中国のアジアインフラ投資銀行(AIIB)資金の
「最初の援助先はどこ?」
と噂されるなか、対するもう一方のアジア開発銀行は、
「中国の汚染対策に3億ドルを拠出」
することを決めたという。
何とも嫌味というか、これでは中国のメンツ丸つぶれ
である。
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年12月11日(金) 19時30分
http://www.recordchina.co.jp/a124773.html
AIIB設立当初、資金はどこへ投じられるのか?―中国メディア
2015年12月8日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)準備チームの陳歓(チェン・ホワン)副代表はこのほど、
「AIIBは今月末までに規定で定められた開業に必要な手続きを終えるとみられ、開業式典は来年1月中旬に行われる予定だ」
と述べた。
人民日報海外版が伝えた。
AIIBは理事会と董事会を設置する計画で、第1回董事会会議も予定されている。
市場関係者は、
「AIIBの開業が間近になったことは、インフラ改善を急ぐ国にとっては間違いなく朗報だ。
将来的には、AIIBと既存のその他の開発性金融機関の良い相互作用が、国際的経済協力の見どころとなるだろう」
との見方を示す。
中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が2013年10月にAIIBの設立を提唱してから現在までに、世界5大陸の57カ国が創設メンバーとなった。
AIIB設立協定では、署名国のうち少なくとも10カ国で承認され、署名国の初期出資額が資本金総額の50%を上回れば、業務開始を確保できると規定している。
AIIBは開業初期、伝統的なインフラ分野に軸足を置き、参加国の相互連結を促進し、経済成長と雇用の増加実現に向け努力する。
具体的には、初期のプロジェクトは
▽:エネルギー
▽:交通
▽:都市発展
▽:農村発展
▽:物流
――の5つの分野に重点を置く。
将来的にはその他の分野にまでプロジェクトを広げていく計画だ。
☆:教育・衛生など、社会発展にかかわるインフラ建設
について、陳歓副代表は、
「これらの分野の経済的効果と社会的効果は大きい
。AIIBも将来的にはこれらの分野にかかわっていくことになるだろう」
としている。
(提供/人民網日本語版・翻訳/SN・編集/武藤)
』
『
BBC News 12月11日(金)16時16分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151211-35068544-bbc-int
アジア開発銀行、中国のスモッグ対策に3億ドル借款
アジア開発銀行(ADB)は10日、中国・北京と周辺の大気汚染対策に3億ドル(約370億円)の借款を提供すると発表した。
北京とその周辺の大気の状態があまりに深刻な状態に達したため
「健康と持続可能な成長を脅かしている」
と説明している。
発表によると、借款は北京とその周辺の河北省や天津市を対象に、石炭使用を減らし再生可能エネルギーへの転換を促すのがねらいだ。
中国は世界最大の二酸化炭素排出国。
北京市、河北省、天津市からなる首都周辺地域は、人口1億人以上を抱え、中国国内総生産の1割を生み出している。
アジア開発銀行で都市開発を担当する石井暁氏は、大気汚染の状態があまりに深刻な状態に達したため首都周辺の健康と持続可能な成長を脅かしていると警告。
「(ADBの)支援によって二酸化炭素排出量を削減し、環境規制の枠組みや環境監視・取り締まり能力の強化につながる」、
「大気状態の改善は、この地域内外の経済と人々の健康改善に貢献する」
と意義を説明している。
ADBによると、同時にドイツの復興金融公庫開発銀行も協調融資1億5000万ユーロ(約200億円)を行う予定となっている。
北京では7日夜から10日にかけて、大気の汚染状況について初の最高レベルの「赤色警報」が出されたばかり。
8日朝から北京の学校は休校となり、工事現場や一部の工場は休業、自動車の運行はナンバープレートが奇数か偶数かで1日おきに制限された。
石炭を主燃料とする産業、自動車、暖房などが排出する二酸化炭素と建築現場の粉塵が合わさり、危険なスモッグを作り出す。
「赤色警報」の対策措置が始まった現地時間8日午前7時(日本時間同8時)の時点で、北京の米国大使館が測定したところ、微小粒子状物質PM2.5の濃度は1立方メートル当たり291マイクログラムだった。
午前11時の時点では同250マイクログラムでこれでも「非常に健康に悪い」とされる水準。
北京近郊では、この数倍もの数値が測定された場所もあるという。
世界保健機関(WHO)が推奨する上限は、同25マイクログラム。
中国は再生可能エネルギーにさかんに投資しているが、いまだに燃料の6割を石炭に依存している。
(英語記事 China to receive $300m loan to combat pollution levels)
