2015年11月11日水曜日

過剰人口の日本(4):世界過剰人口は自然の制御に委ねることになるのか?ヒトをゼニの馬力とみなす愚行

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 人の手で制御できない過剰人口は自然の摂理に任せることになるのだろうか。
 人口がその容量を超えて過剰になれば様々な自然破壊が進行する。
 その一つが温暖化であり、人口過剰のもたらすブーメラン効果でもある。
 自然が人口を制御してくれるなら、それに委ねるしかあるまい。
 人間を経済面からしか見ることをしないなら、当然、自然は制裁を与えるだろう。
 生物は生態環境系の中で生きている。
 ゼニ勘定のみのシステムで生きているわけではない。
 人はゼニの馬力ではない。
 と言ってもほとんどの人は聞く耳持たないが。
ならば、最後は自然に委ねるしかないのかもしれない。


ロイター 2015年 11月 9日 18:20 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/11/09/idJP2015110901001662

温暖化で6億人住む土地水没か


 地球温暖化が今のまま進んだ場合、海面上昇が今世紀末以降も長期的に続いて最終的に
 「8・9メートル」に達し、
 現在6億2700万人が暮らしている土地が水没するとの研究結果を、米国の非営利研究組織「クライメート・セントラル」が9日、発表した。
 日本は3400万人で、国別では6番目に多く、海面上昇のリスクが大きい国の一つとされた。

 チームは
 「温暖化対策を進めて平均気温の上昇を2度に抑えれば、
 この数を2億8千万人にまで減らすことができる
と指摘。
 今月末からパリで始まる国連気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)での強力な温暖化対策合意の重要性を指摘した。

【共同通信】



レコードチャイナ 配信日時:2016年1月5日(火) 14時10分 相馬勝
http://www.recordchina.co.jp/a126322.html

気温4度上昇で、中国が被害最大
=1億4500万人が生活できず、香港・天津・上海の住民4500万人、移転余儀なく
―地球温暖化

 地球温暖化がこのまま進むと、ほぼ80年後の今世紀末までに海面上昇が8.9メートルにも達し、全世界で6億2700万人もの人々が生活する土地を失うことになり、中国は世界で最も多い1億4500万人が被害を受けることが分かった。
 香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。

 これは米国の非営利研究組織「クライメート・セントラル」の研究報告をもとにしたもので、温室ガス排出量が今のペースで増えると、産業革命以降の気温上昇が4度になるとの前提で計算。
 研究では海面上昇の予測データに地理情報、人口分布などを加え、海面上昇で住居を失うリスクのある人口を推計している。

 中国は沿岸部の都市に人口が集中しているほか、高い産業分野も集中していることから、経済的にも最も被害が大きくなる。
 とくに香港、上海、天津に住む計4500万人の人々が生活することができなくなり、実質的にこれら3都市の都市機能が失われると予測している。

 日本は3400万人で、国別では6番目に多く、海面上昇のリスクが大きい国の一つとされた。
 このほか、米国は2500万人、フィリピンは2000万人、ブラジルが1900万人、エジプトは1600万人となっている。

 しかし、研究では、温暖化対策を進めて、平均気温の上昇を2度に抑えれば、4度上昇の場合と比べて、2億8千万人にまで減らすことができる」と指摘した。

 これにより、中国では8100万人にまで被害を減らすことができるという。
 また、日本の場合も1800万人に減ることになる。
 
 いずれにしても、地球温暖化の原因の一つは二酸化炭素の排出量と密接な関係があることが分かっており、中国の場合、2012年だけで約102万トンと100万トンの大台を超えている。

 このため、中国は世界最大の温暖化ガス排出国で、習近平・中国国家主席は昨年11月の米中首脳会談で、
 「2030年ごろをピークに二酸化炭素(CO2)排出を減少させ、非化石燃料の発電比率を20%にする」
と言明し、中国の温暖化ガスの削減目標を初めて公表し、米国とともに、温暖化対策に力を入れる意向を示していた。

◆筆者プロフィール:相馬勝
1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。


BBCnews  2015.11.30 視聴時間 02:33
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45406

