2015年10月13日火曜日

中国共産党の「信仰の危機」:伝統中国と共産党が統治する中華人民共和国を重ねあわせるという戦略

_


 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2015年10月13日(Tue) 
 西本紫乃 (北海道大学公共政策大学院専任講師)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5468

中国共産党の「信仰の危機」

 9月22日から28日まで、習近平国家主席は米国を公式訪問した。
 習近平政権がスタートしてから、国家主席が国賓待遇で訪米するのは今回が初めてであり、それだけに今回の習近平訪米を歴史的な訪問として演出するため、中国側は事前準備に全力を尽くしたようだ。


●2014年7月ナスダックに上場した微博(Weibo)

 実際にはサイバーセキュリティや軍事、人権と両国が相容れない問題とそれぞれの思惑があり、中国が思い描いていたほど華々しい訪米とはならなかったのだが、中国国内では今回の習近平主席の訪米の最大の成果は
 「米中が新型大国関係の構築に互いに努力することで同意した」
ことだとか、
 国連総会での途上国の立場を尊重した習近平主席の演説は「満場からの喝采」を受けた、
といった誇大さが目立つ報道ぶりだった。

■「紅二代」が共産党に騙されたと咬みつく

 さて、中国の新聞やニュース報道で自国の大国ぶりを示す習近平主席の訪米の話題一色となっていた9月下旬、中国国内では中国共産党の「信仰の危機」についての話題が人々の耳目を集めていた。

 中国では宗教について自由な信仰が認められている。
 しかし、そこには但し書きが付く。
 自由に信仰して良いのは中国共産党が認可した宗教団体であることが前提だ。
 「宗教<党」である中国における「信仰」とはキリスト教やイスラム教といった宗教一般における信仰という意味の他に、より核心的な意味として中国共産党の政治思想に対する「信仰」、つまりそれを絶対のものとして信じて疑わない心、といった意味でも使われる。

 習近平国家主席が大国のリーダーとして外交の舞台に立っていた頃、中国国内では中国共産党の掲げる共産主義の理想に対する疑義がもちあがっていた。

 事の発端は9月21日午前、中国版ツイッターと呼ばれる「微博」の中国共産党の若手エリートを養成する組織、中国共産党青年団(共青団)の中央のアカウントが、共産党員たちの共産主義思想に対する「信仰」の重要性を説いた記事を紹介したことに始まる。

 この共青団のツイートに対して、大手不動産開発会社の元会長の任志強が
 「我々は共産主義の次世代の担い手だ」
というスローガンに十数年騙されてきたと咬みついた
のだ。

 任志強の父親は商務部の副部長(中央官庁の副大臣に相当)を歴任した任泉生で、任志強は共産党の老幹部の子弟のいわゆる「紅二代」である。
 任志強自身も共産党員で北京市の政治協商委員の肩書きももっている。
 共産党にとって身内であるはずの任志強が吐き出した党の思想への反発であり、すわ「信仰の危機」だ、と中国のネット上で注目を集め、任志強のつぶやきは瞬く間に拡散した。

 大きな反響を受けて、任志強は同日夜に
 「我々は共産主義の次世代の担い手か?」
と題するコラムを「微博」で公開した。
 そのコラムで任志強は次のように私見を述べている。

>>>>>>
 (改革開放後)無産階級によって革命で打倒されるべきだとされた資産階級が中国の発展の原動力となったではないか。
 民間企業の公有化によって計画経済は破綻し、計画経済政策は完全に失敗だったと宣言された。
 戦いにおいて負け知らずだったはずの毛沢東思想も数千万人の餓死者を出し、文革でも冤罪でどれほどの人が亡くなったかわからない。
 ひょっとすると建国後の誤った政策で死亡した人の方が戦死者よりも多いかもしれない。
 しかし、改革開放が中国人を飢えや寒さから完全に解放したのだ。

<中略>

 私も共産主義が実現することを望んでいる。
 しかし、どのような道を辿ればそこに至るのか? 
 マルクスは共産主義は一国家では実現しないと言った。
 (共産主義は)世界の普遍的な価値観と認識を共にすべきものであり、洋の東西を問うことなく、敵も味方もない。
 少なくとも今のところ(中国に)この前提はない。
 歴史は私たちに教えてくれる。
 暴力革命でもダメで、
 公有制の経済でもダメで、
 計画経済でもダメだった。
 民主や法治がなければなおさらダメだ!

