2015年11月27日金曜日

信じられない速さで没落する韓国(3):韓国の言論弾圧(1)、自由な発言を遮る公権力、 事大主義で権力に媚びる司法も後進国そのもの

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JB Press 2015.11.27(金) 森 清勇
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/4537

天に唾する慰安婦問題、韓国の言論弾圧に世界も注目
事大主義で権力に媚びる司法も後進国そのもの

 「帝国の慰安婦」を上梓した韓国人の朴裕河(パク・ユハ)教授が、韓国の地検によって在宅起訴された。地検は言論・出版や学問の自由は憲法が保障しているが、著書は「学問の自由を逸脱した」としている。

 教授は慰安婦問題を感情からではなくファクトから追求した結果、日韓間だけの問題ではなく帝国という時代の申し子という考えに至り、学問的に解明しようとした。
 研究の成果として日本を免罪はしないが、同時に「韓国も変わらなければならない」という考えに至った。

 しかし、「韓国も・・・」という指摘が、韓国民や大統領の意図を忖度する地検には許せなかったようだ。
 これは権力に媚びる事大主義にも似て、李氏朝鮮以来の国民性でもある。

■自由な発言を遮る公権力

 今回の在宅起訴について、日本の全国紙は
 「自由な議論を封じ不当だ」
 「政府主張を後押し」
 「韓国の自由の危機だ」
 「歴史研究への介入憂う」
などと批判している。

 他方、韓国のメディアでは
 「学問としての主張はどこまで認められるべきか」
などと報じ、敏感に反応しているようであるが反応は様々であると読売新聞は伝えている。

 著書は一昨年出版されて以降、慰安婦問題を感情にとらわれないで冷静に、より広い視点から研究したものとして高い評価を受けてきた。
 その一方で、慰安婦たち(原告は慰安婦であるが、実際は支援団体といわれる)からは名誉棄損として告訴されている。
 しかし、起訴された朴教授の話では、原告になっている慰安婦たちであるにもかかわらず、
 「名誉棄損での告訴を知らなかった人もいた」
というように、
 「当事者である彼女たちの意思、当事者抜きに行われている」
と指摘している。

 日本を非難した慰安婦たちも、彼女らの言動が支援者団体の意向に従ってどんどん変わっていったと、慰安婦19人の証言を纏めた安秉直教授が大高未貴氏のインタビューで語っている。
 すなわち原告から離れて反日支援団体の手で誘導されていった構図が透けて見えるようである。
 朴教授の指摘で忘れてならないことは、帝国主義が慰安婦問題を作り出したとして、他の国も同様の問題を抱えていることを明らかにしたことである。
 実際、どこの軍隊が動く先々でも、犠牲になった女性がたくさんいた。

 より近時点の朝鮮戦争から現在に続く在韓米軍相手の基地村が韓国にはあり、ベトナム戦争においても米軍相手の慰安施設があった。
 最近の研究では、ホーチミン市(旧サイゴン)に韓国軍のための慰安所施設が存在した文書も発掘され、週刊誌記者らが現地で確認もしている。

 そうした事実を肯定するならば、韓国や米国などにおける日本を貶める慰安婦像や慰安婦碑の設置などは、記載内容ともども間違った行動であると言える。
 しかし、日本非難を続けたい韓国(特に反日団体)は、自国の臭いものにはふたを強いていると言われても致し方ないであろう。

■現在の慰安婦にこそ光を

 在韓米軍周辺の慰安婦の状況については、金貴玉(キム・ギオク)教授が韓国陸軍本部の公文書で見つけた資料で明確になっている。
 1977年作成文書には朴正煕元大統領のサインもあるところから、基地村は国の直接管理であったことが分かる。
 金氏が見つけた公文書「後方戦史(1956年)」によると、1952年に4つの慰安婦小隊がソウルなどで編成され、総勢79人の慰安婦が、月平均延1万6000人を相手にし、年間20万4560人の兵士を慰安したと記録している。
 国が管理していた全体像では、62か所で9935人の慰安婦が勤務していたとなっている。
 金氏は、
 「同じ慰安婦問題なのに、なぜ韓国軍による朝鮮戦争での慰安婦問題とその被害者たちを無視し、誰も問題提起しないのか」
と疑問を持ち、
 「自国の問題にも同じ基準を適用すべきだ」
という態度を見せた。
 正論であろう。

 ブロガーであるシンシアリーの『韓国人による恥韓論』によると、朝鮮戦争に参加し、今は退役した軍人の回顧録などに、
 「兵士たちに褒賞として(慰安所を利用するための)チケットを配った」
 「我が中隊にも6人の慰安婦が割り当てられた」
 「慰安婦は第5種補給品(実際の補給品は4種まで)」
などの記録があり、
 「慰安婦なんてそう珍しいものではなかった」
と読み取れると書いている。

 同書には金氏を取材した社会研究コミュニティーの話として、
 「韓国軍の恥部に触れたこの論文はすぐに歴史の裏舞台に片づけられた。
 韓国軍慰安婦関連資料の閲覧は禁止され、メディアは約束でもしたかのように沈黙した。
 大学からは『気をつけたほうがいい』という連絡がきた」
と書かれている。
 また
 「金氏には、『日本軍慰安婦問題とつなげてはいけない』と、有・無言の圧力が加えられた」
とも書いている。

