『
サーチナニュース 2015-11-03 14:05
http://news.searchina.net/id/1593147?page=1
いびつな人口構成、
正常化には100年かかる
「一人っ子政策」負の遺産=中国
中国の大手ポータルサイト「新浪網」はこのほど、人口問題の専門家である北京大学社会学科、社会人類学研究所の郭志剛教授へのインタビュー記事を掲載した。
郭教授は、計画出産の政策を大きく転換した中国だが、人口構成の歪を改善するには「100年間が必要」と論じた。
中華人民共和国成立から絶対的な権力を振るった
★.毛沢東は人口増加論者で、人口抑制策を説いた学者が迫害されたこともあった(北京大学・馬寅初学長ら)。
中国が出産制限を始めたのは1971年ごろだ。
当初は比較的おだやかだったが、1980年代前半には、少数民族などを例外として、極めて厳格な「一人っ子政策」が適用されることになった。
しかし2010年ごろまでには、労働人口の伸びの鈍化や急速な高齢化、出生児の男女比が著しく男児に傾くなどの弊害が目立つようになった。
そのため、地方ごとに徐々に、「双独両孩(夫婦とも一人っ子である場合には、2人目の子を認める)」が導入されるなど、一人っ子政策が緩和された。
2013年11月には、「双独両孩」が基本国策と定められた。
「双独両孩」は夫婦が申請した場合に認められるが、申請件数は伸びなかった。
郭教授は新浪網に対して、15年7月までの申請件数を200-300万組と予想していたが、実際には該当する夫婦の12%の150万組にとどまったと説明。
大きな理由として、女性が出産すると就業や昇進に悪影響を与えてしまうと指摘。
★.人口構造を変えるには、産児制限を緩めるだけでなく社会全体のバックアップが必要
と述べた。
出生率の低下の別の側面が高齢化だ。
郭教授は、中国では2050年までに65歳以上の人口が4億人に達するとの見方を示した。
現在は60歳以上の人口が全人口の15%程度だが、同年までに人口の35%に達するという。
出生率を上げる努力が成功すれば、同比率を30%程度に下げられるが、奏功しなければ40%近くになるという。
郭教授によれば、中国は高齢化問題で、2030年までには「相当に厳しい状況」に直面する。
★.高齢化のピークは2050年だ。
高齢化問題は2070年まで続く
が、それまでを乗り越えられれば、中国は人口構造の転換に「勝利した」とみなすことができる。
逆に、人口構造の転換がうまくいかなければ、社会や経済の発展は相当に困難になると見られる。
郭教授は、
★.現在のいびつな人口構造を転換して安定させるには「100年間」が必要
と主張。
現実問題として、人口の構成をいびつにしてしまう世代が出現すれば、その世代の人々の多くが人生を終えるまでは、人口構造をいびつにする要因が残りつづけるからだ。
**********
◆解説◆
人口問題は、経済や社会状況と密接な関係がある。
中国の場合、急速な高齢化が進んでいる反面、社会保障の整備は遅れている。
かと言って、社会保障を充実させようとすれば財源が問題になるのは、どこの国も同じだ。
まして中国は、経済成長の鈍化が目立つ状況だ。
「老後が不安」ならば、人々の間で消費を控える傾向が強まる。
内需拡大がうまくいかなければ、経済成長は厳しくなる。
家計の悪化は出生率の引き下げ要因、すなわち高齢化の加速化要因だ。
高齢化対策はさらに困難になる。
』
『
ニュースソクラ 11月4日(水)16時10分配信 五十嵐 渉 (ジャーナリスト)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151104-00010001-socra-int
中国「一人っ子政策廃止」の隠された狙い
■出生増大が狙いではない、富裕層、知識層対策だ
中国は10月29日、共産党の重要会議である第18期中央委員会第5回総会(5中全会)で1979年から続いて来た「一人っ子政策」の廃止を決定した。
年内にも実施される見通しだ。
日本の大手メディアはこれを「中国の少子高齢化に歯止めをかける狙い」と報じ、もう少し深掘りする米欧メディアは「子供の数が増える可能性は低く、高齢化対策としては手遅れ」と解説する。
いずれもきわめて浅い見方だ。
今世紀に入って、中国の「一人っ子政策」は都市部などで段階的に緩和されてきており、2013年には「夫婦のいずれかが一人っ子の場合、2人目の子供も認める」という大きな転換も実施している。
それでも出生増加の効果は限定的で、
★.今回の全廃でも子供の出生が大きく増える可能性は中国共産党自身が期待していない。
★. 「一人っ子政策」全面廃止の真の狙いは、富裕層、知識層の国外移住、移民を防ぐ狙いといっていい。
「一人っ子政策」は違反者に年収の3倍ともいわれる罰金や共産党員の場合には昇進昇格の抑制などの罰則が適用されて来た。
著名人の場合はメディアやネットで批判され、社会的制裁も受ける。
そのため、高所得層や秀でた能力のある人ほど負担が大きく、米国やカナダ、豪州などへの移住の大きな動機になっていた。
その場合、現地国籍を取得し、仕事をする夫だけは中国に住み続け、年に数回、米国、カナダ、豪州などの家族を訪れるという逆単身赴任型の生活スタイルをとる。
資産はもちろん、いずれ、仕事の中心も家族のいる場所に移し、完全に中国から足抜きするというわけだ。
言い換えれば、
★.一人っ子政策は資産を持ち、能力も高い人材を率先して国外に追い出す政策になり、中国にとって損失は大きい。
それを防ぐのが実は今回の政策転換の隠された目的だ。
★.途上国では「貧乏人の子だくさん」といわれるが、
中国では「貧乏人は一人っ子、富裕層の子だくさん」が実態であり、
それに対応していこうというわけだ。
今、中国政府が最も恐れている資本逃避、人民元暴落を防ぐ意味でも「一人っ子政策」廃止は大きな意味を持っているのだ。
』
『
Yahooニュース 2015年11月6日 12時0分配信 中島恵 | ジャーナリスト
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakajimakei/20151106-00051179/
10年後、中国の若い男性は結婚できなくなる!?
