2015年10月31日土曜日

底が抜けた中国経済(7):見事にはまった「中所得国の罠」、中国の製造業の「最良の時代」は過ぎ去った? 

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サーチナニュース 2015-10-30 13:40
http://biz.searchina.net/id/1592887?page=1

「企業の淘汰は自然」と中国メディア、
広東省・東莞市で相次ぐ倒産に

 中国メディアの南方網は27日、中国でも数多くのメーカーが集まる広東省東莞市で企業の倒産が相次いでいることを指摘する一方、
 経済活動においては経営力や技術力の優劣によって「企業が淘汰されていくのは自然なこと」だと指摘した。

  記事は、環境の変化に適応できずに消えていく企業にばかり注目し、新たに生まれてくる企業を見ようとしないのは間違っていると主張。
★.2014年に東莞市で倒産した企業は「500社を超える」
と指摘しつつも、
 東莞市の企業の数自体は「前年比で増加した」
と伝えた。

  さらに、営業を停止した企業の数に着目するよりも、企業の「質」に着目すべきだと主張し、優秀な企業が1社存在することによる経済および社会への利益は、生産を停止した企業が「数十社集まっても到底かなうものではない」と主張し、東莞市では実際に倒産や企業の移転が相次いでいるが、「域内総生産は伸びている」と主張した。
  また記事は、経営力や技術力の優劣によって企業が淘汰されていくのは自然なことだと指摘し、数多くの企業が存在するなかで数百社の企業が倒産しても不思議なことではないと主張。
 また、倒産した企業は「進取の精神がないからこそ倒産したのだ」と主張したうえで、特に驚くべきことでもないと論じた。
  さらに、東莞市は労働集約型の製造業が数多く集まっていた市であると指摘する一方、
 中国では製造業の高度化が中国政府の戦略に組み込まれたことを伝え、人件費の上昇が続くなか、コスト優位を失った企業が淘汰されていくのは自然なことだと主張した。



サーチナニュース 2015-10-29 15:46
http://biz.searchina.net/id/1592776?page=1

中国の製造業、「最良の時代」は過ぎ去ったのか=中国メディア

 中国メディアの一財網は25日、中国では人件費の上昇を背景に工場の倒産や移転が相次いでいることを指摘し、中国の製造業にとって最良の時代はすでに過ぎ去ったのか、それともこれから再び訪れるのかを論じる記事を掲載した。

 記事は、中国広東省など珠江デルタ地域では工場の労働者の人件費は月3000-4000元(約5万7200円-約7万6000円)に達すると伝え、近年は人件費の高騰が続いていると指摘。
 一方で、付加価値の低い製品を値上げすることは極めて難しいことを指摘し、人件費の高騰を背景に服飾や靴、おもちゃなど付加価値の低い製品を生産していた工場は大規模な移転や倒産が相次いでいると報じた。

 さらに、広東省東莞市では台湾資本の企業が大挙して撤退したと伝え、仕事が見つからないため東莞市を離れる労働者も多いと伝えた。
 また、東莞市が「世界の工場」の一角として賑わいを見せていたころ、広東省広州市から東莞市に向かうバスはいつも満員に近かったとしながらも、近ごろは
 「40人以上も乗れるバスに5-6人しか乗っていない状況」
だと報じた。
 また、東莞市の高級レストランも今や開店休業状態にあると伝えた。

 また記事は、中国の経済統計の変化から製造業をめぐる変化を見て取ることができると指摘し、中国の貿易額の伸びが近年は急速に鈍化し、特に15年1-9月の輸出入総額は前年比7.9%減となったと指摘。
 中国の製造業はコスト優位を失うと同時に「最良の時代は過ぎ去ってしまったのだろうか」と疑問を投げかけた。

 続けて、ドイツや日本などの製造業大国も過去に生産コストの上昇や産業の空洞化という難題に直面したと指摘する一方、
 「日本やドイツはそれでも製造業の高度化を実現した」
と指摘。
 特に日本は自動車や環境、精密機器、医薬、自動化に関する技術では世界をリードする立場にあると論じる一方で、中国は労働集約型の製造業が弱体化するなか、コスト優位以外の新たな競争力はいまだに形成されていない状況にあると指摘した。



