「2012年」は中国の分岐点であった。
この年の秋に全土で反日デモの嵐が吹き荒れた。
官製デモであったために、その威力は凄まじかった。
『輝ける中国の栄光』
を当局はこの反日のイベントに賭けたといえる。
だがしかし、この反日デモが翌年行われることはなかった。
「反日デモ1周年記念」
はありえなかった。
なぜなら、このデモの3ケ月ほどあとの年末にスモッグが北京を覆い、
「輝ける中国」は灰色の下に沈んでしまった
からだ。
人為の行動を自然環境の脅威が押し沈めてしまった。
2012年は「輝ける中国」のピークから「灰色の中国」への転換点でもあった。
それからちょうど3年。
「灰色の中国」はさらにその濃さをまして「暗色の中国」へと進んでしまった。
この3年の間、当局は打つべき手を打たなかった。
無策のまま過ごしてきた。
天気が吹き払ってくれると思っていたのかもしれない。
だが、自然はウソをつかない。
3年後の北京は地獄模様になってしまった。
ここには希望の光りが届いてこない。
北京の生態系が崩れようとしている。
崩壊する生態系と、それを食い止めようとする人間技術の追いかけっこが始まろうとしている。
勝利するのはどちらだかわからない。
『
サーチナニュース 2015-12-15 08:35
http://news.searchina.net/id/1597038?page=1
大気汚染で経済的負担を感じる北京市民、
健康リスクだけでなく経済へのリスクも
中国北京市で深刻な大気汚染が発生し、市民らは外出時にマスク着用を余儀なくされている。
必要でない外出を避けるなど、北京市民の日常生活にも大きな支障が出ているようだ。
中国メディアの参考消息は13日、香港メディアの報道を引用し、中国のオンライン通販サイトではマスクや空気清浄機の販売数が急増していることを伝えた。
消費者からすれば大気汚染は迷惑そのものだが、その背後では商機が到来しているメーカーも存在するようだ。
一方で記事は、大気汚染は北京市民に健康リスクをもたらしているだけでなく、大気汚染によって「経済的負担」を感じている人も増えていると伝えつつ、
「北京市民が買い求めたマスクのほとんどが、PM2.5の体内への侵入を防げないもの」
などと紹介。
さらに、経済的負担の例として、空気清浄機やマスク、薬を購入するために2万元(約37万円)を超える臨時支出があったという北京市民の女性の声を紹介。
同女性は新たに購入した空気清浄機のほかにも複数所有しており、1日中稼働させる必要があるため電気代もかさんでいると指摘。
また、子どもを外出させられないため仕事を休む必要があったとして、収入にも影響が出かねない状況であることを伝えた。
また記事は、深刻な大気汚染は市民の生活だけでなく、タクシー運転手などの商売にも大きな影響をもたらしていると紹介。
大気汚染が深刻化すると、外出する人が減ってしまうためタクシーの商売もあがったりだという。
当然、家族で外食に出かける人も減ってしまうわけだが、中国では大気汚染が経済活動に悪影響を及ぼしており、中国政府も本腰を入れて対策を取る必要に迫られている。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年12月15日(火) 8時6分
http://www.recordchina.co.jp/a125101.html
11月に大気汚染が最も深刻だった10都市、北京は圏外―中国
2015年12月14日、中国のラジオ局、中央人民広播電台のニュースサイトによると、中国の環境保護部が13日発表した11月の全国74都市に関する空気質指数(AQI)状況で、北京はワースト10に入らなかった。
AQIワースト10は、
瀋陽市(遼寧省)、
☆台市(☆は刑のへんにおおざと、河北省)、
保定市(同)、
石家荘市(同)、
ハルビン市(黒竜江省)、
長春市(吉林省)、
廊坊市(河北省)、
唐山市(同)、
済南市(山東省)、
衡水市(河北省)
の順。
中国の東北地方では11月1日から4日にかけて大気汚染が悪化。
東北三省(遼寧、吉林、黒竜江)の地級以上の都市では、36都市のうち34都市で「重度」以上の汚染が発生した。
同27日から12月1日には、京津冀(北京市、天津市、河北省の総称、全13都市)の10都市で「重度」以上の汚染が発生した。
』
『
新華ニュース Xinhuaxia News 2015年12月02日 13時03分
http://www.xinhuaxia.jp/social/85284
米国NASAの気象衛星画像から見る中国のスモッグ
最近、中国・北方地域の大半はスモッグに包まれている。
各国首脳はフランス・パリに集まり、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)を開き、共同で拡大し続ける気候変動の問題を解決するのが狙いだ。
11月30日、NASA(アメリカ航空宇宙局)の発表した気象衛星画像によると、中国・北京から西南方向に数百キロ延びる地域の上空はスモッグに覆われている。
関係機関の作成した大気質報告書によると、2日のPM2.5(微小粒子状物質)の測定値は最高で666に達した。
大気汚染物質の発生源は冬季の燃料の集中的な燃焼と逆音現象である。
NASAは2003年から今まで13年続いて中国のスモッグ画像を発表し、スモッグは中国の冬の“常客”になったようだ。
』
『
2015年12月14日(月) 近藤 大介
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46847
PM2.5、初の「レッド警報」発令!
