2015年12月18日金曜日

中国経済は「崩壊はしない」(5):フィナンシャルタイムス特有の「褒め殺し」の危険?、ヨイショ、ヨイショ!!

_
 フィナンシャルタイムス特有の「褒め殺し
 いま、イギリスもドイツもそしてIMFも
 いかに中国というこの新興成金国からお金をむしりとるか
を真剣に考えている。
 壁にぶつかってしまった老大国や組織にとって、
 中国は金ピカにみえる
のだろう。
 そのおこぼれにあずかりたい、と思うのは当然のこと。
 よいしょ!よいしょ!


2015.12.18(金) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45577

欠点があり、熱っぽい中国の台頭を称えよう
悲観論者に耳を貸してはならない理由
(2015年12月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


●どれほどリスクがあっても、世界第2位の経済大国である中国の台頭は称えるべきだという(写真は上海 (c) Can Stock Photo)

 中国経済という貨物列車が脱線するところを想像するのは、たやすい。
 筆者がアジアに赴任した14年前、当時の経済規模が名目ベースで中国の3倍もあった日本では、多くの人がまさにその通りの予言をしていた。
 あのシステムは自らの矛盾に耐えかねて崩れてしまうに違いない、というわけだ。
 何しろ中国経済は国家に管理されており、資本の配分を間違えたりムダの多い投資に依存したりしがちだった。
 また、国防よりも国内の治安維持の方にお金をかける抑圧的な政治組織があった。

 共産党幹部に対する怒りは強まっていた。
 幹部の多くは汚職まみれで、異常な規模で土地を収奪していた。
 大雑把に見ると、経済は目を見張るペースで成長を遂げていた。
 だがその一方で大気や水を汚し、自国の市民の健康を蝕むことも珍しくなかった。

■悲観論を覆し、ますます力を付ける中国

 この分析には何の誤りもない。
 しかし、中国に内在するストレスは社会の混乱につながり、ひいてはこの国のシステムを崩壊させるだろうという結論は、希望的観測の産物だった。
 この結論は、数億人もの人々の生活を目に見える形で改善した中国共産党の実績を過小評価していた。
 また、同党による愛国主義的なメッセージの強さも過小評価していた。
 毛沢東の言葉を借りるなら、
 100年以上に及ぶ屈辱の時代を経て、
 中国はついに「立ち上がった」というメッセージだ。

 いくつかの指標を見る限り、中国は崩壊するどころかますます力を付けている。
 現在の国内総生産(GDP)は日本の2倍を超えており、購買力平価(PPP)換算のGDPでは、昨年米国を抜いて世界最大となっている。
 1人当たりGDPも伸びており、わずか15年で米国の8%相当額から25%相当額に跳ね上がった。

 日本には、中国の破綻を心の中で願っている人が多い。
 理由がないわけではない。
 彼らは、歴史書を手にした執念深い、そして力も強い隣国を恐れているのだ。
 だが、米国や欧州にも、中国なんてトランプで作った家のようなものだと思っている人はいる。
 『The Coming Collapse of China(邦題:やがて中国の崩壊がはじまる)』といったタイトルの本は、もう何年も前から定番になっている。

 この専制政治体制の欠点や甚だしい不正を指摘することは、すぐに終わりを迎えると予言しなくてもできる。
 いずれは共産党も何か別のものに屈するだろう。
 すべての王朝は崩壊する運命にある。
 しかし、中国共産党は恐らく、大方の予想よりも長い期間権力を維持することになるだろう。

中国の台頭は、我々の時代の最も重要な出来事だ。
 西側諸国には、テロの脅威や、機会と破壊をセットでもたらす技術革命に心を奪われて中国にはさほど関心を示さない人が多い。
 しかし、世界の人口の5分の1を擁する国が蘇ったとなれば、その影響は甚大であり、世界の重心が西から東に引き寄せられることになる。

 経済の面ではすでに、中国自身の景気減速のためにコモディティー(商品)価格がこのところ急落しているとはいえ、アンゴラからオーストラリアまで世界の原材料生産国の見通しが一変した。

