2015年11月25日水曜日

宇宙大戦争(3):H2Aロケット29号機打ち上げ成功、「あかつき」金星周回軌道投入に成功、「はやぶさ2」小惑星へ

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● ANNニュース


毎日新聞 2015年11月25日 東京朝刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20151125ddm003040079000c.html

H2A、商業用打ち上げ成功 
2段ロケット改良奏功 
世界市場参入へ第一歩

 発射場の立地の不利を技術改良で乗り越え、H2Aロケットが初の商業打ち上げに成功した。
 運用する三菱重工業にとっては、商業衛星打ち上げ市場への本格参入に向けた第一歩となる。
 一方、ライバルとなる欧州や米国、ロシアのロケットに比べると、まだ価格面で及ばない。
 日本は開発中の次期基幹ロケットH3で打ち上げコストの半減を目指しているが、新興国の需要などを目当てに受注競争は激しさを増しており、真価が問われるのはこれからだ。

 打ち上げから4時間半が経過した午後8時すぎ、衛星が予定通りにロケットから分離したことが伝えられると、種子島宇宙センターで見守った三菱重工の関係者から「よっしゃー」という歓声と拍手が起こった。

 H2Aロケットは、今回で29回のうち28回成功(成功率96・6%)。
 天候以外での延期がほとんどなく、世界最高水準の信頼性を誇る。
 だが、これまで打ち上げた衛星は政府や宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する「官需」がほとんど。
 受注競争で欧米やロシアのロケットの後じんを拝してきた同社にとっては、悲願の打ち上げ成功だ。

 商業打ち上げの中心は、赤道上空約3万6000キロの静止軌道を周回する通信や放送用の静止衛星。
 欧州のアリアンスペース社はこうした衛星に照準を合わせ、赤道に近い南米の仏領ギアナに発射場を置き、主力ロケット「アリアン5」を打ち上げている。

 一方、北緯30度の種子島からの打ち上げでは、静止軌道に対し大きく傾いた軌道にしか衛星を送り込めない。
 衛星は自らの燃料を大量に消費して静止軌道まで進む必要があり、衛星の寿命が短くなってしまう。
 市場の衛星の多くはアリアン5で打ち上げることを想定して設計されており、H2Aは受注の土俵にも上がれない状況が続いていた。


●図

 今回、JAXAは立地の不利を乗り越えるため、92億円をかけて第2段ロケットを改良。
 オレンジ色だった表面を断熱材で白く塗装したり、エンジンに3回目の着火機能を追加したりして長時間飛行を可能にし、静止軌道により近い軌道への投入が可能になった。

 さらに、改良した第2段ロケットをJAXAが提供するという形で打ち上げ費用の一部を負担。
 受注価格は公表されていないが、三菱重工は発注元のテレサット社に対し低い価格を提示でき、官民で受注を後押しした形になった。

 政府は今年1月に決定した宇宙基本計画で「国内外の衛星打ち上げサービス受注の拡大を可能とすることを目指す」としており、今後も商業打ち上げの受注を支援していく方針だ。
 
■課題はコスト削減

 世界の衛星打ち上げ市場は欧州やロシア系企業が大きなシェア(占有率)を押さえてきたが、近年は米国企業も加わって競争が激化している。
 三菱重工とJAXAは今回のH2A打ち上げを世界競争に食い込む足がかりにしたい考えだ。

 衛星打ち上げは年間20〜30基程度の需要があり、欧州各国が出資するアリアンスペース社の「アリアン5」が圧倒的なシェアを占めてきた。
 ここ数年は米スペースX社が2010年から運用する「ファルコン9」が急成長し、昨年はアリアン5と同数の9基を受注した。 
 日本勢は政府系機関からの受注が主体で年間2〜3基の打ち上げにとどまることも目立つ。