〜肺がん死亡率は465%アップ(?)
中国「恐怖の大気汚染」の真実とは
2015年12月14日(月) 近藤 大介
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46847
PM2.5、初の「レッド警報」発令!
〜肺がん死亡率は465%アップ(?)
中国「恐怖の大気汚染」の真実とは
■マスクをしても意味はない
PM2.5の恐怖が、再び首都北京を覆っている。
12月8日から10日まで、初めて「レッド警報」が出されたのだ。
よほどの急用がない限り外出を自粛しろ、という最高レベルの警報である。
PM2.5が深刻になるのは、毎年冬である。
北京市では、11月15日から翌年の3月15日まで、集団暖房が入るからだ。
ただし暖房が入るのは、ひと冬分の暖房費、約3,000元(約6万円)を前納した家屋に対してのみだが。
ともあれ、あのPM2.5の恐ろしさは、経験した人でないと分からないだろう。
まず眼球の奥がズキズキして、涙目になってくる。
続いて鼻と喉元がヒリヒリして、言葉を発するのが辛くなってくる。
マスクなんかしても意味はない。
次に来るのが頭で、ペンチか何かで締め付けられるようなグリグリした痛みに襲われる。
これで思考能力が低下する。
最後に背骨がズキンズキンと来る。
こうして、立っていることすら辛くなってくるのだ。
そのように身体中から「泣き」が入るので、人体には相当、悪影響を及ぼすはずだ。
実際、12月9日に復旦大学公共衛生学院の研究とされるレポートが、中国のインターネット上にアップされた。
そこには、真っ白な「健康な肺」と、真っ黒な「PM2.5に汚染された肺」の写真が掲げられていて、 次のように記されていた。
〈 144時間、PM2.5に汚染された肺は、肺胞が黒く犯されるだけでなく、肺の上皮の細胞膜の通気性と流動性に影響が出る。
細胞内部の物質が漏出し、死に至る。
その際、肺がんに罹患するリスクは非常に高い。
中国では毎年、312万人もがんで死亡しており、第一位が肺がんだ。
過去30年で肺がんの死亡率は465%も上昇していて、肝臓がんに代わって、中国人の国民病となっている 〉
だがこの警告情報は、アップされて瞬く間に、ネット警察によって削除されてしまった。
以後は開いても、「この内容は規則違反により閲覧できない」という注意書きしか出てこない。
もう一つ、こんな記事も、ネット上に流れた。
〈 本日(12月9日)から、中国では公的な気象台以外に、いかなる組織もしくは個人が、いかなる形式にせよ、
社会に向けて気象に関する情報を発布することが禁止された。
違反者には、5万元(約100万円)の罰金が科される。
これは、「気象予報発布と伝播の管理弁法」に基づく措置だ。
これによって、これまで民間がインターネット上に出しているPM2.5の情報などは、すべて取り締まられることになる。
本日の『新京報』(北京で一番人気の新聞)は、「これは『州官だけが放火できる』規定だ」と反発している。
実際、この規定によって、今後は当局が発表する気象情報は「鹿」が「馬」になり(馬鹿)、深刻な大気汚染の日が、青天白日の日と発表されるかもしれない。
つまり気象も、政権のサービスの道具と化すのだ。
不確定極まりない恐怖が、全市民に植え付けられようとしている 〉
この文章も、送られてきて、わずか15分後に再読しようと思ったら、すでに削除されていた。
以後は開いても、「この内容は規則違反により閲覧できない」という注意書きしか出てこない。
