数年前までは中国経済の前途はバラ色に開けていた。
いまは、そんな論調はまったく影も形もなくなってしまった。
操る言葉は「危機か」がそうでなければ「大丈夫か」の二語である。
だれも、この国の未来の姿は語らない。
語るとすれば軍事大国中国になる。
これはメデイアが「明るい未来の国:中国」と、よいしょしていた結果なのだろうか。
たった数年でかくも劇的に変わってしまった
発展のスピードも凄まじかったが、
零落のスピードも半端ではない
ようだ。
おそらく
2012年の反日デモ、これが中国のピークであった。
そしてその年末の中国を突如襲った黒い霧。
これが中国の姿を暗示させた。
それから3年、未だに中国は灰色のスモッグに覆われ、時に河は赤く染まる。
灰色の中国が、血の中国へ変わるかのように。
あちこちで工場爆発が起こり、魚が大量に岸辺に打ち上げられる。
お金持ちはどんどん海外に逃げ出している。
巨艦はエンジンが止まってもその大きさからすぐにはスピードは落ちない。
しかし、3年の月日とともに、明らかにそのスピードは落ちてきている。
一度、止まったらおそらく巨艦は動かなくなるだろう。
それが巨艦というものである。
止まる前に、どうにかスピードを上げないといけない。
しかし、それをやれるエンジンがない。
巨艦を動かしてくれていたのは、外資。
世界不況はその外資を逃亡の方向に動かしている。
外資を失ったとき、エンジンはどうなる。
14万トンの巨艦を3万トン用のエンジンで動かすことになるのか。
「中国のハードランデイングはない。当局が強権をもって阻止する」
というのが、大方の見方で合ったが、もはやこの説は説得力をもたなくなってきている。
風潮は
「中国はハードランデイングする。
そのときのために各国は対応策を持たねばならない」
に変わってきている。
『
2015年10月03日(土) 週刊現代
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45384
失業者1000万人で、万事休す!
何をいまさら習近平「日本よ、助けてくれ!」
25兆円ブチ込んでも株価は下がる一方
ド派手な軍事パレードで、散々日本に悪態をついた習近平主席が、経済失速で悲鳴を上げ、日本にすがろうとしている。
習近平政権は一体何を考えているのか。
この矛盾に満ちた大国のホンネを追った。
■中国経済に対する疑心暗鬼
9月9日から11日まで大連で行われた「夏のダボス会議」。
世界中から集まった多国籍企業のトップの気持ちを代弁するかのように、三菱商事の小島順彦会長が、北京から駆けつけた李克強首相に質問した。
「最近の中国の株式市場や債務に対するリスクが、世界の注目を一身に浴びています。
中国政府はどのような金融改革を行う気なのですか?
金融改革を進めるにあたって、具体的なスケジュールはあるのですか?」
壇上の李克強首相は、やや緊張した面持ちで答えた。
「最近、国際金融市場で発生している新たな波は、2008年の世界的な金融危機の延長線上にあるものだ。
中国の株式市場は6月と7月に非常事態に陥ったが、政府がすでに適切な措置を取って、リスクの蔓延を防いだ。
もはやシステミックな金融パニックは解消したのだ」
このように李克強首相は、必死に弁明したが、3日間にわたる討論は、中国経済に対する疑心暗鬼一色だったという。
長年参加しているEUの企業経営者が明かす。
「そもそもダボス会議というのは、毎年1月にスイスのダボスで行われる『経済界のサミット』ですが、今世紀に入って、議論の中心が中国経済の躍進に移ってきたため、'07年より毎年9月に中国で『夏のダボス』を開くようにしたのです。
ところが今年は、私も含めてですが、世界の企業経営者たちが、
『中国発の世界恐慌が起こるのではないか』
『中国の経済統計はどれもデタラメではないか』
などと発言。
中国政府の官僚や国有企業経営者たちに詰め寄る姿が、あちこちで見られました」