レコードチャイナ 配信日時:2015年11月27日(金) 21時30分
http://www.recordchina.co.jp/a123924.html

1年で4000社が倒産?
中国製造業のメッカ、広東省東莞市で工場閉鎖ラッシュ―中国

 2015年11月25日、新京報によると、中国製造業拠点の集積地、広東省東莞市で工場の閉鎖が相次いでいる。
 ここ1年で4000社が倒産したとも指摘されているが、当局は「倒産ラッシュには至っていない」としている。

 広東省では東莞市、深セン市などで工場の受注が急減。
 生産ラインを東南アジア、アフリカなどに移す企業が増加している。
 地元メディアは「東莞に倒産ラッシュ」と伝えている。

 しかし、地元に悲観的な空気は広がっていない。
 東莞市長は
 「倒産したのは一部のみ。
 市場の淘汰が進んでいるだけで、製造業全体が危機に陥ったとはいえない」
と強気の姿勢を示している。

 専門家によると、東莞市では製造業の工場倒産が相次ぐ一方で、科学技術や有名ブランド関連業種が業績を上げている。
 衰退する業界がある一方、波に乗る業界がある状態だ。
 これは中国の産業は必ず通らなければならない道ともいえよう。




現代ビジネス 2015年11月02日(月)  高橋 洋一
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46183

中国は見事に「中進国の罠」にハマった! 
急ぎすぎた覇権国家化のツケ
経済は急失速、
軍事ではアメリカに完敗

■歴代の政権に失望する韓国の財界人

 日中韓首脳会談が、ソウルで3年半ぶりに開催された。
 日中韓首脳会談の定例化などが確認され、3ヵ国の新たな協力体制がとりあえず確立された。

 ホスト国の韓国は日中韓首脳会談を成功させたので、一安心だろう。
 2008年から毎年開催されていたが、2012年5月を境に開催されていなかった。
 2012年8月の李明博竹島上陸、9月の尖閣諸島問題で日韓、日中の関係が悪化したためだ。
 そのことは今も尾を引いている。
 中韓首脳会談は日中韓首脳会談の「前」に行われたが、日中首脳会談と日韓首脳会談はその「後」に行われた。
 この会談の順番でもわかるように、
 日本vs.中国・韓国というのが基本構図だ。

 例えば、歴史問題では中韓は共闘して日本に対峙する。
 日中韓首脳会談直後の記者会見で、ホスト国の朴・韓国大統領は「歴史問題」とは明言しなかったが、李・中国首相は何度も歴史問題と言及していた。

 ホットな南シナ海問題について、三首脳は記者会見で言及しなかった。
 本来韓国は米韓同盟もあるし、韓国にとっても重要なシーレーンの問題であるので、取り上げるべきなのだが、中国の手前それはできない。

 TPPについて、安倍首相は言及したが、朴大統領と李首相はもっぱら日中韓FTAの話題ばかりだ。
 本来であれば、韓国はTPPに参加すべきで、事実、韓国財界はTPPへ参加したがっている。
 日本に頼んでも参加したほうが韓国の国益にもなるが、これも中国に遠慮している。

 韓国財界は、これまで日本より中国を優先してきた歴代政権に失望しているだろう。
 日本への対抗心で、今年2月、2001年7月に始まった日韓通貨スワップが打ち切られた。
 ところが、先月、韓国の経済団体、全国経済人連合会は、日本の経団連に対して、日韓通貨スワップの再開を求めている。
 このことからも、それは明らかだ。

 これまでの判断ミスをさらに印象付けているのは、中国の状況だ。
 今の中国は「外患内憂」という言葉がぴったり当てはまる。
 もし中国が好調ならば、韓国の中国寄りの姿勢は功を奏しているといえるが、そうでない以上、まるで当てが外れてしまっている。

■覇権国家になろうとする中国の「浅はかさ」

 まず、中国の「外患」として、南シナ海問題がある。
 10月27日、米海軍のイージス駆逐艦が南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)の海域を航行し、米中間の緊張が高まっている。

 中国は、近年南沙諸島に拠点を築くことに躍起になっている。
 太平洋へと進出する足がかりを作るためだ。
 その流れで見ると、尖閣諸島に異常なこだわりを見せる理由もよく分かる。

 南沙諸島(スプラトリー諸島)における中国の埋立などについては、本コラムでも写真入りで書いた(「安倍首相はポツダム宣言を読んでいた!? 理解不能だったのは党首討論での集団的自衛権めぐる共産党の主張だ」)。