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『
レコードチャイナ 配信日時:2015年12月12日(土) 6時28分
http://www.recordchina.co.jp/a124968.html
アジア開発銀行が中国に360億円融資、
大気汚染改善に支援―中国紙
2015年12月11日、環球時報は記事
「アジア開発銀行が中国に3億ドルを融資、北京の大気汚染改善を支援」
を掲載した。
英紙フィナンシャルタイムズは10日、アジア開発銀行(ADB)が3億ドル(約362億円)の対中国融資を決定したと報じた。
河北省の石炭消費量削減に関するプロジェクトに投じられる。
先日来、北京市では深刻な大気汚染が観測されているが、北京を取り巻く河北省が主要な汚染源となっている。
同省の経済は重工業主体で、中国の10大汚染都市のうち7都市が集中するなど深刻な状況だ。
中国が国際金融機関の融資を得て環境改善を実施するのは異例の事態。
深刻な大気汚染に直面するなか、オープンな政策で対応を進める中国の姿勢が透けて見える。
』
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東洋経済オンライン 2015年12月21日 西村 豪太 :東洋経済 記者
http://toyokeizai.net/articles/-/97365
米中経済戦争、これから何が起きるのか
経済覇権をめぐる"AIIB対TPP"の行方
2016年に日本人が最も意識すべきなのは、AIIB(アジアインフラ投資銀行)対TPP(環太平洋経済連携協定)という対立軸だ。
あえて言い切ってしまうのは、これを補助線にすると日本をとりまく国際情勢がくっきり見えてくるからだ。
中東から世界各地へ広がるテロや欧州情勢の混迷など、2016年の世界は不安定に満ちている。
根源には米国や欧州など先進国の政治力・経済力の相対的な低下と、新興国の台頭がある。
その先頭に立つのが中国だ。
同国のGDP(国内総生産)は5年前に日本を抜き、いまや日本の2倍を超える。
■中国の影響力が拡大
2015年には、中国の影響力拡大を実感させるニュースが続いた。
3月のAIIBへの英国の電撃的な参加表明に始まり、
6月から8月にかけて中国の株価急落が世界を揺るがした「中国ショック」、
9月の抗日戦争勝利70周年記念軍事パレード、
10月の南シナ海での米中対立、
11月のIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引き出し権)構成通貨への人民元採用
など、大きなイベントが目白押しだ。
どの話題にも、国内の構造改革を進めると同時に国際的地位の向上を求める中国の動きがからんでいる。
アジア太平洋はこれからの世界経済の成長センターだ。
この地域のルールの設定権を握ることは、21世紀のリーダーシップを目指す国にとっては必須の課題である。
そこに立ちはだかるのが米国である。
米中はいま、経済力だけでなく軍事力まで動員してその争奪戦をしているのだ。
中国が仕掛けるAIIBと、米国主導のTPPがその象徴である。
AIIBとTPP はまったく別分野のものである。
前者はアジアの新興国がインフラを建設する際の資金を融資するための金融機関だ。
後者は日米を中心に太平洋を取り巻く12カ国が参加した自由貿易協定である。
目的も違えばあり方も違うが、その背景には先進国が主導してきた既存の国際秩序を新興国が変えようとする動きと、それに抵抗する先進国のせめぎあいがある。
中国がAIIBを設立した理由のひとつに、2010年に中国のIMFでの出資比率向上が合意されたにもかかわらず、米国議会の反対で実現しなかったという事情がある。
TPPは、アジア太平洋において自由化度の高い貿易圏を作ろうという試みだ。
単純化すれば、参加国は米国のスタンダードに合わせて自国の市場を開放することを求められる。
■TPPはやっかいな存在
中国にとって、世界のGDPの4割を占める巨大な経済圏であるTPPはきわめてやっかいな存在だ。
そこから排除されることは避けたいが、参加するためには知的財産権の保護や国有企業の特権廃止など米国が設けた高いハードルを越えなければならない。
米国、また日本にとってTPPの裏テーマは中国市場の開放だ。
中国のビジネスは規模こそ巨大でも儲からないことが多い。
政府が自国企業に有利な仕組みをつくっているからだが、TPPに中国を取り込むことでルールを変えさせれば外資のビジネスチャンスは大きく広がる。
TPPによる包囲圧力を警戒した中国が、対抗策として打ち出したのが「一帯一路」構想だ。
「一帯」は中国から欧州まで陸上でユーラシアを横断する「シルクロード経済帯」。
「一路」は中国から南シナ海、インド洋などを抜けて地中海にいたる「21世紀海上シルクロード」をさす。
AIIBはこれらの地域でのインフラ建設を金融面で支えるもので、いってみればパーツのひとつにすぎない。
中国政府の資料では一帯一路の沿線には中国を含めて65カ国があり、総人口は世界の6割にあたる44億人。
GDP総額は21兆㌦で世界の3割を占めるという。