●図

 ロケットの製造は部品数が100万点にのぼることなどから、「1次下請けだけで350社以上、2次以降の下請けも含めると1000社以上」(三菱重工広報部)もある。
 高度な技術力を持つ町工場などが部品生産を担っており、民間からも安定した受注を得られれば、技術力の向上につながる。
 今回、衛星を静止軌道により近いところまで運べるように改良したことについて、宇宙産業に詳しい三菱総研の羽生哲也氏は「顧客視点に立ったもので、競争には有利」と評価する。

 だが、ライバルのシェアを切り崩すには課題も残る。
 スペースXは電気自動車などで知られる米テスラモーターズのイーロン・マスク最高経営責任者が02年に設立。
 1機当たりの打ち上げ費用は約70億円で、約100億円程度とされるH2Aより安い。

 日本も20年度の打ち上げを目指す新型ロケットのH3で、打ち上げコストを約50億円まで引き下げる方針だが、アリアンスペースも次世代ロケットでコスト半減を目指しており、日米欧の激しいつばぜり合いが予想される。

 アリアンスペース東京事務所の高松聖司代表は
 「1基を受注すれば5%のシェアになる。
 今回の打ち上げ成功で、市場そのものの動きが変わってくる可能性がある」
と新たなライバルの動向を注視する。



毎日新聞 2015年11月24日 23時29分
http://mainichi.jp/select/news/20151125k0000m040124000c.html

H2Aロケット:打ち上げ成功「商談にも大きな追い風に」

◇民間商業衛星で初 23回連続成功、成功率は96.6%に

 三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は24日午後3時50分、鹿児島県の種子島宇宙センターから、カナダの衛星運用大手「テレサット」の通信放送衛星「テルスター12V」を搭載したH2Aロケット29号機を打ち上げた。
 衛星は約4時間半後、予定した軌道に投入され、打ち上げは成功した。
 国産ロケットによる民間商業衛星の打ち上げは初めてで、衛星打ち上げビジネス参入に弾みがつくと期待される。

 H2Aの打ち上げ成功は23回連続。
 失敗は1回だけで成功率は96.6%になった。
 三菱重工の阿部直彦宇宙事業部長は記者会見で「今後自信をもって静止衛星の市場に入っていける。進めている商談にも大きな追い風になった」と話した。

 テルスター12Vは今後、赤道上空約3万6000キロを周回する静止軌道に入る。

 29号機はロケットの2段目を改良し、最大飛行時間をこれまでの2時間から5時間半に延ばした。
 エンジンの噴射回数も2回から3回に増やし、搭載した衛星の目的軌道のより近くまでロケットで運べるようになった。
 これにより、衛星側の燃料を節約することで寿命を延ばすことができる。

 こうした技術は、2020年度の初打ち上げを目指して三菱重工とJAXAが開発中の次期基幹ロケットH3にも引き継がれる。



2015年11月25日 03時03分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20151124-OYT1T50185.html

H2A打ち上げ 官民で商業衛星の受注拡大を

 日本の宇宙産業を発展させる弾みとしたい。

 国産ロケット「H2A」が打ち上げられ、初の民間商業衛星を赤道上の軌道近くで切り離した。
 日本のロケット技術は新たな段階に入ったと言えよう。

 H2Aロケットの打ち上げは29回目だ。
 これまでは、政府が発注し、情報収集衛星や地球観測衛星などを搭載してきた。
 今回は、カナダのテレサット社の通信放送衛星の軌道投入を請け負った。

 受注の決め手となったのは、人工衛星をより遠い宇宙空間にまで運ぶ技術の改良だ。

 北緯30度の種子島から打ち上げると、赤道に対して斜めになった軌道を修正しなければならず、
 早めに切り離された衛星自身が、進路を変える必要があった。
 この弱点を克服するため、ロケットエンジンの燃焼時間を長くして、静止軌道の近くまで衛星を運搬した。
 衛星の燃料消費は抑えられ、軌道上でより長く活動できるようになった。

 衛星を運用する企業などにとっては、魅力的な改良だろう。
 H2Aロケットを開発した宇宙航空研究開発機構(JAXA)と、打ち上げや市場開拓を担う三菱重工業との連携の成果である。

