2015年10月31日土曜日

南シナ海波高し(9):南シナ海への米艦船派遣、EUが支持表明、国際法の原則に基づく海洋秩序を重視

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ロイター 2015年 10月 31日 03:32 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/10/30/eu-southchinasea-us-idJPKCN0SO2GR20151030

南シナ海への米艦船派遣、EUが支持表明

[ブリュッセル 30日 ロイター] -
 南シナ海の中国「領海」内に、米国が艦船を派遣した件で、欧州連合(EU)高官は30日、米国の行動を支持する立場を表明した。

 来週にアジア欧州会議(ASEM)の外相会合を控え、EUと中国の協議に影響が及ぶ可能性もある。

 高官は記者会見で「米国は航行の自由を行使している」と指摘。
 領有権争いが起きている海域で、人工島を造成する中国側の計画に、EUは懸念を持つと説明した。

 また、EUの外交担当報道官は声明で
 「EUが領有権問題で特定の立場を取ることはないが、
★.特に国連海洋法条約に反映される、国際法の原則に基づく海洋秩序を重視している」
と述べた。



 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2015年10月30日(Fri) 
 辰巳由紀 (スティムソン・センター主任研究員)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5553

米国の「航行の自由作戦」
日本の対応、日米同盟のリトマス試験に?

 10月26日、米海軍駆逐艦が南シナ海のスプラットリー諸島地域で、中国が建築を進めている人口島から12カイリ以内の海域を航行した。
 中国政府はこれを「不法行為だ」と批判しているが、米国は、「国際法が許す限り、世界中のいつでもどこでも、飛行し、航行し、作戦活動を行う」(アシュトン・カーター国防長官、2015年5月28日シャングリラ会議での演説にて)という従来の立場を崩しておらず、両国の立場は平行線をたどっている。

■南シナ海での米国の対応をめぐる米国内の議論は

 この米海軍駆逐艦の航行は、目新しいものではない。
 今回実施された「航行の自由プログラム(Freedom of Navigation Program, FON)」は、
 米国務省のホームページによると、1979年から実施されており、
 その目的は
 「米国は国際社会が持つ公海上の航行および飛行の自由に対する権利を抑制するような一方的行為を受け入れない」
という意思を表明すること
にある。

 南シナ海で中国が建造を続ける人工島から12カイリ以内の海域を航行することで米国は、中国のこの地域での活動を黙認しているわけではないというメッセージを発するべきだ、という議論は、この数カ月、米国内で活発になってきた。
 9月18日に連邦議会の上院軍事委員会で「アジア太平洋の海洋安全保障」をテーマに公聴会が行われた際に、冒頭でジョン・マケイン上院軍事委員長が行った
 「(海洋の自由という原則に対する)米国のコミットメントを最も明確に示すのは、
 南シナ海で中国が領有権を主張するエリアから12カイリ以内を航行して見せること」
という発言は、アメリカが今後もアジア太平洋で指導力を発揮し続けるべきだと考える人の多くの気持ちを代弁したものだ。

 特に、共和党議員や保守系論客の間では本稿冒頭で引用した
 「(米国は)「国際法が許す限り、世界中のいつでもどこでも、飛行し、航行し、作戦活動を行う」
という発言をカーター国防長官が今年5月に行ってから、
★.航行の自由作戦がこの海域で行われるまで実に5カ月を有したことに対する
 オバマ政権の対応の遅さを批判する声
がこの1、2カ月強くなってきている。

 前述の9月18日の公聴会では、公聴会が開催された時点で、米海軍が、中国が領有権を主張する海域、特に人工島から12カイリ以内での航行を2012年以降行っていなかったことに対して、マケイン上院議員が「12カイリ以内に入らなければ、実質的に中国の領有権を認めていることと同じではないか」と主張し、公証人として出席したデイビッド・シアー国防次官補やハリー・ハリス米太平洋軍司令官と厳しいやり取りを交わした。

 このように南シナ海における中国の行動により強い姿勢で臨むことを米政府に求める国内の雰囲気は、
 現在の米国の対中認識が厳しさを増していることの証左
でもある。
 そもそも、上院軍事委員会のアジア太平洋小委員会ではなく、
 本委員会でアジア太平洋の海洋安全保障をテーマにした公聴会が開催されること自体、めったにあることではない。

 9月下旬、習近平国家主席の訪米が国賓待遇だったことについても、ドナルド・トランプ氏、ジェブ・ブッシュ元知事やマルコ・ルビオ上院議員をはじめとする複数の共和党大統領候補から強い批判が出た。
 また、10月26日の米海軍駆逐艦の人工島12カイリ以内の海域の航行についても、CNNをはじめとする主要メディアでかなり大きく取り上げられているが、これも、2016年大統領選挙や中東情勢がメディアの関心の大勢を占めている現在では珍しい現象だ。
 米国内で
 「厳しい対中認識が定着しつつある」
ことを示唆するもの
だろう。

■今後の焦点は何か

 それでは、南シナ海の人工島をめぐる米中の対立についてこれから見ていくとき、注目すべき点はどこにあるのだろうか。

★.第一に、米国の今後の動きである。
 国防省はすでに、今回の航行がこの地域での航行としては最後のものにならない旨を明らかにしている。
 今後は、中国が領有権を主張する他の地域や、フィリピンやベトナムなど、中国以外の国が領有権を主張する地域でも、今回のように航行の自由作戦の一環として航行することになるだろう。
 これがどのくらいの頻度で行われるか、行われる場合、どのようなアセットを用いて行うのか、などに注目すべきだろう。

★.第二に、中国の反応である。
 今回の航行については、習近平主席の訪米の前後の時期から、ジョン・リチャードソン海軍作戦部長をはじめとする国防省・米軍の幹部が様々なところで「南シナ海での航行の自由作戦実施の可能性」に時間をかけて言及を続けた。
 これは、そうすることで実際に航行したときの対応について考える時間を中国政府に与え、現場の部隊の過剰反応を防いだ、という見方もある。

 しかし、今後、米軍が南シナ海における航行の自由作戦を継続する場合、中国が例えば、現在、抑えている7カ所以外にも、さらに建造物を構築する場所を見つける、あるいは、まだ終わっていない建築活動のペースを上げる、などの対抗措置に出てくることは十分に考えられる。
 また、南シナ海での米軍の行動に対抗して、例えば、東シナ海や、より米国本土に近いアラスカ付近に再び現れるといった行動に出てくるかもしれない。

 いずれの場合も、米軍と人民解放軍の正面衝突には発生しないまでも、緊張が高まる可能性は十分にある。

 またに、米国が今後、航行の自由作戦に、地域の同盟国やパートナー国への参加を求める可能性が出てくることも当然、考えられる。
 米海軍だけが航行の自由作戦をしていると、中国との緊張が高まる一方だ。
 むしろ、多国籍の有志でこの活動を行い、中国の行動に不満を持つ国がいかに多いことを示すことで、地域での中国の外交的孤立化を目指す方が現時点での政策としては合理的だ。

 米軍との共同行動、同盟国同士やパートナー国同士での行動など、組み合わせはいろいろ考えられるが、今回の米国の行動に支持を表明した国を中心に、そのような打診が来る可能性は高いだろう(今、すでに内々に打診されている可能性もあるだろう)。

 日本はすでにオーストラリアやフィリピンと共に、「米国の行動を支持する」という立場を政府として表明している。
 明確な発言を避けている韓国と比較すれば、米国の目には頼もしく映る。
 しかも、米国では、先般の海上自衛隊の観艦式で安倍総理が、戦後、日本の総理としては初めて、米空母に降り立ったことや、観閲式の様子などが報じられたばかり。

 米政府の幹部クラスでは、4月の総理の議会での演説、直前の日米防衛協力の指針の改定、安全保障法制の制定などを通じて日本がこれまで一貫して打ち出してきている「積極的平和主義」「国際秩序の維持のために努力する国」によって、日本も南シナ海での「航行の自由作戦」のような活動に、躊躇なく参加できるようになったというイメージを持っている人が圧倒的に多いだろう。
 米海軍が海上自衛隊と南シナ海で共同演習を行うことが最近、報じられたばかりだが、このような対応を取ればとるほど、米側の期待値は上がっていく。

 しかし、現時点では、実際に共同パトロールを米国から求められた場合にすぐに対応できるかは、南シナ海情勢が今般成立した安保法制で定められた「重要影響事態」や「存立危機事態」に該当するという認定を国会がするかどうかにかかっている部分が出てくるため、どういう形でなら自衛隊が参加できるのかは不透明だ。
 しかし、日本のこの事情を実際に理解している人は米政府の中でも少ない。

 「支援の表明は口だけだったのか」と言われるようなことがないよう、日本は、これまで以上に、東南アジア諸国の海上保安庁や海軍の能力構築など、自衛隊や海上保安庁による訓練の提供など、今すでにできることにより一層、力を入れるべきだろう。
 少なくとも、南シナ海情勢における対応が、日本のアジア太平洋地域の安全保障でどのような役割を果たす覚悟があるのかを問うリトマス試験になってしまうような事態だけは避けなければならない。



ダイヤモンドオンライン 2015年11月2日 田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/80874

南シナ海の米中対立は「出来レース」だ!

 横須賀を母港としている米海軍のイージス対空ミサイル搭載駆逐艦「ラッセン」(9425t)は10月26日夜、南シナ海の南沙諸島で中国が埋め立て、滑走路を造っているスビ礁付近の12海里(22km)以内を航行した。
   この行動は米国がこれらの人工島を中国領と認めず、その周囲12海里は中国領海ではないことを示すためだ。

 米海軍が今後あまりに頻繁にこうした行動を取り、もし中国側と武力衝突になれば、がんじがらめの相互依存が成立している米中の経済関係は断絶し、双方の経済は多分麻痺する。
 昨年の
★.日本の輸出の23.8%は中国向け(香港を含む)、
★.18.7%は米国向け
だから、日本にとって2大市場の混乱は致命的な打撃だ。
 しかもそれは欧州、アジア地域、そして全世界に波及するだろう。

 だが、実際には武力衝突に発展する公算は低い。
 中国は米国がこのような行動に出ても武力行使をしないことを事前に示唆しており、暗黙の了解があった、と考えられるのだ。

■「領土問題でも武力行使を軽々しく言わない」
 と中国上将が表明

 北京西部の紅葉の名所、香山で10月16日から18日にかけて開かれたアジア・太平洋地域の安全保障協力を目指す討論会「第6回香山フォーラム」には、南沙諸島問題で中国と対立するベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイや、インド、インドネシア、シンガポールなど16ヵ国の国防大臣が出席し、米、英、仏、独なども公式代表を参加させた。

 昨年招待されたが断った日本も今年は防衛研究所の大西裕文副所長を派遣した。
 参加国は計49ヵ国と5国際機関、出席者は約500人に達した。
  このフォーラムが2006年に始まった当時は「中国軍事科学学会」など、研究機関の主催で、参加者も研究者がほとんどだったが、いまでは中国政府の「軍事科学院」が後援する半官半民の国際会議になっている。

 今回基調講演を行った中国の中央軍事委員会副主席(委員会の主席は習近平氏)範長龍・陸軍上将はその中で
 「たとえ領土主権に関る問題であっても、中国は決して武力行使を軽言(軽々しく言う)しない」
と述べた。
 こうした発言は中国国内のタカ派の反発も招きかねないから範長龍上将の一存で言えることではなく、習近平主席の意を受けた発言だろう。

  習主席は9月25日、ワシントンでオバマ米大統領と会談し、南シナ海での埋め立て問題は主要議題の一つだった。
 オバマ大統領は、それまで米海軍やタカ派議員達が主張していた「12海里以内での艦艇、航空機の航行」に対し、中国との関係の悪化を案じて慎重だったが、この会談後その実施を許可した。
 おそらく習近平主席から、間接的表現ではあっても、中国は武力行使はしない、との感触を得たと考えられる。

 現に「ラッセン」が人工島周辺を航行した際、中国海軍は「中国版イージス艦」とも言われるミサイル駆逐艦「蘭州」(7112t)と、フリゲート艦「台州」(1729t)を出したが、相当距離を置いて後方から「追跡、警告をした」だけで並走はせず「ラッセン」の航行を妨害しなかった。

 一方米国も「中国敵視」と言われないよう「ベトナム、フィリピンなどが領有を主張している岩礁から12海里以内を航行した」とも発表して、公平さを示そうとした。
 また米国務省のカービー報道官は27日の記者会見で米中関係への影響を問われ「世界のいかなる国との関係にも悪影響を与える理由はない」と答えた。
 これも事前に中国と暗黙の了解があったことをうかがわせる。

 中国が埋め立て、飛行場建設を行っているスビ礁、ミスチーフ礁は満潮時には水面下に没する「干出岩」だから海底の一部とみなされる。
 その上に構造物を造ったり、周囲を埋め立てても、海底油田の櫓と同様の「人工物」で領土ではなく、その周囲は領海にはならない。

★.沖ノ鳥島のように満潮時にも一部がなんとか水面上に出ている場合には、それを補強して保存すれば周囲は領海になりうるが、スビ礁などはそうではない。

★.南沙諸島には島と言えそうなものは12あるが、
 ベトナム、フィリピンが5島ずつ、マレーシア、台湾が1島ずつを抑え、それぞれ飛行場一ヵ所を造った。
 出遅れた中国は他国が目を向けなかった岩礁しか確保できず、飛行場を造るには大規模な埋め立てをするしかなかったのだ。

 中国の弾道ミサイル原潜は、かつては対立したソ連に近い黄海の最奥部の遼東湾を基地にしていたが、遼東湾の水深は25m程度、黄海北部も浅いから、船底から司令塔の上端まで20m余ある大型の原潜は延々と浮上航走しないと出動できず、丸見えになる。
 このため中国海軍は深い南シナ海に面した海南島の三亜付近に潜水艦基地を造り、潜水艦が隠れるトンネルも掘っている。

米海軍は中国海軍との交流にも熱心で、中国との戦争が迫っているとは考えていないが、
 将来の万が一の事態に備え、
 原潜や哨戒機で中国潜水艦を追尾し、
 プロペラ音や原子力機関のタービン音、減速ギア音、ポンプ類の音など「音紋」を採取して貯え、識別の資料としたり、
 季節、時間ごとの水温、潮流など、水中の音波伝播状況のデータを収集して潜水艦探知に役立てようとしている。

 中国海軍は当然それを嫌がり、哨戒機や海洋調査船の行動を妨害しようとする。
 2001年4月には米海軍の電子偵察機EP3が中国海軍のF8IIと海南島沖で空中衝突し、戦闘機が墜落、EP3は海南島の中国軍航空基地に不時着する事故も起きた。

■米国が唱える「航海の自由」は実は「情報収集の自由」だ

 米国は今回の「ラッセン」等の行動を「航海の自由の確保」のため、と言うが、領海を外国商船が通過したり、漁船が操業せずに通る「無害通航」は自由で、中国もそれを妨げようとはしていない。
 世界最大の貿易国、漁業国、造船国である中国にとって世界的な「航海の自由」の確保はまさに「中核的利益」だろう。
 軍艦にも無害通航権はあるが、沿岸国の防衛、安全を害するような情報収集は許されない。
 米国などの商船が南シナ海を通ることには何の支障もないことを考えれば、米国の言う「航海の自由」はもっぱら「情報収集の自由」を意味する。