突然、握手を求められても
これに対して、中国側は、「中国経済は問題ない」と説明するばかりか、「攻勢」にも転じたという。
日本人参加者が語る。
「われわれ日本人を見ると、中国の経済官僚や国有企業の幹部たちが、妙に優しく迫ってくるのです。
『中日両国が肩を組んでこそアジアは発展する』
などと言っては、慇懃な態度で握手を求めてくる。
わずか数日前に、あんなにド派手な『抗日軍事パレード』をやっていた国とは思えませんでした」
同様の光景は、9月4日と5日にトルコの首都アンカラで行われたG20(主要国サミット)の財相・中央銀行総裁会議でも見られた。
会議に同行した日本の経済官僚が語る。
「今回のG20は、まさに中国経済の急失速に対する懸念一色でした。
そのため、中国代表の楼継偉財政部長と周小川中国人民銀行総裁は、食事するヒマもないほど、各国から上がる疑念の声に対する火消しに追われていました。
ついこの間のギリシャ危機の時まで、実に偉そうな態度で、
『最後は中国がパルテノン神殿を買ってやるからな』
などと嘯いていたのとは対照的です」
そしてここでも、中国側から日本の官僚たちへのラブコールが相次いだという。
「6月に北京で3年ぶりの日中財務対話を開いて以降、日中の経済官僚同士の個人的な交流が始まりました。
先日のトルコのG20では、そんな一人から、
『今年中でなくても構わないから、日本に何とか早期にAIIBに加盟してほしい』
と、非公式に頼まれたのです」(同・経済官僚)
AIIB(アジアインフラ投資銀行)は、今年12月に、北京を本部にして発足する新たな国際開発銀行である。
日米が中心になって1966年に創設したADB(アジア開発銀行)に中国が対抗し、57ヵ国を集めて、鳴り物入りで創設する。
6月末には習近平主席が主催し、北京で盛大な設立協定の調印式を開いた。
だが創設前に早くも、うち7ヵ国が不参加となる可能性が出るなど、チャイナ・マネーの限界説が飛び交っている。
ちなみに日本は、麻生財務相が強硬に反対したことなどによって、参加していない。
アメリカも同様である。
■中国経済の底が抜けた
これまで約70冊の中国関連の著作がある中国ウォッチャーの宮崎正弘氏が解説する。
「一言で言えば、いま中国は、焦っているのです。
中国はもともと、自国のGDPを水増しして発表する習慣がありましたが、これまでは海外からの投資が相次いだため、ごまかせてきた。
ところが3年前に、大規模な反日暴動が起こったことで、日本企業が次々と中国から撤退を始めました。
急激な賃金上昇で、アメリカも手を引き始め、いままた南シナ海の埋め立て問題で、ASEANの企業が引き始めている。
このため海外からの投資が激減し、中国経済は底が抜けてしまったのです」
たしかに今年上半期の対中投資は、前年同期比で日本が16・3%、アメリカは37・6%も減らしている。
世界最大の経済大国と、中国に次ぐ3番目の経済大国が、中国から引き上げにかかっているのである。
北京の中国日本商会幹部も語る。
「俗に、日系企業2万3000社が1000万人の中国人を雇用していると言っていますが、
いまはもう2万社を切ったかもしれません。
中国がGDPの増加にこれほどこだわるのは、GDPの増加イコール雇用の増加と考えているからです。
このまま雇用が減り続ければ、ますます経済失速していき、失業者の増大が犯罪やデモを増やし……という悪循環に陥ってしまうでしょう」
こうした危機がヒタヒタと迫ってきていることは、習近平政権は百も承知である。
そのため、中国国務院(中央官庁)はあらゆる手段を使って、経済崩壊の引き金となるリスクを孕んだ株価下落を防ごうとしている。
ゴールドマンサックスの試算によれば、
この3ヵ月ほどで、中国政府が株価下支えに投じた金額は、2360億ドル(約25兆円)にも上るという。
■習近平の本心
だが、市場は中国政府の改革をまったく信用していない。