 宇宙産業は成長が見込まれる有望な分野だ。
 自然災害に対して脆弱な途上国での気象観測、農作物の広域的な作柄のチェック、鉱物資源の探査など、人工衛星の需要は様々な用途で高まっている。

 静止衛星の打ち上げは、世界全体で年間20回前後、行われている。
 民間商業衛星の打ち上げの受注拡大を目指す日本は今後、欧州や米国、ロシアなどのロケットとの激しい競争にさらされよう。

 重要なのは、打ち上げコストの削減である。
 H2Aの打ち上げには約100億円を要し、欧米より割高だ。
 政府は、半額程度で打ち上げられる新型基幹ロケットH3の開発を進めている。

 目標である2020年度の打ち上げを実現するには、JAXAと三菱重工業に加え、コンピューターや機械など幅広い業種のノウハウを結集させることが求められる。
 ロケットは、日本の安全保障にも欠かせないインフラだ。

 政府の宇宙基本計画は、13年に約3000億円だった宇宙機器関連産業の売上高を、今後10年間で計5兆円に増やすことを掲げている。
 宇宙開発に民間活力を生かすための宇宙活動法案も来年の通常国会に提出する方針だ。

 関連企業の技術力を向上させる重要性が一層、高まっている。



2015年11月24日 23時02分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
http://www.yomiuri.co.jp/science/20151124-OYT1T50121.html

H2Aロケット、予定の軌道への衛星投入に成功


 ●  H2Aロケット打ち上げ

 三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は24日午後3時50分、カナダの通信・放送衛星を搭載したH2Aロケット29号機を、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げた。
 約4時間半後、ロケットから衛星を分離し、その後、予定の軌道への投入に成功した。
 搭載したのは、カナダの衛星運用会社テレサット社の衛星で、日本のロケットが商業衛星を打ち上げたのは初めて。

 JAXAは今回、H2Aの第2段ロケットを改良。
 従来は高度300キロ・メートル付近で衛星を分離して、衛星が自力で軌道まで移動していたが、今回は分離地点を静止軌道(高度3万6000キロ・メートル)付近の高度3万4000キロ・メートルに変更した。

 衛星が軌道に入るために必要な燃料の消費を抑え、軌道投入後の衛星の運用寿命が延びるようにした。
 来年度は、日本の商業衛星も打ち上げる予定。




毎日新聞 12月7日(月)9時35分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151207-00000020-mai-sctch

<あかつき>金星周回軌道へ噴射成功 5年ぶり再挑戦


●あかつきの観測計画

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7日午前、金星に接近した探査機「あかつき」を金星周回軌道に投入するため、あかつきのエンジン噴射を試みた。
 JAXAによると、予定通り20分間の噴射が確認され、軌道投入に成功したとみられる。
 あかつきは2010年に金星周回軌道投入に失敗しており、今回が2回目の挑戦。
 日本の探査機が地球以外の惑星の周回軌道に入るのは初めて。

 あかつきは金星の大気循環などを観測し、地球の隣の惑星ながら大きく環境が異なった原因に迫ろうと、2010年5月に打ち上げられた。
 同年12月7日、主エンジンの故障で軌道投入に失敗し、太陽を周回していた。

 今回の軌道投入では、4基合わせても主エンジンの5分の1の力しか出せない姿勢制御用の小型エンジンを噴射してブレーキをかけた。
 燃料は打ち上げ時の3割しか残っておらず、機体の設計寿命も既に超えており、今回が最後のチャンスだった。

 あかつきは7日午前8時51分から20分間、エンジンを噴射する計画。
 相模原市中央区のJAXA相模原キャンパスの運用管制室では、あかつきから送られてくるデータを見守った。
 同9時20分過ぎ、予定通りエンジンを噴射し、あかつきの機体に異常がないことが確認された。