ようやく廃止になった「一人っ子政策」の功罪
10月末、中国政府は36年近く続けてきた「一人っ子政策」を廃止すると発表した。
中国ではそれまで子どもを2人以上もうけることは原則禁止。
2人以上産む場合は罰金を支払う必要があったが、今後は2人産んでもよいという政府の“お墨つき”を得られることになった。
晴れて2人の子どもを持てるようになったことは、傍から見れば「よいこと」のように見えるが、中国人の20代の知り合いに聞いてみると
「別に…」
「あまり興味がないね」
「お金がないから2人も要らないよ」
というつれない返事。
物価が上昇し住宅ローンなどがのしかかる厳しい生活環境では、
「経済的な理由で2人も子どもを持つ余裕がない」
「個人的な問題だから、政策を変えたといわれても、自分たちの生活には関係ない」
ということのようだ。
一人っ子政策廃止の背景には、急激な人口減少と経済減速がある。
中国の人口は約13億7000万人。
★.一人っ子政策の結果、87年をピークに新生児の出生数は落ち始めた。
爆発的な人口増加に悩んでいた中国政府にとっては功を奏した形で、人口減を見事に実現できたのだ。
しかし、その効果が出すぎたというべきか、12年の統計では全国の出生率は1・18にまで下降。
日本の1・39をも下回る結果となった。
平均寿命も延びたため、人口に占める高齢人口も11年に9・1%となった。
人口減は実現できたものの、長期的視野に立って途中で政策を中止しなかったために、人口があまりにも減りすぎてしまったのだ。
生産年齢人口(15~59歳)が減り、とくに若者の数が極端に少なくなったのである。
■男子余りの現状は、もはや止められない……
問題はそれだけではない。中国では伝統的に男子を優先する社会だ。
そこで、一人っ子政策の間、農村部などでは女の子が生まれると戸籍に入れず、こっそり男子が生まれるまで出産し続けるなどの問題が起きていた。
都市部でも、罰金を払えば2人目を産むこともできたため、男子を優先するケースが目立った。
その結果、2014年には、女子100人に対し、男子115・9人というアンバランスな男女比となってしまったのだ。
つまり、男子余りの現象が顕在化してしまったのである。
農村部などでは「村の10~20代の人口の7~8割が男子」という声さえあり、実態は数字以上に深刻度を増しているといえる。
都市部では若い男女を集めた会費制の「お見合いパーティー」がさかんに行われているが、そこでも参加する男子のほうが数が多いため、男子は自分を売り込むために女子に猛アピールするなど必死だと聞く。
ただでさえ、中国では結婚の際、男性がマンションを買わないと結婚できないなど負担が多いが、ますます男性のプレッシャーは大きくなる。
中国には「後継ぎがいないのは最大の親不孝」ということわざがあり、「後継ぎ=男子」という概念が頭にこびりついている人が多い。
だが、それはそもそも、2人以上のきょうだいがいることが前提だった。
一人っ子政策を実施したときにはここまでアンバランスな男女比になるとは政府の誰も予測していなかったかもしれないが、この先はどうなるだろう。
20代以下の中国人男子には苦難が待ち構えているといわざるを得ない。
』
『
ニューズウイーク 2015年11月6日(金)17時00分 シャノン・ティエジー
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/11/post-4077.php
一人っ子政策ついに廃止でも変われない中国
形骸化している政策を今さら転換しても、
少子高齢化の流れは止まらない
China Ending Its One-Child Policy Isn’t That Big of a Deal
中国が30年以上にわたって続けてきた一人っ子政策をついに廃止する。
共産党が党中央委員会第5回全体会議(5中全会)で決定したもので、これからはすべての夫婦が2人目の子供を持てるようになる。
国営の新華社通信によれば、目的は「人口推移のバランスを取り、高齢化問題に取り組むため」だという。
この方針転換の政治的メッセージは大きい。
国内外の専門家が人口動態に関する危機を予測していたにもかかわらず、中国政府は一人っ子政策の廃止に乗り気でなかった。
この政策がカネのなる木でもあったからだ。
政府は関連手数料という名の違反者からの罰金を年間で30億ドル以上徴収してきた。
だが、この数字は控えめなものかもしれない。
ある中国人弁護士の分析によると、
13年には31行政区中23の行政区だけで31億ドルもの罰金が徴収されている
からだ。
この驚くべき数字は、一方で別の現実をも物語っている。
これほど大勢の人たちが一人っ子政策を無視しているということだ。
2人(あるいは3人や4人)の子供を持つことは罰金を払う余裕がある家庭や、罰金を回避できると確信している家庭には常に選択肢としてあった。
実際のところ、一人っ子政策は今や例外と抜け穴だらけ。
既に多くの夫婦には2人目の子供を持つことが認められている。
例えば、少数民族や農村在住者、どちらかの親が一人っ子である場合などだ。
長子が障害児だったり、一部の省では長子が女児だった場合も2人目を持つことができる。
さらに罰金が歯止めとなるはずのこの政策は富裕層には通用しなかった。
しかも2億7000万人以上いる国内移民は転居を繰り返すことが多く、当局の管理から逃れてきた。
要するに、中国で2人目の子供を希望した家庭には、既に2人目がいる可能性が高いということだ。
一人っ子政策が緩和された13年、人口統計学者らは2人目を持つ資格が新たに認められる夫婦は1000万~2000万組いるだろうと予測した。
しかし、今年の5月時点で許可を申請した夫婦は150万組以下にとどまっている。
■「二人っ子」にスライドしただけ
一人っ子政策を完全廃止しても、中国でベビーブームが起こる可能性は低いだろう。
根本的な問題は、家族計画に関する中国政府の姿勢ではなく、社会の変化にある。
世界中の政府と同じように、中国政府も気付いている。
都会的な生活を送り、教育レベルが高い市民は概して、大家族を作りたいと思わないということに。
中国の合計特殊出生率は13年で1.67人とかなり低く、一人っ子政策を完全撤廃しても解消されることはないだろう。
同政策についての著書もあるジャーナリストのメイ・フォンが指摘するように、多くの中国人女性は、出産すれば必死で手にしたキャリアを棒に振ることになると考えているからだ。
人口統計学的に見れば、今回の変更は大きな影響をもたらしそうもない。
だが重要な点は、中国政府が引き続き家族計画に介入し続けるということだ。
一人っ子政策が「二人っ子政策」にスライドしただけのこと。
★.今回の方針転換は、人口統計上の現実によって引き起こされたのであって、
国民に家族計画の自由を与えたわけではない。
中国政府は、独身女性の卵子凍結を禁止するなどして一人親を抑制している。
そうした出産に関する個人の決定を厳しく締め付ける姿勢は、今後も変わらないだろう。
From thediplomat.com
[2015年11月10日号掲載]
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ニューズウイーク 2015年11月6日(金)17時00分 シャノン・ティエジー
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/11/post-4077.php
一人っ子政策ついに廃止でも変われない中国
形骸化している政策を今さら転換しても、
少子高齢化の流れは止まらない
China Ending Its One-Child Policy Isn’t That Big of a Deal
中国が30年以上にわたって続けてきた一人っ子政策をついに廃止する。
共産党が党中央委員会第5回全体会議(5中全会)で決定したもので、これからはすべての夫婦が2人目の子供を持てるようになる。
国営の新華社通信によれば、目的は「人口推移のバランスを取り、高齢化問題に取り組むため」だという。
この方針転換の政治的メッセージは大きい。
国内外の専門家が人口動態に関する危機を予測していたにもかかわらず、中国政府は一人っ子政策の廃止に乗り気でなかった。
この政策がカネのなる木でもあったからだ。
政府は関連手数料という名の違反者からの罰金を年間で30億ドル以上徴収してきた。
だが、この数字は控えめなものかもしれない。
ある中国人弁護士の分析によると、
13年には31行政区中23の行政区だけで31億ドルもの罰金が徴収されている
からだ。
この驚くべき数字は、一方で別の現実をも物語っている。
これほど大勢の人たちが一人っ子政策を無視しているということだ。
