インドネシアは中国が、インドは日本が勝利した高速鉄道輸出合戦。
次の戦場はマレーシアか。
おそらく今度もインドネシア方式で中国がもっていく可能性が大きい。
『
サーチナニュース 2015-12-17 07:33
http://news.searchina.net/id/1597324?page=1
マレーシア高速鉄道で中国攻勢
現地政府関係者が評価「貢献し努力している。強烈な意欲だ」
マレーシア政府は高速鉄道建設について発注先候補企業に関連情報の提供を依頼する(RFI)方式で検討を進めてきた。
情報提供に応じた企業は200社以上で、マレーシア政府は14社に絞り込んで、改めて情報提供を求めた。
14社の中には中国鉄路総公司も含まれるという。
中国は2012年にマレーシア政府にクアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道の建設計画書を提出したが、受け入れられなかった経緯がある。
14日のフォーラムに参加したマレーシア政府関係者は
「中国がこのプロジェクトに貢献し、努力していることを確認した。
例えば今回のフォーラムだ。
彼らはこの分野(高速鉄道建設)について最大限の熱望を持っている」
と説明した。
マレーシア政府などによる高速鉄道建設の準備作業は大詰めで、次の段階の重要な作業は競争入札という。
現在、クアラルンプールとシンガポールを結ぶのはマレー鉄道ウェスト・コースト線だ。
列車は約400キロメートルを6時間半程度で走破する
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年12月18日(金) 8時50分
http://www.recordchina.co.jp/a125301.html
マレー半島の高速鉄道建設プロジェクト、
「最終的には日本と中国の受注獲得争いになる」―マレーシア華字紙
2015年12月17日、マレーシアとシンガポールを結ぶ高速鉄道の建設計画をめぐり、環球時報は
「地元紙が、最終的には日中による受注競争が起きると予測している」
と報じた。
間もなく入札が行われる同プロジェクトは両国首脳が昨年発表したもので、費用は120億ドル(約1兆4700億円)が予測されている。
2020年前後の完成を目指し、約330キロの線路を敷設する計画。
これにより、現在6〜7時間かかる移動時間が90分に短縮される見通しで、マレーシア政府関係者は14日、中国鉄路総公司を含む複数の海外企業を面談に参加するよう要請していることを明らかにした。
シンガポール華字紙・聯合早報は16日付で、
「マレーシアに駐在する中国の外交官が『最良の財務プランを提示する』ことを明らかにした」
と紹介。
中国はこのプロジェクトへの参加に強烈な意欲を示している。
また、マレーシア華字紙・南洋商報は同日、「争奪戦が激しさを増している」と指摘し、中国側の資金面での強さに言及。
一方、今年8月に日本の国土交通大臣がマレーシアを訪れ、日本の技術力を売り込んだことに触れ、同国のナジブ首相が新幹線の安全性を高く評価する発言をしたことも取り上げた。
同紙は「最終的には日本と中国による受注獲得争いが繰り広げられる」とし、双方が提示する条件以外に政治的な思惑も選択に影響を及ぼしてくると指摘した。
』
『
サーチナニュース 2015-12-20 12:34
http://biz.searchina.net/id/1597598?page=1
新幹線は確かにスゴイ
・・・だが、日本独自のイノベーションで誕生したわけではない=中国
新幹線は世界で初めて開業した高速鉄道であり、日本が世界に誇る技術の1つだ。
中国メディアの騰訊網はこのほど、新幹線は人類社会の発展のために不滅の功績を残したと評価する一方で、
「新幹線は日本オリジナルのイノベーションから誕生した製品ではない」
と主張する記事を掲載した。
現代の製品にはさまざまな技術が複数使われており、そうした技術が組み合わされて生み出される。
当然、新幹線ほど複雑かつ先進的な製品ともなれば膨大かつ多岐にわたる技術が採用されているはずだ。
記事は、製品のイノベーションには3種類あると主張。
1].1つ1つの技術を自ら創出して新しい製品を生み出す「オリジナル・イノベーション」、
2].技術を他所から導入し、それを組み合わせて新しい製品を生み出す「インテグレイティッド・イノベーション」、
3].製品技術を丸ごと導入し、その後に新しい製品を生み出す「スタディ・イノベーション」
の3種類だ。
新幹線は「インテグレイティッド」と「スタディ」のカテゴリーに入り、決して「オリジナル」ではないと記事は主張し、1964年に新幹線が開業した当時、JR東日本の関係者が
「新幹線に使われている1つ1つの技術は欧州のオリジナルであり、日本はそれを改良して用いているに過ぎない」