<中略>

 我々は遠大な理想の中ではなく、現実の中で生きていかなければならない。
 目の前の制度設計の問題をしっかりと解決すること、
 中国の国民が民主と自由を享受できる制度を信頼すること、
 家庭の収入を安定させること、
 法律によって国民の生命と財産の安全を保障すること、
 中国人を世界共通の価値観を馴染ませること、
こうしたことをまず先にやらなければならない。
 それらをやらずに如何にして共産主義が実現できるというのか?
<<<<<<

 共産党の過去の政策の過ちを痛烈に批判し、
 欧米の価値観を拒否する現政権の姿勢に反発する任志強の文章は、
 現在の中国の言論環境にあっては非常に過激だ。
 国民の多くが感じているが敢えて口にしないことを大胆に主張した任志強の意見に多くの人が共鳴した。
 共青団側は当初は任志強の主張に対して「人は理想がなければ魚の干物と同じだ」と軽く受け流していたが、任志強の意見がネット上で急速に拡散するのを目の当たりにして、共青団側も看過できなくなってきた。

■国慶節に公開された問題提起
 「新国家かそれとも新政権か?」

 23日朝、共青団の広報・プロパガンダ部門の責任者、景臨が「任志強氏との討論」と題するコラムを発表し、共青団の団員が任志強の主張に対して冷静に対応するように呼びかけた。

 世論の盛り上がりと共青団側の動きを受け、同日夜、任志強は第2のコラム
 「全世界の無産階級は連帯したか?」
を公開し、さらに舌鋒鋭く共青団を批判した。
 その文章では
 共産主義とは国際主義でもあり、中国だけで成し遂げられるものではないので、
 世界と価値観を共有することが重要だ
と述べ、

 「共青団の文章には共産主義の目標について甚だしい誤りがある。
 共産主義を“一つの民族、一つの国家、一つの政党”が胸に秘めた大きな目標だ
といっているが、
 これは歴史を否定するような無知だ」
と切って捨てている。

 その上で
 「マルクス主義と中国の伝統と結びつけて“中国の特色ある社会主義”打ち立てるのは結構だが、
 その中身の多くは“中国の夢”であって共産主義ではない!」
と、共青団の語る共産主義の実現という大きな目標と、習近平主席の国民向けスローガンである“中国の夢”との理念を同一におくことの誤謬を厳しく指摘している。

 国民の国家への求心力を高めるために現政権が「大きな物語」として掲げている“中国の夢”を批判する任志強の
 第2コラムは、さすがに今の中国の言論環境においてはレッドラインを踏み越えるものだ
 24日、党内の指導者から任志強本人に直接、公開した文章を削除するように指示があったが、任志強は削除せよとの連絡を受けた事実も「微博」で晒したのだった。

 その日の夜、共青団側も
 「立ち上がれ理想主義-任志強たちへの一通の公開書簡」
と題する文章を公開して任志強の文章の詳細な部分を取り上げそれらの過ちを指摘した。

 共青団側と任志強の泥仕合になってきたこのあたりで、そろそろ論争も終わるかと思われていたが、中華人民共和国の建国記念日にあたる国慶節の10月1日、任志強は
 「新国家かそれとも新政権か?」
と題する第3のコラムを発表した。
 この文章で任志強は国家と政権を同一視することの矛盾を突き、1949年1月1日に毛沢東が天安門で宣言したのは新政府の成立であって国家の成立ではない。
 したがって
 国慶節は政府が誕生した誕生日であって、国の誕生日ではない
ということをすべての中国人は認識すべきだ、と訴えている。

 国慶節のその日にタイムリーに公開されたこともあり、
 「新国家かそれとも新政権か?」はわずか数時間のあいだに10万人以上が閲覧
したが、この文章も
 翌日までにはネット上から削除されてしまった。

 一連の文章の中で、任志強自身は共産主義の実現という理想自体を否定しているわけではない。
 任志強の主要な論点は
1].欧米の価値観の流入を警戒するのではなく、普遍的な価値観も受け入れつつ理想としての共産主義を実現すべきであり、
2].習近平が掲げる“中国の夢”は共産党が本来目指すべき共産主義の実現という理想とは相いれないものだ、
というところにある。

