『
BBC ニュース 2015.12.22 視聴時間 01:16
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45615
中国ネット規制 習体制下でさらに厳しく
「万里のファイアウオール」と呼ばれる中国のネット検閲システム。
中国には6億5000万人に上るといわれるネット利用者がおり、アリババなど世界有数のネット企業が本拠地を置くが、一方で、グーグルなど主要サービスへのアクセスが許されない国でもある。
インターネット隆盛の背景にあるオープンアクセスとは相容れないものの、中国政府はどの国も独自の規制ができるべきだと主張している。
同国のネット規制を約1分で解説する。
』
『
ダイヤモンドオンライン 2015年12月22日 加藤嘉一
http://diamond.jp/articles/-/83643
米国への対抗心と主権への固執に染まる
習近平のサイバー戦略
■第二回世界インターネット大会に思う
米国と対峙する習近平のサイバー戦略
「私はこれからの米中関係で、両国の国益が真正面からぶつかる分野は3つあると思っている。
逆に言えば、この3つの領域以外は両国間の権益を融合し、協力体制を築き上げることが十分可能だ。
その3つとは、軍事、通貨、そしてサイバーだ」
2015年9月下旬、習近平国家主席による米国公式訪問に同行していた政府関係者がワシントンD.Cで私にこう語っていたのを、現在思い出している。
私にそれを思い出させたのは、12月16~18日、中華人民共和国が自らイニシアティブを取るかたちで開催した第二回世界インターネット大会(World Internet Conference)にまつわる光景、とりわけそこに姿を現し、中国国内の政治会議を彷彿とさせるような“重要談話”を発表した習近平の眼差しであり、仕草だった。
第一回同様、会議は上海市の南に位置する浙江省の鳥鎮で開催された。
2002年~2007年、浙江省共産党委員会書記を歴任した習近平は、談話の冒頭で
「私はかつて浙江省で長年勤務をし、何度もここ鳥鎮にやって来た。
今日再び赴くことになったが、良く知るこの場所を懐かしく想うと同時に、その変化と発展に新鮮な気持ちを抱いてもいる」
と語った。
「世界インターネット大会は習近平主席が国家指導者に就任した後の2014年から始まりました。
開催地が、習主席がかつて勤務した浙江省に設定されたことは偶然ではありません。
それは、インターネット、言い換えればサイバー世界をテーマにしたこの会議が、習近平時代の産物であることを物語っています」
同会議の主催機関の1つである中華人民共和国国家インターネット情報弁公室のスタッフが、北京で動向をウォッチしていた私にこう述べた。
そしていま私は、ワシントンD.Cで太平洋の向こう側をイメージしながら、数ヵ月前にこの地で繰り広げられた米中首脳外交を振り返りながら(連載第61回「米国公式訪問で引き出された習近平政治の意外な素顔」参照)、本稿を執筆している。
冒頭の政府関係者の話にもにじみ出ているように、サイバーという新しい分野は、習近平時代の中国が新たな発展空間と戦略的利益を追求していく上で核心的に重大であり、かつそのプロセスは超大国・米国のそれらと真正面から衝突する潜在性を秘めている。
本稿では、習近平自らが古巣でイニシアティブを取った第二回世界インターネット大会をレビューしつつ、その角度から中国共産党政治が位置する1つの現在地を浮き彫りにすることをもって、中国民主化研究に関する2015年最後の考察としたい。
“重要談話”において、習近平は数字を並べつつ、インターネットという分野・空間を国家戦略の境地にまで押し上げた。
「中国には現在6.7億のネット人口がいて、413万のウェブサイトがある。
インターネットは経済社会の発展と人民の生活に深く入り込んでいる」
「第十三次五カ年計画を実施する間、中国は
インターネット強国戦略、
国家ビッグデータ戦略、
“インターネット+”の行動計画
を大々的に実施し、積極的で前向きなネット文化を浸透させ、ネット経済の空間を開拓し、インターネットと経済社会の融合的な発展を促進するつもりである」
第十三次五カ年計画とは2016~2020年の期間における共産党のトップダウン型発展計画であるが、習近平は
「中国は現在“ブロードバンド中国”戦略を実施しており、
2020年までには行政単位における全ての村を基本的にカバーし、
ネットインフラを“最後の一キロ”まで浸透させ、
より多くの人にインターネットを使ってもらえるようにする」
と主張し、同計画期間中におけるインターネット戦略を具体的に表明した。
本連載でも随所で指摘してきたように、無産・工農階級といった社会における“弱者層”へ寄り添うことで、共産党政権の正統性を確保していきたい習近平の“群衆路線”が、ここにも体現されている。
■習近平の“重要談話”にも表れる、
