2015年9月10日木曜日

チャイナショック(4):中国発不況確率55%、シティグループが世界経済に対する警告を発した

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 Bloomberg.com (ブルームバーグ):2015/09/10 07:03 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NUEOF26JIJUS01.html

中国発の世界リセッション確率55%、
中国成長率は2.5%にも-シティグループ

  シティグループが世界経済に対する警告を発した。
 8日遅くに公表した分析リポートでチーフエコノミストのウィレム・ブイター氏は
★.世界が今後2、3年に中国発のリセッション(景気後退)に陥る可能性を55%と見積もった。

 「世界経済がリセッション入りする実質的なリスクが増しているとみられる。
 新興市場、特に中国が主因の景気後退だ」
と同氏は書いている。

 同氏が中国について懸念する理由は、
 同国の成長ペースが恐らく、既に4%近くまで減速している
とみていることだ。
 中国政府は7%前後を今年の成長率目標に掲げている。
 成長率が2016年半ばに2.5%まで低下しその水準にとどまれば、中国が緩やかなリセッションに陥ると同氏は予想する。

 ブラジルや南アフリカ共和国、ロシアといった中国以外の新興市場国も既に苦境にあり、先進国・地域の経済はまだ勢いに欠ける。
 商品相場と貿易、インフレは弱く、企業利益は低迷しつつある。

 中国についてブイター氏は
 「循環的なハードランディングのリスクは高く、
 急速に上昇しつつある」
とし、主要分野での余剰生産能力と債務の大きさ、さらには株式と不動産の相場調整を理由に挙げた。

 中国人民銀行(中央銀行)は政策金利と預金準備率を引き下げているが、債務が金融政策による支援の余地を狭めるため需要低下への対応が不十分になる恐れがあると説明。
 また、8月に実質切り下げた人民元の行き過ぎた値下がりを当局は望まず、財政出動を急ぐことにも慎重だと指摘した。

 先進国・地域へは、中国の苦境は貿易の減少を通じて波及するだろうと分析。
 また、米国債などで保有する6兆ドル規模の準備資産を中国が取り崩せば国際金融市場を揺るがしかねないほか、質への逃避でドルが急騰する可能性があるとも指摘した。

 16年のリセッションは金融緩和と財政出動によって回避できる可能性はあるが、先進国・地域の金利が下限に近いことや手段を温存したい政治家の意向によって、実施に移せる対応策は極めて限られるという。
 「現在、金利は大半の先進市場で政策手段として役に立たず、
 財政はほぼ全ての国で08年当時より逼迫(ひっぱく)している」
とブイター氏は指摘した。

 08年の金融危機の再発や恐慌のような世界の生産急減はないとみられるものの、公的債務の増大に投資家が突然のパニックに陥ったり政治家が保護主義や通貨切り下げ競争に走った場合は見通しが悪化すると警告した。

原題:Citigroup Sees 55% Risk of a Global Recession Made in China(抜粋)



レコードチャイナ 配信日時:2015年9月11日(金) 4時34分
http://www.recordchina.co.jp/a118679.html

通貨切り下げ競争には参加しない!
李克強首相、中国経済を語る―遼寧省大連市

 2015年9月9日、独ラジオ局ドイチェ・ヴェレ中国語版によると、中国の李克強(リー・カーチアン)首相は
 中国の経済成長は合理的範囲にある
と発言した。

 遼寧省大連市で9日、夏季ダボス会議が開幕した。
 スイスで開催されるダボス会議の中国版で毎年夏に開催される。
 大連市と天津市で交互に開催されており、今年は大連市での開催となった。

 9日には李克強首相と各国企業家との交流会が開催された。
 中国経済の低迷が懸念されているが、
 李首相は7%前後という成長目標は達成可能と自信を示した。
 また、為替については現状、「合理的範囲」にあるとの認識を示し、持続的な人民元安は中国輸出企業にとってもマイナスだとして、通貨切り下げ競争にはくみしない姿勢を示した。

 今年6月から始まった中国株の急落と中国政府が見せた「異例」の対策については、
 「異常な価格変動があったため」であり、金融システム防衛のためには必要な措置だったと釈明。
 政府の経済介入が強化されるのではとの疑念には、マーケットの機能を重視する改革方針にぶれはないと説明している。