 政治の面では、ほぼすべての国が計算のやり直しを強いられた。
 例えば米国は、日本や台湾などに無条件の安全保障を今後も提供し続けられるかどうかを外交官があれこれ考えていたまさにそのときに、アジアに軸足を移すことになった。

 英国はビジネスと国力の磁力に引っ張られ、米国政府の意向を平然と無視して中国主導の銀行創設に参加した。
 ブレトンウッズ体制に象徴される第2次世界大戦後の秩序に対抗することを目指したあの銀行だ。

■2つの大きなリスク

 中国の台頭にはリスクがある。
 特に目立つものは2つある。

◆:1つ目は戦争のリスクだ。
 これまでの記録を見る限り、新たに台頭する強国への適応において人類は好成績を上げていない。
 中国政府は、力を付けるにつれてパクス・アメリカーナを受け入れなくなるだろう。
 少なくとも、自国の自然な勢力圏だと考えているところでは受け入れないはずだ。
 南シナ海の人工島を巡る中国と米国の行動は、これから起こることを暗示している。
 日本に怒りの矛先を向けるナショナリズムも同様だ。

◆:2つ目は環境のリスクだ。
 無理からぬことだが、中国の人々は、大きな車や冷蔵庫がある米国の生活水準に憧れを持っている。
 インドに暮らす13億人、アジアやアフリカ、中南米に住む数億人も同様だ。
 地球がそのような野心を支えられるかどうかは明らかでない。
 科学技術の本当に飛躍的な発展(あり得ないわけではないが、予定されているとはとても言えない)がない限り、何かをあきらめなければならないかもしれない。
 そうなれば、人類はまた争うことになってしまう。

 こうしたリスクにもかかわらず、中国の台頭は称えるべきだ。
 戦後日本は世界に対して、繁栄と近代性は欧州と米国の白人の領分ではないということを証明してみせた。
 中国は、たとえまだ匹敵するほどではないにせよ、日本の成功をずっと大きな規模で真似ることができることを示した。
 今は、祝うには奇妙なタイミングに思えるかもしれない。
 中国モデルは崩壊しつつあるのではないのか。

 経済成長は多くの人が想像した以上の速さで鈍化した。
 さらに大幅に減速する可能性もある。
 これは金融危機を引き起こすかもしれない。

 2009年以降、債務は倍増した。
 システムに生じたひびを2ケタの経済成長で取り繕うのは難しくなかった。
 成長率が3%では、それほど容易ではないかもしれない。

 たとえ全面的な危機を回避したとしても、中国は単に行き詰ってしまうかもしれない。
 労働力人口は縮小している。
 人口は急速に高齢化している。
 わずか15年後には、国民の4分の1近くが65歳以上になる。
 そうなると、悲観論者が預言者のように見えてくるのではないか。

■亀裂はたくさんあるが、「中国の脅威」は消えない

 実際には、中国が世界を変えるには、それほど素晴らしい成果を上げる必要はない。
 人口の規模のために、中国人が米国の半分の生活水準を手に入れただけでも、中国経済は米国経済の2倍の大きさになる。
 エール大学のポール・ケネディ教授の著書『The Rise and Fall of The Great Powers(邦題:大国の興亡)』は、経済力の後に軍事、外交両面の力が続くと示唆している。

 システムの亀裂を探している人は、たくさん見つけるだろう。
 一方、「中国の脅威」が間もなく消えると想像している人は、失望することになる。

By David Pilling
© The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. Please do not cut and
paste FT articles and redistribute by email or post to the web.



