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サーチナニュース 2015-12-31 14:30
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消費拡大に寄与する価格要因=関志雄
中国における消費の伸びは長い間GDPの伸びを下回っていたが、ここに来て、両者が逆転するようになった。
このことは、主に消費性向(所得に占める消費の割合)が低下傾向から上昇傾向に転じていることを反映している。
といった価格の変動が、消費性向を押し上げていると見
☆. GDP成長を上回る賃金上昇のペース、
☆. 食料品の非食料品に対する相対価格の上昇、
☆. 人民元高、
☆. 一次産品価格の低下、
☆. 株価の上昇、
☆. 実質金利の低下
といった価格の変動が、消費性向を押し上げていると見られる。
● GDP成長を上回る賃金上昇のペース
近年、労働力が過剰から不足に転じつつあることを背景に、賃金上昇率はGDP成長率(いずれも名目ベース)を上回るようになり、労働分配率(GDPに占める労働収入の割合)も2011年を底に上昇傾向に転じている。
一般的に、消費性向は所得水準と反比例し、高所得層ほど低く、低所得層ほど高くなる。
☆.所得格差が拡大すれば、所得がますます消費性向の低い高所得層に集中することになり、
全体の消費性向が抑えられる。
☆.逆に所得格差が縮小すれば、全体の消費性向は高まることになる。
労働者は、資本収入に恵まれている階層と比べて所得が低く、消費性向が高い。
☆.労働分配率の上昇は、所得格差の縮小を意味し、全体の消費性向の上昇を通じて、消費拡大につながっている。
● 食料品の非食料品に対する相対価格の上昇
2002年以来、食料品価格の上昇率が一貫して非食料品価格のそれを上回っており、今年の1‐11月には前者は前年比2.3%に達しているのに対して、後者は同1.0%にとどまっている(図1)。
食料品の非食料品に対する相対価格の上昇は、都市住民から農民への所得の移転を意味し、農村住民と都市住民間の所得格差の縮小を通じて、全体の消費性向を押し上げている。
実際、2015年1-9月の農村住民一人当たり可処分所得の伸びは前年比8.1%と、都市住民のそれ(同6.8%)を大きく上回っている。
これを反映して、農村住民の一人当たり消費支出の伸び(前年比9.3%)も、都市住民のそれ(同5.4%)を大幅に上回っており、農村部における小売売上の伸び率(前年比11.7%)も都市部(同10.3%)を上回っている。
[註]:図は添付されていない。
図1 非食料品を上回る食料品価格の伸び(図入りサイト参照)
● 人民元高
中国の主要貿易相手国の通貨に対する加重平均である人民元の実効為替レートは、2005年に管理変動制に移行してから上昇傾向を辿っている。
特に、ユーロと円といった主要通貨がドルに対して急落したことを受けて、この一年ほど上昇のペースが加速している。
元高に伴う輸出競争力の低下に歯止めをかけようと、政府は2015年8月11から13日にかけて人民元の対ドルレート(中間レート)を計4.7%切り下げたが、その後も、人民元の実効為替レートは、前年を大幅に上回る水準で推移している(図2)。
人民元高により、中国の輸出品が輸入品と比べて相対的に高くなり、これに伴う交易条件の改善は、中国の国民の実質所得を押し上げること通じて、消費の拡大につながっている。
[註]:図は添付されていない。
図2 人民元の実効為替レートの推移(図入りサイト参照)
● 一次産品価格の低下
中国は一次産品の供給を大きく海外からの輸入に頼っている。
世界経済が低迷する中で、石油などの一次産品価格は急落しており、このことは、人民元高と同様に中国の交易条件の改善を通じて、中国国民の実質所得、ひいては消費を押し上げている。
● 株価の上昇
株価の変動は、「資産効果」を通じて消費に影響を及ぼす。
一時急上昇した上海総合指数は2015年6月12日の5166ポイントをピークに急落したが、8月26日の2927ポイントを底に持ち直しつつあり、12月中旬現在の上海総合指数は一年前と比べて依然として2割ほど高くなっている(図3)。
[註]:図は添付されていない。
図3 上海総合指数(前年比)の推移(図入りサイト参照)
● 実質金利の低下
経済成長の鈍化に歯止めをかけるために、中国は金融緩和を行ってきた。
その一環として一年満期の基準預金金利を2014年11月から6回にわたって利下げし、3.0%から1.5%に引き下げられた。
同じ時期にインフレ率も下がっているが、低下幅が預金金利より小さいため、実質金利(名目金利‐インフレ率)は直近のピーク時(2015年1月)の1.95%から2015年11月には0%まで低下した。
実質金利の低下は、未来の消費のために貯蓄するよりも、現在の消費を増やした方が有利であることを意味する。
これらの価格要因に加え、ネット通販の普及なども消費拡大に寄与している。
経済成長が減速する中で、消費が比較的に堅調に推移していることは、景気の下支えとなっている。
[註]:図は添付されていない。
(執筆者:関志雄 経済産業研究所 コンサルティングフェロー、野村資本市場研究所 シニアフェロー 編集担当:水野陽子)
(出典:独立行政法人経済産業研究所「中国経済新論」)
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