2人(あるいは3人や4人)の子供を持つことは罰金を払う余裕がある家庭や、罰金を回避できると確信している家庭には常に選択肢としてあった。
実際のところ、一人っ子政策は今や例外と抜け穴だらけ。
既に多くの夫婦には2人目の子供を持つことが認められている。
例えば、少数民族や農村在住者、どちらかの親が一人っ子である場合などだ。
長子が障害児だったり、一部の省では長子が女児だった場合も2人目を持つことができる。
さらに罰金が歯止めとなるはずのこの政策は富裕層には通用しなかった。
しかも2億7000万人以上いる国内移民は転居を繰り返すことが多く、当局の管理から逃れてきた。
要するに、中国で2人目の子供を希望した家庭には、既に2人目がいる可能性が高いということだ。
一人っ子政策が緩和された13年、人口統計学者らは2人目を持つ資格が新たに認められる夫婦は1000万~2000万組いるだろうと予測した。
しかし、今年の5月時点で許可を申請した夫婦は150万組以下にとどまっている。
■「二人っ子」にスライドしただけ
一人っ子政策を完全廃止しても、中国でベビーブームが起こる可能性は低いだろう。
根本的な問題は、家族計画に関する中国政府の姿勢ではなく、社会の変化にある。
世界中の政府と同じように、中国政府も気付いている。
都会的な生活を送り、教育レベルが高い市民は概して、大家族を作りたいと思わないということに。
中国の合計特殊出生率は13年で1.67人とかなり低く、一人っ子政策を完全撤廃しても解消されることはないだろう。
同政策についての著書もあるジャーナリストのメイ・フォンが指摘するように、多くの中国人女性は、出産すれば必死で手にしたキャリアを棒に振ることになると考えているからだ。
人口統計学的に見れば、今回の変更は大きな影響をもたらしそうもない。
だが重要な点は、中国政府が引き続き家族計画に介入し続けるということだ。
一人っ子政策が「二人っ子政策」にスライドしただけのこと。
★.今回の方針転換は、人口統計上の現実によって引き起こされたのであって、
国民に家族計画の自由を与えたわけではない。
中国政府は、独身女性の卵子凍結を禁止するなどして一人親を抑制している。
そうした出産に関する個人の決定を厳しく締め付ける姿勢は、今後も変わらないだろう。
From thediplomat.com
[2015年11月10日号掲載]
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サーチナニュ-ス 2015-11-10 07:35
http://news.searchina.net/id/1593727?page=1
「一人っ子政策」撤廃で人口は増えるか=中国メディア
“一人っ子政策”と呼ばれていた「計画生育政策」は中国の人口増を抑制すると同時に、急速な高齢化と人口構造の歪みを招いた。
中国政府はついに「一人っ子政策」の撤廃を決め、中国人の夫婦に第2子の出産を認めることを決定した。
中国では「計画生育政策」によって1組の夫婦は原則的に1人の子どもしか生むことができなかったため、年齢別の人口構造も大きく歪んでしまい、生産年齢人口が減少し、高齢化も進んでいた。
中国では伝統的に男性が女性に比べて尊重される傾向にあり、特に農村部では男子は労働力になるとして重宝される傾向が強かった。
妊娠後にお腹のなかの子どもの性別が女であることがわかると堕胎するケースも少なくなかったとされ、中国では女性に比べて男性の数が多くなりすぎてしまい、結婚できない男性が増えるという社会問題も招いていた。
こうした諸問題の解決に向け、中国政府は「一人っ子政策」の撤廃を決めたわけだが、中国国民は果たして政府の決定を歓迎しているのだろうか。
中国メディアの21世紀経済報道によれば、北京市や上海市などの都市部では
「子どもの養育に費用がかかりすぎる」
ことを理由に、第2子を望まない家庭が非常に多いことを紹介している。
中国では今回の「一人っ子政策」の撤廃前より、
★.一定の条件を満たしている夫婦は2人目の子どもを設けることができた。
だが、21世紀経済報道によると、
その条件を満たしていた夫婦1100万組のうち、2人目の出産を申請していた夫婦は169万組(15%)にとどまっていた。
中国ではもともと「持ち家がないと結婚できない」と言われるほどで、不動産ローンを抱えている家庭は少なくない。
また、子どもたちの学業面における競争も激しく、親としては2人目の子どもは欲しいが、経済的な余裕がないという中国人も少なくないようで、「一人っ子政策」の撤廃によって人口が急激に増えるとは考えにくい状況だ。
』
『
ZUU online 2015/11/12 06:00
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151112-00000001-zuuonline-nb
中国「一人っ子政策」終わり、
労働力不足は夢?
2人目つくりそうにない世帯多数――現地レポート
中国共産党五中全会の決定事項の一つとして一人っ子政策の廃止が発表された。
「二孩政策全面放開」と新聞では一面トップで大きく扱われ、“明るいニュース”として伝わった。
この政策の意味するところと、今後の影響について、現地報道をもとに検討する。
■新聞は「70年代生まれの夫婦に朗報」などと報道
一人っ子政策が登場したのは1978年3月だが、ここでは21世紀に入ってからの過程に絞ろう。
2002年9月には「社会托養費征収管理辧法」により、法律に符合し、規定の条件を満たせば、第二子生育の申請ができる、とされた。
ただしこれは、厳しい条件の上、社会托養費(罰金)を収めなければ、やっぱりダメということを意味した。
2013年11月の三中全会で、一人っ子同士の両親に限り、第二子生育を認める「単独二孩」政策が決定され、初めて大きく緩和された。
今回の決定は、対象を全ての夫婦にまで拡げるものだ。
すでに35歳未満の男女はほとんど一人っ子のはずだから、
すべての夫婦に拡大したところで大した意味はあるまい、と考えるのは間違いである。
沿海部の大都市某市の場合を見てみよう。
市衛生計画生育委員会によると、2014年4月末の段階で一人っ子同士の両親は11万5000組、翌2015年9月末までに、第二子生育を申請した夫婦は5万6000組だった。
これが全面開放となれば、対象は100万組の夫婦に拡がる。
つまり同市では、一人っ子同士の夫婦は11.5%以下に過ぎなかった。
実際に中国では、20代、30代にもかかわらず、兄弟がいる人に出会うのは、まれではない。
また新聞の小見出しには、「70年代生まれの夫婦に朗報」とあり、今回の決定が非常に広範囲に影響することがわかる。
■2人目妊娠すると堕胎勧告や嫌がらせを受けた夫婦
この決定が“明るいニュース”である真の理由は、当局の縛りから解放されることに尽きる。
「社会托養費征収管理辧法」によると、托養費の算出は、その地方の居民平均収入を基数とし、実際年収の6倍以上、10倍以下にするとある。
地方の裁量権が非常に大きい。さらに執行にあたり、財産の差し押さえや、殴打、侮辱の禁止という項目まであり、この法律以前の悲惨な状況を率直に物語っている。
ある夫婦に2010年ころの情況を聞くことができた。
2人目の妊娠が明らかになったころから、堕胎勧告やいやがらせが目立ち始めた。
当局者は表に出てこない、すべて所属不明な代理人らしき手合いたちの仕業である。
本人は4人兄弟、妻も2人兄弟で、二孩申請の対象とはなりえず、結局21万元(約400万円)の「托養費」を徴収された。
ただし中小企業経営者で高所得だったことを思えば、この金額ならうまく立ち回ったといえるだろう。
また山東省・臨沂市では、盲目の人権活動家・陳光誠が、当局に集団訴訟を起こしたことで、その政策執行の陰険、強権ぶりが世界的に有名となった。
歴史小説に出てきそうな、権力を笠に着る典型的な小役人の暗躍が、つい最近まで本当にはびこっていた。
■新華社の描くバラ色の夢物語
今後の見通しについて全国レベルの分析記事(国営新華社配信)に目を通してみよう。
それによると、政策発効以降、人口は穏やかに増加していき、第14期5カ年計画(2021~2025年)の時期、一旦緩やかに下降するものの、再び上昇し2029年~30年にピーク(最高峰)の14億5000万人となる。
その後、人口の安定均衡を保つ出生率1,8前後で落ち着く。
その間、人口構成は「優化」し高齢化圧力が減少、極端に拡がってしまった男女比(男119~121に対し女100)も正常値(男103~107)に向かう。
労働力不足も解消され、経済発展にも大きな寄与が見込まれる。
とバラ色の未来図を描いている。
ただし根拠らしきものは一切示されておらず、
これでは分析とは名ばかりで単なる夢物語すぎない。
■2人目つくる夫婦は本当に増えるのか?
