●中国大気汚染指数
『
日本テレビ系(NNN) 12月1日(火)16時16分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20151201-00000055-nnn-int
中国・北京で大気汚染が今年最悪レベルに
地球温暖化対策について話し合う国際会議・COP21がフランスで開かれる中、中国の北京では、今年最悪レベルの深刻な大気汚染に見舞われている。
北京市内では朝から先が見通せないほどのスモッグに覆われ、大気汚染物質PM2.5の値が日本の環境基準の20倍以上を記録する地点も出ている。
北京市民「同僚は外出が恐ろしいと言っているよ」
COP21で、習近平国家主席は二酸化炭素排出量を削減する「自信と決意はある」と訴えたが、厳しい現実を突きつけられたかたち。
』
『
サーチナニュース 2015-12-01 15:27
http://news.searchina.net/id/1595775?page=1
北京で「今年最悪」の大気汚染 PM2.5、
日本の基準の30倍に迫る
北京市で「今年最悪」とされる深刻な大気汚染が続いている。
11月30日夜には、一部の観測点で大気中をただよう「PM2.5」の量が、空気1立方メートル当たり1000マイクログラムに接近した。
日本の基準値である「1日平均で、空気1立方メートル当たり35マイクログラム以下」の約28.6倍の数値だ。
北京市では11月27日から5日間、大気汚染が深刻な状態だ。
中国では大気汚染の度合いを「青、機、オレンジ、赤」の4種で現れいているが、北京市では1日午前の時点で、上から2番目に深刻な「オレンジ」が40時間以上続いた。
中国新聞社によると、1日午前6時ごろ、北京市は以前としてどんよりとしたスモッグに覆われており、屋外に出ると異臭を感じた。
北京市環境保護監測センターのリアルタイム紹介によると、市の全域が重度の、または深刻な大気汚染の状態だった。
各観測点が示すPM2.5の量は、最高で空気1立方メートル当たり796マイクログラムだった。
視界が極端に落ち込んだ光景に接して、「北京市がなくなっちまった」と書き込んだインターネットユーザーもいた。
北京市教育委員会は29日午前10時の時点で、全市の幼稚園、小学校で屋外活動の停止を、中学校と高校には屋外での体育の授業を取りやめるよう求めた。
北京市だけでなく、天津市、河北省、山東省、山西省、河南省など広い地域で深刻な大気汚染が発生している。
北京市では2日夜明け前に、冷たい空気が入り込むことで大気の質が好転すると見られている。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年12月1日(火) 15時40分
http://www.recordchina.co.jp/a124255.html
PM2.5の値が一時1000近くに!
深刻な大気汚染に見舞われた北京、
ネットには「北京の街がなくなった」との書き込みも―中国メディア
2015年12月1日、中国新聞網によると、先月下旬から深刻な大気汚染が続く中国北京で30日夜、多くの観測地点でPM2.5の値が1立方メートル当たり500マイクログラムを突破した。
中には一時1000マイクログラム近くにまで達した場所もあった。
1日朝6時の段階でも同市は灰色のもやに覆われたままで、「北京の街がなくなった」など視界の悪さを示すコメントがネットに書き込まれている。
同市では先月27日から重度の大気汚染が発生し、29日午前10時には今年初の「オレンジ警報」が発令。
教育当局は市内の幼稚園、小学校に屋外での活動中止を要求し、中学校に対しても屋外での体育の授業を控えるよう求めた。
北京市環境保護局は「今年のエルニーニョ現象は統計を取り始めてから最強」と紹介し、世界レベルで極端な天候が観測されていると説明。
11月に華北地域がたびたび降雪に見舞われたことが不利な気象条件をもたらしたと指摘しており、暖房器具が使用されるシーズンに突入したことも大気汚染の原因としている。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年12月2日(水) 11時5分
http://www.recordchina.co.jp/a124286.html
