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時事通信 11月9日(月)18時14分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151109-00000105-jij-cn
中台首脳会談、評価二分=「関係変化なし」45%―台湾紙
【台北時事】
9日付の台湾紙・聯合報が掲載した世論調査によると、7日にシンガポールで開かれた中台首脳会談での馬英九総統について、
★.37.1%が「満足」とする一方、
★.33.8%が「不満足」
と回答した。
台湾内で、中国の習近平国家主席と「一つの中国」を確認した会談内容に対する評価が二分している状況を示した。
年齢別では、40~59歳の48%が「満足」と答えたのに対し、40歳以下の世代での「満足」は29%。
「不満足」が41%に上り、若い世代の低評価が目立った。
首脳会談後の中台関係については、「変わらない」が44.8%と最も多く、「良くなる」は28.0%、「悪くなる」は7.7%だった。
また来年1月の総統選挙で最大野党・民進党の蔡英文主席が当選した場合、蔡主席と習主席の首脳会談について賛成するかどうか尋ねたところ、67.0%が「賛成」と答え、「賛成しない」は8.6%だった。
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ロイター 2015/11/9 18:10 ロイター
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151109-00000045-biz_reut-nb
台湾総統選、野党・民進党の蔡英文主席が支持率リード=世論調査
[台北 9日 ロイター] -
9日公表された世論調査によると、来年1月の台湾総統選に出馬する最大野党、民主進歩党(民進党)の蔡英文主席は48.6%の支持を集めた。
一方、与党・国民党の候補者である朱立倫主席の支持率は21.4%だった。
7日に歴史的な中台首脳会談が開かれたが、野党候補がリードする情勢に変化はなかった。
世論調査は8日、台湾の有識者らで作る両岸政策協会が1014人を対象に実施した。
同協会が行った10月半ばの調査では蔡氏の支持率が45.2%だった。
朱氏は以前の調査で21.9%だった。
同協会のメンバーは9日の記者会見で、週末に開かれた
「台湾の馬英九総統と中国の習近平国家主席の首脳会談は、台湾総統選に介入することが狙いではなく、
馬総統退陣後の両岸(中台)関係を方向づけるためのものだ」
と述べた。
蔡氏は首脳会談を批判し、馬総統が台湾の自由と民主主義について直接言及しなかったことに失望したとコメントした。
8日の世論調査では、馬総統が首脳会談で台湾の主権や利益を守り、主張したと思うか、という質問に対し、回答者の32.9%がそう思うと答え、46.8%はそう思わないと答えた。
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ダイヤモンドオンライン 2015年11月10日 加藤嘉一
http://diamond.jp/articles/-/81344
習近平・馬英九会談実現の背景にある動機と懸念
■中国と台湾のトップ会談が実現
両岸が極秘で進めた“習馬会”
「我々も公表される直前まで知り得なかった。
両岸がそれだけ極秘扱いで準備を進めてきたのが今回の“習馬会”ということだ」
11月7日夜(北京時間)、中国共産党元老に親族を持つ“紅二代”の1人が北京で私にこう語った。
“習馬会”とは習近平・馬英九会談を指す。
台湾では通常“馬習会”と称される。
11月7日15時、中華人民共和国が建国された1949年以来、中国と台湾のトップ会談が初めて挙行された。
上記の“紅二代”もサプライズを示したように、“中台首脳会談”の開催がオーソライズされたのは直前だった。
台湾総統府が11月3日深夜に、中国国務院台湾弁公室主任・張志軍が11月4日午前に公表した。
会場はシンガポールのシャングリラホテル。
1993年4月、中国側の対台湾窓口機関の1つである海峡両岸関係協会と台湾側の対中国窓口機関の1つである海峡交流基金会それぞれのトップである汪道涵・辜振甫両氏が、中台双方初の“ハイレベル民間対話”を行ったのもシンガポールだった。
この“汪辜会談”が歴史的契機となり、その後、中台間における多角的な関係構築や交流促進につながっている。
2014年2月には、中台事務方トップ会談が初めて挙行され、中国国務院台湾弁公室の張志軍主任と台湾行政院大陸委員会の王郁琦主任委員が南京の地で“合流”した。
「“習馬会”はシンガポールだからこそ開催できた。
