりまでで、卒業したのは長崎県の高校だ。
そのあたりのハミ出し具合は、これからいずれ触れることになるだろう。
ともあれ私は、
「プレミアム世代」のド真ん中にいる「こぼれプレミアム」
ということになる。
』
『
ダイヤモンドオンライン 2015年12月4日 有井太郎
http://diamond.jp/articles/-/82697
老後に夢も希望もない!
現役世代に忍び寄る「下流中年」の足音
足もとで「下流老人」の増加が社会問題化しつつある。
しかし、このような“下流化”は決して高齢者に限った話ではない。
まだ「現役」と言える中年世代にも起き始めている現象なのだ。
さらに今の中年世代が高齢化すると、今よりも厳しい“下流老人”になってしまう可能性もあるという。
中年世代に忍び寄る「下流化」の現実をお伝えしよう。(取材・文/有井太郎、編集協力/プレスラボ)
◆「このままではやっていけない」、中年世代を襲う“下流化”の現実
“下流化”は、決して高齢者に限った現象ではない。
まだ現役と言える中年世代にも起き始めているのだ
「大学を出た娘は実家でニート生活。
この状態が続けば、ウチは本当にやっていけません」
高齢者たちの貧困化が止まらない。
たとえば、受給者が近年増え続けている生活保護において、最も受給率が高いのは「高齢者世帯」だ。
今年8月の厚労省の発表を見ると、高齢者世帯が全体の49.3%を占めているという。
日本人の“老後”は、想像以上に厳しいものとなっている。
また、今年6月には、71歳の男性が新幹線の車内で焼身自殺するという衝撃的なニュースがあった。
報道によれば、事件を引き起こした高齢者も「生活苦を嘆いていた」という。
このような状況に警鐘を鳴らし、ベストセラーとなった本がある。
それが、今年6月に刊行された著書『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新聞出版)だ。
著者は、NPO法人ほっとプラスの代表理事を務める藤田孝典氏。
同氏は、生活困窮者の相談支援を行っており、その中で出会った貧困に喘ぐ“下流老人”たちの実態を紹介。
下流化を生んだ原因や、社会的な問題点を指摘した。
ではなぜ、このような高齢者の下流化が起きたのか。
藤田氏は、その理由をこう考えている。
「かつての高齢者は、年金に加えて、子世代のサポートや夫婦での助け合いなどにより老後の生計を立てていました。
しかし現代では、家族機能の低下やワーキングプアの増加によって子世代の助けがなくなったり、未婚者が増加したりと、老後の経済的な助けを受けられる要素が少なくなっています。
これにより、生活が貧しくなっているんです」
これまで高齢者を支えていた様々な要素が、時代を経るにつれてなくなってきている。
その結果、下流老人が生まれているようなのだ。
こういった下流老人の話を聞いたところで、現役で働く30代後半~50代の中年世代は、どこか他人事に感じるかもしれない。
だが、その考えは捨てたほうがよさそうだ。
というのも、藤田氏によれば「下流化は中年世代にも起きている」という。
「高齢者だけでなく、その下の世代の下流化も顕著です。
中年世代で貧困に苦しんでいる人は多く、相談件数も増えていますから。
さらに深刻なのは、今の中年世代がシニアになったとき。貧困化は急速に増し、今よりもずっと厳しくなるのは確実です。
だからこそ、中年世代はすぐに対策を考えなくてはなりません」
まさに“今”起きているという「中年の下流化」。
「下流老人」ならぬ「下流中年」も増えているようなのだ。
このままいくと“未来”には、「さらに深刻な下流老人の増加」が待ち受けているという。
中年世代の老後は、より一層厳しいものになるのだろうか。
下流中年という「今」の問題と、その中年世代を待ち受ける「過酷な下流老人」という「未来」の問題。中年世代にとっては、決して無視できないテーマと言えよう。
そこで本記事では、「今」と「未来」の2つのテーマを軸に、「中年×下流化」について考えたい。
◆給料が若手よりも少ない!
