2015年11月6日金曜日

底が抜けた中国経済(10):生産技術力がないままに高賃金時代へ突入か、最悪の場合、今後2年以内に、中国発の恐慌

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サーチナニュース 2015-11-05 15:50
http://biz.searchina.net/id/1593426?page=1

中国の製造コスト、
将来的に米国を上まわる可能性も=中国メディア

 米国のコンサルティングファームであるボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が2013年に発表した報告書によれば、
★.米国国内における製造業の平均コストは中国よりわずか5%高いだけにとどまり、
 将来的には中国で生産するよりも米国国内で生産したほうがコストが安くなる見通し
だという。

 中国はこれまで豊富で安価な労働力を背景に世界の工場として名を馳せてきた。
 中国で人件費が年々上昇していることは周知のとおりだが、
 中国と米国の生産コストが逆転する可能性があるのは人件費だけが理由なのだろうか。

 中国メディアの騰訊は、製造業における米中のコストを比較する記事を掲載し、人件費だけでなく、
 中国では土地や物流をはじめとする各種コストが米国より高い
と指摘している。

 日本や米国では、土地を購入すれば所有権が移転され、所有する期間には当然制限が存在しないが、中国では土地は借りるものであり、使用権を手にできるだけだ。
 それにもかかわらず、中国の地価は「米国より高いケースがある」と伝え、騰訊は浙江省慈溪市を例に「中国の工業用地の価格は米国の50倍に達する場合もある」と伝えた。

 さらに、
 物流インフラが整備された米国に比べ、中国の物流インフラはまだ整備の余地があることを指摘しつつ、さらにガソリン代も米国のほうが安いと指摘。
 そのほか、中国は金利が高いために銀行から資金を調達する際のコストも高くつくことや、
 工場を稼働させるうえで必要となる電気代も米国より高いのが現実だと伝えた。

 製造業では効率の低さがコスト増に直結するが、騰訊は
 「中国では生産設備と労働者の質が悪いため、効率性に劣り、生産コストが高くつく」
と指摘する一方、米国は自動化などで高い効率を確保していると紹介している



現代ビジネス 2015年11月11日(水) 週刊現代
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46246

中国の製造業が崩壊する日
〜もはや対岸の火事ではない
中国発の恐慌に備えよ!

■一人っ子政策廃止の理由

 10月26日から29日まで、北京で「5中全会」が開かれた。
 '16年から'20年までの経済発展目標である「第13次5ヵ年計画」を策定する重要会議である。
 習近平主席が主催し、355人の共産党幹部が、一堂に顔を揃えた。

 だが今回策定した5ヵ年計画に限っては、明るい話がほとんど出てこなかった。
 「5中全会」を取材した中国人ジャーナリスト李大音氏が語る。

 「経済状況があまりに悪いため、4日も幹部たちが議論して、決めたトピックは、国民の生産力と消費力を上げるため、一人っ子政策を完全廃止するということだけでした。
 れそもそもメンバーの12人がすでに粛清されているため、参加者たちは『次は自分かも』と戦々兢々だったのです」

 李氏によれば「5中全会」前に〈中国経済の近未来予測〉と題された文書が密かに出回ったという。

 「それは、5ヵ年計画の叩き台として、財政分野を担当する中国財政部と投資分野を担当する国家発展改革委員会が、A4用紙で11枚にまとめたものです。
 そこには'16年の中国経済予測が書かれ、李克強首相にも回覧されたと聞いています」

以下がその概要だ。


 中国経済は、石炭・鉄鋼・金属・石油・化学工業などの生産過剰、不動産バブルの崩壊、地方政府債務の増大によって、この先、深刻な状況に陥るだろう。

 この危機的状況から脱却するベストの方法は、中国経済を牽引する「三頭馬車」(輸出、消費、投資)のうち、国民の消費を伸ばすことだが、消費は株式バブルの崩壊によって、完全に頭打ちだ。
 輸出も同様に伸びず、
 結局は政府主導の投資に頼らざるを得ない。

 だがインフラ整備、不動産建設、製造業支援などの投資は、将来への借金であり、かつそれほど需要もない。
 つまり投資も減少させるしかなく、八方塞がりの中国経済は、かなりのレベルまで下降していくだろう。

 そうなると、銀行は貸し渋りに走る。
 それによって民営企業が経営難に陥り、景気はさらに悪化する。
 だがもし政府が銀行の貸し渋りを強制的に正せば、今度は銀行が破綻に追い込まれる……