 公海とその上空ならば哨戒・情報活動は自由に行えるが、中国が南沙諸島海域に人工島を築き、それを領土だと主張して、その周辺での米軍艦や哨戒機の行動を規制すると米海軍の情報収集が妨げられる。
 国連海洋法条約でも人工島は領土とは認められないのは明らかだから、米海軍としてはその周辺海域を航行し、情報収集を行う実績を作っておこうとする。

 中国も人工島自体を「領土」とし、領海の根拠にするのは難しいことを承知しているから、南シナ海のほぼ全域を囲む9本の断続的な線、牛の舌のような形の「九段線」を示し、「それが歴史的な中国領海だ」と主張している。
 だが、その明確な根拠は示していない。

 中国は宋の時代(960~1279年)に磁石が発明されるなど、造船、航海術が著しく発達して巨大海洋国となり、南シナ海を多数の中国の大型帆船が往来し南海貿易が盛えたが、中国がその海域を「領海」として支配していた訳ではない。
 仮にその当時南シナ海で支配的地位にあったとしても、故に今日も中国の領海だ、との論は「ローマ帝国が地中海を支配していたから、今日も地中海はイタリアの領海だ」と主張するような無理な説だろう。

 ただ、「九段線」は中華人民共和国が唱え出したのではなく、蒋介石の中華民国政府が1947年に南シナ海に11本の線を引いた地図を発行し、それが中国の権威が及ぶ範囲、としたのが始まり、とされる。
 1953年に中国はそのうち2本を削除した地図を発行し「九段線」となった。

 蒋介石が残した負の遺産とも言える「九段線」を中国が撤回すれば良いのだが、一度「自国領だ」と主張すると、その根拠が不明確であり、主張を続けるのは対外政策上不得策であっても、それを取り下げるのはどの国でも国内で非難の的になるから、難しい。

 南沙諸島の岩礁の大規模な埋め立て、飛行場建設は相当な準備期間を要するから、おそらく習近平氏が2013年3月に国家主席に就任する以前に計画が決定していたと考えられる。
 前任の胡錦濤主席といえども、軍が「自国領の防衛を固めるため」と言えば、それを抑えにくかったのではないだろうか。

 中国としてはこの問題で米国との関係を悪化させたくはない一方、中国が主張してきた領有権を否定する米国の行動を座視していれば国内の“愛国者”達が騒ぎ立て、それに乗じて習氏の失脚を狙う者が出かねない。
 だから一応米国に抗議し、軍艦2隻で「ラッセン」を追尾させ「追跡、警告を行った」と発表し、実際には妨害はしない、という手緩い対応を取るしかなかったのだろう。

 また中国は
 「建造中の飛行場に軍用機は常駐させない。
 海難救助の拠点にもなる」
と表明して米国、近隣諸国の非難をかわそうと努めている。
 幸い、中国では今回の米艦の行動に対して反米感情が高まった様子はなく、デモなども起きていない。

■経済的に依存しあう米中は衝突をなんとか避けたい

★.尖閣諸島については2014年11月、日中首脳会談を前に、双方が「異なる見解を有している」ことを認め「不測の事態の発生を回避する」ことで合意した。
 両者は従来どおりの主張は続けるが、現状は変えず、衝突は避ける、という事実上の棚上げで当面はおさまった。
 南沙の岩礁問題でもこれに似た玉虫色の状況になる可能性が高いのではないか。

 以前にも本欄で述べたが、米国にとり中国は、

(1).米国債1兆2000億円ドル余を保有し、危機にある米国財政を支えている。

(2).3兆7000億ドル(ドイツのGDPに匹敵)の外貨準備の大半をウォール街で運用し、米国の金融、証券の最大の海外顧客

(3).米国製旅客機を毎年約150機輸入し、米国の航空・軍需産業の最大の海外顧客(今後20年間の中国の旅客機需要は6300機以上)

(4).GMの車が年間約200万台(中国全体では2300万台)売れ、中産階層が爆発的に増加する巨大市場で米企業2万社が進出

 などの要素から、中国への依存は決定的に大きい。

 中国にとっても米国は最大の輸出市場であり、最大の融資・投資先だから、米国との友好関係と米国経済の成功を願わざるをえない。

★.中国海軍の増強、海洋進出が喧伝されるが、中国の空母は1隻、その搭載戦闘機は約20機であるのに対し、米海軍は戦闘・攻撃機55機を搭載可能な原子力空母10隻(近く11隻に戻る)を保有し、搭載戦闘機数は550対20だし、技術の差は極めて大きい。

★.実用になる中国の原潜は5隻、米原潜は71隻で、中国の対潜水艦能力(探知技術など)は無きに等しい、などを考えれば、中国海軍が米海軍に対抗して、全世界に伸びた長大な海上通商路を守ることは将来も不可能に近い。

 中国は海外市場、輸入資源への依存度が高まれば高まる程、世界的制海権を握る米国との対立を避けざるをえない立場にある。

 また中国は今日の世界秩序、経済システムの第一の受益者であり、それを覆すことは経団連が体制転覆をはかるに等しく、世界の体制護持のために大局的には米国と協調せざるをない。

 もちろん日本にとっても、米中の武力衝突による経済関係の断絶、両国経済の破綻は致命的だ。
 反中国感情を抱く日本人の中には、米中が岩礁埋め立て問題で対立することを喜ぶ気配も感じられるが、それは大津波の襲来を期待する程の浅慮と言うしかない。



ロイター  2015年 11月 2日 16:20 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/11/02/analysis-south-china-sea-idJPKCN0SR0JO20151102?sp=true

焦点:南シナ海で高まる中国のプレゼンス、
米軍を「量」で凌駕

[香港 30日 ロイター] -
 米国は、海軍のミサイル駆逐艦を南シナ海で中国が造成した人工島付近に派遣したが、それは中国の艦隊が周囲で監視・追跡する中で行われた。

 米海軍は今後も長い間、アジアで技術的優位を維持すると思われるが、それに対し中国は数で勝負していると言えるかもしれない。
 南シナ海では、多くの中国の海軍艦艇や巡視船が定期的に配備されている。

 アジアや米国の海軍当局者は、中国が領有権を主張する、
 南シナ海の約90%が対象となる「九段線」の周縁部でさえ、中国船との遭遇が頻繁に起きていると語る。
 以前は、そのような遭遇は比較的まれだったという。

 米ミサイル駆逐艦「ラッセン」が26日に派遣され、南沙(英語名スプラトリー)諸島の渚碧(同スビ)礁から12カイリ内を航行したのと同じような「航行の自由」作戦を定期的に行うと米当局者らが明らかにしたのを受け、そのような遭遇は増える一方となるだろう。

 「彼ら(中国の海軍と巡視船)はどこにでもいる。
 そして、自分たちの存在を示したがっている。
 南シナ海にいたら、追跡されていると考えた方がいい」
と、アジアにいる米海軍将校は匿名で語った。

 実戦では米国の技術的優位が決定的となるだろうが、中国の数的優位は、とりわけ海上で対峙した場合は考慮に入れるべき事柄だと、安全保障の専門家らは指摘する。

 米艦ラッセンがスプラトリー諸島を航行中、中国の艦船は同艦を追跡していた。
 中国の艦船は距離を保ちながらラッセンを追跡したとはいえ、自国が領有を主張し、造成した7つの人工島から12カイリ内を米国が繰り返し航行すれば、同国の忍耐を試すことになると、専門家らはみている。

 中国の張業遂・筆頭外務次官は、米国のボーカス駐中国大使を呼び出し、米艦派遣は「極めて無責任」だと抗議した。
 一方、米当局者らは、国際法が許す限り、米国はどこでも飛行や航行を行うと繰り返し述べている。

 緊張が高まる中、両国の海軍は29日にテレビ会議を開催。
 米政府高官は、双方が対話の継続と「洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準(CUES)」を順守する必要性で一致したと明らかにした。

 中国は人工島にすでに1本の滑走路を完成し、さらに2本を建設中。
 人工島は中国にとって、東南アジアやそれを超えた海域への海洋進出の足掛かりとなるだろう。
 スプラトリー諸島では、ベトナム、フィリピン、台湾、マレーシアも実効支配している。

■<地元の利>

 米国防総省が4月に発表した調査によると、
★.南シナ海に配備されている中国の艦隊は、同国が保有する3艦隊のうち最大となる「116隻」で構成
されている。

  同調査はまた、中国が500トン型以上の巡視船200隻以上を保有しており、その多くが1000トン型以上だとしている。
 同国の巡視船隊だけで、他のアジア諸国の合計数をしのぐという。

 一方、日本の横須賀を拠点とし、原子力空母ロナルド・レーガンが所属する
★.米海軍の第7艦隊は「55隻」で構成され、
西太平洋とインド洋の大半を管轄下に置く。

 「中国には地元の利がある」と、オーストラリアの元海軍将校で、ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)のアドバイザーを務めるサム・ベイトマン氏は指摘。
 侵入者とみなされる相手と対峙する場合など
 「いくつかの状況では、質よりも量が重要となり得る」
と語った。
 ベイトマン氏や他の同地域の安全保障専門家らは、航行の自由を掲げて哨戒活動を行う米艦船は今後、それを阻止しようとする中国の艦船に包囲されることになる可能性を指摘する。

 中国国営メディアの報道によると、一部の中国人専門家は、中国が米艦船を阻止するための作戦を行うと警告している。

 行動基準によって、米国の艦船は攻撃の口火を切ったり、事態をエスカレートさせたりすることには消極的となり、撤退を余儀なくさせられる可能性があると、ベイトマン氏は述べた。

 米海軍はコメントを差し控えている。

 だが、メイバス米海軍長官は近年、艦船数増加を優先事項としており、多くの場で「量は質を兼ねる」と語っている。

■<プレゼンス拡大>

 艦隊の増強や巡視船への取り締まりの一本化などから、南シナ海における中国のプレゼンスが着実に拡大していると、同海域で活動する海軍将校らは口をそろえる。

 また、巡視船が同海域で従来は海軍が行ってきた哨戒活動の多くを担う一方、中国の探知能力が進歩したことで海軍も近くにいることが可能となったと将校らは指摘する。

 過去2年間の南シナ海の衛星画像を見た専門家と海軍将校らは、
★.中国の艦船は領有を争う複数の場所で半永久的なプレゼンスを維持している
との見方を示した。

 その中には、
 フィリピン沖の黄岩島(同スカボロー礁)や
 仁愛礁(同セカンド・トーマス礁)、
 西沙諸島(同パラセル諸島)からスプラトリー諸島の北部にかけて存在するいくつかの礁、
 マレーシアのサラワク沿岸沖にある南康暗沙(南ルコニア礁)
が含まれる。

 中国海軍はまた、マレーシアに近い曾母暗沙(同ジェームズ礁)付近でも哨戒活動を行っている。

 中国は2013年1月以降、ほぼ常にプレゼンスを維持できるように巡視船を巡回させていると、オーストラリア国防大学で南ルコニア礁での状況を研究するスコット・ベントレー氏は指摘。

 「中国は初めて、九段線全体を明確に主張するだけでなく、
 その域内の海域で領有権の主張を積極的に拡大しようとしている」
と同氏は語った。

(Greg Torode記者、翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)



TBS系(JNN) 11月4日(水)22時38分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20151104-00000065-jnn-pol

首相が米制服組トップと会談、
南シナ海での行動支持伝える



 安倍総理は、日本を訪れているアメリカのダンフォード統合参謀本部議長と会談し、アメリカ軍が南シナ海に艦船を派遣し、今後も作戦を継続する方針を示していることについて、支持する考えを伝えました。

 安倍総理は総理官邸で、アメリカ軍の制服組のトップで、今年10月に就任したダンフォード統合参謀本部議長と会談しました。

 南シナ海では先月、中国が領海と主張する人工島の12カイリ内をアメリカ海軍の駆逐艦が航行したことで対立が深まっていますが、安倍総理は、「アメリカの取り組みは国際法にのっとり、開かれた自由で平和な海を守るための国際社会の取り組みの先頭に立つもの」だとして、支持する考えを伝えました。

 また、安倍総理は、安全保障関連法が成立したことに関連し、「日米同盟の絆を強め、抑止力を高め、アジア太平洋地域の平和と安定をより確かなものにしていきたい」と述べたのに対し、ダンフォード氏は、「自衛隊とアメリカ軍の関係強化を含め、日米間の協力を今後もさらに進めていきたい」と応じました。









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底が抜けた中国経済(7):見事にはまった「中所得国の罠」、中国の製造業の「最良の時代」は過ぎ去った? 

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サーチナニュース 2015-10-30 13:40
http://biz.searchina.net/id/1592887?page=1

「企業の淘汰は自然」と中国メディア、
広東省・東莞市で相次ぐ倒産に

 中国メディアの南方網は27日、中国でも数多くのメーカーが集まる広東省東莞市で企業の倒産が相次いでいることを指摘する一方、
 経済活動においては経営力や技術力の優劣によって「企業が淘汰されていくのは自然なこと」だと指摘した。

  記事は、環境の変化に適応できずに消えていく企業にばかり注目し、新たに生まれてくる企業を見ようとしないのは間違っていると主張。
★.2014年に東莞市で倒産した企業は「500社を超える」
と指摘しつつも、
 東莞市の企業の数自体は「前年比で増加した」
と伝えた。

  さらに、営業を停止した企業の数に着目するよりも、企業の「質」に着目すべきだと主張し、優秀な企業が1社存在することによる経済および社会への利益は、生産を停止した企業が「数十社集まっても到底かなうものではない」と主張し、東莞市では実際に倒産や企業の移転が相次いでいるが、「域内総生産は伸びている」と主張した。
  また記事は、経営力や技術力の優劣によって企業が淘汰されていくのは自然なことだと指摘し、数多くの企業が存在するなかで数百社の企業が倒産しても不思議なことではないと主張。
 また、倒産した企業は「進取の精神がないからこそ倒産したのだ」と主張したうえで、特に驚くべきことでもないと論じた。
  さらに、東莞市は労働集約型の製造業が数多く集まっていた市であると指摘する一方、
 中国では製造業の高度化が中国政府の戦略に組み込まれたことを伝え、人件費の上昇が続くなか、コスト優位を失った企業が淘汰されていくのは自然なことだと主張した。



サーチナニュース 2015-10-29 15:46
http://biz.searchina.net/id/1592776?page=1

中国の製造業、「最良の時代」は過ぎ去ったのか=中国メディア

 中国メディアの一財網は25日、中国では人件費の上昇を背景に工場の倒産や移転が相次いでいることを指摘し、中国の製造業にとって最良の時代はすでに過ぎ去ったのか、それともこれから再び訪れるのかを論じる記事を掲載した。

 記事は、中国広東省など珠江デルタ地域では工場の労働者の人件費は月3000-4000元(約5万7200円-約7万6000円)に達すると伝え、近年は人件費の高騰が続いていると指摘。
 一方で、付加価値の低い製品を値上げすることは極めて難しいことを指摘し、人件費の高騰を背景に服飾や靴、おもちゃなど付加価値の低い製品を生産していた工場は大規模な移転や倒産が相次いでいると報じた。

 さらに、広東省東莞市では台湾資本の企業が大挙して撤退したと伝え、仕事が見つからないため東莞市を離れる労働者も多いと伝えた。
 また、東莞市が「世界の工場」の一角として賑わいを見せていたころ、広東省広州市から東莞市に向かうバスはいつも満員に近かったとしながらも、近ごろは
 「40人以上も乗れるバスに5-6人しか乗っていない状況」
だと報じた。
 また、東莞市の高級レストランも今や開店休業状態にあると伝えた。