と述べていると紹介した。
一方で記事が、新幹線は決して「パクリ製品」ではないと「断言」していることは興味深い。
新幹線は人類社会の発展のために高速鉄道時代を「創始」したためで、これは新幹線の「不滅の功績」であると称えている。
さらに新幹線は敗戦国としての立場ゆえにプライドを失っていた日本に「尊厳」をもたらした点でも大きな功績を残したとしている。
パクリとスタディ・イノベーションとは似て非なるものだ。
パクリ製品が人類社会に貢献することは決してない。
記事が紹介している3種類のイノベーション、3つのうちどのイノベーションにもっとも価値があるのだろうか。
この記事の観点でいうならば「同等」だ。
すべてのイノベーションは何らかの形で先人たちの蓄積のうえに成り立っているからだ。
仮に記事の主張どおり、新幹線に日本オリジナルの技術がないとしても、世界の鉄道史に不滅の貢献を果たしたことは間違いない。
』
『
WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2015年12月21日(Mon) 中西享
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5736
新幹線の敵は地下鉄で討つ
インドネシアインフラ戦争
インドネシアの新幹線工事の建設は中国に敗れたが、首都ジャカルタの地下鉄(MRT)の建設で日本のゼネコンが存在感を示している。
世界で最悪とも言われるジャカルタの交通渋滞解消の切り札として、日本の資金、技術協力でスタートした地下鉄工事が2019年の開業に向けて本格化している。
しかし、今後はインフラ案件を受注するためには韓国、中国勢などとの厳しい価格競争が予想されている。
■日本車が断トツ、渋滞の激しいジャカルタ市内
ジャカルタの交通渋滞は深刻だ。通勤時間帯ともなると、車線は自動車とバイクで大混雑となり、30分で行けるところが2時間以上も掛かったりする。
鉄道などの公共交通網が十分に発達していないため、移動手段は車とバイクが中心だ。
今年の自動車販売台数は約110万台でASEAN(東南アジア諸国連合)の中ではタイに次ぐ市場に成長している。
内訳を見ると90%以上が日本ブランド。
トップはトヨタで30%以上のシェア、続いてはダイハツ、スズキの順で日本以外のブランドはほとんどない。
しかし、ハイブリッド車などいわゆるエコカーはまったく見かけない。
環境対策は二の次のようだ。
そのせいもあって、車の排気ガスなどによる空気の汚染度合いも観測していないからデータがないようだが、かなり悪い印象だった。
世界4位の人口2億4000万人のインドネシアは、若者の人口が多く中産階級が増えることにより自動車の所有台数がさらに増えるのは確実で、交通渋滞は一層悪化する可能性が大きい。
その対策として大きな期待を集めているのが地下鉄だ。
■大統領が視察、ジョコ大統領も地下鉄建設の視察に訪れた
工事が行われている路線は、ジャカルタ中心部一番の目抜き通り「スディルマン通り」に沿った全長15・7キロ。
総事業費が約1400億円で、日本政府が低利の円借款を供与、清水建設や大林組などが工事を担当、インドネシアでは初めてとなるシールド工法などを使ってトンネルや駅舎工事を進めている。
12月上旬現在の清水建設ジョイントベンチャー工区の進捗率は50%。
幅が70メートルある片側6車線の「スディルマン通り」の交通の邪魔をせずに、その真下の工区を掘削するため、車線数を減らさずに車線を移設して道路の中央部に作業帯を確保。
土砂を運ぶダンプなどの大型車両の現場への搬出入を午後10時から午前5時の時間帯に限定するなど、交通への影響を最小限に抑えている。
清水建設の大迫一也建設所長は
「これほど交通量の多い道路の車線を変更して地下鉄工事ができるかどうかが一番の心配だったが、交通量を妨げることなく工事が順調に進行できてほっとしている」
と話した。
■日本から持ち込まれたシールドマシン
日本から持ち込まれた2台のシールドマシンは1日に10~12メートルのスピードで24時間体制で掘削している。
円筒状の地下鉄坑道を横に掘り進めることができるシールドマシンが動き始めた9月21日にはジョコ大統領が視察、その後ももう一度視察に訪れており、インドネシア初めての地下鉄工事への関心の高さを感じさせる。
次の大統領選挙は2019年に予定されている。
選挙の前の18年に地下鉄が開通すれば手柄話になるという目算があるのかもしれない。
そのためにも工期の遅れは許されない。
しかし中心部を南北に結ぶMRTが一本開通したからと言ってジャカルタの交通渋滞がすぐに解消するとも思えない。
電車やバスなど既存の交通インフラといかに利用者にとって利便性の高い接続性を確保できるかが、渋滞解消には不可欠だ。