レコードチャイナ 配信日時:2015年12月20日(日) 17時10分
http://www.recordchina.co.jp/a124364.html

中国経済が崩壊すると予言した日本人は、中国を甘く見過ぎた―英紙

 2015年12月16日、英紙フィナンシャル・タイムズは、同紙のアジア編集長を務めるデビッド・ピリング氏による、
 「中国経済が崩壊すると予言した日本人は、中国を甘く見過ぎた」
とする記事を掲載した。
 18日付で環球時報が伝えた。

 私(ピリング氏)が14年前に初めてアジアに来た時、日本の経済規模は中国の3倍を誇っており、多くの日本人が「中国の体制は内部矛盾により確実に崩壊する」と予言していた。
 彼らは
 「中国経済は国が管理しているため、不合理な資本分配や浪費性の投資への依存が起きやすい」
 「中国経済は驚くべき成長を遂げたものの、水や空気を汚染してきた」
などと分析した。
 これらは正しいが、
 「内在するストレスが中国社会の不安定化を招き、体制が崩壊する」
という結論は“片思い”に過ぎなかった。

 彼らは中国共産党を甘く見過ぎていた。
 中国は崩壊しないどころか、ある方面ではますますその力を強めている。
 中国の経済規模は、今や日本の2倍以上。
 購買力平価から見ると、米国をも凌駕する。
 中国の台頭は、世界の重心を西側から東側へと移した。
 経済や政治において大きな変化をもたらし、米国の外交官らは日本や台湾などに無条件の安全保障を提供することについて、その実現性を考慮しなければならなくなった。
 英国は米国の反対を顧みずに、中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)への参加を決めた。

 中国の発展にはリスクが付きまとうが、それでも祝福しなければならない。
 戦後の日本は世界に対して、繁栄と現代化は白人の専売特許でないことを証明したが、中国は世界に対して日本の成功をより大規模に実践できると示して見せた。
 実際は、中国はここまでうまくやらずとも世界を変えることができた。
 中国は人口が多いため、国民の生活水準が米国の半分に達しさえすれば、米国の2倍の経済体になるのだ。
 イェール大学のポール・ケネディ教授は自身の著書「大国の興亡」の中で、「軍事力と外交力は後から付いてくるものだ」としている。



ロイター 2015年12月22日(火)20時27分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/12/post-4285.php

王毅外相「英国に続き西側諸国が中国と関係改善を望むだろう」
チャイナマネーに世界がひれ伏すと言わんばかりの強気発言

 中国の王毅外相は、英国に続き西側諸国が中国との関係改善に乗り出すとの見通しを示した。

 英国は今年、中国が主導する国際金融機関「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)に参加するなど、中国との金融・外交関係の強化に動いており、10月には習近平国家主席が英国を公式訪問。
 両国は現在の状態を「黄金時代」と表現した。

 中国外務省の声明によると、王毅外相はキプロスへの途上、メディアに対し、
 「中英関係は今年、(中国外交にとって)輝点(ブライトスポット)となった。
 こうした現実の重要な展開は、今後の中国と西側諸国との関係の展望を予感させると思う」
と述べた。

 さらに、中国はより国際社会に受け入れられつつあると指摘。
 「中国の国際的な地位と影響力は顕著な変化を見せた」
と述べた。



サーチナニュース 2015-12-18 13:54
http://biz.searchina.net/id/1597517?page=1

中国の波乱の1年、
行き過ぎた「中国悲観論」には冷静な吟味を=大和総研

 大和総研経済調査部主席研究員の齋藤尚登氏は2015年12月18日に「波乱の1年の終わりに」と題したレポート(全11ページ)を発表し、今年1年間の中国経済と市場を振り返った。
 「中国ショック」と言われた今夏の株価急落時における中国当局の対応の拙さなどから、中国悲観論が台頭したことについては
 「少なくともマクロ経済に対する中国政府のコントロール能力は失われていない」
として、行き過ぎた悲観論には冷静になるべきであるとくぎを刺している。
 レポートの要旨は以下の通り。

◆中国の景気が数字以上に悪く感じられるのは何故であろうか?
 大きな要因の一つは株価急騰・暴落に対する政策対応の拙さ、さらには、人民元の対米ドル中間レートの算出方法の変更にまつわる当局の説明不足やその後の人民元買い支えに伴う外貨準備の「浪費」などが、
 中国経済もしくは政府の政策遂行能力への様々な思惑や疑心暗鬼を生み、中国悲観論が台頭した
ことではないかと考えている。