中国で深刻な大気汚染、
国土の大半がスモッグに覆われる
=対策しようのない市民はただ耐える日々―米メディア
2015年12月2日、ボイス・オブ・アメリカによると、仏パリで国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が開催されている最中、中国で極めて大規模なスモッグが発生した。
首都の北京では1日夜、PM2.5濃度が一夜にして7倍に上昇し、工場は一時閉鎖、航空機は欠航、学校は屋外での運動を取りやめた。
中国北部を中心に、市民は連日の深刻なスモッグに耐える日々が続いている。
11月下旬にスモッグが発生し始め、北京市や天津市、河北省、山東省、河南省、山西省などで大気状況が急激に悪化、30日には北京市気象台が「大気汚染オレンジ警報」を発令した。
AP通信によると、北京では1日、大気汚染レベルが安全基準の35倍にも上った。
「中国は国土の大半がスモッグに覆われた」
と伝えるメディアもあるほどだ。
深刻なスモッグに、市民はなすすべもない。
ある会社経営者は
「生活に支障が出ている。
視界が悪く、渋滞もひどくなった。
危険なので車には乗らないことにした。
のどの調子が悪くなり、外出するときはマスクが欠かせない」
と話した。
北京市などの教育部門は、児童に屋外での運動をできるだけさせないようにし、登下校時にはマスクを着用させるよう各学校に通達を出したが、すでに具合を悪くする子どもも出ている。
なお、夫人を伴ってCOP21に出席した習近平(シー・ジンピン)国家主席はパリで、中国は気候変動への対策事業に積極的に加わるとし、すでに省エネや新エネルギー、再生可能エネルギーへの取り組みで先進国となっていると強調している。
』
『
BBC News 12月2日(水)15時41分配信
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45431
中国で最も公害のひどい都市
低炭素拠点を目指したが
中国河北省保定市は、政府に最も大気汚染のひどい町と認定されてしまった。
そもそもは低炭素対策地区に指定され、太陽光
パネルなどのクリーンエネルギー製品製造拠点として特別な地位を与えられてきたにも関わらず。
低炭素対策地区など見せかけの計画に過ぎないと批判する市民の声などを、シャーロット・グレニー記者が紹介する。
』
『
TBS系(JNN) 12月2日(水)18時57分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20151202-00000059-jnn-int
中国が積極的な温暖化対策、PM2.5への対応が急務
温室効果ガスを世界で最も多く排出している中国が積極的な削減策に乗り出しています。
そこには、現在開会中のCOP21に向けたアピールだけでなく、国内向けの意味合いも強くあるようです。
轟音とともに崩れ落ちる煙突。解体されているのは、老朽化した火力発電所です。
中国では、エネルギー効率の悪い施設が次々と解体され、大々的に報じられています。
二酸化炭素の排出量が急増している中国。
その割合は、世界全体の22%以上に上ります。
そして、この問題と密接に関係しているのが、深刻な状況が続く大気汚染です。
北京では今週、PM2.5の濃度が一時、日本の環境基準の25倍以上の900マイクログラムを超え、市民生活に大きな影響がでました。
「(空気が)ひどすぎます」(北京市民)
高まる市民の不満を解消するための対策は、温室効果ガスの削減にもつながります。
「中国は再生可能エネルギー、 クリーンエネルギー利用、世界トップクラスです」(中国 習近平 国家主席、COP21 フランス・先月30日)
今週、COP21に出席した習近平国家主席は温室効果ガス削減に対する中国の積極的な姿勢を強調しました。
中国は2030年までにGDP=国内総生産当たりの二酸化炭素排出量を、2005年と比べ60%から65%減らすという新たな目標を掲げています。
中国南部の町、深センでは、この目標に向けた動きが始まっています。
2013年に中国で初めて開設された二酸化炭素の排出権取引所です。
企業ごとに排出枠を設定し、余った分を売買できる仕組みで、二酸化炭素を減らせば会社の利益につながるため、大企業を中心に636社が参加。売買される金額や排出権量も右肩上がりに増えています。