今そこにある「下流中年」という現実
まず取り上げるのは、すでに起きている「下流中年」という現実だ。
下流化は高齢者に限った話ではなく、現役のビジネスパーソンである中年世代にも広がっているのだ。
国税庁による「民間給与実態統計調査」を見ると、1人あたりの年間平均給与は継続的に下がり続けている。
平成16年には438.8万円だったのが、平成26年には415.0万円となっているのだ。
この調査で対象とされた人々の平均年齢は平成26年版で45.5歳だから、中年世代の給与減は明確と言える。
年齢階層別に見ても、平均給与は35歳~59歳まで一様に減少している。
このデータを見る限り、世間で実際に下流中年が増えていてもおかしくはない。
実際、筆者がリサーチしてみると、「下流中年」と呼べる事態に陥っている人は少なからずいた。
その何例かを紹介していこう。
まずは、データにも見られるように「給料の少なさ」が原因で下流化した例だ。
人材支援企業で働くMさん(39歳)は、35歳のときに転職を決断。
新卒から勤めていた企業を辞めて、現在の会社に入った。
このとき、Mさんは結婚して3年目。前の会社では残業が多く、休日出勤もおぼつかなかったため、「子どもをつくることも控えていた」という。
そのこともあって転職をしたのだが、この判断は決して良い結果を生まなかったようだ。
Mさんがその理由を説明する
転職した企業は、一見問題なさそうだったのですが、入ってみるととにかく転職組には厳しく、給料が全然上がらないんです。
話をよく聞いてみると、新卒で入った20代中盤の社員のほうが多くもらっている状態でした。
結局は、前の会社の方が高収入だったという結末です。
転職してからしばらくして子どもも授かったのですが、これからやっていけるか不安です」
今の状況を変えるには、「待遇の良い企業へもう一度転職するくらいしか手はない」とMさんは肩を落とす。
しかし、一度転職した彼にとって、さらにもう1回会社を変えるのは「さすがにリスクがある」という。
子どもがいることからも、失敗はできない。
このような“がんじがらめ”の状況が、彼を下流中年へと陥れているのだ。
ブラック企業での勤務により、下流化の波にのまれている人もいる。
都内の広告制作会社で働くKさん(42歳)は、今の会社に勤めて16年目。
大学卒業後、あてもなく暮らしていたが、今の会社の社長に拾ってもらったとのこと。
彼はそれを感謝している。
ただし、その会社は典型的なブラック企業で、「給料はほとんど上がらない」とKさんは嘆く。
さらに、彼自身の意識が自らに下流化を促しているとおぼしき側面もある。
「今の会社を辞めたところで、自分が特有のスキルを持っているわけではありません。
ですから、再就職が見つかると思えないんです。
そう考えると、結局この会社に残り続けるしかないんですよね」
なお、Kさんによれば「社長は最近、この会社の解散を考えている様子」とのこと。
もしそれが現実になれば、彼はいよいよ本格的な下流中年のリスクを背負うことになる。
20代前半の若者ならまだしも、中年世代の転職で給料が上がらないのは苦しい。
実際に転職して給料が上がらなかったMさんと、給料の上昇が見込めず転職できないKさんには、似たようなリスクが根本にあるのかもしれない。
そもそもMさんやKさんの年齢では、世の中の求人ニーズは若手と比べてかなり少ないのも現実。
よしんば熱心に転職活動をしたところで、拾ってくれる会社があるかどうかもわからない。
◆ストレスやうつによる離職が致命傷に、なんとなく下流化していく人たち
30代前半までの「離職」が、中年での下流化につながるケースもある。
Sさん(36歳)は、現在フリーター状態だ。
彼は4年前まで一流企業に勤めていたが、日々の仕事にストレスを感じて退社。
それからフリーターを続けているという。
「会社を辞めるときは、もう会社員にウンザリして『一生フリーターでいい』と思いました。
それで2年ほど暮らしたのですが、実際にフリーターになってみると、生活を切り詰めるのは辛く、また将来も不安になってきます。
ただ、いざ会社員として復帰しようにも、なかなか再雇用してくれる企業はなく……。
今考えると、4年前の決断は安易でしたね」
会社員のストレス問題は、ここ数年の間にことさら論じられるようになった。
そしてそのストレスは、働きざかりの社員の離職を生んでしまう。
だが、そういった離職は、生涯のキャリアを考える上で“致命傷”になる可能性も低くない。
そしてその致命傷が、下流中年のきっかけをつくるのだ。
離職のキズに悩まされている人は他にもいる。
Nさん(38歳)は30代前半でうつを発症し、最終的に中途採用で入った企業を退社してしまった。
その後、時間をかけて復帰を目指したが、「なかなか雇ってくれる会社は見つからなかった」という。
結局、彼はアルバイトとしてカラオケ店に勤め、そこから社員になった。一安心かと思いきや、「給料は契約社員のようなもので、同年代と比べるとかなり低い」という。
かといって再転職するのはさらに難しく、「切り詰めてやっていくしかない」と憂いている。
◆親の介護や子どものニート化
思わぬ家庭問題で下流化することも
堅実に働いている人でも、予期しなかった原因により下流化してしまうケースはある。
その1つが「親の介護」だ。
金属メーカーの営業担当であるHさん(46歳)は、独身で75歳の母親と2人暮らしをしている。
姉は結婚して地方に嫁いでおり、Hさんが母の面倒を見ている状態だ。
70歳を過ぎるまでは元気だったHさんの母だが、病を患ったのを機に、めっきり活力をなくしてしまった。
用を足すにもHさんが面倒を看なければならないこともあって、いわば介護が必要な状態となったのである。
Hさんは未婚のため、自分の妻に母のサポートを任せることはできない。