 つまり中国は、かつてのイギリスと今のアメリカが海洋国家で世界覇権をとったように、これまでの内陸国家の性格を変えてまでも、今こそ海へと進出し、覇権国家になろうとしているのだ。
 「太平洋二分論」まで匂わせている
★.習近平は、明確かつ具体的に、
 中国という内陸国家を海洋国家へとシフトさせようとしている、初めての国家主席
といえるだろう。

 安全保障からみると、中国が海洋国家化を進める理由の一つは、アメリカその他の国々の軍事技術の発達だ。
 軍事衛星の映像やグーグルの衛星写真を見れば、この事情は容易にわかるだろう。
 非常に鮮明で、砂漠だろうと森林地帯だろうと、内陸部の軍事施設は、ほぼ丸裸である。
 いくら優れた軍事施設をもっていても、あれほど鮮明な衛星技術をもって空から攻撃されたらひとたまりもない。

 しかし、海中の原子力潜水艦であれば、空からはとらえられない。
 しかも、原子力潜水艦は、燃料の心配なく長期間の連続航行が可能であり、有り余る電力によって海水から酸素も作れるので、数ヶ月以上の連続潜行ができる。
 おそらく原子力潜水艦が現時点で最強の兵器だろう。

 中国は、南シナ海を支配し、そこを通じて太平洋に原子力潜水艦を配備したいのだ。

 しかし、中国の行為は国際法を完全に無視している。
 国際法上は、満潮時に水に潜ってしまう岩礁は「島」ではない。
 したがって、そこをいくら埋め立てて「島」のようにしたとしても、国際法上は「領土」にはならない。中国はそれを無視して、領有権を主張していることになる。

■日和った中国

 海洋の自由航行は、海洋国家アメリカにとって死活問題となる。
 そこで、オバマ政権は、遅ればせながら、海軍のイージス駆逐艦を派遣して、中国の領有権主張を牽制したのだ。

 海洋国家になりたい中国だが、海軍力での相対的な軍事格差から、中国はアメリカと一戦を構えるはずない。
 もし戦えば徹底的に敗北し、中国の体制崩壊につながるからだ。
 中国はそれを分かっているから、米イージス駆逐艦に対して、「監視、追尾、警告」と、対内的にはアピールできても、国際的には事実上何の意味もないことしたできなかったわけだ。

 もし中国がまともに対するのであれば、かつて黒海でソ連が米艦に行ったように、船の体当たりくらいはやるはずだ。
 必要なら、中国漁船を米イージス駆逐艦の前に派遣するくらいのことをするだろう。

 なお、今回のアメリカの行動は、日本の安全保障に資する。
 本コラムでこれまで述べてきた国際関係論(7月20日付「集団的自衛権巡る愚論に終止符を打つ! 戦争を防ぐための「平和の五要件」を教えよう」)からみれば、安保法で日米同盟は強化されたので、中国は、迂闊に尖閣に手出しをできなくなった。

 尖閣は日米安保の対象であるとアメリカは明言しているので、南シナ海に展開しているアメリカ軍は、尖閣でなにかあればすぐにでも対処できるからだ。

 さらに、南シナ海は日本のシーレーン(海上の交通路)の一つたが、それも守られることになる。

■なぜ中国の統計はデタラメなのか

 次に、中国の内憂について。いうまでもなくそれは経済だ。
 米イージス駆逐艦が南シナ海を航行している時、五中全会(中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議)が開かれ、2020年に2010年のGDPを2倍にするという目標が決められた。
 これは、7%成長を維持するという意味だ。

 この数字を中国人に聞けば、誰も「信じていない」というだろう。
 本コラムでも、今の中国経済は7%成長どころか、マイナス成長であると書いた(8月24日付け「衝撃!中国経済はすでにマイナス成長に入っている? データが語る『第二のリーマン・ショック』」)。

 実は、中国の統計は、それを作成する組織もその作成手法も旧ソ連から持ってきたノウハウで行っている。
 中央集権・計画経済の社会主義国では、統計のいい加減さでは似たり寄ったりの事情だ。
 ロシアでは、ペレストロイカの前まで経済統計は改ざんされていたが、批判はタブーだった。
 しかし、ペレストロイカ前後、ロシア人研究者などがそのでたらめ具合を明らかにした。