リー・クアンユーは天国で微笑んでいるに違いない」
冒頭の“紅二代”はこう述べる。
新華社《参考消息》によれば(“鄧小平がリー・クアンユーを通じて蒋経国に送った伝言”、2012年8月15日)、1985年9月20日、中国を訪問中のシンガポール建国の父リー・クアンユーは鄧小平との会談中に台湾問題の解決をめぐって話し合った。
その際、鄧からリーに対して“両岸の指導者が面会し、台湾問題の解決をめぐって意見交換できる場を手配していただけないか”という懇願をしたという。
当時、中華人民共和国とシンガポールの間では国交は存在しなかった
1990年、中国と国交を結び、台湾と断交してからも、シンガポールは中台双方の狭間で“独自外交”を展開した。
台湾行政院長をシンガポールに招待し、中国に強硬的で、“台湾独立”を公に主張した民進党が与党として君臨した2000~2008年の間にも、リー・クアンユーは台湾を二度訪問している。
2004年7月、リー・シェンロン首相も実父の路線を継承する形で訪台し、陳水扁総統と公に会談している。
2016年1月に開催予定の総統選挙における有力候補でもある蔡英文行政院大陸委員会主任(当時)とも会談している。
国交のない首脳同士が表立って会談するなど(それも第三国における国際会議を活用したやり方ではなく、相手側を訪問する形で)通常は考えられないが、シンガポールだから“許されてきた”のかもしれない。
中国共産党にとって、“華人中心の社会”であり、国家建設や人材育成という観点から大いに学んできた参照国家であり、
何より習近平自身も“尊敬に値する長者”として慕い、付き合ってきた故リー・クアンユーが率いてきたシンガポールという存在は特別であり続けた
(過去記事参照:習近平が尊敬するリー・クアンユーが10年前に指摘した中国社会の“病巣”、中国がシンガポールから学ぶべき内的措置 愛国主義とナショナリズムの“分離”)。
結果的に、分断後初の“中台首脳会談”がシンガポールという第三国で行われた事実は、中台関係という側面だけでなく、東アジアの地政学的情勢を眺めていく上でも、1つの重要なケーススタディとなるであろう。
“第三国外交と地政学”という観点からすれば、私は台湾海峡以外に、朝鮮半島の動向にも注目している。
■政治的配慮によって決められた“両岸領導人”という会談の名義
さて、ここからは“馬習会”そのものをレビューしていきたい。
同会談を公式発表した張志軍は、今回、習近平・馬英九両首脳が“両岸領導人”(筆者注:領導人は“リーダー”“指導者”の意)という身分および名義で会談する旨を説明した。
「双方で相談した結果、
両岸政治関係における矛盾や摩擦が未解決な状況下において、1つの中国という原則に基づいて手配したものである」(張志軍)。
また、11月4~6日にかけて、中国世論では、習・馬両氏がお互いを“馬先生”“習先生”と呼び合う見込みが大々的に報道・議論されていた(筆者注:先生は“さん”“氏”の意)。
ここにも、お互いを「習近平国家主席」「馬英九総統」と呼び合うのは政治的に適切ではないという中台双方からの考慮が働いている。
同時間・同空間で初めて向き合った習さんと馬さん。前者が微妙に早く手を差し伸べると、両者は右手で、約80秒間握り合い、その後25秒間共に手を振りながら、世に向き合った。
「(握手の際は)2人とも拳に力を入れていた」(馬英九総統)。
その後行われた会談では、“九二共識”(筆者注:共識は“コンセンサス”の意)という政治的基礎の下、平和的に相互交流を深め、中華民族としての発展を掲げていく旨が謳われた。
馬英九から双方の事務方間で緊急かつ重要な問題を処理するためのホットラインを設立してはどうかという提案がなされ、習近平が「早急に対応する」と返答した。
そんな習近平の印象を、馬英九は会談後の記者会見にて、
「プラグマティックで、融通が利き、率直な方だと感じた」
と表現している。
経済や青少年交流をはじめ、多角的に関係や交流を促進していくことが議論されたが、私が個人的に最も注目したのは中台が“分断状態”にあり、かつ双方が異なる政治体制を要するが故に生じている、生じ得る問題を両首脳がどのように描写し、落とし所を模索していくかであった。
■中台間の微妙な駆け引きを象徴する「3つの文脈」
本稿では、中台間の微妙な駆け引きを象徴する3つの文脈を取り上げる。
1つ目は経済関係である。
習近平は“中台経済”について次のように語っている。
「我々は台湾の同胞と共に中国大陸の発展機会を享受したいと思っている。
両岸はマクロ政策に関する意思疎通を強化し、各自のアドバンテージを活かし、経済協力の空間を開拓し、共通利益のパイを大きくしていける。
そこから両岸の同胞間の受益面と獲得感を増やしていける。