スイスの氷河が異常に溶けて…温暖化の現実



スイスの氷河専門家がローヌ氷河の現状を説明しようと現地を訪れた。
11月初めとしてはあり得ない異常な溶け方に、専門家でさえ思わず驚きの声を漏らし……。
スイスにある多くの氷河が、今世紀末までにほぼ消える。
地球温暖化対策を話し合う国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)の交渉担当者たちは、氷を復活させることはできない。
しかしそれでも気候の影響に対処するため、新たな取り決めを交渉しなければならない。


 地球の気象は「安定期」から「激甚期」に移行している
と言われている。
 先の激甚期は「テーム川が凍結した」というわれている時期にあたるという。
 このときは地球の寒冷化であったが、
 現在の激甚気象は「人口増と化石燃料」による温暖化によって後押しされている

 極地の氷がとけ水位が上がり、そして海水温が上がるエルニーヨも活発だという。
 水が動けば、空気も動く。
 そして大地が動く。
 地震、台風、竜巻、鉄砲水、地すべり、ドカ雪などなど。
 局地的になんでもアリ」になる。
 それを激甚気象という。


JB Press 2015.12.23(水) 茂木 寿
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45585

世界のどこでどんな自然災害が起きるのか
地域別に解説、グローバル企業が備えるべき自然災害リスク

 海外進出におけるカントリーリスクとして、地震や台風、噴火、洪水などの自然災害は最大のリスクの1つである。

 図1は、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)が運営する世界的な自然災害のデータベースであるEM-DATから抜粋した「1900年以降の自然災害の発生件数」である。
 このグラフからは、1970年代以降、急激に自然災害が増加していることが分かる。


●図1 1900年以降の自然災害の発生件数(出所:EM-DAT)

 この要因には世界的な気候変動の要因も挙げられるが、
 最大の要因は人口の増加
であるとされる。
 例えば、1970年代初頭、世界の年平均の人口増加率は2%を超え、1900年以降、最高の増加率を記録(1975年当時の世界の人口は約40億人であったが現在では約73.5億人とされている)している。
 このような急激な人口増加が自然災害増加の要因となっているのだ。

 人口の増加が、なぜ自然災害の増加を助長するのか。
 その理由は、一般的に自然災害とは「人間に影響を与える自然現象」であるためである。
 例えば、南極で大規模な地震が発生しても、人に影響を与えない場合には、自然災害とはされていない。
 そのため、人口増加は直接的に自然災害の増加を助長することとなる。

■世界的に洪水が増加している

 災害別にみると、世界的に洪水が大幅に増加している。
 図表1の細い線が洪水の発生件数(全体の件数の内数)であるが、自然災害の増加傾向とほぼ一致していることが分かる。

洪水が増加している背景としては、世界的な人口増加の他、下記のような要因が背景として挙げられる。

・工業化の発達に伴う内陸から沿岸部への人口移動
・沿岸部の都市部の拡大
・沿岸部での土地開発(住宅地・工業団地等)の進展
・沿岸部での道路・港湾等の整備

 上記のような要因により、沿岸部の都市部(ほとんどは河川の河口地域)での水はけが悪くなり、洪水が発生しやすくなっていることが最大の要因とされる。
 一般的に洪水には
1].河川の水かさが増加し、堤防等が決壊する外水型の洪水
2].水が長時間滞留する内水型の洪水
の2種類がある。
 例えば、東京都市部で毎年のように発生するゲリラ豪雨による道路・住宅地の冠水、2011年秋にタイで発生した洪水等は、この内水型の洪水に分類される。

 近年、新興国における経済発展は目ざましいが、その発展の大部分を沿岸部が支えている。
 それに伴い、内陸部から沿岸部の大都市への人口移動も拡大している。
 また、工業団地、住宅地、道路、港湾等の整備も進んでいることは、新興国における内水型洪水の増加を助長しているとされる。

 新興国においては人口増加率が高いことから、当然ながら洪水以外の自然災害も増加傾向となる可能性が高いと見られる。
 一方、新興国では、防災対策は他のインフラ整備よりも優先順位が低いことが多い。
 そのため新興国における自然災害リスクは今後も高い傾向が続くことに留意が必要である。