 また記事は、中国の経済統計の変化から製造業をめぐる変化を見て取ることができると指摘し、中国の貿易額の伸びが近年は急速に鈍化し、特に15年1-9月の輸出入総額は前年比7.9%減となったと指摘。
 中国の製造業はコスト優位を失うと同時に「最良の時代は過ぎ去ってしまったのだろうか」と疑問を投げかけた。

 続けて、ドイツや日本などの製造業大国も過去に生産コストの上昇や産業の空洞化という難題に直面したと指摘する一方、
 「日本やドイツはそれでも製造業の高度化を実現した」
と指摘。
 特に日本は自動車や環境、精密機器、医薬、自動化に関する技術では世界をリードする立場にあると論じる一方で、中国は労働集約型の製造業が弱体化するなか、コスト優位以外の新たな競争力はいまだに形成されていない状況にあると指摘した。



レコードチャイナ 配信日時:2015年11月27日(金) 21時30分
http://www.recordchina.co.jp/a123924.html

1年で4000社が倒産?
中国製造業のメッカ、広東省東莞市で工場閉鎖ラッシュ―中国

 2015年11月25日、新京報によると、中国製造業拠点の集積地、広東省東莞市で工場の閉鎖が相次いでいる。
 ここ1年で4000社が倒産したとも指摘されているが、当局は「倒産ラッシュには至っていない」としている。

 広東省では東莞市、深セン市などで工場の受注が急減。
 生産ラインを東南アジア、アフリカなどに移す企業が増加している。
 地元メディアは「東莞に倒産ラッシュ」と伝えている。

 しかし、地元に悲観的な空気は広がっていない。
 東莞市長は
 「倒産したのは一部のみ。
 市場の淘汰が進んでいるだけで、製造業全体が危機に陥ったとはいえない」
と強気の姿勢を示している。

 専門家によると、東莞市では製造業の工場倒産が相次ぐ一方で、科学技術や有名ブランド関連業種が業績を上げている。
 衰退する業界がある一方、波に乗る業界がある状態だ。
 これは中国の産業は必ず通らなければならない道ともいえよう。




現代ビジネス 2015年11月02日(月)  高橋 洋一
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46183

中国は見事に「中進国の罠」にハマった! 
急ぎすぎた覇権国家化のツケ
経済は急失速、
軍事ではアメリカに完敗

■歴代の政権に失望する韓国の財界人

 日中韓首脳会談が、ソウルで3年半ぶりに開催された。
 日中韓首脳会談の定例化などが確認され、3ヵ国の新たな協力体制がとりあえず確立された。

 ホスト国の韓国は日中韓首脳会談を成功させたので、一安心だろう。
 2008年から毎年開催されていたが、2012年5月を境に開催されていなかった。
 2012年8月の李明博竹島上陸、9月の尖閣諸島問題で日韓、日中の関係が悪化したためだ。
 そのことは今も尾を引いている。
 中韓首脳会談は日中韓首脳会談の「前」に行われたが、日中首脳会談と日韓首脳会談はその「後」に行われた。
 この会談の順番でもわかるように、
 日本vs.中国・韓国というのが基本構図だ。

 例えば、歴史問題では中韓は共闘して日本に対峙する。
 日中韓首脳会談直後の記者会見で、ホスト国の朴・韓国大統領は「歴史問題」とは明言しなかったが、李・中国首相は何度も歴史問題と言及していた。

 ホットな南シナ海問題について、三首脳は記者会見で言及しなかった。
 本来韓国は米韓同盟もあるし、韓国にとっても重要なシーレーンの問題であるので、取り上げるべきなのだが、中国の手前それはできない。

 TPPについて、安倍首相は言及したが、朴大統領と李首相はもっぱら日中韓FTAの話題ばかりだ。
 本来であれば、韓国はTPPに参加すべきで、事実、韓国財界はTPPへ参加したがっている。
 日本に頼んでも参加したほうが韓国の国益にもなるが、これも中国に遠慮している。

 韓国財界は、これまで日本より中国を優先してきた歴代政権に失望しているだろう。
 日本への対抗心で、今年2月、2001年7月に始まった日韓通貨スワップが打ち切られた。
 ところが、先月、韓国の経済団体、全国経済人連合会は、日本の経団連に対して、日韓通貨スワップの再開を求めている。
 このことからも、それは明らかだ。

 これまでの判断ミスをさらに印象付けているのは、中国の状況だ。
 今の中国は「外患内憂」という言葉がぴったり当てはまる。
 もし中国が好調ならば、韓国の中国寄りの姿勢は功を奏しているといえるが、そうでない以上、まるで当てが外れてしまっている。

■覇権国家になろうとする中国の「浅はかさ」

 まず、中国の「外患」として、南シナ海問題がある。
 10月27日、米海軍のイージス駆逐艦が南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)の海域を航行し、米中間の緊張が高まっている。

 中国は、近年南沙諸島に拠点を築くことに躍起になっている。
 太平洋へと進出する足がかりを作るためだ。
 その流れで見ると、尖閣諸島に異常なこだわりを見せる理由もよく分かる。

 南沙諸島(スプラトリー諸島)における中国の埋立などについては、本コラムでも写真入りで書いた(「安倍首相はポツダム宣言を読んでいた!? 理解不能だったのは党首討論での集団的自衛権めぐる共産党の主張だ」)。

 つまり中国は、かつてのイギリスと今のアメリカが海洋国家で世界覇権をとったように、これまでの内陸国家の性格を変えてまでも、今こそ海へと進出し、覇権国家になろうとしているのだ。
 「太平洋二分論」まで匂わせている
★.習近平は、明確かつ具体的に、
 中国という内陸国家を海洋国家へとシフトさせようとしている、初めての国家主席
といえるだろう。

 安全保障からみると、中国が海洋国家化を進める理由の一つは、アメリカその他の国々の軍事技術の発達だ。
 軍事衛星の映像やグーグルの衛星写真を見れば、この事情は容易にわかるだろう。
 非常に鮮明で、砂漠だろうと森林地帯だろうと、内陸部の軍事施設は、ほぼ丸裸である。
 いくら優れた軍事施設をもっていても、あれほど鮮明な衛星技術をもって空から攻撃されたらひとたまりもない。

 しかし、海中の原子力潜水艦であれば、空からはとらえられない。
 しかも、原子力潜水艦は、燃料の心配なく長期間の連続航行が可能であり、有り余る電力によって海水から酸素も作れるので、数ヶ月以上の連続潜行ができる。
 おそらく原子力潜水艦が現時点で最強の兵器だろう。

 中国は、南シナ海を支配し、そこを通じて太平洋に原子力潜水艦を配備したいのだ。

 しかし、中国の行為は国際法を完全に無視している。
 国際法上は、満潮時に水に潜ってしまう岩礁は「島」ではない。
 したがって、そこをいくら埋め立てて「島」のようにしたとしても、国際法上は「領土」にはならない。中国はそれを無視して、領有権を主張していることになる。

■日和った中国

 海洋の自由航行は、海洋国家アメリカにとって死活問題となる。
 そこで、オバマ政権は、遅ればせながら、海軍のイージス駆逐艦を派遣して、中国の領有権主張を牽制したのだ。

 海洋国家になりたい中国だが、海軍力での相対的な軍事格差から、中国はアメリカと一戦を構えるはずない。
 もし戦えば徹底的に敗北し、中国の体制崩壊につながるからだ。
 中国はそれを分かっているから、米イージス駆逐艦に対して、「監視、追尾、警告」と、対内的にはアピールできても、国際的には事実上何の意味もないことしたできなかったわけだ。

 もし中国がまともに対するのであれば、かつて黒海でソ連が米艦に行ったように、船の体当たりくらいはやるはずだ。
 必要なら、中国漁船を米イージス駆逐艦の前に派遣するくらいのことをするだろう。

 なお、今回のアメリカの行動は、日本の安全保障に資する。
 本コラムでこれまで述べてきた国際関係論(7月20日付「集団的自衛権巡る愚論に終止符を打つ! 戦争を防ぐための「平和の五要件」を教えよう」)からみれば、安保法で日米同盟は強化されたので、中国は、迂闊に尖閣に手出しをできなくなった。

 尖閣は日米安保の対象であるとアメリカは明言しているので、南シナ海に展開しているアメリカ軍は、尖閣でなにかあればすぐにでも対処できるからだ。

 さらに、南シナ海は日本のシーレーン(海上の交通路)の一つたが、それも守られることになる。

■なぜ中国の統計はデタラメなのか

 次に、中国の内憂について。いうまでもなくそれは経済だ。
 米イージス駆逐艦が南シナ海を航行している時、五中全会(中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議)が開かれ、2020年に2010年のGDPを2倍にするという目標が決められた。
 これは、7%成長を維持するという意味だ。

 この数字を中国人に聞けば、誰も「信じていない」というだろう。
 本コラムでも、今の中国経済は7%成長どころか、マイナス成長であると書いた(8月24日付け「衝撃!中国経済はすでにマイナス成長に入っている? データが語る『第二のリーマン・ショック』」)。

 実は、中国の統計は、それを作成する組織もその作成手法も旧ソ連から持ってきたノウハウで行っている。
 中央集権・計画経済の社会主義国では、統計のいい加減さでは似たり寄ったりの事情だ。
 ロシアでは、ペレストロイカの前まで経済統計は改ざんされていたが、批判はタブーだった。
 しかし、ペレストロイカ前後、ロシア人研究者などがそのでたらめ具合を明らかにした。

 例えば、1987年、セリューニンとニーハンによる「狡猾な数字」が発表され、ソ連の公式統計では1928~1985年の国民所得の伸びが90倍となっているが、実際には6.5倍にすぎないとされた。
 平均成長率は年率8.2%から3.3%へとダウンだ。
 57年間にわたって、国内外を騙し続けたのだ。

 公表されている統計からみても、そろそろ中国が経済成長の停滞期に入るだろう、というのが、ほとんどの学者のコンセンサスである。
 それは、「中所得国の罠」といわれる。

■中国も陥った「中所得国の罠」

 「中所得国の罠」とは、多くの途上国が経済発展により一人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷することをいう。

 この「中所得国の罠」を突破するのは結構難しい。
 アメリカを別格として、日本は60年代に、香港、シンガポールは70年代に、韓国は80年代にその罠を突破したといわれている。
 ただし、アジアでもマレーシアやタイは罠にはまっているようだ。
 中南米でも、ブラジル、チリ、メキシコも罠に陥っているようで、一人当たりGDPが1万ドルを突破してもその後は伸び悩んでいる。

 そこで中国の動きを、これらの国のこれまでの軌跡とともに示したのが下図である。


 実際のデータは、かなり複雑な動きなので、それぞれ2次曲線で回帰させ、各国の特徴がそれぞれわかるようにしている。

 これまで中国は驚異的な成長率を保ち、「中所得国の罠」を破ろうとする勢いだったが、急速に成長率が低下し、壁にぶち当たっているのがわかる。

 さらに、旧ソ連と同じように、5%程度も成長率が割増になっているとしたら、上の図で中国を左下に引き下げれば、これまで「中所得国の罠」に陥った国と同じ傾向になる。

 中国は「中所得国の罠」を破れるだろうか。
 世界銀行やOECDなどから数々の提言が出ているが、筆者には中国が一党独裁体制をやめない限り、罠をやぶることは無理だと見る。

 ミルトン・フリードマン『資本主義と自由』(1962年)では、政治的自由と経済的自由は密接な関係があって、競争的な資本主義がそれらを実現させると書かれている。
 経済的自由がないと、国際機関の提言は実行できない。
 経済的自由を保つには、政治的自由が必要になる。
 つまるところ結局、一党独裁が最後に障害になるのだ。

 そう考えると、中国の外患内憂はそう簡単に解決しないだろう。



JB Press 2015.10.27(火) 柯 隆
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45059

数十倍に膨らんだ捏造「生産高」報告を喜んでいた毛沢東
~中国の経済統計は信用できるのか

 2015年、中国政府は7%成長を政策目標として掲げている。
 第1四半期と第2四半期の成長率はいずれも7%だった。
 こんな偶然はめったにない。

 中国国家統計局のスポークスマンは中国の経済統計は十分に信用できるものだと豪語する。
 一方、世界の中国ウォッチャーは中国のマクロ経済統計は信用できないと指摘する。

 ただし問題は、中国のマクロ経済統計が信用できないという証拠を示せないことだ。
 なぜならば、誰も中国のオリジナルデータを検証できないからである。

 多くの専門家は中国のマクロ経済統計が信用できない証拠として「李克強指数」を挙げている。
 李克強指数は、李氏が首相に就任する前に既存のGDP統計が信用できないとして作成した、
 鉄道貨物輸送量、電力消費量、銀行貸出残高からなる指数だ。
 李氏はその指数を使って中国経済のトレンドを捉えようとした。

 しかし、李克強指数と実質GDPを比較することはできない。
 なぜならば、実質GDPはGDPデフレータで実質化されているが、李克強指数は名目値である。
 そして、李克強指数の構成の合理性は説明されていない。
 例えば、鉄道貨物輸送の大半は石炭であり、消費財の輸送が含まれていない。
 さらに、銀行貸出は政府の影響を強く受けるため、客観的なデータとは言えない。
 李克強指数は中国経済のトレンドを捉えるための参考にはなるが、GDPに取って代わるものではない。

■数十倍もの毛沢東への報告

 一部の評論家は、中国は一党独裁の政治体制だからマクロ経済統計が信用できないと指摘している。
 この指摘には論理性がないが、マスコミに受けるのは事実である。

 中国の経済統計システムの歴史的な変遷と現在の経済統計の問題点を明らかにしてみたい。

 まず、中国の経済統計システムの歴史的な変遷を見ていく。

 建国して間もない計画経済の時代、中国の経済統計は旧ソ連のシステムを学んで作ったものだった。
 「国民所得勘定」と呼ばれるこの統計システム(MPS)では国内総生産(GDP)の考えはなく、すべての経済活動によって作り上げられた付加価値の合計が「国民所得」として定義された。
 その統計の集計は統計局が行った。
 各経済ユニットが統計申告書に記入した数字を統計局が集計して、マクロ経済統計を作成した。

 この国民所得の集計は、中央集権型の計画経済に適するものだった。
 国有企業や人民公社は自分たちの経済活動を定期的に報告した。

 だが、問題もあった。
 すべての経済ユニットが正しく経済活動を申告するとは限らないということだ。
 人間の心理として、朗報は喜んで報告するが、経済運営がうまく行かない場合は報告したがらない。

 毛沢東時代には「大躍進」政策が展開された。
 短期間でイギリスとアメリカに追いつき、追い越すための運動だった。

 国有企業と人民公社は毛沢東の号令に応えようと、鉄鋼と食糧の生産高を、実際の数値よりも数十倍も膨らませて報告した。
 報告を受けた毛沢東は心より喜んだ。
 そして、鉄鋼生産量もたちまちアメリカとイギリスに追いつくはずだった。