貨物貿易、商工会相互設立などに関しては話し合いを通じて、1日も早く合意できるだろう。
我々は台湾の同胞が“一帯一路”建設に積極的に参加すること、適切な方式でアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加入することを歓迎する」
台湾では近年、中国との関係が深まるに連れて自らの経済が中国に呑み込まれるだけでなく、雇用の流出や物価の上昇、さらには法やルールといった分野にまで悪影響が出るのではないかという懸念が高まっている。
習近平の発言からは、経済の交流だけでなく、政策決定過程を通じて、また自らが主導するAIIBへの加入を歓迎することによって、中台関係の“一体化”を深めていこうという共産党指導部の戦略的意図がうかがえる。
2つ目が、安全保障と台湾の“国際空間”に関してである。
馬英九は台湾の人々が自らの安全と尊厳の問題に大いなる関心を抱いていることに、習近平・中国サイドからの理解を求めたいと提起した。
「台湾の多くの民衆は大陸の台湾に対する軍事措置に関心を持っている。
たとえば朱日和基地とミサイルだ。
習さんは“関連措置は台湾に向けたものではない”と言っていた」(会談後の記者会見にて)
首脳会談にて、馬英九が
「我々の民衆がNGOに参加しようとしても往々にして挫折してしまう。
我々政府が地域経済一体化や国際活動に参加しようとしても邪魔が入ってしまう。
これらの分野に関して敵意と対立を減らしていかなければならないと希望している」
と現状に対する不満を口にしたのに対し、習近平は次のように答えている。
「60年以上の間、両岸は異なる発展の道を歩み、異なる社会制度を実行してきた。
進路と制度の効果に関しては、歴史によって検証され、人民によって評価されるべきだ。
両岸はそれぞれの発展進路と社会制度に関する選択を尊重し、これらのギャップが両岸交流・協力を妨げたり、同胞の感情を傷つけないようにすべきだ」
「我々は台湾の同胞が国際活動問題に参加したいという考えと思いを理解・重視し、実際に多くの関連する問題の解決を推進してきた。
“二つの中国”・“一中一台”という局面を生まないのであれば、両岸は実利的協商を通じて実情に即した合理的措置を取ることが可能だ」
台湾はこれまでも“国際空間の拡大”、すなわち国際機関・活動への主体的コミットメントを“国策”として掲げてきたが、習近平の発言は、中国側のボトムライン(中国語で“底線”)である“1つの中国”という枠組みの中でなら台湾側の望みを可能な限り尊重していく用意があることを示している。
蔡英文主席率いる民進党の躍進が予想されてきた2016年の総統選挙を睨み、経済的妥協をしてでも政治的底線を締めておきたいという共産党指導部の懸念がにじみ出ている。
■中国側が最も譲歩したのは中国と台湾の「歴史認識」
3つ目が、中台間の歴史認識問題に関してである。
習近平の次の発言に注目したい。
「今年は全民族抗日戦争勝利70周年であり、これは巨大な民族的犠牲によって得られた勝利である。
両岸は双方の史学界が手を携え、史料を共有し、史書を共同執筆し、共に抗戦の精神を掲げ、民族の尊厳と栄誉を死守することを支持・奨励すべきである」
私は今年9月3日に北京で開催された“中国人民抗日戦争兼反ファシズム戦争勝利70周年記念式典”兼軍事パレードを扱ったコラム「中国『抗日軍事パレード』から透けて見える6つの問題点」にて、中国と台湾、共産党と国民党の間で、当時の“抗日戦争”をどちらが主導したのか、両党はどのように闘ったのかを巡って深い溝と立場の摩擦が存在してきたこと、そして中国共産党が昨今の対内外プロバガンダにおいて「抗日戦争の勝利は中国共産党による正しい領導によってもたらされた」(中国中央電視台CCTVなど)と宣伝されていることに、台湾サイドが不満や抗議を露わにしている現状を描写した。
「習近平は抗日戦争の歴史認識をめぐって、台湾・国民党側の主張や立場を考慮し、ある程度尊重しようとしている。
“共産党が正しく主導した”などという事実からかけ離れた主張を続ける限り、国民党との距離は縮まらないことを知っているからだ」
その生い立ちから習近平を昔から知る共産党関係者は私にこう語ると同時に、
「今回の習馬会で中国側が最も譲歩したのはこの歴史の部分だ」
と主張する。
■トップ会談の最大の目的は来年1月の台湾総統選挙か
以上、3つの文脈から“中台首脳会談”に体現された両岸の駆け引きを洗い出してみたが、シンガポールに場の提供を委ねる形で実現した歴史的会談をプッシュした最大の動機は、共産党・国民党、もっと言えば習近平・馬英九双方の緊急を要するニーズであり、鍵はやはり来年1月に予定されている台湾総統選挙だったと私は捉えている。
