『
フジテレビ系(FNN) 11月5日(木)4時50分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20151105-00000557-fnn-int
ASEAN拡大国防相会議
共同宣言が初めて採択されず、事実上決裂
共同宣言の採択見送りは、ASEANに対する中国の強い影響力を、あらためて示した。
一連の会議では、アメリカが重視する「航行の自由」について議論が交わされた。
共同宣言がまとまらなかった異例の事態は、中国の主張が押し通された結果。
南シナ海問題をめぐっては、中国に厳しいフィリピンなど、一方で慎重な姿勢をとるラオスなどと対応が割れていて、ASEANとして一枚岩になれていないのが現状。
アメリカのカーター国防長官は
「アメリカは、国際法が許す、あらゆる場所で飛行・航行を続ける」
と述べた。
アメリカのカーター国防長官は、閉幕後の会見で、南シナ海で展開している空母に、5日に乗り込むと発表。
この問題では、引き続き妥協しないと、中国をけん制した。
経済力を背景に、「裏庭」としてASEANへの影響力を強める中国と、アジアへの関与を掲げるアメリカとの攻防は、収束の兆しすら見えていない。
』
『
Newsweek 2015年11月4日(水)18時58分 遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/11/asean-2.php
ASEAN国防拡大会議、米中の思惑
――国連海洋法条約に加盟していないアメリカの欠陥
4日、「ASEAN10カ国+域外8カ国」の国防拡大会議があったが、合意に至らず共同声明は出されなかった。
その背景には米中パワーの代理紛争を嫌うASEAN諸国と、米中の思惑がある。
■共同声明見送り
―米中勢力争いに巻き込まれたくないASEAN諸国
3日からマレーシアの首都クアラルンプールで、ASEAN(10か国)国防相会議が開催されている。 4日からはASEAN域外8か国(日本、アメリカ、中国、ロシア、オーストラリア、インド、韓国、ニュージーランド)が加わったASEAN国防拡大会議が開催された。
関心は、中国の覇権と、アメリカが南沙諸島で中国が造成する人工島の周辺12海里以内の海域に駆逐艦を派遣し航行の自由を主張したことに対して中国が反発するという対立に集まっている。
しかしASEAN諸国にとっては、実は非常に迷惑なことなのだ。
議長国のマレーシアのヒシャムディン国防相は、
「南シナ海における意図しない衝突を避けるための法的拘束力を持った連絡メカニズムの策定を急ぐことは重要であっても、あくまでも問題の平和的解決を求める声」
が相次いだと述べている。
また
「ASEAN以外の国が、これ以上加わって、緊張を高めないでほしい」
という苦渋もにじませている。
フィリピンはたしかにアメリカ軍の駐在を一定条件で認める方向で動いてはいるが、他のASEAN諸国は中国との利害関係が深い。
「利害」というより、中国との友好的な経済関係なしに今後発展していくことには困難があることを知っている。
その結果、アメリカが望むような「中国を制裁する」形での共同声明を出すことはできなかった。
アメリカ、日本、フィリピン以外は、中国を制裁するような「南シナ海」とか「航行の自由」といった文言を盛り込んだ共同声明を出すことをいやがった。
共同声明案は、3日のASEAN国防相会議ですでにその方向で出来上がっていたのだ。
フィリピンを除くASEAN諸国は、この根本姿勢を崩そうとはしなかった。
結果、アメリカ、日本、フィリピンの反対により、「中国に有利で、アメリカに不利な」共同声明発布は見送られたということだ。
アメリカは国連海洋法条約に加盟していない
アメリカは、あくまでも11月1日付の本コラム
「南シナ海、米中心理戦を読み解く――焦っているのはどちらか?」
に書いたように、大統領選で民主党が不利になりそうなのを防ぐために動いている。
自らのプレゼンスを主張するため、という「お国の事情」がある。
もし本気で中国を制裁したいのなら、国連の場で戦えばいい。
国連には「国連海洋法会議」があり、また準拠する法律として、「国連海洋法条約」がある。
そこには「人工島」に関しても明記してある。
中国もこの条約に加盟しているので、平和裏にというか、「武力による威嚇」ではなく、「論理武装による討議」で多数決議決をして中国を屈服させればいいのである。
特にオバマ大統領はノーベル平和賞を受賞しているのだから、「中国が国連海洋法に違反している」というのなら、なおさらのこと、そうすればいいのではないかと、誰しも思うだろう。
ではなぜ、アメリカは、そういう手段に出ないのか?
