火力発電といえば石炭である。
石油はもったいなくて使えない。
石油化学製品という項目があるように石油はいろいろと利用範囲が広い。
ただ燃やすだけでは資源の無駄遣いになる。
地域の発電なら天然ガスが使われる。
石炭発電では有害排ガスが懸念されるが、
現在の日本の技術では、煙突から出てくるものはほぼ水蒸気のみといわれるほどクリーンになっている。
大体の原発が止まっている今、日本の発電は石炭頼りだが、汚染の心配はなくなっている。
昔は日本の学校でも暖房に石炭やコークスが使われていた。
半世紀も前の話である。
私の個人の経験では、中学のときは石炭だった。
高校はコークスであった。
よって校舎の外壁にトタンで作った煙突が這い回っていた。
大学は石油ストーブであった。
部屋が広いだけに寒かった。
冬の授業はたっぷり着こんで防寒対策をしていかねばならなかった。
ホカロンはまだなかった。
ただ燃やすだけでは石炭からは汚染排ガスが出る。
大掛かりな発電施設なら除去装置も万全になっているが、個人が使う暖房に石炭をつかうとなるとなかなかクリーン化は難しい。
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年12月16日(水) 9時30分
http://www.recordchina.co.jp/a125131.html
中国の大気汚染に悪循環、
それでも中国は石炭業を縮小させることはできない―米メディア
2015年12月10日、ボイス・オブ・アメリカによると、中国で北部を中心に極めて深刻な大気汚染が発生しているが、自動車の排出ガスのみならず、山西省などの石炭業がその原因になっている。
それでも中国は石炭業を縮小させることはできないという。
13日付で中国紙・参考消息(電子版)が伝えた。
あまりにもひどいスモッグに、ある母親は
「心配でならない。
子どもはのどを痛めるなど体調を悪くしてしまい、子どもを連れて出勤しなければならなくなってしまった。
看病しながらでは仕事も滞ってしまう」
と不満を漏らした。
しかし、スモッグの主要原因の一つとみられる山西省大同市の炭鉱では現在も24時間態勢で石炭が掘られており、減産の様子は見られない。
大同炭鉱グループの責任者は、
たとえ産出量が過剰になろうと、生産し続けるしかない
と話す。
操業を停止すれば給料が支払えなくなり、20万人もの作業員が路頭に迷うことになるためだ。
スモッグ対策のための減産もリストラの計画もここでは聞いたことがないとしている。
石炭が掘られ続ける中、深刻さを増すスモッグに、各地方政府には多くの苦情が寄せられている。
しかし、北京市の取った対策はスモッグ予報を強化するだけで、市民は恐々とする日々を送っている。
中国のエネルギー構造が石炭採掘を主要産業とする省や多くの国営・民間企業とその労働者を守るためのものとなっている現状では、中央政府以外に解決策は探れないだろう。
』
『
サーチナニュース 2015-12-20 15:33
http://news.searchina.net/id/1597601?page=1
中国での商売は命がけ
北京に住んで喘息になった外国人、
大気汚染のミニ測定器を開発したら「完売御礼」
「妻とともに開発した」という「大気汚染ミニ測定器」を手に取って説明するスイス人のリアム・ベイツさんは、誇らしげに笑顔を浮かべている。
しかし、内心はチョッと複雑なのではないか。
測定器開発のきっかけが、北京に長期滞在して、妻が喘息の発作に苦しめられるようになったことだからだ。
参考消息などが報じた。
リアム・ベイツさんは、中国の放送局で仕事をしていた。
だから中国語も流暢だ。
「李牧(リー・ムー)」とい中国名もある。
中国を訪れた人、長期滞在する人は、中国での生活を気に入ってしまう人と、嫌悪する人に、比較的はっきり分かれる傾向がる。
ベイツさんは、中国での生活によく適応したようだ。
ところが、頭を抱えてしまったことがある。
カナダ人の妻が北京で生活しはじめて、喘息発作に苦しめられるようになってしまった。
それがきっかけで、夫妻は大気汚染の問題に関心を持つようになった。
ベイツさんは2014年、北京市内に生活(北京)科技有限公司という会社を設立。
第1号の製品は「オキシーボックス(OxyBox)と名づけたミニ空気清浄器だった。
ベイツさんの次のアイデアは「大気汚染を可視化する」だった。
汚染がひどいと見せつけられれば、対策を真剣に考えるようになると予測した。
そこで、片手で持てる程度の大きさの「測定器」を開発した。
原理としては、測定器内部でレーザー・ビームを発生し、減衰の程度を測定する。
大気中を浮遊する微粒子が増えれば、レーザー・ビームは大きく減衰するようになる。
価格は日本円で9600円程度だ。
自宅内でも自動車内でも空気の汚染がすぐに分かる。
「隣の家で料理をするでしょ。換気扇で排出された油煙がこちらの家に入ってくるんです」といった、生活における「大気汚染」も分かる。
とにかく「今、ここで呼吸している大気の質」は常に変動しているという。
「大気汚染ミニ測定器」は発売当初から売れ行き好調だった。
11月末に北京市で大気汚染がさらに深刻化したことで、「1カ月前と比べて、販売数が2倍になりました」という。
生活(北京)科技有限公司は洒落たビルに入居しているのではない。
本社建物は「四合院」と呼ばれる、北京市の伝統的な民家だ。
しかも古くてぼろぼろという。
現在、その古い「四合院」の門には「ミニ測定器は品切れです」との貼り紙がある。
予約分の商品引き渡しは来年(2016年)1月まで待ってもらうしかないという。
』
『
現代ビジネス 2015年12月18日(金) 中島 恵
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46957
日本の病院に中国人が殺到!