「一帯一路」には全体を縛るルールは何もなく、
中国と周辺国との二国間関係の束でしかない。
中国は周辺国との「ウィン・ウィン」関係を強調するが、
国力で圧倒的に勝る中国が決定権を握っているのは明らかだ。
それを予感させるような動きもある。
中国は周辺国や米国の反対を押し切って南シナ海の人工島造成を続けている。
中国による南シナ海の支配が確立されれば、米軍はインド洋以西へのアクセスが難しくなる。
そうなったとき、中国の空母は一帯一路沿線の諸国に圧力をかけるための切り札になるだろう。
中国が「一帯一路」建設を進める理由は、
①:TPPを含めた米国のアジア太平洋戦略への対抗、
②:国有企業が抱える膨大な過剰生産能力の解消、
③:世界最大の外貨準備の運用改善、
という3つに集約できる。
中国の総人口に対する生産年齢人口(15歳から65歳)の比率は10年にピークをつけ、低下を始めている。
働き手の数が減少し、養われる側が増えることで、経済成長の潜在力は落ち始めた。
投資によって経済成長を支えるこれまでの仕組みは維持できない。
■行き先は海外しかない
2012年に共産党トップである総書記の座を胡錦涛氏から引き継いだ習近平氏は「新常態(ニューノーマル)」という概念を打ち出して、中国の高成長の終わりを宣言した。
そこであふれ出す生産能力や溜め込んだ膨大な外貨をどこに振り向ければいいのか。
行き先は、海外にしかない。
一帯一路はそのはけ口として用意されたのだ。
欧州諸国、とくに英国はこれをビジネスチャンスとみた。
米国の国際政治学者、イアン・ブレマー氏は、米国の制止を振り切って英国がAIIBに参加した背景について、自国のインフラを整備する資金がない英国が中国を頼ったと指摘。
「米英の特別な関係がどこかに消えてしまい、それが英中関係に変わろうとしている」
と話している。
そのことに米国もショックを受け、米国の議会対策に足をとられてなかなか前進しなかったTPP交渉が一気に動き出したという経緯がある。
米国が仕掛けたTPPが中国に一帯一路やAIIB構想という対抗策を必要とさせ、またそれがTPP交渉の加速をもたらす。
アジア太平洋の新たな秩序をめぐって、そうしたダイナミックな相互作用がおきているのだ。
最近の大きな変化は、TPPの大筋合意だ。
中国にとってはTPPが成立しないこと、もしくは日本がTPP交渉から脱落してその規模が縮小するのがいちばん望ましかっただろう。
これを受けて、中国も微妙にスタンスを変えている。
AIIBの初代総裁に内定している金立群氏(元中国財政省次官)は15年10月に米国での講演で「中国はTPP加入に興味を持っています」と話した。
さらに金氏は
「ある人から、面白いことを聞かれました。
『なぜ米国がTPPから中国を排除しているのに、あなたは米国のAIIB加入を歓迎するのですか』
と。
答えは簡単です。
われわれはTPPより寛大で包括的だからです」
とジョークを交えて語った。
TPPの大筋合意後のオバマ大統領の
「中国のような国に世界経済のルールを書かせることはできません」
というコメントに対して一矢報いたものとみられる。
■中国はTPPへ入るのか
中国は2014年の前半まではTPPへの興味を示していたが、ある時期からそうした声が聞かれなくなった。
大筋合意を受けて再び国内での議論が活発化し始めたのだろう。
2001年のWTO(世界貿易機関)加盟によって経済改革が大きく進んだことの再演を狙う勢力が根強くいるのだ。
米国も中国も、最終的にはアジア太平洋全体がひとつの自由貿易圏になるFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を通商戦略のゴールにおいている。
そのベースをTPPになるか一帯一路になるかの争いを、あらゆる手段で続けているのである。
中国は通商交渉での巻き返しを図る。
11月1日には、停滞気味だった日中韓FTAの交渉を加速することで日韓の首脳と一致した。
中国は日中韓とASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国に豪州、ニュージーランド、インドを加えた計16カ国が参加するRCEP(東アジア包括的経済連携協定)をTPPの対抗構想としたいと考えており、その交渉にも力を入れ始めた。
アジア太平洋で米国抜きの枠組みをつくろうとしているのだ。
TPPで中国を包囲して圧力をかけるのが米国の戦略だが、それだけではなく既存の秩序に中国を招き入れるための動きもしている。
12月17日に米国議会が、5年にわたって拒んできた中国のIMFへの出資比率引き上げを容認したのはそのひとつだ。
TPPの枠組みでは、先に入った国が新規加盟を希望する国への拒否権を持っている。
日本は、中国に対して有力なカードを握っているわけだ。
米中関係のダイナミズムを認識すると同時に、このゲームに主体性を持って臨むことが日本には求められている。
だからこそ、AIIB対TPPという枠組みで世界を把握することの意味は大きいのだ。
』
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