 今年9月、朴槿恵大統領が訪米した折、在米ベトナム人団体がワシントンで記者会見し、ベトナム戦争時に韓国兵から性的暴行を受けたベトナム人被害女性たちを代表して大統領に謝罪と賠償を求めたことを一部新聞が報道した。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙では意見広告が出された。
 韓国兵による被害者は数千人と見積もられ、生存者は約800人とも言われている。

 こうした自国の悪行には目をつむり、日本だけを糾弾し続けるには、『帝国の慰安婦』は都合が悪いに違いない。
 しかし、丹念な調査や資料に基づく学術研究を、国家の都合で禁書に指定し、著者を名誉棄損で起訴するのは、日本と価値観を異にし、もはや法治国家とは言い難いのではなかろうか。

■「親日的」言動はいつも問題化

 サッカーの日韓共催によるワールドカップが行われた直後の韓国を訪問した。
 韓国料理を味わい、慶州などの世界遺産を見て回り、ソウルでは買い物を楽しんだ。
 そうした和やかな数日が過ぎたある時、親切で親しみやすかった韓国人ガイドに『「親日派」のための弁明』を著した金完燮(キム・ワンソプ)氏のことを聞こうとした。
 直前に彼が拘束され、書籍は韓国に悪影響を与えるということで「有害図書」に指定されたというニュースがあったからである。
 ところが、金完燮の名前を出した途端に表情が変わり、嫌な顔をされ、それ以後の質問などできなくなってしまった。

 ツアーに関係ない個人的な質問で一行に悪影響を与えてはいけないと、当方がそれ以上の質問を控えたこともあるが、私にとっては爾後の旅は空疎なものになった。
 金氏はソウル大学を卒業後、雑誌記者を経て、『娼婦論』を書いてベストセラー作家になった。
 その直後オーストラリアに移住し、2年間暮らす。韓国にいた間は教育の効果があって「強い反日感情」を持ち、阪神淡路大震災後には「日本の没落」をインターネットの掲示板に乗せたりしたという。

 しかし、オーストラリアに住み、グアムなどに行き来しているうちに「日本の朝鮮支配は結果的に良かった」という文書を書くまでに思想を転換する柔軟性を持ち合わせていた。
 そうした集大成が『「親日派」・・・』である。
 韓国世論や金氏を知る一助にもなるので、『娼婦論』に一寸触れておきたい。
 著者は書きたいことを書かないでは済まない性格だと自分から述べているように、実体験も踏まえたかなり実直、かつ際どい内容である。

 「セックスについて、いまだに保守的傾向の強い」韓国で、「忍び難い非難と苦痛に見舞われるのではないか」と心配し、ためらいながら、他方で
 「インターネットの裏でこうした問題(セックス関係)について意見を述べ、多くの人たちから反応を得ることができ、新しい知識を学び整理することができた」
 「自信と誇りを覚えながら」
上梓した著作でもあったという。

 章の細目には
 「セックスは人類発展の原動力」
 「性の解放は大きな経済効果を生み出す」
 「すべての女性は娼婦である」
 「売春も立派な職業である」
などがある。

 主婦や女子大生たちが怒るのを覚悟で、
 「大多数の韓国の主婦は、事実上(主人に仕える)専属娼婦」
であり、
 「結婚を夢見る女子大生たち」は「清涼里(日本の吉原)の娼婦と本質的に同格」であると主張する。
 「あとがき」の副題には
 「すべての女性たちよ、娼婦魂を持て!」
とあり、これが著者の言いたかった一言のようである。

 日韓関係でも本当のことを言いたくて書いた『「親日派」・・・』であったが、二匹目のドジョウはいなかったどころか、大蛇が出てきてしまったようだ。

■本当の思いが言えない

 ちなみに、金氏は日本を訴えてきた慰安婦たちが朝鮮人慰安婦を代表する証言をしてきたとは見ていない。
 慰安婦の中には大金を稼ぎ、短期間で莫大な財産を築いたり、良い軍人と出合い結婚した慰安婦もいたからである。
 そこで、慰安婦問題の解決には、統計学で言う標本母集団の誤謬として、最も不当な待遇を受けた慰安婦だけがカミングアウトしたという視点が必要だとも主張する。

 その証の一端でもあろうか、秦郁彦氏の試算(『慰安婦と戦場の性』による)では、約2万人いたとみられる慰安婦の4割である約8000人が日本人で、約4000人が朝鮮人である。
 残り8000人は中国人やオランダ人慰安婦などである。
 この約2万人の中から、わずかな韓国人慰安婦だけが問題提起したのである。

 また、金氏は日本の敗戦時に慰安婦組織を持たなかった半島では、進駐したソ連軍と米軍による多数の強姦事件が起きたことを例示しながら、若者集団である軍隊の近傍に慰安婦組織を準備するのは、一般子女などへの被害を抑えることになり、現代の国家にとっては望ましいアイディアであるとも述べている。

 なにも、これは半島に限ったことではない。
 先述したように、ベトナム戦争では韓国軍兵士によって多くのベトナム女性が強姦され、こうして生まれたライダイハンが数万人いるとも言われている。
 こうした慰安婦問題の全体像を示したのが朴教授の『帝国の慰安婦』ではないだろうか。
 軍隊の存在が合法的であるならば、それによる犯罪を低減する方策を編み出すことも為政者の責務という視点も欠かすことができない。