● JNNニュース



サーチナニュース 2015-09-13 13:55
http://news.searchina.net/id/1588528?page=1

「わが国は、世界経済のリスクどころか成長の原動力」
と中国・李克強首相=中国メディア

 中国経済の成長鈍化に対し、世界が懸念を強めていることについて、中国メディアの新華社は10日、中国の李克強首相が夏季ダボス会議で
 「中国は世界経済のリスクの根源ではない」、
 「むしろ世界経済の成長における原動力の1つ」
と述べたと伝えた。

 記事は、世界経済フォーラムが主催する夏季ダボス会議が中国遼寧省大連市で9日に開幕したことを紹介し、李克強首相が開幕式で演説を行ったと伝えた。

 さらに、李克強首相が
 「中国経済の安定した発展は世界にとっても恩恵のあるもの」
と述べたことを紹介し、2015年上半期における世界の経済成長に対する中国の貢献率は約30%に達したと胸を張ったことを紹介した。

 また、商品(コモディティ)価格が世界的に低迷し、中国の輸出入も「金額ベース」では伸びが鈍化しているとしながらも、中国のコモディティ輸入量は減少するどころか増加していると主張したことを紹介。
  また、中国にない優れた技術や基幹部品などを海外から取り込み、高付加価値の製品や優れた技術、サービスなどを輸出する「優進優出」を推進するなかで、李克強首相が「中国は今後も積極的な輸入政策を実施し、輸入量はこれからも増加する」などと述べたことを伝えた。

 そのほか記事は、李克強首相が「国外に旅行に出かける中国人旅行客」の存在を指摘し、
 2014年に出国した中国人旅行客はのべ1億人を超え、
 15年上半期はさらに10%増となったことを指摘したと紹介。
 また、
 「中国人は慣習的に、安定した収入源がない限りは消費しない」
としたうえで、多くの中国人が国外で消費を行っていることは、中国国民が経済の先行きを楽観視していることを示すものと述べたことを伝え、
 「中国は世界経済のリスクの根源ではない」、
 「むしろ世界経済の成長における原動力の1つ」
と述べたと伝えた。



Business Journal 2015/9/11 09:23 文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150911-00010006-biz_bj-nb

異常で歪んだ中国経済、近く崩壊か 
日本に訪れる「恐ろしい事態」

 中国経済の減速傾向が強まっている。
 大きな経済失速はないだろうという意見もあるし、いつかはバブルが弾けるような失速が避けられないという見解もある。
 いうまでもなく、中国経済が大きく失速すると、日本経済への影響も免れない。

 アメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひくといわれていた時代があったが、現在の経済環境だと、中国が風邪をひけば日本も風邪をひく。
 中国が重篤な情勢に陥れば、日本も同様な事態となる。

●不安定な株式市場は予兆か

 日経平均株価は8月下旬に6日間続落し、2008年10月のリーマンショック直後以来の下げ幅となった。
 その後急速に持ち直したが、9月初旬にはまた大きく下落するなど不安定な動きが続いている。
 株価と経済はイコールではないが、株価の下落が中国の経済失速懸念を背景としていることはいうまでもない。

 株価下落局面では「リーマンショック以来」という言い方が多くあったが、実際には実体経済にはまだ景気減速の直接的な影響は見られない。いくつかの企業が9月中間業績は堅調見通しにもかかわらず、通期予想は抑えるなど「減速懸念」をすでに打ち出しているが、まだ懸念でしかない。その点では「リーマンショック以来」なのは、まだ株価の下落だけである。

 しかし実際に中国経済が大きく減速するようなことがあったら、その影響はリーマンショックの比ではない。
 リーマンはあくまで一企業だが、中国はGDP世界第2位の大国である。
 影響の違いは計りしれない。

●不動産バブルと株価バブルが支える中国市場

 振り返れば、8月末の株価下落は、中国製造業の景況感を示す製造業購買担当者指数(PMI)の8月速報値が悪化して3年ぶりの低水準にまで落ち込んだことがきっかけだった。
 しかしそれはひとつのきっかけにすぎず、中国経済の失速を懸念する人々がこの数値を「ほら見ろ」として行動に出たという見方もでき、それだけ失速への懸念が根強いということの裏返しでもあった。