これはジャカルタ当局が考えなければならないことだが、混雑緩和の交通インフラ整備について日本は経験とノウハウがあるから、単に技術と資金面の援助だけにとどまらず、ソフト面からも支援すべきではないだろうか。
■人件費は上昇
工事には千人を超す作業員が投入され、そのうち大半がイスラム教徒。
12時前に作業所に突然、大きな音でイスラム教のお祈りのコーランのメロディーが流れた。
毎日5回、10分間ほどのお祈りタイムは欠かせないそうだ。
これによる作業量の低下は心配したほどではないという。
作業員の数はジャワ島ではいくらでも集められるが、難しいのがその作業員を束ねて働かせられる熟練労働者をいかに確保することだという。
現在、ビルの建設ラッシュが続くジャカルタでは技術労働者は奪い合いの状況だそうだ。
さらに気掛かりなのが人件費の上昇だ。
特に作業員の最低賃金は毎年20%近く上昇しており、数年前と比べると倍近い水準になっているという。
人件費が予想以上に上昇すると、見積もった段階と比べて採算が悪化する恐れがある。
また工事に必要な資材の一部は輸入に頼る部分があるため、ルピヤ安の影響でコストがかさむ部分もあるという。
■さらされる価格競争
ジャカルタでは交通渋滞を解消するためにモノレールを建設する構想があったが、
資金不足から計画は中断した。
数年前にこれを中国が引き継いで工事を開始したが、結局これもとん挫、
現在はモノレールが走る予定だった橋脚部分の鉄筋がむき出しのままで放置されている。
しかし、日本政府が大きな期待を寄せていた大型プロジェクトの新幹線は中国に取られてしまった。
日本のゼネコン関係者からは、
予定されている新幹線ルートの途中には地滑り地帯があるそうで
「あの部分に新幹線を通すのは相当の技術力が必要になる。
中国の技術でできるかどうか疑問だ」
という。
負け惜しみかもしれないが、ゼネコンとしては、いまは受注した工事案件を着実にこなして、中国がコケたら最終的には日本の出番が来るとみている。
果たしてその思惑通りになるかどうかは不透明だ。
現在、東南アジアではインドネシアのほかにシンガポール、ベトナムでも地下鉄工事が行われており、清水建設は現在、この3か所所で工事を請け負っている。
日本のゼネコンの中では最大のシェアになっており、海外での地下鉄工事では強みを見せている。
これまでの経験を生かした低コストでの見積もりにより受注を獲得し、今後はジャカルタの地下鉄の延伸工事でも受注をしたい方針だ。
今回、清水建設が受注した工事はODA案件で請け負うゼネコンは日本のゼネコンかゼネコンと地場の企業が組んだJVに限定されていた。
しかし、シンガポールなどではすべて政府の資金で建設が行われており、そうなると受注するためには厳しい価格競争を勝ち抜かなければならなくなる。
現にシンガポールの地下鉄工事での日系ゼネコンの獲得比率は2、3割程度にとどまるという。
最近は韓国に加えて中国のゼネコンも多く参加してきており、今後は日系の比率は下がる可能性が大きいという。
東南アジア以外ではエジプトでも地下鉄工事が計画されているが、ここでも事業費全体の6割は政府資金で行われており、受注するには価格競争となる。
つまり、発展途上国での日本政府は円借款を供与した案件では日本のゼネコンは工事を受注できても、そうではないシンガポールなど中心国以上の国の場合は勝ち目が小さくなる。
日本のゼネコンが地下鉄工事で安定的に受注を獲得するのは次第に厳しい状況に追い込まれることも予想され、その意味でも海外事業を中期的に採算がとれる事業にしていくためには、ほかのインフラ案件、非日系プロジェクトを含めた幅広い分野での受注活動が不可欠になってくる。
ビル案件で清水建設は完成すればインドネシアで最も高いビルとなる超高層ビルのアストラタワー(47階建て)を受注、ここにはインドネシア最大の自動車・2輪車の生産・販売を主体としたアストラ社の本社ビルなどが入る。
また、ジャカルタ最大のメディア企業MNCの本社やホテルが入居するメディアタワー(39階建て)などの高層ビルを受注、地元の大手オーナー企業からも信頼を得てきている。
高層ビル建設のライバルとなっているのは韓国のゼネコンで、現代建設、双竜建設などと競り合うことが増えているという。
アストラタワーの沖和之建設所長は
「独自の地下掘削技術などを駆使して工期の6カ月短縮を目指している。
工期の短縮は施主に対して大きなアピールになる」
と、ライバルゼネコンとの違いを強調する。
■海外比率20%
インドネシアでは清水建設は1975年から40年の歴史がある。
80年代までは実績を挙げることができずに鳴かず飛ばずの時期が続いたが、同年代の後半からやっとビル案件などで受注できるようになり、90年代以降はインドネシア経済の発展やそれに伴う日系自動車メーカーの現地進出などにより工場やビル案件を獲得してきた。