◆今後、中国の政策対応が早急に洗練されていくとは考え難く、
 折に触れて「中国ショック」が特にマーケットの波乱要因になるリスクは残り続けよう。
 しかし、同時にそれが単なる思惑や疑心暗鬼ではなく、本当に中国経済の変調(失速)を意味しているのかを冷静に吟味する必要性も高まっているのではないか。
 住宅市場テコ入れや地方政府関連債務の地方債への置き換え、乗用車販売刺激策など、中国政府が繰り出した政策は効いている。
 少なくともマクロ経済に対する中国政府のコントロール能力は失われていない。

◆2015年12月14日に開催された中国共産党中央政治局会議は、2016年の経済運営を議論し、
(1)イノベーション駆動戦略の深化、
(2)企業の優勝劣敗の積極的で適切な推進、
(3)企業のコスト低減の支援、
(4)不動産過剰在庫の解消、
(5)有効供給の拡大、
などの重要性を指摘した。

◆2016年の経済運営で特に注目されるのは、
 (4)の不動産過剰在庫の解消であろう。
 政治局会議では、農民工(農村からの出稼ぎ労働者)の市民化など「新しい市民」のニーズを満たすことを出発点とする住宅制度改革を推進するとしている。
 これまで住宅購入層として蚊帳の外に置かれていた農民工が住宅購入支援策の対象となることは、実需増加の面でも注目されよう。
 住宅の在庫調整が地方都市でも進展すれば、大都市で先行するであろう不動産開発投資の回復に力強さが増していくことが期待される。
 不動産開発投資は、鉄鋼、セメントなど裾野産業も広く、その反転は景気持ち直しをサポートしよう。



現代ビジネス 2015年12月20日(日) 田村 耕太郎
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46962

中国のテクノロジーを侮るな! 
世界のリーダーたちは誰も"チャイナリスク"を口にしない

■先進国の先を行き始めた側面も

  「中国のテクノロジーはとてもつもなく進化している」
 これはシンガポールで世界のテクノロジーを俯瞰している知の巨人2人に囲まれたランチで聞いた話だ。
 その2人とはリー・クワンユーの右腕としてシンガポールの国家開発戦略を担った初代EDB長官フィリップ・ヨーさんと、世界で初めてゲノムサイエンスを使った創薬企業を創業しビリオネアとなったウィリアム・ハゼルタイン博士である。

 世界中から最高の科学者を集めてシンガポールを基礎研究の世界的な拠点にすべくバイオポリスやフュージョンポリスを立ち上げ、シンガポールの科学技術政策を今でもけん引しているフィリップさんは、中国の最新テクノロジーに精通している。
 ハゼルタイン博士も中国の清華大学に巨大な拠点を持っているので、バイオサイエンス分野を中心に中国の最新の基礎研究事情を把握している。

 物事は単純に白か黒かでは言い表せないものだが、中国のような巨大国家に関しては特にそうだと思う。
 先進国のIP(知的所有権)を違法コピーしまくっている側面や、素行のよろしくない観光客を目にしているからか、日本には「中国なんて技術や人の洗練度はまだまだ発展途上国」と思ってしまっている人が多いのではないか。
 確かに中国は新興国の色がまだまだ抜けきらないが、実は、ある意味で、先進国の先を行き始めた側面も持っている。
 その一つが「先端技術」だ。

 知の巨人たちが認識を一にしたのも「劇的に進化する中国のテクノロジー」だった。
 バイオから素材、IT、宇宙まで現段階での中国の最新テクノロジーを把握し、指導する立場にある彼らの結論は、冒頭の台詞、「中国の技術はとてつもなく進化しつつある」ということなのだ。
 「これから中国人科学者のノーベル賞ラッシュが始まることも十分に考えられる。
 なにせ世界一のスーパーコンピューターを持っているし、アメリカでPhDを取得した若い科学者の量と厚みが増している。
 いま、その量が質に転化し始めたところだ」
 そうした前提から、アメリカやシンガポールと中国との「技術交流」のコンタクトは、以前にも増して密接になっているという。