前出の李氏が続ける。

 「すでに製造業は危機的状況で、
 毎年750万人もの大学生が卒業していくというのに、
 いまや中国企業でさえ、次々に東南アジアや南アジアの国々に工場を移転
させている有り様です。

★.中国最大120万人の工場労働者を雇用して、
 iPhoneなどを組み立てている台湾の鴻海(ホンハイ)が、インドに工場を移転させた時
が、中国の製造業が崩壊する時
と言われています。

 さらにこの夏の株価暴落が重なり、3億人から5億人いる中間所得者層が大打撃を受けた。
 いまや地方では、『鬼城』(ゴーストタウン)と『鬼市』(ゴーストシティ)が続出し、来年はさらに悪化すると、どの地方自治体も頭を抱えているのです」

 まさに目を覆うばかりの中国経済の近未来図だ。
 とにかく好材料が見つからないのだから、出口が見えないわけである。
「爆買い」が「並買い」になる

 だが、中国経済の悪化は、日本としても「対岸の火事」では済まされない。
 まず気になるのは、「爆買い」で話題を呼んでいる中国人観光客の動向だ。
 日本政府観光局によれば、今年1月から9月までの中国人観光客数は383万人を超え、前年比214%と、他国・地域に較べてトップだ。
 しかも、同局の訪日外国人消費動向調査(7~9月)によれば、中国人一人当たりの日本国内での平均消費額は、約21万6000円とダントツなのだ。

 こうした中国人の「爆買い」によって、デパートや家電量販店、ドラッグストアなどが大いに潤っているのは、周知の通り。例えば、三越銀座店の今年1月から9月までの免税品の売り上げは、前年同期比で3・5倍にも伸びている。

 『爆買い』効果でウハウハできるのは、せいぜい今年いっぱいまでと考えておくべきです。
 これから中国経済の悪化が進むことを思えば、中国人観光客が急減することはないにしても、『並買い』に変わるでしょう」(北京の日本大使館関係者)

 さらに、中国経済の悪化による、中国へ進出している日本企業への影響も、気になるところだ。
 現地の日本企業の親睦団体である中国日本商会によれば、
 約2万3000社の日本企業が中国へ進出し、約1000万人もの中国人を雇用
している。
 中国に進出している日本企業の研究が専門のRFSマネジメント・チーフエコノミストの田代秀敏氏が解説する。

 「中国経済が悪化した時の影響として、訪日中国人の『爆買い』減少もたしかに問題ですが、
 最も深刻な影響を受けるのは、日本の自動車産業です。

 中国の自動車販売が減少傾向にある中、日本企業は今年1~8月に、前年同期比5・9%増の199万台と販売を伸ばしています。
 特にホンダと日産は、日本国内より多く中国で販売している。
 中国での販売が半減すれば経営危機に陥るでしょう。

 他には、現時点で中国の景気減速を受け、来年3月期の利益予想を下方修正しているアドバンテスト、オムロン、キヤノン、東芝機械、日本精工、日立建機なども、大きな影響を受けるでしょう」

 前出の北京の日本大使館関係者も、警告を発する。

 「最悪の場合、今後2年以内に、中国発の恐慌が起こる可能性があります。
 日本はいまから、その事態に備えておくべきです」

「週刊現代」2015年11月14日号より



Bloomberg 2015/11/11 14:55
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151111-00000043-bloom_st-nb

勝ち組と負け組生まれる
-日本の失われた10年が示す中国減速の影響

  (ブルームバーグ):
  日本経済が1990年代に劇的な低迷に見舞われても、世界経済はなんとかうまくやっていた。
 中国の景気減速が続いているが、同じことが繰り返されるとみるエコノミストの一群もいる。
 当時、日本は世界2位の経済大国で、今は中国がその座にある。

 中国発の不振が世界経済全体に広がるとの懸念は少し行き過ぎだと考える理由はある。
 中国の低迷で負け組が生まれているのは確かだ。
 商品輸出企業がその最たる例だが、勝ち組もまた生まれた。
 航空会社や自動車メーカー、米国の消費者は、中国の需要鈍化に伴うエネルギー・原材料価格急落の恩恵にあずかっている。

 もちろん中国経済がハードランディングをを回避し、投資・輸出依存から消費・サービス業重視へのシフトを続けるという条件付きだが、
 中国の景気低迷長期化に世界が耐えることに寄与するのは、
 それほど伝えられていないこうしたプラスの側面だ。