「(排出権取引は)温室効果ガスの排出を全体で減らし、空気改善につながります」(深セン排出権取引所 副総裁)
温暖化対策を積極化させる世界最大の排出国。
こうした対策が単なるアピールにとどまらず効果を生み出すのか、厳しい視線が注がれています。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年12月2日(水) 22時0分
http://www.recordchina.co.jp/a124360.html
北京の学校、エア体育館で大気汚染に対処―中国
●1日、北京は重度の大気汚染に見舞われた。北京市のある学校のグラウンドに、空気で膨らませたドーム型の「エア体育館」が設置された。
2015年12月1日、北京は重度の大気汚染に見舞われた。
ある学校のグラウンドに、空気で膨らませたドーム型の「エア体育館」が設置された。
中国新聞社が伝えた。
この体育館のPM2.5ろ過システムは、ろ過した空気をダクトによって館内に取り込む。
また、中の気圧は外の気圧を上回るため、PM2.5を外に遮断することができる。
(提供/人民網日本語版・翻訳/YF・編集/武藤)
』
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レコードチャイナ 配信日時:2015年12月3日(木) 11時15分
http://www.recordchina.co.jp/a124328.html
深刻な大気汚染で街が消えた北京
=中国ネットは悲痛に叫び、
「健康上危険すぎる」と驚く日本ネット
2015年12月2日、大気汚染が深刻な中国北京で微小粒子状物質・PM2.5が最悪レベルまで悪化、事実上「北京の街が消えた」。
日本のネット上では、
「実際に近づいてみると、ホントに無かったとか」
などの“冗談”がまことしやかにうわさされている。
抗日勝利70周年記念軍事パレードが行われた9月3日に出現した北京の青い空。
それはどうやら国家の威信をかけて周囲の工場の操業を止め、交通制限したり、涙ぐましい努力の結果だったが、暖房器具を使う冬を迎えて状況が一転した。
11月30日の北京ではPM2.5を含む汚染指数が最悪レベルの「危険」(301~500)を上回る560、12月1日には600前後と2日続きで指標を超えた。
市郊外の石景山地区では661まで悪化した。
北京市内は灰色のスモッグに覆われたままで、中心部の天安門ももやにかすみ、目やのどに異常を訴える市民が続出した。
市環境保護局は同月29日、4段階ある警報のうち上から2番目の「オレンジ警報」を発令。
小学校などに屋外活動の中止を指示した。
これについて中国のネット上では
「同じスモッグを習近平国家主席と一緒に吸えたら幸せなのに」
「再び軍事パレードを!」
「美しい1日はスモッグから始まる」
など皮肉や悲痛な声があふれた。
一方、日本のネットユーザーは
「こんな所に人が住んでいること自体が信じられない」
「冗談じゃなく、もはや行ってはいけないところだな。
健康上、危険すぎる」
「中国人の生命力ってスゲェ~な」
と改めて驚く一方、
「季節風に乗ってくるから日本にも影響が出る」
「迷惑!」
などのコメントが寄せられた。
』
『
2015/12/08
』
レコードチャイナ 配信日時:2015年12月8日(火) 9時30分
http://www.recordchina.co.jp/a124656.html
中国で広範囲な大気汚染、
高速道路53本・国道30本が正常に使えず
=北京は最高レベルの警報発令―中国メディア
2015年12月7日、中国の北部で大気汚染が広がり、中央気象台は大気汚染の警報を上から2番目の「オレンジ警報」に引き上げた。
さらに同日、北京市は最高レベルの「赤色警報」を発令した。
中国新聞網が伝えた。
中央気象台の予報によると、7日夜~8日午前にかけ、北京市や河北省、江蘇省、安徽省、上海市、浙江省、湖北省、湖南省、重慶市など多くの都市が大気汚染に見舞われている。
こうした広範囲な大気汚染により交通も乱れ、7日に当局が公表した統計では、53本の高速道路や30本の国道が正常に使用できない状態であることが明らかになった。
