2015年11月5日木曜日

中台トップ会談(1):屈辱の習近平、習近平の焦りと賭け

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 ベトナムにつづいて台湾でも習近平は嫌がられる存在になりつつあるようである。


ニューズウイーク 2015年11月5日(木)16時30分 遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/11/post-4069.php

中台トップ会談――軍事パレードによる威嚇も効果なく

 7日、習近平国家主席と馬英九総統がシンガポールで会談する。
  1949年に中華人民共和国が誕生して以来、中台トップ会談は初めてだ。
 9月3日の軍事パレードでも十分な効果を発揮できなかった習近平の焦りと国民党消滅危機がある。

■来年の総統選挙で民進党が優勢

 来年の台湾における総統選挙において、独立傾向の強い民進党の蔡英文氏が圧倒的にリードしている。
 その理由に関しては10月9日付の本コラム「台湾・蔡英文氏訪日と親中・親日をめぐる闘い」で書いたように、台湾国民は北京寄りの馬英九政権に見切りをつけているからだ。

 香港統治において「一国二制度」を実施し、それがいかに素晴らしいか、いかに北京が香港の自治を守っているかを台湾に見せて、やがて台湾を「一国二制度」で統一しようともくろんでいた。

 しかし香港の自治は守られず、若者たちが中心になって雨傘革命を起こした。

 台湾でも若者が立法院を選挙するという「ひまわり運動」が起きて、北京寄りのサービス貿易協定を阻止することに成功している。
 昨年末の台湾の統一地方選挙でも、民進党が圧勝した。

 国民の多くが中国共産党の一党支配体制を嫌い、そこから逃れようとしているからだ。

 しかし北京政府にとっては、台湾はまだ「未解放」の「中国の一部」であって、第二次世界大戦終戦から1949年10月1日に中華人民共和国が誕生するまでの間に戦われた「国共内戦(国民党と共産党の間の内戦)」が終わってないのである(解放というのは、中国人民解放軍が占拠し制圧することを指している)。
 台湾はソ連の海軍や空軍の支援をもらって解放すればいいとして、先に中華人民共和国誕生を宣言してしまったのである。
 1950年に起きた朝鮮戦争で、その望みは断たれ、今日に至っている。

 だから、北京政府にとって、「台湾解放」というのは、いかなる問題よりも優先される最も大きな国家の課題だ。
 宿願である。

 今では「台湾統一」という言葉を使っているが、その統一が、民進党の圧勝によって遠のこうとしている。

 これは、国家の命運にかけても許されないことである。

■軍事パレードは台湾に見せるためのもの

 だから今年9月3日に、習近平政権は異様なほどの力を入れた軍事パレードを行なった。
 万一にも台湾が独立を選ぶようなことがあったら、2005年に制定した反国家分裂法を発動させるぞ、という威嚇を台湾国民に与えるためだ。
 これに関しては8月13日付の本コラム「中国の軍事パレードは台湾への威嚇」で詳述した。
 中国のこの「心」に関しては、中国政府関係者から直接聞いており、それがいままさに現実のものとなっているのである。

 なぜなら、ここまでして威嚇したのに、台湾国民は逆の方向に動き始めたからだ。
 軍事パレードの脅しは効果を発揮しなかった。

 特に国民党が総統候補として立てていた洪秀柱氏(67歳、女性。立法院副院長)が、タブーとされていた「統一問題」に言及してからは、国民党はガタガタと崩れ始めた。
 洪秀柱氏は、「中華民国の憲法から言っても、台湾は最終的には(大陸と)統一しなければならない」などと発言し不評を買ったからだ。

 そこで、10月7日、国民党は次期総統候補として洪秀柱氏を立てないで、国民党の朱立倫主席に立候補することを決めた。

 この迷走がさらに国民党離れを台湾国民に促し、民進党の蔡英文候補の総統当選は、ほぼ確実になりつつある。

■シンガポールを選んだわけ――「92コンセンサス」

 そこで、習近平は7日にシンガポールを訪問して、馬英九総統と会談することを決定した。

 シンガポールを選んだのは、1993年に初めて両岸(中台)代表が「92コンセンサス」に沿った会談を行なった場所だからである。

 「92コンセンサス」とは「一つの中国」を共通認識として、独立を主張せず、互いに経済文化交流を促進していこうという主張である。
 この「中国」に関する定義は、大陸と台湾が各自イメージすればいいということになっている。