■「中国バブル崩壊」などありえない

 日本人は物事を常に「白」か「黒」か、「敵」か「味方」かの二項対立で捉えようとするが、世界はそんなに単純なものではない。
 中国は巨大なだけに複雑な存在なのだ。
 新興国の側面と先進国の側面が共存する。
 そして先進国の部分は先進国より進歩しはじめ、全体を徐々にレベルアップさせている。
 アメリカにとっての中国は、「敵」とみなさなければならない対象であると同時に、「味方」にもなっておきたい存在なのだ。

 かくいうわれわれ日本人も、かつては「エコノミックアニマル」と揶揄され、海外旅行者のマナーも今からは信じられないくらい悪く、欧米の技術やエンターテインメントをコピーしまくっていた。
 そして、コピーを改良し、それを進化させ、技術立国となってきたのだ。
 中国はいま、かつての日本と同じことを、10倍のスケールでやっている。
 「日本との違いは、アメリカの名門大卒のエンジニア系博士号取得者の量だ。
 アメリカの名門大学で博士号を取り、最高の研究機関で修業した莫大な数の中国人が、続々と本国に戻っている。
 かつての日本にはなかったスケール感で。
 そしていま、量が質に転化しつつある」

 アメリカでもASEANでも、確かに中国は国家としては脅威であり、中国企業や中国人観光客のマナーは嫌悪の対象になっている。
 しかし、日本のように
 「中国が崩壊する」
 「中国経済が長期デフレに陥る」
と本気で信じているリーダーもインテリも、ほとんどいない。

 私は、11月のマニラで開催されたAPECの場で、国家首脳やグローバル企業トップら、多くの政治経済のリーダーたちと交流したが、
 誰一人として「中国バブル崩壊」などとは口にしていなかった。

■1年以内に米国を抜く可能性も

 私が応援している、スパコンの省電力化・小型化を研究され続きて来た日本人技術者兼経営者・斉藤元章さんが、2年連続で世界で最も省電力性能に優れたスパコンの開発に成功されたとの連絡を受けた時の話を思い出す。
 最新のデータによる国別ランキング(2015年11月16日発表「TOP500」)を見ると、
 各国のスパコン保有台数は次のようになっている。

1位:アメリカ=200台
2位:中国=109台
3位:日本=36台

斉藤さんはこう話していた。

 「中国の躍進は凄まじい。
 絶対性能のTOP500では、前回3位だった中国が日本を抜き去って2位になりました。
 そればかりか、保有台数でも半年前の37台からいきなり109台にジャンプアップしました。
 これは、米国の200台に対しても相当な数ですし、1年以内に米国を抜く可能性すらあります」

 すべての研究開発のエンジンとなるスパコンの数は、現在の国力を反映するといっても過言ではない。
 そして、次世代スパコンの性能が国力そのものである事実を認識し、そこに一番力を入れているのが中国であろう。
 このままいけば、人工知能が人類の知性の総和を超える「シンギュラリティ」に対して最も準備できているのが中国だともいえる。
 これはジョークでもなんでもない。
 秦の始皇帝がなしえなかった不老不死はもちろん、軍事も食糧もエネルギーも宇宙開発も全て、最も高性能のスパコンを持つ国が差配することになるかもしれないのだ。

 アメリカ、ソ連に続いて、有人宇宙飛行に成功したのが中国であることを忘れてはいけない。
 マット・デイモンが主演した大ヒット作で、日本では2月に公開されるハリウッド映画『オデッセイ』の中でも、NASAの失敗を救援するのは中国の宇宙開発技術であった。
 中国を馬鹿にしたり、やみくもに敵視したりする前に、われわれは、莫大な数の優秀な科学者が国家による巨大投資のもと、確実に量を質に転化し、先進国を超えるテクノロジーを持ちはじめた中国を、リスペクトしながら警戒すべきだろう。