 では、その失速懸念はどこからきているのか。
 
 その大きな要因とされるのが、
 中国経済成長の何割かがバブルに支えられているという側面だ。
 実際に日本で家電製品などの「爆買い」をしている中国人については、経済成長の恩恵を受けたごく普通の中国人もいるだろうが、その多くは株式投資や不動産バブルで大金を手にした人間だという指摘がある。

 その真偽は定かではないが、中国国内、特に内陸部の平均的労働者の給与を考えると、現地で一般的なレベルの暮らしをしている人々が札束で膨らんだ財布を持って、日本に頻繁に訪れるというのは確かに論理的ではない。
 やはりなんらかのバブルの恩恵で大金を得ている人が、そこには多く含まれると考えるほうが自然である。

 中国の代表的な投資は不動産と株式だが、特徴的なのは、その両方において個人投資家が多く、もともとバブルの素地があるという点である。

 中国の不動産価格の高騰は個人が「住むため」でなく、「投資のため」に個人が購入して、さらに売りやすいように未入居のまま転売して、それが繰り返されているという点が大きな問題点である。

 つまり実際にそこに
 住みたいというニーズよりも、高値で売りたい
という個人の思惑の上に成り立っているもので、これはまさに典型的な「バブル」である。
 実際の需要があればそこに成長はあるが、投資目的が主体で実需がなければ、いつかはそのバブルが弾ける。

●中国特有の複雑な背景

 さらに、株式投資についても中国特有の複雑な背景がある。
 株式の場合はすべて投資目的だが、日本や欧米のように機関投資家が主体の市場と、中国市場はまったく異なる。中国は世界的にも珍しい個人投資家が主体の市場で、海外投資家の介入は政府が限定しており、さらに市場そのものも政府の統制下にある。

 だから「バブル崩壊はない」という意見も実はあるのだが、個人投資家が主体の市場のために、体力的にいったんバブルが弾けてしまうと回復が決定的に遅れるというリスクは否めない。

 共産党の一党支配が続き、反日のなかでも日本製品への評価が高く、グローバルスタンダードとは大きな距離がある大国中国。
 そのバブルはいつ弾けてしまうのか。



ロイター 2015年 09月 11日 12:50 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/09/11/column-china-money-idJPKCN0RB09Y20150911?sp=true

コラム:中国から逃げ出したマネーの行方
James Saft

[8日 ロイター] -
 マウイの不動産から高級美術品に至るまで、あらゆる資産の売り手がその売却代金を何に再投資するか──。
   中国からの資本逃避が世界にどのような影響を及ぼすかを見極める上で、鍵を握るのがこの点だ。
 もちろんこれは、中国が資本逃避を黙認し続けた場合の話であって、その前提は確実とは程遠い。

 中国人民銀行が7日に発表した
 8月の外貨準備は939億ドル(約10兆円)減の3兆5570億ドルと、過去最大の減少を記録
した。
 人民銀行が、資本逃避による人民元の下落と格闘した結果である。
 中国がこの闘いをいつまで続け、そしてどのような手段で行うかによって、中国と世界経済への影響は大きく左右される。

 中国を離れた資金がどこに向かって何を買うか、またそうした資金の所有者に資産を売却する人々がその代金をどう使うかも大きなインパクトをもたらす。
 世界の金利を変化させ、ひいては金融資産の価格も動かす可能性を秘めているのだ。

 資金が中国から逃げ出す理由は様々だ。
 人民元のさらなる切り下げや中国資産の下落を心配し、より良い投資先を求めて海外に向かう個人もいるだろう。
 汚職摘発や法律の適用などを恐れる人々は、身を守るためにロンドンやニューヨーク、ハワイ、カナダなどの不動産や、高級美術品を買う場合が多い。
 こうした資本逃避が市場にどう影響するかを見る上では、
★.中国が史上最大の外貨準備を積み上げた方法と理由、
 そしてその過程で何を買ったか
を思い出すことが重要だ。