 以下では世界の地域別にどのような自然災害リスクがあるのかを見ていこう。

■アジア地域~世界で最も自然災害のリスクが高い

 アジア地域は地質学的に、太平洋プレート、フィリピンプレート、ユーラシアプレート、オーストラリアプレート、インドプレート、アラビアプレートなどの多くのプレートおよび境界線が存在する。
 そのため、地震・噴火・津波のリスクが非常に高い地域となっている。

 また、気候帯が多岐にわたることから、台風・サイクロン等の風害のリスクも高く、地域別では世界で最も自然災害のリスクの高い地域とされている(図2参照)。


●図2 自然災害の発生件数(1976~2005年)、(出所:EM-DAT)

 国別ではフィリピンでの地震、台風、洪水等の被害、バングラデシュでのサイクロン、洪水などの被害、ベトナムでの台風、洪水などの被害が特筆される。
大洋州地域~オーストラリアではサイクロン、トルネードが多発

 大洋州地域は、北はパプアニューギニア、西はオーストラリア西海岸、南はオーストラリアのタスマニア島、東は太平洋のクック諸島にわたる地域である。

 地質学的にはオーストラリアプレートがほとんどを占めており、太平洋プレート、ユーラシアプレートとの境界線では地震が発生しているが、それ以外ではほとんど地震は発生していない。
 一方、大洋州の島嶼国では海水面の上昇に伴い、陸地の浸食・浸水が深刻であり、バヌアツ、トンガ、ソロモン諸島では深刻な事態となっている。

 オーストラリアでは、発生件数ではサイクロン、トルネードなどの風害が最多となっており、次いで洪水、山火事の順位となっている。
 被災者数および経済的損失においては、干ばつが最大となっている。
 近年における大規模な災害としては、2009年2月に南部ビクトリア州で発生した山火事(死者181人:オーストラリア史上最悪の森林火災)がある。

■北米地域~米国南部から東部にかけてハリケーン、竜巻が発生

 北米地域では、北のアリューシャン列島からメキシコ沿岸まで北米プレートと太平洋プレートの境界線が延びており、これまでも大規模な地震が発生している。

 米国ではアラスカ州から西海岸にかけて地震、津波、火山噴火などの自然災害が数多く発生している。また、ほぼ全土で洪水、土砂災害も発生している。

 ハリケーン、竜巻は主に米国南部から東海岸にかけて発生し、中西部を中心に干ばつ、熱波、森林火災等が発生している。
 なお、2005年8月から9月にかけて発生したハリケーンカトリーナでは死者行方不明者が2500人以上、被害総額は1000億ドルを超え、米国の災害史上最悪の災害となった。

■中南米~歴史上最大級の地震が発生

 メキシコ周辺では北米プレート、ココスプレート、カリブプレートの境界線があり、地震の多発地帯となっている。
 また、南米大陸は南米プレート、ナスカプレート、南極プレートの境界線となっており、世界で最も地震活動の活発な地域となっている。
 1960年5月22日に発生したチリ地震はM9.5で、歴史上最大級の地震とされている。

 中米ではカリブ海で発生するハリケーンの影響を受けることが多く、メキシコから南米大陸の西部では地震のリスクが非常に高くなっている。

■欧州、ロシア~シベリア地域で洪水が頻発

 欧州では、南部の地中海地方およびシベリア地域の東側以外は地質的に安定しており、地震が発生することは少ない。
 だが、洪水等が多く発生している。また、欧州全域で暴風等の風害が発生することも多く、発生件数では洪水に次ぐ発生頻度となっている。

 ロシアでは永久凍土が大部分を占めるシベリア地域で春に洪水が起こる他、夏と秋には森林火災が起こることがある。
 また、東部のサハリン州、カムチャッカ州では火山活動と地震が活発である。