これまでは日系の建築、土木案件が多かったが、この数年は非日系が増えている。
またODA(政府開発援助)中心から技術を重視した民間が伸びており、長大橋梁やトンネル、LNGタンクなど技術力が発揮できる案件を積極的に受注していきたい方針だ。
同社国際支店の大石哲士ジャカルタ営業所長は「最近は毎年150億から200億円を受注、毎年150億円前後の完工高で推移している。
日系と非日系の工事比率のバランスが取れてきており、今後はシンガポールに次いでジャカルタを東南アジアの営業の核にしたい」と意気込んでいる。
同社は売上高の20%を海外事業で挙げる体制を構築する中期計画を発表しており、これに基づいて海外での受注を増やしてきている。
今回、ジャカルタの現場を訪れた黒澤成吉副社長は「いまの人員を増やさずに20%を目指すように指示している」と話し、人員コストを抑えながら売り上げを増やすという難題を課している。
日本のゼネコンは2020年の東京オリンピックまでは十分な受注を抱えており、海外までは十分に手が回らないのが現状だ。
その中にあって清水建設は海外受注に積極的に動いている。
これは20年以降を見据えた動きで、20年以降に国内が多少落ち込んだとしても、海外で補完できるよう布石を打とうとしている。
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WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2015年12月21日(Mon) 中西享
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5736
新幹線の敵は地下鉄で討つ
インドネシアインフラ戦争
インドネシアの新幹線工事の建設は中国に敗れたが、首都ジャカルタの地下鉄(MRT)の建設で日本のゼネコンが存在感を示している。
世界で最悪とも言われるジャカルタの交通渋滞解消の切り札として、日本の資金、技術協力でスタートした地下鉄工事が2019年の開業に向けて本格化している。
しかし、今後はインフラ案件を受注するためには韓国、中国勢などとの厳しい価格競争が予想されている。
■日本車が断トツ、渋滞の激しいジャカルタ市内
ジャカルタの交通渋滞は深刻だ。通勤時間帯ともなると、車線は自動車とバイクで大混雑となり、30分で行けるところが2時間以上も掛かったりする。
鉄道などの公共交通網が十分に発達していないため、移動手段は車とバイクが中心だ。
今年の自動車販売台数は約110万台でASEAN(東南アジア諸国連合)の中ではタイに次ぐ市場に成長している。
内訳を見ると90%以上が日本ブランド。
トップはトヨタで30%以上のシェア、続いてはダイハツ、スズキの順で日本以外のブランドはほとんどない。
しかし、ハイブリッド車などいわゆるエコカーはまったく見かけない。
環境対策は二の次のようだ。
そのせいもあって、車の排気ガスなどによる空気の汚染度合いも観測していないからデータがないようだが、かなり悪い印象だった。
世界4位の人口2億4000万人のインドネシアは、若者の人口が多く中産階級が増えることにより自動車の所有台数がさらに増えるのは確実で、交通渋滞は一層悪化する可能性が大きい。
その対策として大きな期待を集めているのが地下鉄だ。
■大統領が視察、ジョコ大統領も地下鉄建設の視察に訪れた
工事が行われている路線は、ジャカルタ中心部一番の目抜き通り「スディルマン通り」に沿った全長15・7キロ。
総事業費が約1400億円で、日本政府が低利の円借款を供与、清水建設や大林組などが工事を担当、インドネシアでは初めてとなるシールド工法などを使ってトンネルや駅舎工事を進めている。
12月上旬現在の清水建設ジョイントベンチャー工区の進捗率は50%。
幅が70メートルある片側6車線の「スディルマン通り」の交通の邪魔をせずに、その真下の工区を掘削するため、車線数を減らさずに車線を移設して道路の中央部に作業帯を確保。
土砂を運ぶダンプなどの大型車両の現場への搬出入を午後10時から午前5時の時間帯に限定するなど、交通への影響を最小限に抑えている。
清水建設の大迫一也建設所長は
「これほど交通量の多い道路の車線を変更して地下鉄工事ができるかどうかが一番の心配だったが、交通量を妨げることなく工事が順調に進行できてほっとしている」
と話した。
■日本から持ち込まれたシールドマシン
日本から持ち込まれた2台のシールドマシンは1日に10~12メートルのスピードで24時間体制で掘削している。
円筒状の地下鉄坑道を横に掘り進めることができるシールドマシンが動き始めた9月21日にはジョコ大統領が視察、その後ももう一度視察に訪れており、インドネシア初めての地下鉄工事への関心の高さを感じさせる。