習近平からすれば、この選挙で対中強硬的な民進党が与党に躍進し、蔡英文が総統になることを阻止すべく(蔡英文が陳水扁のように“台湾独立”を公約し、掲げていくことは考えにくいが)、国民党に勝たせるために今回の歴史的会談に踏み切ったという要素が濃いのではないか。
「習近平にとって、馬英九との会談は来年1月の台湾総統選挙対策だ。
目的は、民進党に対岸の与党を譲らせないためだ」(冒頭の紅二代)
馬英九からすれば、残り数ヵ月となった任期のなかでレガシー(伝説)を残し、かつ国民党が明らかに劣勢に立たされている選挙キャンペーンの流れをひっくり返すには、たとえ荒削りだったとしても、歴史的会談に踏み切るしかなかった、という側面が強いのではないか。
「国務院台湾弁公室として台湾の選挙に介入するつもりはない」(張志軍、“習馬会”後のブリーフィングにて)
“馬習会”が歴史的であったことは疑いなく、ホットラインの開設や上記3つの分野におけるやり取りを含め、中台関係をこれまでよりも安定的にマネージしていくという意味では未来志向型の会談であった。
一方で、双方の思惑が主に“2016年1月”に置かれていたことを考えると、この会談が若干投機的であった側面も否めないと私は捉えている。
とりわけ、“習馬会”実現に必要不可欠であった九二共識に関しては、
中国側は“一個中国”をその核心的認識に据えるのに対し、
台湾側は“一個中国、一中各表”に据えている。
★.中国側は「中国は1つであり、台湾は中国の一部である」というタテの帰属性を強調してきたのに対し、
★.台湾側は「中国は1つである」ことを承認しつつも、その中身については「各自がそれぞれに述べ合うこと」というヨコの並列性を強調してきた。
“中身”とは言うまでもなく中華民国を指し、それは決して中華人民共和国に帰属しているわけではないことを示している。
このギャップはまだまだ埋まらない。
ギャップを棚上げした形で実現したのが今回の“習馬会”である。
会談を通じて1つ言えることは、中台間で共有できている概念は“一個中国”であり、“一中各表”の4文字は新華社通信やCCTVを含めた中国共産党の宣伝機関が配信する記事に見られないという事実に考えを及ぼせば、少なくとも“九二共識”という「共同の政治的基礎」(習近平)に対する認識とその上に立った行動という意味では、台湾側が譲歩した点は否めないと言える。
今後の中台関係を考える上で、短期的な焦点は総統選挙であろうが、
中国側は引き続き、非政治的分野(特に経済)における可能な限りの譲歩を繰り出し、積み重ねつつ、特に国民党と民進党の間で揺れている浮動票を国民党側に取り込むべく策を練り、仕掛けていくに違いない。
そしてより長いスパンで考えた場合に肝心なファクターとなり得るのが、蔡英文率いる民進党が“九二共識”とどう向き合っていくかどうかである。
蔡英文の近年の言動を俯瞰する限り、同コンセンサスの“内容を認めない”“存在を否定する”から、“承認もせず・否定もしない”の流れにシフトしていっていると私は認識している。
陳水扁とは異なり“台湾独立”を政策に掲げなくなった経緯からも、民進党自体がこれまでよりも“中国寄り”になっている趨勢は明らかである。
■総統選挙で蔡英文が勝利したら“九二共識”をどう扱うだろうか
仮に来たる総統選挙において、蔡英文が勝利した場合、同氏は“九二共識”に関してどのような立場を持ち、説明をしていくのだろうか。
“習馬会”を受けて、蔡英文は馬英九が習近平と会談したことに遺憾の意を示し、「私はこれから台湾人民と共により民主的なやり方で“馬習会”がつくり出した傷害の穴埋めをしていくつもりだ」と宣言した。
蔡英文の今後の実質的動作を占う上で、カギを握るのはやはり“後ろ盾”である米国であろう。
同氏およびその周辺は米国と協調しながら対中政策を策定していくであろうし、この構造を誰よりも切実に認識している中国は、逆に対米関係を安定・発展させつつ、対米レバレッジを不断に高めることを通じて、台湾の対中政治的譲歩を引き出していくに違いない。
“馬習会”の実現を前に、米国務院は次のような声明を発表している。
「両岸指導者の会談と近年両岸関係の間に見られる歴史的な改善を歓迎する。
双方が尊厳と尊重の基礎の下、関係の構築、緊張的局面の緩和、安定的方向性の促進において一層の進展を図っていくことを奨励する」
』
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サーチナニュース 2015-11-10 19:23
http://news.searchina.net/id/1593850?page=1
台湾の国会内委員会が「馬英九総統は全国民に謝罪せよ」可決
中国・習主席との会談を批判