いまは、中国全土で5億人以上が「微信」(WeChat)を使っているから、こうした情報は、インターネットだけでなく、SNSを使っても拡散する。
そしてSNSの空間でも、ネット警察とのイタチごっこが起こり、やがて「この内容は規則違反により閲覧できない」マークに変わる。
逆に、習近平政権の側が、広く流布してほしい報道もある。
例えば、中国共産党機関紙『人民日報』が発行している国際情報紙『環球時報』(12月9日付)が報じた「北京の『レッド警報』は、政府がPM2.5を克服する決意だとして世界が絶賛している」という記事だ。
こちらは中国全土のメディアに、転載が奨励された。
〈 現在、パリで開かれているCOP21で、いかに地球の未来を救うかが話し合われているが、中国政府の決意は、世界に深い感触を与えた。
2004年から2013年まで、世界では毎年、CO2が2.4%増加した。
だが2015年の推計では、0.6%の減少だ。
その主な理由は、中国の貢献によるものなのだ。
ボイス・オブ・ドイツは、「これはCOP21の最後の数日で聞いたベスト・ニュースの一つだ」
と述べた 〉
■「PM2.5の怒り」を託したアネクドート
ともあれ、私が肉体的影響とともに指摘したいのが、これだけ多くのPM2.5を浴びると、人間は精神的にも健全ではいられなくなるということだ。
かつて3年間北京に暮らしていた私もそうだったが、
PM2.5の数値が上がると、とにかくイライラしてくる。
体中の細胞が、何とかして降り積もるPM2.5を振り払おうとするのだろう。
つまり、生物としての本能がそうさせるのだ。
その結果、PM2.5が悪化すると、街で凶悪事件や猟奇事件などが急増するのである。
私が最初にそのことに思い至ったのは、2010年末から2011年初頭にかけて、北京に100日以上にわたって、雨が一滴も降らなかった時だった。
凶悪な殺人事件が10件以上、立て続けに起き、交通事故も相次いだ。
そして2000万市民が、日増しに苛立っていくのを感じたものだ。
2008年頃から、冬になるとPM2.5地獄が始まったが、同様のことを感じ始めた。
私ばかりか、周囲の人びとも殺気だっていた。
今回、北京っ子たちは、そんな殺気立つ「PM2.5の怒り」を、アネクドート(政治小咄)に託して、「微信」で流すことで憂さ晴らしをした。
北京市が3日間の「赤色警報」を初めて流した12月8日から10日にかけて、私のところにも、北京の知人から、いくつものアネクドートが送られてきた。
その中から、傑作選をお届けしよう。
まずは、初級編。
〈 習近平政権は12月8日から、車輌ナンバー末尾の奇数偶数で制限して通行を半減させようとしたが、誰も守らなかった。
なぜなら取り締まる交通警官が、あまりにひどいPM2.5汚染に、視界不良でナンバーの判別がつかなかったからだ 〉
次に、中級編。
〈 習近平政権は、PM2.5の社会階層別予防策を発表した。
貧困層:大根とキクラゲを食べろ
中間層:空気清浄機を買え
富裕層:田舎に所有する別荘に逃げ込め
超富裕層:国を捨ててさっさと移民せよ
政府要人:14億の人民に「一斉に吸い込んでなくしてしまえ」と命じろ 〉
最後に上級編。ポイントは、上と下の各21文字の発音が同じことだ。
〈 かつて毛沢東主席は、こう唱えた。
「為人民服務、厚徳載物、自強不息、埋頭苦干、再創輝煌!」
(人民に奉仕せよ、厚い徳は万物を覆う、弛まぬ努力によってのみ自己を強くできる、苦労する仕事に没頭せよ、創造を重ね栄光を掴め!)