 その他、発生件数は少ないが干ばつ、異常気温、地滑り、風害による被害が発生している。
 洪水は東部シベリア地域で頻発しているが、南部の穀倉地帯でも初夏に洪水が発生することが多く、自然災害全体では経済的損失額は最大である。
 ただし、モスクワ、サンクトペテルブルグなどの大都市周辺での自然災害は少ない。

■中東~トルコの自然災害リスクは地震が突出

 アフガニスタンからイラン、トルコにかけては山地となっており、インドプレート、アラビアプレート、アフリカプレート、ユーラシアプレートの境界線があり、地震が発生しやすい地域となっている。
 特にトルコおよびイランではこれまでも大きな地震が数多く発生している。

 それ以外の地域は、砂漠などの乾燥地帯とそれを取り巻くように高温多湿の地域が広がっている。
 そのため、自然災害としては地震以外には洪水、砂嵐などが発生している。

 ちなみに、トルコは3つのプレートがぶつかり合う地域に位置しており、国内に多くの断層を持つ地震国である。
 そのため、トルコにおける自然災害リスクでは地震が突出している。
 近年における大きな地震としては、1999年8月のトルコ大地震(死者1万7000人以上)、1999年11月に北西部のデュズジェで発生した地震(死者800人以上)、2011年10月に東部で発生したトルコ東部地震(死者約600人)がある。

■アフリカ~干ばつで多くの死者が

 アフリカは地質的には大陸全体がアフリカプレート上にある。
 北部のアラビアプレートおよびユーラシアプレートとの境界線で小規模の地震が発生する場合もあるが、それ以外のほとんどの地域では地震の発生頻度は低い。
 しかしながら、アフリカ東部には大地溝帯(グレートリフトバレー)があり、毎年数センチ広がっている。
 地溝帯の周辺には活発に活動する火山もあり、これらの地域ではM6クラスの地震が発生する場合もある。

 北部のサハラ砂漠の東側にはナイル川流域、南側にはニジェール川などの大河がある。
 南部にはコンゴ川もあり、洪水が頻繁に発生している。
 被災者数では干ばつが最大となっており、死者数も最大となっている。

(本文中の意見に関する事項については筆者の私見であり、筆者の属する法人等の公式な見解ではありません)



WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2015年12月21日(Mon)  Wedge編集部
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5770

水没する三大都市圏
鬼怒川決壊は人災に非ず

 「内陸部の自治体は地震対策ばかりやってきた。
 水害訓練は経験がなくぶっつけ本番だった」。
 茨城県常総市の防災を担当する須藤一徳市民生活部長は肩を落としながらこう話した。


●TOHAN AERIALPHOTOGRAPHIC SERVICE / AFLO

 2015年9月10日、鬼怒川は決壊し常総市は3分の1が水に浸かった。
 豪雨になりそうだという情報を得て、須藤部長は9月9日の夜から庁舎に詰めて災害対応を行っていた。
 常総市における降雨は、9日、10日ともに1日あたり40mmを超えることはなく、窓の外に見える雨は「そんなに強くなかった」(須藤部長)。
 雨が弱いにも関わらず、10日になると付近の水位が10分に20cmというすさまじいペースで上昇をはじめた。
 「市北部の若宮戸には自然堤防が切れているところがあり越水するかもしれないという認識があったが、南部までは来ないと思っていた」(須藤部長)

 深夜2時6分、国土交通省の下館河川事務所から常総市長へ一本の電話が入った。
 鬼怒川は国が管理する1級河川。
 国交省はFAXで水位や降雨の予想を送るだけでなく、電話を使ったホットラインで直接情報を伝える。
 2時20分、常総市は若宮戸周辺に避難指示を出し、4時には若宮戸から洪水が流れてくる恐れがある他の地区にも避難勧告を出した。
 しかし、
 「朝4時頃に避難勧告が防災無線から聞こえてきたが、二度寝した」
と70代のある住民は語る。
 勧告を出しても住民の避難は進まなかった。

 そのころ国交省はできる限り下流へ流れる水を減らそうと、栃木県にある五十里(いかり)ダムなど4つのダムを一杯にする操作を行っていた。
 「ダムでは鬼怒川に流れる水の3割ほどを管理でき、水位を26cm程度低下させた」(同省関東地方整備局の羽澤敏行河川保全専門官)
 それでも水位は上昇を続け、6時頃に若宮戸から越水が始まり、常総市は避難指示の範囲をさらに広げた。