雨が降れば状況が改善されるが、10日ごろまでは現状の大気汚染が続くと当局は予報している。
』
『
日本テレビ系(NNN) 12月8日(火)18時56分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20151208-00000072-nnn-int
北京の大気汚染 現地の日本人社会にも影響
深刻な大気汚染が続いている中国・北京市で初めて「赤色警報」が発令された。
大気汚染警報としては最も重く、さまざまな影響が出始めている。
北京の大気汚染がこれまでにない段階に入った。
大気汚染警報としては最も重い「赤色警報」が発令されたのだ。
「赤色警報」による緊急措置は現地時間8日午前7時から10日正午まで。
ナンバーの末尾の番号が偶数か奇数かにより市内を走る車を制限するほか、建設現場では屋外の作業が中止される。
さらに、北京の日本人社会にも影響が出ている。
取材班が訪ねた家庭では、小学4年生の長男が通う北京の日本人学校が10日まで臨時休校となった。
また、この家庭では、汚染された大気の侵入を食い止めるため、粘着テープで窓の隙間をふさぐなどの対策をしていた。
さらに、空気清浄機も欠かせないという。
母親「本当は買い物に行きたいんですが、子どもと一緒なので、外出は控えて、うちにあるものでしばらくは過ごしたいと思います」
北京市によると、10日午後には寒気の影響を受け、状況が改善する見通しだという。
』
『
BBC News 12月10日(木)15時51分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151210-10000557-bbcv-int
北京の大気汚染「赤色警報」 市民の声
中国・北京で今週、大気汚染の深刻度が最悪の「赤色警報」が初めて発令された。
建設が止まった現場では労働者が収入減を心配する一方、学校の休校で学童たちは自宅で自習を余儀なくされている。
BBCのキャリー・グレイシー中国編集長が市井の声を集めた。
』
『
読売新聞 2015年12月10日
http://toyokeizai.net/articles/-/96101
中国・習政権は深刻な大気汚染に焦っている
改善見られず手詰まり感
深刻な大気汚染に見舞われている北京では9日も、最も厳しい「赤色警報」発令に伴う車両規制などの緊急措置が続いた。
しかし、汚染状況の改善はほとんど見られず、対策の手詰まり感も漂う。
習近平(シージンピン)政権は、汚染の長期化に対する国民の不満が体制に向くことに警戒を強めている模様だ。
この日はナンバーの末尾が偶数である車両の通行が禁止され、通行量はほぼ半減。
しかし、北京中心部ではスモッグで視界が悪い状態が終日続き、発がん性が指摘される微小粒子状物質(PM2・5)の濃度も、1立方メートルあたり200~300マイクロ・グラム(日本の環境基準は35マイクロ・グラム)で推移した。
中国メディアによると、市内の病院には呼吸器系疾患の症状を訴える患者が押しかけ、外出を避けるためにネットショッピングや宅配サービスの利用が急増しているという。
日系企業の中でも、従業員の自宅待機や勤務時間短縮など対策をとる動きが出ている。
大気汚染が常態化する中、北京市は今回、初めての赤色警報発令に踏み切ったが、目に見える改善にはつながらずにいる。
9月の「抗日戦争勝利70年」記念行事に合わせて実施されたような、一定期間にわたる工場の操業停止や車両通行規制など強制措置がない限り、汚染解消は難しいことを露呈した。
会社員男性(28)は「緊急措置ではなく、根本的な解決策が必要ではないか」と不満をもらした。
ただ、中国の専門家は中国紙・環球時報(英語版)に対し、強制措置は「経済的な代償が大きすぎる」とし、「常態化は非現実的」との見解を示している。
深刻な汚染は北京に限らない。
中国環境保護省の観測によると8日、中国が独自に算出している「大気汚染指数」で、50都市以上が重度汚染の基準となる「200」を超え、東北地方や内モンゴル自治区、陝西省など広範囲にわたった。11月末から12月1日にかけて、スモッグなどが日本の国土の約1・4倍の約53万平方キロ・メートルを覆ったという。
環境保護省は8日、規制の実施状況を調査するため、計12の監視団を北京や河北省などに派遣。