4泊5日で100万円、訪日「健康診断」ツアーが大盛況
深刻な大気汚染で高まる健康不安
■もう我慢できない
「視界全体に霞みがかかったようで、数メートル先は何も見えません。
なんだか変な臭いもするんです。
まだ朝なのに、もう夕方みたいな感じで……。
こんな中で生活していたら、誰だって体調不良になりますよ」
北京に住む友人、毛燕燕(28歳)さんはPM2.5に汚染された空を見上げながら、ため息交じりにこうつぶやく。
北京の名門大学を卒業後、IT企業に勤務しているキャリア女性だ。
移動はできるだけタクシーを使うようにし、なるべく外は歩かないようにしているが、それでも限界があるため、大学時代の友人が多く住むニューヨークに引っ越すことを真剣に検討している。
北京の空気があまりにも悪過ぎるからで、とくに12月に入ってからは「もう我慢できない」と、中国版LINEの微信上で嘆いている。
一人娘なので、両親は彼女のアメリカ行きを反対しているというが、それでも「将来、子どもが産めない身体になったらどうするのよ」と彼女がいうと、両親も黙りこんでしまう。
PM2.5が人体にどれだけの害を与えているか、まだ明確なデータは示されていないが、友達も口々に心配しているという。
毛さんは理系だったが、クラスメートの3分の1は現在、アメリカや香港、日本など海外に住んでいる。
大学を卒業後、大学院進学のために海外に出て、そのまま戻らない人が多い。
キャリアアップのためもあるが、半分は、中国の生活環境を心配していることは明らかだ。
■大気汚染が原因で引っ越す
毎年冬になると、日本でも大きく報道されるPM2.5(微小粒子状物質)。中国語では「霧霾」(ウーマイ)と呼ばれる。
「霧霾」は冬以外でも、ときによっては深刻化することがある。
私も北京を訪れた際、何度か数値の高い日にぶつかったことがあり、朝ホテルから出るのがつらかった。
ふだんはマスクを嫌がる中国人も、そんな日はさすがにしっかりマスクをしているが、医療用マスクでも「効果があるのか?」と不安になる。
北京のみならず、中国東北部や内陸部の工業都市でも公害は深刻だ。
あまり物事に頓着しない中国人でさえ、最近の空気の悪化には“危機感”を感じている。
日本でも水俣病やイタイイタイ病のような病気があったが、その時点で身体に問題がなくても、数年後にどんなことが起こるのかわからないからだ。
そんな中、引っ越しを決意し、実行に移す人が増えている。
北京に隣接する河北省に住む知り合いは、今夏、海南島に引っ越した。
夫はそのまま河北省で働いているが、自分(妻)と子どもだけ海南島にマンションを買い、そこに住んで、夫が年に数回、海南島に通うという二重生活を送ることになった。
「これほど空気が悪かったら、もうどうしようもない。
もともと子どもの気管支が弱く、将来のために決断した。
海外に住むことは難しいけれど、国内ならば、お金さえ払えば行き来は自由ですから」
上海に住む友人の母親は天津で教師をしていたが、3年前、定年を機に広東省に引っ越した。
「比較的空気のよい南方に住みたい」と考えたからだ。
といっても、中国は広い。
天津から広東省までは数千キロも離れているうえに、言語や習慣も大きく異なる。知り合いがひとりもいないどころか、まるで違う国に引っ越すようなものなのだが、その母親は離婚して一人暮らしだったこともあり、あっさりと転居に踏み切った。
今では、地域のマンションで催されるダンス教室などに通うほど溶け込んでいる。
私の友人にも「大気汚染を気にせず暮らせるのは幸せだわ」と話しているという。
大気汚染が原因で引っ越しまで余儀なくされるというのは日本人には信じがたい話だが、引っ越しには仕事や住居、言語や習慣(中国の場合)、コミュニティなどあらゆる問題が関係するため、そう簡単にできるものではない。
一部の特権階級や富裕層しかできないといっていいだろう。
普通の人はひたすら我慢するしかないのだ。
■訪日医療ツアーが大人気
そんな中、
「せめて自身の健康状態をチェックしたい」
「もし病気が見つかったら日本で治療したい」
と思い、日本の病院で検査を受ける人が増えている。
旅行会社などが行っている「訪日医療検診ツアー」に参加して日本にやってきているのだ。
筆者がこのほど新刊『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか?』の執筆のため取材したのは、福岡を中心拠点に医療ツアーを手がけているビジット・ジャパンという企業だ。