 「92コンセンサス」による「両岸平和統一」を宿願としている北京政府は、そのスタート地点であったシンガポールを、1949年以来、66年ぶりの「両岸トップ」の会談場所に選んだわけだ。

 したがって話し合う内容は「92コンセンサス」の再確認と、大陸の対台湾経済支援といったところだろう。

 経済に関して大陸を頼るしかない方向に台湾を引き込んできた北京政府としては、ここでもまた「チャイナ・マネー」による力を発揮させようとしている。

 しかしチャイナ・マネーによる効果は、どこまであるだろうか?

 台湾国民は、特に若者は、「銭」よりも「尊厳」を求めているのだ。
 特に大陸と関係なく台湾で生まれ育った若者たちの「本土意識」は強い。

■今のうちにトップ会談のメカニズムを創る

 もう一つの習近平側の目的は、北京政府寄りの馬英九政権の間に、早いとこ、「トップ会談の枠組み」を作ってしまおうという魂胆もある。

 民進党の蔡英文が総統になってしまえば、彼女は「習近平とは会わない」と、会談を拒絶するだろう。
 だから、どの党の誰が総統になっても、日中韓首脳会談のような「枠組み」に填め込んでしまおうという思惑がある。なんとしてでも、独立の方向には行かせない。

 そのための戦略だ。

 2014年の北京APECの際に、馬英九が北京に行き習近平と会いたいと希望を伝えたが、習近平はそれを拒絶していた。
 なぜなら「大陸と台湾」は「国内問題」であり、国際会議であるAPECのときに会うのは不適切だと判断したからである。

 その意味では、「中台首脳会談」などという表現をするのは適切でないことになろう。

 台湾の総統は、どこかの「国家の首脳」ではないのである。
 だらか、今回は互いに相手を「先生」と呼ぶことにしている。
 中国には、日本語の敬称「~さん」に相当する言葉はない。
 せいぜい、「先生」と言うしかない。

 そこまで細心の工夫がなされているので、日本のメディアは「中台首脳会談」と表現しないように、気をつけなければならない。
 「一つの中国」を認めないのなら、また話は別だが......。

 日本の一部のメディアでは、南シナ海問題で中国は強硬姿勢を取っているが、台湾に関しては柔軟路線に転換したのだろうといった、かなり見当違いの報道をしているが、このようなことを言っていたのでは、またしても中国の戦略を見誤る。国共内戦を現場で経験した者として、注意を喚起したい。



東洋経済オンライン 2015年11月04日 福田 恵介 :東洋経済 編集局記者
http://toyokeizai.net/articles/-/91138

中台は、なぜ「史上初の首脳会談」を行うのか
11月7日に開催、馬英九最後のあがきか

 中国と台湾、初の首脳会談が行われることになった。
 台湾の馬英九総統(中国国民党)は11月4日未明、7日に中国の習近平主席とシンガポールで会談することを発表した。
 中台間の首脳会談は、1949年に国民党(中華民国)が中国大陸から台湾に逃れてから初めてのこととなる。

 この時期に突然の首脳会談が発表されたことは、中台双方、特に馬総統にとって非常に微妙な出来事となりそうだ。
 2期8年の任期をまもなく終える馬総統にとっては、中華人民共和国トップと初めて会う総統として歴史に名を残したいという意識が、まずは強いのだろう。
 彼は2006年、台北市長時代に行った『週刊東洋経済』とのインタビューでも、「中国共産党とは太いパイプがある」とし、大陸との関係をアピールしていた。

 一方、来年2016年1月に予定されている台湾総統選挙への援護としても、この首脳会談を利用したい思惑も当然あるだろう。
 現在、最大野党・民主進歩党(民進党)の蔡英文主席の優勢が伝えられている。