姉も遠方に住んでおり、まだ小学生の子どもがいる。
彼は仕事を続けながら母を看ていたが、それも難しくなってついには会社を辞めてしまった。
Hさんは「このまま仕事を続けるのは厳しいので仕方なかったです」と語る。
しかし、今の生活に入ってからもう3年が経とうとしており、貯金を切り崩して生活している状況。
母親を施設に入れるのもためらわれ、「自分の生活を見直すしかない」と話している。
親の介護だけでなく、予期せぬ「子どもへの援助」が下流中年を生むケースもある。
Aさん(49歳)は2人の子を持つ父親で、製造会社に勤務するサラリーマンだ。
高校卒業後にすぐ社会に出たAさんは、
「子どもを大学に入れるとこんなにお金がかかるなんて思わなかった」
と言う。
「うちは娘が2人いて、歳は2つ違い。
なので、姉妹2人とも大学に通っている期間は厳しかったですね。
2人とも東京の大学だから、家賃と授業料、生活費を含めると、月何十万円と出ていきます。
これには焦りました」
それでも、長女は大学を昨年卒業し、苦しい状況は終わったかと思われた。
が、本当に「予想外」だったのはそれから。
大学を卒業した長女が、働かずに実家にいるのである。
「正直なところ困っています……。
社会人になったら、今度は娘たちが働いて僕らをサポートしてくれると思っていましたから。でも現実は、ニート状態の娘を援助している状態。
妻もパートで毎日遅くまで働いていますが、このままでは本当にやっていけません」
たとえ堅実に仕事をしている中年世代でも、親や子などとの関係によって、一気に下流へと転げ落ちる可能性はある。
これらのエピソードを見ると、誰でも「下流中年」に突然なってしまう恐れを抱くのではないだろうか。
◆死ぬまで働かずに生きていけるのか?
現役世代が考えるべき「老後の生活イメージ」
ここまでは「下流中年」の事例をいくつか紹介してきた。
これらは、中年世代にとって「今」の問題であり、いずれも切迫した内容だ。
とはいえ、あくまで現在そういった悩みを抱えず、堅実に、したたかに暮らしている中年世代もいる。
そんな人たちからすれば、やはり「下流中年」は他人事に思えるのではないだろうか。
しかし、安心してはいけない。そんな堅実な中年世代でさえも、あと10年~20年が経って高齢者になると、下流化の渦に巻き込まれているかもしれないのだ。
これこそが、前述した「未来」の問題である。
世の中で深刻な下流老人が増え、自分自身もその1人になってしまうのではないかという不安だ。
冒頭でコメントをもらった藤田氏は、今後「下流老人」問題がさらに深刻になりそうな理由をこう説明する。
「下流老人の要因となるのは、これまで老後の生活をサポートしていた要素がなくなっていること。
その傾向は、今の中年世代が老後を迎えたとき、明らかに顕著となります。
退職金は減るでしょうし、企業年金も次々に解散しています。
非正規雇用の労働者は4割になり、年金の受給額が減ることも確実。
今の高齢者よりずっとサポートのない生活が待っています」
子世代の金銭的な助けはさらに望めなくなり、未婚率の増加で配偶者との支え合いも少なくなる。
退職金は少なく、年金受給額も減っていくだろう。
その一方で、我々の平均寿命は伸び続けている。
今や90歳まで生きる人も珍しくなくなった。
藤田氏は、
「60歳から90歳まで、30年間働かずに生きていけるかをきちんとイメージしてほしい」
と中年世代に警鐘を鳴らす。
「老後も働けばいいと考えている人もいますが、高齢になると雇用状況は厳しいですし、肉体的にも想像以上に働くのは苦しくなります。
もちろん、病気を患うこともあるでしょう。
ですから、他人事と思わず今から準備しておくことが大切なのです」
老後に備えて、今から行うべき“準備”。
その具体例として、藤田氏は「老後の家計をシミュレーションすること」を挙げる。
「自分の収入レベルで、将来どのくらいの年金を受給できるのか計算してください。
たとえば、20歳から60歳まで平均月収25万円の人が40年間厚生年金を払った場合、もらえる年金は月々14万円弱ほどです。
それを今の生活収支と照らし合わせて、自分に必要な貯蓄を考えておくことが大切です」
冒頭でも述べたが、これまでの高齢者はもともと「年金だけで生活できていた」のではなく、「年金以外のサポートがあって生活できていた」と言える。
しかし、そのサポートはどんどんなくなっていくのだ。
となれば、目減りする分をみずからの貯蓄で補うしかない。
そのためのシミュレーションが必要と言えよう。
◆下流老人の増加は激しさを増すばかり
もはや自分の老後は自分で守るしかない
11月27日、安倍晋三首相は平成27年度補正予算案の編成を指示した。
その中で首相は、低所得世帯の年金受給者を対象に、1人3万円ほどの臨時給付金を出すことを考えているという。
まさに「下流老人」に向けた措置とも言える。
だが、政府によるこうした“その場だけ”の対策が、問題の解決につながることは決してないだろう。
少子高齢化が進み、家族の金銭的な支え合いが薄くなっていく未来では、高齢者の下流化は激しさを増すばかり。
一時的な給付金は、まさに「焼け石に水」である。
それほど未来は厳しい状況であり、その予備軍が今の中年世代だと言える。
我々にとって、高齢者の下流化を防ぐシステムや制度の登場に期待したいのは言うまでもないが、並行して下流老人にならないための自己防衛策を早急に講じるべきだろう。
それこそが、穏やかな老後を過ごすための大前提と言える。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年12月15日(火) 19時20分
http://www.recordchina.co.jp/a124978.html
韓国の有効引退年齢は72.9歳!