 金氏の『娼婦論』がベストセラーになったのは、人間と性、軍隊と性、女性と性などに正面から向き合った論考だからではなかっただろうか。
 ざっくり言って、青年で家庭を持てばいつでも性生活ができる。
 しかし、軍隊はそうはいかない。
 ほとんどが人里離れた山野などで何週間も何カ月も、時には何年も行動する。
 しかもそれは国家の要請がそうさせるのである。

 韓国では本当のことを言おうにも言えない雰囲気にますますなりつつある。
 研究の成果としての真実を言ったばかりに職域を追われる被害者も出ている。
 経済史学会や古文書学会の会長を務めた著名な学者までが慰安婦に関わる発言で、跪いて謝罪させられる目をそらしたくなるような光景もある。

 加藤達也産経新聞ソウル支局長が名誉棄損で告訴された時、それをおかしいと思う韓国人有識者もたくさんいた。
 韓国を除く多くの国や国際機関などからも疑問の声が上がった。

 「SAPIO」誌が、日本でも名前を知られている19人に加藤氏の問題で取材を申し込んでいる。
 そのうち13人は「喋ったら生きていけない」と断られたことを明かしている(同誌2014年10月号)。
 結局、語ってくれたのは帰化した教授や匿名のブロガーなど6人でしかなかった。
 先に述べた大高氏のインタビューを受けた安教授は、後に大高氏の記事に対して「捏造された」と前言を否定している。

 教授職を剥奪され、あるいは大学を追われ、作家は脅迫され不買運動に巻き込まれたりする恐怖から、本当のことが言えない。
 いったん喋っても批判を受けて撤回せざるを得ないような状況が今日の韓国である。

■アンタッチャブルの大統領か

 セウォル号が沈没してはや1年半が過ぎた。
 事故の陣頭指揮に当たらなければならない大統領が、肝心の7時間行方不明であった。
 大統領は公人であるばかりか、当時は非常時である。
 被害者救出のために、万全の体制を取らなければならない時である。
 その大統領が7時間も所在不明であったのだ。

 ましてや、転覆した船に乗っていたのは300人余の将来を背負う高校生である。
 一刻も早くあらゆる手段、方法で国家的、あるいは国際的支援を得て対処すべき事案である。
 日本の新聞記者以上に韓国国民が関心を持つべき事項ではなかっただろうか。

 日本に対する積年の恨があり、また慰安婦問題で執拗に韓国を追及してきた産経新聞に対する鬱憤もあったのかもしれない。
 しかし、そのことと、韓国人自身が自分たちの言論の自由を犯されているという認識は別ではないだろうか。

 日本では首相の動きが分単位で明らかにされている。その視点から大統領の7時間に関心を持ち、日本人に知らせるべく、韓国紙や韓国証券街などで語られていた情報をもとに支局長は日本人向けに書いたのである。
 大統領の名誉を傷つける目的ではなく、あくまでも日本的思考で空白の時間を日本人に知らせようとしたのである。
 それが名誉棄損に該当し、長い期間拘束され、揚句裁判になっているわけで、心外という以外になかろう。
 しかも、拘束はしばしば延長され、また裁判も延び延びになり、いまだに結審していない。
 それどころか、肝心の大統領の7時間の行動がいまだに明かされていない。

 野党の突き上げで、ようやく特別調査委員会が調査を行うことが決まったようであるが、
 「大統領は憲法上、免責特権を有しており、大統領への調査は認められる範囲を超えている」
と与党系議員は語っており、真相究明は期待できそうもない。

 これでは、被災した当人も家族も浮かばれないであろう。

■おわりに

 呉善花氏によると、思想的弾圧や政治的理由などで李承晩政権から盧泰愚政権半ばまでに約5000人が亡命したが、その後も絶えることなく続き、21世紀に入って以降の亡命申請者は毎年20人台(2000~2005年)であったが、2006年には48人に急増したそうである。

 亡命でなく兵役拒否などで韓国籍を離脱した者は、2004年1407人、2005年2941人と倍増である。
 呉氏はこれらを「精神的亡命者」というが、若者たちの大部分は前職・現職の高位公職者、学界・政界・財界の高位層の子息たちであり、大半が国立・私立名門校の大学生で、一般よりよほど恵まれた環境下で成長した者たちだという。

 2013年の国政監査(韓国)が指摘したところでは、2011~2013年9月の間に国籍喪失・放棄者が51357人、うち25326人(約49%)が米国籍を取得したと述べる。
 2000年代後半に入ってからさらに増え、2010年代で年間2万人くらいの国籍離脱者が出ているということであろう。

 言論の自由などを求めて韓国を脱出した先で、生まれた国を思う心も捨てられず、海外での反日活動などでは祖国を支援する気持ちに同化して、無責任な言論を吐き散らされてはたまらない。



レコードチャイナ 配信日時:2015年11月27日(金) 22時40分
http://www.recordchina.co.jp/a124031.html

村山元首相ら54人、
「帝国の慰安婦」著書の起訴に抗議声明
=韓国ネット「韓国も日本と変わらない」
「慰安婦問題を諦める時…」

 2015年11月26日、韓国・東亜日報によると、韓国検察が旧日本軍の慰安婦問題を扱った「帝国の慰安婦」の著者である韓国世宗大学日本語日本文学科の朴裕河(パク・ユハ)教授を名誉棄損の罪で起訴した問題で、日本のメディアや学界、文芸、政界などの有志が抗議声明を発表した。