対策に全力を挙げる姿勢を国民にアピールしようとしている。北京の国際金融筋は「習政権は、大気汚染に対する国民の不満解消と経済成長を並行して進めるという難問に直面している」との見方を示す。
』
『
ニューズウィーク日本版 2015/12/10 19:07 高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/12/post-4231.php
計測不能の「赤色」大気汚染、本当に政府が悪いのか
ドラゴンボール由来の「爆表」で象徴される汚染だが、
ドローンで監視したり計測値を発表したりと、政府は対策に努めてきた
●誰の責任なのか 11月末から大気汚染が悪化した最大の原因は、政府の無策ではなくエルニーニョ現象だと専門家は言うが(11月30日、安徽省) Stringer-REUTERS
先月末から中国北部を深刻な大気汚染が覆っている。
日本の環境基準値は24時間平均で大気1立方メートルあたり35マイクログラムと定めているが、中国では一部で1000マイクログラムを越える驚異的な値も観測された。
北京市は7日、大気汚染赤色警報を初めて発令した。
乗用車の利用が制限され、学校や幼稚園の休校・休園も相次いだ。
この大気汚染のすさまじさを象徴するのが「爆表」という中国語だ。
日本のマンガ『ドラゴンボール』に由来する言葉で、
相手の戦闘力を計測する「スカウター」という機器が
計測不能の値を示した時に爆発してしまう
というシーンから転じて、
計測不能レベルの大気汚染を示す用語として定着した。
今や中国の大手官制メディアすらも多用するほど定着している。
◆ネットユーザーが撮影した北京市の汚染状況
計測不能レベルの大気汚染とはなにか。
AQI(大気質指数)という指標が大気汚染を示す尺度として一般的に用いられている。
PM2.5、PM10、二酸化硫黄、二酸化窒素など複数の物質を計測して、そのうち最も濃度が高い物質を基準に指標を算出する。
最高値は500でこれを越えると「爆表」となるわけだ。
ちなみにこのAQIにもちょっとした 秘密 がある。
中国版AQIは米国版と異なり、かなり基準が緩いのだ。
例えば35マイクログラムのPM2.5が計測された場合、米国版AQIでは「標準」と判定されるが、中国では「優」との判定になる。
ちょっとしたごまかしが存在するわけだが、今のすさまじい大気汚染の前ではあまり意味がなく、AQIに基づいて作られた大気汚染マップでは、「爆表」や「厳重汚染」のマークでいっぱいになっている。
◆「原因は天候にある」を人民は聞きたくない
さて、なぜ今、これほど深刻な大気汚染が出現しているのだろうか。
中国の大気汚染状況が一直線に悪化しているわけではない。
むしろ今夏は汚染状況の改善が見られるとの報告もあった。
秋には野焼きによる煙害が多発するが、ドローンまで導入して厳しい監視を行うことで被害は例年以下にとどまった。
ところが、11月末になると状況は一転してしまった。
その理由だが最大の要因は天候である。
中国気象局の朱定真氏は雑誌『科技生活』の取材に答え、エルニーニョ現象により寒気団の南下が減少したため、風が弱まり汚染物質が滞留し、大気汚染が悪化したとコメントしている。
今は汚染物質が風で吹き飛ばされるのを待つしかないというわけだ。
興味深いのは朱氏の提言だ。
大気の滞留が予想される場合には、事前に交通や工場の操業を規制することで、深刻な大気汚染を避けることができると提言している。
この手の「大気汚染は天候のため説」は中国人にすこぶる評判が悪い。
天候を口実に政府は責任逃れしているという批判である。
確かに政府の責任は重いとはいえ、濃霧のような形で出現する大気汚染が天候に左右されていることは事実だ。
逆にいうならば、平常時の目に見えない状況で汚染をどれほどコントロールできるかが課題となる。
◆「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の中国企業
中国政府もまったくの無策というわけではない。
そもそも500マイクログラムを越えた、1000マイクログラムに達したとPM2.5の数値に一喜一憂できるのも、中国政府の改革によるものなのだ。
中国は従来PM2.5を計測していなかったが、2013年から計測し、その結果をリアルタイムで発表するようになった。