それは、何を隠そう、アメリカこそが、
この国連海洋法条約に加盟していないからである!
なぜ加盟していないかというと(というよりも、なぜ最初は主導的立場にありながら脱退したかというと)、アメリカ企業にとって不利だからだ。
海洋法を守ると、アメリカ企業による深海開発に不利だということから脱退し、今日に至っている。
そのアメリカが「国際法」をかざして武力的な威嚇をすること自体、本末転倒ではないだろうか?
日本政府は、「法の順守」と言いながら、法から逸脱して動いているアメリカに全面的に賛同している。
それに対して、中国は1996年に加盟している。
日本も同年、批准した(加盟した)。
■中国のしたたかな戦略
中国が、南シナ海における行動を合法的とする法的基盤となっているのは、4月21日付けのの本コラム「すべては92年の領海法が分かれ目
――中国、南沙諸島で合法性主張」に書いたように中国の領海法だ。
この領海法は、日本が1895年に閣議決定して日本の領土であることが明確になっている尖閣諸島を中国名「釣魚島」として、中国の領土としてしまった。
明らかなルール違反である。
日本は瞬時に国際司法裁判所に提訴しなければならなかったが、何もしなかったのは、何度も書いてきた通りだ。
しかし、いま現在、手がないわけではない。
日本も中国も国連海洋法条約を批准しているので(加盟しているので)、国連海洋法会議で、違法性や不適切性などに関して指摘し、是正を求めるという方法が、まだ残っている。
しかし、アメリカは海洋法に関しては、自らが加盟していていないために、国連で討議しようとはしない。
こういった全体的な状況をASEAN諸国が理解しているのかどうかは定かでないが、中国は心得ている。
そしてこの中国もまた、自国の領海法に違法性があるのを知っているので、ひたすらASEAN諸国を懐柔する手法に出ている。
実は明日5日には、習近平国家主席は、最もランクの高い国事訪問(公式訪問)としてベトナムを訪問する。
中国の中央テレビ局CCTVは、ベトナムの首脳らが、いかに熱烈に習近平国家主席の来訪を待っているかを、テレビが燃え上がるほどにくり返し報道している。
もちろんベトナム指導層の熱烈歓迎の言葉も数多く「肉声で」発信されており、とてもとても、ASEAN国防相会議で、中国を制裁しようなどというムードではないのである。
日本のメディアでは、フィリピンやベトナムなど少なからぬ国がアメリカとともに中国制制裁に動くだろうという(やや挑戦的ムードの)報道が散見されたが、いかがなものだろうかと思いながら、執筆をしながらBGMとして聞いていた。
中国のしたたかな外交の真相を深く知らないと、ミスリーディングをしてしまう危険性を孕んでいる。
アメリカが、大統領選のために仕掛けた「威嚇」は、ASEANでは、否定された格好だ。
アメリカともあろう大国が、習近平国家主席が翌日にベトナムを国事訪問するという「ビッグ・イベント」を控えている11月4日に、ASEAN国防拡大会議などを開いて、中国制裁の共同声明を出すことができると読んだのだろうか?