 元朝日新聞主筆の若宮啓文氏や東京大学名誉教授の上野千鶴子氏らは同日、東京都内で記者会見を開き、
 「検察という公権力が特定の歴史観に基づいて学問の自由を圧迫している」
と主張する声明文を発表した。
 声明には河野洋平元官房長官や村山富市元首相ら54人が名前を連ねている。

 声明は
 「言論に対しては言論で対抗しなければならず、
 学問の場に公権力が足を踏み入れてはならない」
と主張。
 また、
 「日韓が慰安婦問題解決の糸口を模索する中、朴教授の起訴が両国民の感情を刺激し、問題打開を阻害する原因とならないか心配だ」
と指摘している。

 朴教授は同書で、慰安婦を「自発的な売春婦」などと描写した。
 これに対し、ソウル東部地検は19日、「虚偽の事実を本に記載し、被害者らの名誉を傷付けた」として、朴教授を在宅起訴した。

これについて、韓国のネットユーザーはさまざまなコメントを寄せている。

「彼らは日本で慰安婦問題を解決しようと主張し、『親韓派』と批判されてきた人たちだよね?
 そんなことをしたら、『間違っていたのは韓国の方だった』と日本国民が勘違いしてしまわないだろうか?」
「慰安婦証言を報じた日本の記者が日本の右翼団体から強く批判されていたが、朴教授は慰安婦問題について新しい解釈をしたという理由で起訴された。
 慰安婦に関して少しでも人と違う考えをしたら批判されるなんて、韓国も日本と変わらない」

「安倍首相ではなく、河野元官房長官と村山元首相が加わっているの?」
「きっとこのニュースは世界中に広まり、韓国は世界中から批判されるだろう」
「外国のことに口を出すな。
 そんなに朴教授が心配なら、日本に連れて行って、大学教授の職を与えればいい」

「韓国がおかしくなっている。
 そろそろ慰安婦問題を諦める時ではないだろうか?
 慰安婦問題を利用して金を稼ぐ団体がとても多く、問題が解決しないことを願っているようだ」
「虚偽の疑いがあるなら調査を受けるべき。
 表現の自由を過度に守ると、とんでもない歴史がつくられることになる」



ハンギョレ新聞 11月29日(日)11時45分配信
http://www.dailymotion.com/video/x1y8lxm_n-d-jiiji-1_shortfilms

[寄稿] 朴槿恵時代のイデオロギー

 朴槿恵(パク・クネ)は国連まで行ってセマウル運動のような維新時期の経済・イデオロギー的官製運動を称賛した。
  だが「朴槿恵時代」の極右が育てようとしている人間像や推進しようとしている理念は、維新時期と似てはいるものの異なる点が明確に見えたりもする。

 今日、大韓民国の支配層は“民族”の代わりに“資本”を中心に思考して
 投資価値のあることだけに使える「経済動物型人間」を新しい模範人格として掲げている。

 この世の全てのものは皆変わる。
 韓国での左右イデオロギーの含意を含めてだ。
 例えば、1980年代の左派民族主義者が“統一”を要求したとすれば、階級主義者の主要要求は“財閥解体”だった。
 この頃ではそのような要求を歴史の本以外のどこで見ることができるか?
  “統一”の場所を“統一指向的対北朝鮮政策”が占め、財閥に対してはせいぜい“労働者の経営参加”を要求する左派知識人をたまに見かける程度だ。
 浮遊した大韓民国でそれだけ左派が馴致され穏健になったということだ。
 左派と同様に極右派も変わった。
 ただし、極右派は“穏健になった”というよりは、個々人を国家と資本に隷属させる方式を時代的状況に合わせて変えたと言える。

 維新時代は周辺部型の類似ファシズム時代だった。
 ファシズムは内面化されている積極的動員論理であるために、維新時代が要求した模範的人間像も“滅私奉公”だった。
 祖国近代化の戦士は、一方では“滅共”を目的として戦い、また他方では多くの純良な国民と総和団結し“建設”にまい進しなければならなかった。
  「君も私も早く起きてセマウル(新しい村)を作ろう」という産業化戦士を忙しく動かすエネルギーは、“豊かに暮らせる”世の中に対する期待だけでなく、日本軍国主義のイデオロギーをそっくり継承した強力な種族的民族主義でもあった。

 「白頭山(ペクトゥサン)の青い精気/この地を守護し/漢拏山(ハルラサン)の高い気性/民族を守って来た/ムクゲの花咲く悠久のわが歴史/熱心に生きて来た賢明なわが民族」(健全歌謡『わが祖国』)

 このような民族主義は、統合、差別化、そして排除の論理を同時に含んでいた。 “アカ”は“わが民族”から事実上除外され、ひとり拷問室で死んでいったり、連座制の適用対象になって生涯を監視と差別の中で半ば“非国民”生活を送らなければならなかったし、女性は“国民”ではあったが明確に二等国民に過ぎなかった。
 軍が「ひっ捕えろ金日成、打ちのめそう共産党、打ち破ろう北朝鮮軍、成し遂げよう維新課題!!!」のようなスローガンを叫びまくり、しっかり精神武装した、そしてある程度の学歴を有する大韓の健全な男児なら、一旦入社した会社で大きな事故でもない限り、勤労し続けるのが“普通”でもあった。
 民族主義や軍事主義とともに、“会社は家族”イデオロギーも朴正煕政権が帝国主義時期の日本からそのまま継承していた。