 11時42分、国交省から「21km(上三坂地区)付近で越水」とのホットラインがあった。
 さらに浸水が進み、1時間後の12時50分、越水の影響により付近の堤防が約200mにわたり決壊。
 避難指示を出していなかった同地区を濁流が飲み込んだ。
 「決壊の情報を聞いて慌てた。想像もしていなかった」(須藤部長)

 その後は混乱の極みだった。
 決壊した鬼怒川東側に避難指示を出したが、避難所は水に浸かり、翌11日午前0時頃には、災害対策本部のある常総市役所までもが水に浸かった。
 「まさか市役所まで水が来るほど流量があると思っていなかった。
 公用車は水に浸かり、市民と一緒に2階に閉じ込められてしまった」(須藤部長)

 避難指示を出せず、対策本部としての機能を失った常総市への非難が集中した。
 しかし、周辺自治体の防災担当者は
 「避難指示を出す目安となる水位のあたりを今まで見たことのないような速度で上がっていった。
  避難指示は出せたが適切なタイミングだったかは分からない。
 正直、常総市が決壊しなければ、うちも危なかった」と本音を漏らす。

■想定を超える豪雨


●鬼怒川の流域図と降雨状況 (注:2015年9月8日から10日の積算雨量  出所:国土交通省公表資料よりウェッジ作成)

 いったい鬼怒川とその上空で何が起きていたのか。
 慶應義塾大学の岸由二名誉教授は
 「鬼怒川の流域の形は上流が広く下流が狭い。
 上流に降った豪雨が“水だるま”のように下流へと落ちていった」
と説明する。

 決壊前日の9日10時過ぎに愛知県知多半島に上陸した台風18号は、同日夕刻に温帯低気圧にかわった。
 関東南部では積乱雲が連なる「線状降水帯」が発生。
 関東平野を北上して栃木県で雨を降らせた。
 鬼怒川上流域には24時間あたり600mmを超える、数百年に一度の豪雨が降り注いだ。
 鬼怒川堤防は「百年に一度の洪水を流せるよう」(関東地方整備局水災害予報センター長の津久井俊彦氏)に整備されていた。
 今回の豪雨は、はるかに整備基準を上回っていた。

 気象庁気象研究所予報研究部第三研究室長の加藤輝之氏は
 「線状降水帯は複数条件が揃うことで発生するが、地球温暖化の影響で条件が揃いやすくなり、発生頻度は高くなる」
と指摘する。
 線状降水帯が増えれば今回のような豪雨が起こる可能性も高まる。
 前出の岸氏は
 「今回のような豪雨が、江戸川、荒川、多摩川、相模川などの上流域に降れば、都心でも大規模な水害の起きる可能性は高い」
と警鐘を鳴らす。


●常総市が非難判断の目安としている鬼怒川の水位の変化(注:茨城県川島水位観測所における鬼怒川水位の経過 出所:国土交通省公表資料よりウェッジ作成)

 常総水害の1カ月半後の10月27日。
 東京都の江東5区(足立区、墨田区、江東区、葛飾区、江戸川区)の区長が初の「江東5区大規模水害対策協議会」に出るため、江戸川区に集まった。
 「常総市の水害があって、広域避難の実現に温度差のあった東京都23区内の意識が統一されつつある」(東京都総合防災部計画調整担当課長の福田孝由氏)
ことを示す動きだ。

 協議会の座長を務める多田正見・江戸川区長は
 「荒川がはん濫する場合、事前に、かつ広域で区民に避難してもらう必要がある。
 ハザードマップはあるが、具体的にどう避難させればいいか、思い描けない」
と苦悩を語った。

 江戸川区は三方を東京湾、荒川、江戸川に囲まれ、陸地の7割が満潮位以下のゼロメートル地帯になっている。
 街の両端は堤防に囲まれ、中に溜まる雨水や下水を人為的に排水し続けなければ存在しえない“水中都市”だ。