■自身の名誉と総統選目当てだが効果薄い

 与党国民党は馬英九政権8年間の成果などから苦戦を強いられており、10月には国民党主席で台湾北部・新北市の朱立倫市長を候補者に据えたばかり。
 しかも、すでに今年7月、党内の正当な手続きを経て候補者として選出した洪秀柱・立法院(国会)副院長を交代させるなど混乱も重なるなど、国民党不利の状況は変わらない。

 これまでにも、馬総統が中国側に首脳会談を何回も提案してきたという噂は流れていた。
 それは「中台関係の安定を図るためにはトップ同士で話し合うのが最適であることを演出するため」とみずほ総合研究所中国調査室の伊藤信悟室長は指摘する。
 事実、馬総統は中国とのFTA(自由貿易協定)となる「両岸経済枠組み協定」(ECFA)を2010年に締結、経済面で大陸依存を強める台湾経済界とも協力しながら、大陸との関係改善を進めてきた経緯がある。

 だが、7日の会談で何が出てくるかは不透明と言わざるをえない。
 馬総統側は「今回の会談では、協定への署名や協同声明の発表は行わない」としている。
 5日に台湾で記者会見を開いて会談の意義などを説明するというが、民進党など反政府側からは「中国に国民党の肩入れを行う屈辱外交」という反発がすでに出ている。

 会談実施に中国側も応じたからには、両国に横たわるいくつかの前提条件がクリアされたのか、という疑問が湧く。
 それは、互いに政治主権を認めていない間柄であり、双方の首脳をどう呼ぶのかという呼称の問題、そして1992年に「一つの中国、各自解釈」で中台側が合意したとされる「92共識」(92年コンセンサス、92年合意)の解釈をどう行うのかという問題だ。
 特に92年コンセンサスについては、当事者である李登輝元総統などが
 「そんなものは存在しない」と否定する声がこれまでも根強く、
逆に国民党が主導してこのコンセンサスを大陸政策に利用してきた経緯があり、これも台湾内での混乱と対立を引き起こしてきた。

 習近平主席にとっても、現段階で台湾のトップと会うことは悪いことではない、という指摘が多い。
 本人も福建省書記を歴任してきたこともあり、台湾との関係改善(あるいは統一)には並々ならぬ意欲があるとされている。
 また、共産党トップとしても初の台湾との首脳会談という誰もやったことがない業績を上げることは、本人の権力固めにも有効に働く。

■「初の会談」こそ意義がある?

 ー方で、来年の台湾総統選挙で優勢が伝えられている民進党候補が当選すれば、少なくとも4年間は台湾との首脳会談を行える可能性が極端に低くなる。
 大陸に目が向いている馬総統としては、在任中に歴史的イベントをやっておいたほうがいいという判断が働いたようだ。

 先日中国が発表した第13次5カ年計画(2016~2020年)の草案の中にも、「一つの中国、92年コンセンサスの原則、中台は一つの家族である」との前提で、中台相互に開放を進めながら、台湾人民や中小企業への利益になる経済運営を行うとの文言が含まれている。
 中国側が台湾に対して強硬な姿勢を示しても、
 現在の台湾では反発が強まるばかりであることは、中国側も認識している。
 そのため、特に経済において、習近平主席はこの草案に書かれている範囲内に留まる形で発言するのではないかとの観測もある。



(c)AFPBB News AFPBB News 11月6日(金)10時14分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151106-00010004-afpbbnewsv-int

歴史的な中台首脳会談控え、台湾で抗議デモ



【11月6日 AFP】
 台湾の馬英九(Ma Ying-jeou)総統と中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は今週末、1949年の中台分断以降の冷え込んだ関係からの劇的転換となる首脳会談を行う。
 これを受け4日、台湾・台北(Taipei)で抗議デモが行われた。



ニュースソクラ 11月6日(金)10時10分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151106-00010000-socra-int

中台首脳会談が「反中感情」を刺激する

■3つのシナリオで読む中台関係

 中国の習近平国家主席と台湾の馬英九総統が7日に、シンガポールで会談する。
 台湾では、来年の総統選で台湾独立志向の野党・民主進歩党(民進党)への8年ぶりの政権交代の可能性が高まっている中だけに、会談結果に世界の注目が集まっている。
 馬氏が先走った場合には、台湾の「反中感情」に火がつき、政情が不安定になる可能性も指摘されている。
 想定される3つのシナリオで会談の行方を読んでみた。