実際の傾向はすでに明らかになりつつある。
先述の某市における今年1~8月までの出生数は、第一子が2万3724人、第二子が1万8216人で、トータルの自然増加率は4,2%だった。
一人っ子両親同士の「単独二孩」は同市では2014年5月から実施されたが、その年の増加率5.0%を下回っている。
2014年の当局予想は5.4%だった。
15年予想は発表されていないが、明らかにスタートからつまずいている。
今後当局の達成すべき責任目標は7,2%とあるが、果たして達成できるかどうか。
開放効果によって再来年が増加率ピーク(小高峰)と予想されている。
問題はその後だ。
2030年の最高峰は本当に来るのだろうか。
新浪網によるネットアンケート(参加者10万2951人)がある。
2人目を生む31.2%、生まない39.6%、情況を見て決める29.3%という結果だった。
景気が悪化し、収入の伸びが鈍化すれば、情況を見ている人たちは、生まないだろう。
また都市部では一人っ子にお金をかけまくる文化が定着してしまった。
同じく同市の行った夏休みアンケート調査では、子供に5000元以上消費したという回答が半数を超えた。
5000元から1万元が38%を占めている。思い切り子供に注ぎ込んでいることが分かる。
高級車で学校に送迎することにも情熱を注いでいる。
こうした世相を見ていると、そう簡単に2人目を決断しそうに思えない。
また結婚の経済的なハードルが高まり晩婚化もますます進んでいく。
考慮すべき変数はいくらでもある。
最高峰がやってくる保証はどこにもない。
ともあれ、一人っ子政策廃止は“明るいニュース”には違いなかった。
もともと国家への期待も依存も薄い中国人だが、少しの間くらい、新華社の言う夢物語に酔って見るのもいいだろう、くらいが一般的な感覚のようである。
(高野悠介、中国在住の貿易コンサルタント)
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年11月14日(土) 20時0分
http://www.recordchina.co.jp/a123232.html
一人っ子政策廃止の中国、
第2子の誕生で長男・長女の待遇はこう変わる!
2015年11月13日、中国政府は先月下旬、1979年から続いた一人っ子政策の完全廃止を発表した。
これによりすべての夫婦が第2子を持つことが可能となったわけだが、一人っ子として育ち、家族の愛を独り占めしてきた長男・長女からの反発は少なくない。
このほど、これに関連した動画が掲載され、話題を呼んでいる。
動画の11秒過ぎまでは、今まで家族から愛を注がれてきた長男・長女の不動の地位を表現しており、13秒過ぎからは第2子の誕生により洗濯、裁縫、子守りの映像を使い、「これからは自分のことは自分でやることになる。
下の子の面倒も見なくてないけない」という待遇の変化を表現。
そして42秒過ぎの映像では吹き出しで「そうだ、あいつを始末してくれ」と書き、下の子に嫉妬するだろう長男・長女の心情が描かれている。
実際、長男・長女の嫉妬はすでに多くのケースが報じられており、13歳の娘を持つ40代女性は第2子を妊娠したが、長女が手首を切り自殺を試みるなど強く反発。
女性はやむなく中絶した。
さらに、第2子を検討する両親に抗議するため13歳少年が家出した。
少年は弟や妹が誕生することで両親が今までのように愛してくれないと考えたという。
このほか、15歳の少女が
「ママが弟を産むなら、私はすぐにママの孫を産んでやる」
と第2子を持ちたい両親を脅迫するケースもあった。
中国メディア・新浪が一人っ子政策の廃止を受けて行った意識調査では、回答者4万5000人のうち経済的な理由などから38%が第2子を持つことに消極的だった。
第2子を検討する夫婦にとって、長男・長女が最初にして最大の難関なのかもしれない。
』
『
ダイヤモンドオンライン 2015年11月19日 嶋矢志郎 [ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/81919
中国政府が過分な効果を期待する
「脱一人っ子政策」の落とし穴
中国政府が1980年代に入る前夜の1979年以来、36年余にわたって続けてきた一人っ子政策を廃止して、産児制限の緩和へ踏み切った。
一人っ子政策は、一昨年から「夫婦のいずれかが一人っ子であれば2人目を認める」など、緩和の方向へ向かっていたが、今回はすべての夫婦に例外なく第2子の出産を認め、一人っ子の奨励策も打ち切るという政策転換である。
この「脱一人っ子政策」は、先月末に開かれた中国共産党の中央委員会第5回全体会議(5中全会)で、来年からの経済方針である第13次5ヵ年計画(16~20)の概要に盛り込まれたので、16年からの施行となる。中国の人口政策は根本的な問題点が積み残されたまま、なお課題が山積しているため、一歩前進とはいえ遅きに失した観は否めない。
中国の人口政策が直面している最大の問題点は、国民が豊かになる前に高齢化を迎えている「未富先老」型の人口推移である。
それに対して、日本を含めた欧米先進国の人口推移は、国民が豊かになってから高齢化を迎えた「先富後老」型だ。
先進国は「先富後老」型で救われてきたが、
「未富先老」の中国は先行きに大きな不安を抱えている。
国営の新華社通信によると、今回の政策転換の狙いは「人口推移のバランスを取って、高齢化問題に取り組むため」としている。
今回の政策転換が「未富先老」の構造改革を加速する成果に期待したいものだ。
■これを機に完全廃止してはどうか?
国際社会では通用しない一人っ子政策
それにしても、中国の一人っ子政策には、初めから問題点が多過ぎた。
1つ目の問題点は、
政策そのものが国を挙げて国民の自由とプライバシーに不当に介入し、基本的な人権を侵害している非民主的な制度であり、国際社会では通用しない価値観を強制的に押しつけ、義務化したことである。
元来、出産は人間の自由な意思と営みに委ねられるべきで、政治や行政が干渉して制限することではない。
当初は、食糧危機によって国民を飢餓から守る大義の名の下でやむを得ない救済策の面があったとはいえ、中絶の強制や違反者への罰金の課金など、深刻な人権侵害を国家権力が自らの手で犯してきた罪は重く、その責任は免れない。
当初より国内外からの厳しい批判に晒されてきた中で、中国当局はいまだ聞く耳を持たないが、これを機に直ちに全面的に廃止、撤廃すべき愚策である。
ところが、今回の政策転換にしても廃止、撤廃の対象はあくまでも第2子に限られるため、産児制限の制度はそのまま残ることになる。
つまり、第3子以降は引き続き産児制限の対象であり、国民は同制度の管理、監視の下で介入、干渉を受け続けることになる。
中国当局にとっては、全国民を一網打尽に漏れなく掌握、監視できる便利な合法システムであり、これを「2人目を産ませない」から「3人目を産ませない」へと看板を塗り変えただけである。
すでに巨大な利権と化している、いわば「おいしい制度」であるだけに、今のところそう簡単にこの制度を解体して手放すようなことは考え難い。
■育児管理を通じて権益組織の集金マシンと化した一人っ子政策
2つ目の問題点は、
同制度は国際的には通用しない非合法な仕組みとはいえ、中国の国内にあっては今や組織の肥大化と共に、巨大な権益組織による集金マシンと化しており、中央、地方の政府、自治体にとってはもはや手放すことのできない、貴重な財源として根を張り、定着していることである。
中国は、一人っ子政策を国策として広く遍く全国民に浸透、徹底させようと、既存の衛生部(日本の厚労省に該当)とは別建ての独立組織として「計画生育委員会」(13年に衛生部と統合)を立ち上げ、国民の産児制限に関する一切の権限を委ねて、同制度の運営、管理に携わっている。
全国民を対象に、産児制限に関する許認可をはじめ、家族計画の指導や違反者から罰金を取り立てるなど、その権限は絶大で、今や全国の隅々へ同委員会の末端組織が浸透し、正規職員だけでも全国で50万人超に及ぶ「超マンモス役所」に膨れ上がっている。
一人っ子政策は、21世紀末の人口を12億人以下に抑えると共に、経済の成長、発展を目指して、1980年から「夫婦一組、子ども一人」を基本に本格的に導入され、1982年には憲法で国策として定められた。
それを順守する夫婦には子ども向けに奨励金、医療費補助、学費補助を、夫婦向けには昇進面での配慮や退職金の5%増額などの優遇措置を打ち出している。