 この上なく親孝行だからか、あるいは保守層結集のための戦略の一環なのか、朴槿恵は国連まで行ってセマウル運動のような維新時期の経済・イデオロギー的官製運動を称賛した。
 ところが朴槿恵政権の政策や企業家の話、保守マスコミの論調などを総合してみれば、“朴槿恵時代”の極右が育てようとしている人間像や推進しようとしている理念は維新時期と似ていながらも異なる点が明確に見えもする。先ずその差異は何か?

 第一に、維新時代も今も大韓民国の非公式的国是は社会進化論的“競争”論理だ。
 ところが、その時は“競争”の単位が国家や企業だったのに対し、“朴槿恵時代”の競争単位は原子化されて孤立した個人だ。
 国家がその時も今も個人に対して責任を負わないことは同じだが、企業には今“会社は家族”ではなく使い捨ての“人材”だけが必要な時代になり、一人一人が互いに競争する“小さな1人企業”のように生きなければならない。
 維新時代の韓国人が、大韓ニュースで知らされる国家輸出実績に皆一斉に歓声を上げなければならなかった集合的主体だとすれば、今日の大韓民国の子供たちは塾に行って次のような勧告文を見ている。

 「新学期が始まったので
 /君は友情というもっともらしい名分で
 /友達と付き合う/時間が多くなる
 /そのたびに
 /君が計画した勉強は
 /毎日毎日後ろ送りにされるでしょう
 /ところでどうするのだろう?
 /入学試験日は後送りはできないのに」

 “友達”さえも競争者として認識しなければならない社会では、“国民”は二次的であり、競争的主体としての個人は一次的だ。
 1970年代には外貨の搬出は犯罪だったが、今日では投資移民でもして“先進国”で老後を過ごすことが極楽往生や天国行のように見なされる。
 政府は(事実、盧武鉉(ノ・ムヒョン)時期から引き続き)海外住居用不動産の購買を目的に外貨搬出を許容すると同時に、海外就労斡旋を青年失業対策と広報し、韓国を“ヘル(地獄)朝鮮”と呼ぶ若者たちも移民以外に他の解決策を発見できずにいる。
 政府と“ヘル朝鮮”に絶望した若者たちの指向はそれぞれ違っても、移民という極めて“個人的な”解決法を推奨するなど、個人競争のイデオロギーを当然視する次元では両者が妙に共通している。
 結局“祖国近代化”から出発した韓国の極右イデオロギーは各自生き残り・適者生存理念に変形されながら若年層の間で基盤の獲得を図っている。

 第二に、民族主義は相当部分が不要になり廃棄された。
 大韓民国が模範的新自由主義国になっている状況では当然のことだ。
 外国人投資家が国家を相手に提訴できる時代の現実を“白頭山の精気”を持って合理化できようか?
 民族主義の廃棄のもう一つの原因は、現支配層の願いが“民族”とは関係ないという事実をどうにかして大衆に正当化しなければならないという点だ。
 朴正煕自身を含めて大韓民国の官僚機構上部の人的構成は概して総督府と日本軍を継承した。
 例えば初期の韓国軍の状況を見れば、1945年以前の軍事経歴者で韓国軍の将軍にまで昇進した人のうち270人が日本軍と満州軍の出身であり、わずか32人のみが光復軍の出身だった。
 官僚機構だけか?
 1938年に創業した今日のサムスンの前身である三星商会は、太平洋戦争時期に日本軍の軍納入業者ではなかったか?
 朴正煕時期に政権が報勲処を通じて貧困層になっていたかつての独立運動家の一部に支援をして、左派でない一部の民族主義指向の独立運動指導者に勲章を追叙するなど、表向きの民族主義的“色彩”を適切に誇示して、韓国支配層の植民地的起源に対する批判世論を一定程度しずめることができたのは、報道機関と出版が統制されている状況で“親日派問題”に対する話を自由に出来なかったためだ。
 ところが韓国“主流”の生きているアイコンである白善ヨプ(ヨプは火偏に華)将軍が抗日運動家を“討伐”した間島(カンド)特設隊出身という事実を誰もが簡単に知ることが出来て討論できる今日に至っては、大韓民国の支配層として歴史を見る基本視座自体を本質的に変える必要が生じた。
  朴槿恵の歴史教科書国定化はまさにこの作業を意味する。
 新しい歴史教科書は“植民地近代化論”を基本に書かれ、朝鮮人が日本軍に入隊して将校になったことが、日本軍と取引して利潤を追求したことが“我が国の発展のための愛国”という風に叙述されれば、“親日派”はまさしく“愛国者”となって、大韓民国支配層の起源が完ぺきに正当化されるだろう。