 今回の予定投入軌道は、当初計画していた1周30時間の軌道に比べると極端に細長い楕円(だえん)で、金星を15日かけて1周する。
 今後、1周8~9日の軌道に移す。
 金星から遠くを飛行している時間が長くなるため観測データの解像度は下がるが、長時間、大気の動きを追跡しやすい利点もあるという。
 自転よりも速い秒速100メートルもの暴風が吹く「スーパーローテーション」と呼ばれる金星特有の大気現象の解明が期待される。

 あかつきの正確な軌道の確認には時間がかかるため、JAXAは9日夕に改めて成否に関する記者会見を開く予定。



読売新聞 12月9日(水)17時34分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151209-00050151-yom-sci

金星探査機「あかつき」、周回軌道投入に成功

 宇宙航空研究開発機構(JAXA=ジャクサ)の金星探査機「あかつき」が9日、金星を回る軌道に入ったことがわかった。
 関係者が明らかにした。
 日本の探査機が、惑星の周回軌道に入るのは初めてとなる。
 あかつきは金星の大気現象の解明をめざし、2016年春から本格的な観測に入る予定だ。

 あかつきは2010年5月に種子島宇宙センターから打ち上げられた。
 同年12月に軌道投入に挑戦したが、主エンジンが故障して失敗。JAXAは今月7日、4台の小型エンジンを使って、5年ぶりとなる軌道投入に再挑戦していた。



TBS系(JNN) 12月9日(水)18時25分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20151209-00000049-jnn-soci

 探査機「あかつき」、金星軌道投入に成功



 JAXA=宇宙航空研究開発機構は、会見を行い、金星探査機「あかつき」の軌道投入が成功したと発表しました。
 JAXAは午後6時からの会見で、探査機「あかつき」が金星を回る軌道へ入ったことを確認し、今月7日午前に行った軌道投入が成功だったと発表しました。

 「あかつき」は7日、予定通り20分28秒、小型エンジンを噴射し、JAXAは2日間にわたって状況を確認していました。
 金星の軌道に入った「あかつき」は今後、2年間にわたって金星を覆う雲などを観測して写真やデータを地球に送り、謎の多い気象現象のメカニズム解明を目指すことにしています。
 「あかつき」は5年前の打ち上げ直後、メインエンジンが故障して軌道投入に失敗し、今回は、本来、姿勢を制御するために使う小型のエンジンを噴射させて軌道投入に再挑戦していました。


ITmedia ニュース 12月9日(水)18時28分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151209-00000081-zdn_n-sci

「あかつき」から金星の画像が届く 軌道投入成功後、初の撮影



●近赤外域で撮影した金星=JAXA資料より

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月9日、金星周回軌道への投入に成功した探査機「あかつき」が、投入成功後初めて撮影した金星の写真を公開した。

【金星の雲の濃淡が模様のようになっている】

 写真は7日午前の姿勢制御エンジン噴射から約5時間後に撮影。
 距離6万8000キロから波長0.9μメートルの近赤外域で撮影した写真と、7万2000キロから波長283ナノメートルの紫外域によるものなど。



産経新聞 12月13日(日)15時18分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151213-00000532-san-sctch

金星探査機あかつき 逆境からはい上がり、奇跡を呼び込んだ勝因は…

 金星の周回軌道投入に成功し、鮮明な画像を地球に送ってきた探査機「あかつき」。
 5年越しの再挑戦が実を結び、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究チームは歓喜に包まれた。
 逆境からはい上がり、奇跡的な復活を果たしたチームあかつきの勝因を探った。

 ■驚きの初画像

 「画像を見て、何じゃこりゃと思った。
 あんな画像が撮れたのは世界で初めて」。
 JAXA相模原キャンパスで9日夜に行われた記者会見。
 計画責任者の中村正人プロジェクトマネージャは、あかつきが捉えた金星の画像に驚きを隠さなかった。

 公開された画像は、赤外線と紫外線のカメラで撮影した計3枚。
 金星を覆う雲の様子が写っており、これほど高精細の金星画像は例がないという。
 白黒だが、表面の縞模様がはっきりと見える。
 科学担当の今村剛プロジェクトサイエンティストが興味深い解説をした。