そのため、中国株の代表的指標である上海総合指数は、「レッドライン」と呼ばれる3000ポイントのすぐ上を「低空飛行」するばかりだ。
8月の貿易統計は、前年同期比で
輸出額が6・1%、輸入額が14・3%
も減らしている。
製造業の先行きを示すPMI指数も、8月に49・7と過去3年で最低水準。
また中国を代表する
巨大国有企業の中国石油が、1兆元(約19兆円)を超す負債を抱えている
ことが発覚し、大騒ぎになっている。
こうした経済統計を見る限り、
長く躍進著しかった中国経済は、完全にメッキが剥がれてしまった
のである。
実際、数年前から「鬼城」と呼ばれるゴーストタウンが、中国各地で問題になってきたが、最近は都市部の「鬼商城」(ゴーストデパート)が深刻化している。
消費がまったく伸びず、建てすぎたデパートが次々に倒産しているのだ。
この上、日系企業が引き揚げれば、1000万人の中国人が職を失うことになる。
そこでさすがの「反日闘士」習近平主席も、背に腹は代えられないということで、日本企業の引き留めに躍起になっている。
中国経済の分析が専門のシグマ・キャピタルの田代秀敏チーフエコノミストが、そんな習近平主席の心情を推察して語る。
「これまで中国の製造業の牽引役となってきた自動車の販売台数は、7月に前年同月比で7・1%も減りましたが、
日系メーカーだけは22・4%も伸ばしています。
これは、日本の製造業へのラブコールです。
中国政府は5月に、『中国製造2025』という12ページからなる10年戦略をまとめました。
それを読むと、中国お得意のパクリや企業買収ではなく、25年かけて地道に製造業を発展させ、『中国ブランド』を確立しようと書いてあります。
そうなると、日本企業の助力が絶対に必要です。
習近平は一方で、抗日軍事パレードをやりながらも、本心では
『日本よ、中国の製造業を助けてくれ!』
という心境なのです」
■アメリカにフラれて日本へ
中国が日本に助けてほしいのは、製造業ばかりではない。
「中国政府は、アメリカ国債の『売り』に走りながら、一方で中国政府の資産運用機関である中国投資有限責任公司は、判明しているだけで「「116社」もの日本企業の大株主になっています。
つまり、日本は『買い』なのです。
特に、中国は'13年にサービス業が製造業をGDPで追い越しており、サービス業の育成に力を入れています。
そこも、サービス大国の日本を、ホンネでは頼りたいのです」(田代氏)
前出の宮崎氏も続けて言う。
「習近平主席は、9月22日から国賓待遇で訪米しますが、受け入れる側のオバマ政権は、冷たく対応するつもりでいる。
アメリカから悲しく帰国する習近平は、ますます日本に擦り寄ってくるでしょう。
ただ、プライドが高いので、絶対に『助けてください』と頭を下げることはしない。
『両国で共同プロジェクトをやろう』と持ちかけてくるはずです」
日本経済が中国経済の動向に左右されるのも事実だが、
世界の誰も中国を助けてくれなくなって、
これまで散々コケにしてきた日本に助けを求める。
日本からすれば、「何をいまさら」
という気にさせられてしまう、まことに困った隣人である。
「週刊現代」2015年9月26日・10月3日合併号より
』
『
サーチナニュース 2015/10/03(土) 06:32
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=1003&f=business_1003_001.shtml
中国経済の減速続けば、アジア各国に深刻な影響=中国メディア
世界第2位の経済大国となり、世界経済に大きな影響を持つ中国経済について、格付け会社フィッチ・レーティングスは
「中国経済のハードランディングは世界経済の成長と安定に大きな悪影響をもたらす」
としたうえで、
★.中国経済が2016年に大きく減速した場合は
17年にも世界へと波及し、
特にアジア各国が深刻な影響を受ける可能性があると分析した。