 米連邦準備制度で26年間働いた経歴を持ち、今はドイツ銀行セキュリティーズのニューヨーク在勤チーフエコノミストを務めるピーター・フーパー氏は、
 世界にとって「中国の減速が漸進的である限り、苦痛はあるだろうが、大きな問題にはならないと考えている」
と述べた。

 中国の習近平国家主席は3日、今後5年間の平均年間成長率が6.5%を下回ってはならないと言明し、中国指導部が約30年前の改革・開放政策導入後で最も低い成長期を受け入れる用意があることを示唆した。
 米コンサルティング会社IHS(マサチューセッツ州レキシントン)のチーフエコノミスト、ナリマン・ベーラベシュ氏はこうした目標でも野心的過ぎると見込んでいる。
★.同氏の予想は年平均5.5-6%だ。

 1990年代の日本のように中国の貿易収支は黒字であり、需要源というより純供給国だと、ファゾム・コンサルティング(ロンドン)の共同ディレクターで、イングランド銀行(英中央銀行)で働いたこともあるダニー・ギャベー氏は指摘する。
 つまり、米経済が突然失速する場合と比べれば、世界の成長全体に対する中国経済減速の影響はずっと小さいことを意味するという。
 不動産・株式市場のバブルが崩壊した日本は、1991-2000年の平均成長率が年約1%と「失われた10年」を経験した。

■無傷の米国

 JPモルガン・チェースのエコノミストによるコンピューターシミュレーションでは、中国の成長率が1ポイント低下すれば、世界の経済経済成長率は約0.5ポイント下がり、新興市場はさらに大きな悪影響を受ける。
 だが対中輸出が国内総生産(GDP)の約1%相当にすぎない米国は実質的にほとんど傷を受けず、米消費者は輸入価格下落の恩恵を享受する。

 皆が楽観的というわけではない。
 米ジェローム・レビー・フォーキャスティング・センター(ニューヨーク州マウントキスコ)のエコノミスト、ジェローム・レビー氏は、
★.中国などの新興市場による支出急減に伴い世界経済はリセッション(景気後退)入りに近づいている
と話す。

  同氏は
 「中国が非常に長期にわたり巨額の過大投資で成長してきたことで、
 非常に大幅な投資削減が必要になるということが問題だ」
と分析する。
 これまでに中国景気減速の影響が顕著に表れているのは商品相場だ。
 中国による購買は供給側の見通しを大きく下回っている。ブ
 ルームバーグ商品指数は今年約20%低下し、1999年以来の低水準に近づいている。

原題:Japan’s Lost Decade Has Lesson for Those Dreading
China Slowdown(抜粋)



ダイヤモンドオンライン 2015年11月13日  陳言 [在北京ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/81579

中国で新たな不動産ブーム!
東京にも投資の波が殺到する過熱ぶり

■深センで新築マンション1637戸に
1万人超が殺到し即完売

 澎湃ニュースによると、11月7日午前10時から午後4時の間に、(どの地域あるいは都市セン)にある平均価格1平方メートル当たり4.35万元(約83万円)の新築マンション1637戸が完売し、契約金額は60億元(約1178億円)に達したという。

 購入者希望者が1万人を超えたため、不動産デベロッパーは仕方なく販売センターを深セン湾スポーツセンターに設けた。
 今回の発売会は地元の住宅購入者に「人気コンサート」のようだったと言われている。

■深センの不動産価格はなぜ全国トップなのか

 メディアの報道をまとめると、先日、中国指数研究院が発表した100都市の価格指数で、100都市すべての不動産価格が連続6ヵ月再上昇し、深センでは北京・上海・広州を超えて32.7%の暴騰となった。

 価格は例外なく市場需給が決定的な要因となっている。
 2013年の深セン警察局のデータによれば、実際の管理人口はすでに1800万人を突破しており、広州を超え、北京に迫る勢いだ。

 反面、深セン市の総面積は北京の8分の1、広州の4分の1しかない。
 そのうえ深セン政府は深センの総面積の48.8%をエコ・グリーン地帯とする計画で、加えて都市の公共の商業付属施設や交通計画などにより、住宅用地の開発はすでにまったくその余地がなくなっている。