 他国を馬鹿にしたり敵視したりすることが「愛国心」ではない。
 国を本気で想うのなら、まずは潜在的脅威の実態を冷静に深く分析することだ。
 そうした上で、国益にかなう建設的な付き合い方を考えるべきだと思う。



JB Press 2015.12.21(月) 瀬口 清之
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45574

李克強指数で中国経済を判断すると間違える理由

■1. 李克強指数とは

 李克強指数から判断すれば中国の成長率はもっと低いはずだという見方に対し、これまでもしばしばその誤りを指摘してきた。
 しかし、最近になっても、政府機関、有識者、メディア報道等において、李克強指数で中国経済を判断している例は枚挙にいとまがない。
 そこで改めて、この問題について論点を整理してみたい。

 李克強指数というのは、以前李克強総理が総理に就任する前に、中国の経済指標で信頼できるのは
 電力消費量、鉄道貨物輸送量、中長期の銀行貸し出し
の3つであると述べたことから、このような名前が付けられた。
結論から言えば、李克強指数を見て中国経済を判断できた時代は過ぎ去った。
 10年前であれば、ある程度意味のある指標だった。
 その後、中国経済の構造は大きく変化したため、今では李克強指数を見て判断すれば、確実に実体経済に比べて下方バイアスがかかる。
 したがって、中国経済を客観、中立的に分析する場合には李克強指数を用いるべきではない。
 以下ではその理由を説明する。

■2.中国経済のサービス化

 李克強指数に含まれる3つの指標のうち、
 電力消費量と鉄道貨物輸送量は製造業の生産動向に左右されやすい一方、
 サービス産業の動向は反映しにくい。
 製造業の生産拠点は高炉、造船所、石油化学コンビナート、自動車工場、半導体工場など電力多消費型である。
 サービス産業の生産拠点であるオフィスビル、商店、レストラン、病院、学校などに比べて電力消費量が桁違いに大きい。
 また、鉄道貨物は製造業の生産に必要な原材料や生産された製品を運ぶ手段であり、サービス業にはほとんど無縁である。
 このように、電力消費量と鉄道貨物輸送量は製造業の生産動向を判断するのに適した経済指標である。
 したがって、製造業の動向が中国経済の動きを代表していた時代には、李克強指数は中国経済を判断するうえである程度有益な指標だった。
 しかし、ここ数年、中国経済は急速な構造変化の時代に入っている。

 図1を見ると、2012年以降、中国のGDP(国内総生産)に占める製造業のウェイトが急速に低下する一方、サービス産業のウェイトが急上昇していることが分かる。
 習近平政権は「新常態」(=ニューノーマル)を経済政策運営の基本方針に掲げ、重化学工業を中心とする過剰設備の削減を進めている。
 このため、製造業の生産の伸びは大幅に低下した。
 製造業のウェイトが高かった2003~06年には工業生産が毎年16~17%も伸びていたが、足もとの伸び率は5~6%だ。
 一方、サービス産業と関係の深い小売総額を見ると、2003~06年は13~15%だったのに対して、今も10~11%と小幅の低下にとどまっている。
 このように製造業とサービス業の伸び率は完全に逆転し、その結果、GDPに占めるウェイトが図1のように急速に変化している。


図1 GDPに占める産業分野別ウェイト(資料:CEIC)

 習近平政権が堅持する「新常態」(=ニューノーマル)の政策運営方針の下、過剰設備の削減は少なくとも今後2~3年は続く一方、都市化の進展に伴うサービス産業の発展も続くと見られていることから、この構造変化は今後一段と顕著となる見通しである。
 このような構造変化をGDP成長率の寄与度の観点から見ると、図2にあるように、2012年以降、製造業の寄与度が急速に縮小する一方、サービス産業は寄与度を維持している。
 これは、中国経済の成長の牽引役がすでに製造業からサービス産業に移ったことを明確に示している。