 だが真実はまったく逆だった。
 大躍進運動の失敗により農業が不作に見舞われ、1959~62年の3年間で少なくとも3000万人が餓死したと言われている。

■旧ソ連の統計システムを廃止してGDP算出へ

 旧ソ連の統計システムは1985年まで使われた。
 85年以降、中国政府は経済統計の集計方法の改革と統計システムの再構築に乗り出した。

 国民所得の計算こそ継続されたが、統計は、中央から地方まで、新たに設立された統計局によって集計が行われるようになった。

 やがて経済の自由化の進展にともない、中国では“非国有”経済が現れた。
 国有企業ならば、政府に統計申告書の記入を求められれば、それに応えなければならない。
 しかし民営企業や外資系企業は、会社情報を政府にすべて開示する義務はない。
 多くの企業にとって経営実績は機密事項である。
 こうして政府が実態を把握できない企業活動が増えていった。

 また、中国経済の開放が進むにつれ、国際機関や先進国との経済交流が盛んになっていった。
 だが、中国の経済統計と、先進国および国際機関の経済統計とを比較することは不可能だった。
 中国は世界銀行およびIMFのメンバーである以上、経済統計の近代化が必要不可欠である。
 そこで1993年、冷戦が終結した直後、とうとう重い腰を上げて経済統計の抜本的な改革に乗り出した。
 具体的には世界銀行の資金援助を受け入れ改革を行った。

 まず、旧ソ連の統計システムが全面的に廃止された。
 その代わりに、国民経済勘定体系(SNA)の統計が取り入れられた。
 そして、各経済ユニットによる統計申告書の記入に代わり、サンプリング調査が取り入れられた。
 このときから中国では「国内総生産(GDP)」の概念が広く使われるようになった。

 GDPを算出するためには、各々の産業部門を分類し、産業連関表を編成しなければならない。
 しかし中国の産業分類は8種類で、きわめて粗いものだった。
 地方政府レベルで設立された統計局がこれらの産業の統計を集計するが、データの信憑性、客観性は担保されていない。

 さらにはGDPを算出する段階で技術的な操作が加えられる。

 生のデータがいったんコンピューターに入力されれば、中央レベルの国家統計局がそれを改ざんするのはきわめて難しい。
 それぞれの統計が強い関連性が定義されているため、1つの統計を改善すれば、コンピューター上でエラーが出てくるからである。

 では、どのようにマクロ統計の数字を操作するのだろうか。

★.中国当局は、GDPを算出する段階でどのように数字を操作するのだろうか。

 通常は各々の産業部門から集計された統計をもとに名目GDPが計算される。
 名目GDPとは物価の変動が考慮されていないGDPの規模と伸び率である。
 それを他の年度のGDPと比較するためには、GDPデフレータまたは消費者物価指数で割り引いて実質化する操作が必要である。
 例えば、名目GDPが9%伸びたとし、消費者物価指数は2%上昇したとする。
 名目GDPの伸び率の2ポイントは物価上昇分であり、それを取り除かなければならない。
 したがって、この場合の実質GDPは9-2=7%になる。

統計局にとって、もっとも操作しやすい統計は消費者物価指数である。
 すなわち、消費者物価指数を実際の数字より低く抑えれば、実質GDPが高くなる。
 例えば消費者物価指数が3%だとしたら、それを2%にするだけでGDPは1ポイント高くなる。

■消費者物価指数の構成ウェイトを調整

 では、具体的にどのように操作が行われているのか。
 昔から中国が公式に発表する消費者物価指数は、消費者の実感よりも低いと言われている。
 消費者物価は、食品、通信費、交通費と住居費などいくつかの消費財とサービスに分類し、その価格の上昇率を計算する。
 消費者物価指数を算出する段階で、各々の消費財とサービスのウェイトを決めなければならない。
 そのウェイト付けは恣意的になりがちである。

 図1に示したのは、2011年に国家統計局が行った消費者物価指数の構成ウェイトの調整だ。
 調整前に比べると、調整後の食品支出のウェイトが明らかに抑えられている。


図1 2011年、中国国家統計局によるCPI構成ウェイトの調整
(資料:中国国家統計局)

★.中国の場合、食品価格と住居費はもっとも上昇率が高いが、それが低く抑えられているため、消費者物価指数が低くなる傾向が強い。

 例えば、食品のウェイトは31.8%と決められているが、その根拠は明らかにされていない。
 中国のエンゲル係数(家計の所得に占める食品支出の割合)は38%とされている。
 実は、エンゲル係数は実態からかなりかい離しており、都市と農村の平均的な家計のエンゲル係数は40%を上回っていると見られている。

 また、近年は不動産バブルが大きく膨張している。住居費の支出も拡大している。
 しかし、消費者物価指数に占める住居費支出は17.2%と低く見積もられている。

 以上を勘案すれば、消費者物価指数は統計局が公表している数値よりも高いはずである。

 中国の経済統計は、各々の産業から集められている生データの信ぴょう性が欠けるのと同時に、名目GDPを実質化する段階で消費者物価指数が低く抑えられている。
 そのため、実質GDP伸び率が高くなっている。

 図2に示したのは中国の実質GDP伸び率、名目GDP伸び率とCPIの推移である。
 2000年以降、CPIが低く抑えられていることが確認できる。


図2 中国の名目GDP伸び率、実質GDP伸び率と消費者物価指数の推移
注:2000年以降、消費者物価指数の値は低く抑えられている。
(資料:中国国家統計局)

■過小評価の可能性もある中国の「経済活動」

 さて、これまでの議論と矛盾するようだが、中国のマクロ経済統計が実態を水増ししている一方、現在のGDP統計が示している経済規模は、実際の経済力を過小評価している可能性が高い。
 なぜならば、現行の経済統計に反映されていない経済活動がたくさんあるからである。

 OECD(経済協力開発機構)では、正規の経済統計で捕捉されていない経済活動を「未観測経済」(Non-observed economy)と定義している。
 それによれば、
 イタリアの未観測経済のGDP比は15%であり、ロシアでは25%に上ると言われている。

 中国はOECDのメンバーではないが、未観測経済のウェイトがロシアを下回るとは考えにくい。
 少なく見積もっても、
 中国の未観測経済のウェイトは最低でも20%はある
だろう。
 GDP伸び率が過大評価されている分と相殺しても、実際のGDP規模は統計より大きいはずである。

 未観測経済としては、一般的にマフィアやマネーロンダリングといった地下経済のことを思い浮かべるだろう。
 だが、中国の未観測経済は必ずしも「黒社会」の経済ではない。

 例えば、弁護士、家庭教師、ピアノなどの習い事の先生、および工事現場の日雇い労働者の給料などはほとんど未観測経済に属する。
 これらの経済活動は、統計局のみならず税務署も十分に把握していない。

■大学教授、職員が手にする灰色収入

 北京市政府傘下の国民経済研究基金会の推計によれば、
★.中国人の所得のうち、GDPの12%相当が税務署によって捕捉されていない「灰色収入」
である。
 すなわち、所得だけでも、白(合法)、黒(違法)、灰色の3分類になる。
 OECDの定義では、白の合法の収入はマクロ経済統計に反映されているが、黒と灰色の収入は経済統計に反映されていない。

 実は、灰色収入について明確な定義がなされていない。
 例えば、中国の大学は日本の大学と同じように定員制になっている。
 一学年にどれぐらいの学生を採用できるかについては、教育部(省)が定員を定めている。

 入試で合格ラインに達した学生はもちろん問題なく入学できる。
 だが、合格ラインまで5点、10点足りない学生も、定員の枠外で入学できることがある。
 合格ラインまで足りない点数に応じて、例えば1点につき2万元(約38万円)という相場で、つまり10点足りなければ380万円を払って入学しているのだ。

 枠外で入学した学生の学費およびその他の雑費は、学生の教育に携わる教授や学校事務職員の副収入になる。
 教授と職員からすれば労働の代価であり、「黒」の収入ではない。
 かといって合法なものでもない。
 結果的に「グレー」の所得になる。

 もう1つ、大学の事例を挙げよう。
 中国の大学では、近年、「EMBA」(Executive MBA)のコースを開設し、社会人大学院生を募集するところが増えている。
 ただし、日本の社会人大学院と違って、中国のEMBAのほとんどの学生は民営企業の経営者である。

 彼らはMBAの学位は欲しいが、真面目には勉強したくない。
 そこで大学は、彼らに世界中を豪遊させる。
 ところどころで形式的に授業するが、真面目な勉強はほとんどしない。
 世界中を豪遊するため「授業料」は信じられないほど高い。
 なかには、2年間のコースで数十万ドルのコースもある。
 そして「授業」が終われば、大学から学位記が交付される。

 このようなEMBAコースの授業料はまったく大学の正規の会計帳簿に反映されず、オフバランスになる。
 こうしてみれば、中国の実体経済の未観測の部分の大きさが少しは理解できるだろう。

■内実を把握するのはきわめて困難

 総括すれば、中国のマクロ統計は確かに水増しされている可能性が高いが、実態は明らかではない。

 1つの可能性は、地方レベルで集計される生データが信ぴょう性、客観性を欠如しているということである。
 もう1つは、名目GDPを実質化する段階で消費者物価指数(CPI)が人為的に低く抑えられていることである。
 その結果、実質GDPが実際よりも過大評価された数字になっている。

 一方で、GDPは過小評価されている可能性も高い。
 大きな未観測経済の活動があるからだ。
 中国経済の内実をきちんと把握するのは決して簡単な作業ではない。

サーチナニュース 2015-11-04 06:32
http://biz.searchina.net/id/1593196?page=1

中国製造業、
「労働集約型」が苦境に直面 
「高度化」は間に合うか=中国メディア

 世界の工場と呼ばれた中国で、労働集約型の製造業が苦境に直面している。
 中国はかつて、安価で豊富な労働力を背景に世界中から投資を集め、加工貿易によって経済を発展させてきたが、近年は人件費の上昇によって外資メーカーが工場を東南アジア等に移転させるケースが増えている。

 広東省東莞市は中国国内でも特に多くの工場が集まる地域として知られるが、中国メディアの毎日経済網は2日、東莞市では陶磁器や家具、おもちゃなど「労働集約型」の産業やメーカーにおいて倒産が相次いでいると伝えている。

 また、企業の倒産が増えているのは決して東莞市だけではない。
 同じく広東省の清遠市や仏山市なども同様に企業の倒産が増えており、毎日経済網は珠江デルタ地域では人件費の上昇だけでなく、生産能力の過剰という問題によって倒産にいたる企業が多いことを指摘した。

 さらに、珠江デルタ地域の労働集約型製造業の現場では受注量の減少を背景に、企業と労働者間の紛糾も起きているようだ。
 毎日経済網は中国の輸出入が減少していることの影響を受けていると主張しているが、つまり人件費上昇によって中国製品の強みであった価格競争力が失われつつあり、中国の工場への発注から他国への発注にシフトしている企業が増えていることが予想される。

 中国政府はコスト優位を背景とした労働集約型の製造業から脱却し、世界の製造強国を目指すとして「中国製造2025」という計画を打ち出した。
 すでに従来型の製造業が立ちゆかなくなってきているが、製造業の高度化は一朝一夕で実現できるものではない。
 中国の経済成長を担ってきた製造業が本格的に不振に陥るのか、それとも高度化が間に合うのか、世界の注目が集まっている。










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2015年10月30日金曜日

南シナ海波高し(8):ハーグ裁判所、南シナ海の仲裁手続き進める決定、中国が直面する「国際的代償」

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テレビ朝日系(ANN) 10月30日(金)13時41分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20151030-00000025-ann-int

中国とフィリピンの係争 審理へ 南シナ海問題

 オランダの常設仲裁裁判所は、南シナ海で中国と領有権を争うフィリピンの主張について、本格的な審理に入ると発表しました。

 フィリピンは、南シナ海での中国の領有権主張は国際法上、認められないとして、オランダ・ハーグの裁判所に仲裁手続きを求めていました。
 これに対し、中国は「裁判所にこの問題を扱う管轄権はない」と主張していましたが、裁判所は管轄権を認めると判断しました。
 今後、本格的な審理が始まることになります。

 一方、29日に行われたアメリカと中国の海軍トップのテレビ会談で、リチャードソン作戦部長は、国際法で保障される海と空を使用する権利を守る役目があると説明しました。
 これに対し、中国の呉勝利司令官は
 「挑発行為を続けるなら緊迫の局面が発生し、不注意の発砲さえ起こるだろう」
などと牽制(けんせい)したということです。



ロイター 10月30日(金)9時34分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151030-00000026-reut-cn

ハーグ裁判所、南シナ海の仲裁手続き進める決定 
中国の主張却下

[アムステルダム 29日 ロイター] -
 オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は29日、フィリピン政府が申し立てていた南シナ海をめぐる中国との紛争の仲裁手続きを進め、今後フィリピン側の言い分を検討するための聴聞会を開くことを決めた。

 関係国間の交渉による解決を唱え、仲裁裁判所に管轄権はないとしてきた中国の主張は認められなかった。

 中国はこれまでこの問題で仲裁手続きを一貫して拒否し、南シナ海全域の領有権を有するとしてフィリピンのほか、ベトナムや台湾、マレーシア、ブルネイなどからの異議にもことごとく耳を貸していない。

 しかし仲裁裁判所は今回、フィリピンが国連海洋法条約に基づいて申請した7件の事項を取り上げる権限があり、中国が仲裁手続きをボイコットしているからといって裁判所の管轄権がなくなるわけではないとの判断を示した。

 米国防当局者は、仲裁裁判所の決定に歓迎の意を表明。
 「南シナ海の紛争に対する国際法の有効性が示されている。
 各国の領有権には論争の余地がないわけではなく、
 国際法と国際的慣行を基礎にしたこうした判断は、
 紛争を解決しないまでも管理を実現できる1つの方法といえる」
と述べた。

 フィリピンの同盟国でもある米国は今週、南シナ海にある中国が埋め立て工事をした人工島の12カイリ以内に海軍艦艇を派遣する「航行の自由」作戦を実施した。

 また米国務省のカービー報道官は定例会見で、
★.仲裁裁判所の決定はフィリピンと中国の双方に法的拘束力を持つとの見方
を示した。

 米上院軍事委員会のマケイン委員長も裁判所の決定を称賛した上で、
 米政府は航行の自由作戦を定期的に行うことなどで今後もフィリピンなどの同盟国や連携する国を支援するべきだと強調した。

 米戦略国際問題研究所(CSIS)の南シナ海専門家、ボニー・グレーザー氏は、フィリピンはこの問題で中国と十分な交渉をしていないとする中国側の主張が裁判所の見解で明確に否定された点を踏まえると、中国にとっては大打撃だとみている。


時事通信 10月30日(金)16時3分配信

中国に国際法の「圧力」
=「九段線」は判断保留―仲裁裁判所

 【マニラ、北京時事】
 南シナ海でのフィリピンと中国との領有権紛争に関してフィリピンが起こした国際仲裁手続きで、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は、裁判所の管轄権を認める判断を出した。

 仲裁手続きに反発する中国にとっては、米艦による人工島周辺の航行に続き、「国際的な圧力」(米軍事筋)となる。
 ただ、最大の焦点となる中国の「九段線」が国際法に違反するかどうかについては管轄権に関する判断を避けており、本格審理でのフィリピン側の主張や、手続きに参加していない中国の出方に左右されることになりそうだ。

 軍事力で中国に劣るフィリピンは2013年、「法の支配」の面から中国に対抗する戦略として、紛争解決を国際司法の舞台に委ねる方針を表明。
 裁判所の管轄権に関する判断を「前哨戦」と捉え、法律チームに米国の有力弁護士を加えたほか、7月の口頭弁論では関係閣僚や国会議員が参加するなど「総力戦」で臨んだ。
 このため、今回の決定は「解決に向けた重要な一歩」(政権幹部)と喜ぶ。