 中国のメディアは連日、「習馬会」についての記事を掲載している。
 「習馬会」とは習近平、馬英九両人の会談を指す。
 南沙諸島の埋め立て問題で、中国が国際的批判を浴びている中だけに、
 「双方の平和と発展について意見交換するものであり、平和の勝利であり、理性の勝利だ」(政府系の人民網)
と意義を繰り返し強調している。
 
 一方で台湾の反応は微妙だ。
 1949年の分断以降初の会談を歓迎する声がある一方、「事前の説明がない」と不信感を示す意見も根強い。

 この時期に突然会談が実現したのは、与党・国民党の馬氏が中国とのパイプの太さを示し、来年の総統選の不利を跳ね返そうという狙いだろう。
 中国側も、国民党を肩入れするため会談に合意したと思われる。

 現段階では、3つのシナリオが想定される。
 1つは、中台の良好な関係を維持するという一般論だけを話し、民進党を牽制する。
 2つ目は、中国が、台湾経済をてこ入れするための、思い切った政策を打ち出す。
 3つ目は、中台の共存と、将来の統一を示唆する「平和協定」のような合意を行う。

 可能性が高いのは2だろう。
 中国は「以経促統」(経済で統一を促す)政策を取っており、馬氏もそれを受け入れてきた。
 台湾を訪れた中国人旅行者は、2008年の約24万人から、2014年は398万人に達した。
 中台直行便は2008年に就航、すでに週700便近くになっている。

 中台の貿易も拡大した。
 2013年の台湾から中国(大陸と香港)へ向けた輸出額は年々増加し、13年には全体の21%と、1位を占めている。
 2位は日本で10.8%だった。
 台湾の経済は中国抜きには語れなくなった。
 習氏は「以経促統」をさらに進める意向を表明し、交流の活発化を提案するかもしれない。
 
 万が一「平和協定」に近い内容の合意が行われれば、台湾内部で亀裂が起きるだろう。
 台湾の人たちの対中国感情の主流は「現状維持」だ。
 2014年3月に、「ひまわり学生運動」と呼ばれる大規模な学生デモが起きた。
 中国とのサービス部門での市場相互開放などを盛り込んだ貿易協定の批准を急ぐ政府に対し、反対する学生たちが立法院(国会)になだれ込み、占拠した事件だ。

 馬氏が、早いスピードで中国との経済協力を進めた結果、大量の中国人が台湾に押し寄せた。
 その結果、中国人観光客の爆買いで台湾の物価が上がり、彼らのマナーの悪さが問題になった。
 「不愉快な経済パワー」を見せつけられた台湾の人たちに、「自分たちは中国人ではなく、台湾人だ」というアイデンティティを高める結果となった。
 
 最近では中国経済減速の影響を受けて、経済成長率も鈍化している。
 特に若年層の失業率が高くなっており、馬氏の内政での失敗も手伝って、中国への警戒感をいっそう高めている。
 
 来年の台湾総統選挙では、民進党の蔡英文主席(女性)が、8月の地元テレビ局の世論調査で、支持率40%と圧倒的で当選確実な勢いだ。
 一方の国民党側は、親中国派と現状維持派が対立し、分裂の危機に陥っている。

 不利な状況を跳ね返すことができるのか、台湾を混乱に陥れるのか、日本や米国など関係国も気が気でない。



時事ドットコム (2015/11/06-15:01)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2015110600527

中台会談、賭けに出た習主席
=総統選控えて民進党に圧力-7日に歴史的対話


●.中国の習近平国家主席(写真左)、台湾の蔡英文民進党主席(写真中央)、台湾の馬英九総統(AFP=時事)

 【シンガポール時事】
 中国の習近平国家主席は6日午後、シンガポール入りし、7日午後に台湾の馬英九総統との歴史的トップ会談に臨む。
 双方は、2008年以降進展した中台関係の平和・発展の重要性を強調する方針だ。
 来年1月の台湾総統選で独立志向の強い野党・民進党の蔡英文主席が優位に立つ中、習氏が首脳会談を決めたのは
 「政権奪取後に両岸(中台)の安定を破壊すれば、
 ただでは済まない」という圧力を蔡氏陣営に掛けるため
だ。
 共産党筋は
 「習氏は焦っている。賭けに出た」
と語る。