■3.重化学工業の停滞と電力需要減少

 このように経済のサービス化の急速な進展を背景に、製造業と関係の深い李克強指数が実体経済の動向を適切に反映しなくなっている。
 それに加え、製造業の中でもとくに過剰設備問題が深刻な鉄鋼、アルミ、造船、石油化学、ガラスといった重化学工業分野の停滞が、李克強指数と実体経済の乖離に追い打ちをかけている。
 重化学工業は製造業の中でもとくに電力多消費型の産業であるため、この分野の停滞は、他の産業以上に電力消費量を減少させる影響が大きい。


図2 実質GDP成長率の産業分野別寄与度(資料:CEIC)

 さらに、中国の重化学工業は従来より電力の浪費が問題視されていたことから、近年省エネ努力を進めてきている。
 今でも日本企業に比べれば、さらなる省エネの余地は大きいが、以前の浪費レベルに比べれば大幅な改善が見られている。
 これも電力消費量を実体経済の伸びに比べて押し下げる要因となっている。

■4.鉄道貨物からトラック輸送へのシフト

 貨物輸送については、経済発展に伴って高速道路等の整備が進むと、トラック輸送の利便性・効率性が大幅に向上することから、鉄道輸送からトラック輸送へとシフトする(図3参照)。
 このため鉄道貨物輸送量は経済全体の成長速度に比べて伸び悩む。
 この現象は、かつて日本の高度経済成長期(1955~75年)においても同様に見られた(図3参照)。
 当時の日本では高い経済成長が続いていたにもかかわらず、鉄道貨物輸送量はほぼ横ばいで推移した一方、トラック輸送だけが高い伸びを示した。
 現在、中国でも同様の現象が起きていると見るべきである。

 中国でも高速道路の整備が急ピッチで進む中、貨物輸送の主役はトラック輸送である。
 とくに中国の鉄道貨物は、貨物を発送してから目的地に到着するまでの日数が何日かかるか分からないという問題も抱えていることから、トラック輸送を利用するニーズが強い。
 このため、李克強指数の鉄道貨物輸送量は実体経済の伸びから大きくマイナス方向に乖離した推移を辿っている。



図3 中国と日本の貨物輸送量(資料:CEIC)

 ■5.中国の経済統計に関する誤解

 以上の説明により、李克強指数で中国経済を判断すれば実体経済に比べて下方バイアスのかかった見方になることが明らかになったと思う。

 李克強指数の問題に加え、中国の経済統計に関してよく耳にするもう1つの誤解がある。
 それは、中国の経済統計は政府が都合のいいように操作しているので信用できないという誤解である。
 確かに中国の経済統計の作成方法は日米欧諸国と大きく異なる部分があるため、単純に比較することができない。

  たとえば、GDPの推計方法を見ても、日米欧諸国は支出法を採用しており、消費、設備投資、政府支出、輸出、輸入、在庫といったコンポーネント別に推計して合算している。
 これに対して、中国では生産法を主に採用しており、第1次産業(農林水産業)、第2次産業(製造業)、第3次産業(サービス産業)の産業分野別に推計して合算する。
 中国政府は支出法による推計結果も公表しているが、年1回である。

 また、各地方政府が各地域のGDP(GRPという方が適当)を推計しているが、地方の成長率の平均が国家全体のGDPを上回ることはよく指摘されている。
 地方政府の推計するGDP推計については、国家統計局が関与しておらず、その推計の精度も保証されていない。
 しかし、そうした問題点を含んでいることを十分理解したうえで、中国全体および各地方のGDPなどの経済指標を時系列で比較すれば、経済情勢を分析・判断することは可能である。
 また、中国は地域別に貧富の格差が非常に大きく、所得水準が高い北京市、上海市と極めて低い甘粛省、貴州省の農村を比較すれば、依然として数倍の格差が存在する。
 これほど生活水準が異なると、消費生活の中味が全く異なる。
 北京や上海では教育費、医療費、娯楽費、外食費などのウェイトが高いが、貧困地域ではそもそも高等教育機関、塾、高水準の医療機関、レジャー施設、中級以上のレストランなどがない。
 これほど生活水準が異なる地域が国内に併存している状況で、統一的に消費者物価などの経済データを計測するのは極めて難しいというのも中国独自の問題である。