 上で見たように、朴槿恵に代表される今日の大韓民国支配層は、かつての“民族”の代わりに“資本”を中心に思考して、ひたすら自分だけの生存と成功のためだけに寝ても覚めても奮闘し、自身の時間までも幼時から全て“お金”に換算して投資価値のあることにだけ使える経済動物型人間を新しい模範人格として掲げる。
 維新時期との差異も明確に見えるが、この“新型韓国人”も国家権力への服従が最高の徳性にならなければならないという点から継承性もまた明確に感じられる。
 “民族”は廃棄されるが、“大韓民国の繁栄”を守るという軍での服務を“真の男”になるための必須不可欠の通過儀礼として扱う軍事主義的思考には変わりがなく、“アカ”に対する維新時期のファシスト的排除も今ますます復活している。
 大韓民国の支配者たちは、経済本位の個人生存論理と軍事主義、そして従順主義の複合体が彼らの富と権力の永遠の支えになると信じているようだ。
  ところが、もう遠からず襲ってくる経済危機の嵐が、多数の生存の最後の希望を奪い、十万人ではなく百万人が広場に集まることになれば、彼らの誤算がどれほど大きかったのか、彼ら自身が知ることになるだろう…。

パク・ノジャ ノルウェーオスロ大教授・韓国学(お問い合わせ japan@hani.co.kr )



毎日新聞 11月29日(日)21時43分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151129-00000056-mai-int

<帝国の慰安婦>
朴教授「自発的な売春婦とは書いていない」

■「名誉毀損」で起訴に「暗たんたる気持ちになった」

 【慰安婦問題に関する著書「帝国の慰安婦」で元慰安婦の名誉を傷つけたとして在宅起訴された韓国・世宗(セジョン)大の朴裕河(パク・ユハ)教授が29日、毎日新聞のインタビューに応じた。
 朴教授は起訴について「予想外だった」と話した。
 在宅起訴に対しては、村山富市元首相ら日米の政治家や有識者54人が26日に抗議声明を発表しているが、韓国でも12月2日に同様の声明を支援者が発表する予定だという。

 朴氏は著書で、元慰安婦の証言集を基に、日本軍と朝鮮人慰安婦の関係について「同志的関係にあった」などと記述。
 そのうえで、慰安婦問題は日本の帝国主義や植民地支配に起因すると分析した。

 これに対し元慰安婦らは昨年6月、
 「日本軍による強制動員、強制連行を否定している」
などと反発して刑事告訴。
 ソウル東部地検は今月18日、朴氏が慰安婦を「自発的な売春婦」であるかのように描いて
 「虚偽の事実で慰安婦の名誉を毀損(きそん)した」
と断じ、
 「学問の自由を逸脱した」として在宅起訴した

 朴氏はインタビューで、
 「自発的売春という言葉は使っていないし、(自発的か否かが)重要なのではない」
と述べ、慰安婦という制度自体を問題視したのだと反論。
 元慰安婦が反発した背景には、著書の内容を不十分な解釈で元慰安婦に伝えた人たちの存在があるとの考えを示した。

 また、検察が自身の主張に一定の理解を示していると認識していたため、起訴を受けて「暗たんたる気持ちになった」という。

 朴氏は著書で、朝鮮人慰安婦の動員は必ずしも強制連行だけではなかったという見方も示した。
 この点については「それを知っていても、公に言うのは問題だという人もいる」と話し、慰安婦問題に対する幅広い見解を許さない韓国の社会風土があると指摘。
 歴史問題では極端で一方的な意見の押しつけ合いになってしまう現状から脱却し、
 自由な意見や行動が許される空間を広げることが大切だ
という考えを示した。

 12月2日の声明は、起訴について「妥当とは思えない」と表明。
 客観的状況に基づいて記述した著書に対する検察の理解不足だと指摘し、「司法の賢明な判断を促す」内容だという。
 進歩系の知識人らが中心で、在米韓国人なども含まれる見込み。

 朴氏は同名の日本語版書籍を出版しているが、内容は一部異なる。
 日本語版は今月、アジア太平洋地域の政治・経済・文化などに関する優れた本に贈られる「アジア・太平洋賞」特別賞を受賞した。


毎日新聞 11月29日(日)21時52分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151129-00000057-mai-int

<帝国の慰安婦>
朴教授「論点多岐、議論の場は裁判でない」


●朴裕河教授=東京都千代田区で2014年12月、藤井達也撮影

■朴教授在宅起訴 日本の声明後、韓国でも波紋拡大

 著書「帝国の慰安婦」で元慰安婦の名誉を毀損(きそん)したとして在宅起訴された韓国・世宗(セジョン)大学の朴裕河(パク・ユハ)教授は、毎日新聞とのインタビューで、村山富市元首相らが26日に発表した在宅起訴への抗議声明について「(韓国に)ショックを与えたように感じる」と述べた。
 在宅起訴の時点ではほとんど報じなかった韓国メディアも、抗議声明については「戸惑い」を見せるコラムを掲載するなどしている。

 韓国の法律専門家の間でも当初から、
 「そもそも歴史の解釈を真実かどうかなど判断できるのか」
と、今回の起訴に疑問を呈する声があった。
 韓国メディアの多くは起訴を報じなかったが、ある主要紙の政治記者が
 「学術書まで司法によって叩くのでは、韓国社会の狭量さを示してしまう」
とインターネット上で指摘するなど、疑問の声が徐々に上がり始めている。