中国の匯通網によれば、
★.フィッチ・レーティングスは15年の中国経済の成長率を6.8%、
16年を6.3%と予測
している一方で、
16年は「公共部門および民間部門ともに投資が大きく減少」したり、金融機関の不良債権率が大きく上昇したりした場合、人民元が対ドルで大きく下落した場合は、
★.中国経済の成長率が「3%を下回る」恐れもある
という。
中国経済の成長率が急激に鈍化した場合、その影響を強く受けるのはアジア各国となりそうだ。
匯通網は、韓国のように輸出に依存する国だけでなく、日本や台湾、シンガポールなども経済成長率が大きく鈍化する見通しだと報じた。
さらに、中国の経済成長率が鈍化すれば、世界規模でデフレリスクが高まる可能性が高いと伝え、特に内需が低迷し、低インフレに直面しているユーロ圏ではデフレリスクが特に高まる可能性があることを指摘した。
また匯通網は、中国経済がハードランディングすれば、ブラジルやロシアのような資源輸出国は深刻なダメージを受けることになると伝えている。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年10月5日(月) 13時3分
http://www.recordchina.co.jp/a120344.html
経済失速も「失業率は4%を維持」、
中国政府のデータはどこまで信用できるのか?―独メディア
2015年10月1日、独国際放送ドイチェ・ヴェレ中国語サイトは
「中国政府が発表した失業率はどれくらい信用できるのか?」
と題する記事を掲載した。
一般的に経済成長が減速すると失業率の向上を招く。
多くのアナリストが今年の中国の国内総生産(GDP)は政府が目標として掲げている7%を下回ると予測している。
7%という数字は中国にとってここ20年間で最も低い成長率だ。
しかし中国政府は、失業率はこれまでと同じく4%で安定していると発表している。
その理由として、一部の経済学者は、経済再建と人口構成の変化が就職に貢献していると指摘する。
中国は現在、経済成長の柱を投資・輸出から国内需要に切り替えており、政府は今年中に新しい都市で1000万人の雇用を創出することを計画している。
また、経済再建の一環として、労働密集型のサービス業も今年になって急速に伸びており、新たな就職の機会となった。
国際通貨基金(IMF)が最近発表したレポート「中国労働力市場の新常態」によると、中国人口の高齢化により労働力に余裕ができ、経済低迷期の就職問題が軽減しているという。
また、中国就職市場の特徴でもある出稼ぎ労働者の流動性や国有企業による積極的な雇用は、失業率の急激な上昇を抑制している。
一方で、多くの経済学者が中国政府の失業率データに対し懐疑的であり、
実際の失業率は10~12%に達している
ともささやかれている。
労働力の流動性、非正規業界の規模も大きく、実際の失業率を計算することは困難だと指摘する経済学者もいる。
上海財経大学の馮帥章(フォン・シュアイジャン)教授は、
「政府の失業率は主に内部調査や統計で得られた結論であり、
中国統計局は数年前に就職市場の調査・研究を行ったが、失業率を含んだデータは公開されていない」
と指摘する。
独メルカトル中国研究センターのスティーブン研究員は、中国地方政府と研究者が別の方法で失業率を計算したところ、公式データより4%も高い結果となったという。
しかし、中国政府は失業率問題が社会の不安定要素になり、共産党権力を脅かすのではないかと懸念しているため、これらのデータが公になることはないとみられている。
』
『
ニューズウイーク 2015年10月6日(火)17時30分
丸川知雄(東京大学社会科学研究所教授・中国経済)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/10/post-3965.php
中国の成長率は本当は何パーセントなのか?