 荒川や江戸川が決壊すれば2週間は水に浸かる。
 避難所や3階建て以上の建物をあわせても、区民68万人のうち収容できるのは32万人程度だ。
 江戸川区防災危機管理課長の高橋博幸氏は
 「事前に区外へ避難してもらわなければいけないが、江東5区約260万人で検討しなければ実現できない」
と頭を抱える。
 都や国が主体となって、水害対策を検討して欲しいのが本音だろう。

 江戸川の整備を行う国交省江戸川河川事務所の土屋秋男計画課長は
 「江戸川の上流となる群馬県利根川流域に今回と同じような豪雨が降れば、はん濫が起きる可能性がある」
と語る。
 江戸川では13年5月から整備計画に基づき河川整備が行われているが、
 「整備には時間がかかるし、ハードだけで安全は確保できない」(土屋課長)。

 荒川ではまだ整備計画すら定まっておらず、
 「3日で472mmの雨が流域に降ると破堤する可能性がある」(国交省関東地方整備局の齊田勇志河川分析評価係長)。

 民主党政権が、事業仕分けで「スーパー堤防」を中止に追い込んだことが、今回の水害の一因だとする見方がある。
 首都圏で整備が進む「スーパー堤防」は、通常より高い堤防だと思われがちだが、実は“高さ”は変えず、“幅”を広げるものだ。
 街に致命的な被害をもたらす決壊を防ぐという意味の「高規格堤防」であり、越水による水害は起こる。

 幅を広げるためには、沿岸の広大な区画整理事業と同時に行う必要があり、その整備には「200年から300年」(中央大学理工学部都市環境学科の山田正教授)という膨大な時間がかかる。
 遠くない将来に大都市で起こると想定される「常総型水害」にスーパー堤防が間に合い、かつ功を奏するかはかなり不透明だ。


●(右上)常総市のハザードマップと実際の浸水区域 (左下)江戸川区のハザードマップと満潮時の写真

■庄内川、淀川のはん濫リスク

 首都圏だけではない。
 三大都市圏は同じように水害のリスクを抱える。

 名古屋では00年の9月に東海豪雨で甚大な被害が出た。
 00年9月11日から12日にかけて、年間総雨量の3分の1に及ぶ567mmもの雨が庄内川、新川流域に降り注ぎ、新川が決壊。
 死者は7人、床上浸水2万1885棟、被害額は約6700億円にのぼった。
 名古屋を中心とした都市が広がる濃尾平野には、庄内川のほかにも、木曽三川や日光川などが流れこんでいる。
 東海豪雨のほか、過去には伊勢湾台風による高潮被害など、多大な水害を被ってきた。
 この約400平方kmに及ぶ地域には、約90万人が大きな水害リスクを抱えて生活している。

 淀川が流れる大阪も同様だ。
 約64平方kmのゼロメートル地帯が広がっており、淀川が決壊すれば約83平方kmが浸水、中心部である大阪・梅田駅周辺は4m以上浸水する。
 13年9月、淀川上流の桂川がはん濫し、京都の名所・渡月橋も濁流に飲まれた。
 下流にあたる淀川の水位もこれまでで最高の4.51mに到達し、はん濫危険水位まで1mに迫った。
 淀川の決壊を防ぐため、桂川は適度にはん濫することを前提にしている。
 河川整備のレベルをあげて、いま以上に水が流れるようになってしまえば「淀川が耐えられない」(京都大学防災研究所の中川一教授)。

 琵琶湖の役割も大きい。
 淀川に流れる水は「47%ほどが琵琶湖を経由して出てくる」(国交省淀川河川事務所の佐久間維美副所長)からだ。
 琵琶湖は460本もの河川の水を集め、その出口は瀬田川だけという“天然のダム”だ。
 桂川はん濫の際も、淀川の水位を下げるべく、国交省は41年ぶりに瀬田川と琵琶湖の間にある洗堰を全て閉めることで水をとどめた。
 同時に流域にある7つのダムでも貯水を行い、桂川の水位を数十cm低減させた。
 それでも淀川の水位は上がったが、幸運にも降雨はおさまった。