次の大統領選挙は2019年に予定されている。
選挙の前の18年に地下鉄が開通すれば手柄話になるという目算があるのかもしれない。
そのためにも工期の遅れは許されない。
しかし中心部を南北に結ぶMRTが一本開通したからと言ってジャカルタの交通渋滞がすぐに解消するとも思えない。
電車やバスなど既存の交通インフラといかに利用者にとって利便性の高い接続性を確保できるかが、渋滞解消には不可欠だ。
これはジャカルタ当局が考えなければならないことだが、混雑緩和の交通インフラ整備について日本は経験とノウハウがあるから、単に技術と資金面の援助だけにとどまらず、ソフト面からも支援すべきではないだろうか。
■人件費は上昇
工事には千人を超す作業員が投入され、そのうち大半がイスラム教徒。
12時前に作業所に突然、大きな音でイスラム教のお祈りのコーランのメロディーが流れた。
毎日5回、10分間ほどのお祈りタイムは欠かせないそうだ。
これによる作業量の低下は心配したほどではないという。
作業員の数はジャワ島ではいくらでも集められるが、難しいのがその作業員を束ねて働かせられる熟練労働者をいかに確保することだという。
現在、ビルの建設ラッシュが続くジャカルタでは技術労働者は奪い合いの状況だそうだ。
さらに気掛かりなのが人件費の上昇だ。
特に作業員の最低賃金は毎年20%近く上昇しており、数年前と比べると倍近い水準になっているという。
人件費が予想以上に上昇すると、見積もった段階と比べて採算が悪化する恐れがある。
また工事に必要な資材の一部は輸入に頼る部分があるため、ルピヤ安の影響でコストがかさむ部分もあるという。
■さらされる価格競争
ジャカルタでは交通渋滞を解消するためにモノレールを建設する構想があったが、
資金不足から計画は中断した。
数年前にこれを中国が引き継いで工事を開始したが、結局これもとん挫、
現在はモノレールが走る予定だった橋脚部分の鉄筋がむき出しのままで放置されている。
しかし、日本政府が大きな期待を寄せていた大型プロジェクトの新幹線は中国に取られてしまった。
日本のゼネコン関係者からは、
予定されている新幹線ルートの途中には地滑り地帯があるそうで
「あの部分に新幹線を通すのは相当の技術力が必要になる。
中国の技術でできるかどうか疑問だ」
という。
負け惜しみかもしれないが、ゼネコンとしては、いまは受注した工事案件を着実にこなして、中国がコケたら最終的には日本の出番が来るとみている。
果たしてその思惑通りになるかどうかは不透明だ。
現在、東南アジアではインドネシアのほかにシンガポール、ベトナムでも地下鉄工事が行われており、清水建設は現在、この3か所所で工事を請け負っている。
日本のゼネコンの中では最大のシェアになっており、海外での地下鉄工事では強みを見せている。
これまでの経験を生かした低コストでの見積もりにより受注を獲得し、今後はジャカルタの地下鉄の延伸工事でも受注をしたい方針だ。
今回、清水建設が受注した工事はODA案件で請け負うゼネコンは日本のゼネコンかゼネコンと地場の企業が組んだJVに限定されていた。
しかし、シンガポールなどではすべて政府の資金で建設が行われており、そうなると受注するためには厳しい価格競争を勝ち抜かなければならなくなる。
現にシンガポールの地下鉄工事での日系ゼネコンの獲得比率は2、3割程度にとどまるという。
最近は韓国に加えて中国のゼネコンも多く参加してきており、今後は日系の比率は下がる可能性が大きいという。
東南アジア以外ではエジプトでも地下鉄工事が計画されているが、ここでも事業費全体の6割は政府資金で行われており、受注するには価格競争となる。
つまり、発展途上国での日本政府は円借款を供与した案件では日本のゼネコンは工事を受注できても、そうではないシンガポールなど中心国以上の国の場合は勝ち目が小さくなる。
日本のゼネコンが地下鉄工事で安定的に受注を獲得するのは次第に厳しい状況に追い込まれることも予想され、その意味でも海外事業を中期的に採算がとれる事業にしていくためには、ほかのインフラ案件、非日系プロジェクトを含めた幅広い分野での受注活動が不可欠になってくる。
ビル案件で清水建設は完成すればインドネシアで最も高いビルとなる超高層ビルのアストラタワー(47階建て)を受注、ここにはインドネシア最大の自動車・2輪車の生産・販売を主体としたアストラ社の本社ビルなどが入る。
また、ジャカルタ最大のメディア企業MNCの本社やホテルが入居するメディアタワー(39階建て)などの高層ビルを受注、地元の大手オーナー企業からも信頼を得てきている。
高層ビル建設のライバルとなっているのは韓国のゼネコンで、現代建設、双竜建設などと競り合うことが増えているという。
アストラタワーの沖和之建設所長は
「独自の地下掘削技術などを駆使して工期の6カ月短縮を目指している。