中国のしたたかさは、そのようなものではない。
今回は、アメリカの誤算としか言いようがない。
』
『
サーチナニュース 2015-11-05 10:47
http://news.searchina.net/id/1593358?page=1
ASEAN共同宣言で決裂、
中国国防部は米国を強く非難、
日本には要求
南シナ海を巡る米中の対立が原因で、東南アジア諸国連合(ASEAN)の拡大国防相会議で共同宣言が採択できなかったことについて、中国政府・国防部(国防省)は米国を強く非難。
日本に対しても「状況を複雑化しないよう」求めたことを明らかにした。
マレーシアのクアラルンプールで3日と4日に開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)の拡大国防相会議は、南シナ海を巡る問題で米中が厳しく対立し、共同宣言が採択できないという、異例の事態で終わった。
中国政府・国防部(国防省)は共同宣言採択での決裂についてまず、
「中国側は遺憾に思う」、
「中国は輪番議長国のマレーシアと密接に意見のすり合わせと意思疎通を続け、共同宣言についてマレーシア及びその他のASEAN諸国と共通認識を持つに至っていた」
と、自国は共同宣言の成立のために誠意を尽くしたと主張。
一方で
「個別の域外国家が(すでに形成されていた)共通認識を無視し、共同宣言に本会議の議論とは関係のない内容を強引に盛り込もうとした。
これは、ASAEAN拡大国防相会議の主旨と原則に完全に背くもの」
と論じた。
明らかに米国に対する非難であり、米国の挙動によってASEANが傷ついたと主張した。
中国国防部によると、中国の常万全国防相は同会議で、
「米国が軍艦を、中国領である南沙諸島の関連する島と岩礁の近くに勝手に近づけることに強く反対する」
と、米国を名指しで批判。
米国が主張する南シナ海における航行の自由については
「偽の命題だ。
毎年10万隻以上の船舶が、南シナ海を通っている。
どの国であれ、(自国船の航行が)妨害され、面倒や危険に遭遇したことは聞いたことがない。
南シナ海の航行の自由には、いかなる問題も存在しない。
これは『鉄の事実』だ」
と論じたという。
中国国防部は常国防相と日本の中谷元防衛相が4日午後に行った個別会談の内容も紹介。
常国防相は
「南シナ海の問題は中日間(日中間)の問題ではない」
と述べた上で
われわれは日本に、南シナ海の情勢を複雑にしないよう求める」
などと注文を付けた。
中国は、南シナ海の島や岩礁についての領有権で対立するフィリピンなどが日本に接近し、日本側にも積極的に関係を構築する動きのあることを警戒している。
しかし常国防相は南シナ海の問題について、日本に対して「希望する」ではなく「求める」とやや強い言葉づかいではあったが、批判したり懸念の意を表明することはなかった。
』
『
日本テレビ系(NNN) 11月6日(金)7時45分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20151106-00000010-nnn-int
米国防長官が空母に乗艦 中国をけん制
アメリカのカーター国防長官とマレーシアのヒシャムディン国防相は5日、南シナ海を航行中のアメリカ軍の空母に乗艦した。
南シナ海で領有権を主張する中国に対し、この地域でのアメリカ軍の存在感を示した形。
アメリカ国防総省によると、カーター国防長官らは新型輸送機「オスプレイ」で空母「セオドア・ルーズベルト」に降り立ち、約3時間、乗艦した。
マレーシア・ボルネオ島の北西約110から160キロの公海上を航行したという。
南シナ海問題では4日、ASEAN(=東南アジア諸国連合)とアメリカ、中国などの防衛トップによる会議で意見がまとまらず、共同宣言が見送られる異例の事態となった。
カーター国防長官は今回の乗艦について、
「多くの国が地域の平和のためアメリカの存在を求めていることを示している」
と述べ、南沙諸島で岩礁の埋め立てや軍事化を進める中国を改めてけん制した。
』
『
東洋経済オンライン 2015年11月05日 ビル・エモット :英『エコノミスト』元編集長
http://toyokeizai.net/articles/-/90631
ビル・エモット「中国の領海拡大を許すな」
米国は南シナ海に定期的に協調介入すべき
南シナ海にある中国の新たな人工島の12海里以内に米海軍の艦船を航行させたことは、この数年間では最も大胆な、米国による軍事介入となった。