国民の圧力があったからとはいえ、大きな前進であることは事実だ。
数字が公表されたことで、各地の地方政府も目に見える形で改善を迫られることとなった。
石炭火力発電を減らし、天然ガスや風力、太陽光、そして原子力などのクリーンエネルギーに力を注いでいるのも対策の一環だ。
それでもなかなか結果が出ないのは、環境対策の難しさを示している。
中国企業は生き馬の目を抜く苛烈な競争を繰り広げているが、
勝ち抜くために少しでもコストを削減しようと環境対策の手を抜きがち。
中国政府はドローンを飛ばして排気を監視したり、リアルタイムに排出物の汚染物質濃度を観測できる機器を工場に設置したりと取り組みを続けているが、
企業側も「監視されている煙突以外に、違法排出用の煙突を作る」といった大胆な手段まで駆使して対抗している。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」とはよく言ったもので、誰もがルールを破っている状況では取り締まりようがない。
環境基準を破ってコスト削減しなければ商売に勝てないという状況が変わらないかぎり、
いたちごっこは続きそうだ。
また、まったく対策がなされていない分野もある。
環境当局の調査によると、PM2.5の15~20%はちりやほこりなど地表から舞い上がった物質だ。
その人為的な発生源としては工事現場があげられる。
日本では解体作業時にほこりが飛ばないようにネットをかけるなどの手法が定着しているが、中国ではこうした対策は一切なされていない。
万博前年の2009年に上海市を訪問したことがあるが、街のど真ん中で建設工事、解体工事が相次ぎ、ひどい空気になっていたことをよく覚えている。
ついつい工場や自動車、発電所などにばかり注目が集まるが、他の分野でもできることはまだまだ多そうだ。
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[執筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。
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ニューズウィーク日本版 2015/12/10 19:07 高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/12/post-4231.php
計測不能の「赤色」大気汚染、本当に政府が悪いのか
ドラゴンボール由来の「爆表」で象徴される汚染だが、
ドローンで監視したり計測値を発表したりと、政府は対策に努めてきた
●誰の責任なのか 11月末から大気汚染が悪化した最大の原因は、政府の無策ではなくエルニーニョ現象だと専門家は言うが(11月30日、安徽省) Stringer-REUTERS
先月末から中国北部を深刻な大気汚染が覆っている。
日本の環境基準値は24時間平均で大気1立方メートルあたり35マイクログラムと定めているが、中国では一部で1000マイクログラムを越える驚異的な値も観測された。
北京市は7日、大気汚染赤色警報を初めて発令した。
乗用車の利用が制限され、学校や幼稚園の休校・休園も相次いだ。
この大気汚染のすさまじさを象徴するのが「爆表」という中国語だ。
日本のマンガ『ドラゴンボール』に由来する言葉で、
相手の戦闘力を計測する「スカウター」という機器が
計測不能の値を示した時に爆発してしまう
というシーンから転じて、
計測不能レベルの大気汚染を示す用語として定着した。
今や中国の大手官制メディアすらも多用するほど定着している。
◆ネットユーザーが撮影した北京市の汚染状況
計測不能レベルの大気汚染とはなにか。
AQI(大気質指数)という指標が大気汚染を示す尺度として一般的に用いられている。
PM2.5、PM10、二酸化硫黄、二酸化窒素など複数の物質を計測して、そのうち最も濃度が高い物質を基準に指標を算出する。
最高値は500でこれを越えると「爆表」となるわけだ。
ちなみにこのAQIにもちょっとした 秘密 がある。
中国版AQIは米国版と異なり、かなり基準が緩いのだ。
例えば35マイクログラムのPM2.5が計測された場合、米国版AQIでは「標準」と判定されるが、中国では「優」との判定になる。