 2014年までに深センでは計画建設面積の99%の使用を終えており、残る開発可能な土地はほとんどが中心地区以外のものである。
 また別の面においても、深センは全国でも科学技術イノベーションの中心であり、全国の高学歴の若者が流入し、若者は同時に不動産購入の主要な年齢層でもある。
 これらの要因がすべてあわさり、深センの不動産価格が全国記録を絶えず更新しているのは、不思議なことではないようだ。

■一級都市ではブーム、三・四級都市では泥沼化
もはや常軌を逸した不動産市場

 『証券時報』によると、今年に入って一級都市では、尋常ではない高値による不動産の購買合戦が繰り広げられ、これによって将来的に北京では1平米あたり10万元の住宅プロジェクトが50件も計画されることになるという。

 今年の1月から10月まで、上海の新築高級住宅の取引件数は2.9倍に跳ね上がった。
 まるで土地を奪い合うかのような勢いは、すでに他の都市にまで広がっており、10月下旬以降、北京、南京、杭州、温州、仏山の五つの都市では10日もたたないうちに、「地王(どんなに値段が高くても土地を購入しようとする不動産業者)」が6社も誕生した。

 だが、これはとても危険なギャンブルだ。
 もし都市全体が高級住宅化したり、一般住宅までもが高級住宅化したりするならば、どれほどの人々がその状況に対応することができるだろうか?

 専門機関の概算によると、1平米あたり10万元の高級住宅市場における北京の将来的な供給規模は4000から5000軒であり、供給と需要の比率はだいたい20:1で、供給が需要を大きく上回ると予想されている。

 実のところ、一部の開発業者はすでに経営が回らなくなってきている。
 近ごろ、著名な不動産デベロッパーである碧桂園と龍湖が土地を返上したというニュースが伝えられた。
 それと共に、一級都市とは反対に三・四級都市で不動産市場は泥沼化の状況を呈しており、もはや尋常ではなくなっている。

■多くの中国人投資家たちが東京の不動産に照準

 不動産投資の波は東京にも押し寄せている。『ウォールストリート・ジャーナル』は11月4日、ますます多くの中国人投資家が現在、東京の不動産に狙いを定めていると報じた。
 彼らを引き寄せているのは、その安定した収益と、この市場ではハイグレードな建築物の需要が強いこと、そして訪日観光客の宿泊需要があることだ。

 記事によると、30歳の中国の企業家・牛志方は、7月に会社の寮として使われていた建物を購入した。
 約2億円をかけて学生用マンションに改造する計画だ。

 中国投資公司(CIC)は1月にジョーンズ・ラング・ラサール傘下のラサール・インベストメント・マネージメントと共同で東京の目黒雅叙園を買収した。
 復星集団は昨年、オフィスビル2棟を買収し、現在はホテルの買収を検討中だ。

 記事は、中国人の東京の不動産市場への投資額は、ニューヨークやロンドン、シドニーなどに比べまだ少ないが、今後数年間でこうした状況が変わる可能性があると指摘している。
 過去1年間で、東京都心部のオフィスビルの賃貸料は平均で4.7%上昇している。
 』


ロイター  2015年 11月 13日 15:22 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/11/13/analysis-2016-emg-credit-crunch-idJPKCN0T20GP20151113?sp=true

焦点:2016年に忍び寄る新興市場の信用危機

[ロンドン 12日 ロイター] -
 債務残高が多くてもデフォルト(債務不履行)は少ない──。
 そうした状況の再来を楽しんでいた世界だが、来年は激しい衝撃が待ち構えているように思われる。
 それも、米国に限った話ではない。

 米連邦準備理事会(FRB)が来月の利上げを準備し、ドルが再び上昇を始める一方、中国からマレーシア、ロシア、さらにはトルコ、メキシコ、ブラジルに至る新興市場諸国で企業・家計の債務が警戒水準まで積み上がっていることに対して、
 この5年間、懸念が高まっている。

 ゴールドマン・サックスは、これが信用崩壊の「第3の波」になるのではないかと捉えている。
★.第1波は2007─08年のサブプライム住宅ローンの崩壊に始まる一連の銀行倒産、
★.第2波は2011─12年の欧州債務危機である
 そして、この2つの波に対応するために先進諸国が採用した金融緩和策が少しでも反転した場合、新興市場諸国の債務は非常に危うい状況にある。