台湾の国会に相当する立法院の内政委員会は9日、馬英九総統が7日に中国の習近平主席と会談した際に、発言内容に大きな問題があったとして、「国民への公開謝罪」を求める提案を可決した。
総統府や行政院(台湾政府)大陸委員会は、同決議に反発した。
台湾メディアの中央社などが報じた。
習主席との会談について立法院の内政委員会が問題にしたのは、中国による台湾への軍事的脅威についての発言だ。
馬総統は内モンゴル自治区のジュルフで行われる軍事演習や中国のミサイルの「向けられた方向」について
「反対党は常々、こういうことを両岸関係を批判する口実にする」、
「そのような不要な批判は減少させるべきだ」
などと述べたという。
つまり馬総統は、中国に対する軍事的警戒はそれほど必要でなく、反対派は「批判のための批判」として、大陸側との軍事問題を利用していると主張したことになる。
内政委員会は、
「大陸側のミサイル配備や軍事演習は政党に関係なく台湾人に向けられている」、
「政党に関係なく、ミサイルをなくすことは全国人民の期待である」
として、馬総統に全国民に対して公開で謝罪し、発言を撤回するよう提案した。
同提案は民進党議員などが主張し、5対4で可決した。
総統府の陳以信報道官は、馬総統は習主席に対して、大陸側が善意にある具体的行動をしてほしいと明確に述べたわけであり、
「台湾民衆は安全と尊厳を特別に深く考えている」
と強調した上で、「大陸は特に了解すべきだ」と要求したと説明。
民進党議員は馬総統の話を故意に歪曲し、台湾人の考えを誤って導くものだと批判した。
行政院大陸委員会のトップである夏立言主任委員は10日、立法院内政委員会の決議を「馬総統に対して不公平」と批判し、自らの考えを9日のうちに馬総統に伝えたと説明した。
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2015.11.11(水) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45231
問題だらけの荒海にこぎ出す中国
中国政府の力が及ばない香港と台湾の世論
(2015年11月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
「何物も我々を引き離すことはできない。我々は1つの家族だ」。
台湾総統と握手を交わす最初の中国国家主席になった後、習近平氏はこう語った。
習近平氏と馬英九氏との会談が歴史的なものだったことは間違いない。
ただ、習近平氏から「家族」という言葉を聞いた時、筆者はハリウッド映画に出てくる
マフィアのドンがやるようなこの言葉の使い方
を思い出した。
つまり、魅力と威嚇を混ぜ合わせた使い方である。
実際、中国政府はまだ、台湾は反乱を起こしている省だと見なしており、もし独立を宣言するようなことがあれば、家族の一員を攻撃する権利があるとしている。
■習近平主席の不安
両義性はこれだけで終わらない。
数十年に及ぶ排斥に終止符を打った習近平氏の決断は、見方によっては、自信に満ちた指導者ならではの行動だった。
だが、この大胆な行動は恐らく、自信と同じくらい不安を反映したものでもある。
なぜなら、近隣諸国を見渡せば、そこには数多くのトラブルが渦巻いていることが分かるからだ。
台湾の政治は中国に逆らう方向に動いている。
また中国政府は、南シナ海での領有権主張を巡って米国から強い圧力を受けている。
トラブルは陸の上にもある。
例えば、米国とその他11カ国は先日、環太平洋経済連携協定(TPP)という中国を排除した通商協定で合意し、アジア太平洋地域で中国が誇る中心的な地位に挑むことになった。
一方、2014年に香港で勃発した民主派による抗議行動は本土に対する苦々しい思いを後に残し、中国政府の「一つの中国」政策に対する反発が香港と台湾で同時に発生する可能性が出てきた。
おまけに、こうしたことはすべて、中国の国内景気が減速し、株式市場が乱高下し、かつ中国のエリート層が習近平氏の反腐敗運動にかなり動揺する中で生じている。
こうした問題があることを考えれば、
習近平氏にとって最も避けたいのは新たな台湾危機の到来だ。
習近平氏が馬英九氏との会談に踏み切ったのは台湾総統選挙を2カ月後に控えた時期のことであり、その選挙では、独立志向で中国政府に嫌われている野党・民進党を率いる蔡英文氏が勝利する公算が大きい。
先日交わされた習近平氏と馬英九氏の握手は、習氏が馬氏の与党・国民党を応援する試みのようにも見える。
だが、世論調査では民進党が国民党をかなりリードしており、この作戦は失敗に終わりそうだ。
もし民進党が政権を獲得し、かつ中国政府をあまりにもあからさまに拒めば、習近平氏はもっとドスを利かせた言葉遣いをしなければと思うかもしれない。