一方、違反者には厳しい罰金を課し、取り立ても容赦しないというように、万全が期されている。
同委員会の職員には、「違反」を摘発し、罰金の科料を課す権限が与えられている。
職員が職権で「違反」の子どもを親元から強引に連れ去り、海外の養子縁組組織に売り渡していた事例が相次いで発覚、国際社会から厳しい批判を浴びた話は、記憶に新しい。
違反者に対する罰金の課金には、数年前から一部、収入に応じて支払う所得割が導入され、富裕層の違反者からは「社会養育費」の名目で破格の罰金を取り立てる事例も増えている。
著名な映画監督の張芸謀(チャン・イーモウ)夫妻のケースが典型例で、子どもが3人いることが発覚し、750万元(約1億5000万円)もの罰金を課せられた。
中国メデイアによると、同委員会の収入額は年間で200億元(約4000億円)を超えており、増勢の一途を辿っているという。
■高齢化で「未富先老」が加速
黒孩子(ヘイハイズ)人口増大の闇
3つ目の問題点は、
一人っ子政策の導入と実施に伴い、事前に考えられていた様々な弊害が予想通りに顕在化してきたことである。
第一に高齢化の加速、
第二に男女の人口比率のアンバランス化、
第三に出生の届け出がない無戸籍の「黒孩子」(ヘイハイズ)人口の増大、そして
第四に一人っ子が過保護になる反面父母、祖父母を扶養するいわゆる「4対2対1」の累積扶養負担
である。
高齢化の加速については、
出生率が低下する一方で、平均寿命の延長を背景に、65歳以上の老齢人口比率が2000年に7.0%(約8800万人)に達し、国際基準による高齢化社会に仲間入りした。
これが、豊かになる前に高齢化を迎えた「未富先老」型と言われる所以である。
中国民生部の人口統計によると、2008年末の老齢人口比率は8.3%(約1億1000万人)まで上昇し、2000年からの8年間で2200万人も増加、世界の老齢人口の23%を占める老人大国になってきたという。
中国政府も高齢化の加速を認めており、2020年には老齢人口比率が12%まで上昇するとの予測を発表している。
国連の人口統計によると、2008年次の老齢人口比率は先進国平均で16%、途上国平均で6%、新興国のインドやブラジルでも5~6%であることから、中国の「未富先老」の加速ぶりは一目瞭然である。
また、男女比率のアンバランス化については、
2000年の人口統計で5歳未満の男女比率が「119対100」となり、
国際的な同年齢層の比率である「平均107対100」に比べて乖離が大きい。
同政策の導入、実施後の1980年代に生まれ育った、いわば「80後」の世代は今、結婚適齢期を迎えている。
男性の人口が女性の人口を2割前後も上回っているため、結婚願望があっても結婚できない男性が今後、増え続けていくことになる。
女性上位が進む一方で、男性社会の競争が激化すれば、社会に不満を抱く若者が巷間に溢れ、社会不安を広げていく可能性がある。
「黒孩子」(ヘイハイズ)人口の増大は、
深刻な人権問題である。
内陸部の農村地域では、新生児が女の子とわかると、中絶するか、生んでもすぐに養子に出すか、出生届けを出さずにひそかに育てる事例が少なくない。
その原因は、女の子では後継ぎにも労働力にも向かないためであるが、何よりも貧しいためである。
出生届けがないということは戸籍もないため、就学もできない。
学歴がなければ就職もできない。その先は、推して知るべしである。
中国当局の公式見解では、「黒孩子」(ヘイハイズ)人口は1300万人に及ぶと見ているが、
実際にはその10倍とも言われており、総人口の1割は固い
とされている。
■当局予想と現実との大ギャップ
一人っ子が背負う累積扶養負担の深刻
そして、一人っ子が過保護になる反面、父母、祖父母を扶養する「4対2対1」の累積扶養負担の問題は、
一人っ子政策の導入・実施に踏み切ればこうなるとわかっていた、根本的な問題点である。
一人っ子政策に踏み出してから、35年。
同政策の申し子である第一世代は、すでに父母世代2人と祖父母世代4人にとってはかけがえのない貴重な子宝である。
家庭内ではもとより、学校の教育現場でも教師たちは腫れ物に触るような過保護三昧を強いられ、一人っ子はどこへ行っても「小皇帝」と呼ばれ出した。
いつどこであれ子どもは子宝とみなされ、子育ては国や地域社会を挙げて取り組むべきこととされたが、一人っ子政策による過保護の弊害は、
今や第一世代に共通するわがままで自己中心的な価値観として表面化
している。
中国当局は2年前の2013年、第一世代を対象に「夫婦のいずれかが一人っ子であれば2人目を認める」ことで同政策の緩和へと踏み切ったが、結果は当局の予測を大いに狂わせたことがその証拠である。
当局によると、対象となる夫婦は1100万組もあったにもかからず、期待した第2子の新生児はわずかに47万人だったといわれ、これは桁違いの誤算である。
当局にとっては大ショックで、この予想と現実とのギャップの大きさが今回の「すべての夫婦を対象」とする政策転換へと踏み切らせた動機である。
第一世代はなぜ第2子に消極的なのか。
一人っ子政策の第一世代は「なぜ自分たちの子どもも一人っ子でいい」と考えるのか。
それは、「第2子のためにお金と時間とエネルギーを割くよりも、自分たちの生活と人生が最優先」と考える夫婦が多いからだ。
とりわけ経済的に恵まれている夫婦ほどその傾向が強いのは、時代の移り変わりの反映か。
この現象を甘やかされて育ってきた過保護の弊害で、やはり自己中心的な価値観の表れと決めつけては、短絡過ぎるかもしれないが、「80後」の新世代の価値観が、中国当局の予想を遥かに超えて大きく乖離している事実は看過できず、重大である。
こうした例からもわかる通り、一人っ子政策は、人口抑制という短期的でマクロ的な人口調整の側面から見て有効であっても、個人や家族の世代間調整といったミクロの側面から見るとむしろ弊害で、阻害要因になるという矛盾を抱えている。
仮に第一世代までは何とか縫い繕い、成り立ったとしても、第二世代以降も一人っ子であった場合、一人っ子が父母、祖父母を扶養するという、いわば累積扶養負担の「4対2対1」の構図はそこで行き詰まり、破綻する。
同構図には自ずと限界があり、それがさらにその先の世代で「8対4対2対1」が成り立つはずがない。
中国当局にとっては、新世代の価値観の変容を決して軽視することなく、新政策に採り入れ、反映させていく度量が問われてくるに違いない。
■中長期的視野で抜本的な対策を
農村から都市への人口移動促進は有効
中国当局は、今回の政策転換に極めて大きな期待を寄せており、多様で過分な効果を狙っている。
それゆえに、当局が期待する予想と現実とのギャップは気がかりである。
5中全会の第13次5ヵ年計画では、
「中高速成長を保つ」ため、年率6%台後半~7%程度の経済成長を想定し、
2020年にはGDP(国内総生産)と1人当たり所得を10年比で倍増する公約
を確認したが、同計画の内容を俯瞰すると、所得倍増への具体的な戦略、戦術として打ち出されているのは今回の政策転換と農村人口の都市受け入れ策であり、共に人口政策である。
経済成長の鈍化、失速が懸念されている中で、今回の政策転換は短期的な即効性と中長期的な持続性を同時に兼ね備えた景気浮揚策として期待されているが、新世代の若者夫婦は果たして当局の期待通りに踊ってくれるかどうか、保証の限りではない。
中国当局によると、今回の政策転換に伴う第2子の新生児は毎年約2000万人と見込まれている。
中国では、子どもにお金を惜しまず使う傾向が強く、出産から育児、就学など、一連の子育てに要する出費の拡大で、内需の押し上げ効果が期待されている。
その経済的な波及効果は、年間で1600億元(約3兆2000億円)に及ぶとの皮算用であるが、第2子の新生児が年2000万人などという見通しは、その計算根拠が不明である。新世代の価値観が反映されているとは思えない。
働き手を増やす具体策としては、今回の政策転換後に生まれた新生児が働き手になるまで20年前後を待たなければならないが、農村の余剰人口を可及的速やかに都市の非農業部門へ移して行く計画・構想は即効性があり、極めて有効である。
農村地域の農業部門から都市部の非農業部門への人口移動は、かつての日本における高度経済成長期の成功モデルもある。
中国の社会的な構造改革の起爆剤としても、大いに期待したいところである。
』
サーチナニュ-ス 2015-11-10 07:35