■国が進める避難計画への疑問

 ハード整備を着々と進めつつも、水害が起こるまでに間に合うかは分からない。
 そこで国交省が推進しているのが「タイムライン(事前防災行動計画)」の策定だ。
 タイムライン防災とは、台風の上陸から3日前まで遡り、策定する行政自身や公共交通機関などの行動を事前に計画して整理しておくことをいう。
 国交省荒川下流河川事務所は全国に先駆けて、東京都足立区や北区などの関係自治体、東京メトロやJR東日本等の関係機関とともにタイムライン策定を進めた。

 15年5月に試行案を公表し、「9月の豪雨でも72時間前の体制整備に活用した」(荒川下流河川事務所の小池栄史副所長)そうだが、その先には「鉄道の運行停止」や「避難バス専用レーンの設置」など、かなり経済的、社会的影響の大きいメニューが並んでいる。

 前出の水害対策協議会のアドバイザーをつとめる群馬大学大学院の片田敏孝教授は避難のシミュレーションを示し
 「江東5区で犠牲者をゼロにするには、事前に住民の1割が自主避難する、半分以上が鉄道を利用して避難する、3階建て以上の人は避難しないなどの無理難題をいくつも達成しなければならないが、市町村にそんな強制力はない」
と、行政主導のタイムライン防災で住民を救うことの難しさを指摘する。

 では打つ手はないのだろうか。

 「私がこの仕事に就いた三十数年前には、降雨量を把握するにも、広い流域内に数の限られた地点の雨量計しかなかった。
 当時はダム管理をしていたが、1時間毎に更新される雨量計の数字しか見られなかったので、今後の雨の降り方は想像するしかなかった。
 今はレーダー雨量計の数分毎に更新されるデータが公開配信されており、面的に移り変わる降雨情報が得られるので、これから雨が強くなるのか、雨が弱まるのかを、誰もが手軽に確認できる」(国交省庄内川河川事務所の瀬古眞一副所長)。

 幸いにも、現代には災害が起きるかどうか判断するための情報が溢れている。
 気象庁や国交省のサイトでは、リアルタイムで自らに関係する河川上流域の降雨や水位の状況を見ることができ、30年前の河川管理のプロたちを超える情報を手にすることができる。


●東海豪雨で水没した名古屋市内(THE YOMIURI SHIMBUN / AFLO)

 しかし、
 「1947年のカスリーン台風以来、大規模水害が起こっていないことで、行政依存ボケしてしまった」(前出の山田正教授)。
 情報があっても取りに行くマインドがない。

 逆に言えば、マインドさえあれば自分や家族の命は救えるはず。
 情報や指示が与えられるのを待つのではなく、自分が住んでいる地域の川は何川で、上流域はどこになるのかを知ることから始めよう。



ロイター  2016年 01月 17日 11:27 JST Karen Braun
http://jp.reuters.com/article/global-weather-braun-idJPKCN0UV00Q?sp=true

コラム:南極圏の氷、「4年ぶり拡大停止」の意味


● 1月11日、メディアが注目するのはいつも北極圏の氷床だが、南極圏では注目すべき動きが生じつつある。南極圏の氷床の拡大は4年ぶりにストップした。そして実際のところ、氷域は平均的な水準を下回ってしまったのだ。写真は南極大陸のデニソン岬。2009年10月撮影(2016年 ロイター/Pauline Askin)


[11日 ロイター] -
 メディアが注目するのはいつも北極圏の氷床だが、南極圏では注目すべき動きが生じつつある。
 南極圏の氷床の拡大は4年ぶりにストップした。
 そして実際のところ、氷域は平均的な水準を下回ってしまったのだ。

 南極圏の氷床には、地球上の淡水の約61%が保持されている。
 北極圏の氷床が2000年代に大幅に縮小する一方で、南極圏の氷床は同じ時期に数次にわたって成長してきた。

 2015年が始まった時点で、南極圏の氷床の広がりは1979年の観測開始以降で最大の水準にあり、長期的な平均値よりも極端に広がっていた。
 7月までは海氷が異常に多い状況が続いたが、その後、急速な縮小が始まった。

