2015年10月2日金曜日

フォルクスワーゲン(VW)事件(5):ドイツ企業の限界、「いよいよ、ドイツ・バブルがはじけるか!」

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●フジテレビ系(FNN) 10月2日(金)12時11分配信


ブルームバーグ 2015/10/02 06:00 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NVFTIG6KLVR601.html

世界揺るがしたVW排ガス不正、
見抜いたのは堀場製作所の小型測定器

    (ブルームバーグ):世界を揺るがした独フォルクスワーゲン(VW)によるディーゼルエンジンの排ガス規制逃れで不正を見つける過程で使われた機材は、京都市に本社がある計測器メーカー、堀場製作所のポータブル測定器だった。

 米当局がVWによる排ガス不正を発表したのは日本時間19日未明のことだった。
 堀場の自動車計測事業戦略室の中村博司室長(42)のもとに、ほどなく米ミシガン州拠点のスタッフから一報を告げる電話連絡が入った。
 調査を担当したウェストバージニア大学やカリフォルニア大気資源局は堀場の顧客であり、世間が大型連休に入る時期にかかわらず、中村氏は情報収集に追われた。

 世界最大級の自動車メーカーの排ガス検査不正という前代未聞の事態を受けて、約2週間でVW株は3割以上も下落、時価総額で3兆円超が吹き飛んだ。
 環境汚染を防ぐ排ガス規制への信頼が根本から揺らぎ、各国が規制強化や検査体制見直しを検討し始めるなど、世界の自動車業界と各国政府を巻き込む騒動となった。
 堀場の製品はその引き金を引いた形だ。

 ウェストバージニア大の研究者は取材に対し、最初に異常な排出値が出た路上走行での測定で堀場製ポータブル測定器を使用していたと確認している。
 屋内設備で行われる新車の型式認証時の排出値とのかい離が大きかったことがきっかけで発覚につながったが、
 路上走行試験は車載可能な小型のポータブル測定器でないと実施できない。

 堀場の中村氏はVWの不正について事前に知らず、驚くばかりだったという。
 各国の今後の規制動向が予測できないことや自動車部門の売上高では大型の据え置きタイプが圧倒的に多いことから、
 「今回の件で全体のパイの中ですごくインパクトあるかというと、そこはあまりない」
と話し、短期的な業績への効果は限られるのではないかとの見方を示した。

 一方、堀場の株価を見ると、問題発覚後は大幅に上昇している。
 各国の規制強化の流れが長期的に、堀場の主力である自動車計測事業への追い風になるのではないかという市場の期待を示している。
 堀場株はシルバーウィーク明けの24日から6営業日で7%近く上昇している。

■実走行に近い排ガス測定を

 自動車調査会社、カノラマジャパンの宮尾健アナリストは、VWによる不正を受けて各国の排ガス規制が強化される可能性が高いと指摘。
 より実走行時に近い排出値が出る路上走行での計測は巨大市場の米国ではバスやトラックなど大型車両にしか求めていないが、これを乗用車にも義務づけるようになれば、ポータブル型計測器への需要は「一気に拡大する」とし、排ガス計測器で圧倒的なシェアを持つ堀場は「さらにシェアを上げ、優位に立つだろう」と話した。

 米環境保護庁は今回の問題を受けて、
 自動車メーカー各社に排ガス規制の監視を強めていく方針を書簡で伝えた。
 具体的にどう強化するかは明らかにしなかった。
 日本でも太田昭宏国土交通相がディーゼルエンジンの検査方法について見直しを検討していることを明らかにしている。

 自動車の排ガス測定では、伝統的に屋内で使用する据え置き型の計測器を使用してきたが、各国の環境規制強化の流れで、路上走行の排出値の測定を求めるようになっており、米欧はバスやトラックで既に義務化している。
 中村氏によると、欧州では2017年から乗用車での実施が予定されている。
 昨年投入し、正式な路上測定もできる新製品が自動車メーカーからの引き合いを受けているといい、路上測定の精度や効率を高めて顧客に貢献することが当面の最大の課題だと話した。

■「おもしろおかしく」

 今回のVW排ガス不正発覚に至る過程は13年にさかのぼる。
 民間非営利団体(NPO)の国際クリーン交通委員会(ICCT)が欧州当局から米国で販売された欧州車の路上走行での排ガス検査の実施を委託され、ウェストバージニア大の研究者らと調査を進めた。
 堀場製の小型測定器を用いた路上走行検査で基準を上回る値が出たことがきっかけとなり、VWが検査結果をごまかすソフトウエアを使っていることが発覚。
 追及の末にVWが不正を認めた。

 VW側は検査時だけ排ガスをコントロールする機能がフル稼働するソフトウエアを搭載して販売していたことを認めた。
 米環境保護局(EPA)によると、通常走行時の排気ガスは最大で基準値の40倍に達し、同局は1台当たり3万7500ドルの制裁金を科す可能性がある。
 対象車は約48万2000台で、その場合、最大180億ドル(約2兆1600億円)となる。対象は09-15年モデル。