政治と経済のアンバランスな乖離感
今回の第二回大会では、前回の約1200人に増して、120の国家・地域、20位上の国際組織から約2000人の業界関係者(政府官僚、企業家、研究者、技術者、民間団体など)が参加した。
ロシアのメドベージェフ首相、
世界経済フォーラムのシュワブ会長、
米国企業からはマイクロソフト、アップル、IBM、アマゾン、インテル、ヤフー、リンクトイン、フェイスブックなど、
中国企業からは百度、アリババ、テンセント、新浪、JD京東、シャオミー、捜狐、レノボ
などの責任者が出席した。
これら人的陣営を眺めながら、私は、日中関係を修飾する1つの概念になったこともある「政冷経熱」という言葉を想起した。
海外の政府首脳ではロシアをはじめ、パキスタン、カザフスタン、キリギスタン、タジキスタンからの指導者が出席したが、いわゆる西側先進国の首脳・指導者は誰も出席しなかった。
一方の経済界では、上記にあるように、西側世界の技術力や価値観を代表する企業家たちが参加している。
政治と経済がアンバランスに乖離したこの「政冷経熱」構造の背景には、世界インターネット大会の主催者である中国が実行してきた、社会主義市場経済に対する国際社会の立場・見方が深く影響しているように私には思える。
(程度や水準はどうあれ)市場をベースに進行させてきた経済面と、共産党一党支配・社会主義イデオロギーに代表されている政治面に対する立場・見方もアンバランスに乖離しているのである。
このアンバランス感は、習近平の“重要談話”に色濃く表れるアンビバレント感につながっていく。
会議が閉幕した18日に発表された《鳥鎮イニシアティブ》は、中華人民共和国の「インターネット発展空間」と「サイバー安全保障」に対する、まさに両極端とも言える立場・見方を如実に反映している。
「インターネットは人類文明進歩の重要な成果として、イノベーションを駆動し、経済社会の発展を促進させ、全人類に恩恵を与える重要な力量になっている。
インターネットは世界を“地球村”に仕立て上げ、国際社会が日に日に相互依頼を形成する運命共同体にした」
「同時に、インターネットの迅速な発展は国家の主権、安全、持続可能な発展に新たな挑戦を投げかけている。
積極的かつ穏当にこの挑戦に対処することは国際社会共通の責任である」
■インターネット戦略に対しても応用される“主権論”“国情論”
インターネットの台頭を千載一遇のチャンスと位置づける一方で、それを国家主権と安全保障への脅威とも見なす認識は、習近平談話が「グローバルインターネットガバナンス体系の変革」として堅持するべきだと挙げている原則の第一条「インターネット主権を尊重すること」と赤裸々につながっている。
「我々は各国がインターネットをめぐる発展方式・管理モデル・公共政策を自主的に選択し、平等に国際インターネット空間ガバナンスに参加する権利を尊重すべきである。
そして、インターネット覇権を握ったり、他国の内政に干渉したりすべきではない。
他国の国家安全に脅威を与えるネット活動を放任・支持するべきではない」
各国にはそれぞれの進路があり、他国はそれに干渉すべきではないというスタンスは、今年9月下旬、習近平米国公式訪問期間中、ホワイトハウスで開かれた米中首脳合同記者会見において、オバマ大統領の隣で習近平が語った次のセンテンスにも共通している。
「民主主義と人権は人類共同の追求であるが、と同時に、各国人民が自主的に本国の発展の道を選択する権利を尊重しなければならない」
政治体制や発展モデル同様、インターネット戦略に対しても習近平は“主権論”“国情論”を応用し、米国をはじめとする西側諸国が、自らの制度や価値観を国際社会全般、特に新興国や途上国に拡大・浸透させる動きを牽制している。
その上で、中国共産党が国内で実践してきた独自の“価値観”を以下のセンテンスに含まれる4つのキーワードを通じて表明している。
■「秩序」は「自由」よりも、
「安全」は「発展」よりも重要視される
「インターネット空間は現実社会と同様で、自由を提唱しつつも秩序を保持しなければならない。
自由は秩序の目的であり、秩序は自由の保障である」
「サイバーセキュリティを保障し、秩序ある発展を促さなければならない。
安全と発展は一体の両翼であり、駆動の両輪である。
安全は発展の保障であり、発展は安全の目的である」
この2つのセンテンスから容易に理解できるように、中国共産党が支配する現実社会においては、「秩序」は「自由」よりも、「安全」は「発展」よりも重要かつ尊い産物として認識され、処理される。
秩序を乱す自由はあってはならず、安全を前提としない発展は許されないのである。
政治的安定・秩序が経済・社会の発展や報道・言論の自由を凌駕するのが中国の国内事情であり、中国共産党政治の揺るがないロジックなのだ。
それでは、中国共産党が自らの政治的立場から主観的に見て「あってはならないもの」「許されないもの」だと判断した組織や個人が出現したとしたら、何が起こるだろうか。