OECDで最も高い
2015年12月14日、韓国・中央日報によると、経済協力開発機構(OECD)がこのほど発表した加盟34カ国の「有効引退年齢」に関する報告書で、韓国の引退年齢が加盟国の中で最も高いことが分かった。
報告書によると、2014年の韓国人男性の「有効引退年齢(労働市場から完全に退出する年齢)」は72.9歳で、OECD加盟国の中で最も高かった。
2位以下には
(☆韓国:72.9)
メキシコ(72.0歳)、
日本(69.3歳)、
ニュージーランド(67.2歳)、
スイス(66.3歳)、
米国(65.9歳)
が続いた。
一方、韓国人女性の「有効引退年齢」は70.6歳で、OECD加盟国のうち70歳を超えた国は韓国のみ。
2位以下はメキシコ(68.1歳)、日本(67.6歳)、ニュージーランド(67.0歳)、米国(64.7歳)、スイス(64.5歳)となった。
また、引退後に余生を楽しむ時間も、韓国は加盟国の中で最も短かった。
男性は11.4年で加盟国の平均(17.6年)より6年、女性も16.6年で平均(22.3年)より5年ほど短かった。
さらに高齢者の所得も、加盟国の中で韓国が最も低かった。
OECDは「国が年金受給者の貧困を予防するためには、年金をはじめとする社会安全網(セーフティーネット)の支出に対する改革が必要」と指摘。
特に、韓国については「年金改革とともに、労働市場を改革しなければならない」と強調した。
』
JB Press 2015.11.9(月) 末永 恵
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45184?utm_source=editor&utm_medium=self&utm_campaign=link&utm_content=recommend
アジアの少子高齢化(1)
一人っ子政策やめても焼け石に水、衰退に打つ手なし
日本以上の猛スピードで進む
中国が40年近く続いた「一人っ子政策」を廃止した。
遅すぎたという意見もあるが、
不振に陥っている経済の立て直しを目指すには、
労働人口減少という構造問題にも積極的に手を打つ必要があった
のだろう。
しかし、「多子多福(子供が多ければ多いほど、福が積もって、多くなる=福とは老後の保障など)」
という中国の伝統的な考え方は人口集中型の都市部では極端に薄れてきていることも事実。
「二人っ子政策」に移行しても、今後、中国ではベビーブームは巻き起こらないし、労働人口減少の勢いも止まらない可能性が高い。
背景には、女性の教育水準向上に伴う社会進出が顕著で、さらに子育てや住宅費用が高騰していることが挙げられる。
■中国だけでなくアジア全域の問題に
深刻なのは、少子高齢化の動きは、決して中国だけではないということだ。
世界経済のエンジン役として注目されるアジア地域で、実は日本以上に少子高齢化が進んでいる。
日本はこれまで世界最速で世界一の「超高齢社会」になったと言われてきたが、どうやら少子高齢化は日本の“専売特許”ではなくなりつつあるようだ。
日本はアジアで最も早く
人口ボーナス(豊富な生産年齢人口=労働人口の増加で、経済成長を促す状態)
が始まり、最も早く終焉を迎えた。
その日本を踏襲するように2015年を境に、中国をはじめ、韓国、シンガポール、香港、台湾に加え、成長著しいASEAN(東南アジア諸国連合)のタイも、経済成長を後押ししてきた要因の「人口ボーナス」の終焉を迎えつつある。
そして、
「人口オーナス」(高齢人口急増、生産年齢人口減少、少子化で財政、経済成長へ重荷となる状態)
へ移行するだけでなく、
「高齢化」から「高齢」社会に移行するペースも、日本を抜き「世界最速スピード」となってきている。
例えば、合計特殊出生率(女性1人が生涯に出産する子供の数)を見るとよく分かる。
日本は2013年、1.43だったが、
中国は(2010年)は、1.18、
韓国も1.18、
シンガポールが1.19、
香港が1.12で、
タイでも1.39
となっている。
<<有料会員のみ>>
』
『
JB Press 2015.11.16(月) 末永 恵
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45255?page=2
アジアの少子高齢化(2)
老人の国へまっしぐら、高学歴女性ほど結婚しないタイ
~バンコクの合計特殊出生率は0.8
政府がお見合い会を主催しなければならなくなった国、シンガポールのケースを前回は見てきた。
しかし、「笛吹けども踊らず」で、少子化対策に特効薬はないようである。
ASEAN(東南アジア諸国連合)で第2位の経済大国、さらにこれからも投資拡大が期待されているタイも、実は少子高齢化問題が重くのしかかってきた。