 2012年の習近平政権スタート時に、中国にとって外交、内政とも大きく分けて「開く」方と「閉じる」方の2つの道の選択ができたと思う。
★.外交については、経済大国となった中国に対して各国からの中国脅威論を刺激しないよう国際社会と協調する「開く」方の道もあったが、習近平政権はこの道は選ばなかった。
★.内政については社会が発展し利害が多様化する状況下で、共産党の権力の幅を小さくし相対的に自由と民主の幅を広くしていくという「開く」方の道があったがそちらの道は選ばなかった。

 政権発足から今日までの3年間、習近平政権
★.対外的には大国としてのプレゼンスを高め発言権を獲得すること、
★.国内的には強権的な腐敗の一掃と思想や言論の統制の強化を図り、「開く」戦略より「閉じる」戦略
を選択してきた。
 その結果、今日生じているのは、
★.伝統中国と共産党が統治する中華人民共和国を重ねあわせるという「自高自大」であり、
エスニック・アイデンティティ(民族主義)にナショナル・アイデンティティ(愛国主義)をかぶせることで国民の民族への愛着を利用した愛国心の発揚である。

 任志強が投げかけた「信仰」に対する疑問は、習近平政権が「閉じる」方の道を進んできた結果、中国共産党が本来目指していたはずの目標と、政権の方向性のズレを鋭く抉り出している。

 今回の「信仰の危機」に対して、共産党はネット上から情報を削除してその声をかき消すことで強制終了させたが、「閉じる」ことで生じている「信仰」へのゆらぎは、閉じれば閉じるほどますます大きくなるのではないだろうか。



ニューズウイーク 2015年10月14日(水)16時30分 楊海英(本誌コラムニスト)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/10/post-3987.php

ローマ法王もたじろぐ「反キリスト」
中国の教会弾圧

苛烈な迫害下にある中国人信者と
バチカンを引き裂く政府転覆への警戒と「台湾断交」という選択

 歴史的に見てみると、現実主義に生きる中国人と宗教との相性は悪い。
 「文明の発祥地の1つ」を自任する中国だが、キリスト教と仏教、イスラムといった三大宗教はいずれも中華圏以外に起源がある。
 中国にとって、どれも外来の文化・思想だ。
 そのためか、三大宗教の布教者たちは昔から東方の中国を目指して布教に努めてきたものの、歴代の王朝に弾圧されることが多かった。

 今日では世界最多の人口を抱える国家に成長した中国は、いずれの宗教も膨大な信者数を抱えるようになった。
 キリスト教も例外ではないが、中国共産党政権が建国直後から苛烈な弾圧政策を維持してきたので、
 「チャイニーズ・クリスチャン」の存在は国際問題と化している。

★.中国のキリスト教徒の総数は「1億3000万人」に達するとの見方もあるが、
 政府系の研究機関は「3000万人」という控えめな数字を公開している。
 GDP成長率を水増しして「世界第2の経済大国」の座を死守しようと画策し、民族間紛争の犠牲者数や環境破壊の数値を過小に操作するのが得意な政府が言うところの信者数も信用できない。

 ひとまず当局の分類に従うと、
★.3000万人中プロテスタントは約2500万人で、残りはカトリックだという。
 プロテスタント系の教会は「中国基督教三自愛国運動委員会(三自会)」に組織化されており、カトリック系の教会は「中国天主教愛国会」という社会団体にまとめられている。
 「三自」とは「自治、自養、自伝」の略で、
 「反動的な外国勢力から独立して自治し、聖職者を自ら養成し(経済的にも自力で教会を養う)、独自に伝道する」
との意だ。

 宗派を問わない排外的な組織化はすべて建国直後に周恩来首相の主導で確立した政策。
 「キリスト教は欧米の帝国主義による中国侵略の先兵にして道具だった」
との認識からの断罪だ。
 建国後、共産中国とバチカンは外交関係が断絶したまま今日に至る。