工期の短縮は施主に対して大きなアピールになる」
と、ライバルゼネコンとの違いを強調する。
■海外比率20%
インドネシアでは清水建設は1975年から40年の歴史がある。
80年代までは実績を挙げることができずに鳴かず飛ばずの時期が続いたが、同年代の後半からやっとビル案件などで受注できるようになり、90年代以降はインドネシア経済の発展やそれに伴う日系自動車メーカーの現地進出などにより工場やビル案件を獲得してきた。
これまでは日系の建築、土木案件が多かったが、この数年は非日系が増えている。
またODA(政府開発援助)中心から技術を重視した民間が伸びており、長大橋梁やトンネル、LNGタンクなど技術力が発揮できる案件を積極的に受注していきたい方針だ。
同社国際支店の大石哲士ジャカルタ営業所長は「最近は毎年150億から200億円を受注、毎年150億円前後の完工高で推移している。
日系と非日系の工事比率のバランスが取れてきており、今後はシンガポールに次いでジャカルタを東南アジアの営業の核にしたい」と意気込んでいる。
同社は売上高の20%を海外事業で挙げる体制を構築する中期計画を発表しており、これに基づいて海外での受注を増やしてきている。
今回、ジャカルタの現場を訪れた黒澤成吉副社長は「いまの人員を増やさずに20%を目指すように指示している」と話し、人員コストを抑えながら売り上げを増やすという難題を課している。
日本のゼネコンは2020年の東京オリンピックまでは十分な受注を抱えており、海外までは十分に手が回らないのが現状だ。
その中にあって清水建設は海外受注に積極的に動いている。
これは20年以降を見据えた動きで、20年以降に国内が多少落ち込んだとしても、海外で補完できるよう布石を打とうとしている。
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2015.12.22(火) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45607
激化する日中の鉄道建設受注バトル
実は本当に欲しがっている買い手は少ない?
(2015年12月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
今年10月、インドネシアに高速鉄道を輸出する50億ドルの商談で日本が中国に敗れたとき、日本の技術力の偉大なる象徴であり、国民に愛される「新幹線」が却下されたことを国中が嘆いた。
しかし、今月は日中の立場が逆転し、インドのムンバイとアーメダバードを結ぶ総額150億ドルの高速鉄道建設プロジェクトを日本が獲得。
中国の当局者は、これは一般競争入札ではなかったから敗れたわけではないと言い張った。
日本と中国はアジアにおける産業面の覇権と政治的影響力を巡って競い合っており、高速鉄道の売り込み合戦はその代理指標と化した。
だが、当局者に言わせれば、この状況は一般の認識とは異なる現実を反映している。
高速鉄道を本当に欲しがっている国はほとんどない、
という事実だ。
「新幹線は日本のアイデンティティーの一部だ。売り込めるようがんばらねばならない」。実に気前の良い資金援助パッケージを日中両国が提示していることについて、日本のある政府高官はこう語る。
日本はインドの新幹線プロジェクトを、120億ドルを年利0.1%で50年間融資するという条件で獲得した。
当初の15年間は返済を猶予するうえ、技術支援と研修の気前の良いパッケージも合わせて提供する。
また中国は、インドネシア政府に支払い保証を求めない融資を行うことでインドネシアのプロジェクトを獲得している。
■高速鉄道は経済発展の重要なシンボルだが・・・
経済発展の非常に重要なシンボルとして高速鉄道を欲しがっている国は多いが、高速鉄道が実際に適している国はそれほど多くない。
高速鉄道は、互いに近すぎるわけでも遠すぎるわけでもない複数の大都市を結びつけるものでなければならないうえに、そうした大都市には相応の所得水準も求められる。
台湾は新幹線を購入したが、この路線は大赤字を計上している。
北京交通大学の趙堅教授は
「高速鉄道を維持できる外国市場はあまり多くない」
と指摘する。
例えば、タイではバンコクと結ぶに値する第2の都市はどこなのかが問題になる。
また、ベトナムではハノイとホーチミンがともに大都市の基準を満たすものの、互いに1160キロも離れているため航空機に太刀打ちできない。
中国と日本はともに、資金の融資以外の分野で競争しようと最大限の努力をしている。
「高速鉄道の建設なら、日本の方が経験豊富だ」。
上海の同済大学に籍を置く鉄道専門家、孫章教授はそう認める。
「しかし、我々の高速鉄道の方が安い。
大量生産しているし、労働コストも安いからだ」