タイと言えば、日本と二人三脚で発展してきたと言ってもよいほど日本企業の進出が著しい。
タイで大規模なデモが発生して放火されるような事件があっても、日系企業の入っているビルは絶妙に避けるとも言われている。
日本にとってもアジアの拠点として最も重要な国と言ってもいい。
しかし、この国でも少子高齢化が急ピッチだ。
いまや日系企業がタイに進出する際の問題は、賃金やカントリーリスクの上昇ではなく、実は人手不足(高度人材含む)にある。
■あと15年で高齢者率25%に
タイ国家統計局によると、2014年の60歳以上は6500万人の人口のうち約1000万人で、全人口の約15%にも上り、6.5人に1人が60歳以上という、すでに立派な高齢化社会となってしまった。
1994年に約7%だった60歳以上人口が2012年には約12%へと跳ね上がった。
高齢者数は2030年には1760万人(総人口の約25%)、
2040年には2050万人(30%)
に達すると見込まれている。
また、合計特殊出生率も1.39と日本より低く、首都バンコクに限っては0.8とも言われ、
平均年齢も他のアジア諸国よりはるかに高い34歳
(ASEAN域内で2番目、トップはシンガポール)。
ASEAN域内では、
イスラム国家ゆえに人口増が見込まれるインドネシアやマレーシアを除けば、タイはシンガポールに次いでいち早く、“超”少子高齢化社会へ向かうのは間違いないだろう。
他のアジアの国と同様、
1].医療技術発展に伴い平均寿命が伸び、高齢化に拍車がかかり、一方、
2].人口抑制策を進めるなか、女性の高学歴化による社会進出拡大で晩婚化、未婚化が急増していること
が背景にある。
筆者の友人のタイ女性も独身生活を謳歌している。
30代前半の彼女は、タイの東大と呼ばれる最難関のチュラロンコン大学を卒業し、米スタンフォード大学で経営学修士を取得。
現在バンコクの欧米企業で管理職を務めている。
月収は日本円に換算して約80万円。
彼女によると、タイ、特に都市部の高学歴の女性は本当に結婚しないという。
彼女曰く、
「皆、結婚したくないのではない。
だけど、特にタイの男性は働かないし、女性が家計を支えて働いているケースも多い。
タイに理想の相手がいないだけ。
今の生活を切り詰めてまで、という結婚願望がないとも言えるかな」
とあっけらかん。
日本では「ワーキングプア」層の拡大で結婚できない男性が増えているが、
タイでは女性や男性で年収が低いほど結婚率が高く、
その反対に年収が高いほど結婚率が低いという現象が起きている。
■地方でも子供は最大2人まで
タイの場合、上述の友人のケースだけでなく、本人が高収入だから結婚しないというより、贈与税(2016年2月施行予定)や固定資産税(2017年施行予定)もないタイでは
一族の資産が多く、裕福なステイタスや生活を手放したくないという社会構造事情も左右しているかもしれない。
また、「結婚しない女」だけでなく、晩婚化で「子供を生まない女」も増えてきており、今では都市部に比べ子供が多いはずの地方ですら、夫婦の間に子供は2人までというのが常識化しているという。
そんななか、政府(軍事政権下)は政治経済の制度改革を図る「国家改革議会」が少子高齢化対策を重点施策と位置づけ、このほど同対策のため2017年度(2016年10から2017年9月)から、個人所得税の控除枠拡大計画を明らかにし、子育て支援目的の「年少扶養控除拡大」を盛り込んだ。
現行では年少扶養控除は「子供3人が限度」(子供1人当たり1万5000バーツ=約5万円)だが、これを「無制限」に変更することで、4人目以降の多産出産にインセンティブを与えようというもの。
指定教育機関就学の場合は、「25歳まで」が控除対象。
今後は「年収の40%、最大6万バーツ(約19万円)」の基礎控除拡大も検討中だという。
また、少子化対策だけでなく高齢社会に向けた取り組みも、まだ始まったばかりだ。
最大の問題は、高齢者の低所得問題。タイの国家統計局などの調べでは、高齢者のうち、貯蓄のある人は34%にとどまり、その半数以上が貯金が全くない状態で、「貧困高齢者」が増えているという。
経済発展に伴う物価上昇などで、公的年金では賄えず、生活費などのほとんどを子供や孫からの仕送りなどに依存し、医療費などへの将来不安などを理由に高齢者の自殺が20%近くにまで増加し、年々増加傾向にあるという。
首都バンコクには、24時間体制の高齢者専門医療施設があるが、破格な入居料で富裕層に限定されているのが現状だ。
とりわけタイでは、高齢化対策は少子化を上回る緊急課題。医療や介護サービス、さらには年金問題など取り組む問題は目白押しだ。
