2015年11月17日火曜日

パリ同時多発テロ(1):「フランスは戦争状態」にあるとオランド大統領が宣言、ハッカー集団・アノニマスがISに宣戦布告

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テレビ朝日系(ANN) 11月17日(火)5時52分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20151117-00000001-ann-int

 「フランスは戦争状態」 オランド大統領が宣言



 パリの同時多発テロ事件を受けて、オランド大統領は臨時の上下両院合同会議で演説し、
 「フランスは戦争状態にある」
と宣言しました。

 (横地明子記者)
 オランド大統領は敵は過激派組織「イスラム国」だとしたうえで、今後、シリアへの空爆を強化する考えを表明しました。非常事態宣言も今後、3カ月延長するよう議員に要請するとともに、今回のテロは「シリアで計画され、ベルギーで組織された」と指摘しました。

 テロの首謀者として名前が浮上しているアブデルハミド・アバウド容疑者はベルギーの出身ですが、地元メディアによりますと、おととしにシリアに渡り、その後、ベルギーとシリアを行き来していたとみられます。
 このため、「ベルギーとシリアのルート」を洗い出すことが今後の捜査のポイントになりそうです。
 なかでも重要な手掛かりとなるのが、ベルギーのモレンビークという場所です。
 首謀者とみられるアバウド容疑者、そして、レンタカーを借りたなどとして指名手配されている男の出身地です。
 ベルギー警察は16日、大規模な捜索を展開しましたが、指名手配犯の逮捕には至りませんでした。
 ベルギーとシリアがいったい、なぜつながったのか。
 その辺りをつなげていくことが今後の捜査のポイントとなりそうです。



フジテレビ系(FNN) 11月17日(火)11時56分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20151117-00000657-fnn-int

パリ同時多発テロ 
オランド大統領、演説で「戦争状態にある」



 パリで起きた同時多発テロ事件で、フランスが全面対決宣言。
 オランド大統領は16日、異例の演説を行い、過激派組織「イスラム国」と「戦争状態にある」として、空爆を強化する方針を明らかにした。

 オランド大統領は
 「われわれは、フランスや世界全体を脅かす、イスラム過激思想のテロリストと戦争状態にある」
と述べた。
 オランド大統領は、非常事態の期間を3カ月間に延長する方針や、テロを起こすおそれのある2重国籍の人物から、フランス国籍を剥奪する方針を明らかにした。
 そのうえで、一部の法制では憲法の修正が必要だとして、議会に理解を求めた。
 また、シリア近海に、空母「シャルル・ド・ゴール」を派遣して、「イスラム国」への空爆を強化することも表明している。

 一方、国連で開かれた安全保障理事会で、フランスは、国際社会がテロと戦うための緊急決議を採択するように呼びかけた。
 安保理は、近く、この決議について議論を進めることになるが、これまで安保理は、アメリカとロシアの対立から、「イスラム国」問題に対して、有効な対策を打ち出せておらず、今回も不透明な状況。



ニューズウィーク日本版ウェブ編集部 2015年11月16日(月)16時20分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/11/post-4120_1.php

ドキュメント】週末のパリを襲った、無差別テロ同時攻撃
スポーツイベントやコンサート、カフェで「自由」を謳歌する若者たちが標的に

先週末のパリ同時テロでは、サッカースタジアム、コンサート会場、それに繁華街のカフェやレストランが次々に銃撃、自爆テロの攻撃を受けた。
 これまでに少なくとも129人が死亡、負傷者は300人以上にのぼり、このうち100人は重篤な状態にあるという。

 パリでは今年1月に風刺漫画週刊誌シャルリ・エブドの編集部が襲撃されたばかりだが、今回は繁華街で週末の時間を楽しんでいた若者らが無差別に標的となり殺害された。

 再び繰り返された余りに残酷な惨劇に、世界は震撼している。

 今回の同時テロを時系列で振り返る。


●地図

◆サッカースタジアム「スタッド・ド・フランス」
(現地時間午後9時20分頃~)

 サッカー男子フランス代表とドイツ代表の親善試合を開催されていた、パリ北部のサッカースタジアム「スタッド・ド・フランス」の周辺で、3回に渡って自爆テロが発生。
 通行人1人と実行犯3人が死亡。