これに対し日本は安全面の実績を強調している。
中国では2011年に浙江省温州市の事故で40人が死亡したが、日本の新幹線では乗客が負傷する事故がまだ一度も起きていない。
また、長期的には新幹線の方が割安だと主張している。
舞台裏の競争はこれほど上品には行われていない。
例えば日本側は、中国はインドネシアのジャカルタ・バンドン間の路線について適切な事業計画を作っておらず、できもしない約束をしていると述べている。
好んで引き合いに出すのがフィリピンのマニラで進められた「ノースレール」プロジェクトだ。
フィリピンはこの鉄道建設資金を中国輸出入銀行から借り、その返済も続けているものの、肝心の工事が進んでいないという案件だ。
■新幹線をそのまま丸ごと売り込む難しさ
ただ日本側の専門家の間でも、新幹線を統合されたシステムとして丸ごと購入するしかないオール・オア・ナッシングのアプローチはハードルが高いという声は多い。
「新幹線の仕様は非常に高度だ」。
鉄道コンサルタントで外国での鉄道プロジェクトについての著作もある佐藤芳彦氏はこう指摘する。
「専門家は新幹線をそのまま外国に持っていきたいと思っている。
これはなかなか難しいことだ」
三井物産の安永竜夫社長は、日本の技術と外国の技術とを組み合わせれば日本のインフラ輸出が成功する回数はもっと増えると見ている。
「インフラ輸出について語るときには、日本製であることに焦点が集まることが多い。
だが、日本にも長所と短所がある」
と安永氏。
「すべてが日本製のパッケージで勝てるとは思っていない。
競争力のある最良のパッケージが何であるかを常に考えなければいけない」
■地下鉄を売り込んだ方がいい?
途上国は都市部を走る鉄道を渇望している。
そして新幹線に直接携わる企業を除けば、日本の鉄道業界の中には地下鉄を売り込んだ方がいいという声が多い。
「個人的には、都市鉄道の方がビジネスチャンスが多いのではないかと思う」
と佐藤氏は述べている。
住友商事と日本車両製造は今年、ジャカルタの地下鉄向けに車両を製造する1億700万ドルの契約を獲得した。
成功しているデリーの地下鉄は日本の資金を使って建設されたものだし、高速鉄道の大騒ぎでほとんど見過ごされてしまったものの、安倍晋三首相のインド訪問では、チェンナイとアーメダバードにおける鉄道事業への借款供与でも合意した。
安永氏によれば、三井物産はリオデジャネイロとサンパウロを結ぶ高速鉄道網の計画受注を目指してきた。
だが、コストの高い新幹線計画が一般市民の反対に遭った後、今ではサンパウロの地下鉄新路線の建設に取り組んでいるという。
By Robin Harding in Tokyo and Tom Mitchell in Beijing
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レコードチャイナ 配信日時:2015年12月26日(土) 7時40分
http://www.recordchina.co.jp/a125877.html
日本がインド高速鉄道受注に成功、
インフラ輸出に焦りも見え隠れ―中国紙
2015年12月25日、「雪辱戦」。
日本の有名な経済誌「週刊東洋経済」は19日号で、日本とインドが高速鉄道プロジェクトで達成した合意をこんな言葉で表現した。
日本は急速に、アジア諸国の高速鉄道などのインフラ建設での中国との全面的な対抗を強めつつあるようにも見える。
日本の経済評論家・樋泉克夫氏は、アジア諸国のインフラ建設での日中の競争は「絶対に譲れない至上命題」と論じている。
日本の「新幹線」と中国の高速鉄道はいずれも、それぞれの国の設備製造業の「名刺」となっており、両国は海外への売り込みに熱を上げている。
とりわけアジアという最大かつ発展の見通しが最も高い市場にあっては、インフラ建設はすでに、経済を引っ張る主要な原動力となっている。
日本での調査を経て筆者が感じたのは、アジアのインフラ建設市場の争奪に走る日本の心境は理解できるが、中国との協力が無視されているということだった。(文:陳言[チェン・イエン]日本企業(中国)研究院執行院長。環球時報掲載)
周知の通り、日本の高速鉄道技術は進んでおり、その運行も極めて安全ではある。
だがインドネシアの高速鉄道プロジェクトの受注を逸した日本は、自国の技術の先進性を信じすぎた過去の態度を改め、「日本は高速鉄道プロジェクトでなぜ中国に負けたのか」という問題を慎重に考え始めている。
日本メディアの多くはこれについて、日本の技術は「ハイクオリティ」を強調する余り、価格での勝負となると中国には太刀打ちできないのだと分析している。
だがインドネシアをよく知るある日本の記者は筆者に、
「中国がインドネシアの高速鉄道を最終的に受注できたのはまず、中国が現地企業との合弁で新企業を設立し、この企業が高速鉄道の建設を直接担当することにしたためだ。