 例えば、1987年、セリューニンとニーハンによる「狡猾な数字」が発表され、ソ連の公式統計では1928~1985年の国民所得の伸びが90倍となっているが、実際には6.5倍にすぎないとされた。
 平均成長率は年率8.2%から3.3%へとダウンだ。
 57年間にわたって、国内外を騙し続けたのだ。

 公表されている統計からみても、そろそろ中国が経済成長の停滞期に入るだろう、というのが、ほとんどの学者のコンセンサスである。
 それは、「中所得国の罠」といわれる。

■中国も陥った「中所得国の罠」

 「中所得国の罠」とは、多くの途上国が経済発展により一人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷することをいう。

 この「中所得国の罠」を突破するのは結構難しい。
 アメリカを別格として、日本は60年代に、香港、シンガポールは70年代に、韓国は80年代にその罠を突破したといわれている。
 ただし、アジアでもマレーシアやタイは罠にはまっているようだ。
 中南米でも、ブラジル、チリ、メキシコも罠に陥っているようで、一人当たりGDPが1万ドルを突破してもその後は伸び悩んでいる。

 そこで中国の動きを、これらの国のこれまでの軌跡とともに示したのが下図である。


 実際のデータは、かなり複雑な動きなので、それぞれ2次曲線で回帰させ、各国の特徴がそれぞれわかるようにしている。

 これまで中国は驚異的な成長率を保ち、「中所得国の罠」を破ろうとする勢いだったが、急速に成長率が低下し、壁にぶち当たっているのがわかる。

 さらに、旧ソ連と同じように、5%程度も成長率が割増になっているとしたら、上の図で中国を左下に引き下げれば、これまで「中所得国の罠」に陥った国と同じ傾向になる。

 中国は「中所得国の罠」を破れるだろうか。
 世界銀行やOECDなどから数々の提言が出ているが、筆者には中国が一党独裁体制をやめない限り、罠をやぶることは無理だと見る。

 ミルトン・フリードマン『資本主義と自由』(1962年)では、政治的自由と経済的自由は密接な関係があって、競争的な資本主義がそれらを実現させると書かれている。
 経済的自由がないと、国際機関の提言は実行できない。
 経済的自由を保つには、政治的自由が必要になる。
 つまるところ結局、一党独裁が最後に障害になるのだ。

 そう考えると、中国の外患内憂はそう簡単に解決しないだろう。



JB Press 2015.10.27(火) 柯 隆
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45059

数十倍に膨らんだ捏造「生産高」報告を喜んでいた毛沢東
~中国の経済統計は信用できるのか

 2015年、中国政府は7%成長を政策目標として掲げている。
 第1四半期と第2四半期の成長率はいずれも7%だった。
 こんな偶然はめったにない。

 中国国家統計局のスポークスマンは中国の経済統計は十分に信用できるものだと豪語する。
 一方、世界の中国ウォッチャーは中国のマクロ経済統計は信用できないと指摘する。

 ただし問題は、中国のマクロ経済統計が信用できないという証拠を示せないことだ。
 なぜならば、誰も中国のオリジナルデータを検証できないからである。

 多くの専門家は中国のマクロ経済統計が信用できない証拠として「李克強指数」を挙げている。
 李克強指数は、李氏が首相に就任する前に既存のGDP統計が信用できないとして作成した、
 鉄道貨物輸送量、電力消費量、銀行貸出残高からなる指数だ。
 李氏はその指数を使って中国経済のトレンドを捉えようとした。

 しかし、李克強指数と実質GDPを比較することはできない。
 なぜならば、実質GDPはGDPデフレータで実質化されているが、李克強指数は名目値である。
 そして、李克強指数の構成の合理性は説明されていない。
 例えば、鉄道貨物輸送の大半は石炭であり、消費財の輸送が含まれていない。
 さらに、銀行貸出は政府の影響を強く受けるため、客観的なデータとは言えない。
 李克強指数は中国経済のトレンドを捉えるための参考にはなるが、GDPに取って代わるものではない。