現在、習近平主席は、こう唱えている。
「喂人民服霧、厚徳載霧、自強不吸、霾頭苦干、再創灰黄!」
(人民に霧を喰わせろ、厚い徳は霧で覆え、自己を強くするために息を吸うな、頭を塵だらけにして苦労せよ、灰や砂塵を次々に創れ!) 〉
どれも、思わず苦笑してしまう傑作だ。
おそらく、社会主義政権下のソ連の人々も同様だったのだろうが、いまの北京っ子たちも、こんな笑いで憂さ晴らしをするしかないのである。
■アメリカ大使館の「ミッション・チャイナ」
そもそもPM2.5というのは、北京オリンピックが行われた2008年の春に、手狭になった北京のアメリカ大使館が、いまの亮馬橋に移転した際に、計測器を設置してから広く知られるようになったものだ。
その直前に、北京オリンピックの警備などの予行演習のために、本番と同じコースを使ってマラソン大会が開かれた。
そうしたら、「鳥巣」(ニャオチャオ)と呼ばれるメインスタジアムをスタートした直後から、あまりに深刻な空気汚染に、倒れる選手が続出する騒ぎとなった。
これは私の勝手な推測だが、そのニュースを見たアメリカ大使館の外交官たちが急遽、新大使館の屋上に計器の設置を決めたのではなかろうか。
北京のアメリカ大使館は、2011年11月から、「ミッション・チャイナ」と称して、ホームページでPM2.5の数値を公表するようになった。
北京だけでなく、瀋陽、上海、成都、広州の各領事館でも、同様に「ミッション・チャイナ」を行い、公表した。
当時、私は北京に住んでいたが、北京のアメリカ大使館のある若手外交官は、次のように述べていたものだ。
「北京市内を、他の国ではあり得ないような汚染物質が飛び交っている。
それなのに中国政府が隠蔽しているから、代わりにわれわれが警告しているのだ。
本当はわれわれだって、こんな仕事はしたくない。
いまやアメリカ国務省では、出世命の外交官か、独身もしくは離婚した外交官しか北京に来なくなったくらいだ」
ちなみにこの時、われわれ中国日本商会も、日本大使館に同様の計器の設置と数値の公表を求めたが、日本大使館は「微動」だにしなかった。
アメリカ大使館は、このPM2.5の公表で、中国政府と激しいバトルを繰り広げた。
中国政府から見れば、中国国内の唯一無二の公的機関は中国政府であり、租界(植民地)時代を思い起こさせるような勝手な振る舞いは許せないというわけだ。
また北京市環境保護局は、次のように強弁した。
「2008年の北京オリンピックを契機として、首都鉄鋼を河北省唐山に移転させたのを始め、主要な工場はすでに北京から移転させた。
そのため、北京市の空気は晴天に満ちている。
実際われわれは、『238計画』(一年に238日以上を晴天にする計画)を着実に実行しているところだ」
だが、このアメリカ大使館の「ミッション・チャイナ」は、2000万北京市民に大きな反響を巻き起こした。
当時の胡錦濤政権下の比較的自由な空気もあいまって、『新京報』や『北京青年報』など北京の主要紙は、
「なぜアメリカ大使館がPM2.5の数値を公表しているのに、北京市政府は公表しないのか」
と、当局を突き上げた。
結局、胡錦濤政権が白旗を揚げた。
2012年秋には、政権交代の重要な第18回共産党大会を控えており、北京市民と無用の騒動を起こすことは、避けねばならなかったのだ。
そこで2012年2月から、北京市環境保護局もPM2.5の数値を、ホームページで公表するようになった。
いまでは、北京の中心部12ヵ所と、郊外11ヵ所に計測器を設置して、アメリカ大使館と同様、1時間ごとに、PM2.5の数値を発表している。
■北京のPM2.5が減らないのはなぜか
だが昔も今も、アメリカ大使館が公表する数値と、北京市環境保護局が発表する数値は、異なっている。
例えば、12月9日14時のアメリカ大使館の発表をホームページで確認すると、PM2.5の値は318となっている。
ところが北京市環境保護局のホームページで確認すると、同時刻のアメリカ大使館付近の農業展覧館で計測した数値は、278である。
なぜほとんど同じ場所で計測して、アメリカと中国の発表は、40も違うのだろうか?