 「雲の温度のむら、分布が見えている。
 不思議な面白い研究テーマだ。
 紫外線画像では雲の分布だけでなく、金星の雲の材料である二酸化硫黄が大気の循環で雲の上に持ち上げられ、にじみ出てくる様子を捉えたという見方もできる」

 日本の惑星探査は苦難の歩みを続けてきた。
 火星探査機「のぞみ」は電源系統のトラブルが続出し、平成15年に周回軌道投入を断念。
 雪辱を期して22年に打ち上げたあかつきも、主エンジンの故障で一度は失敗した。
 ようやく手にした詳細な惑星画像は、日本の宇宙探査史に新たな1ページを記すものとなった。

 「われわれはこれでやっと惑星探査の世界の仲間入りができた。
 日本がデータを世界に供給できるようになった」。
 中村氏は感無量の表情で語った。

 世界の惑星探査の歴史を見ると、先行した米国や旧ソ連も多くの失敗を経験している。
 しかし、機体が損傷して惑星の周回軌道投入に失敗した探査機が、
 再挑戦で成功した例はなく、あかつきが世界初の快挙だ。

 宇宙探査に詳しい的川泰宣JAXA名誉教授は
 「今回の成功で、宇宙探査における日本の国際的存在感は間違いなく高まっただろう。
 米国のメディアはかなりほめている。
 これまでも月探査機『かぐや』の成果などを世界に示し評価を得てきたが、惑星探査にも参入できた。
 小惑星探査機『はやぶさ』の帰還の記憶もあり、日本は一筋縄ではいかない、諦めない国との評判もさらに高まるはずだ」
と話す。

 ■「寝ても覚めても計算」

 逆転勝利の要因はどこにあったのか。
 まず挙げられるのは、再投入に最適な軌道を正確に計算できたことだ。
 軌道は投入する時刻と場所によって、何万通りもある。
 太陽から見て探査機が金星の陰に入る「日陰(にちいん)時間」も考慮しなくてはならない。
 日陰に入ると太陽電池パネルに日が当たらなくなり、電力が得られなくなるが、機体に搭載した電池は90分しか持たないからだ。
 こうしたさまざまな条件を考えて、最適な軌道を求めるのは並大抵のことではなかった。

 軌道計算を担当した広瀬史子主任研究員は
 「解析するときりがなく、2年半くらい延々と解析した。
 よい答えが見つかるまで、寝ても覚めても計算したのが大変だった」
と振り返った。

 異常事態が起きた場合に備え、多くの対処法を入念に検討して臨んだことも挙げられる。
 あかつきは当初の失敗から5年間、太陽の周りを回り続け、想定を最大3割も超える厳しい太陽熱にさらされてきた。
 熱に強い面を太陽側に向けてしのいできたが、どこかが故障していても不思議ではない。

 再投入は前回の投入時に故障した主エンジンの代わりに、パワーが劣る姿勢制御用エンジン4基を噴射して達成した。
 だが、成功するかどうかは、やってみないと分からない状況だった。
 そこで予定通り噴射できなかった場合、機体の向きを反転させ、反対側にある別の姿勢制御エンジンを使うことも想定していた。

 結果的にエンジンは想定以上の能力を発揮し、
 金星から最も離れた場所で高度44万キロの軌道に投入できたが、
多くの対策に支えられて実現した成功といえるだろう。

 背景には日本のものづくりの力もあった。
 あかつきは一部の輸入品を除いて日本製だ。
 軌道投入は4基の姿勢制御エンジンが均等に噴射する必要があったし、機体のどこかに異常があれば失敗に終わった可能性もあった。

 中村氏はエンジンを噴射した7日の会見で
 「メーカーが非常に丁寧に作ってくれた。
 軍艦のようだ。
 どこもほとんど壊れなかったのは大変なこと」
と企業の技術力をたたえた。