 ただ、
★.管轄権を直接認めたのは、フィリピンが主張した15項目のうち、
 中国が人工島造成を進める南沙(英語名スプラトリー)諸島のミスチーフ(中国名・美済)礁などが領海の起点とならない暗礁に当たるのかや、
 中沙諸島・スカボロー礁でフィリピン住民の漁業活動を中国が違法に妨害しているかなど
 7項目に限られた。

  「九段線」の違法性などの項目については、国連海洋法条約が適用されるかどうか判断を留保し、今後の審理に委ねられることになった。
 裁判所は16年に決定を出す見通しだが、
★.フィリピン側の言い分が認められれば、
 「領海」を構成しないとして人工島の12カイリ内に艦船を派遣した米国の主張にも正当性を与えることになる。 

レコードチャイナ 配信日時:2015年11月25日(水) 14時0分

フィリピンによる南シナ海仲裁手続き、審理開始
=中国は「受け入れず、参加しない」立場を再表明―中国メディア

 2015年11月24日、中国の南シナ海での領有権主張は国際法に違反するとしてフィリピンが求めていた国際仲裁手続きで、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は審理を開始した。
 これを受け、中国外交部の洪磊(ホン・レイ)報道官は定例記者会見で、 
 「中国は受け入れず、参加しない」
との立場を改めて表明した。中国新聞網が伝えた。

 洪報道官は、フィリピンが中国側と繰り返し確認した共通認識および「南シナ海における関係国の行動宣言」の約束に背き、一方的に仲裁に持ち込み、中国の南シナ海における領土主権と海洋権益の否定をもくろんでいるとした上で、「仲裁案を受け入れず、参加しないという中国側の立場は極めて明確だ」と述べた。

ロイター 2015/12/4 17:25 ロイター

焦点:南シナ海仲裁手続き、中国が直面する「国際的代償」

●12月2日、一部の外交関係者らによれば、南シナ海における領有権問題に関してフィリピンが中国を相手取って起こした仲裁手続きについて、常設仲裁裁判所が最終的にフィリピンに有利な裁定を下せば、中国は外交・司法面での強い圧力にさらされる可能性がある。
写真は、中国が人工島を建設している南シナ海スプラトリー諸島のミスチーフ礁。5月代表撮影(2015年 ロイター)

[香港/マニラ 2日 ロイター] - 
 常設仲裁裁判所(オランダ、ハーグ)は10月末、、南シナ海における領有権問題に関してフィリピンが中国を相手取って起こした仲裁手続きについて、同裁判所に管轄権があるとの判断を示した。
 このとき中国政府は「何ももたらさない」としてこの判断を受け入れていない。

 こうした中国の主張には、フィリピン当局者だけでなく、一部の外交関係者および専門家も賛同しておらず、常設仲裁裁判所が最終的にフィリピン政府に有利な裁定を下せば、中国は外交・司法面での強い圧力にさらされる可能性があると述べている。

 司法専門家によれば、管轄権をめぐる審理における中国側の主張に対して同裁判所が詳細に反駁(はんばく)していることから、フィリピン政府が勝利を収める可能性はかなり大きいという。
 最終的な裁定は2016年半ばに予定されている。

 外交関係者・専門家によれば、こうした裁定が下れば、特に地域的な会合の場において中国の重荷になるという。
 南シナ海の紛争に国際裁判所が初めて介入することになり、
 中国政府としても無視しにくくなるからだ。

 フィリピン政府が2013年に常設仲裁裁判所に申し立てを行ったときにはほとんど注目を集めず、その後ももっぱら、航路をめぐって展開される緊張の添え物のような扱いを受けていたが、一部のアジア・西側諸国が仲裁裁判所によるプロセスに対して表明する支持は強まりつつある。

 ある専門家は、もし主要な論点について中国に不利な裁定が下されれば、2国間会合や国際的なフォーラムにおいて、西側諸国が中国政府に対する圧力を維持する協調的な立場を取るようになることが予想される、と指摘する。

 「他国は中国政府を批判するための材料として裁定を利用するだろう。
 だから中国はこの問題でひどく動揺している」
と語るのは、東南アジア研究所(シンガポール)の南シナ海専門家、イアン・ストーリー氏。

 ワシントンの戦略国際問題研究所の安全保障専門家ボニー・グレーザー氏も
 「ここに都合の悪い真実がある。
 中国側は、(仲裁裁判所による裁定を)無視し、拒絶することなど簡単だという素振りを見せてきた。
 しかし実際には、彼らは国際的な代償を払わざるをえなくなると思う」
との見方を示した。

■<提訴は「無意味」と中国は主張>

 フィリピン政府は、国連海洋法条約(UNCLOS)で認められた200カイリの排他的経済水域(EEZ)に含まれる南シナ海で開発を行う権利に関する裁定を求めている。
 同条約は主権問題を対象としてはいないが、島嶼(とうしょ)・岩礁などを起点として主張可能な領海・経済水域の体系を大枠で定めている。

 実質的に南シナ海全域に関する権利を主張している中国は、
 国連海洋法条約を批准しているとはいえ、
 今回の審理に参加することを拒否し、
 この件に関する常設仲裁裁判所の管轄権を否定している。
 この水域の各部分については、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾も権利を主張している。

 法律の専門家によれば、
 中国に不利な裁定が下された場合、法的な拘束力は持つものの、
 裁定を執行する機関が存在しないため、政治的圧力以上の効果については予想できない
という。
 常設仲裁裁判所からのコメントは得られなかった。

 中国外務省は1日、中国に対して課されるいかなる決定も中国政府は承認しないとの主張を繰り返した。
 同国は11月24日、この裁判について
 「南シナ海における中国の領海主権を否定しようとする無益な試み」
だとしている。
 オーストラリア国立大学のマイケル・ウェスリー教授(国際関係論)は、中国はいかなる裁定にも拘束される気はないだろうと語る。
 「南シナ海問題は中国の考え方を示す典型的な例だ。
 中国は、現実には(大規模な)紛争のリスクを引き受けることなく、この地域における米国の優位を拒否・排除し、中国がその立場を引き継ごうとしている」
と同教授は話す。

■<国際的な関心の高まり>

 外交関係者の多くにとって、この裁判は、年間5兆ドル(約613兆円)もの海上貿易が経由する航路に関して、中国に国際的な法規範を受け入れさせるうえで重要である。
 ベトナム、マレーシアなどこの海域に関して領有権を主張する国の他にも、日本、タイ、シンガポール、オーストラリア、英国など、常設仲裁裁判所による裁定を遵守するよう中国に要請した国は多い。

 米政府は同裁判所での審理プロセスを支持しているし、ドイツのメルケル首相も10月に北京を訪問した際に、南シナ海での紛争の解決に向けて国際司法に委ねるよう中国に示唆した。
 オーストラリア・日本両国の外務・防衛大臣は11月22日にシドニーで行われた協議後に、南シナ海で領有権を主張する国々が仲裁を求める権利を支持すると述べた。
 仲裁プロセスへの参加を拒否することにより、中国は自らの主張を公式に擁護する機会を失ってしまった。
 中国の地図では、東南アジアの中心部の海にまで広がる「九段線」として中国の主張する領海が示されている。

 フィリピン政府はこの「九段線」の合法性、またその内部での中国の行動について異議を唱えている。
 フィリピン政府は、自国EEZ内での海域開発の権利について裁定を勝ち取ることにより、この海域内の複数の暗礁・岩礁から中国が撤退せざるをえなくなることを望んでいる。

 外交関係者と石油産業筋によれば、最終的な裁定はエネルギー産業のために働く国際弁護士の精査を受けるのではないかという。
 フィリピンおよびベトナム近海の紛争海域に関する権利についても明示されるか確かめるためだ。

 ベトナム政府はフィリピン政府の申し立てを支持する意見を常設仲裁裁判所に提出しているが、まだ自身では中国を相手取った訴えを起こしていない。
 ベトナム政府にもコメントを求めたが回答はなかった。

 インドネシアの安全保障部門トップは先月、同国政府が「九段線」をめぐって中国政府を提訴する可能性があると発言している。

(Greg Torode記者、Manuel Mogato記者)

(翻訳:エァクレーレン)


サーチナニュース 2016-01-10 09:45
http://news.searchina.net/id/1599310?page=1

中国は国際司法の仲裁受け入れない、
「力あるのみだ」
=中国人教授が堂々の「暴論」

 中国メディア・観察者網はこのほど、中国海洋大学の桑本謙教授の
  「南シナ海の仲裁案、中国はなぜ相手にしないのか?」
と際する文章を掲載した。
 桑教授は同文章で
★.国際法とは力のある国家が築いてきた「強盗の論理」であり、
 こちら側の意見に道理があるのに相手が受け入れない場合には「最終的には力ずく」
と主張した。

 南シナ海に存在する島の領有権について、フィリピンは2013年、国家間の対立を調停する国際司法機関のひとつである常設仲裁裁判所で中国を提訴した。
 中国は猛反発を続け、同裁判所が2014年に中国に抗弁の陳述書を提出するよう命じたが拒否し、同裁判を受け入れないと主張した。

 同裁判所は15年10月、フィリピン側の一部の訴えに関して裁判所に管轄権があると判断し、審理を続行すると発表した。
 中国の主張を受け入れない形で、国際司法機関が同問題に本格的に取り組むことが決まったことになる。

 桑教授は文章中で、国連海洋条約制定に中国は参加していなかったとして、「中国はゲームのルールを作った側ではない」と指摘。
 さらに「国際法」は国内法とは違い、力のある国が覇権を握り、世界の警察の役割を担うだけで、実際には「強盗の法」であり、「げんこつが硬い者の言うことが通る」という点で、本当の「法」とは言えないと主張した。

 さらに、文明社会は国内統治においては「野蛮な復讐」を排除したが、国際関係は現在も「野蛮時代」との見方を示した。

 桑教授は南シナ海の領有権問題について
 「われわれに道理がないというのではない。
 しかし道理を説いても相手は認めない。
 道理が通じないなら、実力に頼るしかない。
 道理が通ったとしても最終的には実力だ。
 領土とはもともと、そのようにして作ってきたものだ。
 話し合いで領土ができるわけではない」
と主張した。

 桑教授は1970年生まれ。山東大学威海分校法学院(法学部)、山東大学法学院の講師、助教授、教授を経て現在は中国海洋大学法政学院の教授だ。
 専門は法理学、法律経済学、刑法。

**********

◆解説◆
 国際法とは「力のある国が自らの都合に合わせて作ってきたもの」との桑教授の認識に間違いない。
 しかし桑教授は国際法、ひいては国際秩序の形成の流れは、完全に無視している。

 まず「国際法」という概念そのものが、強国の恣意的行動に歯止めをかける性格を持つものだ。
 たしかに制定時に「わがまま」が通ったとしても、大部分の国がそれを「ルール」と承認した後は、強国といえども状況が変わった際に、再びその場で自らに都合のよい行動を取ることがしにくくなる。

 また、国際法や国際司法機関、さらに言えば中国が安保理常任理事国を務める国際連合も、国家間の対立や争いを「実力」、つまり「戦争」で解決することをできる限り防止することが目的で設立されたものだ。
 「戦争を避ける」との目的は、現在も達成されたとは言い難いが、少なくとも第一次世界大戦が終わってからの歴史の流れだ。
 桑教授は約100年に及ぶ歴史の流れを無視している。

 さらに言えば、第一次世界大戦後に「戦争防止」の気運が発生した最大の理由は、技術の進歩にともない、大量殺戮が可能な兵器が多く登場したことや、それまでの「軍隊と軍隊が衝突する」戦争が、国家間の総力戦、つまり「国民全員と国民全員の殺し合い」に変貌したことがある。

 もうひとつ指摘しておく。
 例えば、これまで「世界の警察官」などと言われてきた米国が、相当な横暴を繰り返してきたことは事実だ。
 「あまりにも阿漕」としか言いようのない事例も多かった。
 しかし米国では自国政府を批判/非難する自由がある。
 米国はベトナム戦争に敗北した。
 ベトナム側が粘り強く戦ったのは事実だが、米国は国内で高まった反戦世論に負けた側面が大きい。
 中国は、核兵器の保有を「公認」されている国でもある。
 人類の生き残りのために核兵器を廃絶すべきであるのは言うまでもないが、「やむをえず」保有を公認されているということは、力の行使についてそれだけ「慎重さが求められている」ことでもある。
 中国海洋大学の桑本謙教授にとっては、人類が生き残るチャンスの拡大を模索してきた歴史の流れも、自国の立場と責任も関係なく、「ほしい物は力ずくで取る」ことだけが大切らしい。









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南シナ海波高し(7):遅れた米艦派遣の代償は? 経済失速していく中国の足元を見て、進軍を強行した

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ロイター  2015年 10月 30日 14:35 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/10/30/analysis-south-china-sea-us-idJPKCN0SO0F920151030?sp=true

焦点:南シナ海の中国けん制、艦船派遣に至る米政権内の葛藤


●10月28日、米国は今週、中国が「領海」と主張する南シナ海の海域にミサイル駆逐艦を派遣したが、政府部内の一部は派遣に至るまでの数カ月に及ぶ「不必要な先延ばし」に不満を募らせていたという。写真は南シナ海で中国が人工島を造成している南沙(英語名スプラトリー)諸島ファイアリー・クロス礁の衛星写真。9月撮影。提供写真(2015年 ロイター/CSIS Asia Maritime Transparency Initiative/DigitalGlobe)

[ワシントン 28日 ロイター] -
 米国は今週、中国が「領海」と主張する南シナ海の海域にミサイル駆逐艦を派遣した。
 だがこの派遣をめぐって、国防総省内の一部当局者は数カ月に及ぶオバマ政権と国務省の「不必要な先延ばし」に不満を募らせていたという。

 カーター国防長官が南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で中国が人工島を急造していることへの対応策として、選択肢を検討するよう要請したのを受け、国防総省は5月半ばには軍用機や艦船の派遣を検討していた。

 結局、米ミサイル駆逐艦「ラッセン」が26日に派遣され、渚碧(同スビ)礁から12カイリ内を航行した。
 これに対し、中国は反発。世界2大経済大国の間で緊張が今後高まっていく恐れが生じた。

 ロイターの報道で露呈した、米艦派遣をめぐって米国内で続いた激しい議論は、それが単に「航行の自由」作戦の1つであるという米政府の主張とは矛盾しているように見える。

 派遣までに数カ月が経過したことで中国の姿勢は硬化し、一部の米当局者や安全保障専門家によれば、必要以上に事が大きくなった。

★.米国政府の慎重な姿勢は、
 南シナ海をめぐる中国の野心が野放しになるのではとの不安を、
 同盟国である日本とフィリピンの一部当局者にも与えた。

 国防総省と米軍当局者らはこの数カ月の間、準備が整っていたが、
★.ホワイトハウスと国務省から「何度も待ったがかかった」と、ある国防当局者は匿名で明らかにした。

 この当局者によれば、ホワイトハウスと国務省は、米軍関係者2100万人の情報が流出したハッカー攻撃のような別の出来事の報復として哨戒活動を行っているように見えることは避けたかった。
 中国はこのハッカー攻撃への関与を否定している。