★.外貨準備の積み上げは主に、人民元価格を押し下げて輸出を促進しようとした結果
起こった。
 そうするために中国は、
★.輸出で稼いだドルの多くを抱え込んで
おく必要があった。
 人民銀行は保有するドルで最大限の運用利益を上げようとしたのではなく、単に経済政策や為替管理を目的としていた。
 その結果として
★.中国は米国に対する最大の債権国となり、最低でも1兆5000億ドルの対米債権を抱えて
いる。

 従って現在のように中国から資金が逃避すると、人民銀行は元の下落を容認するか、
 もしくは大半が米国債である外貨準備を売って元の安定を図ることになる。
 人民銀が売却したドルを手にした人々はそれを国外に持ち出す。
 国外逃避の大半は規制破りの形で起こるが、起こることには変わりない。

■<何を買うか>

 ドルの量は変化しないが、
 ドルの新たな保有者が購入する物には大きな開きが出そうだ。
 一部の資金を米国債に投じる中国人もいるだろうが、
 多くは不動産や美術品などの資産を買う
だろう。

 ソシエテ・ジェネラルのエコノミストチームは顧客向けノートで、中国が秩序なき資本流出から経済を守るために外貨準備の大幅な取り崩しを迫られるようなら、「米国のタームプレミアム(期間に伴う上乗せ金利)に顕著な影響をもたらしかねない」と指摘した。

 その上で
 「しかしこれは、流出した資金がどの資産に向かうか次第でも変わってくる。
 中国の民間部門が米国債を買い、公的部門が米国債を売る場合には、中国の対外資産が公的部門から民間部門に移ったにすぎない。
 現実世界では、そんな完璧なマッチングは考えにくい」
と分析している。

 そこで物を言うのが、ピカソや高級マンションの売り手が何に資金を回すかだ。
 彼らとて、新たに手にした現金の束を米国債だけに投資しようとは思わないだろう。
 この結果、米国債の需要は減り、金利、とりわけ長期金利の上昇を招きそうだ。

 併せて銘記したいのは、10年物米国債利回りが時に、世界で最も重要な価格と呼ばれることである。
 これには理由があって、米国債は他の金融資産の価格に特別な影響をもたらす。
 米国債価格が上昇すればするほど、リスク資産の価格は相対的に割安感を増す。
 逆もまた真なりだ。

 資本逃避の流れは終わっていないように見える。

 北京大学HSBCビジネススクールのクリストファー・ボールディング准教授は
 「状況証拠から見ると、市場は落ち着きを取り戻すどころか、人民元相場の安定とは反対方向にますます賭けるようになっている。
 資本逃避のペースは加速しているようだ」
と記している。
 定かでないのは、中国がどのような方法で資本流出を阻止しようとするかだが、そうした対策の多くは資本逃避に拍車を掛けるだけかもしれない。

 マウイからウォール街に至るまで、その影響たるや甚大なものになるだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。
本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。



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 再録
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ロイター  2015年 08月 31日 19:18 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/08/31/column-masaharutakenaka-idJPKCN0R00K720150831?sp=true

コラム:中国ショックは「世界不況」招くか=竹中正治氏

[東京 31日] - 8月21日に発表された中国製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が47.1と6年5カ月ぶりの低さに落ち込んだことを契機に、
 「やはり中国経済の失速は政府公表の国内総生産(GDP)値よりずっと深刻だ」
という認識が広がった。

 12日に起こった天津港の爆発事故で、中国のガバナンスや管理運営能力全般への懐疑と不信感が広がっていた矢先だった。
 その結果、リスク回避に走る投資家の売りで中国株をはじめ世界的な株価急落と乱高下が起こったが、その相場面での波乱はとりあえず短期的には収束しつつあるようだ。

 しかし以下の4つの事情で、中国経済の成長率は深刻な下方屈折を起こしている。
 構造的な変化に適応しなくてはならない中国の苦しい過程は始まったばかりだ。
 他の国々も程度の違いこそあれ中国経済の失速から受ける実体経済面の負のインパクトに備える必要がある。
 また、新興国投資全般は当分の間、高リスク・低リターンの「冬の時代」に入るだろう。
 順番に説明しよう。