中国の景気先行き不安で神経質になっている世界の投資家が最も知りたい数字を求めて
中国経済に対する不安感が世界に広がっている理由の一つは中国当局が公表する数字が疑わしいことにあります。
中国政府が発表した2015年上半期の国内総生産(GDP)成長率は7.0%。年初に立てた目標値どおりの結果で、決して低い成長率ではありません。
ならば中国政府は経済は目標どおり順調に推移しているとして涼しい顔をしていてもよさそうなものですが、実際には2014年11月から15年8月まで5回も金利と預金準備率を引き下げたり、公共事業を積み増すなど景気刺激に躍起になっています。
本当は中国政府は経済がもっと悪いと思っているのではないかという疑念が広がっても当然です。
私も2015年1-3月のGDP成長率(7.0%)が発表された時にきわめて疑わしいと思い、1-6月の成長率やその他の統計を見てますます疑念が深まりました。
私は中国の統計などデタラメだ、という立場に立つものではありませんが、今年のGDP成長率に限って言えば粉飾があるとにらんでいます。
では2015年上半期の本当の成長率が7%より低かったのだとしていったいどれぐらいなのでしょうか。
私の推計結果はズバリ「5.3%」です。
どうしてこのような結果になったかを説明する前に中国の統計の特徴について説明しましょう。
■農業生産と工業生産の統計や正確
中国の経済統計の特徴は農業生産と工業生産に強いことです。
ちなみに中国における工業とは鉱業、製造業、電力・ガス・水道業を含みます。
計画経済を遂行するためには農業と工業の生産を正確に把握する必要があったため、1950年代からこれらの生産量については統計をとってきました。
そうした流れから、市場経済体制に移行した今でも農業と工業に関しては非常に詳しく統計がとられています。
私は自動車産業統計の生データを分析したことがありますが、120社以上もあるメーカーのすべてについて、経営不振で年8台しか車を生産していないみじめなメーカーに至るまで1台単位で生産量が把握されています。
一方、中国の統計の弱点は小売や物流などの第三次産業です。
小売や物流も国有企業が担っていた計画経済時代にはきちんと統計をとっていたのですが、市場経済に移行して自営業や民間企業が小売や物流の担い手の中心になったのに統計の態勢の転換が追いついていません。
中国は第3次産業がGDPに占める比率が46%しかなくて国際比較すると異様に低いのですが、これは第3次産業が未発達だからというよりも、第3次産業が統計によって十分に把握されていないからだと思います。
人々の所得の状況も統計では十分に把握されていないようです。
中国では汚職高官から一般庶民に至るまで多かれ少なかれグレーな収入があります。
そうした収入は当然税務署には隠すわけですが、税務署に隠している収入を統計調査員に対して正直に報告するとは考えにくいです。
■粉飾が疑われる工業成長率
以上のような統計の特徴を反映して、GDPの計算は主に生産の側からなされております。
なかでも農業と工業は生産側から付加価値額が把握されています。
一方、第3次産業は生産側からの把握が難しいため、収入の側から、すなわちサービス業就業者の賃金やサービス企業の利益等から付加価値額が把握されています(国家統計局国民経済核算司編『中国年度国内生産総値計算方法』)。
しかし、収入が過少報告されがちであるとすると、第3次産業の付加価値額も過小評価になっているはずです。
さて、2015年1-6月のGDP成長率を産業別にみると農林牧漁業が3.6%、工業が6.0%などであったのに対して金融業が17.4%も伸びており、金融業のGDP成長に対する寄与率は21%でした。
2015年上半期の株バブルの形成と崩壊を思えば金融業が仲介料収入によって急成長したのは理解できます。
最も理解に苦しむのが工業の成長率(6.0%)です。
実はGDPと同時に自動車、鉄鋼、電力など主要な27種類の工業製品の生産量の統計も発表されます。
それを見ると、上半期に6%以上の成長を記録したのは4種類のみで、13種類の工業製品は伸び率がマイナスなのです。
前述のように工業生産はかなり正確に把握されていますので、それと工業全体の成長率が矛盾しているとなると私は後者の方を疑います。
工業成長率は付加価値の成長率なので工業製品の生産量の伸びと一致する必要は必ずしもないのですが、表に示したように2005-2014年の両者の伸び率を比べてみるとけっこう近いのです。
ところが2015年上半期の主要工業製品の生産量の平均的な伸び率が1.0%であるのに対して工業成長率は6.0%と大きく乖離しており、粉飾が疑われます。
=====
そこで、これまでの主要工業製品生産量の伸び率と工業成長率の関係を利用して、2015年上半期の前者の伸び率から後者の伸び率を推計しますと1.3%となります。
これに基づき、他の産業に関する統計は正しいと仮定して2015年上半期のGDP成長率を求めると5.3%となるのです。
今年9月上旬に2週間近く上海と広東省で企業経営者や経済学者から話を聞き、生産現場も見てきましたが、
成長率5%台というのはその時の実感とも符合
します。
[執筆者]
丸川知雄 1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究 所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数
』
『
ZUU online 2015/10/8 06:10
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151008-00000002-zuuonline-nb
中国経済の実態は「3つの指標」に注目!