同社はこれまで人材ビジネスを手掛けていたが、13年から中国人富裕層向けの医療ツーリズム(医療観光旅行)事業を開始した。
医療と観光をセットにして販売するもので、医療にプラスアルファの付加価値をつけているのが魅力。
「爆買い」だけでなく、最近ではこうした新しい形態の日本ツアーに注目する中国人が増えている。
具体的には、同社がつき合いのある長崎県の西諫早病院などと組み、中国人のPET(陽電子放射断層撮影)-CT(コンピュータ断層撮影)検査、がん検査などを行い、温泉施設などに宿泊してもらうというコースを数パターン販売している。
佐賀県・嬉野温泉にある老舗旅館、和多屋別荘には、健康診断を受けるために来日した中国人が露天風呂に入り、佐賀牛に舌鼓を打つ姿があった。
「お客様をエスコートする通訳が付き添ってくれますので、私たちも安心です。
検診の前に日本の旅館でリラックスしていただいています。
これを機に旅館のリピーターになってくれたら、なおうれしい」
と旅館の営業担当者は喜ぶ。
豪華な客室に宿泊し、温泉と懐石料理を堪能した上で、1日かけて全身の検査を行う。
リラックスして旅行を楽しみつつ、身体検査も行えるとあって、中国人の間でクチコミで人気が広がっている。
ビジット・ジャパン社長の井上智樹氏によると、コースはオーダーメイドなので料金には幅があるそうだが、2泊3日(PET-CT検査、航空券、宿泊などを含む)で日本円にして1人約60万円程度だという。
いちばん高いコースは4泊5日で1人100万円ほど。
温泉旅館の客室などによっても料金は変動するといい、スタッフがその都度、コースを見積もっている。
申し込むのは主に40~50代の夫婦や友人同士などで、経済的にゆとりのある企業経営者やエリートビジネスマンが多い。
実際にツアー客を受け入れた西諫早病院の千葉憲哉院長はこういう。
「驚いたのですが、中国の中高年の方々は、採血をしたことがほとんどなく、これまで病院できちんとした医療を受けた経験もあまりないようなんです。
医師が検査内容や結果を丁寧に説明すると、それだけで感激し、非常に喜んでくださいます。
せっかく日本の病院に来たのだから、といって、薬の処方を望まれる方も多いですね。
彼らが日本で検診する機会がもっと増えればと思います」
■中国の医療事情
中国では医師と患者の信頼関係が薄く、病院を信用していない患者が多い。
医師の待遇も悪く、優秀な人材が医師になりたがらないなどの悪循環が続いている。
私の知人も、数年前、清華大学医学院という、医師になるコースとしては最高峰の大学を卒業したが、インターン期間中、労働条件の劣悪さを思い知り、結局医師にはならなかった。
人格者だったので、彼のような人にこそ医師になってほしかったが、外国人である私が彼の将来についてあれこれいう立場にはなかった。
中国は経済成長を優先し、医療を後回しにしてきたが、現在でもその状態は変わっていない。
2015年、日本を賑わせた流行語は中国人の「爆買い」だった。
ひとつの商品を数十個と購入していく中国人の姿は日本人の目に鮮烈に焼きつき、彼らの金満ぶりに目を見張った人も多いだろう。
しかし、GDP世界第2位になり、経済的な豊かさを享受している中国人でも、まだ手に入れられないものがたくさんある。
そのひとつが、日本人にとってはあって当たり前の生活環境であり、高度な医療事情だ。
これらの点を中国政府が解決するのはまだしばらく時間がかかるだろう。
そう考えると、日本にはまだビジネスチャンスがあると思うし、中国人にとっても望むものが日本にあるのだ、と痛感する。
中島 恵:
1967年、山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経て、96年よりフリージャーナリスト。中国・香港・台湾など、主に東アジアのビジネス事情、社会事情等を新聞、雑誌、インターネット上に執筆
』
『
プレジデント 2015/12/18 13:15 中島 恵=文
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151218-00016967-president-nb
中国人の「爆買い」、そのホンネととまどい