http://news.searchina.net/id/1593727?page=1
「一人っ子政策」撤廃で人口は増えるか=中国メディア
“一人っ子政策”と呼ばれていた「計画生育政策」は中国の人口増を抑制すると同時に、急速な高齢化と人口構造の歪みを招いた。
中国政府はついに「一人っ子政策」の撤廃を決め、中国人の夫婦に第2子の出産を認めることを決定した。
中国では「計画生育政策」によって1組の夫婦は原則的に1人の子どもしか生むことができなかったため、年齢別の人口構造も大きく歪んでしまい、生産年齢人口が減少し、高齢化も進んでいた。
中国では伝統的に男性が女性に比べて尊重される傾向にあり、特に農村部では男子は労働力になるとして重宝される傾向が強かった。
妊娠後にお腹のなかの子どもの性別が女であることがわかると堕胎するケースも少なくなかったとされ、中国では女性に比べて男性の数が多くなりすぎてしまい、結婚できない男性が増えるという社会問題も招いていた。
こうした諸問題の解決に向け、中国政府は「一人っ子政策」の撤廃を決めたわけだが、中国国民は果たして政府の決定を歓迎しているのだろうか。
中国メディアの21世紀経済報道によれば、北京市や上海市などの都市部では
「子どもの養育に費用がかかりすぎる」
ことを理由に、第2子を望まない家庭が非常に多いことを紹介している。
中国では今回の「一人っ子政策」の撤廃前より、
★.一定の条件を満たしている夫婦は2人目の子どもを設けることができた。
だが、21世紀経済報道によると、
その条件を満たしていた夫婦1100万組のうち、2人目の出産を申請していた夫婦は169万組(15%)にとどまっていた。
中国ではもともと「持ち家がないと結婚できない」と言われるほどで、不動産ローンを抱えている家庭は少なくない。
また、子どもたちの学業面における競争も激しく、親としては2人目の子どもは欲しいが、経済的な余裕がないという中国人も少なくないようで、「一人っ子政策」の撤廃によって人口が急激に増えるとは考えにくい状況だ。
』
『
ZUU online 2015/11/12 06:00
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151112-00000001-zuuonline-nb
中国「一人っ子政策」終わり、
労働力不足は夢?
2人目つくりそうにない世帯多数――現地レポート
中国共産党五中全会の決定事項の一つとして一人っ子政策の廃止が発表された。
「二孩政策全面放開」と新聞では一面トップで大きく扱われ、“明るいニュース”として伝わった。
この政策の意味するところと、今後の影響について、現地報道をもとに検討する。
■新聞は「70年代生まれの夫婦に朗報」などと報道
一人っ子政策が登場したのは1978年3月だが、ここでは21世紀に入ってからの過程に絞ろう。
2002年9月には「社会托養費征収管理辧法」により、法律に符合し、規定の条件を満たせば、第二子生育の申請ができる、とされた。
ただしこれは、厳しい条件の上、社会托養費(罰金)を収めなければ、やっぱりダメということを意味した。
2013年11月の三中全会で、一人っ子同士の両親に限り、第二子生育を認める「単独二孩」政策が決定され、初めて大きく緩和された。
今回の決定は、対象を全ての夫婦にまで拡げるものだ。
すでに35歳未満の男女はほとんど一人っ子のはずだから、
すべての夫婦に拡大したところで大した意味はあるまい、と考えるのは間違いである。
沿海部の大都市某市の場合を見てみよう。
市衛生計画生育委員会によると、2014年4月末の段階で一人っ子同士の両親は11万5000組、翌2015年9月末までに、第二子生育を申請した夫婦は5万6000組だった。
これが全面開放となれば、対象は100万組の夫婦に拡がる。
つまり同市では、一人っ子同士の夫婦は11.5%以下に過ぎなかった。
実際に中国では、20代、30代にもかかわらず、兄弟がいる人に出会うのは、まれではない。
また新聞の小見出しには、「70年代生まれの夫婦に朗報」とあり、今回の決定が非常に広範囲に影響することがわかる。
■2人目妊娠すると堕胎勧告や嫌がらせを受けた夫婦
この決定が“明るいニュース”である真の理由は、当局の縛りから解放されることに尽きる。
「社会托養費征収管理辧法」によると、托養費の算出は、その地方の居民平均収入を基数とし、実際年収の6倍以上、10倍以下にするとある。
地方の裁量権が非常に大きい。さらに執行にあたり、財産の差し押さえや、殴打、侮辱の禁止という項目まであり、この法律以前の悲惨な状況を率直に物語っている。
ある夫婦に2010年ころの情況を聞くことができた。
2人目の妊娠が明らかになったころから、堕胎勧告やいやがらせが目立ち始めた。
当局者は表に出てこない、すべて所属不明な代理人らしき手合いたちの仕業である。
本人は4人兄弟、妻も2人兄弟で、二孩申請の対象とはなりえず、結局21万元(約400万円)の「托養費」を徴収された。
ただし中小企業経営者で高所得だったことを思えば、この金額ならうまく立ち回ったといえるだろう。
また山東省・臨沂市では、盲目の人権活動家・陳光誠が、当局に集団訴訟を起こしたことで、その政策執行の陰険、強権ぶりが世界的に有名となった。
歴史小説に出てきそうな、権力を笠に着る典型的な小役人の暗躍が、つい最近まで本当にはびこっていた。
■新華社の描くバラ色の夢物語
今後の見通しについて全国レベルの分析記事(国営新華社配信)に目を通してみよう。
それによると、政策発効以降、人口は穏やかに増加していき、第14期5カ年計画(2021~2025年)の時期、一旦緩やかに下降するものの、再び上昇し2029年~30年にピーク(最高峰)の14億5000万人となる。
その後、人口の安定均衡を保つ出生率1,8前後で落ち着く。
その間、人口構成は「優化」し高齢化圧力が減少、極端に拡がってしまった男女比(男119~121に対し女100)も正常値(男103~107)に向かう。
労働力不足も解消され、経済発展にも大きな寄与が見込まれる。
とバラ色の未来図を描いている。
ただし根拠らしきものは一切示されておらず、
これでは分析とは名ばかりで単なる夢物語すぎない。
■2人目つくる夫婦は本当に増えるのか?
実際の傾向はすでに明らかになりつつある。
先述の某市における今年1~8月までの出生数は、第一子が2万3724人、第二子が1万8216人で、トータルの自然増加率は4,2%だった。
一人っ子両親同士の「単独二孩」は同市では2014年5月から実施されたが、その年の増加率5.0%を下回っている。
2014年の当局予想は5.4%だった。
15年予想は発表されていないが、明らかにスタートからつまずいている。
今後当局の達成すべき責任目標は7,2%とあるが、果たして達成できるかどうか。
開放効果によって再来年が増加率ピーク(小高峰)と予想されている。
問題はその後だ。
2030年の最高峰は本当に来るのだろうか。
新浪網によるネットアンケート(参加者10万2951人)がある。
2人目を生む31.2%、生まない39.6%、情況を見て決める29.3%という結果だった。
景気が悪化し、収入の伸びが鈍化すれば、情況を見ている人たちは、生まないだろう。
また都市部では一人っ子にお金をかけまくる文化が定着してしまった。
同じく同市の行った夏休みアンケート調査では、子供に5000元以上消費したという回答が半数を超えた。
5000元から1万元が38%を占めている。思い切り子供に注ぎ込んでいることが分かる。
高級車で学校に送迎することにも情熱を注いでいる。
こうした世相を見ていると、そう簡単に2人目を決断しそうに思えない。
また結婚の経済的なハードルが高まり晩婚化もますます進んでいく。
考慮すべき変数はいくらでもある。
最高峰がやってくる保証はどこにもない。
ともあれ、一人っ子政策廃止は“明るいニュース”には違いなかった。
もともと国家への期待も依存も薄い中国人だが、少しの間くらい、新華社の言う夢物語に酔って見るのもいいだろう、くらいが一般的な感覚のようである。
(高野悠介、中国在住の貿易コンサルタント)
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年11月14日(土) 20時0分
http://www.recordchina.co.jp/a123232.html
一人っ子政策廃止の中国、
第2子の誕生で長男・長女の待遇はこう変わる!