1996年にビル・クリントン大統領が、当時窮地に立っていた台湾を支援するため台湾海峡に艦隊を派遣して以来、米国はこれほど大胆に、中国の違法な領土的主張に挑戦したことはなかった。
象徴的なジェスチャーとして、この動きを歓迎すべきだ。
しかし、これで十分ではない。
中国による国際法解釈に真に反撃するには、中国の領土的主張に対して何回も定期的に、他国と協調して挑む必要がある。
■まったく筋が通らない中国の主張
今回の介入に対する中国の反応は、領海への違法な侵入であり米国の偽善の表れだとして、激しい憤りを装うことだった。
中国の主張は、米国は中国が南シナ海に人工島を建設すると懸念するが、ベトナムやフィリピンが同じことをしても気にはかけない、との内容だ
。しかし、中国がよく理解しているように、どちらの主張も筋が通っていない。
ベトナムもフィリピンも、中国が悪名高い「九段線」を持ち出してきているように、南シナ海全体への領有を主張しているわけではない。
この九段線とは、巨大な舌状の領土的主張を行うものだ。
第2次世界大戦後の当初は中華民国政府が主張し、共産党政府が引き継いだ。
また両国は、従来暗礁であった地点の周辺海域上での主権を主張するなどして国連海洋法条約に違反しているわけでもない。
この条約の厳密な定義を無視しない限り、今回の米国の介入を「違法」と言うことはできず、その場合でも、いかなる法によって介入が禁止されるのか明確ではない。
実際のところ、このような主張は単なるまやかしにすぎない。
南シナ海における領土紛争に対する中国の態度を完全に理解するために、1つの見方がある。
何世紀もの間、中国はこの地域で圧倒的な最大最強の国家であって、周辺海域を支配し、大部分の隣国を下位の属国として扱っていた。
中国が例外的に弱体化した2世紀にわたる空白の後、中国は急速に力を取り戻しつつあり、中国が考えるところの東アジアの古き良き秩序を回復したいと思っている。
言い換えれば、中国は、米国と同じように、自らの領土周辺の陸海空を支配する権利があると感じるような超大国になりつつある。
中国は、米国と同等の存在、世界における2大超大国の1つとなることを目指している。
その結果、中国の指導者たちは、中国が軍事力を誇示し、戦略上重要とみなす地域を防衛できなければならないと信じている。
このことは、他国が関係しない限り、理解し難いことではなく、必ずしも不合理なことでもない。
米国は確かに、隣国を扱う際、ある種の権利意識を示している。
しかし、カナダもメキシコも現在のところでは、中国の多くの周辺国のように、侵害や恫喝を受けているとの感覚は持っていない。
また、米国は戦略的な動機で国際貿易や輸送の自由な流れを脅かしてはいないが、中国の場合、確かにそうしているのではないだろうか。
米国と中国を同等の超大国と考えるにしても、米国がずっと広範な国際的な支持や受け止めを得ていることに留意するのは重要だ。
将来は状況が変わるかもしれないが、当面は、これが現実である。
■「東シナ海」の逆手を取るべし
疑いもなく、中国は突進を続け、主権主張を裏付けるために「既成事実」をさらに積み上げようとするだろう。
少なくとも平和的手段によって、これに反対する唯一の方法は、中国の主張は認められないと一貫して示し続けることだ。
中国の言う「事実」とは見解にすぎないのだと、はっきりさせねばならない。
そのためには、中国が主張を試みている海域において、軍艦や商業船など、あらゆる種の船舶が航行する形で、理想的には多くの国が連携して、定期的に介入する必要がある。
これは結局、中国自身が東シナ海で用いている戦術だ。
中国は、東シナ海にある日本の尖閣諸島 (中国名: 釣魚島) 周囲の海域に船団を派遣している。
日本の領海における中国の行動は違法である可能性があるが、自らの主張を通している (しかもほとんど毎日、明確な形で行っている)。
米国とその同盟国は、南シナ海で同じことをしなければならない。
そのようなことをすれば偶発的な衝突や対立の危険が生じる。
しかし、何もしなければ、あるいは単発的な動きにとどまれば、中国に既成事実を与えるだけなのだ。
』
東洋経済オンライン 2015年11月05日 ビル・エモット :英『エコノミスト』元編集長
http://toyokeizai.net/articles/-/90631
ビル・エモット「中国の領海拡大を許すな」