◇開催地問題で柔軟化

 13年にインドネシア・バリ島で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議以降、中台の担当閣僚は接触を始め、南京、台北などで協議を重ねた。
 馬氏は14年11月の北京APECを利用した首脳会談を熱望したが、中国側は、台湾と対等と捉えられかねないことから、国際会議を利用した会談を拒んだ。
 しかし、中台関係筋によると、中国側はそれまでは「国際的場所」を拒否理由としたが、「国際会議」と限定したことで「第三国開催」へ柔軟なメッセージを送った。

 今年10月中旬に開いた中台閣僚会談で首脳会談が話題となった。
 今月5日に記者会見した馬氏によると、台湾側が「11月のマニラAPECで可能か」と尋ねたところ、中国側は再び断った上で、「第三国なら検討できる」と述べ、本格的検討が始まった。
 習氏はそれ以前から、11月に国交正常化25周年を迎えるシンガポールを公式訪問する予定だったが、当初から中台首脳会談をにらんだものだったかは定かではない。
 ただ、中台関係筋は「習主席にしか決められない重いものだ」と解説した。

◇「馬路線」継続迫る

 首脳会談があろうがなかろうが、台湾総統選で蔡氏の優位は揺るがない。
 しかも、
 与党・国民党候補の朱立倫主席が惨敗すれば、習氏のメンツは大きく損なわれる。
 それでも「賭け」に出たのはなぜか。

 民進党内には、蔡氏が民意を背景に圧勝すれば、習政権も民進党への政策を変え、柔軟路線に転じるとの根強い見方がある。
 しかし、中台双方が「一つの中国」の原則を認め合う「92年合意」を蔡氏が受け入れない限り、習氏は蔡氏や民進党への警戒を解かない意向だ。
 中台関係筋の間では、蔡氏が簡単に「92年合意」を認める可能性は低く、
 政権が交代すれば、馬氏が唱える首脳会談「常態化」どころか、08年に再開された中台交流窓口機関トップの会談も中断しかねないという見方が多い。
 「交流停止」も辞さないトップとしての強い覚悟を示し、蔡氏に対して「馬路線」を引き継ぐ現実的な対中政策を迫るのが習氏の狙いだ。



フジテレビ系(FNN) 11月7日(土)19時17分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20151107-00000802-fnn-int

 中台首脳会談 現地から



 中国と台湾が1949年に分断して以来、初の首脳会談が、シンガポールで行われました。
 現地から、北京支局の垣田友彦記者の解説です。

(今回の首脳会談で、中台それぞれの思惑は?)
 主に、2つあると思われる。
 1つは、2016年1月の台湾総統選挙。
 中国としては、世論調査でリードし、「独立」を掲げる民進党が政権を取るよりも、国民党にとどまってほしいのが本音。
 習主席としては、経済や民間交流を中心に、国民党政権と良好な関係を築いてきたことをアピールし、民進党を揺さぶる狙いがあるとみられる。
 一方の馬総統にも、選挙の劣勢挽回や、任期残り7カ月の中で、歴史に名を残そうとする思惑があったと思われる。
 また、もう1つは、仮に民進党が政権に就けば、最大で2016年から2024年まで、8年間続くことが予想され、習主席としては、2022年までとされる任期中に、民進党政権だと、会談の実現は難しくなるとの計算があったと思われる。

(今回の「歴史的な会談」は、今後、どういう意味合いを持つ?)
 中台の首脳会談は、双方の国際的地位や呼び方など、さまざまな理由から、これまで60年以上にわたって実現できていなかった。
 時には、中国が武力で威嚇し、緊張が高まったこともあった。
 中台は、互いの主権を認め合っていないが、今回、習主席と馬総統が「会った」というだけでも意味があり、馬総統が提案する定例化が進めば、中台関係の安定に大きくつながるといえる。