 堀場製作所は1945年、京都大学の学生だった故堀場雅夫氏が創業。
 戦後ベンチャー企業の先駆けとして排気ガスや医療用など計測機器を中心に成長を遂げてきた。
 自動車排ガス測定器の分野で現在は7割以上の世界シェアを握る。
 「おもしろおかしく」を社是とし、1日の勤務時間を少しづつ延長して休める日を増やして「週休3日制」を一部導入するなど独特な社風を持つ。

 エンジニアとして入社した中村氏は03年に堀場として初めて投入したポータブル型の排ガス測定器の開発に携わった。
 その測定器が世界的な排ガス不正を明らかになるきっかけをつくったことについて、「誇らしく思ったというより重責を担っていることを感じた」と話す。

 VWのようにソフトウェアレベルで操作されると装置での測定には限界があるとしながら、中村氏は「測定する数値に関しては責任がある」とあらためて感じたとし、今後は精度の向上など努力を続けて環境改善に貢献したいと話した。



現代ビジネス 2015年10月01日(木) 安達 誠司
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45598

ドイツ経済は過大評価されてきた! 
フォルクスワーゲン不正で露呈したドイツ企業「グローバル化」の限界

■ドイツのアイデンティティは崩壊の危機に

 世界のマーケットにまたまた新たな懸念材料が台頭した。フォルクスワーゲンの排ガス不正スキャンダルである。

 ことの発端は、米国の環境保護局が、フォルクスワーゲンとその傘下であるアウディが販売するディーゼルエンジン搭載車の一部が、米国の排ガス規制に関する試験をパスするために違法なソフトウェアを使用していたと発表したことであった。

 さらに、そのソフトウェアを開発したのが、同じくドイツの代表的な大企業であるボッシュであり、
 ボッシュは、フォルクスワーゲン社からソフトウェア開発を請け負った段階でその不正を知っていた可能性も指摘されている
(もっといえば、EUの規制当局も、フォルクスワーゲン社の不正を事前に知りながら放置していた疑いも取り沙汰されている)。

 また、同様の不正は、フォルクスワーゲン社だけではなく、同じドイツの自動車メーカーであるBMWも行っていたとの指摘もなされており、
 問題は、ドイツの製造業全体の信頼性を大きく揺るがす事態にまで広がりつつある。

 この問題がドイツ経済全体に与える影響については、悲観論、楽観論が入り乱れている。
 楽観論者の中には、「これは、米国の厳しすぎる排ガス規制に問題がある」として、自動車事故のような直接的被害が生じていないことから、それほど問題視すべきではない、という見方の人も少なくない。

 だた、9月28日のニューヨークタイムズ紙は、「フォルクスワーゲンの偽証問題で、いったい何人の死者が出たのか?」と題した記事の中で、違法な排ガスによる大気汚染による健康被害が原因で死期を早めるであろう人の数は、世界中で年間300万人近くになり、2050年までにはその数は倍近くになるのではないかと論じている。

 この記事の科学的根拠は明らかではないが、今後、世界の政策担当者らの関心が環境問題に向けられれば、ドイツは、これまでの「環境大国」というブランドイメージも失いかねない。
 製造業のおける「職人気質」、そして、「環境大国」というブランドイメージの毀損は、ドイツという国のアイデンティティさえを損なわれかねない深刻なリスクである。

■ヨーロッパ全体の社会不安へと波及する可能性も

 経済面でいえば、このスキャンダルは、
★.ドイツの自動車輸出を激減させ、
 ひいてはドイツの経済成長率を大きく低下させるリスク
をはらんでいる。

 ドイツは先進国の中でも突出して輸出比率が高い。
★.GDPベースでみると、輸出の対GDP比率は直近(2015年第二四半期)で「48.8%」である
 (ちなみに日本は17.1%)。
 うち、自動車、及び自動車部品は全輸出金額の2割弱程度となるので、
 自動車、及び自動車部品輸出はGDP比で10%程度を占める。

 最近のドイツの実質GDP成長率は年率で約1.5%程度だから、自動車輸出の減少額次第では、マイナス成長の可能性も否定できない。

 また、雇用面では、ドイツの就業者の約25%が自動車関連業種に従事しているといわれている。
 今後、輸出の減少に伴って、ドイツの自動車関連企業でリストラの流れが出てくると、雇用環境が急激に悪化していく可能性も否定できない。

 さらにいえば、ドイツ、いや、ヨーロッパ全体にとって、このタイミングでの雇用環境の悪化は痛い。

 EUはいま、シリアをはじめとするイスラム圏からの難民の受け入れを始めている。
 難民の受け入れは当然、財政支出拡大による難民支援を伴うが、雇用環境の悪化が自国民の生活を圧迫し始めれば、多くの国民は、自国の財政負担による難民保護に不満を持つ事態になりかねない。
 これはヨーロッパ全体の社会不安へと波及するかもしれない。