 ■チームスピリット

 5年間に及んだ再挑戦を振り返って、あかつきチームが9日の会見で口をそろえたのは、宇宙ファンや家族など多くの人に対する感謝の気持ちだった。

 「たくさんのメッセージを寄せていただいて、失敗後も温かく見守ってくださった皆さんの気持ちがなければ耐えられなかった。
 大変感謝している」(中村氏)

 「これほど困難な運用を可能にした工学チーム、膨大な数のメーカーの皆さんに感謝している。
 さらに常日頃、いろんな形で応援して元気づけてくれる一般のファンの皆様、ありがとうございます」(今村氏)

 「自分が一番犠牲にしてきたのは娘や夫。まずは家族に感謝したい。NASA(米航空宇宙局)のJPL(ジェット推進研究所)に本当に支えてもらっている。あかつきを海外局で運用して軌道を決定してもらった」(広瀬氏)

 困難を乗り越えて、ようやく一歩を踏み出した日本の惑星探査。
 新たな道を切り開くことができた最大の要因は、決して諦めない強い気持ちだろう。
 惑星探査で日本は欧米やロシアの後を追う立場だが、中村氏はこう強調した。

 「世界でやっていても、自分でやってみないと分からないことがあるのではないか。
 人がやったことでも、歯を食いしばって習得することが大事だ」




ITmedia ニュース 12月14日(月)14時54分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151214-00000042-zdn_n-sci

「はやぶさ2」、スイングバイ成功を確認 
小惑星へ「行って参ります」 
地球の写真も送信

 打ち上げ後は地球と似た軌道をたどっていたが、スイングバイで小惑星へとかじを切った
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月14日、小惑星探査機「はやぶさ2」が12月3日に実施した地球スイングバイに成功し、小惑星「Ryugu」へ向かう軌道を順調に航行していることを確認したと発表した。

 
●はやぶさ2の軌道イメージ


●スイングバイ後にはやぶさ2が撮影した地球

 はやぶさ2は打ち上げから1年後の今月3日夕方、ハワイ上空約3090キロに最接近するスイングバイを実施。
 軌道を80度曲げ、スピード(太陽に対する)はプラス秒速1.6キロの秒速31.9キロに。
 目標数値を達成したことを確認した。
 状態も正常という。

 スイングバイ終了後、はやぶさ2の光学航法カメラ(ONC-T)で撮影した地球の画像も公開した。

 14日午前0時現在、はやぶさ2は地球から約415万キロのところを航行中。
 巡航速度は32.31キロと、スイングバイ後に太陽の重力の影響で加速している。
 極点付近を含む南極大陸が写っているのは貴重という。

 津田雄一プロジェクトマネージャは感謝するとともに、
 「はやぶさ2はスイングバイにより軌道エネルギーを獲得し、これより地球を離れます。
 進路「Ryugu」。
 それでは地球の皆さん、行って参ります」
とコメントしている。

 はやぶさ2は地球から約3億キロ離れた小惑星「Ryugu」へ2018年の到着を目指している。



TBS系(JNN) 12月14日(月)14時10分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20151214-00000041-jnn-soci

 小惑星探査機はやぶさ2、スイングバイに成功



 JAXA=宇宙航空研究開発機構は、小惑星探査機「はやぶさ2」が、地球の重力を使って軌道を変更する「スイングバイ」に成功したと発表しました。

 小惑星探査機「はやぶさ2」は、今月3日、地球に最も接近し、重力を使って加速しながら軌道を変更する「スイングバイ」に挑みました。

 JAXAは14日午前、「スイングバイ」が、無事成功したと発表し、「スイングバイ」が行われた翌日の今月4日に「はやぶさ2」が撮影した地球の写真を公開しました。
 画面右下に見える白い部分は、南極大陸です。

 現在、「はやぶさ2」は、地球と火星の間にある小惑星「Ryugu」を目指す軌道に乗っていて、
 2018年に「Ryugu」に到着し、
 2020年に石や砂を地球に持ち帰る予定です。




● 「あかつき」と「はやぶさ」









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