米国は南シナ海に定期的に協調介入すべき
南シナ海にある中国の新たな人工島の12海里以内に米海軍の艦船を航行させたことは、この数年間では最も大胆な、米国による軍事介入となった。
1996年にビル・クリントン大統領が、当時窮地に立っていた台湾を支援するため台湾海峡に艦隊を派遣して以来、米国はこれほど大胆に、中国の違法な領土的主張に挑戦したことはなかった。
象徴的なジェスチャーとして、この動きを歓迎すべきだ。
しかし、これで十分ではない。
中国による国際法解釈に真に反撃するには、中国の領土的主張に対して何回も定期的に、他国と協調して挑む必要がある。
■まったく筋が通らない中国の主張
今回の介入に対する中国の反応は、領海への違法な侵入であり米国の偽善の表れだとして、激しい憤りを装うことだった。
中国の主張は、米国は中国が南シナ海に人工島を建設すると懸念するが、ベトナムやフィリピンが同じことをしても気にはかけない、との内容だ
。しかし、中国がよく理解しているように、どちらの主張も筋が通っていない。
ベトナムもフィリピンも、中国が悪名高い「九段線」を持ち出してきているように、南シナ海全体への領有を主張しているわけではない。
この九段線とは、巨大な舌状の領土的主張を行うものだ。
第2次世界大戦後の当初は中華民国政府が主張し、共産党政府が引き継いだ。
また両国は、従来暗礁であった地点の周辺海域上での主権を主張するなどして国連海洋法条約に違反しているわけでもない。
この条約の厳密な定義を無視しない限り、今回の米国の介入を「違法」と言うことはできず、その場合でも、いかなる法によって介入が禁止されるのか明確ではない。
実際のところ、このような主張は単なるまやかしにすぎない。
南シナ海における領土紛争に対する中国の態度を完全に理解するために、1つの見方がある。
何世紀もの間、中国はこの地域で圧倒的な最大最強の国家であって、周辺海域を支配し、大部分の隣国を下位の属国として扱っていた。
中国が例外的に弱体化した2世紀にわたる空白の後、中国は急速に力を取り戻しつつあり、中国が考えるところの東アジアの古き良き秩序を回復したいと思っている。
言い換えれば、中国は、米国と同じように、自らの領土周辺の陸海空を支配する権利があると感じるような超大国になりつつある。
中国は、米国と同等の存在、世界における2大超大国の1つとなることを目指している。
その結果、中国の指導者たちは、中国が軍事力を誇示し、戦略上重要とみなす地域を防衛できなければならないと信じている。
このことは、他国が関係しない限り、理解し難いことではなく、必ずしも不合理なことでもない。
米国は確かに、隣国を扱う際、ある種の権利意識を示している。
しかし、カナダもメキシコも現在のところでは、中国の多くの周辺国のように、侵害や恫喝を受けているとの感覚は持っていない。
また、米国は戦略的な動機で国際貿易や輸送の自由な流れを脅かしてはいないが、中国の場合、確かにそうしているのではないだろうか。
米国と中国を同等の超大国と考えるにしても、米国がずっと広範な国際的な支持や受け止めを得ていることに留意するのは重要だ。
将来は状況が変わるかもしれないが、当面は、これが現実である。
■「東シナ海」の逆手を取るべし
疑いもなく、中国は突進を続け、主権主張を裏付けるために「既成事実」をさらに積み上げようとするだろう。
少なくとも平和的手段によって、これに反対する唯一の方法は、中国の主張は認められないと一貫して示し続けることだ。
中国の言う「事実」とは見解にすぎないのだと、はっきりさせねばならない。
そのためには、中国が主張を試みている海域において、軍艦や商業船など、あらゆる種の船舶が航行する形で、理想的には多くの国が連携して、定期的に介入する必要がある。
これは結局、中国自身が東シナ海で用いている戦術だ。
中国は、東シナ海にある日本の尖閣諸島 (中国名: 釣魚島) 周囲の海域に船団を派遣している。
日本の領海における中国の行動は違法である可能性があるが、自らの主張を通している (しかもほとんど毎日、明確な形で行っている)。
米国とその同盟国は、南シナ海で同じことをしなければならない。
そのようなことをすれば偶発的な衝突や対立の危険が生じる。
しかし、何もしなければ、あるいは単発的な動きにとどまれば、中国に既成事実を与えるだけなのだ。
』
『