私は、2012年から両機関の発表を見較べているが、常にアメリカの数値の方が中国の数値よりも大きい。
それでも、米中の差が徐々に縮まってきているのは、不幸中の幸いとも言えるが……。
つまり、2011年のアメリカ大使館の英断がなければ、北京市民は実態とはかけ離れた数値を見せられていたに違いないのだ。
いや、それどころか北京市環境保護局が公表することさえなかったろう。
北京市の発表によれば、PM2.5の原因は、
1].31.1%が自動車の排気ガス、
2].22.4%が暖房用石炭、
3].18.1%が工業用煤煙、
4].14.3%がホコリで、
5].14.1%がその他レストランの煙
などである。
なぜいつまで経ってもPM2.5が減らないのか
と言えば、この問題が、現在、中国社会が抱えている諸問題の縮図のようになっているからだ。
1].それは第一に、地方自治体の深刻な財政危機である。
2013年の初めに、北京市政府は、市内を覆うPM2.5の24.5%は、北京市を取り囲んでいる河北省の工場から運ばれてくると発表した。
ここからは、経済誌『財経』の記述によるものだが、これを受けて中央政府は、河北省に対して、2017年までに2012年比で6000万トンの粗鋼生産を減らすよう命じた。
河北省の粗鋼生産の中心地は、首都鉄鋼が北京から移転してきた唐山市であり、唐山市に割り当てられた減算分は4000万トンだった。
唐山市はこの措置によって、8万人の鉄鋼労働者が失業することになる。
間接的には、40万人が失業するという。
また、今後3年間で唐山市は、環境保護関連費として116億元(1元≓19円)を投資せねばならないが、中央政府から回る予算は12億元、河北省から回る予算は13億元にすぎない。
つまり、残りの91億元は自己調達しないといけないのだ。
唐山市からすれば、まさに「首都北京のためになぜここまでしないといけないのか」という怨嗟の声となる。
ただでさえ唐山市は、中国10大「鬼城」(ゴーストタウン)を抱えていて、すでに市の財政は危機的状況にあるのだ。
2].第二は、国有企業の問題である。
北京市で石炭を最も消費しているのは、1958年創業の
巨大な国有企業、北京市熱力集団だ。
北京市で最も富裕な東部地区を中心に、
市内の3分の1近くにセントラルヒーティングを供給している。
中南海も国務院も、北京市の人民解放軍も各国大使館も、すべて熱力集団から暖房を引いている。
暖房を供給している総面積は2億2300万㎡、送熱管の長さにして1400km
にも及ぶのだ。
私が住んでいたマンションのすぐ隣にも、北京市熱力集団の巨大な工場と高い煙突が建っていて、モクモクと煙を吐いていた。
2010年12月29日には、当時の胡錦濤主席が視察に訪れ、「北京の冬が暖かいのは、君たちのおかげだ」と訓示している。
その一方で、
2012年に北京市政府は、石炭の燃焼量を当時の年間2300万トンから、5年後の2017年に1000万トンまで減らすと決めた。
それには、エネルギー源を安い石炭から、高い天然ガスに替えていかないといけない。
ではあと2年で、この巨大な国有企業を、どう改革していくというのか。
北京市熱力集団を改革するためには、まず国家としてのエネルギー政策の大転換が必要だ。
中国は2018年から、ロシアの天然ガスを大量に買うことにしているが、その価格を巡ってまだ揉めているのだ。
同様のことが、PM2.5の最大の原因である自動車産業についても言える。
2010年12月に、北京市の新車増加台数は、ついに月間5000台を突破し、街中が大渋滞に陥った。
そこで翌2011年から、1ヵ月あたりの新車を2万台に制限し、昨年は1万2500台まで減らした。
だがそれによって、不動産と並ぶ中国経済の牽引役だった自動車産業に翳りが見られる。
自動車産業の主力もまた、国有企業なのである。
国有企業は中国経済を支える屋台骨であり、ここを崩せば中国経済は、一気に崩れることになる。
■習近平はCOP21で赤っ恥
3].そして第三の問題が、権力闘争の側面だ。
河北省のトップである趙克志党委書記は、大学も出ていない山東人だが、今年7月末に突然、習近平主席から大抜擢を受けた。
ゴリゴリの江沢民派だった前任の周本順党委書記を、習近平主席が電撃的に解任したのだ。
そのため趙克志党委書記は、習近平主席に絶対忠誠を誓っている。
だから、唐山市を犠牲にすることなど厭わないだろうし、中央政府の言うがままだ。