もしそれを実行に移せば、すでに南シナ海で小さな危機が発生している時に、米国との安全保障上の緊張が高まっていくだろう。
前回の台湾海峡危機(1995~96年)では、中国が台湾を軍事的に威嚇したことを受けて、米国が空母1隻をこの地域に派遣した。
中国政府はその後、かなり狡猾な戦術を使うようになっており、経済や人の往来の面で急速に強まるつながりを利用して「反乱省」を少しずつ自国の勢力下に引き戻そうとしている。
台湾で独立賛成派の総統が選ばれれば、こうした戦術は失敗だったことが示唆される。
過去20年間で台湾海峡の軍事バランスは変化しており、恐らくは中国側が優位に立っている。
しかし、豪胆な国家主席でなければ、この見方が正しいかどうか試したりはしない
だろう。
■最強のカードは経済力だが・・・
このように影響力を強めようとする中国が手にしている最強のカードは、やはり経済力である。
東南アジアでは、中国との貿易の規模が米国とのそれを大幅に上回る国がほとんどだ。
しかし、それゆえにTPPは中国にとって脅威になる可能性がある。
中国人アナリストの中にはTPPを「経済版NATO」とまで呼ぶ向きもある。
中国を孤立させることを大っぴらに目指す同盟関係だと見なしているからだ。
米国は、いずれは中国が参加する可能性もあると話している。
また、シンガポールやニュージーランドなどTPP参加国の多くが中国の参加を真剣に望んでいることも明らかだ。
これらの国は、中国外しがもたらす経済・政治的な影響を好んでいない。
しかし、TPPの2大参加国である米国と日本は懐疑的だ。
TPPの中には労働法制や環境法制、さらにはサイバースペースに関する約束など、中国が参加しにくくなるように作られた可能性のある条項もいくつか見受けられる。
折しもコストの上昇が中国の競争力を削いでいる時だけに、TPPに参加しない時期が長くなれば、生産拠点としての中国の魅力は今よりも弱まるかもしれない。
南シナ海やTPPなどの問題は、たとえそれが中国政府にとって困難なものであっても、少なくともその大半が政府の政策に関するものだ。
それに比べると香港や台湾の問題はもっと予測がつきにくく、それゆえに危険度も高い。
なぜなら、中国政府がコントロールできない「世論」がからんでくるからだ。
■香港と台湾の世論の力
香港でも台湾でも、若い世代は中国政府の勅令に敬意を持って対応したがらなくなってきている。
中国の一部になった香港では2014年、自由選挙の実施を求める「雨傘」運動が起きた。
台湾でも昨年、中国との新しい貿易協定に抗議した学生たちが立ち上がる「ヒマワリ」運動が起こっている。
これらは習近平氏にとって非常に難しい問題だ。
しかし、実は中国政府が自ら作り出した問題でもある。
「反乱省」「一国二制度」といった賞味期限切れの常套句を乱暴に振りかざすことで、
中国政府は自らを窮地に追い込んでしまったのだ。
台湾総統との会談は、柔軟性を示す強力なシンボルになっている。
しかし、もし目の前の荒海を本当に穏やかにしたいのであれば、習近平氏は台湾と香港に対する中国政府のアプローチをその本質から変える必要がある。
By Gideon Rachman
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』
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サーチナニュース 2015-11-13 22:15
http://news.searchina.net/id/1594223?page=1
中国が軍事力で台湾を圧倒することが、
相互信頼と平和統一の基盤だ=中国メディア
中国メディアの新浪網は11日、中国大陸側が軍事面で優勢を保つことが、中台の関係を安定させ、相互信頼をもたらし平和統一を実現する基盤になると主張する論説を発表した。
論説は、さまざまな状況が変化している以上、台湾で支持者の多い「現状維持」は成立しないと主張。
「台湾独立」については台湾内部の「極端勢力」によるものであり、「短期間にはびこるだけで、歴史の真実を伴わず、泡のように消えていくもの」と決めつけた。
論説はその上で、
「統一こそが大勢だ。
統一を根本的に成り立たせるのは両岸の人民の平和発展の願いであり、最も根本的なことは大陸側が総合力を不断に増強することだ。
海峡両岸に力の差があって初めて、中国大陸と台湾の関係を最終的に解決することになる」
と主張した。
同論説が特に注目したのは1986年から98年までの状況だ。
同時期は「中国軍にとって忍耐の時期だった」と説明。
中国では経済発展に全力を注ぐため軍事予算が削減されたが、すでに経済力を持っていた台湾は装備の充実などで軍事力で大陸側を上回るようになったと指摘した。