●『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか?――中国人のホンネ、日本人のとまどい』(中島 恵著・プレジデント社)
「えっ!? ホント? やっ、やった~! 」
2015年12月1日の夕方、東京・新宿にある紀伊国屋書店本店をウロウロしていた私は、携帯に流れてきたニューストピックスを見て、思わず小さな声でこう叫んでいた。
そして、すぐさまプレジデント社の担当編集者にショートメッセージを送ってしまった。
「今年の流行語大賞に、『爆買い』が選ばれましたよ! 」
編集者も興奮ぎみに返事を返してきた。
何しろそのちょうどその頃、私たちが編集を終えたばかりの本のタイトルが、まさに
『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか? ――中国人のホンネ、日本人のとまどい』
だったからである。
なんという偶然のタイミングなのだろうか。
今年の流行語にノミネートされていたことは知っていたが、まさか大賞まで受賞することは……。タイミングが良すぎるではないか。
しかし、今年、2015年を象徴する言葉こそ、まさにこの「爆買い」という言葉だったのではなかっただろうか、と思い返した。
それは春節から始まった。
2月下旬の春節期間中に見た光景は“衝撃的”だった。
過去最大規模に上る約45万人もの中国人が日本観光にやってきたのだ。
この間の消費金額はなんと約60億元(約1140億円)!
クルーズ船でやってきた5000人の観光客の波、波、波。
10月の国慶節(中国の建国記念日)の頃にもほぼ同額のお金を落として帰っていったことは、まだ記憶に新しいだろう。
温水洗浄便座、高級炊飯器、ステンレスボトル、果ては南部鉄器にランドセルまで……。
「なんでこんなものまで中国は“爆買い”するのよぉ~」。
そんな日本人の驚きとも、感嘆とも、ため息ともいえない言葉が全国各地で聞かれた。
そう……。
なぜ中国人はこれほど日本で爆買いするのか?
そして、それは一過性のブームなのか。
あるいはまだまだ続くものなのか。
多くの日本人が気にかけていることかもしれない。
それほどまでに日本にもたらした経済効果は大きかったからである。
私はこの夏、日本で巻き起こっている「爆買い」現象を追い求めて、各地を取材して歩いた。
最初のうちは、観光地で中国人を迎え入れる観光施設や観光関係者などに取材し、現場ではどんなことが起こっているのかについて取材していたが、だんだんと興味は「爆買い」後どうなるのか、に移っていった。
取材すればするほど、「爆買い」のその後、が気になり始めたからである。
今後も来日して日本にお金を落としてくれるのか、くれないのか。
一度買い物に来たら、もう日本には来なくなるのか、まだ引き続き日本に関心を持ち続けてくれるのか、否か――。
私の疑問や関心は、結果的に多くの日本人の関心や興味ともダブることになるのだが、実際に取材してみると、悩みや不安、とまどいが次々と聞こえてきた。
それほどまでに中国人の爆買いは「黒船」のように突如訪れた現象であり、日本人にとってショッキングな出来事だったといえるだろう。
だが、一方で「その後」にかける期待や意気込みもあった。
団体ツアーから個人旅行に移行していく中国人を当て込んで、富裕層向けのサービスや、SNSを活用して、他社に先駆けて特別なおもてなしを仕込む企業もあった。
取材の過程で、私は来日する中国人の声も拾うように心がけた。
当事者の片方である日本人だけの取材では不十分、アンバランスだと思ったからである。
中国人はなぜ日本に来るのか、日本旅行をどう思っているのか――などだ。
数多くの日本人と中国人両方の意見を聞いてみた結果、これらの声を書籍としてまとめることで日本人に多くの示唆を与えることができるのではないかと考えた。
そして結実したのが本書である。
後編で、その内容を少しご紹介しよう。
』
『
プレジデント 2015/12/21 12:15 中島 恵=文(後編)
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151221-00016969-president-nb
中国人の「爆買い」は一体いつまで続くのか?
『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか?