また、北京市の郭金竜党委書記は、胡錦濤前主席の秘蔵っ子である。
胡前主席は、自分が党総書記を習近平に委譲する4ヵ月前に、郭金竜を北京市党委書記に据えたのだ。
そんな郭金竜党委書記は、いつ自分もクビを言い渡されるかと気が気でない。
そのため、PM2.5に覆われた街に、マスクもつけずに出て、交通整理を手伝うといったパフォーマンスまで行っている。
さらに、北京市に隣接したもう一つの中央直轄地、天津市では、昨年末に習近平主席が、胡錦濤派の孫春蘭党委書記を追い出した。
それで浙江省党委書記時代の部下だった黄興国を党委書記に昇格させようとしたのだが、抵抗に遭って、丸一年経っても市長兼代理党委書記のままだ。
その習近平主席は、パリのCOP21に参加している時に、首都北京でPM2.5の騒動が起こったことで、国際的に大恥をかいた。
今後、北京市、天津市、河北省に激震が走りそうな気配だ。
そんな中で、地方自治体としては、身動きが取れないのである。
ともあれ、PM2.5の問題においても、一つ言えることがある。
それは、犠牲になるのは一般庶民だということだ。
この哲理だけは、中国で古代から現在まで変わっていない。
<付記>
8月に天津市で大爆発が起こった時、今年上半期に9.4%(全国31地域中3位)も成長した天津が、1兆5,000億円近い経済損失を出しました。
そして今回、PM2.5地獄の影響で、首都・北京にも、計り知れない経済損失が出ました。
このように、中国経済には、多くのリスクがあります。
気になる2016年の中国経済について、現時点での予測を新著で述べました。
』
『
サーチナニュース 2015-12-15 11:43
http://news.searchina.net/id/1597081?page=1
上海でも深刻な大気汚染
当局指示「学校に来なくてもよい」
上海市は15日朝、深刻な大気汚染に見舞われた。
中国メディアの新浪網によると、午前7時現在の全市におけるPM2.5の平均濃度は空気1立方メートル当たり273.7マイクログラムに達した。
その後、場所によっては324マイクログラムに達した。
同市教育委員会は学校などでの屋外活動の停止と、欠席しても欠席扱いにはしないよう指示した。
屋外活動の停止を求められたのは、小学校、中学校、高等学校と幼稚園及び各種の託児組織。
学校の場合、生徒が遅刻や欠席しても、遅刻や欠席の処理にはしない。
上海市内のPM2.5の濃度については日本時間午前10時時点で、市街地の一部では空気1立方メートル350マイクログラムに達したとの発表もある。
日本では環境省が1日平均のPM2.5の濃度基準値(上限)を同35マイクログラムに定めている。
上海市は日本の「上限基準」の10倍の大気汚染に見舞われていることになる。
中国では7日から10日にかけて、北京市を中心とする華北地方が深刻な大気汚染に見舞われた。
北京市の15日午前の大気汚染の状況は、市街地ではPM2.5濃度がおおむね30マイクログラム台。
ただし南部郊外では200マイクログラムに近い観測地点がある。
北よりの風が影響している可能性が高い。
』
『
フジテレビ系(FNN) 12月15日(火)19時35分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20151215-00000269-fnn-int
中国・上海でも深刻な大気汚染 16日以降、日本に飛来も
中国・上海でも、深刻な大気汚染が発生している。
白くかすみ、光をさえぎられた街並み。
これは、中国・上海市中心部の様子。
上海は、大気汚染最悪レベルにあたる「赤色警報」が出された北京の南に位置している。
上海のシンボルテレビ塔や高層ビルが、白くかすんでいた。
記念写真を撮る観光客も、残念そうな様子だった。
上海市では15日、有害物質「PM2.5」を含む大気汚染指数が、300を上回り、6段階のうち、最悪のレベルとなった。
北京を中心とした深刻な大気汚染が、北西の風に乗り、南下したとみられている。
上海市は、学校などでの屋外活動の停止を指示。
市民の健康被害に注意を呼びかけている。
一方、この影響は、日本にも。
PM2.5の拡散予測によると、中国で広範囲に広がった高濃度のPM2.5は、16日以降、濃度が薄まるものの、日本へ飛来。
濃度の高い状態は、数時間から半日程度と、長時間になることはないと予測されている。
健康被害を防ぐためにも、注意が必要となる。
』
『
● 12月12日版
』
_