■法王を阻む高いハードル

 「新型大国間関係」を米中間で構築しようとしてワシントン入りした中国の習近平(シー・チンピン)国家主席だが、その存在はローマ法王(教皇)フランシスコの到来ですっかり色あせてしまった。
 習と法王の出会いを期待した中国のキリスト教徒は見事に裏切られた。
 法王の出身母体であるイエズス会は明朝の中国で布教し、ヨーロッパの科学技術を伝えた実績も広く知られている。

 フランシスコが法王に選出された直後には中国政府から祝電が届き、昨年の韓国訪問時に中国上空を通過した際は習に挨拶の打電をしていた。
 相思相愛と思われていたが、訪米時に接近は見られなかった。
 「中国に行きたい」と、法王はアメリカからの帰途に語ったそうだ。
 しかし、バチカンと中国が外交関係を結ぶには3つの高いハードルがある。

1].まず、「宗教はアヘン」とのイデオロギーを中国共産党が放棄しない点だ。
 「外国の反中国勢力は宗教を利用して中国を転覆しようとしている」
として、警戒を緩めない。
 キリスト教徒が外国に憧れるのを防ごうとして、教会を破壊したり、十字架を引き下ろそうとしたりする暴力事件が中国内で頻発している。

2].次に、信教の自由のない中国で、政府系の「三自会」や「愛国会」を敬遠する信者たちは独自の場所に秘密裏に集まってミサを行う。
 これを当局は「地下教会」と断定して信者を逮捕、拘束し、両者の対立は先鋭化している。
 バチカンは司教の任命権を確保しようとしているし、中国共産党は逆に任命権こそが外国の干渉の手口だとみて排除しようとしている。

3].第3に、中国はバチカンに関係正常化の前提条件として台湾との断交を掲げているが、
 バチカンは台湾の「教友たちを捨てる」決断を容易に下せない。

 大勢のクリスチャンに正しい福音を伝えるのを優先すべきか、それとも共産党統治下で殉教者が続出するのを黙認するのか。
 法王は習の動きを見極めながら模索中であろう。

[2015年10月13日号掲載]



レコードチャイナ 配信日時:2015年12月5日(土) 17時40分
http://www.recordchina.co.jp/a124518.html

中国共産党が史上最も厳格な党紀を施行へ、
個人生活までも規制―香港紙


●4日、香港紙・明報は記事「中国共産党史上最も厳格な党紀が間もなく施行、たんなる言葉遊びではない」を掲載した。写真は中国の書店で販売されている中国共産党の党規約。

 2015年12月4日、香港紙・明報は記事
 「中国共産党史上最も厳格な党紀が間もなく施行、たんなる言葉遊びではない」
を掲載した。
 中国新聞網が伝えた。

 中国共産党は10月21日、
 「中国共産党廉潔自律準則」
 「中国共産党紀律処分条例」
を発表した。
 8000万人の中国共産党党員が守るべき紀律通達の改訂版で、いわば党員限定の法律と言える。
 2016年1月1日から施行される。

 この2つの通達は「史上最も厳格な党紀」と呼ばれている。
 反汚職運動に力を入れる習近平(シー・ジンピン)体制の意向を汲み、微に入り細を穿つような細々とした規則が設けられている。
 収賄など不適切な手段でスポーツジムの利用カードを入手すれば警告といったことまで定められているほか、子どもや妻、親戚を経由した汚職も禁止されている。

 また正当な収入を使ったとしても華美な生活は禁止されている。
 例えば子どものために大々的な結婚式を開くことも規制されている。
 また父母を敬い、子どもを教育することも党員の責務として定められている。

 個人生活のレベルから厳しく党員の紀律をただす。
 まさに「史上最も厳格な党紀」だ。



ウォール・ストリート・ジャーナル 12月10日(木)10時47分配信
http://jp.wsj.com/articles/SB12270577396625053624104581406510245722284

人民日報に背を向ける中国の若い共産党員

 人民日報は中国共産党の機関紙で、党が日々、何を重要な課題とみなしているかや、国家の方向性について示している。
 政治的議論の主な場でもあり、構想を示したり、議論の要点を確認したりしている。
 他の多くの党紙と同じように、党員は人民日報を読むことを求められている。
 だが、年配の党員はともかく若い党員の大多数は、人民日報の購読にますます無関心になっている。