 報道によると、最初の自爆テロの実行犯は、爆弾を身につけてスタジアムに入ろうとしたところをセキュリティチェックで止められ、警備員から遠ざかったところで爆弾を爆発させた。
 その際、近くにいた1人が巻き添えになった。

 この親善試合は、オランド大統領も観戦していたが、2度目の爆発の後にスタジアムから避難して無事だった。

◆繁華街のカフェやレストランを銃撃
(現地時間午後9時25分頃~)

 パリの中心部の繁華街にあるバー「カリヨン」の前に黒いボックスカーが乗り付け、店にいた客に向かって無差別に自動小銃を乱射した。
 その後、すぐ近くのカンボジアレストラン「プチカンボジュ」でも食事中の客に銃を乱射した。
 ここでは合わせて15人が死亡し、10人以上が重傷を負っている。

 テロ実行犯はその後、街を南下するように移動して、カフェ、レストランを次々に銃撃。
 さらに24人が殺害された。

 この後、午後9時40分頃には、さらに別のカフェ「コントワールボルテール」で自爆テロがあり、1人が巻き添えになって重傷を負った

◆コンサートホール「バタクラン」
(現地時間午後9時40分頃~)

 最も多い犠牲者が出た市中心部のコンサートホール「バタクラン」では、当時アメリカのロックバンド「イーグルス・オブ・デス・メタル」のコンサートが開催されていた。
 1500席の会場には満員の観客がいた。

 爆弾を身に着けた実行犯3人が会場に入り、観客に向かって自動小銃を乱射。
 3時間後にフランスの治安部隊が突入して撃ち合いになったが、3人はその場で自爆した。
 ここでは89人が死亡し、重傷を負った多数が重体となっている。

 銃撃の最中、実行犯はアラビア語で「神は偉大なり」と叫び、シリアに介入したオランドに責任があると言っていた、と目撃者が証言している。



ロイター  2015年 11月 16日 17:14 JST Swaha Pattanaik
http://jp.reuters.com/article/2015/11/16/france-shooting-breakingviews-idJPKCN0T41CE20151116?sp=true

コラム:パリ同時攻撃、欧州に連帯と分裂のリスク

[ロンドン 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
 多数の犠牲者を出したパリの同時多発攻撃は、国際社会にある種の結束をもたらし、欧州連合(EU)内に最近広がっていたあつれきを克服する上で力になり得るだろう。
 だが残念ながら、同時攻撃によってフランスやその他の国に恐怖がもたらされるのは避けがたく、それが安全保障と文化的な統合をめぐる議論を、分裂につながる方向へと導いていく危険がある。

 今回の同時攻撃に対して欧州がまず最初に示す反応は、連帯という形になる。
 中東からの移民急増にどう対応するかをめぐる意見対立の背景にあった加盟各国の国益は、しばらく棚上げされよう。
 一方で目には見えないいくつかの別の影響も出てくるかもしれない。

 第1に挙げられるのは、同時攻撃で高まった安全保障上の懸念が、EU域内の移動・通行の自由をうたったシェンゲン協定の存続に新たな脅威をもたらすという点だ。
 既にシェンゲン協定は、一部の国が移民流入規制を実施していることで、土台が深刻に揺らいでいる。オランド仏大統領は国境検査を再導入しており、攻撃実行犯に関する情報がもっと多く出てくるようになれば、恒久的な国境管理が必要かどうかの議論も高まるだろう。

 EUという枠組みが単なるシェンゲン協定で表されるだけのものでないことは確かだ。
 しかし理想に基づいて定められた協定の精神を後退させることは、EUにとって象徴的な意味合いが出てくるとともに、現実的にもさまざまな影響をもたらすことになる。
 近く発足するポーランド新政権の欧州担当相に内定しているシマンスキ氏は、9月にEUが決めた難民の各国での受け入れ分担をポーランドはもはや受け入れられないとの考えを示した。


●EU域内の「難民割り当て」計画

 次に、国境と同じく人々の心が閉ざされてしまう心配がある。
 オランド大統領は14日、同時攻撃について過激派組織「イスラム国」がフランス内外からの支援者の協力で計画したと指摘した。
 主要党派に属する政治家の間で、さすがに今回の悲劇から何か政治的な成果を得ようとする動きは出てこないだろうが、文化的統合をめぐる問題が再び浮上してくることは十分にあり得る。
 今年初めにパリの新聞社「シャルリエブド」本社が襲撃される事件が起きた後だけに、なおさらそうなる。