■数十倍もの毛沢東への報告

 一部の評論家は、中国は一党独裁の政治体制だからマクロ経済統計が信用できないと指摘している。
 この指摘には論理性がないが、マスコミに受けるのは事実である。

 中国の経済統計システムの歴史的な変遷と現在の経済統計の問題点を明らかにしてみたい。

 まず、中国の経済統計システムの歴史的な変遷を見ていく。

 建国して間もない計画経済の時代、中国の経済統計は旧ソ連のシステムを学んで作ったものだった。
 「国民所得勘定」と呼ばれるこの統計システム(MPS)では国内総生産(GDP)の考えはなく、すべての経済活動によって作り上げられた付加価値の合計が「国民所得」として定義された。
 その統計の集計は統計局が行った。
 各経済ユニットが統計申告書に記入した数字を統計局が集計して、マクロ経済統計を作成した。

 この国民所得の集計は、中央集権型の計画経済に適するものだった。
 国有企業や人民公社は自分たちの経済活動を定期的に報告した。

 だが、問題もあった。
 すべての経済ユニットが正しく経済活動を申告するとは限らないということだ。
 人間の心理として、朗報は喜んで報告するが、経済運営がうまく行かない場合は報告したがらない。

 毛沢東時代には「大躍進」政策が展開された。
 短期間でイギリスとアメリカに追いつき、追い越すための運動だった。

 国有企業と人民公社は毛沢東の号令に応えようと、鉄鋼と食糧の生産高を、実際の数値よりも数十倍も膨らませて報告した。
 報告を受けた毛沢東は心より喜んだ。
 そして、鉄鋼生産量もたちまちアメリカとイギリスに追いつくはずだった。

 だが真実はまったく逆だった。
 大躍進運動の失敗により農業が不作に見舞われ、1959~62年の3年間で少なくとも3000万人が餓死したと言われている。

■旧ソ連の統計システムを廃止してGDP算出へ

 旧ソ連の統計システムは1985年まで使われた。
 85年以降、中国政府は経済統計の集計方法の改革と統計システムの再構築に乗り出した。

 国民所得の計算こそ継続されたが、統計は、中央から地方まで、新たに設立された統計局によって集計が行われるようになった。

 やがて経済の自由化の進展にともない、中国では“非国有”経済が現れた。
 国有企業ならば、政府に統計申告書の記入を求められれば、それに応えなければならない。
 しかし民営企業や外資系企業は、会社情報を政府にすべて開示する義務はない。
 多くの企業にとって経営実績は機密事項である。
 こうして政府が実態を把握できない企業活動が増えていった。

 また、中国経済の開放が進むにつれ、国際機関や先進国との経済交流が盛んになっていった。
 だが、中国の経済統計と、先進国および国際機関の経済統計とを比較することは不可能だった。
 中国は世界銀行およびIMFのメンバーである以上、経済統計の近代化が必要不可欠である。
 そこで1993年、冷戦が終結した直後、とうとう重い腰を上げて経済統計の抜本的な改革に乗り出した。
 具体的には世界銀行の資金援助を受け入れ改革を行った。

 まず、旧ソ連の統計システムが全面的に廃止された。
 その代わりに、国民経済勘定体系(SNA)の統計が取り入れられた。
 そして、各経済ユニットによる統計申告書の記入に代わり、サンプリング調査が取り入れられた。
 このときから中国では「国内総生産(GDP)」の概念が広く使われるようになった。

 GDPを算出するためには、各々の産業部門を分類し、産業連関表を編成しなければならない。
 しかし中国の産業分類は8種類で、きわめて粗いものだった。
 地方政府レベルで設立された統計局がこれらの産業の統計を集計するが、データの信憑性、客観性は担保されていない。

 さらにはGDPを算出する段階で技術的な操作が加えられる。

 生のデータがいったんコンピューターに入力されれば、中央レベルの国家統計局がそれを改ざんするのはきわめて難しい。
 それぞれの統計が強い関連性が定義されているため、1つの統計を改善すれば、コンピューター上でエラーが出てくるからである。

 では、どのようにマクロ統計の数字を操作するのだろうか。

★.中国当局は、GDPを算出する段階でどのように数字を操作するのだろうか。

 通常は各々の産業部門から集計された統計をもとに名目GDPが計算される。
 名目GDPとは物価の変動が考慮されていないGDPの規模と伸び率である。
 それを他の年度のGDPと比較するためには、GDPデフレータまたは消費者物価指数で割り引いて実質化する操作が必要である。
 例えば、名目GDPが9%伸びたとし、消費者物価指数は2%上昇したとする。
 名目GDPの伸び率の2ポイントは物価上昇分であり、それを取り除かなければならない。
 したがって、この場合の実質GDPは9-2=7%になる。