 記事には、党の原則や独断的思考、一般人には意味をなさない用語があふれている。
 主要記事が中国のリーダーたちが、遠方の国の目立たない首脳たちとにこやかに握手している記事だったりすることもしばしばだ。
 さらに見出しはどれもこれも不気味なほど似ていて、中国共産党総書記の習近平・国家主席の名前で始まる見出しが11本も並んでいた日もあった。
 そのため、人民日報も、デジタル革命の中で重要性を保つのに苦戦する世界中の新聞各紙と何ら変わりない状況となっている。
 しかし、共産党にとっては当然ながら、その危険性はもっと大きい。
 というのも党の権力と正当性は、党のリーダーたちが情報を広め、そうした情報がいかに真剣に受け取られるかにかかっているからだ。

 こうした苦悩は先月の人民日報に掲載された「党員が党の機関紙を読まなくていいのか」と題する論説でも明らかにされた。
 執筆者である湖南省長沙市の党幹部、イエン・ジン氏は、このところ、
 「一部の党員は党紙を読もうともせず、その時間をうわさ話に目を通すことに費やしている」
と指摘した。
 イエン氏は、
 「1980年代や90年代に生まれた現在の党員は紙の新聞を読む習慣なく育ち、コンピューターや携帯電話で情報を得ている」
ので、こうした状況は意外ではないと認めた。
 同氏は自身の地区では22~30歳の党員が全党員の25%を占めていると指摘。
 年配の党員が引退し、若い世代が入党するにつれ、党のニュースにあまり注意が払われないというこの問題が拡大するとの見通しを示した。

 人民日報内部の問題も最近、明らかになった。
 しかし、イエン氏や同じような考えの党員たちが真に懸念していることは、党紙を読まないことで、多くの若い党員たちが党の世界ではなく、自分たちの世界にこもってしまうことだ。
 同氏はさらに、人民日報のような新聞は、党首脳陣が何を考えているかを党員が知るための効果的な手段だと主張する。
 政府が望むことを知ることによって党員は「啓発される」という。
 つまり、党員たちは、この機関誌を呼んで真剣な、そして神聖化された目的を持つ大きな組織の一員であることを認識するという。
 イエン氏の見方は共産党のかなりの党員たちの考え方を代表している。
 つまり新人党員たち間で党の正当性が薄れている可能性があるという懸念だ。

 最近共産党に入党する若い世代の目的はさまざまだ。
 一部の人々は党員になることを、自身や家族にとって金銭面でのチャンスにつながるコネ作りの機会だとみなしている。
 親や親族が党員だからという理由で入党する人々もかなりいるし、党の主な使命は、より良くより強固な国家の建設だという習氏の考えを信奉している人々もいる。

 中国政府にとって、国内のすみずみまで政府の妥当性を浸透させるだけでも大きな課題だ。
 共産党が新人党員たちにその認識を持たせることができないようでは、その仕事はますます難しくなる。

By Russell Leigh Moses


サーチナニュース 2015-12-11 11:09
http://news.searchina.net/id/1596783?page=1

中国の公務員が共産党に反逆 
会議中に「ルールなぞクソくらえ」、
「どいつもこいつも腐敗している」と気勢

 中国共産党山西省中央紀律検査委員会はこのほど、「責任追及をする5件の典型的案件」を紹介する文章を発表した。
 うち、注目されているのは同省・古交市で旅客陸運の責任者を担当していた任長春氏で、2014年4月に勤務場所の会議室で、「党の規則などクソくらえ」、「腐敗しているのは全員だ」と気勢を上げたという。

 任氏の「反逆行為」は2015年5月の時点でインターネットに動画投稿された。

 動画では黒い外套を着て
 「国家のルールなんかクソくらえだ。
 オレ、任長春は国家のルールなんか実施しないぞ」、
 「言ってやる。
 どいつもこいつも腐敗しているんだ」、
 「オレは法律関係の出身だ。
 オレは、法律とは何か知っている。
 だから、法律は無視するんだ」
などと発言した。