 反移民や反イスラム教の気運が高まれば、それは1カ月弱先に予定されるフランスの地方選で極右政党「国民戦線」に利する可能性がある。
 他の欧州諸国の極右政党にも追い風となるかしれない。
 それでもこれらの政党は統一欧州の味方ではない。
 危惧されるのは、悲劇を受けて連帯感が生まれても、その後には分裂が訪れてしまう事態だ。

●背景となるニュース

*パリで13日に発生した同時多発攻撃は、競技場での自爆やコンサートホール、レストランにおける銃撃などで少なくとも127人が死亡した。

*過激派組織「イスラム国」が14日、犯行声明を出した。

*オランド仏大統領は、イスラム国による同時攻撃を「戦争行為」と断定した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。



ロイター  2015年 11月 15日 13:24 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/11/15/paris-shootings-islamic-state-idJPKCN0T30UT20151115?sp=true

パリ同時多発攻撃、多国籍が絡んだ犯行=検察



[パリ 14日 ロイター] -
 フランスの首都パリで13日発生した同時多発攻撃について同国の検察当局は14日、3つのグループを形成し連携して行った犯行との見解を示した。

 国境をまたいだ捜査が進むなか、検察当局は今回の事件について、フランス国内のほか、中東、ベルギー、ドイツなど多国籍が絡んだ組織が関与したとみている。

 オランド大統領は過激派組織「イスラム国」による「戦争行為」だと非難。
 イスラム国は犯行声明を出し、攻撃はフランスの軍事行動に対する報復だと表明。
 パリ中心部の各地に爆弾ベルトを身に着けたり、マシンガンを携帯したりした戦闘員を送り込んだとしている。

 フランスは米国とともにシリアやイラクで、イスラム国への空爆に参加している。

 今回の事件は13日夜、銃撃や爆弾によるレストラン、コンサートホール、スタジアムなどへの複数の襲撃がパリ市内各地でほぼ同時に発生。
 検察当局によると、129人が死亡、352人の負傷者が出ており、このうち99人が重体という。
 犯人のうち6人は自爆し、1人は警官に射殺された。
 8人目の実行犯がいるという情報もあるが、確認されていない。

 オランド大統領は、フランス全土に非常事態を宣言し、警官隊を路上に配備。犠牲者を追悼するため国を挙げて3日間、喪に服す方針を示した。

 ベルギー検察当局によると、パリの事件現場の1カ所で付近にあった車の捜査に絡んで同国で3人が逮捕された。
 一連の攻撃に使用された2台の車のうちの1台という。

 また関係筋によると、死亡した犯人のうち1人はイスラム過激派と関連のあるフランス人で、当局が監視していた。

 ドイツ南部のバイエルン州で今月、銃や爆発物を車内に所持していたとして逮捕された男も、今回の事件への関与が疑われている。

 またギリシャ政府筋によると、犯人の1人あるいは2人が、シリアからの難民と共にトルコからギリシャを通過した可能性があるとしている。

 今回の事件を受けて、シリアやイラク、リビアなどの内戦を背景に欧州へ大量に流入する難民の問題をめぐる議論が高まるとみられる。

 仏当局はパリ同時攻撃の実行犯として、イスマイル・オマル・モステファイ(29)容疑者を特定したと発表。
 一方で、実行犯の1人が逃走した可能性がある。





レコードチャイナ 配信日時:2015年11月17日(火) 11時25分
http://www.recordchina.co.jp/a123412.html

<パリ同時多発テロ>
ハッカー集団・アノニマスがISに宣戦布告
=「史上最大のネット攻撃行う」―英紙

 2015年11月17日、環球時報によると、フランス・パリで起きた同時多発テロ事件で過激派組織「イスラム国(IS)」が犯行声明を出したことを受け、世界最大のハッカー集団・アノニマスがISに対して宣戦を布告した。