 「中国がしたことへの報復と見られれば、これは国際法に関する問題であり、航行の自由を行使する権利があるとするわれわれの主張を弱めることを懸念していた」
と、同当局者は話した。

 国務省は、派遣までになぜ時間を要したのかについて公式には答えていない。
 ホワイトハウスもコメントするのを差し控えた。

 行動を求める圧力が高まっていたが、米中関係は慎重を要する時期にあった。
 当時、イラン核交渉が合意へと近づき、9月には中国の習近平国家主席の訪米も控えていた。

 訪米の際に習主席が人工島を軍事化する「意図はない」と明言したにもかかわらず、9月後半までに米政府内では駆逐艦派遣で意見が一致していた。

 ライバル国との衝突を避け、戦争への直接関与を減らしたいと考えるオバマ大統領は、
 外交や経済面で深刻な結果をもたらしかねない意図せぬ武力衝突が起きるリスクと、行動する必要性を慎重にはかりに掛けなければならなかった。

 中国の急速な海洋進出に直面する中、「アジア重視」政策の下で米海軍艦船の6割が2020年までに太平洋に配備される。

 別の米当局者によると、派遣までに長い時間を要したのは、米中両軍の海上での衝突リスクを最小化すべく、確実に万全の措置を取るためだったという。
 南シナ海における哨戒活動の可能性について、オバマ大統領と高官とのやり取りを公にすることは、中国に対する「ノーサプライズ」戦略の一環だったと、この当局者は語った。

 オバマ政権のある幹部は、大統領に提案する選択肢を考え出すため「厳格な省庁間のプロセス」を踏んだとし、「われわれの目的は、海事問題も含め、アジア太平洋地域における戦略的目標を前進させるために賢明な決断を確実に下すことだ」と述べた。

■<遅れた米艦派遣の代償>

 国防総省の当局者らは、行き過ぎた領海の主張に対抗するため、世界中で「航行の自由」作戦を定期的に行っていると語る。
 中国は南シナ海の大半の領有権を主張しているが、ほかにもベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾も同海域の一部領有を主張している。

 国連海洋法条約の下では、これまで海面下に沈んでいた岩礁の上に人工島を造成した場合、周囲に12カイリの領海を設定できないとされている。
 中国が過去2年間で埋め立てを行ってきた、スビ礁など7つの岩礁のうち4つは、建設が始まる以前は満潮時には海面下に沈んでいたと、法律の専門家は指摘する。

 また別の事情に詳しい人物によると、12カイリの領海を設定できるかどうかに焦点を絞り、哨戒活動が中国の主権に異議を唱えることが目的だという印象を避けたいオバマ政権の決意が、派遣までのプロセスを遅らせたという。
 米国は南シナ海での航行の自由を主張する一方で、領有権をめぐる各国の主張に対し、どの国にもくみしていない。

 駆逐艦派遣後、ホワイトハウスは中国の怒りをこれ以上買うことを避けているようだ。
 当初の計画通り、比較的控え目な発言にとどめ、今回の派遣は何ら「米国特有の権利」ではない所定の「航行の自由作戦」だとしている。

 しかし、世界で最も交通量が多い航路の1つであり、年間5兆ドル(約603兆円)の海上貿易が通航する海域で、派遣の遅れは定期的な哨戒活動の一環だとする当初の意図を台無しにしたと、前述の事情に詳しい人物は語る。

 「派遣が遅れたことでより大きな問題となった。
 哨戒活動は定期的な普通の活動であるはずだとする当初の戦略が水泡に帰した可能性がある」。

 米戦略国際問題研究所(CSIS)の安全保障専門家ボニー・グレーザー氏は、派遣があのように遅れたことで複雑な事態になったと指摘。
 「派遣に対するあらゆる配慮のせいで『航行の自由作戦』の有効性が損なわれた」
と述べた。

■<同盟国からの圧力>

 また、米元高官の1人は、ロシアによるクリミア併合に対する西側の反応や、米国がシリアへの直接的な軍事行動を回避したことから、中国が「悪い教訓」を得たかもしれないとの懸念が、昨年に米政権内に存在したと明かした。

 国防総省が8月に公表した報告書によると、2013年12月に中国が埋め立て工事を開始して以降、その敷地面積は6月時点で1170ヘクタール以上に及ぶ。

 今年に入り中国の人工島建設を捉えた衛星画像が公開され大きく報道されると、アジアの米同盟諸国から米国に行動を求める声も高まった。

 フィリピンでは、政治指導者も軍上層部も今回の米艦派遣を歓迎。
 だが、ある軍当局者は匿名を条件に
 「米国がこれからもこの地域に関与していくことを、そろそろ示すべき時期だった」
と語った。

 日本も米艦派遣を支持すると表明。
 ただ、専門家は同国内では米国が実際に行動するのか懐疑的な見方も一部にあったと指摘する。
 元外交官の宮家邦彦氏は、シリアの時とは異なり、
★.米国がやると言ったことを実際に行動に移したことで、
 多くの人に安心を与えたのではないか
との見方を示した。

 航行の自由を主張して、中国の人工島付近を通過したアジアの米同盟国は今のところ存在しない。

 米政権は長い間、単独での哨戒活動は中国に人工島建設をとどまらせるのに十分な抑止力にはならないだろうと認識してきた。
 しかしそれでも、中国の領有権主張にはより直接的な方法で対抗することが重要だと考えていたと、事情に詳しい関係筋は米艦派遣前に述べていた。

 遅きに失したと、ホワイトハウスと国務省を非難する専門家ばかりでもない。

 カーネギー国際平和財団でアジアプログラムのディレクターを務めるダグ・パール氏は、米軍派遣をめぐり、米海軍内部でこの数年間、対立があったとみている。
 「中国、米国の両政府は今、全く無益な衝突を引き起こすことなく、毅然とした態度で、相手の思うがままにはならないと、自国民に示さなくてはならない」
と述べた。

 一方、ある海軍幹部はこうした内部対立を否定。
 そのような決定は国防長官と大統領が決めるものだと語った。

(原文:Andrea Shalal, Matt Spetalnick and David Brunnstrom 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)



現代ビジネス 2015年10月30日(金) 長谷川 幸洋
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46130

中国よ、南シナ海はもうあきらめなさい!
~アメリカを怒らせた習近平政権
たどり着くのはソ連と同じ運命だ

■アメリカは本気だ

 米国のイージス駆逐艦が南シナ海で中国が軍事基地化を進める人工島周辺12カイリ(約22キロ)内に進入した。
 中国は「強烈な不満と断固たる反対」を表明し「あらゆる必要な措置をとる」と対抗する構えだ。
 米中対決の行方はどうなるのか。

 米国側は進入したものの、姿勢はきわめて抑制的だ。
 それは駆逐艦が進入したときの映像をいっさい公開していない点に象徴される。
 進軍ラッパを鳴り響かせて突入したような印象を避けたい意図がにじみ出ている。

 だからといって、
★.作戦に参加しているのは報じられたように、たった1隻の駆逐艦とP8A哨戒機だけだったのかといえば、そうではないだろう。
 中国を過度に刺激したくないために公表していないだけで、
 実はもっと多くの艦船や作戦機、衛星が総動員されているとみて間違いない。

 原子力潜水艦も周辺海域をパトロールしている可能性が高い。
 中国の軍事的能力を推し量るうえで、今回の作戦は絶好の機会になる。
 そんなチャンスをみすみす逃すはずがない。

 それは日本も同じである。菅義偉官房長官は会見で「米軍の作戦の1つ1つにコメントするのは控える」としながら「(米側と)緊密な情報交換は行っている」と認めた。
 駆逐艦「ラッセン」が所属するのは米海軍第7艦隊であり、母港は神奈川県の横須賀基地だ。

 横須賀には海上自衛隊の基地もある。
 横須賀基地は日米とも緊張しているだろう。

★.これはまぎれもない軍事行動である。
 相手が対決姿勢を示している以上、
 米国も日本も自らすすんで手の内をさらけだすわけがない。
 日本の海上自衛隊も姿は見えないが「緊密な情報交換」を基に事実上、米国と一体となって動いているとみていいのではないか。

 一方、中国の側も事前の勇ましい言葉とは裏腹に、これまでのところ抑制的な姿勢を保っている。
 2隻の軍艦が駆逐艦を追尾したものの、それ以上の敵対行動はとらなかった。
 両国の海軍トップ同士は29日にテレビ会談するとも報じられた。
 これも偶発的な衝突を避けるために意思疎通を図る狙いである。

 こうしてみると、緊迫した事態であるのは間違いないが、侵入後も両国は事態をしっかりコントロールしているとみていい。
 そのうえで、さて今後はどうなるのか。

 結論を先に言えば、習近平政権はどうやっても米国には勝てないとみる。

■中国は強気だが、確実に負ける

 それには、かつての米ソ冷戦の経験が参考になる。
 冷戦は1945年の第二次大戦終結直後から始まり、89年のブッシュ・ゴルバチョフ会談で終結するまで半世紀近くにわたって世界各地を舞台に激しく戦われた。

 スプートニクの打ち上げ成功(57年)など一時はソ連の力が米国を凌ぐと思われた時期もあったが、共産主義体制の非効率性は克服できず結局、体制内改革であったはずの民主化政策が引き金になってソ連が崩壊した。
 決め手になったのは経済である。
 東側の経済が西側に大きく遅れをとってしまったのだ。

 米国の政策立案者たちは今回の人工島進入にあたって当然、かつての冷戦を強く意識したに違いない。
 カーター国防長官は上院軍事委員会の公聴会で
 「今後、数週間から数カ月にわたって作戦を継続する」
と述べた。
 しかし、これはまったく控えめだ。

 米国は数カ月どころか数年間、もしかしたらそれ以上の長期にわたって作戦を継続する覚悟を決めているはずだ。
 それは当然である。
★.いったん進入した以上、中国が退かなければ、米国側から退く選択肢はありえない。
 そんなことなら、そもそも進入しない。

 国防長官が長期にわたって作戦を継続する意思を公に表明しなかったのも、また当然である。
 そんな覚悟をあからさまにいえば、中国に向かって「米国はこれからずっと中国と対決していく」と宣言したも同然になってしまう。

 相手にそんな宣言をしてみたところで問題は何も解決しない。
 それどころか悪化させてしまう。
 百害あって一利なしである。
 だからといって、米国に長期戦の覚悟がないという話ではない。
 分かっているが、おおっぴらに言わないだけだ。

 冷戦は結局、ソ連崩壊の形で終わった。
 では中国はどうなるのか。

 もしも中国がいま米国に反撃すれば、目下の軍事力は圧倒的に米国優位なので中国は確実に負ける。
 中国もそれが分かっているから、強気な台詞を吐き続けてきたものの、いざ進入されたら追尾するくらいしかできなかった。

 だからといって中長期的な持久戦に持ち込んだところで、やはり勝てない。
 なぜかといえば、軍事力を支える肝心の経済がいまや崩壊寸前であるからだ。
 躍進した中国経済の秘密はなんだったか。
 パクリと庶民生活を犠牲にした安価な労働力だ。

 中国自身が開発した画期的な技術など、ほとんどないに等しい。
 ブランド品から半導体、冷凍ギョーザに至るまで日本や米国の商品、先進技術をパクってきて真似してきた。
 軍事力の核心部分もパクリだ。
 パクリが本家にかなわないのは当然である。

■ソ連と同じ運命をたどる

 安価な労働力はいまやミャンマーなどに追い上げられ、繊維産業はじめ中国から撤退する企業が相次いでいる。
 不動産も上海株もバブルはとっくに弾けた。
 経済成長が止まる一方、政治的には権力闘争が熾烈になる一方だ。

 そんな情勢で軍事力だけが突出して米国を中長期的にしのいでいくのは不可能である。

 目先の冒険主義に走って軍事衝突を選べば、敗北が政権基盤を揺るがす。
 といって米国とにらみ合いを続けても、長引けば長引くほど、経済力が基盤になる国力バランスは中国不利になっていく。
 加えて日本やオーストラリアも中国に対峙する体制を整えていく。

 中長期的にみれば、中国はソ連と同じような運命を辿るだろう。
 中国がそんな自滅シナリオを避けようとするなら、いまは自ら軍事基地建設を凍結する以外に選択肢はない。
 どちらにせよ、中国は米国に勝てないのだ。

 今回、米国や日本が断固たる態度を示しながらも、けっして抑制を忘れていないのは、最終的には勝つと分かっているからだ。
 ただし、この対決は短期で終わると楽観しないほうがいい。
 長く目に見えない神経戦が続く。
 もしかしたら、何年も。
 そういう覚悟が必要だ。

 それにしても、先の安全保障関連法をめぐって「やれ戦争法案だ。徴兵制復活だ」と騒いでいた野党は、この事態をどう受け止めるのだろうか。
 米国に向かって「戦争反対!」と叫ぶのか。
 南シナ海は日本の重要なシーレーンではないか。

 野党のトンチンカンぶりは安保関連法成立からわずか1カ月であらわになってしまった。 
 こんなタイミングで民主党の重鎮、松本剛明衆院議員(元外相)が離党したニュースが民主党の現在を象徴しているようだ。



夕刊フジ 10月30日(金)16時56分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151030-00000010-ykf-int

習主席、就任以来最大のピンチ 
米艦進攻に打つ手なし 
不気味な軍、上海閥

 中国の習近平国家主席が、オバマ米大統領の“一撃”で窮地に陥っている。
 中国は南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で勝手に人工島を建設してきたが、米国がついにイージス駆逐艦を派遣し、攻勢に出たからだ。
 オバマ氏をナメてかかっていた習氏には打つ手がない。
 江沢民元国家主席率いる「上海閥」の残党や、「30万人削減」を通告された人民解放軍が不満を爆発させ、「習氏排撃」作戦に踏み切る可能性が出てきた。 

 米中が緊張状態にあるなか、米原子力空母「セオドア・ルーズベルト」と、海上自衛隊の護衛艦「ふゆづき」が、南シナ海に面したボルネオ島の北方海域で、共同訓練(=通信訓練や艦船乗り換え訓練など)を行うという衝撃情報が飛び込んできた。
 毎日新聞が29日朝刊で報じた。

 ボルネオ島から、スプラトリー諸島までは数百キロの距離。
 米イージス駆逐艦「ラッセン」が監視・哨戒活動をしている海域に近く、国際法無視の活動を続ける中国への効果的なけん制となるのは間違いない。

 防衛省関係者は29日朝、
 「インド洋で実施した海上共同訓練『マラバール』の帰りで、普段から(帰港途中の)共同訓練は行っている。
 発表するようなものではない。
 ここ1、2日に実施予定だ」
と語った。

 中国13億人の頂点に君臨し、英BBCが「毛沢東以来の『赤い権力者』」と報じた習氏が、就任以来、最大のピンチを迎えている。
 共産党の重要会議「第18期中央委員会第5回総会(5中総会)」の開催中に、「自国の領土、領海だ」と強弁していた南シナ海で米イージス艦の進攻を許してしまったからだ。

 経済運営の5カ年計画や人事問題が注目された5中総会だが、南シナ海での緊張は、国際社会が注視する大問題となった。
 習氏は29日の最終日まで、対米強硬派らによる突き上げを避けられそうにない。