 中国共産党山西省中央紀律検査委員会は任氏の上記発言を具体的には紹介しなかったが、京華網などの中国メディアは掲載した。

 なお、「クソくらえ」の原文は「狗屁(ゴウピー)」。「犬の屁」で、日本語ならば「クソくらえ」、「クソッたれ」といったニュアンスの、あまり品のない罵り言葉だ。

 粗野な言い方だが、
 「法律を専門とした経験があるからこそ、中国の法律やルールに実効性はなく、腐敗しているのは皆同じ」
との主張と理解できる。

 その後、任氏は停職処分となり、当局に取り調べられることになった。

 中国共産党山西省中央紀律検査委員会は8日付の文章を9月に公式サイトに掲載。
 「2014年4月、古交市汽車客運管理弁公室の任長春主任は勤務時間において政治規律に違反し、悪質な影響を発生させた。
 2015年5月、任長春の党籍をはく奪し、行政の職務を免職する処分にした」
と記述した。

 当時の任主任の上司も、職務怠慢などで厳重警告や「深く反省する文章」の提出を科す処分を受けたという。



NEWS ポストセブン ※SAPIO2016年1月号  12月17日(木)16時0分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151217-00000021-pseven-cn

中国で公園が政治化 
共産党のイデオロギー宣伝用看板が乱立


●「共産党人」公園内のアニメ人形調の紅軍兵士

 中国共産党のテーマパーク(コンセプト公園)が武漢にオープン──このたび米CNNがこう題したニュースを発信した。
 党と中国の歴史を遊びながら学べるとの触れ込みだが、児童を対象にした新施設の建設は、中国の思想教育が新たな段階に入ったことを示唆している。
 ノンフィクションライター・安田峰俊氏が現場に赴いた。

 長江中流域の肥沃な大地。
 閑静な住宅街に囲まれた湖畔に、美しい公園が広がる。
 息子と遊ぶ父親、ベビーカーを押す母親、四方山話に花を咲かせる老婆たち。
 絵に描いたような幸福な日常だ。

 だが、他の公園とはひとつ大きく異なる部分がある。
 敷地の全体に、中国共産党や習近平政権を賛美する立て看板やオブジェが溢れているのだ。
 生々しい「政治」が市民の暮らしに完全に溶け込む様子は、言い知れぬ不気味さがあった。

 ここは湖北省武漢市内にある南湖幸福湾水上公園。
 今年9月28日、「共産党人」をテーマとしてオープンした、
 敷地面積30万平方m(東京ドーム6.4個分)の広大な主題公園(コンセプト公園)である。
 入場は無料で、いまやすっかり近隣住民の憩いの場だ。

 それでは、北側の入り口から順を追って、共産党公園のツアーにご案内しよう。
 まず、入場の際は大量の中国国旗と、地元出身の過去の解放軍軍人や党関係者の解説パネルがお出迎え。
 さらに湖をぐるりと囲む1.5キロ程度の遊歩道には、東方向に結党から現在までの党史を解説するアーティスティックな23枚の立て看板、西方向に党の「英雄」29人の彫像がずらりと並ぶ。
 党史の看板には、習政権の功績を讃える内容も多い。

 そして公園の東端には、習政権が目下宣伝中のイデオロギー「社会主義核心価値観」の12個の標語をかたどった立方体のオブジェがどっしりと鎮座する。

 のどかな公園には不似合いなことに、周囲には数人の警備員が常駐。
 筆者はカメラを構える様子を見咎められ、早々に退散した。

 「共産党人」アピールが最も濃厚なのは公園の南側だ。
 『共産党宣言』をかたどった大理石があるスペースは、入党の宣誓式会場を模したもの。
 児童アニメ調にディフォルメされた人民解放軍兵士の巨大な人形4体は、親子連れやカップルの間で格好の撮影スポットだ。
 植え込みには抗日戦争(日中戦争)の勝利を祝う標語が掲げられている。

 長征(1930年代に国民党軍に追われた紅軍の大移動)の経路がでかでかと床に描かれた広場では、地域の子どもたちが一心不乱に鬼ごっこに興じていた。
 幼児連れの母親の一人(30代)はこう話す。

 「私は政治に関心はないです。
 でも、息子が公園で遊ぶことで国家の歴史を勉強できるのは、よいことだと思う」

 実のところ、武漢市内では今年に入り、こうした市民公園の「政治化」が続々と進んでいる。
 例えば1950年代に市内に開設された紫陽湖公園は「愛国主義」を、同じく洪山公園は習政権のスローガン「法治」をテーマにそれぞれリニューアル。実際に敷地内を散策してみると、党のイデオロギーを宣伝する看板が雨後のタケノコさながらに乱立していた。