 デフォルトないし返済困難といった現実は、2007年以降、実は世界全体でレバレッジ解消・債務の完済がほとんど進んでいないということをいや応なしに思い起こさせるだろう。
 バークレイズの調査によれば、新興市場諸国の投資不適格級企業のデフォルト率は、ほんの5年前には実質的にゼロだったが、来年は(今年に比べて)ほぼ倍増の7%に達する見通し。
 過去20年の平均である約4%と比べても相当に高い数値である。

 高利回りの新興市場債のデフォルト率は、すでに「ジャンク」格付相当の米企業債を上回っている。
 これもやはり来年は5%以上へと倍増する可能性が高く、(米ジャンク債との)差は広がりつつある。

 バークレイズは、こうした現象がソブリン債危機を伴わずに生じるのはかなり珍しく、特に今のところ途上国では見られないと指摘している。
 だが、西側諸国の景気回復と中国由来の景気減速という、ふだん見られない交錯した状況により、通貨・金利には実にさまざまな動揺が生じつつあり、それがコモディティー価格を下落させ、ドル金利が徐々に上昇するなかで各国通貨の低迷が際立っている。

 このような債務不履行の見通しが気がかりなのは、これまでに積み上がった債務が大きく、この2四半期の資本流出に伴う新興市場諸国の信用逼迫(ひっぱく)が懸念されるからだ。
 JPモルガンの試算では、
 流出した資本は5700億ドル(約69兆9000億円)という前例のない水準であり、
 約3分の2は中国からの流出(約45兆円)である。

■<企業債務は4倍増>

 累積債務の拡大に、国際的な監督機関は不安を募らせている。
 国際通貨基金は9月末、この10年間で新興市場諸国における企業債務は4倍増の18兆ドルと過去最高水準に達しており、低金利時代が終わろうとしている今、慎重な監視が必要であると警告した。

 さらに先月には国際決済銀行が、新興市場諸国の非金融企業の債務のうち最大3兆ドルがドル建てである(その3分の1は債券)との試算を示し、過去12カ月で多くの現地通貨に対してドルが約30%も上昇していることを考えれば、返済が厳しくなるだろうとしている。

 格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、同社が監視対象としている債券の発行元である新興市場企業が返済、または借り換えなければならない債務は、2017年末までに2250億ドル、2020年末までに5000億ドルに達すると計算している。

 さらに心配なのは、新興市場における債務の累積が企業セクターにとどまらないという点である。
 家計債務の急増が各国の銀行にとって問題となる可能性は高い。
 銀行による融資残高はドル建て債券で約7000億ドルに達している。

 新興市場諸国における投資フローに詳しい銀行業界団体、国際金融協会(IIF)は今週、世界全体での家計債務は2007年以来7兆7000億ドル増加して44兆ドルを突破し、そのうち6兆2000億ドルは新興市場諸国での増加分だと発表した。

 さらにIIFは、同じ時期、新興市場諸国の成人1人当たりの家計債務は120%増の約3000ドルになったとしている。

 対国内総生産(GDP)比で見た債務総額もやはり増大しているという。
 対GDP比で見た家計、非金融企業、公的部門を合わせた債務総額は、2007年以来約44パーセントポイント上昇し165%となった。

 こうした背景を考えると、与信環境が厳しくなりデフォルトが増加するという見通しは冷水を浴びせられるようだ。
 債務増大の大半を占める中国ではなおさらである。

 新興市場諸国における銀行融資についてIIFが最近行った調査では、第3・四半期の融資条件は、すでに2011年以来最悪の厳しさになっているとされる。

 この調査結果に対してJPモルガンのエコノミストたちは、実際の融資データは持ち直していると反論する。
 外国資本の撤退とノンバンク融資、すなわち「シャドーバンキング」の縮小によって生じた空白は、現地の銀行が埋めているようにも思われる。

 だが信用逼迫への懸念は残る。
 20カ国・地域(G20)などが参加する金融安定理事会は9日、銀行の自己資本規制に関する危機以前のルールについて、新興市場諸国への適用免除措置をすべて撤廃した。

 業界の専門家らの試算では、中国の4大銀行は、この新たなルールに適合するために最大4000億ドルの資本上積みをしなければならない可能性がある。
 こうなると、政府がこれらの銀行に対して成長のテコ入れを求めているのとは裏腹に、融資引き締めへの圧力が生じる可能性がある。

 新興市場諸国で債務ショックが起きるとして、そのグローバルな影響を見定めることは難しい。
 だが、金融面でのストレスが新たに生じた場合、来年を通じて、現在の景気減速がさらに深刻化し、コモディティー市場と世界全体の経済成長に影響が及ぶことになるだろう。