2015年11月13日、中国政府は先月下旬、1979年から続いた一人っ子政策の完全廃止を発表した。
これによりすべての夫婦が第2子を持つことが可能となったわけだが、一人っ子として育ち、家族の愛を独り占めしてきた長男・長女からの反発は少なくない。
このほど、これに関連した動画が掲載され、話題を呼んでいる。
動画の11秒過ぎまでは、今まで家族から愛を注がれてきた長男・長女の不動の地位を表現しており、13秒過ぎからは第2子の誕生により洗濯、裁縫、子守りの映像を使い、「これからは自分のことは自分でやることになる。
下の子の面倒も見なくてないけない」という待遇の変化を表現。
そして42秒過ぎの映像では吹き出しで「そうだ、あいつを始末してくれ」と書き、下の子に嫉妬するだろう長男・長女の心情が描かれている。
実際、長男・長女の嫉妬はすでに多くのケースが報じられており、13歳の娘を持つ40代女性は第2子を妊娠したが、長女が手首を切り自殺を試みるなど強く反発。
女性はやむなく中絶した。
さらに、第2子を検討する両親に抗議するため13歳少年が家出した。
少年は弟や妹が誕生することで両親が今までのように愛してくれないと考えたという。
このほか、15歳の少女が
「ママが弟を産むなら、私はすぐにママの孫を産んでやる」
と第2子を持ちたい両親を脅迫するケースもあった。
中国メディア・新浪が一人っ子政策の廃止を受けて行った意識調査では、回答者4万5000人のうち経済的な理由などから38%が第2子を持つことに消極的だった。
第2子を検討する夫婦にとって、長男・長女が最初にして最大の難関なのかもしれない。
』
『
ダイヤモンドオンライン 2015年11月19日 嶋矢志郎 [ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/81919
中国政府が過分な効果を期待する
「脱一人っ子政策」の落とし穴
中国政府が1980年代に入る前夜の1979年以来、36年余にわたって続けてきた一人っ子政策を廃止して、産児制限の緩和へ踏み切った。
一人っ子政策は、一昨年から「夫婦のいずれかが一人っ子であれば2人目を認める」など、緩和の方向へ向かっていたが、今回はすべての夫婦に例外なく第2子の出産を認め、一人っ子の奨励策も打ち切るという政策転換である。
この「脱一人っ子政策」は、先月末に開かれた中国共産党の中央委員会第5回全体会議(5中全会)で、来年からの経済方針である第13次5ヵ年計画(16~20)の概要に盛り込まれたので、16年からの施行となる。中国の人口政策は根本的な問題点が積み残されたまま、なお課題が山積しているため、一歩前進とはいえ遅きに失した観は否めない。
中国の人口政策が直面している最大の問題点は、国民が豊かになる前に高齢化を迎えている「未富先老」型の人口推移である。
それに対して、日本を含めた欧米先進国の人口推移は、国民が豊かになってから高齢化を迎えた「先富後老」型だ。
先進国は「先富後老」型で救われてきたが、
「未富先老」の中国は先行きに大きな不安を抱えている。
国営の新華社通信によると、今回の政策転換の狙いは「人口推移のバランスを取って、高齢化問題に取り組むため」としている。
今回の政策転換が「未富先老」の構造改革を加速する成果に期待したいものだ。
■これを機に完全廃止してはどうか?
国際社会では通用しない一人っ子政策
それにしても、中国の一人っ子政策には、初めから問題点が多過ぎた。
1つ目の問題点は、
政策そのものが国を挙げて国民の自由とプライバシーに不当に介入し、基本的な人権を侵害している非民主的な制度であり、国際社会では通用しない価値観を強制的に押しつけ、義務化したことである。
元来、出産は人間の自由な意思と営みに委ねられるべきで、政治や行政が干渉して制限することではない。
当初は、食糧危機によって国民を飢餓から守る大義の名の下でやむを得ない救済策の面があったとはいえ、中絶の強制や違反者への罰金の課金など、深刻な人権侵害を国家権力が自らの手で犯してきた罪は重く、その責任は免れない。
当初より国内外からの厳しい批判に晒されてきた中で、中国当局はいまだ聞く耳を持たないが、これを機に直ちに全面的に廃止、撤廃すべき愚策である。
ところが、今回の政策転換にしても廃止、撤廃の対象はあくまでも第2子に限られるため、産児制限の制度はそのまま残ることになる。
つまり、第3子以降は引き続き産児制限の対象であり、国民は同制度の管理、監視の下で介入、干渉を受け続けることになる。
中国当局にとっては、全国民を一網打尽に漏れなく掌握、監視できる便利な合法システムであり、これを「2人目を産ませない」から「3人目を産ませない」へと看板を塗り変えただけである。
すでに巨大な利権と化している、いわば「おいしい制度」であるだけに、今のところそう簡単にこの制度を解体して手放すようなことは考え難い。
■育児管理を通じて権益組織の集金マシンと化した一人っ子政策
2つ目の問題点は、
同制度は国際的には通用しない非合法な仕組みとはいえ、中国の国内にあっては今や組織の肥大化と共に、巨大な権益組織による集金マシンと化しており、中央、地方の政府、自治体にとってはもはや手放すことのできない、貴重な財源として根を張り、定着していることである。
中国は、一人っ子政策を国策として広く遍く全国民に浸透、徹底させようと、既存の衛生部(日本の厚労省に該当)とは別建ての独立組織として「計画生育委員会」(13年に衛生部と統合)を立ち上げ、国民の産児制限に関する一切の権限を委ねて、同制度の運営、管理に携わっている。
全国民を対象に、産児制限に関する許認可をはじめ、家族計画の指導や違反者から罰金を取り立てるなど、その権限は絶大で、今や全国の隅々へ同委員会の末端組織が浸透し、正規職員だけでも全国で50万人超に及ぶ「超マンモス役所」に膨れ上がっている。
一人っ子政策は、21世紀末の人口を12億人以下に抑えると共に、経済の成長、発展を目指して、1980年から「夫婦一組、子ども一人」を基本に本格的に導入され、1982年には憲法で国策として定められた。
それを順守する夫婦には子ども向けに奨励金、医療費補助、学費補助を、夫婦向けには昇進面での配慮や退職金の5%増額などの優遇措置を打ち出している。
一方、違反者には厳しい罰金を課し、取り立ても容赦しないというように、万全が期されている。
同委員会の職員には、「違反」を摘発し、罰金の科料を課す権限が与えられている。
職員が職権で「違反」の子どもを親元から強引に連れ去り、海外の養子縁組組織に売り渡していた事例が相次いで発覚、国際社会から厳しい批判を浴びた話は、記憶に新しい。
違反者に対する罰金の課金には、数年前から一部、収入に応じて支払う所得割が導入され、富裕層の違反者からは「社会養育費」の名目で破格の罰金を取り立てる事例も増えている。
著名な映画監督の張芸謀(チャン・イーモウ)夫妻のケースが典型例で、子どもが3人いることが発覚し、750万元(約1億5000万円)もの罰金を課せられた。
中国メデイアによると、同委員会の収入額は年間で200億元(約4000億円)を超えており、増勢の一途を辿っているという。
■高齢化で「未富先老」が加速
黒孩子(ヘイハイズ)人口増大の闇
3つ目の問題点は、
一人っ子政策の導入と実施に伴い、事前に考えられていた様々な弊害が予想通りに顕在化してきたことである。