また、中国は高速鉄道を建設する技術を持っているだけでなく、インドネシア側が打ち出した要求を満たすこともできた」
と語った。
▼アジアのインフラ建設、日中の協力の可能性
安倍首相はアジアでの中国との全面的な競争を望んでいるようにも見える。
日本の国力が中国に比べて日増しに弱まっていることを差し置いても、アジアのインフラ建設の規模を見るだけでも、日印高速鉄道プロジェクトは8年で150億ドル(約1兆8000億円)にすぎず、アジア開発銀行の試算した毎年8000億ドル(約96兆1000億円)とは桁が違う。
まもなくインドネシアに出向する日本政府の当局者は、インドネシアとインドの高速鉄道プロジェクトについて筆者と話した際、「日本と中国はアジアで協力すべきだ」と安倍内閣とは異なる本心を語ってくれた。
日本のある商社の副社長は筆者に、
「我々のミャンマーの工業団地は2平方キロしかないが、もしも中国と協力できれば、10平方キロの大工業団地が作れる」
と語った。
日本の政府や企業の中には、アジアのインフラ建設では規模にせよ速度にせよ、日本の単独での取り組みには限りがあり、日中協力によって事業をさらに大きくできるという声がある。
(提供/人民網日本語版・翻訳/MA・編集/武藤)
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レコードチャイナ 配信日時:2015年12月26日(土) 7時40分
http://www.recordchina.co.jp/a125877.html
日本がインド高速鉄道受注に成功、
インフラ輸出に焦りも見え隠れ―中国紙
2015年12月25日、「雪辱戦」。
日本の有名な経済誌「週刊東洋経済」は19日号で、日本とインドが高速鉄道プロジェクトで達成した合意をこんな言葉で表現した。
日本は急速に、アジア諸国の高速鉄道などのインフラ建設での中国との全面的な対抗を強めつつあるようにも見える。
日本の経済評論家・樋泉克夫氏は、アジア諸国のインフラ建設での日中の競争は「絶対に譲れない至上命題」と論じている。
日本の「新幹線」と中国の高速鉄道はいずれも、それぞれの国の設備製造業の「名刺」となっており、両国は海外への売り込みに熱を上げている。
とりわけアジアという最大かつ発展の見通しが最も高い市場にあっては、インフラ建設はすでに、経済を引っ張る主要な原動力となっている。
日本での調査を経て筆者が感じたのは、アジアのインフラ建設市場の争奪に走る日本の心境は理解できるが、中国との協力が無視されているということだった。(文:陳言[チェン・イエン]日本企業(中国)研究院執行院長。環球時報掲載)
周知の通り、日本の高速鉄道技術は進んでおり、その運行も極めて安全ではある。
だがインドネシアの高速鉄道プロジェクトの受注を逸した日本は、自国の技術の先進性を信じすぎた過去の態度を改め、「日本は高速鉄道プロジェクトでなぜ中国に負けたのか」という問題を慎重に考え始めている。
日本メディアの多くはこれについて、日本の技術は「ハイクオリティ」を強調する余り、価格での勝負となると中国には太刀打ちできないのだと分析している。
だがインドネシアをよく知るある日本の記者は筆者に、
「中国がインドネシアの高速鉄道を最終的に受注できたのはまず、中国が現地企業との合弁で新企業を設立し、この企業が高速鉄道の建設を直接担当することにしたためだ。
また、中国は高速鉄道を建設する技術を持っているだけでなく、インドネシア側が打ち出した要求を満たすこともできた」
と語った。
▼アジアのインフラ建設、日中の協力の可能性
安倍首相はアジアでの中国との全面的な競争を望んでいるようにも見える。
日本の国力が中国に比べて日増しに弱まっていることを差し置いても、アジアのインフラ建設の規模を見るだけでも、日印高速鉄道プロジェクトは8年で150億ドル(約1兆8000億円)にすぎず、アジア開発銀行の試算した毎年8000億ドル(約96兆1000億円)とは桁が違う。
まもなくインドネシアに出向する日本政府の当局者は、インドネシアとインドの高速鉄道プロジェクトについて筆者と話した際、「日本と中国はアジアで協力すべきだ」と安倍内閣とは異なる本心を語ってくれた。
日本のある商社の副社長は筆者に、
「我々のミャンマーの工業団地は2平方キロしかないが、もしも中国と協力できれば、10平方キロの大工業団地が作れる」
と語った。
日本の政府や企業の中には、アジアのインフラ建設では規模にせよ速度にせよ、日本の単独での取り組みには限りがあり、日中協力によって事業をさらに大きくできるという声がある。
(提供/人民網日本語版・翻訳/MA・編集/武藤)
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