 しかし、中国政府内でマクロ経済政策担当の人々はこの分析・判断が難しい経済を分析し、的確に経済政策を企画・運営している専門家である。
 彼らは国家統計局が公表する経済統計指標だけでは多様な中国経済の実情を理解するには不十分であることを知っているため、各地の実情を把握するためにしばしば中国各地に出張し、実体経済の実情を自分の目で見て分析・判断している。
 その分析の基本にはやはり国家統計局が公表している各種の経済統計を用いている。
 これは、彼らと1991年以来ずっとフランクに意見交換してきた筆者の経験から分かることである。
 もし彼らが経済分析に際して公表統計とは異なる統計を用いていれば、すぐに分かる。
 実際、彼らと中国経済について議論する際の判断材料となる経済指標はほとんどが国家統計局の公表統計である。

 もしこの統計が政府の都合のいいように操作されていれば、実体経済と経済指標の動きに乖離が生じる。
 そんな統計に基づいて経済分析を行えば、分析結果は不正確となり、それに基づく政策判断も間違える。
 それは経済政策運営にとって致命傷になりかねない。
 マクロ経済政策に携わる人間にとって、経済統計は最も重要な判断材料であり、それが信用できなければ仕事にならないのである。

中国経済統計は日米欧諸国の統計指標とは異なっているため、単純に比較することはできないが、総合的かつ時系列的に分析すれば、中国経済の実情を分析・判断することは十分可能である。



サーチナニュース 2015-12-20 06:34
http://biz.searchina.net/id/1597593?page=1

中国はハードランディング不可避との分析
「バブルは生じ、そしてはじける」

 中国がバブル経済をソフトランディングさせることができるかについては、世界中でさまざまな見解が示されているが、中国メディアの中金網はこのほど、
 世界最大規模の金融機関クレディスイスの「中国経済はハードランディングを避けられない」とする報告を紹介している。

 経済成長の過程でバブルは簡単に生じ、そしてはじける。
 これまでの人類の歴史上、バブルは何度も生まれ、そしてはじけてきた。
 重要なのは、
★.はじけたときにその状況をうまくコントロールできるかどうかで、
ソフトランディングさせられるのか、あるいはハードランディングになるかが分かれる
という点だ。
 中国経済のバブルについて、クレディスイスの報告は
 「状況をコントロールできない」と分析
している。

 記事は、
★.中国企業の銀行からの借入金総額は現在、約1兆2000億ドル(約145兆円)
にも達すると紹介。
 2009年の約3000億ドル(約37兆円)からずっと上昇し続けているわけだが、借入金額がこのような数字に膨れ上がっていることに対し、報告は
 「企業は経営をなんとか維持している状態」
だと述べている。

 経済成長率が10%程度のときはこうした債務は管理可能だ。
 しかし成長率が低くなれば「不良債権が急増する」事態を招き、最終的にはハードランディングとなる。
 では、現在の中国は経済成長率を「不良債権の急増を招かないレベル」にコントロールできるのだろうか
 
 15年夏の終わりごろから中国政府は金融および財政政策を矢継ぎ早に打ち出しているが、実体経済に対する効果は「非常に限定的」であり、民間部門の投資の弱さや銀行の貸し渋り傾向が見られると報告は述べている。
 つまり
★.中国政府が景気を刺激できないのであれば
 経済成長率はさらに低下し、中国企業の膨大な債務が一気に不良債権化する事態を招きハードランディングに突入する
というわけだ。

 中国経済がハードランディングするという分析はほかにもあるが、まだ回避可能とする分析もある。
 現在の経済成長率が維持できている間に産業の構造転換、つまり「安かろう悪かろう」体質を高品質製品を造り出せる体質へ、またサービス業の規模拡大を一層促進させることができればソフトランディングは可能とする見方だ。
 いま中国政府の力量が真に問われている。








_