 朴教授が指摘するように、こうした見方や戸惑いは特に、抗議声明が出たことで強まっているようだ。
 声明に賛同したのが、村山元首相をはじめ、「河野談話」を出した河野洋平元衆院議長や朝日新聞の若宮啓文元主筆など、韓国では「良心的」と見られている有識者が多かったためだ。

 国民日報(電子版)は
 「この本が韓国や日本で誤読され、悪用される可能性があるのは明らかであるように見える。
 しかし、誤読と悪用まで著者の責任ではない。
 今回の起訴は歴史を(主流の理解と)違う形で話す自由が韓国にあるのかということを問いかけている」
と主張するコラムを掲載した。

 朝鮮日報の東京特派員のコラムも、声明に賛同した日本の有識者が
 「『合理的な日本』『良心的な日本』を代表する人々」であることに「困惑した」
と吐露した。

 朴教授は
 「(著書を巡る議論は)論点が多岐にわたるもので、きちんと話せるのは(刑事裁判の)法的な空間ではない」
と強調した。

 ただ、韓国では、慰安婦問題を巡る議論が日本以上に敏感な問題となっている。
 こうした疑念の声が裁判にどの程度の影響を与えるかは不透明だ。



レコードチャイナ 配信日時:2015年12月3日(木) 8時56分
http://www.recordchina.co.jp/a124381.html

「帝国の慰安婦」著者の起訴、
韓国の学者ら190人が反対の声明
「学術的な議論が司法判断の対象になるべきではない」―仏メディア

 2015年12月2日、AFP通信によると、慰安婦問題に関する著書「帝国の慰安婦」で元慰安婦の名誉を傷つけたとして著者である世宗(セジョン)大学の朴裕河(パク・ユハ)教授が在宅起訴されたことを受け、韓国国内の学者らが棄却を求める声明を発表した。

 2013年に出版された「帝国の慰安婦」では、第二次世界大戦時の慰安婦について、自発的に慰安婦となった女性がいることや、日本兵との間に絆のような関係を結ぶ女性がいたことなどが書かれている。
 韓国の検察当局は同書は元慰安婦の名誉を傷つけるものであるとして、著者の朴教授を在宅起訴した。
 朴教授は2日に記者会見し、元慰安婦の名誉を傷つける意図はなかったと強調し、検察側は起訴するために、同書の中から文脈を無視した引用を行っていると批判した。
 また、韓国国内の学者やジャーナリストら190人が、学術的な議論が司法判断の対象になるべきではないと述べ、朴教授の起訴に反対する声明を発表した。


レコードチャイナ 配信日時:2015年12月3日(木) 11時34分
http://www.recordchina.co.jp/a124398.html

「朴大統領の名誉傷つけた」相次ぐ起訴に、
韓国ネットである書き込みが流行

 2015年12月2日、韓国・京郷新聞によると、大統領や政府に批判的な内容を伝える韓国のインターネット掲示板などで、
 「裁判長、私は何も言ってません」
といった書き込みが流行している。
 権力批判が名誉毀損(きそん)や侮辱に当たるとして告発・起訴される例が相次ぐ事態に、ネットユーザーらが皮肉を込めてこうした書き込みをしているのだ。
 
 記事によると、朴槿恵(パク・クネ)大統領を批判、その名誉を傷つけたとして個人や団体が起訴された事例は、昨年以降すでに5件を数える。
 個人では、セウォル号事件当日の朴大統領の行動についてコラムで疑問を提起した、産経新聞前ソウル支局長・加藤達也氏や、
 朴大統領を批判するビラをまいた韓国人男性など。
 団体では、大統領秘書室への疑惑を報じた放送局CBSが、損害賠償訴訟を提起された。

 こうした事態に、ネットユーザーらは「自分は何も言っていない」との表現で自衛の姿勢を見せ始めたが、市民のみならずメディアも口を閉ざしかねないと、一部で憂慮の声が上がっている。



BBCニュース  2015.12.4 視聴時間 02:27
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45456

韓国政府はなぜ歴史教科書を書き換えようと 



学校の教科書が街頭デモの対象になることはあまりないが、韓国の首都ソウルでは先月、歴史の国定教科書をつくるという政府の計画が論議を呼び、デモ隊が路上に繰り出した。
韓国の人々にとって、歴史は学問の世界に閉じ込められた無味乾燥な話題ではない。
感情を激しく揺さぶられるテーマなのだ。
朴政権はなぜ歴史教科書を国定化しようとしているのか。
そこには現大統領の父親の過去や朝鮮戦争に関する特定の思いが絡んでいるようだ。
BBCソウル特派員のスティーブン・エバンズ記者がリポートする。



レコードチャイナ 配信日時:2015年12月7日(月) 11時57分
http://www.recordchina.co.jp/a124600.html 

「韓国よ、大丈夫か?」
世界の主要メディアが相次ぎ懸念報道

 2015年12月5日、韓国・ノーカットニュースによると、朴槿恵(パク・クネ)政権が進める歴史教科書国定化の動きや、そうした政策に反対する市民運動への国の対応について、日中米英などのメディアが注目し相次いで懸念を示している。

 先月、ソウル中心部で起こった政権に反対するデモをめぐり、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのソウル支局長は
 「韓国の大統領が自国のデモ隊を『イスラム国(IS)』に例えた」
との驚きをネットにつづり、米誌ザ・ネーションは
 「独裁者の娘が労働者の弾圧に乗り出した」
と報じた。