 「バカバカしい。税金の無駄遣いもいいところだ」
 「市民の生活空間に政治的なプロパガンダを持ち込むのは、往年の文化大革命(文革)を連想するので不愉快だ」

  一連の政策には、ネット世論を中心に苦言を呈する動きも根強い。
 だが、現地当局は批判の声もどこ吹く風だ。
 地元紙『長江日報』によれば、武漢市内では他にも「中国夢」「中華優秀伝統文化」などを主題にした公園9か所の新規開設や改装の計画が進んでいるという。



NEWS ポストセブン 12月29日(火)7時0分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151229-00000009-pseven-cn

中国でプロパガンダ氾濫 文革の紅衛兵世代実権握ったためか

 中国湖北省の武漢市に中国共産党のテーマパーク(コンセプト公園)がオープンし、連日賑わいを見せている。
 党と中国との歴史を遊びながら学べるとの触れ込みだが、実はこうした庶民の日常の「政治化」は中国全土で進行中である。
 小学校に、巨大な宣伝看板が出されたり、大学などでも政権を賛美する展示がなされたりしているという。
 ノンフィクションライター・安田峰俊氏がレポートする。

 * * *

 「共産党公園の登場や、国内にプロパガンダが溢れる現象の一因として、まず中国の官僚気質が指摘できます」

 現在タイに亡命中の中国人民主活動家・顔伯鈞氏は、一連の背景をこう説明する。
 彼は習近平が学長を務めた党の最高教育機関・中央党校を修了。
 共産党エリートとして養成された経歴を持つ人物だ。

 昨今の現象は、党幹部らが政権の意向を過剰に忖度して引き起こした面もあるという。
 「例えば、近年中国では人権派弁護士が100人単位で拘束されましたが、
 習近平自身の意向は『少し脅しておけ』という程度
かもしれない。
 しかし、末端の幹部は出世の点数稼ぎを目的に、目立った成果を挙げることを好みます。
 現在の過剰なプロパガンダの蔓延にも、同様の構図があることでしょう」

 もっとも顔氏は、真の要因は別に存在すると話す。

 「習近平時代に入り、社会の決定権を握る人間の多くが、
 文革の主人公だった紅衛兵世代に代替わりしました。
 文革は毛沢東が個人崇拝と大衆扇動的なプロパガンダを通じて起こした政治運動。
 多感な十代でこれを味わった彼らには、
 毛沢東式の手法こそが『政治』の本質だ、
とする観念が刷り込まれています」

 考えてみれば、
 子どもの「洗脳」や文化施設へのプロパガンダを重視する政策とは、まさに文字通りの「文化大革命」
ではないか。
 事実、共産党公園がある湖北省をはじめ、習政権のプロパガンダ政策が特に強烈に実施されている陝西省・湖南省などのトップ(党委書記)を調べると、全員が例外なく紅衛兵世代である。
 いずれも習近平と同じく、若き日に下放(地方労働)を受けた経験を持つ「文革の子」だ。

 彼らは歳を取って変になったのではない。
 変な人たちが歳を取っただけなんだ。
 ──現在、中国ではこんなジョークが流行している。
 青春時代に教条的で暴力的な政治運動の洗礼を受けた人々の統治は、
 必然的に荒っぽいものにならざるを得ないというわけだ。

 「習政権の10年間は、リベラルな中国人にとって暗黒の時代です
 しかし、こうした政策は決して長く続きません。
 これが世代的な問題である以上、彼らの退場後に中国の夜明けが必ず来ます」(顔氏)

 とはいえ、そんな習近平の政治手法は、貧困層を中心とした庶民の間で絶大な支持を獲得している。
 毛沢東が発明した「文革式」の統治は、中国人民を巧みにまとめあげる上では最適解のひとつとも言えるのだ。
 共産党公園の蔓延は、時代遅れの「文革の子」による最後の悪あがきか、それとも中国共産党が「統治の最適解」を見つけた証しなのか。
 のどかな市民公園の背後に、異形の国家の未来が見える。

※SAPIO2016年1月号












_