サーチナニュース 2015-11-09 13:37
http://news.searchina.net/id/1593667?page=1

習近平・馬英九会談  
見えない経緯、色濃く残る国民党の「暗黒DNA」

 中国の習近平国家主席と台湾(中華民国)の馬英九総統が7日、シンガポールで会談した。
 中国共産党との内戦に敗れた国民党が台湾に逃れてから初の「トップ会談」として注目された。
 しかし、何が起こってたのか、何が変わるのか。
 「習馬会談」は、実に奇妙な政治イベントだった。

■大陸側の思惑は、比較的簡単に見えてくる

 中国側の立場としては、「習馬会談」は比較的分かりやすい。
 2016年1月に予定されている中華民国総統選挙では、民進党候補の蔡英文同党主席が当選すると考えねばならない。
 馬英九政権が進めた中台接近政策は、後退すると考えねばならない。

 台湾を取り込み「中国統一」を政治目標とする中国としては「痛手」を最小限にしたい。
 そこで、現職の馬英九総統とのトップ会談を実現させ、「台湾の指導者と大陸の指導者が『ひとつの中国』の原則を認めた」との既成事実を作る。
 そのことで、台湾における統一推進派に「理論的支柱」を与える。
 独立志向をできるだけ抑える――。
 そういった狙いは、すぐに読み取ることができる。

■「馬英九政治」に見え隠れする国民党のDNA

 ただし、「習馬会談」は台湾にいかなる利益をもたらしたか。
この点は、実に心もとない。

 まず、「そもそも論」だ。
 馬英九政権がなぜ、ここまで支持率を落としたのか。
 政策そのものだけでなく、「政治手法」に対する嫌悪感が原因と考えてよいだろう。

 まず、国民党は20世紀初頭の結党時から、「強権体質」が強かった。
 「亡国の危機」に直面していた祖国を救うには、個人の自由を犠牲にしても「鉄の統制」が必要と考えられたからだ。
 孫文亡き後に実権を掌握した蒋介石は統制をさらに強化した。
 台湾では「日本統治時代よりもはるかに独裁的」な支配が続いた。

 台湾で人権抑圧の“根拠”となる戒厳が布告されたのは1947年、解除されたのは蒋経国総統時代の末期の1987年だった。
 蒋経国総統の死去に伴い就任した李登輝総統は民主化を断行。
 国民党も「その他の政党」と同様に、選挙で「人民の信任」を得なければ、政権を担当できなくなった。

 民主制のもとで政治に関与する者には、「説明責任」、「合意形成への努力」が求められる。
 重要な地位にある者ほど、強く求められる。
 もちろん、発表できない「機密」も多いが、肝心なのは「基本は情報公開。
 やむをえない場合には秘密」とするバランス感覚だ。

■台湾総統、2期目の「暴走」

 馬英九総統にはどうも、情報の扱いや民意を大切にする感覚が欠如しているようだ。
 台湾で問題になっていた第四原発建設(核四)については、2013年3月に「8月を目途に住民投票を行う」としたが、実施されなかった(工事は凍結)。

 中国大陸との貿易を大幅に自由化する「サービス貿易協定」では、制度上の矛盾点を突く形で立法院(国会)で強硬採決し、反発する学生らが14年3月18日から4月10日まで立法院議場を占拠する異常事態が発生した。

 政治家が自分の信念を実現すること自体は当然のことだが、手続きや民意の掌握のセンスが見られない。
 台湾の総統には強大な権限が与えられている。
 任期4年で3選は不可。
 そのため、次の選挙を考えなくてよい2期目には「暴走」の危険があるとの指摘がある。
 馬英九政権はまさに、そうなった。
 さて、「習馬会談」そのものについては改めて論じてみたい。



サーチナニュース 2015-11-09 15:13
http://news.searchina.net/id/1593681?page=1

習近平・馬英九会談  
いったい何が起こったのか? 
台湾側に目立つ「不自然」さ

 <習近平・馬英九会談  見えない経緯、色濃く残る国民党の「暗黒DNA」>
に続き、今回は「習馬会談」そのものを論じる。
 同会談の最大問題は、馬英九総統が政治的には「死に体」であるのに、台湾の未来を左右しかねない大陸指導者との会談を行ったことだ。