 英紙デイリー・メールによると、アノニマスは動画サイト・Youtubeに投稿した映像で、自分たちが人類団結の立場に立ち、ISの行為を忘れも許しもしないことを強調した。
 映像では、
 「世界中のアノニマスがお前たちを引きずり出す。
 我々がお前たちを放ってはおかないことを覚えておくべきだ」
とし、
 「今回の作戦は史上最大のネット攻撃になるだろう。
 覚悟しておくがいい」
とISに宣戦布告している。

アノニマスは1月にフランスの雑誌社に対するテロが起きた際も、ツイッターでISに対する攻撃を予告した。米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」によると、アノニマスはこれまでにISに関係する149のウェブサイトを閉鎖させ、10万以上のツイッターアカウントと5900の宣伝映像を削除しているという。


ロイター 2015年 11月 16日 12:21 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/11/16/france-shooting-is-idJPKCN0T504T20151116

フランス軍、
「イスラム国」拠点を空爆 同時攻撃受け最大規模に



[パリ/ブリュッセル 15日 ロイター] -
 パリで起きた同時多発攻撃の捜査が拡大する中、フランス軍は15日、シリア領内にある過激派組織「イスラム国」の拠点を空爆した。
 同組織は130人以上の死者を出した今回の事件で、犯行声明を出している。

 フランス軍は、シリア北部ラッカの弾薬庫や訓練施設を空爆。同軍は数カ月にわたって、米国主導の空爆作戦に参加しているが、今回の空爆はこれまでで最大の規模だという。

 司法筋によると、フランス警察は、同時攻撃の計画に関与したとして、ベルギー生まれのフランス人の男を指名手配。
 この男は実行犯2人の兄弟とされる。
 警察はフランス国籍の自爆犯2人の身元を特定。現場で死亡した残りの実行犯4人の身元は明らかになっていない。



2015.11.18(水) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45293

パリ同時テロは文明の衝突を浮き彫りにしたのか
多文化主義はナイーブな願望ではなく、現代世界の現実
(2015年11月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

仏、1万人超が潜在的テロ容疑者リストに

 国際政治では「文明の衝突」が最も目立つようになるだろうと故サミュエル・ハンチントンは予言した。
 1993年に最初に打ち出されたこの理論は熱烈な支持者を獲得してきたが、その中には好戦的なイスラム主義者も含まれている。
 パリで大量殺人の挙に出たテロリストらは、
 イスラムと西側諸国は避けられない死闘を繰り広げている
と考える勢力の一派だ。

 これとは対照的に、西側諸国の政治指導者たちはほぼ決まって、ハンチントンの分析を退けてきた。
 米国のジョージ・W・ブッシュ前大統領でさえ、「文明の衝突など存在しない」と言い切った。

西側諸国の多文化社会
――その大半で、イスラム教徒は大規模なマイノリティー(少数派)集団を形成している――
における生活は、異なる信仰と文化は共存も協力もできないという主張への反論を日々提供している。

 パリが攻撃された今、この中核的な考え方を再度唱える必要がある。
 ただし、リベラルな価値観を改めて主張する必要があるとしても、そのせいで冷静さを失い、世界を覆ういくつかの有害なトレンドを認識できなくなってはならない。

■世界各地で台頭するイスラム主義強硬派

 事実、今日の世界ではイスラム主義の強硬派が台頭している。
 しかもその現象はトルコやマレーシア、バングラデシュなど、かつては穏健なイスラム社会のモデルだと見なされていた国々でさえ観察される。
 それと同時に米国や欧州、インドなどでは、政界の主流派からも反イスラムの偏見が表出するようになっている。
 こうしたことが重なって、「文明の衝突」という物語を押し戻したいと考える人々は、逆に脇に追いやられつつある。

 パリで今回起こったようなテロ攻撃は、イスラム教徒とそうでない人々との緊張を、その狙い通りに高めていく。
 しかし、過激化を促進している長期的な傾向がこれ以外に存在することもまた事実だ。
 その中で
★.最大級にたちが悪いのは、
 ペルシャ湾岸諸国、とりわけサウジアラビアが石油で得た収入を使って、
 不寛容な部類のイスラム教をイスラム世界のほかの部分に広めてきたことだ。