記事は、台湾側が「軍事バランスが逆転しはじめている」ことに気付いたのは1995年の李登輝総統の訪米(に対抗する軍事演習)によると主張。
「解放軍が台湾を“侵犯”すれば、台湾側に巨大な損害が生じるのは必至と考え、外来勢力と結託するすることで、各種の台湾独立勢力が出現し、悪事をたくらみはじめた」
と論じた。
記事は同時期の中国の軍事演習が台湾独立勢力に対する「抑止作用」になったと論じた上で、ただし当時は「大陸側の軍事力も台湾軍を圧倒する」水準にはなっていなかったことが、「台湾の指導者が常に挑発的な挙動をする主な原因」と主張。
「この時期の台湾海峡は火薬臭に満ち、いつ爆発してもおかしくなかった」と論じた。
記事は、現在のように軍事力で大陸側が台湾を圧倒し、台湾側に軍拡競争の力を持たせないことが、「大陸人と台湾人が座したままで相互信頼を強める」ことにつながり、習近平主席と馬英九総統が7日に会談したことは「台湾海峡両岸の問題を政治解決するための必然の流れ」と主張した。
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◆解説◆
上記記事は、中国側の視座による「中台対峙の歴史」と「今後の流れ」だが、一方的な決めつけも目立つ。
最も問題となるのは、
「大陸と戦えば損害が出るとの認識が、台湾独立派の出現に結びついた」
との主張だ。
共産党支配を嫌悪する台湾人が多いのは事実だが、独立意識の高まりはむしろ、民主化による言論の自由の達成と、戦後生まれの世代が増えたことが大きな原因だ。
国共内戦の結果として台湾に渡って来た人の子や孫も「私は台湾で生まれて台湾で育った」としか言いようがなく、「中国がふるさと」との感情は持ちづらいことになる。
仮に中国が「台湾人のあこがれる国/社会」であれば、「統一してもよいかな」と思う人が増える可能性があるが、現状ではそうではない。
上記記事には、「台湾の世論をねじ曲げた」という問題もある。
台湾における2015年1月の世論調査では、
「台湾は独立すべき/できるだけ早く独立すべき」と回答した人は過去最高の23.9%だった。
一方「
統一すべき/できるだけ早く独立すべき」と回答した人は過去最低の9.2%だった。
さらに
「私は(中国人でなく)台湾人だ」と回答した人は過去最高の60.6%、
「台湾人であり中国人でもある」は32.5%、
「中国人だ」と回答した人は3.5%
にすぎなかった。
「独立志向」と「統一志向」のどちらの人が多いかは明らかだ。
「台湾人の現実」を無視した主張は、台湾人の神経を逆なでし、「統一はいやだ」と思う人をさらに増やすことになる。
台湾人あるいは香港人に対して、「あなたは中国人だろう」と言うと、露骨に不快感を示す人は珍しくない。
中国が台湾との「平和統一」を実現したいなら、大陸において「あこがれられる国、尊敬に値する人が織りなす魅力ある社会」を実現させることが「最低限の前提条件」だ。
』
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ニューズウイーク 2015年11月13日(金)16時05分 高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/11/post-4109.php
台湾ではもう「反中か親中か」は意味がない
「台湾市民は対中接近を嫌う」という思い込みを覆した習近平との会談への反応、
人々の関心事は他の多くの国となんら変わらない
2015年11月7日、シンガポールで、台湾の馬英九総統と中国の習近平国家主席の会談が行われた。
中華人民共和国成立から66年で初となる中台首脳の会談という歴史的舞台となったが、来年1月の選挙で野党転落がほぼ確実視されている、レームダックの国民党政権が主導した会談に意味があるのか。
対中接近を警戒する台湾の人々は、馬英九の最後っ屁のような中台首脳会談を支持しないだろう。
そう思われた方も多いのではないだろうか。
ところが意外や意外、各種世論調査では中台首脳会談支持の回答が50%を超えている。
「台湾市民は対中接近に批判的なはず」という思い込みでは理解できない結果となった。
馬英九の最後っ屁を支持する台湾市民、この状況はどのように理解すればいいのだろうか。
■「いかにして現状維持を実現するか」論争
台湾では今や、
★.「一つの中国」を掲げる国民党・外省人(1945年以後に台湾に移住した人々)を中心とした泛藍連盟、
★.「台湾独立」を掲げる民進党・本省人(1945年以前から台湾に住んでいた人々)を中心とした泛緑連盟
といった色分けはあまり有効性を持たない。
対中政策における台湾市民の最大公約数的意見は