統計局にとって、もっとも操作しやすい統計は消費者物価指数である。
 すなわち、消費者物価指数を実際の数字より低く抑えれば、実質GDPが高くなる。
 例えば消費者物価指数が3%だとしたら、それを2%にするだけでGDPは1ポイント高くなる。

■消費者物価指数の構成ウェイトを調整

 では、具体的にどのように操作が行われているのか。
 昔から中国が公式に発表する消費者物価指数は、消費者の実感よりも低いと言われている。
 消費者物価は、食品、通信費、交通費と住居費などいくつかの消費財とサービスに分類し、その価格の上昇率を計算する。
 消費者物価指数を算出する段階で、各々の消費財とサービスのウェイトを決めなければならない。
 そのウェイト付けは恣意的になりがちである。

 図1に示したのは、2011年に国家統計局が行った消費者物価指数の構成ウェイトの調整だ。
 調整前に比べると、調整後の食品支出のウェイトが明らかに抑えられている。


図1 2011年、中国国家統計局によるCPI構成ウェイトの調整
(資料:中国国家統計局)

★.中国の場合、食品価格と住居費はもっとも上昇率が高いが、それが低く抑えられているため、消費者物価指数が低くなる傾向が強い。

 例えば、食品のウェイトは31.8%と決められているが、その根拠は明らかにされていない。
 中国のエンゲル係数(家計の所得に占める食品支出の割合)は38%とされている。
 実は、エンゲル係数は実態からかなりかい離しており、都市と農村の平均的な家計のエンゲル係数は40%を上回っていると見られている。

 また、近年は不動産バブルが大きく膨張している。住居費の支出も拡大している。
 しかし、消費者物価指数に占める住居費支出は17.2%と低く見積もられている。

 以上を勘案すれば、消費者物価指数は統計局が公表している数値よりも高いはずである。

 中国の経済統計は、各々の産業から集められている生データの信ぴょう性が欠けるのと同時に、名目GDPを実質化する段階で消費者物価指数が低く抑えられている。
 そのため、実質GDP伸び率が高くなっている。

 図2に示したのは中国の実質GDP伸び率、名目GDP伸び率とCPIの推移である。
 2000年以降、CPIが低く抑えられていることが確認できる。


図2 中国の名目GDP伸び率、実質GDP伸び率と消費者物価指数の推移
注:2000年以降、消費者物価指数の値は低く抑えられている。
(資料:中国国家統計局)

■過小評価の可能性もある中国の「経済活動」

 さて、これまでの議論と矛盾するようだが、中国のマクロ経済統計が実態を水増ししている一方、現在のGDP統計が示している経済規模は、実際の経済力を過小評価している可能性が高い。
 なぜならば、現行の経済統計に反映されていない経済活動がたくさんあるからである。

 OECD(経済協力開発機構)では、正規の経済統計で捕捉されていない経済活動を「未観測経済」(Non-observed economy)と定義している。
 それによれば、
 イタリアの未観測経済のGDP比は15%であり、ロシアでは25%に上ると言われている。

 中国はOECDのメンバーではないが、未観測経済のウェイトがロシアを下回るとは考えにくい。
 少なく見積もっても、
 中国の未観測経済のウェイトは最低でも20%はある
だろう。
 GDP伸び率が過大評価されている分と相殺しても、実際のGDP規模は統計より大きいはずである。

 未観測経済としては、一般的にマフィアやマネーロンダリングといった地下経済のことを思い浮かべるだろう。
 だが、中国の未観測経済は必ずしも「黒社会」の経済ではない。

 例えば、弁護士、家庭教師、ピアノなどの習い事の先生、および工事現場の日雇い労働者の給料などはほとんど未観測経済に属する。
 これらの経済活動は、統計局のみならず税務署も十分に把握していない。

■大学教授、職員が手にする灰色収入

 北京市政府傘下の国民経済研究基金会の推計によれば、
★.中国人の所得のうち、GDPの12%相当が税務署によって捕捉されていない「灰色収入」
である。
 すなわち、所得だけでも、白(合法)、黒(違法)、灰色の3分類になる。
 OECDの定義では、白の合法の収入はマクロ経済統計に反映されているが、黒と灰色の収入は経済統計に反映されていない。