 2015年8月には月間の海氷域が2011年11月以来初めて平均水準を下回った。
 2015年を通じて、海氷域は平均水準の近傍で推移した。

 1月6日の時点で、海氷域はこの日までの30年間の平均をわずかに下回るだけだが、相対的には過去10年間で最低の水準が観測されている。

 2015年には地球全体の気温が過去最高を記録したが、これが氷床縮小の直接的な原因であるかどうかは不確実だ。
 南極圏の海氷の今後の動向については、なおさら予想できない。

◆<直感を裏切る傾向>

 海洋はグローバルな気候にとっての主要要因の一つであり、南半球の海水温は昨年5月から12月にかけて記録的な高さとなったため、海氷の急速な減少は明らかにその帰結であると思われるかもしれない。
 だが、それほど単純な話ではないかもしれない。

 1979年から2014年にかけて、年間の海水温の異常と南極圏における年間の海氷域の異常のあいだには、弱いとはいえ正の相関が見られる。
 言い換えれば、理屈では正反対になりそうなものだが、南半球の海水温が高くなると、海氷域も増大する傾向が見られるのだ。

 こうした相関が見られる一方で、昨年までの時点で海水温がそれぞれ過去2番目、3番目に高かった2013年、2014年に、どのようにして南半球の海氷が過去最高の水準を維持できたのか、その仕組みを理解することはなお困難である。

 地球温暖化にもかかわらず南極圏の海氷がここ数年間持ちこたえてきた理由には、オゾンホールの影響や氷の融解によるフィードバックループなど、いくつか有力な理論がある。
 だがこれらの理論は、昨年半ばに急激な変化が起きた理由を説明するには十分ではない。

 また、南極圏における陸上の気温を考えても、2015年には相対的に見て大量の海氷が消滅したのに、それに先立つ2年間には持ちこたえた理由を説明できない。
 2015年の気温は過去3年間で最も冷涼であり、昨年、海氷が急激な変動傾向を示した謎はいっそう深まるばかりだ。

◆<予想できぬ未来>

 正の相関の理論が正しいとすると、もし海水温が昨年観測された過去最高の値に遠く及ばない場合、2016年中も南極圏の海氷域は縮小を続けるかもしれない。

 現在のエルニーニョ現象は、今年半ばには急速にラニーニャ現象へと転換していくのではないかと広く考えられている。
 そうなれば、太平洋の広い範囲で劇的に水温が下がるだろう。
 だが、グローバルな海水温の年間変動のうちエルニーニョ南方振動(ENSO)現象を理由とするのは20%以下にすぎない。

 グローバルな海水温変動の約75%は前年比で見た水温傾向で説明される。
 グローバルな海水温がかなり確実な上昇傾向を見せていることを考えると、2016年に海水温が大幅に下がる方に賭けることはあまり得策ではないようである。

 こうして見ていくと、2016年及びそれ以降に生じる状況については、大きな不確実性が残る。
 南極圏における最近の動向は、本当に海氷パターンの変化を示しているのか。
 恐らく、それもまだ分からないままだ。

 南極圏の海氷と周辺の大気、人類の日々の生活に与える影響との相関関係は、北極圏の場合に比べてはるかに理解が進んでいない。だが一つ分かっているのは、
 南極圏の氷床が融解すれば確実に海水面の上昇につながる
だろうということだ。

 南極圏の氷床がすべて融解すれば、海水面は約190フィート(58メートル)上昇する。
 世界の主要都市は完全に消滅し、小国のいくつかも同じ運命をたどる
だろう。

 もっとも、近い将来においては、これほどの規模の融解が生じる心配はまったくない。
 過去20年間の海水面の上昇は、平均で年0.3センチ程度だからだ
 とはいえ、世界の淡水のうちこれほど多くが南極圏の氷床に閉じ込められている以上、比較的少量が融解しただけでも大きな影響が出る可能性がある。

*筆者はロイターのマーケットアナリストです。本コラムは個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)









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