 元航空自衛隊南西航空混成団司令を務めた佐藤守・元空将(軍事評論家)は
 「中国は戦争を起こす気はない。
 自分たちの海空軍力が、こけ脅しの『張り子の虎』であることはよく分かっている。
 しかも、戦争をすればため込んだ金がなくなってしまい、中国経済は即死状態となる。
 だから、『口先』で強く恫喝するしかない」
と、習政権の苦しい内情を指摘する。

 だが、オバマ政権は、習氏を助ける気はサラサラない。

★.オバマ氏は、国際政治や地域緊張の解決に、軍事力を使うことを避ける傾向がある。
 ペンタゴン(米国防総省)に以前から、「中国の南シナ海での暴挙を放置すれば、国際社会の秩序は崩壊する」と進言されても、習氏が9月に訪米する際に腹を割って話し合おうと、先延ばしにした。

 ところが、オバマ氏の首脳会談や夕食会での呼びかけを、習氏は事務的に「(南シナ海は)古来、中国の領土だ」と言い放った。
 その不遜極まる態度に、いつもは穏やかなオバマ氏の堪忍袋の緒が切れた。
 ただちに、ハリス米太平洋司令官に「フリーダム・オブ・ナビゲーション(航行の自由)作戦」の承認を伝達した。
 今後も、中国が「領海」と主張する人工島周辺12カイリ(約22キロ)に艦船を派遣し、監視・哨戒活動を継続する方針だ。

 また、国際社会を巻き込んだ世論戦を展開して、習氏の「反汚職運動」で締め付けられてきた中国共産党内部にも揺さぶりをかける。
 5中総会中のゴーサインは、事実上、
★.「習氏は、カウンターパート(交渉相手)にふさわしくない」
と引導を渡したに近い。

 一方の習氏はこれまで、東シナ海や南シナ海、インド洋、中央アジア、東欧、中東にまたがる「覇権拡大路線」で国内世論の支持を得て、軍の統制も強めてきた。

 9月3日に行った「抗日戦争勝利70周年」記念式典では、軍の掌握が進んだとみて、余剰兵員の「30万人削減」を表明する演説を行った。
 削減で浮いた人件費など600億元(約1兆2000億円)を、兵器や装備のハイテク化につぎ込む考えだ。
 ただ、ロイター通信など複数の欧米メディアは、軍の将校クラスを中心に不満が高まっていると報じている。

★.米国艦船の派遣などでメンツを潰された習氏に、
 中国共産党や人民解放軍の内部から「排撃」の狼煙が上がるのか。

 前出の佐藤氏は
 「習氏は追い込まれている。
 上海閥の残党や軍の不満分子から、いつ排除されてもおかしくない」
と分析した。
 これまでも指摘されてきた「クーデター」や「暗殺」が現実味を帯びてきたようだ。

 さらに、佐藤氏は1962年のキューバ危機の再来も指摘する。

 当時のソ連のフルシチョフ第1書記は「(西側諸国を)葬ってやる!」と恫喝していたが、核戦争の恐怖がピークに達したキューバ危機で、最後はケネディ米大統領に「譲歩」して、中距離弾道ミサイルをキューバから撤去した。

 佐藤氏は、これが失脚の一因になった例を挙げて、「習氏が同じようなケースをたどる可能性も十分ある」との見方も示している。



産経新聞 10月30日(金)19時55分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151030-00000571-san-asia

米イージス艦南シナ海派遣 
「親中派」のターンブル首相 米作戦支持しつつ、
中国との軍事演習にも参加

 【シンガポール=吉村英輝】
 南シナ海で中国が「領海」と主張する人工島周辺に米国がイージス艦を派遣したことで、米国の同盟国であるオーストラリアが対応に苦慮している。
 経済的関係が強い中国への配慮から、中国が反発する米国の示威行動への参加は否定しつつ、「航行の自由」の重要性を認識していることを示すため独自の艦船派遣を目指すが、周辺国の理解を得られるかは不明だ。

 ペイン豪国防相は29日、豪海軍のフリゲート艦2隻を中国広東省湛江の基地に派遣し、来週からの中国海軍の演習に参加させると発表した。
 ロイター通信が伝えた。

 南シナ海での米中緊張を受け、中国への艦船派遣を延期するとの観測もあがったが、ペイン氏は声明で「予定の変更や延期はない」と言明。
 海軍同士で長年関係を築いてきた国に「中国も含まれる」とした。

 ペイン氏の中国への配慮は、米艦船派遣を受けた27日の声明でも明らかだ。
★.米国の「航行の自由作戦」が「国際法に沿っている」と支持を表明
する一方、
★.「(南シナ海での)米国の現在の行動に参加することはない」と距離を置いた。

 アボット前首相から9月に政権を奪取したターンブル首相について、南洋工科大学(シンガポール)の古賀慶助教は
 「経済優先の結果、中国寄りとみられ、外交的には冒険をせず安定重視だ。
 国際状況を見極め、中国や米国との関係構築を進めている」
と指摘する。

 豪メディアも27日、
 「豪州は米海軍の挑戦を支持するが傍観を続ける」(シドニー・モーニング・ヘラルド)、
 「米国の作戦へ参加するよう圧力を受けるだろう」(ABC放送)
などの論評を報じた。

 豪州としても、同国の輸出の約6割が通過する南シナ海の安定に寄与する姿勢を国際社会に示す必要がある。

 豪海軍は、米国防総省が人工島周辺への艦船派遣の検討をはじめた今年5月から、独自か米国などと共同の南シナ海への艦船派遣計画を立ててきたとされる。

 ペイン氏は、中国の反発を避けながら地域の安全保障への主体的関与をアピールするため、米国と共同ではなく、独自に南シナ海への艦船派遣を模索するとみられる。
 ただ、隣国のインドネシアなど豪州と関係がぎくしゃくしている周辺国もあり、シンガポールの外交筋は
 「豪州艦船が南シナ海に受け入れられるのは難しい」
とも指摘する。



時事通信 10月31日(土)8時33分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151031-00000029-jij-int

米中「大国関係」に亀裂'
=衝突回避へ配慮-南シナ海の人工島沖航行

 南シナ海で中国が造成した人工島から12カイリ以内を米艦が航行したことを受け、同海の主権を「核心的利益」と見なす中国は「主権への脅威」(外務省報道官)と激しく反発した。
  習近平国家主席はオバマ大統領との間で「核心的利益」を尊重し、「衝突せず、対抗せず」を基にした「新型大国関係」構築を推進していただけに、米中関係には大きな亀裂が入った。
 一方で決定的な対立は避けたいというのが双方の本音で、軍事的衝突という事態に至らないよう細心の注意を払う見通しだ。

■中立アピール

 米国防総省は5月に、12カイリ内に軍艦を送り込む「航行の自由」作戦の実施を警告して以来、決行のタイミングを計ってきた。
 オバマ大統領は9月下旬の習主席との会談でも中国側に柔軟な姿勢が見られなかったことから、実行を承認。
 ただ、トップ会談から1カ月後の作戦実施には、中国から
 「相互信頼を損ない、新型大国関係と両軍関係構築に向けた努力に反するものだ」(国防省報道官)
との批判が上がる。
 米側には中国を刺激しないよう苦心を重ねた形跡もある。
 米政府は今回の作戦に関し、「特定の国を標的にしたものではない」と繰り返し強調。
 ロイター通信によれば、米艦はベトナムやフィリピンが実効支配する岩礁から12カイリ以内も通過し、「中立」をアピールした。

■世論を警戒

 中国では今回の作戦が2001年に起きた米中軍用機接触事件などを想起させ、インターネット上で「中国軍艦も米国の海域に入るべきだ」と強硬な対抗措置を求める世論が盛り上がっている。
  一方、共産党機関紙・人民日報系の環球時報は社説で
 「米国は中国と軍事的な摩擦を起こす考えはなく、
 ただの政治的なアピールだ」

と強調し、国民に冷静な対応を呼び掛けた。
 北京では党の重要会議・第18期中央委員会第5回総会(5中総会)が29日までの日程で開かれており、中国指導部は批判が政権に向かうことを警戒し、民族主義的な主張の高まりを抑えたい思惑とみられる。

■修復模索か

 米政府は今後も人工島の周辺海域に米艦を派遣する構えを見せている。
 ただ、南シナ海を舞台にした軍事衝突は、米中双方にとって「最悪のシナリオ」となる。
 米艦は中国の人工島の12カイリ内に入る際、追尾していた中国艦と無線で交信したとされる。
 中国軍少将は
 「追尾や警告は一定のルールに従っている。衝突することはないだろう」
と指摘する。
 米国務省のカービー報道官は「米中関係は極めて重要だ」と関係発展への意欲を表明。
 中国外務省の陸慷報道局長も「対話を通した解決」を訴えた。
 米太平洋軍のハリス司令官は作戦を控えた今月上旬の段階で「中国には軍同士の交流を続ける決意だと伝えてきた」と述べた。
 同司令官は11月初旬に訪中する見通しで、衝突回避に向けた話し合いが行われる可能性がある。

 11月にはフィリピンでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議など米中首脳らが集まる国際会議が立て続けに予定されている。
 こうした場で顔を合わせる両首脳が亀裂の修復を模索するのか、それとも応酬を展開するのかで、今後の米中関係の行方が左右される。

(北京、ワシントン時事)








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『一人っ子政策』廃止へ(1):生物的生態的社会文化環境的な歴史の壮大な実験が中止される!

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●NNNニュース


ロイター  2015年 10月 29日 23:35 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/10/29/china-growth-birth-idJPKCN0SN1BJ20151029

中国、今後5年は中高速の成長目指す 
「一人っ子政策」廃止へ


[北京 29日 ロイター] - 経済運営の5カ年計画を討議する中国共産党の党中央委員会第5回全体会議(5中全会)が29日閉幕し、新華社によると、共産党は、向こう5年間は中高速の経済成長を目指す、との方針を明らかにした。

共産党はまた、全ての夫婦について、
 第2子を持つことを認める方針を示した。

 新華社は
★.「中国は、全ての夫婦に対して、2人の子供を持つことを認める。
 数十年に及んだ一人っ子政策を廃止する」
と伝えている。
 新政策の実施時期などの詳細については、現時点で明らかになっていない。

 中国では2012年、労働年齢人口が数十年ぶりに減少に転じた。

 国営ラジオが5中全会の声明を引用して伝えたところによると、中国は、今後5年間で経済成長に占める消費の割合を大幅に高める方針。

また、国営ラジオと新華社によると、中国は、相対的に速いペースでの経済成長を維持するため、経済政策の的を絞った調整を拡大する。



Bloomberg 2015/10/29 22:43
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151029-00000060-bloom_st-nb

中国が一人っ子政策を廃止
-バランス成長に向け少子高齢化に歯止め

    (ブルームバーグ):
 中国共産党は1970年代の後半に導入した「一人っ子政策」の廃止を決めた
 将来の成長を損ねかねない少子高齢化の歯止めを急ぐ。
 中国はバランスの取れた経済への移行に取り組んでいる。

 共産党の意思決定機関である中央委員会が、全ての夫婦に子供を2人持つことを認める提案を承認した。
 国営の新華社通信が29日、第18期中央委員会第5回総会(5中総会)閉幕に伴い発表された声明を引用して報じた。
 先の出産規制緩和策は出生数を年200万増やす目標の達成に至らなかった。

 国家行政学院の汪玉凱教授は
 「共産党が早急な行動を望んだことや、中国には人口政策の修正を遅らせる時間がないことを示している」
と述べ、来年の法制化を待つことができなかったと説明した。

 一人っ子政策廃止は、中国経済を緩やかだがバランスの取れた成長へと転換させるために習近平国家主席(党総書記)が描いた青写真の一部。北京で26日から4日間にわたり開かれた5中総会で討議された第13次5カ年計画(2016-20年)は、12年の習総書記就任以来その概要が示されてきた社会・経済改革を実行に移すものだ。

 中国は輸出と投資に依存した発展途上国から、
 サービス業と個人消費、イノベーション(技術革新)を経済の原動力とする
★.「小康社会(適度にゆとりある社会)」への移行
を目指している。

 5中総会の声明は次期5カ年計画発表の第一歩。数日中に詳細が公表される見込みだが、全体像は来年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で承認されるまで明らかにならない。

原題:China Drops One-Child Cap After Three Decades to Lift
Growth (1)(抜粋)



サーチナニュース 2015-10-30 18:24
http://biz.searchina.net/id/1592961?page=1

一人っ子政策廃止でも生産年齢人口の減少は続く=大和総研が指摘

 中国の5カ年経済計画を議論する「五中全会」が10月26日~29日で開催された。
 次期5カ年計画(2016年~2020年)の具体的な内容は2016年3月の全人代で発表されるが、それに先駆けて、10月29日国営「新華社」が議論の結果として、「一人っ子政策」の廃止が決定されたと報じた。
 この決定に対し、大和総研経済調査部主席研究員の齋藤尚登氏が10月30日にレポート「一人っ子政策廃止でも生産年齢人口の減少は続く」(全3ページ)を発表した。
http://www.dir.co.jp/research/report/overseas/china/20151030_010278.html

レポートの要旨は以下の通り。

◆10月26日から29日に開催された中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議(五中全会)は、「中国共産党中央の国民経済・社会発展第13次5カ年計画に関する建議(提案)」を承認した。

◆事前に予想されていた通りに、2016年から始まる第13次5カ年計画の政府成長率目標は明示されなかった。
 ただし、年平均で6.5%以上の成長が必要との認識は、党・政府内で共有されていると見られる。
  10月23日に行われた中央党校における講話で李克強首相は、
★.「2020年に全面的な小康(いくらかゆとりのある)社会を実現するという目標を達成するには、
 今後5年間は平均6.53%の実質成長が必要であり、これを下回れば目標達成は困難になる」
旨を指摘した。

◆「一人っ子政策」は廃止される。
 しかし、「二人っ子政策」の導入効果を過大視することはできない。
 従前、第二子の生育が認められるのは、「夫婦ともに一人っ子の場合」であったが、
 2013年11月に「夫婦のいずれか一方が一人っ子の場合」に条件が緩和された。
 そして今回は「夫婦ともに二人っ子以上の場合でも第二子の生育が認められる」ことになった
が、
★.「一人っ子政策」が1979年(厳格適用は1980年)から36年間続くなか
 「夫婦ともに二人っ子以上」という追加的な条件緩和の効果は限定的であろう。
 15歳~59歳の生産年齢人口は2011年をピークに減少しているが、これから十数年後以降にその減少ペースが若干緩まる程度にすぎない。

(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
■・大和総研リサーチレポート ‐ 一覧
http://www.dir.co.jp/research/




●BBC news japan 2015.10.30 視聴時間 02:46
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45145

中国一人っ子政策転換 
人口高齢化すすむ「優等生」自治体では


中国が一人っ子政策を転換し、夫婦に2人目の子どもを認めることを決めた。人口の高齢化が経済に及ぼす影響への懸念が共産党指導部の方針転換を促したとみられる。新政策が示された次期5カ年計画の発表直前、BBCのジョン・サドウォース記者が高齢化が進む江蘇省・如東県で取材した。



AFPBB News 11月2日(月)13時15分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151102-00010008-afpbbnewsv-int

一人っ子政策の闇、「存在しない」子供たち



【11月2日 AFP】
 22歳のリー・シュエ(Li Xue)さんは、出生証明書以外の身分証明書を持たない。
 中国政府が行っていた「一人っ子政策」下で第2子を出産すれば、罰金が課せられるため、リーさんは社会的に「存在しない」子どもとなった。
 彼女は学校に行くことも、医療サービスを受けることも、正式な仕事に就くこともできない。
 中国政府は先週一人っ子政策の廃止を発表したが、2010年時点ですでに、リーさんのような人は1300万人存在している。