■<中国の構造的4重苦>

整理すると、中国経済の成長率下方屈折の要因は以下の4つだ。

1].第1は、固定資本形成(住宅、工場設備、インフラ建設などの設備投資)依存度の高過ぎる経済成長がついに限界にぶつかったことだ。
 一時期、実質GDP成長率で10%を超えていた中国の高度成長は、GDPに占める固定資本形成の比率が50%前後にも及び、成長率の寄与度でも固定資本形成が約70%を占めていた。
 これは固定資本形成が前年と同じ規模を維持しても、その増加率が前年比フラットになっただけで成長率は3%(=10%-10%×0.7)に低下することを意味する。

 こうした中国の成長パターンが早晩限界にぶつかることは、私が知る限り2000年代前半から経済協力開発機構(OECD)などのエコノミストのレポートで強調されていた。
 ところが、中国全土に空室率の著しく低いゴーストタウン同然の集合住宅群や商業ビル群が建設され、鉄鋼業や自動車業界に代表される莫大な過剰設備が累積するまでスローダウンしなかった。
★.稼働率が著しく低い過剰な固定資本は、
 ファイナンスの面から見れば銀行や投資家の不良債権であり、
 莫大な不良債権が本格的に顕現化するのはこれからだろう。

 もちろん中国政府は民間個人消費主導型の経済成長への転換を唱えている。
 しかし、年金から医療まで社会保障制度が脆弱な状況で国民の貯蓄率は高止まりしており、同様の転換の必要が強調された1970年代や80年代の日本以上に構造転換は困難を極めるだろう。

2].第2は、人口動態が経済成長の促進要因からブレーキ要因になる転換点に中国が入ったことだ。

 一般に15―64歳の生産年齢人口に対する14歳以下と65歳以上の従属人口の割合を「従属人口比率」と呼ぶ。
 実質経済成長率は、労働者数の増加率と労働生産性(1人当たり労働者の生産する付加価値)の伸び率の和である。
 したがって他の条件が同じならば、従属人口比率の低下は経済成長を押し上げる(人口ボーナス)。
 逆に同比率の上昇は経済成長を押し下げる(人口オーナス)。

 日本はこの人口ボーナス(成長加速)からオーナス(成長抑制)への転換点を1990年に超えた。
 米国は2007―08年、韓国は2010年頃、中国は2015年前後が転換点になっている。
 そして転換点通過後の中国の従属人口比率の上昇速度は、これまでの「一人っ子政策」の結果、日本よりも急である。
 一方、今でも人口が年率1%弱で増加している米国では、その変化は日本よりもずっと緩やかだ。

3].第3は、「ルイス転換点」に中国が至った可能性だ。
 途上国がテイクオフする急速な工業化の過程では、低付加価値産業である伝統的な農業部門から、都市部の高付加価値産業の工業部門などに大規模な余剰労働力の移動が起こり、高度成長が実現されやすい。
 戦前の日本はすでに途上国ではなかったが、戦後の急速な工業化の過程で同じ仕組みが働き、戦後復興期に続いて約20年に及ぶ高度成長期を実現した。

 そして農業部門の余剰労働力の底を突いた時が高成長の終焉時であり、ルイス転換点と呼ばれる。
 中国の農村部には依然、余剰労働力があり、ルイス転換点に至っていないという見方もあるが、現代的な産業では労働力の量のみならず質も問題となる。
 近年の中国都市部での賃金の高騰は現代的な産業部門で実際に使える労働力がひっ迫する段階に達したことを示唆している。

4].最後の第4の問題は、指令経済的な体質を色濃く残し「開発独裁体制」と位置づけられる中国共産党一党独裁の政治体制と改革開放政策で導入された市場経済メカニズムの間の軋轢、矛盾が拡大していることだろう。

 「開発独裁(Developmental autocrat)」という用語は、もともとファシズムと経済政策を対象にした研究で使われたものだ(Anthony James Gregorによる1979年の著作「Italian Fascism and Developmental Dictatorship」に詳しい)。
 それは経済発展を優先するために、権力の強権的な行使や政治的な安定性を維持する目的で、国民の参政権などの制限を正当化する体制だ。
 このような政治体制でも、途上国経済がテイクオフし、急速なキャッチアップ過程をたどる一定の発展段階(あるいは戦時経済下)では有効性を持ち得ることを示したのが、おそらく過去30年間の中国かもしれない。