 この他にも、
 「海外からの韓国の評判を左右するリスクは経済でなく政治だ」(米ニューヨーク・タイムズ)、
 「このところの韓国政府の動きは旧日本軍の蛮行を無視しようとする日本の保守派のようだ」(英BBC)、
 「国定歴史教科書は、過去の軍事クーデターを美化し、若者の多様な歴史解釈を妨げる」(中国・新華社)
と、ことに韓国の政権に対する海外メディアの見方は厳しい。
 ノーカットニュースはさらに、朝日新聞、英紙フィナンシャル・タイムズなどの「懸念」報道を取り上げた。



ハンギョレ新聞 12月9日(水)6時31分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151209-00022735-hankyoreh-kr

[コラム]言論を封じ込める独裁国家


●米週刊誌『ザ・ネーション』に報道された記事=ザ・ネーション画面キャプチャー

 米国の週刊誌『ザ・ネーション』が朴槿恵(パク・クネ)大統領を批判する記事(「独裁者の娘が労働者を弾圧する」)を掲載したことについて、ニューヨークの韓国総領事館が抗議を行ったというニュースを聞いて、同じような状況を自分が経験したことを思い出した。

 週刊誌『ハンギョレ21』の編集長を務めていた2008年、タイ王室に関する記事を載せた。
 いくつかの内容を紹介したい。
 タイは立憲君主制というが、王室の実権が非常に大きい。
 王の妹である姫が死亡すると、半月間にわたる国葬と100日間の哀悼期間が続き、10カ月後に900万ドルの予算をかけ葬儀を行う。
 王室冒とく罪というのがあって、映画上映前に王室賛美歌が流れてくる際、起立しなければ処罰される。
 王室に対する批判は、3~15年の懲役刑に処される。
 外国人も例外ではない。
 イギリスBBCのバンコク支局長が討論会で王室を冒とくしたとして告発され、大変な目に遭った。

 記事が出てから、駐韓タイ大使館関係者が訪ねてきた。
 記事に書かれた事実については何も言われなかった。
 ただ、「なぜこのような記事を書くのか」と言われた記憶がある。
 タイをよく知らなかったが、その記事を通じてなんだか奇妙な国だと感じていたところ、外交官の抗議訪問を受けて確信した。
 「ああ、この国は独裁国家だ」。
 遠い国の週刊誌に掲載された王室に対する批判記事に、こんな敏感な反応をするのだから、個人崇拝と恐怖政治がどれほどのものかは容易に想像できる。

 ところが、韓国がその二の舞になったわけだから、恥ずかしくてならない。
 ニューヨーク総領事館は「語気を荒げて抗議した」という点は否定しているが、何の役にも立たない。
 当時のタイ外交官も丁重だったが、私は「本当に情けない」と思っただけだった。
 ザ・ネーションの編集長と記者は韓国外交官の異例の反応を見て、自分の記事に一層確信を持ったに違いない。

 さらに恥ずかしいことは記事に描かれたタイの“非現実的な現実”が、今、この地でそのまま繰り広げられているという点にある。
 朴大統領を非難するビラをばら撒いただけで、7カ月間も拘束状態で裁判を受けているパク・ソンス氏の苦難は、王室冒とく罪をはるかに超えるものだ
 (大統領をゴクリにたとえた医師が大統領侮辱罪で起訴されたトルコも、世界中から失笑を買っているものの、大統領側が直接告訴したにもかかわらず、在宅裁判だそうだ。
 一方、朴大統領の告訴もなかったのに、警察と検察、裁判所が“空気を読んで”逮捕し拘束する韓国の状況は、笑いではなく、恐怖の対象だ)。

 それだけではない。
 自分が運営する家具工房の窓に朴大統領を「独裁者の娘」と表現したポスターを貼ったファン氏は、警察と刑事10人に付きまとわれた。
 警察が「独裁者の娘であるという根拠を示せ」と求めたのは笑い飛ばすとしても、自分の部屋の窓にポスター1枚張っただけで、警察がどっと押し寄せる現実はまた、どんなに恐ろしいものなのか
 (米国連邦最高裁判所の表現を借りれば、
 「住居の庭や窓に意見を掲げることは、特別な、重要な表現手段として尊重されなければならない。
 新聞広告を出したり、街頭に出るほどの財力も時間もない人たちが、自分の意見を表現できる最も安く便利な手段だからだ」)。
 これに(セウォル号事故当時、朴大統領が不在した)“7時間”について疑惑を持ちあげた産経新聞記者が起訴されたことまで加えると、タイと韓国の状況は、“シンクロ率100%”に近づく。

 王朝国家を真似しているのか。
 いや、真似してもいいから、どうせならしっかりやってほしい。
 昔の王は采詩官に民たちが歌う歌を収集するように命じて民の心を読むのに努めた。
 まさにその記録である『詩経』には酷政を恨む歌がそのまま伝えられた。
 「王室如燬」(王室が夫を苦しめている、「汝墳」より)と指弾する声も盛り込まれている。
  3000年前でも民の声が伝わっていたのに、21世紀の共和制国家で大統領を批判する市民の口がふさがれている。
 燃えるような酷政、それ以上に奇怪な出来事だ。

パク・ヨンヒョン論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )








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