■実は、ユーロ発足後の名目成長率は低下している

 一連のフォルクスワーゲン問題の流れをみて筆者が感じるのは、
 「いよいよ、ドイツバブルがはじけつつあるのではないか」
という懸念だ。

 現在のドイツが「バブル」状態にあるという話は全く聞いたことがないが、筆者は、ドイツ経済はこれまで過大評価されてきたのではないかと考えている。

 ドイツは、統一通貨ユーロのメリットを一身に享受してきたとの見方が強いが、ユーロ発足後に経済成長率が高まった訳ではないのだ。

 例えば、ユーロ圏が発足した1999年から2014年までの名目GDPの平均成長率は2.4%であり、EU加盟国の中で最も低い。

 また、東西ドイツ統合から1998年までの平均名目GDP成長率は3.6%だったので、ユーロ発足後、名目成長率は低下していることになる
 (リーマンショック時を控除した場合、2.7%となり、イタリアの平均成長率2.3%は上回るものの、EU加盟国の中では下から2番目である)。

 このような国内経済の不振にもかかわらず、ドイツ企業の株価は極めて堅調に推移してきた。

 ドイツの代表的な企業から構成されるDAX指数は、米国の代表的な株価指数であるS&P500とほぼ同様の動きをしてきた。
 リーマンショック時の安値を100として指数化すると、今年に入ってからは、今回のスキャンダルが発生するまでは、むしろ、米国市場のパフォーマンスを上回ってきた。

 「バフェット指数(株式の時価総額の対GDP比率)」に代表されるように、1国の株価指数は、その国の名目成長率に連動して動くことが「適正」であるとすれば、ドイツの株価指数が米国の株価指数に連動して動くというのはおかしい
 (ちなみに、1999年から2014年までの米国の名目GDPの平均成長率は+4.1%、リーマンショック時を控除すると+4.6%となり、ドイツを大きく上回る)【図表1参照】。


●【図表1】

■ドイツ企業のグローバル化は限界点に達した

 このように、ドイツが国内の経済成長率と株価上昇率との間に乖離をみせた理由は、DAX指数を構成するドイツの大企業の多くが、90年代終盤以降、グローバル企業としての色合いを高めたためだと推測する。

 ちょうどITブーム期前後に、ドイツの大企業はドイツ国内の指導的な立場に飽き足らず、米国の大企業に対抗すべく、グローバル企業への脱皮をはかり、経営も米国流に変えていった。

 それまでのドイツの企業統治は、どちらかというと、従来の日本流に近いものであり、日本でいうところの「メインバンクシステム」を中心としたスタイルであったことが知られているが、そのスタイルを変えたのである。

 ところが、残念なことに、ドイツ企業は世界最大の市場である米国では思うような成功を収めることができなかった。
 そのため、米国での商業的な成功を獲得するために無理を重ねてきたことが想像できる。

 そして、その無理がいよいよ限界点を迎え、ここへきて様々な問題が表面化してきたと考えられる(筆者が以前勤務していたドイツの銀行の問題とほぼ同じ構図である)。
 これは、バブル崩壊直後、「ジャパンアズNo.1」から劣勢に立たされた日本企業ともよく似ている。

 つまり、今回のフォルクスワーゲン問題は、ドイツの大企業のグローバル化の限界を示すものであり、輸出の減少を通じてドイツの実体経済へ負の影響をもたらすと同時に、これまで米国以上のパフォーマンスを示してきたドイツ株の大幅調整をもたらすリスクとして考えなければならない。

 また、最近のドイツ経済を牽引している要因としては、住宅・建設投資の拡大がある。
 ドイツの住宅価格も過去と比較すれば大きく上昇しており、これがドイツ経済を牽引している。

 輸出不振と株価の調整がドイツの建設需要の減少へと波及すれば、ドイツの成長はさらに減速することになる。

 ドイツの「独り勝ち」という幻想は、崩壊しつつあるのかもしれない。



ロイター 2015年 10月 5日 08:28 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/10/04/volkswagen-emissions-poetsch-idJPKCN0RY0ZE20151004

独VWの「存続の危機」、排ガス不正問題でペッチュ氏=国内紙


●10月3日、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の監査役会長に就任する予定となっているペッチュ最高財務責任者(CFO)は、このほど開かれた社内会合で、排ガス不正問題は「会社の存続を脅かす危機」だと指摘した。3月撮影(2015年 ロイター/Fabrizio Bensch)

[ベルリン 3日 ロイター] -
 独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の監査役会長に就任する予定となっているペッチュ最高財務責任者(CFO)は、このほど開かれた社内会合で、排ガス不正問題は「会社の存続を脅かす危機」だと指摘した。
 独ウェルト紙(日曜版)が報じた。

 一方でペッチュ氏は、VWはこの危機を乗り越えることができると信じているとも指摘したという。
 VWの広報担当者はこの報道に関してコメントを拒否した。

 また、同紙によると、VWは2018年までに1000億ユーロとしている投資計画の削減を検討している。
 VWはこの件についてもコメントを拒否した。




●【排ガス不正】フォルクスワーゲン倒産危機!経営陣がポンコツ! 武田邦彦
2015/09/29 に公開




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