ロイター 2015年 11月 2日 17:08 JST Robyn Mak
http://jp.reuters.com/article/2015/11/02/column-china-two-child-policy-idJPKCN0SR0O620151102?sp=true

コラム:中国「二人っ子政策」の死角

[香港 30日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
 中国共産党は、「一人っ子政策」廃止の発表によってベビーブームをもたらしている。
 といっても、彼らが望んでいたようなものではない。

 すべての夫婦に第2子を持つことを認める方針を中国共産党が発表したのを受け、おむつや乳製品などの乳幼児関連銘柄が軒並み上昇した。
 出生率は結果的に徐々に上昇するかもしれないが、中国の抱える高齢化と労働力減少の問題には大きな影響を及ぼさないだろう。

 中国政府によれば、36年にわたって続けてきた一人っ子政策を撤廃することは、約9000万世帯に影響を与えるという。
 投資家たちは今回の発表を受けてすぐさま、乳児の増加から恩恵を受けると思われる企業の株に殺到した。

 中国株式市場で乳幼児向け食品のビーイングメイト(貝因美)は10%上昇し、仏食品大手ダノンは5カ月ぶり高値を記録。
 上海拠点の子供向けスキンケア用品会社、中国児童護理(チャイナ・チャイルド・ケア)も22%上昇した。

 だが、浮かれるのは時期尚早だ。農村部や少数民族、夫婦の両方が一人っ子の家庭についてはすでに既存ルールの対象外とされている。
 そして、過去に行われてきた一人っ子政策の緩和はほとんど効果を生まなかった。

 中国当局は2013年、夫婦のどちらかが一人っ子であれば、第2子の出産を認めた。
 しかし国営メディアによると、第2子を持つ資格のある1100万組の夫婦のうち、第2子の出産を申請したのは150万組にとどまった。
 北京市内に居住する、より経済的余裕のある夫婦でも、申請件数はわずかに3万組だった。

 こうした数字は、経済減速と労働力減少に見舞われている中国の人口動態上の課題を浮き彫りにしている。
 国連データによると、中国の人口で15─59歳が占める割合は67%以上。
 しかしこの数字は、2050年までに50%に減少する見通し。
 その一方で、60歳以上は全体の3分の1以上を占めるようになるという。

 高等教育を受けた都市部の女性に対して、家族を増やすよう説得することは極めて困難だろう。
 上海市の出生率は0.7と、国全体の1.7を大きく下回る。
 都市部における生活費の高騰は、子どもをまったく持たないことを決める女性が増加している要因の1つだ。

 中国人女性に出産を規制するより、奨励するほうがより困難だろう。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。



サーチナニュース 2015-11-02 14:49
http://news.searchina.net/id/1593062?page=1

「一人っ子政策」撤廃も、経済的負担はこうなる=中国メディア

 中国メディア・新京網は10月31日、中国政府が「一人っ子政策」の撤廃を決定したことについて、「本当に第2子を生むことができるのか?」として、北京市で2人目の子どもを育てる際に必要となる費用などについて紹介する記事を掲載した。

 記事は、
 「2人目の出産をみんなに認めることと、開放することはイコールではなく、出産や育児には依然として制約が伴う」
と説明。
 そのうえで、第2子の出生前から大学卒業までにかかる費用について試算したデータを紹介した。

 出生前にはマタニティウェア、検診、分娩で1万元(約19万円)がかかるとし、
 幼稚園に入るまでの3年間にはおむつやミルクなど必需品が7万2000元(約137万円)、
 さらにベビーシッターや早期教育費用などを加えると10万元(約190万円)を超えるとした。

 また、幼稚園では3万6000(公立)-36万元(バイリンガル教育の私立幼稚園など)(約69万-690万円)、
 小学校から高校までで15万2000-58万2000元(約290-1110万円)、
 大学で11万6000-26万4000元(約220-500万円)の費用が必要となり、
 トータルで38万6000-143万元(約740-2730万円)に達するとした。

 さらに、これらの費用はあくまで「基本費用」であり、
 各種の習い事や病院、誕生日などのイベント、海外旅行、大学院進学、さらには留学などの費用を加えると「考えたくない」金額になることを伝えた。

 このほか、子どもが2人になれば広い住居を購入する必要があり、約20平方メートル増えるだけで100万元(約1900万円)程度の出費を覚悟しなければならないことや、
 24歳以降出産した場合の規定の113日間の産休に上乗せできる30日間の「晩育奨励産休」が、第2子以降では認められないことなどを併せて紹介した。

★.2人目の出産が認められることと、2人の子供を養える経済環境や社会情勢は別の問題である。
 1人しか出産出来ないという制約がなくなること自体を喜ぶ夫婦は少なくないだろうが、家族が1人増えればそれ相応の経済力が求められるのは当然のことだ。
 しかし、
★.国家の将来を考えた時、高齢化が進み生産年齢人口が減少していくと予想される中国では、
 「産める人は産んで下さい」という方針転換に踏み切るほかに術が無かったのだろう。

 長きにわたって「1人しか生まない」前提の社会システムを変えていくのは、そう簡単ではない。



ニューズウィーク日本版 2015/11/5 19:10 高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/11/post-4073.php

知られざる「一人っ子政策」残酷物語

 10月29日、中国は一人っ子政策廃止の方針を発表した。あまりに遅すぎた方針転換と言うべきだろう。
  一人っ子政策によって中国は超スピードでの高齢化や性別人口のアンバランスという難題を抱え込んでしまった。
 また多くの人々、家族に一生消えない傷を残している。

■巨大な罰金利権が一人っ子政策を存続させた

 中国全土で一人っ子政策が導入されたのは1980年のこと。
 人口急増が続けば食糧不足、資源不足が深刻化するとの懸念が動機となった。
 もっとも、人口抑制は中国のみならず、世界的なトレンドでもあった。
 国連は1974年を世界人口年に指定し、各国に人口抑制を促している。
★.日本も人口抑制を進めており、同年に開催された日本人口会議では子どもは2人までと提言していた。

 あれから40年が過ぎた今、むしろ少子化が問題となっており、先進国は少子化対策に躍起になっている。
 しかし中国は、他国同様に出生率が低下したにもかかわらず、2015年まで一人っ子政策を続けるという 失策 を犯してしまった。
 たんに少子化が急激に進行しただけではない。
 出生前の性別検査で男児を選んで出産する人が多く、中国の性別人口比は女性1人につき男性1.18人という深刻なアンバランスに陥っている。
 2020年には結婚適齢期の男性人口が女性を3000万人以上上回ると推定されており、「結婚できない問題」は社会不安につながりかねないとも懸念されている。

 なぜ、一人っ子政策の廃止はここまで遅れてしまったのだろうか。
 それは官僚国家の病だろう。
 一人っ子政策という大目標を粛々とこなす巨大官僚組織が形成され、罰金利権が生まれた。
 1980年から通算で2兆元もの罰金が徴収されたと推算されている。
 罰金は国庫に上納される規定だが、実際には大部分が地方自治体の財源になっていた。
 10年以上前から人口学者は一人っ子政策の廃止が必要だと訴えてきたが、抵抗勢力によって阻まれ続けてきた。

★.一人っ子政策は中国語で「計画生育」と書く。
 官僚には出産管理に関するさまざまな「業務」が存在する。
 たんに2人目の子どもを産んだら罰金というだけではない。
 出産許可書を取得しないままでの出産を罰したり、あるいは地方自治体が定めた避妊手術目標数を達成するために、村々に対象人数を割り振って強制的に手術するといった蛮行もしばしば行われた。
 目標達成のために未婚の女性に不妊手術を行ったとの事例まで報告されている。
 また罰金を払わなかったため戸籍がもらえず、多くの「黒孩子」(無戸籍者)が生まれた。
 黒孩子たちは、公立学校など公共サービスが受けられないまま成長することを余儀なくされた。

 1990年代には一人っ子政策の達成度が「一票否決制」(官僚の政治業績を審査する際、経済成長など他の項目を満たしていても、ある特定の項目が合格点以下だった場合には不適格と認定する制度)に組み込まれたため、地方政府はさらに熱心に取り締まりを強化している。

■検閲で消される前の批判を集めた電子書籍から

 一人っ子政策は中国の社会・経済に深刻な問題をもたらすと同時に、多くの人々に一生ぬぐえない傷を残した。

 一人っ子政策によって人々がどのような傷を負ったのか、中国人の声を紹介してみたい。
 中国のSNSでは政府や政策に対する批判が数多くつぶやかれている。
 検閲によって消されてしまうことが多いが、消される前のつぶやきを集めた『計生紀事』という電子書籍が出回っている。
 同書の一部を紹介しよう。

 「役人が一人っ子政策違反の罰金徴収にやってきた。
 強制堕胎をされそうになった時、父が必死に守ってくれたから私は生まれてくることができた。
 役人に ありがとう、殺さないでいてくれて と感謝するべきかな。」

★.罰金は現在、社会扶養費と呼ばれている。
 罰金の基準は地域によって異なるが、平均年収の数倍という高額になる。
 また富裕層に対してはさらに巨額の罰金が科される。
 2013年には中国を代表する映画監督チャン・イーモウ氏の一人っ子政策違反が明らかとなり、748万元(約1億5000万円)の罰金が科された。

 「私を産む時、母は10キロほど離れた祖母の家に隠れていた。
 2人目の出産だとあたり前の話なんだけど。
 でも役人はそこまで追いかけてきたんだ。
 お隣さんが役人が来たのに気づいて教えてくれ、母をかくまってくれた。
 その翌日に私は生まれた。」

 「私の母は殴られて血を流しながらも必死にお腹の中にいる私を守ってくれた。
 それで生まれることができたんだけど、多額の罰金を払ったし、商人だった父の在庫をごっそり没収された。
 それだけじゃなくて、家中むちゃくちゃに打ち壊されたんだ。」

 「私の幼名は伍百だった。
 罰金額がそのまま幼名になった。」

 「妊娠6カ月の時、母は強勢堕胎に連れていかれた。
 ただ役人に知り合いがいたので必死に頼み込んで許してもらったんだ。
 私が生まれたことで父も母も仕事を失い、中国共産党の党籍も失った。
 ひどい暮らしだった。」

 一人っ子政策違反では、罰金だけでなく、公務員や国有企業従業員ならば解雇、共産党員なら党籍剥奪の処分が科されることもある。

 「私には姉がいたはずだった。
 妊娠8カ月で堕胎させられた。
 お腹から出された姉はまだ生きていたというけど、医者がへそに注射を打って殺した。
 悲しみのあまり母は飛び降り自殺をしようとしたんだけど、祖母が あなたが死んだら私も生きていけない と言って必死にひきとめた。
 翌年、母は私を生んだんだけど、妊娠したのがばれないように真冬でも綿をぬいたコートで過ごし、出産前日も仕事していたって。」

 「1980年代にはよくあったことだけど、単位の規定出産数が一杯になったので、堕胎されるということがあった。
 1人目であってもね。
 私もそうなるところだった。」

 単位とは「所属先」を指す言葉。
 政府機関、国有企業、学校などはいずれも単位である。
 かつては単位ごとに出産できる上限が定められたため、1人目の出産でも許可されないケースもあった。

 「私が5歳の頃、生後7カ月の妹が中絶されました。
 そればかりか、家中の物という物は没収され、家の扉まで壊されてしまいました。
 ヤクザとしか言いようがないふるまいです。」

 「私の姉は妊娠8カ月で堕胎させられました。
 姉の遺体はトイレに捨てられたそうです。
 病院のトイレは死んだ赤ちゃんでいっぱいだったと言います。
 その後、母はまた妊娠して私を産んでくれましたが、新疆ウイグル自治区まで逃げました。」

 「最近、新生児が売り買いされていたというニュースがあった。
 実は私の母は19歳の時に妊娠して強制堕胎させられたんだけど、その子が本当に亡くなったのか確認していないんだって。」

 2013年、陝西省で医師による新生児の人身売買事件が発覚した。
 問題の医師は、出産直前に赤ちゃんに障害があることが分かったと両親に告げ、死産として処理するようすすめていたが、実際には人身売買組織を通じて、子どもを欲しがる人に販売していたという。




●中国「一人っ子政策」の闇とは?  AFPBB News
2011/11/04 に公開
国連(UN)の推計によると、世界人口は10月31日、70億人に達した。人口増加が­続く中、もっとも人口の多い中国では30年以上前から一人っ子政策が行われている。し­かし、その影で、政策に反して誕生した"ブラックチルドレン"が­存在している。(c)AFP



サーチナニュース 2015-11-26 16:03
http://news.searchina.net/id/1595321?page=1

「カネ支払わねば出生届を受け付けず」などで、
「無戸籍者」が1300万人=中国

 中国政府・公安部(解説参照)は21日に開催した同部指導陣の会議で、「無戸籍者」に戸籍を取得させる方針を確認した。
 中国メディアの第一財経日報によると、中国の無戸籍者は1300万人以上とされている。
 無戸籍者が増えた大きな理由はいわゆる「一人っ子政策」で、規則に違反して出産した場合には、「罰金を払わないと戸籍登録を認めない」などのケースがあったという。

 第一財経日報によると、2014年に行った調査では、無戸籍者の6割以上は、一人っ子政策に違反する出産で生まれてきた人だった。
 その他、捨て子や母親が未婚であり戸籍登録をしなかった例、さらに行政側の怠慢で戸籍が取得できなかった例もあったという。

 「中華人民共和国戸籍登記条例」によると、出生があった場合、戸主などが1カ月内に戸籍登録をすると定められており、登録についての付帯条件は一切ない。

 ところが、1979年に産児制限が導入されると、行政側が
 「政策に違反して出産した場合、罰金を支払わないと戸籍登録を認めない」
という状況が発生した。
 「戸籍登記条例」を無視したやり方だ。

 中国では産児制限を推進するために、中央政府の一部門として計劃生育委員会(計画出産委員会)を置き、同委の下部に省、市、県、さらに細かい行政区ごと、そして職場ごとに計画出産委員会を設けた。
 各委員会は担当範囲全体における「出生数の上限」を厳守することが求められた。第一財経日報は直接言及しなかったが、罰金未払いを理由に新生児の戸籍登録をしないことは、各委員会の“ノルマ達成”にとって有利だったことになる。

 中国では「一人っ子政策」により少子高齢化が極めて急速に進行した。
 そのため中央政府は2013年に「産児制限そのものは継続するが、1組の夫婦について2人目の子の出産を認める」と、政策を緩和した。
 第一財経日報によると、福建省統計局人口普査(日本の国勢調査に相当)センターの姚美雄副主任は、1300万人も戸籍のないひとがいたのでは、加速する少子高齢化の悪影響がさらに深刻になるとの見方を示した。

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◆解説◆
 中国政府・公安部は日本の警察庁に相当する政府機関だが、戸籍管理も担当している。
 治安維持や犯罪防止と国民の管理は密接に関連しているとの考えが背景にあると言ってよい。

 21日の会議では
 テロ防止が第1の議題で、無戸籍者対策が2番目の議題だった。
 テロ防止の一環として、国民の管理強化がこれまで以上に意識されるようになった可能性がある。










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