状況や程度にもよるが、それらのプレーヤーは何らかの形で中国の“主権”がおよぶ空間や領域から排除されるであろう。
習近平談話にある次のセンテンスを見てみよう。
「中国が開放している大きな門は永遠に閉まるものではない。
外資を利用する政策も変わるものではない。
外国からの投資企業の合法的権益を保障する政策は変わるものではない。
中国で投資をする各国企業に対してより良いサービスを提供していく政策も変わるものではない。
中国の法律を守りさえすれば、我々は各国の企業や創業者が中国で投資し、事業を起こすことを温かく歓迎する用意がある」
ここで言う“法律”とは、まさに前出の「秩序>自由」「安全>発展」のロジックの前提で解釈され、行使されるものである。
たとえば、いま現在、米国企業のなかではフェイスブック、ユーチューブ、ツイッター、グーグル、ニューヨーク・タイムズなどのウェブサイトが中国国内からアクセスできないようになっている。
中国共産党が、これらの企業が日々の事業を通じて体現し、普及させようとする“価値観”は、自身が掲げる“法律”とは合致しないと主観的、かつ政治的に認識しているからに他ならない。
そして、習近平が共産党総書記に就任してからの約3年間を振り返る限り、
中国当局による、“価値観”の合わない外国機構や個人に対する締め付けや締め出しはますます厳しくなっている。
少なくとも現状からすれば、このような状況が“改善”する兆しはなかなか見当たらない。
私個人的には、前回の習近平訪米期間中を含め、米中両国の地で共産党指導部と“友好的”な関係を築こうとし、中国側からも一定程度以上の厚遇と重視を得ているように見えるマーク・ザッカーバーグ率いるフェイスブックが、中国国内でいつ“解禁”されるかに注目してはいるが。
中国共産党の統治観念や政治イデオロギーが如実に反映されている上記のインターネット強国戦略は、
米国をはじめとする西側世界のインターネット空間に対する政策や立場と相容れない可能性が高い
と同時に、中国はこの分野においても、いや、領域としては比較的斬新で、世界的に見てもいまだ明確で浸透力や信頼性のあるルールや規範が定まっていないインターネット・サイバーセキュリティという分野だからこそ、
米国に対するライバル・対抗心をむき出しにしているように思える。
習近平が「グローバルインターネットガバナンス体系の変革」として堅持すべきだとする原則の第二条「平和と安全を守ること」には、次のような文言が記されている。
「商業機密に対する窃盗や政府のウェブサイトへのハッキングはすべて関連する法律と国際公約に基づき、断固として打撃を与えられなければならない。
サイバーセキュリティにダブルスタンダードがあってはならない。
1つの国家が安全で他の国家が不安全、あるいは一部分の国家が安全でもう一部分の国家が不安全という状況が起こってはならない。
また、他国の安全を犠牲にする形で自国の絶対的安全を追求するようなことがあってはもっとならない」
■ライバル心とナショナリズムに見る内向きな中国のサイバー戦略
私から見て、このパラグラフには、中国政府の米国政府への不満がにじみ出ている。
昨今の仕組みにおいては、既存の大国である米国が得をし、後を追っかける立場にある中国が損をするようになっている、そして「平和・安全・開放・協力的なインターネット空間を共同で構築し、マルチ・民主・透明性のあるグローバルインターネットガバナンス体系を建設するために」(《鳥鎮イニシアティブ》)、一部先進国は一部後発国の意見や立場にも耳を貸し、それらを取り入れていかなければならないと、主張しているように聞こえるのである。
9月の習近平訪米時においても、サイバーセキュリティ問題は米中間で最もセンシティブな交渉分野だった。
結果的に「商業的利益を目的とした知的財産の窃盗をしない」と合意にこぎつけたが、その直前、ワシントンD.Cでは米国政府が習近平訪米期間中、中国政府、あるいは関連企業に対して制裁措置を発動する可能性すら囁かれていたほどだ。
インターネット戦略やサイバーセキュリティ空間をめぐる中国の米国に対するライバル心、そしてそれと隣り合わせにあるナショナリズムは、中国を内向きで膨張的なプレーヤーへと仕立て上げているように私には見える。
この過程において、中国がますます“独自の道”を歩むことに固執し、政治制度や価値観の分野で米国をはじめとする西側先進国との共存を拒むようになっていくことは、本連載が核心的テーマとする“中国民主化”という観点から見ても、少なからず懸念される。
』
『
ロイター 2015年 12月 24日 14:51 JST Anja Manuel
http://jp.reuters.com/article/column-china-idJPKBN0U70A220151224?sp=true