「現状維持」、すなわち中国との経済的パイプを維持して大陸の成長の恩恵を受けつつも、
政治的には独立を保持することでしかない。
野党・民進党は「これ以上接近すれば現状維持はできない」と批判し、与党・国民党は「現状維持には中国との関係構築という努力が必要」と主張するなど、いかなる手法で現状維持をなすべきかという論争まで起きている。
2014年春に起きた立法院(議会)占拠、すなわち「ひまわり学生運動」は馬英九政権の中国傾斜に対する反発として取り上げられたが、運動側の批判は「ブラックボックスで中台サービス貿易協定の協議が進められ、国民の理解がないままに強行された」という手続き上の瑕疵にしぼられていた。
もちろん反中国の意識を持つ人も一定数存在するとはいえ、台湾経済に中国は不可欠との認識を持つ人はそれ以上に多い。
国民の支持を集めた学生運動だったが、真っ向から反中国を唱える運動ではあれほどの支持は集められなかっただろう。
■馬英九・国民党政権が支持を失った理由
つまり親中か反中かは台湾政治の主な対立点ではない。
ではいったい何が対立点なのか、
いったい何が与党批判につながったのだろうか。
最大の要因はずばり経済低迷だ。
現馬英九政権が誕生したのは2008年。馬英九総統は民進党の経済失政を追及し、国民党政権になれば景気は回復すると訴えた。
馬英九の前、陳水扁政権(2000~2008年)の経済成長率は4~6%で推移していた。
日本と比べれば十分な高成長だが、1980年代、90年代と比べると2~3ポイントは低下している。
では馬英九政権はというと、中国との経済協力で成長率回復を狙ったはずが、成長率はほぼ2~3%と前政権以下で停滞している。
低成長の国ニッポンの住民としては、たんに
台湾社会が成熟化した結果としての低成長に陥っているだけとも見えるのだが、
台湾の友人に言わせると、かつてはアジアの四小龍と並び称された韓国が台湾以上の成長率をキープしているではないか、韓国に負けているのは政権のポカが原因なのだという話になる。
その韓国といえばTPP(環太平洋パートナーシップ協定)にこそ入っていないものの、米韓FTA(自由貿易協定)、EU韓国FTA、中韓FTAと凄まじい勢いで二国間FTAを結んでいる。
ならば台湾もFTAの鬼となった韓国を追撃するべきと言いたいところだが、主要国の大半は中国と国交を結んでおり台湾とは国交を持たない。
FTAを結ぶことは難しいし、TPPのような多国間の枠組みに参加することはきわめて困難だ。
そうした中で台湾が結んだ貴重な枠組みが2012年の米台貿易投資枠組み協定(TIFA)だ。
苦しい外交環境に置かれた台湾の、貴重な勝利となれば話はわかりやすいのだが、実際には馬英九政権にとっては大打撃を与えた。
協定によってラクトパミンという薬剤を使った牛肉の輸入が解禁され、食品安全を売り渡した売国奴として馬英九政権は激しく突き上げられることになる。
なお、食品安全問題はその後もアキレス腱となっており、中国本土の下水油(残飯から抽出した油、繰り返し使用した劣悪な油を指す言葉)が台湾に流入していた問題などが発覚し、政権にとっての打撃となった。
今や日本の国際ニュースにおいて、中国は絶大な存在感を持っている。
それだけに台湾、あるいは東南アジアなどのニュースにおいても、中国との関連で説明されることが多い。
しかし実際はというと、中国の存在感が強いとはいえ、現地の人々にとっての最大の関心事は経済や安全といった身近な問題だ。
台湾も例外ではない。
中国との関係を断つべきという過激な人も一部ではいるが、中国成長の恩恵の分け前をいただけるならばいただきたいと考える人のほうが多い。
おそらくポスト馬英九を担うことになる民進党の蔡英文氏は、「台湾独立」というかつてからの党是を信奉するコアな支持者にも配慮する一方で、中国経済の恩恵を預かりつつ景気改善を果たして欲しいという圧倒的多数の声に向き合うことになる。
そもそも中国接近路線一辺倒だった馬英九ですら台湾経済の回復はなしえなかったのであり、中国頼みには限界がある。
果たして新政権にはどのような選択肢が残されているのだろうか。
あるいは台湾にとっての政治課題は中国ではないのかもしれない。
いかに低成長と向き合うか。
この課題を考えた時、20年以上前から低成長の先輩として生きている日本は格好の相談相手ではないだろうか。
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[執筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。
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