 実は、灰色収入について明確な定義がなされていない。
 例えば、中国の大学は日本の大学と同じように定員制になっている。
 一学年にどれぐらいの学生を採用できるかについては、教育部(省)が定員を定めている。

 入試で合格ラインに達した学生はもちろん問題なく入学できる。
 だが、合格ラインまで5点、10点足りない学生も、定員の枠外で入学できることがある。
 合格ラインまで足りない点数に応じて、例えば1点につき2万元(約38万円)という相場で、つまり10点足りなければ380万円を払って入学しているのだ。

 枠外で入学した学生の学費およびその他の雑費は、学生の教育に携わる教授や学校事務職員の副収入になる。
 教授と職員からすれば労働の代価であり、「黒」の収入ではない。
 かといって合法なものでもない。
 結果的に「グレー」の所得になる。

 もう1つ、大学の事例を挙げよう。
 中国の大学では、近年、「EMBA」(Executive MBA)のコースを開設し、社会人大学院生を募集するところが増えている。
 ただし、日本の社会人大学院と違って、中国のEMBAのほとんどの学生は民営企業の経営者である。

 彼らはMBAの学位は欲しいが、真面目には勉強したくない。
 そこで大学は、彼らに世界中を豪遊させる。
 ところどころで形式的に授業するが、真面目な勉強はほとんどしない。
 世界中を豪遊するため「授業料」は信じられないほど高い。
 なかには、2年間のコースで数十万ドルのコースもある。
 そして「授業」が終われば、大学から学位記が交付される。

 このようなEMBAコースの授業料はまったく大学の正規の会計帳簿に反映されず、オフバランスになる。
 こうしてみれば、中国の実体経済の未観測の部分の大きさが少しは理解できるだろう。

■内実を把握するのはきわめて困難

 総括すれば、中国のマクロ統計は確かに水増しされている可能性が高いが、実態は明らかではない。

 1つの可能性は、地方レベルで集計される生データが信ぴょう性、客観性を欠如しているということである。
 もう1つは、名目GDPを実質化する段階で消費者物価指数(CPI)が人為的に低く抑えられていることである。
 その結果、実質GDPが実際よりも過大評価された数字になっている。

 一方で、GDPは過小評価されている可能性も高い。
 大きな未観測経済の活動があるからだ。
 中国経済の内実をきちんと把握するのは決して簡単な作業ではない。

サーチナニュース 2015-11-04 06:32
http://biz.searchina.net/id/1593196?page=1

中国製造業、
「労働集約型」が苦境に直面 
「高度化」は間に合うか=中国メディア

 世界の工場と呼ばれた中国で、労働集約型の製造業が苦境に直面している。
 中国はかつて、安価で豊富な労働力を背景に世界中から投資を集め、加工貿易によって経済を発展させてきたが、近年は人件費の上昇によって外資メーカーが工場を東南アジア等に移転させるケースが増えている。

 広東省東莞市は中国国内でも特に多くの工場が集まる地域として知られるが、中国メディアの毎日経済網は2日、東莞市では陶磁器や家具、おもちゃなど「労働集約型」の産業やメーカーにおいて倒産が相次いでいると伝えている。

 また、企業の倒産が増えているのは決して東莞市だけではない。
 同じく広東省の清遠市や仏山市なども同様に企業の倒産が増えており、毎日経済網は珠江デルタ地域では人件費の上昇だけでなく、生産能力の過剰という問題によって倒産にいたる企業が多いことを指摘した。

 さらに、珠江デルタ地域の労働集約型製造業の現場では受注量の減少を背景に、企業と労働者間の紛糾も起きているようだ。
 毎日経済網は中国の輸出入が減少していることの影響を受けていると主張しているが、つまり人件費上昇によって中国製品の強みであった価格競争力が失われつつあり、中国の工場への発注から他国への発注にシフトしている企業が増えていることが予想される。

 中国政府はコスト優位を背景とした労働集約型の製造業から脱却し、世界の製造強国を目指すとして「中国製造2025」という計画を打ち出した。
 すでに従来型の製造業が立ちゆかなくなってきているが、製造業の高度化は一朝一夕で実現できるものではない。
 中国の経済成長を担ってきた製造業が本格的に不振に陥るのか、それとも高度化が間に合うのか、世界の注目が集まっている。










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