ちょっとしたごまかしが存在するわけだが、今のすさまじい大気汚染の前ではあまり意味がなく、AQIに基づいて作られた大気汚染マップでは、「爆表」や「厳重汚染」のマークでいっぱいになっている。
◆「原因は天候にある」を人民は聞きたくない
さて、なぜ今、これほど深刻な大気汚染が出現しているのだろうか。
中国の大気汚染状況が一直線に悪化しているわけではない。
むしろ今夏は汚染状況の改善が見られるとの報告もあった。
秋には野焼きによる煙害が多発するが、ドローンまで導入して厳しい監視を行うことで被害は例年以下にとどまった。
ところが、11月末になると状況は一転してしまった。
その理由だが最大の要因は天候である。
中国気象局の朱定真氏は雑誌『科技生活』の取材に答え、エルニーニョ現象により寒気団の南下が減少したため、風が弱まり汚染物質が滞留し、大気汚染が悪化したとコメントしている。
今は汚染物質が風で吹き飛ばされるのを待つしかないというわけだ。
興味深いのは朱氏の提言だ。
大気の滞留が予想される場合には、事前に交通や工場の操業を規制することで、深刻な大気汚染を避けることができると提言している。
この手の「大気汚染は天候のため説」は中国人にすこぶる評判が悪い。
天候を口実に政府は責任逃れしているという批判である。
確かに政府の責任は重いとはいえ、濃霧のような形で出現する大気汚染が天候に左右されていることは事実だ。
逆にいうならば、平常時の目に見えない状況で汚染をどれほどコントロールできるかが課題となる。
◆「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の中国企業
中国政府もまったくの無策というわけではない。
そもそも500マイクログラムを越えた、1000マイクログラムに達したとPM2.5の数値に一喜一憂できるのも、中国政府の改革によるものなのだ。
中国は従来PM2.5を計測していなかったが、2013年から計測し、その結果をリアルタイムで発表するようになった。
国民の圧力があったからとはいえ、大きな前進であることは事実だ。
数字が公表されたことで、各地の地方政府も目に見える形で改善を迫られることとなった。
石炭火力発電を減らし、天然ガスや風力、太陽光、そして原子力などのクリーンエネルギーに力を注いでいるのも対策の一環だ。
それでもなかなか結果が出ないのは、環境対策の難しさを示している。
中国企業は生き馬の目を抜く苛烈な競争を繰り広げているが、
勝ち抜くために少しでもコストを削減しようと環境対策の手を抜きがち。
中国政府はドローンを飛ばして排気を監視したり、リアルタイムに排出物の汚染物質濃度を観測できる機器を工場に設置したりと取り組みを続けているが、
企業側も「監視されている煙突以外に、違法排出用の煙突を作る」といった大胆な手段まで駆使して対抗している。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」とはよく言ったもので、誰もがルールを破っている状況では取り締まりようがない。
環境基準を破ってコスト削減しなければ商売に勝てないという状況が変わらないかぎり、
いたちごっこは続きそうだ。
また、まったく対策がなされていない分野もある。
環境当局の調査によると、PM2.5の15~20%はちりやほこりなど地表から舞い上がった物質だ。
その人為的な発生源としては工事現場があげられる。
日本では解体作業時にほこりが飛ばないようにネットをかけるなどの手法が定着しているが、中国ではこうした対策は一切なされていない。
万博前年の2009年に上海市を訪問したことがあるが、街のど真ん中で建設工事、解体工事が相次ぎ、ひどい空気になっていたことをよく覚えている。
ついつい工場や自動車、発電所などにばかり注目が集まるが、他の分野でもできることはまだまだ多そうだ。
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「中国は弱かった!」香港サッカーブームの政治的背景
[執筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。
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