高齢者基金は設立されたものの、高齢者医療保険や老齢年金についてはまだまだ検討の段階。
■年老いた親が孤独死するケースも
制度面の問題だけでなく、少子高齢化問題は、タイの伝統的な家族制度の「大家族主義」も変えようとしている。
都市部でも農村部でも共働きの両親に変わって祖父母が子供の面倒を見て、家族を支えてきたが、その大家族主義も崩壊危機寸前だという。
経済成長の発展で農村の若い世代は都市部に移住、年老いた親が孤独死するケースも増えてきたという。
現在のタイの1人当たりのGDPは約5426ドル(IMF統計、2015年10月時点)。
今年にも人口ボーナス期が終焉すると見られるが、
先進国との経済や技術力と後発新興国の追い上げの狭間で、このままいくと、豊かになる前に老いていく事態に陥ることが予想され、まさに
「中所得国の罠」にはまってしまった
と言える。
こうした事態は、中国リスクを避けるためもあっていまなお進出が絶えない日本企業にとって厄介な問題だ。
アジアは日本と違って若い働き手がいっぱいいる、しかも賃金は安い――。
このような考えをいまだ持っているとしたら、それは幻想に過ぎない。
さて、次回はお隣の国、韓国と中国を取り上げる。
これらの国もまた深刻な事態に発展している。
』
『
JB Press 2015.11.24(火) 末永 恵
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45324
アジアの少子高齢化(3)
貧乏老大国が目前の中国、夢も希望も捨てた韓国
~国家消滅の危機にも
日本以上の猛スピードで進み始めたアジアの少子高齢化。
前々回は政府があの手この手で対策を打ちながらも一向に成果の見えないシンガポール、
前回は日本との関わりが非常に深いタイのケースを取り上げた。
今回は、お隣の国、韓国と中国の実情を見てみよう。
アジアの中でも日本以上に少子高齢化が加速・大問題化しており、とりわけ韓国はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で2002年 (1.17人)から13年間、出生率最下位という汚名記録を更新中だ。
昨年の合計特殊出生率は「1.21人」で、日本の1.43をはるかに下回り、前年よりは0.02人増加したものの、「国連人口基金(UNFPA)における世界人口現況報告書」によると、
韓国の2010~2015年の推計年間平均出生率は1.3人で、世界で3番目に低かった。
さらに、高齢化率は11.8%(2012年)で、日本の約24%に比べるとまだ低いが、高齢化社会(人口比率で65歳以上が7%以上)から高齢社会(同14%以上)へ移行する年数(倍化年数)スピードが異常に速い。
■世界屈指の超高齢社会が目前
2025年には20%、2037 年には30%、さらに2050年には約37%までに急上昇すると予測されており、
日本を超える世界屈指の「超少子高齢社会」になることはほぼ確実だ。
OECDによると、2050年までに韓国の65歳以上の高齢者人口は、15歳から64歳の人口を4分の3上回ると分析。
さらには、高齢者の約半数が国民平均所得の半分以下で生活を強いられているというから、タイと同様、「貧困高齢者」の問題も深刻だ。
仏教社会のタイと同じく、儒教社会の韓国でも、親の世話をするのが子供の務めとされる伝統が崩壊し、高齢者の自殺も同じく急増しているという。
英オックスフォード大学のデビッド・コールマン教授が
「韓国は世界で初めて、少子化で消滅する国となるだろう」
と発表しただけでなく、韓国の国会立法調査処も2014年、少子化が改善しない場合
「2750年に、韓国は消滅する」
という見解を明らかにしている。
こうした状況に韓国政府は「低出産高齢社会基本法」(2005年)を制定し、日本の少子化対策を参考に、低所得層への保育費補助、育休制度活性化、短時間勤務制度導入、保育所拡充などといった少子化対策を試みた。
しかし、これと言った効果がなく、最近は独自に新手の政策も実施し始めた。
★.1つは、無償保育の実施だ。
2013年から子育て費用削減を目的に、0歳から5歳児を対象に保育施設を無料化した。
当初は低所得層対象だったが、日本と同様、子供の数が少ないのは中所得者層で効果を疑問視する声が上がり、すべての子供を無償保育の対象に広げた。
その結果、働くお母さんが増え、女性の労働力拡大にはつながったものの、需要に供給が追いつかないうえに保育の質の悪さが大きな社会問題になっている。
★.さらに韓国政府が支援を拡大したのが国際結婚夫婦への補助策。