――中国人のホンネ、日本人のとまどい』(中島 恵著・プレジデント社)
今、中国人観光客を迎え入れる日本人が最も気にしていること、それは「爆買い」はまだ続くのか?
あるいは一過性のもので、2015年限りで終わってしまうのだろうか?
という点だ。
「ユーキャン 新語・流行語大賞」を受賞すると、芸人は“一発屋”で終わってしまうというジンクスがあるが、そんな冗談はさておき、結論をいえば、
私の考えでは「爆買い」は2016年以降も、まだしばらく続くと思う。
その理由は本書『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか? 』の中で詳しく説明したが、ひと言でいえば、
中国人にとって日本はまだ魅力的な観光地であり、中国では買えないもの、味わえないことがたくさんあるから、
である。
ひとたび「豊かな暮らし」へとかじを切った中国人の気持ちは止められず、この流れはまだ当分続いていくと考えてよい。
だから、「爆買い」はまだ続く――。
ただし、この結論は条件つき、である。
実は、従来通りの「爆買い」はそう長くは続かないのでは、と私は思っている。
従来通り、とは「同じ商品を何十個も買う」「ありきたりの観光地を団体で巡る」という意味である。
「爆買い」ブームの先駆けとなった人々は、すでに5泊6日のゴールデンルート(東京―富士山、名古屋、京都、大阪)を巡る一般的な旅に飽き飽きし始めているからで、日本人よりもはるかに早いスピードで生きている中国人の「爆買いの中身」は、今後変わっていくことが予想される。
観光施設や関係者に話を聞くと、その兆候が出てきているし、中国人に話を聞いても、彼らの旅行の目的や楽しみ方は刻一刻と変化している。
行き先や食べるもの、興味の幅が驚くほど広がってきており、「えっ、なんでこんなところにまで? 」と思うほど出没しているのである。
日本で直接「爆買い」に関わる人々は、いち早く彼らのこの動きを察知し、その背景を探り戦略を練る必要があるし、もっと中国人の考え方を知るべきだろう。
かつての日本人もブランドものを求めて世界各地を旅行して歩いたが、今の中国人ほど激しい変化はなかった。
日本人は海外・国内に関わらず、いまだに団体旅行が好きだし、日本人の嗜好の変化は緩やかである。
だから、つい自分たちと同じように、ゆっくりペースで考えてしまうのだが、それは危険だ。
中国人の興味の変化は“ドッグイヤー”より早い
といっても過言ではない。
中国では3年ほど前からスマホが流行り出したが、わずかの間にあっという間に人口の半分以上の人々がスマホにかじりつき、スマホがなければ生活が成り立たないほどのめり込むようになった。
情報伝達も同様で、老人であってもスマホのSNSを使いこなすのが普通だ。
また、そうでなければ、中国では他人においていかれるのである。
日本人の思考で一方的に「きっとこうすれば中国人観光客は喜ぶだろう」と考えていても、空回りしてしまう。
日本では中国の政治経済のニュースは大量に流れているが、彼らの日常生活や考え方については、ほとんど報道されていないからである。
中国人と日本人では生活の「基本」が異なる。
たとえば、日本では赤信号では止まり、青信号では進むのがルールだが、社会システムがほとんど機能していない中国では、必ずしもルールに従うことが「よいこと」とは限らない。
自分の目と耳で状況を判断しなければ、命取りになる。
中国人が列に並ばないのも
「並んでいたら、自分の順番は来ないのでは……」、
「コネがある誰かに先を越されるのでは…」
という潜在的な不安感があるからだ。
日本人から見れば
「どうしてそんなことをするの? 」
「マナーがなっていない」
と思うが、中国ではまだシステムが機能していないことがたくさんある。
悪気があるわけではなく、日本にきても、中国のルールをそのまま持ち込んでしまうため、日本人に誤解されたり、悪印象を与えてしまうが、彼らは国内事情を引きずったまま、海外旅行に出かけている。
しかし、そんな状態が長く続くとは思えない。
海外を経験した人は次第に「学んで」いっている。
そんな「相手の事情」や「日中の違い」をほんの少し念頭に置くだけで、彼らに対する見方は変わってくるのではないだろうか?
本書では、中国人独特の考え方や行動原理を始め、彼らがなぜ日本を目指すのか、複雑な社会から見える「中国人にモノが売れる仕組み」、日本人が眉をひそめるマナー問題、流行の先端を行く人々の動向、中国人の対日観、などに焦点を当てた。
日本側から見た「爆買い」現象だけでなく、中国人側から見た「爆買い」の理由も紹介することで、日中両国にとって、少しでも誤解をなくすことができれば幸いである。
』
_