 先送りされてきたFRBによる利上げは火花を1回起こすだけかもしれない。
 しかし、可燃物がたっぷり積まれているのは確かなのだ。

(原文執筆:Mike Dolan)(翻訳:エァクレーレン)


YAHOOニュース 2015年11月15日 9時48分配信
児玉克哉  | 社会貢献推進機構理事長・UBrainTV株式会社取締役
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kodamakatsuya/20151115-00051467/

HSBCはチャイナリスクを嫌って香港への本社移転を取りやめ?
~日本企業も中国から撤退へ

 中国経済はこの20年間、凄まじいばかりの経済成長を遂げました。
 しかし、最近になって経済成長が急速に鈍化し、チャイナリスクが注目されるようになっています。

 ヨーロッパで最大の金融グループのHSBCはイギリスから本社の移転先として香港を模索していました。
 もともとHSBCは1865年に香港で始まった香港上海銀行が母体ですから、ある意味里帰り、という感じで見られていました。
 それが、チャイナリスクを嫌い、香港への本社移転をあきらめ、アメリカへの移転を有力候補としていると報じられています。
 イギリスに残る可能性もあるようです。
 最終決定はまだ先となりそうですが、ここにもチャイナリスクの影があります。
 HSBCは資産額が2兆6000億ドルという巨大な金融機関です。
 その動きはイギリスだけでなく、世界の経済に影響を与えます。
 イギリスは金融業以外にはしっかりとして産業が育っていません。
 その中で、もしHSBCの本社がアメリカに移転したとしたら、これはイギリス経済に大打撃になりそうです。

 チャイナリスクを嫌っているのは日本企業もそうです。
 以前は中国進出が未来への鍵とまで言われてどんどんと進出が行われました。
 中国市場は巨大で、夢がありましたし、人件費も日本のものとは比べ物にならないほど安かったのです。
 最近は人件費も高くなり、
 なによりも国の恣意的な規制の運用に悩まされます。
 中国経済が冷える中、市場の活性化も期待できず、魅力が薄くなっています。
 中国の水は甘くなかったようで、多くの企業は痛い目にもあい、さらなるチャイナリスクを避けるために撤退を決めています。

 NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は中国政府の規制変更によって、上海でのデータセンターの事業計画が頓挫してしまいました。
 おそらく中国のライバル企業の圧力なのでしょう。
 こうした規制の運用の変化はかなり恣意的に行われます。
 長期的な計画を作ることができないのです。

 最近、撤退を決めた日本企業には、
 スナック菓子の製造・販売合弁会社を売却したカルビー、
 液晶テレビ生産をやめたパナソニック、
 カレールウなどの生産を打ち切ったエスビー食品、
 青島ビールとの合弁を解消したサントリーホールディングス
などがあげられます。
 どんどんと中国離れをしています。

 企業にとってもチャイナリスクには様々な要素があります。
 人件費等の高騰によるコスト高倒産、
 従業員との争いが激化し機能しなくなる労使不和倒産、
 品質劣化によるクレーム倒産、
 中国の景気減退による不景気倒産
など様々なケースがあります。
 様々な規制がいきなり恣意的にやってくるリスクが常にあります。
 公的機関の動きをしっかりと見極めなければならないのです。
 その公的機関も今、改革の真っ只中。
 今日のOKが明日も続くとはわからないのです。

 チャイナリスク倒産は今後更に増えると予想されます。
 その前に、日本企業のみならず世界の企業の多くは中国からの撤退という道を選択しつつあります。
 私がもっとも恐れているリスクは、治安の悪化リスクです。
 中国での景気が落ち込んだ時、中国社会は安定を保つことが出来るのかどうか。
 13億とも14億ともいわれる中国国民をコントロールすることが困難になる可能性があると思っています。

 チャイナリスクを避けて大企業が撤退すると、チャイナリスクがさらに高まるという負の連鎖があります。
 かなり深刻に考える必要があると思っています。

児玉克哉 社会貢献推進機構理事長・UBrainTV株式会社取締役
三重大学副学長・人文学部教授を経て現職。専門は地域社会学、市民社会論、国際社会論、マーケティング調査など。公開討論会を勧めるリンカーン・フォーラム事務局長を務め、開かれた政治文化の形成に努力している。「ヒロシマ・ナガサキプロセス」や「志産志消」などを提案し、行動する研究者として活動をしている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。








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