「多文化家庭支援法」を制定し、外国人配偶者には無料で韓国語教育に就業支援などを、また子供には、放課後の特別教育プログラムや相談事業などを実施するほか、韓国企業も奨学金支給、バイリンガル教育なども並行して行っている。
■外国からお嫁さんいらっしゃい
これらは主に「嫁不足」の対策と言える。
韓国人と結婚した、中国、フィリピン、ベトナム出身の配偶者やその間に生まれた子供たちを国の公的支援や企業の社会貢献支援対象として進めている。
さらには、高度な技能を持つ外国人や韓国系外国人を対象に、
二重国籍を認める国籍法の改正も実施。
また生産年齢人口減少に伴い、朝鮮族などの韓国系外国人の就業を優遇する訪問就業制も導入した。
サービス業、製造業、建設業など労働人口が減少している業種に、外国人労働者や朝鮮族など韓国系外国人が就労しやすくなった。
しかし、こうした政策も、あまりにも猛スピードで進む少子高齢化を食い止めるほどの効果は期待できない。
出生率の低下の主な原因は、
経済発展に伴う女性の高学歴化と社会進出で、晩婚化と未婚化が進んでいるためだ。
2014年の初婚年齢平均は、男性が32歳、女性が29歳で、日本以上のペースで晩婚化が進み始めている。
さらに、「結婚しない男女」も急増中だ。
急速な社会の変化で、結婚に対する価値観も大きく変わった結果、特に家事や育児などの負担で仕事と家庭の両立ができなくなるだろう、と結婚する前から「非婚」を決めている女性が急増している。
また、経済低迷に伴う就職難も非婚化に拍車をかけている。
学生の間では、卒業後も就職試験の勉強を続け、就活する若者が増え続けている。
加えて儒教社会の韓国では、結婚は「家同士の結婚」とも解釈され、結婚式から、新居、親族との関係など、結婚することは精神的だけでなく、経済的にも負担の大きい人生の選択と捉えられている。
そんな社会構造事情を憂いで、
「恋愛」「結婚」「子供を持つ」、この3つを放棄した20代の若者を揶揄して「三抛(放棄)世代」
という言葉が最近流行したことがある。
しかし、その流行語もすでに過去の遺物になりつつあるという。
放棄するものがこの3つだけでは足りず、これに
家を持つことを諦め、人間関係も諦めるという「5抛世代」へ“進化”しているというのである。
■夢や希望まで捨てた韓国の若者
さらには最近は希望や夢までギブアップする「7抛世代」が主流とも言われようになった。
人生のすべてを諦めることを強いられた「n抛(エヌポ)世代」
という言葉まで流行しているというから、韓国の少子高齢化の深刻度は相当なものと言えるだろう。
100年前の儒教と家長制度の時代では、韓国人女性の家庭人としての使命は、子孫繁栄を実現させるため、多くの「男の子」を生むことだった。
しかし、韓国女性がいま求めているのは、男性と同等の雇用機会や価値観であり、政策でそれを押しとどめようとしても不可能に近い。
韓国の少子高齢化対策はお手上げ状況と言っていい
かもしれない。
次は世界最大の人口を誇る中国を見てみよう。
世界経済を牽引してきた中国が人口ボーナス期から人口オーナス期に入ったことは、昨今の経済不振にも色濃く反映されている。
先頃廃止を決めたものの「一人っ子政策」を長年続けてきた影響で、2015年を境に生産年齢人口(中国の場合、14歳から59歳)は減少し始め、オーナス期に入ったと見込まれる。
これまで中国の高成長を後押ししたのは、まぎれもなく人口ボーナスだった。
しかし、同時に高齢化が急速に進行しているため、65歳以上の高齢者はすでに全体の約9%(中国当局)に達している。
この数字はその他の発展途上国の人口構造と比較すると分かりやすい。
中国を除くその他の発展途上国では、65歳以上の人口比率は約5%。
中国はこれらの国々に比べ約2倍の高齢化率となっているわけだ。
しかも、この比率は2035年には約20%にまで膨らむとされる。
中国の少子高齢化も韓国に負けず劣らず猛スピードなのである。
そして中国の高齢化問題は、韓国と違って「単なる高齢化」ではすまない。
■豊かになる前に高齢化
先進国の仲間入りを果たしている韓国と異なり、中国の場合には国民が豊かになる前に高齢化社会に突入する危険性が極めて高いのだ。
中国ではこれを「未富先老」と呼んでいる。
中国の計画生育委員会は合計特殊出生率を長らく1.8と発表してきたが、2010年の国勢調査では、1.18にまで低下していることが判明している。
一人っ子政策を放棄してもこの数字が簡単には改善しないとみられ、中国の出生率は極端に低迷を続けることは間違いない。
それはつまり、
生産年齢人口から見た経済発展の可能性が他の発展途上国より低い
ことを意味する。
日本企業などは賃金が高くなった中国から東南アジアやその他の発展途上国に生産を移転する動きが加速しているが、人口動態から見てもその動向は強まると考えられる。