■いわくつきの「九二共識」、自ら課した「最低ライン」も放棄

 まず、馬総統の支持率は10%かそれ以下の状態が長期に渡って続いている。
 総統離任後の影響力も、はなはだ疑問だ。
 16年総統選では当初、立法院の洪秀柱副院長が国民党の候補者に選ばれた。馬英九総統が離任後に影響力を行使しやすい人物との見方があったが、「あまりの不人気」ぶりに、国民党でも比較的人気が高い朱立倫主席と交代させられるという「超異常事態」となった。

 馬総統はそんな中で3日、「習馬会談」を発表。
 台湾メディアの自由時報は、国民党の朱主席も、政府内の大陸に関係する部署も、事前に知らされていなかったと報じた。

 会談では、習・馬の両首脳とも「九二共識(九二コンセンサス)」の堅持を口にした。
  大陸・台湾の関係改善を主張する際に持ち出される双方の合意事項だが、実はこの「九二共識」が“いわくつき”だ。

 まず、台湾側は“合意内容”について「双方とも『1つの中国』の立場は堅持しつつ、その意味の解釈は各自で異なることを認める(一中各表)」で、大陸側は「双方とも『1つの中国』の立場を堅持する」だ。
 台湾側は「中華民国こそ中国の正統政権」と主張することで、「中華人民共和国に飲み込まれることは認めない」の立場だが、大陸側は黙殺している格好だ。

 さらに「九二共識」は、中台双方が1992年に香港における交渉の場で合意したとされるが、その存在は、2000年の総統選に民進党の陳水扁候補が勝利した直後に、国民党に所属する蘇起行政院大陸委員会主任が発言したことで知られることになった。
 ちなみに、1992年に総統職にあった李登輝氏や、92年当時に大陸との交渉を担当した責任者も、「九二共識は存在しない」と否定した。

 馬英九総統は中国大陸側との接近を進めた台湾指導者だが、大陸との適切な距離は保っていると、しばしば説明してきた。
 その1つが「九二共識」で、大陸側が「1つの中国の意味の解釈は各自で異なる」ことを認めねば、「自分は中国との会談の席につかない」と表明してきた。

 しかし7日の「習馬会談」では、大陸側どころか馬総統も「一中」は表明したが「各表」には触れなかった。

■大陸側の「ぶら下げた餌」に飛びついた可能性

 馬総統の大陸政策について「重要なブレーン」とされる亜太和平研究基金会(アジア太平洋平和研究基金会)の趙春山理事長は台湾メディアの取材に対して、馬総統は「習馬会談」での発言の予定原稿に「各表」を入れたが、「間に合わなかった」と説明。
 つまり、「大陸側の了解を得られなかったので削除」したことを認めた。

 趙理事長はさらに、双方が「刺激的」な文言は使わないことで合意したと説明。
 大陸側も「台湾独立に反対」、「(台湾海峡の)両岸は1つの中国だ」などの言い方はせず、馬総統側は「中華民国」の言葉も使わない約束だったという。

 趙理事長の説明からは、馬総統が「とにかく会談を実現」することを最優先したことがうかがえる。
 しかも、発言内容などについての交渉時間は、短かったようだ。
 馬総統は2014年に北京で開催されたAPEC首脳会議に出席して、習近平主席と会談することを望んだが、中国側から拒否されたいきさつがある。

 「台湾の指導者として初めて、大陸の指導者と会談する」ことは、馬総統にとって“悲願”だったはずだ。
 大陸側がこの時期になって馬総統との会談に応じる姿勢を示し、馬総統が「飛び乗った」とするならば、馬総統は発言内容などで「まんまとしてやられた」との見方も成立する。

 「習馬会談」終了後の記者会見で、大陸側は台湾事務弁公室の張志軍主任1人が説明を行った。
 台湾事務弁公室は中国政府で台湾政策を担当する部署で、「主任」は閣僚と同等の地位だ。
 台湾側は馬英九総統本人が説明した。
 トップ会談の終了後、片方は「部下」に説明させ、もう片方は「トップ自ら」が語るという、めずらしい光景になった。








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