ロイター 2015年 11月 5日 16:59 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/11/05/angle-south-china-sea-malaysia-idJPKCN0SU0U120151105?sp=true
アングル:南シナ海の対立がマレーシアに強いる「綱渡り」
[クアラルンプール 4日 ロイター] -
クアラルンプールで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大国防相会議では、南シナ海の言及をめぐり日米と中国が対立し、共同宣言の採択は見送られたが、その板挟みにあったのがホスト国であるマレーシアだ。
このことは、マレーシアと他の東南アジア諸国が中国と米国の間で、いかに難しい綱渡りを余儀なくされているかを物語っている。
特に先週、米海軍の駆逐艦が南シナ海南沙(同スプラトリー)諸島に派遣され、中国が造成した人工島付近を航行してからはなおさらだ。
マレーシア政府の統計によると、中国は同国最大の貿易相手国。
フィリピンやベトナムなど同じく南シナ海で領有権を争う他の東南アジア諸国とは対照的に、
マレーシアは大抵の場合、中国の軍事的進出に対する懸念は大したことではないように振る舞ってきた。
だが米国防当局者らの話では、マレーシアは他の東南アジア諸国と同様、南シナ海における中国の海洋進出に対抗するため、米国の軍事的プレゼンス拡大を求めているという。
「地域全体で求められているのが分かる。マレーシアがいい例だ」
と、米国防総省高官は語った。
カーター米国防長官は5日、米軍の原子力空母を視察するが、それにはマレーシアのヒシャムディン国防相が同行。
カーター氏はマレーシア海軍も訪問する。
両国はまた、海兵隊による合同軍事演習も来週に控えている。
「他の分野でも合同軍事演習の招待を受けている。多くの活動が進行中だ」
と、前述の米国防総省高官は述べた。
マレーシアは、東南アジアを通過する米軍の艦船や航空機に補給などの支援を行う取り決めを長い間結んでおり、同国の港には米艦が頻繁に寄港している。
米議会調査局(CRS)によると、マレーシアに寄港した米艦船数は2000年代初めにはほんのわずかだったが、2011年には年間30回以上と着実に増加している。
マレーシアのある高官は今週、同国が中国寄りにも米国寄りにも見られてはいけないとし、「バランスを取らなければいけない」と匿名を条件に語った。
ヒシャムディン国防相も今週、同地域外の国々が緊張を高めないことを望んでいるとし、
「われわれは中国とも米国とも関わり続ける。
実際に両国と関わっているという事実こそが、両国への明白なメッセージだ」
と語った。
■<中国の哨戒活動>
同地域で高まる安全保障問題、とりわけ中国の海洋進出にマレーシアがもっと注意を払うよう、ここ数年訴えてきたと、米国など西側の外交官らは語る。
中国軍の艦船は、マレーシア領ボルネオ島のサラワク州沖にある曾母暗沙(同ジェームズ礁)付近で定期的に哨戒活動を行っている。
衛星画像を見た外交官や専門家は、中国の巡視船がジェームズ礁の北方に位置する南康暗沙(同南ルコニア礁)でも半永久的なプレゼンスを維持しているとみる。
「広範な安全保障問題、特に南シナ海におけるマレーシアの役割と重要性は、戦略上ますます高まっている」
と、ある西側の外交官は指摘。
「重要なのは、マレーシアが先頭に立ち中国と対立することを期待するのではなく、同国が正しいことを行うよう促すことだ」
と語った。
だが、当のマレーシアは中国を疎遠にしようとはしていない。
同国はマラッカ海峡で9月、中国海軍と合同軍事演習を実施した。
マレーシアは伝統的に、軍事的には米国と、経済的には中国と関係を築いてきたと、ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)のシニアフェロー、Oh Ei Sun氏は指摘。
しかし、9月に行われた中国との合同軍事演習や、米国などが主導する環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加は、マレーシアと米中との関係がいかに深化しているかを如実に示すものだと同氏は説明。
「両国との間で綱渡りを強いられるため、ますます困難な仕事となる」
との見方を示した。
(Yeganeh Torbati記者、翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
』
_