「未富先老」は中国に突きつけられた大問題なのだ。
高齢化は国内貯蓄の低迷を招き潜在成長率を引き下げる。
さらには年金や医療費負担の増加という日本が直面している問題が、経済が十分発展する前に訪れる。
国連などでの調べでは、
2020年代の潜在成長率は、シンガポールとタイが約2%、
中国でも約4%にまで低迷し、その後は1%までに減少する
との見方もある。
2020年まであと5年しかない。
経済成長の止まった老大国の姿はもう目の前にある。
少子化対策ではフランスやスウェーデンが成功事例とされるが、その背景には事実婚を認め、婚外子の手当てを厚くすることを認めた社会の意識改革がある。
親子の同居率が高く、家系を重視する「直系家族系」のアジアにその価値観を組み込むのは簡単ではない。
その場合、果たしてアジア的で効果的な政策が打ち出せるのか、中国をはじめとするアジアの国々に実は時間の猶予はない。
有効な対策を打てずに出生率が1.1から1.3前後という水準を続ければ、国家が消滅する危機に直面しかねないのだ。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年11月26日(木) 14時57分
http://www.recordchina.co.jp/a123897.html
中国の独居者5800万人超、全世帯数の14%占める―中国紙
2015年11月24日、中国の独居世帯の数は近年大幅に増加しており、独居世帯が全国に占める割合は1990年の6%から2010年には14%に上昇した。
国家統計年鑑によると、2013年には同割合が14.6%に達している。
独居世帯の割合が全国で最も高いのは上海市で、4世帯に1世帯が一人暮らしだという。
西安晩報が伝えた。
▼家族構造の変化で独居老人が増加
第6回国勢調査によると、2010年、高齢者が「単独」・「夫婦のみ」で暮らす割合は高齢者世帯全体の約半数に達し、高齢者の7割が子どもと同居していた20年前とは大きく変化した。
遼寧省、山東省、江蘇省、広東省、上海、浙江省の6つの東部都市では、75歳以上の独居老人が特に多かった。
人口の移動、都市を跨ぐ就業、多世代家族の減少、都市化の発展などが、中国で独居者の数が急増する原因となっている。
こうした問題に直面し、多くの地方が独居老人問題の解決に積極的に取り組み始めている。
河南省の中でも高齢化が進んだ地域である開封では、現地の民政部門が「在宅介護サービスセンター」プロジェクトの試行を実施、コミュニティ内の独居老人にサービスを提供している。
同センターにはラウンジ、絵画室、麻雀ルーム、演劇ルームなどが設けられ、さらに当番の医師が勤務している。
このほか、多くのコミュニティが独居老人向けの様々なサービスを提供している。
油坊コミュニティの「ドアノック」サービスは、コミュニティの職員が毎日定時に独居老人の家のドアをたたき、返事があるかどうかを確認するというもので、興味深い取り組みと言える。
同コミュニティはこのほか、独居老人ボランティアサービスチームを結成し、高齢者の様々なニーズに応えている。
▼独身の若者の一人暮らしも増加
中国の第4次独身ブームの到来に伴い、独身の若者世代の独居者も日に日に増加している。
中国では現在5800万人が一人暮らしを送っており、独居世帯は全世帯数の14%を占め、この割合はますます上昇している。
調査によると、中国の30歳以下の人口のうち、教育水準と経済力が高い人ほど、一人暮らしを選択する可能性が高い。
また、比較的裕福な地域で独居者(配偶者が他界した場合を除く)が多くなっており、北京では5分の1の世帯が一人暮らしとなっている。
上海・広州などの大都市では平均初婚年齢が上昇、離婚率も高まっており、独居者の増加につながっている。
20歳から39歳の若い独居世帯は2000万世帯に近づいている。
中高齢者の一人暮らしは、女性が男性を上回るのに対し、
20歳から64歳の一人暮らしは、男性が女性を大きく上回る。
中高齢者の場合、配偶者の他界や、子供の独立が一人暮らしの原因となっているが、青壮年の一人暮らしは独身のためであることが多い。
都市の一人暮らしが増える背景には、初婚年齢の上昇がある。
結婚を先延ばしにする若者が多く、中には結婚せずに一人暮らしを選ぶ人もいる。
安徽省阜陽市の董医師は、
「周りには一人暮らしの人がたくさんいる。
物質的な条件のため一人暮らしを余儀なくされている人もいるが、結婚生活を望まない人もいる」
と語る。
(提供/人民網日本語版・翻訳/SN・編集/武藤)
』
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