 今ではその影響を東南アジア、インド亜大陸、アフリカ、欧州に見ることができる。
◆.マレーシアは以前から、イスラム教徒のマレー人という多数派と大規模な中国系マイノリティーが共存に成功し、かつ繁栄している多民族国家の例だと言われてきた。
 しかし、状況は変わりつつある。

 隣国シンガポールのビラハリ・カウシカン元外務次官は、マレーシアでは
 「非イスラム教徒の政治的・社会的な居場所が大幅かつ継続的に小さくなっている」
と指摘する。
 さらに
 「過去数十年に及ぶ中東からのアラブの影響が、マレー版のイスラムを着実に侵食してきた・・・以前よりも厳格で排他的な解釈に置き換えられた」
と付け加える。

 また、ナジブ・ラザク首相の政権を揺るがしている汚職問題は社会の緊張を高めている。
 同政権が支持を取り付けるにあたり、イスラム教徒の利益を代弁するアイデンティティー政治を頼りにしているからだ。
 ある政務次官は先日、マレーシアを陥れようとするグローバルなユダヤ人組織の陰謀に野党が加担しているとまで述べていた。

◆.世俗的な憲法を持つイスラム国家のバングラデシュではこの1年間、知識人やブロガー、出版社の社員などがイスラム主義過激派に殺害されている。
 キリスト教徒やヒンドゥー教徒、イスラム教徒シーア派への攻撃も増えている。

 こうした暴力の大半はイラク・シリアのイスラム国(ISIS)やアルカイダによるものだ。
 しかし、マレーシアと同様にバングラデシュでも、湾岸諸国は教育資金の提供や出稼ぎ労働者が形成する人的なつながりを通じて、イスラム過激派の台頭に大きな影響を及ぼしたように思われる。

■模範とされてきたトルコも様変わり

 西側諸国ではずいぶん前から、トルコはイスラム教徒が多数派を占め、かつ世俗的な民主主義の確立にも成功している国の最高の事例だと多くの人が思っていた。
 ところがレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の時代になって、宗教はこの国の政治やアイデンティティーの問題で以前よりもはるかに重要視されている。

 英エコノミスト誌などはエルドアン大統領を「穏健派イスラム主義者」と評している。
 だが、2014年に発した
 「(西洋人は)友人のように見えるが、実は我々の死を望んでいる。
 我々の子供たちが死ぬところを見たいと思っている」
という大統領の言葉には、穏健さなど微塵もない。

◆.インドのナレンドラ・モディ首相はイスラム教徒について、これほど扇動的なことは言ったことがないが、長年、反イスラムの偏見と暴力を容認してきたと批判されてきた。
 首相に就任してから最初の数カ月間は、経済改革に集中することで、一部の批判派を安心させた。
 だが、この数カ月は、同氏の率いるヒンドゥー民族主義政党・インド人民党(BJP)のメンバーが反世俗、反イスラムの発言を強めており、牛肉を食べたとされるイスラム教徒の男性のリンチ殺人が全国ニュースになった。

 欧州では、パリのテロ攻撃の前でさえ、難民・移民危機が反イスラムの政党や社会運動の台頭を煽る一因となっていた。
 ドイツが中東からの難民に門戸を開放すると、こうした移住者の宿泊施設に対する暴力的な襲撃事件が増加した。
 フランスでは、来月の地方選挙で極右政党の国民戦線(FN)が大きく議席を伸ばすことが広く予想されている。

 米国でも反イスラム主義的な発言が増えており、大統領選指名争いの共和党候補の間では当たり前になっている。
 共和党員を対象とする多くの世論調査でリードするベン・カーソン氏は、イスラム教徒が米国大統領になることは許されるべきではないと述べた。
 ドナルド・トランプ氏は、米国への入国を認められたシリア難民は皆、強制送還すると語った。

■イスラム世界と非イスラム世界が入り混じる現実

 北米、欧州、中東、アジアでのこうした展開が重なり、文明の衝突という考えを煽っている。
 だが、イスラム世界と非イスラム世界は地球全体で入り混じっているというのが現実だ。

 多文化主義はナイーブな自由主義の願望ではない。
  それは現代世界の現実であり、うまく回るようにしなければならない。
 それ以外の唯一の道は、さらなる暴力と死と悲しみだ。

By Gideon Rachman
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