第一に高齢化の加速、
第二に男女の人口比率のアンバランス化、
第三に出生の届け出がない無戸籍の「黒孩子」(ヘイハイズ)人口の増大、そして
第四に一人っ子が過保護になる反面父母、祖父母を扶養するいわゆる「4対2対1」の累積扶養負担
である。
高齢化の加速については、
出生率が低下する一方で、平均寿命の延長を背景に、65歳以上の老齢人口比率が2000年に7.0%(約8800万人)に達し、国際基準による高齢化社会に仲間入りした。
これが、豊かになる前に高齢化を迎えた「未富先老」型と言われる所以である。
中国民生部の人口統計によると、2008年末の老齢人口比率は8.3%(約1億1000万人)まで上昇し、2000年からの8年間で2200万人も増加、世界の老齢人口の23%を占める老人大国になってきたという。
中国政府も高齢化の加速を認めており、2020年には老齢人口比率が12%まで上昇するとの予測を発表している。
国連の人口統計によると、2008年次の老齢人口比率は先進国平均で16%、途上国平均で6%、新興国のインドやブラジルでも5~6%であることから、中国の「未富先老」の加速ぶりは一目瞭然である。
また、男女比率のアンバランス化については、
2000年の人口統計で5歳未満の男女比率が「119対100」となり、
国際的な同年齢層の比率である「平均107対100」に比べて乖離が大きい。
同政策の導入、実施後の1980年代に生まれ育った、いわば「80後」の世代は今、結婚適齢期を迎えている。
男性の人口が女性の人口を2割前後も上回っているため、結婚願望があっても結婚できない男性が今後、増え続けていくことになる。
女性上位が進む一方で、男性社会の競争が激化すれば、社会に不満を抱く若者が巷間に溢れ、社会不安を広げていく可能性がある。
「黒孩子」(ヘイハイズ)人口の増大は、
深刻な人権問題である。
内陸部の農村地域では、新生児が女の子とわかると、中絶するか、生んでもすぐに養子に出すか、出生届けを出さずにひそかに育てる事例が少なくない。
その原因は、女の子では後継ぎにも労働力にも向かないためであるが、何よりも貧しいためである。
出生届けがないということは戸籍もないため、就学もできない。
学歴がなければ就職もできない。その先は、推して知るべしである。
中国当局の公式見解では、「黒孩子」(ヘイハイズ)人口は1300万人に及ぶと見ているが、
実際にはその10倍とも言われており、総人口の1割は固い
とされている。
■当局予想と現実との大ギャップ
一人っ子が背負う累積扶養負担の深刻
そして、一人っ子が過保護になる反面、父母、祖父母を扶養する「4対2対1」の累積扶養負担の問題は、
一人っ子政策の導入・実施に踏み切ればこうなるとわかっていた、根本的な問題点である。
一人っ子政策に踏み出してから、35年。
同政策の申し子である第一世代は、すでに父母世代2人と祖父母世代4人にとってはかけがえのない貴重な子宝である。
家庭内ではもとより、学校の教育現場でも教師たちは腫れ物に触るような過保護三昧を強いられ、一人っ子はどこへ行っても「小皇帝」と呼ばれ出した。
いつどこであれ子どもは子宝とみなされ、子育ては国や地域社会を挙げて取り組むべきこととされたが、一人っ子政策による過保護の弊害は、
今や第一世代に共通するわがままで自己中心的な価値観として表面化
している。
中国当局は2年前の2013年、第一世代を対象に「夫婦のいずれかが一人っ子であれば2人目を認める」ことで同政策の緩和へと踏み切ったが、結果は当局の予測を大いに狂わせたことがその証拠である。
当局によると、対象となる夫婦は1100万組もあったにもかからず、期待した第2子の新生児はわずかに47万人だったといわれ、これは桁違いの誤算である。
当局にとっては大ショックで、この予想と現実とのギャップの大きさが今回の「すべての夫婦を対象」とする政策転換へと踏み切らせた動機である。
第一世代はなぜ第2子に消極的なのか。
一人っ子政策の第一世代は「なぜ自分たちの子どもも一人っ子でいい」と考えるのか。
それは、「第2子のためにお金と時間とエネルギーを割くよりも、自分たちの生活と人生が最優先」と考える夫婦が多いからだ。
とりわけ経済的に恵まれている夫婦ほどその傾向が強いのは、時代の移り変わりの反映か。
この現象を甘やかされて育ってきた過保護の弊害で、やはり自己中心的な価値観の表れと決めつけては、短絡過ぎるかもしれないが、「80後」の新世代の価値観が、中国当局の予想を遥かに超えて大きく乖離している事実は看過できず、重大である。
こうした例からもわかる通り、一人っ子政策は、人口抑制という短期的でマクロ的な人口調整の側面から見て有効であっても、個人や家族の世代間調整といったミクロの側面から見るとむしろ弊害で、阻害要因になるという矛盾を抱えている。
仮に第一世代までは何とか縫い繕い、成り立ったとしても、第二世代以降も一人っ子であった場合、一人っ子が父母、祖父母を扶養するという、いわば累積扶養負担の「4対2対1」の構図はそこで行き詰まり、破綻する。
同構図には自ずと限界があり、それがさらにその先の世代で「8対4対2対1」が成り立つはずがない。
中国当局にとっては、新世代の価値観の変容を決して軽視することなく、新政策に採り入れ、反映させていく度量が問われてくるに違いない。
■中長期的視野で抜本的な対策を
農村から都市への人口移動促進は有効
中国当局は、今回の政策転換に極めて大きな期待を寄せており、多様で過分な効果を狙っている。
それゆえに、当局が期待する予想と現実とのギャップは気がかりである。
5中全会の第13次5ヵ年計画では、
「中高速成長を保つ」ため、年率6%台後半~7%程度の経済成長を想定し、
2020年にはGDP(国内総生産)と1人当たり所得を10年比で倍増する公約
を確認したが、同計画の内容を俯瞰すると、所得倍増への具体的な戦略、戦術として打ち出されているのは今回の政策転換と農村人口の都市受け入れ策であり、共に人口政策である。
経済成長の鈍化、失速が懸念されている中で、今回の政策転換は短期的な即効性と中長期的な持続性を同時に兼ね備えた景気浮揚策として期待されているが、新世代の若者夫婦は果たして当局の期待通りに踊ってくれるかどうか、保証の限りではない。
中国当局によると、今回の政策転換に伴う第2子の新生児は毎年約2000万人と見込まれている。
中国では、子どもにお金を惜しまず使う傾向が強く、出産から育児、就学など、一連の子育てに要する出費の拡大で、内需の押し上げ効果が期待されている。
その経済的な波及効果は、年間で1600億元(約3兆2000億円)に及ぶとの皮算用であるが、第2子の新生児が年2000万人などという見通しは、その計算根拠が不明である。新世代の価値観が反映されているとは思えない。
働き手を増やす具体策としては、今回の政策転換後に生まれた新生児が働き手になるまで20年前後を待たなければならないが、農村の余剰人口を可及的速やかに都市の非農業部門へ移して行く計画・構想は即効性があり、極めて有効である。
農村地域の農業部門から都市部の非農業部門への人口移動は、かつての日本における高度経済成長期の成功モデルもある。
中国の社会的な構造改革の起爆剤としても、大いに期待したいところである。
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