■日本株急落のきっかけとなった中国経済の変調
「対岸の火事」と静観してきていた日本人の多くにとっては衝撃だった。
8月中旬以降、東京株式市場は、上海株式市場が開く午前10時半に向けて一喜一憂する展開が続いている。
第1のショックは8月11日、中国人民銀行が突然行った2%の人民元切り下げだ。
その後13日まで3日間連続で切り下げ、その間の切り下げ幅は4.5%となった。
次のショックは、8月18日の上海株価指数の急落から始まった日本株の急落だ。
リーマン・ショック後に4兆元超、日本円換算で70兆円規模の景気刺激策を行い、上海株価指数はバブル的な様相を示していたにもかかわらずの急落となった。
この8月の急落以降、中国経済の成長に対する曖昧な期待が消え、中国経済に対する関心が格段に高まった。
そこで直面しているのが、中国経済の指標の曖昧さだった。
■中国経済指標の信ぴょう性の無さ
注目指標は「李克強指数」
中国はご承知のように共産党一党支配の共産国で、経済及びあらゆるメディア等は自由度が低いと言われており、共産党情報部のチェックが入るという噂もある。
真実の数字や実態が表に出ているかどうかという点について、疑念が持たれている状況にある。
そこで注目されているのが、李克強指数である。
李克強氏自身が中国経済を見る上で信頼していると語った指標がウィキリークスによって暴露されたことが背景にある。
■李克強指数とは?
それでは、李克強指数とはいったいなんだろうか。
李克強指数とは現在、中国首相(国務院総理)を務める李克強氏が遼寧省トップの時に外国メディアに対する信頼出来る統計数字として挙げたもので、以下の3点だ。
1.電力消費量
2.銀行融資
3.鉄道輸送量
李克強指数はこの数字を統合して作られている
「チャイナ・モメンタム・インジケーター」指数
として既に使われており、一部投資家はトレーディングツールとして使用している。
★.電力消費量は
2014年前半までは前年同期比5%台の伸びだったが、
14年後半から下がり出し、
15年では横ばい圏の動きだ。
★.鉄道輸送量は
13年後半まではプラス圏で推移していたが、
15年からは10%程度のマイナスが続いている。
李克強指数を独自に指数化した三井アセットマネジメントの指数では、
2015年では前年比25%の伸びだったものが
12年には5%の伸び、
13年には10%台の伸びだったものが
現状では5%を割り込むなど低迷状態が続いている。
2015年の中国政府見通しでは実質GDPの伸びが7%で、16年の政府見通しでは+6.8%とやや控えめな数字となっている。
7月15日に発表された4-6月のGDPの伸びは7%だったものの、8月に発表された中国の7月貿易統計では輸入額が前年比-8.1%と9ヶ月低迷、輸出も-8.3%と衝撃のマイナス発表が相次ぎ、突然の元切り下げと続いた。
■曖昧な楽観から悲観へ それでもまだ中国の成長は続く
中国は現状では景気刺激策を出してきており、中国人民銀行は政策金利を0.25%まで下げているのに加え、政府は中国国家開発銀行と中国農業発展銀行に対して3000億元の債券発行を認めるなどの対策を行っている。
直近ではニューヨークで開かれた国連総会で、習近平氏による発展途上国への膨大な援助策も発表している。
AIIB(アジアインフラ投資銀行)でも中国は指導的な役割を果たそうとしている。
日本では中国に対する曖昧な楽観から、一時的に極度の悲観的な見方になったものの、
★.現状では中国は一時的な供給過剰状態だが、
まだ景気浮揚策を採り出しており、
以前ほどではないが成長は持続するという見方が通説となっている。
一部評論家が重視している、中国との貿易が大きな割合を占める豪州市場の統計では、昨年末の対中国貿易は底値だったが、現状では回復傾向にある。
今後、中国経済を見るためには、李国強指数などを参考にしながら、より精度の高い中国経済への分析を行いたいものだ。
(ZUU online 編集部)
』