コラム:大国意識強める中国、西側に近づく立ち振る舞い
[23日 ロイター] -
中国政府は先に浙江省烏鎮で開かれた「世界インターネット大会」で参加者に良いイメージを残そうと心を砕いた。
宿泊施設は豪華で、大量のスタッフが投入され、参加者ごとに無料で中国製スマートフォンが配られた。
しかもこのスマホにはフェイスブックとツィッターを開くソフトが入っていた(ただし両サイトとも中国国内ではアクセスが禁止されている)。
中国は自らが国際的な課題に精通したリーダーで、尊敬に値する国だということを示そうと努力を続けており、烏鎮での取り組みはいずれもその一環だ。
中国は国境を越えた諸問題に取り組む新しい枠組みである「グローバルガバナンス」でより中心的な役割を担いたい意向だ。
このところ経済面はぎくしゃくしているが、大国だと意識し、そのように行動し始めている。
過去10年間、米国の政策当局者は中国に積極的に働きかけ、世界の「運営理事会」に加わるよう促してきた。
暗黙のうちに期待したのは、中国がそうした寛容なシグナルを受けて、欧米の確立した国際的規範をそのまま受け入れることだった。
これは虫のいい考えだ。
中国はその新たな力にふさわしく、世界のガバナンスを自らの必要に合った形に変えようとするだろう。
米政府がインターネット上の自由やサイバーセキュリティーなどあらゆる課題をめぐり中国政府と話し合いを続けるべき理由はそこにある。
烏鎮の世界インターネット大会に楽観的な見通しが入り込む余地はあまりなかった。
習近平国家主席は、インターネットの自由には必ず秩序が伴うと明言し、海外の政府や企業はネットワークにおける中国の主権を尊重すべきだと述べた。
つまり習政権が大幅に強化しているネットの検閲を緩めるつもりはないということだ。
習国家主席は、中国はインターネットを使った商業的なスパイ行為などあらゆるサイバー犯罪に反対すると強調したが、最近の中国による米企業のハッキングは目に余る。
米中は密かにこの問題で話し合いを行っているが、進展は乏しい。
米政府はこうした問題で中国の主張を唯々諾々と受け入れるべきではない。
密度の濃い、秘密裏の政府間交渉を通じて意見の相違に対処する必要がある。
米政府は見解の相違を直視する一方で、中国が今回の世界インターネット大会でみせたような国際的な枠組みに加わろうとする意欲を温かく迎えるべきだ。
中国がこのところ取り組みを強めている国際的な課題はインターネットガバナンスだけではない。
中国政府は最近、数十年にわたる沈黙を破り、国連安全保理で方針を大きく転換。
分担金を約3倍に引き上げ、国連平和維持活動(PKO)への協力も強化した。
中国の軍事活動には米政府にとって不快な部分があるとはいえ、こうした動きの方向性自体は正しい。
中国は気候変動問題でも前向きな姿勢を示している。
昨年12月には米国と歴史的な合意を結び、これが先の温暖化対策の新しい枠組み「パリ協定」採択につながった。
世界インターネット大会からは中国がインターネットガバナンスの分野でも同じような狙いを持っていることが読み取れる。
西側諸国は慎重ながらもこうした姿勢を歓迎すべきだ。
米政府は中国の国内での検閲、米国の政府や企業を標的としたハッキングには強力に異を唱え続けるだろう。
しかしネット分野には期待もある。中国とロシアはこの数年、米国が主導する「マルチステークホルダー方式(企業、非営利組織、個人、政府などの声を集約するガバナンス)に反対してきた。
また両国はネットワークを分断し、情報伝達を難しくする意向をちらつかせてもいた。
ところが先の世界インターネット大会で習国家主席は、インターネットガバナンスには政府や国際機関、ネット企業、技術関連企業、非政府機関、個人など複数の当事者が参加すべきだと述べ、この問題で従来よりも大幅に西側に歩み寄った。
もちろん水面下ではなお意見に大きな隔たりがある。
ただ、中国が企業や非政府組織などがインターネットガバナンスで役割を担うべきだと認めたことは、その立ち位置が徐々に西側に近づいていることを示している。
外交政策アナリストやジャーナリストの多くは、中国政府が世界インターネット大会で示した提案に懐疑的だった。
西側の政府高官が出席しなかったことを嬉々として指摘する声もある。
しかしパキスタン、ロシア、中央アジア諸国など中国の隣国の高官は参加しており、こうした批判は近視眼的だ。
もちろん米政府は、中国が手を加えずに今の世界に対する見方を受け入れると想定すべきではない。
とはいえ、中国など新興勢力については、たとえ主張がぶつかることが多々あるとしても、大きな枠組みの外へ追いやるのではなく、その中に留め置く方が望ましい。
*筆者は2005─07年に米国務省でパキスタン、アフガニスタン、インド政策を担当。
*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
』
_