 しかし、消費財やサービスが高度に多様化し、
 新しい経済成長の源泉として先端的なイノベーションが求められる経済発展段階には、
 開発独裁体制はおそらく全く不適合なのだ。
 また、指令経済的体制と不安定性を内在する金融・資本市場の最も悪い側面が合体した結果が、今年の中国株式市場で短期間に起こったバブルとその崩壊だったとも言えよう。

 「社会の物質的生産諸力は、その発展がある段階に達すると、今までそれがその中で動いてきた既存の生産諸関係、あるいはその法的表現にすぎない所有諸関係と矛盾するようになる。
 これらの諸関係は、生産諸力の発展諸形態からその桎梏(しっこく)へと一変する。
 このとき社会革命の時期がはじまるのである」(「経済学批判」序言)。
 これはカール・マルクスの有名な一節であるが、そうした事態に今の中国が立ち至っているのは、歴史の痛烈な皮肉だろうか。
 経済成長の失速は、民主主義国家ならば選挙での政権交代をもたらすだけだが、中国の場合は中国共産党の一党独裁体制自体の不安定化につながるだろう。

 以上の諸問題の成長制約効果は、
 1番目の問題が短期・中期、
 2番目から4番目の問題が長期・超長期
であるが、その4つの制約が重なっている点に今の中国が直面している状況の深刻さがある。

■<中国ショック後の世界経済>

 では、今後の中国のすう勢的な実質GDP成長率はどれほどになるのか。
 筆者を含めた多くのエコノミストは中国公表の直近2四半期の実質GDP成長率の数字(前年比7.0%)は信頼性が乏しいと考えている。

 かつて李克強首相は自国のGDP統計を信頼しておらず、代わりに3つの統計データ(発電量、貨物輸送量、銀行貸出)を見ていると語ったという。
 この3つの統計データから推計すると、過去2四半期の実質GDP成長率はすでに5%台まで下がっていると日本経済研究センター(JCER)は報告している(JCER「2015年8月四半期経済予測」)。
 また、2015年1―7月の中国の輸入が前年同期比でマイナス14.6%となったことから、マイナスあるいはゼロ%近傍の成長率を推測する意見もあるが、真相はやぶの中だ。

 中国のすう勢的なGDP1%ポイントの低下で、他国と世界全体のGDP成長率はどの程度下押しされるか。
 これについてはOECDの推計として、中国の国内需要伸び率2%ポイントの低下が世界全体のGDP成長率を0.4%ポイント(2015年)、0.5%ポイント(2016年)押し下げるという試算を英エコノミスト誌が報じている(The Impact of a China slowdown、2014年11月29日)。

★.また、中国の今年1―7月の輸入減少、対前年比14.6%が1年間続いた場合
 主要貿易相手国の対中輸出がどれだけ減少するかを、実額とGDP比率で示した推計を英ガーディアン紙は報じている(How China's economic slowdown could weigh on the rest of the world、2015年8月26日)。
 これによると、
1].輸出減少が実額で最も大きいのが日本で181億ドル(約2.2兆円、GDP比率0.4%)、
2].第2がドイツで142億ドル(同0.4%)
である。

★.また、GDP比率で見て最も減少が大きいのは、
1].ニュージーランド1.9%、
2].オーストラリア1.7%、
3].韓国1.0%
と続く。
 一方、米国の場合は同0.1%に過ぎない。

 したがって、もし中国ショックによる需要減を財政政策などで補うのであれば、
 日本は年間2.2兆円ほどの需要増加が生じる政策を実施すれば良いということになる。
 これは小さくはないが、対応可能な範囲だろう。

■<大型新興国投資の不振は長期化へ>

 最後に中国ショック後の世界のマネーの流れと金融市場はどのようになるか考えてみよう。
 下の掲載図は世界の途上国株価の合成指数であるMSCIエマージング指数に連動した上場投資信託(EFT)価格(ドル建て、以下MSCIエマージング)とOECDが公表している合成景気動向指数(Composite Leading Indicators)の推移である。



 合成景気動向指数は国別に公表されているが、ここではブラジル、中国、インド、ロシア、南アフリカのBRICS5カ国にインドネシアを加えた6カ国の指数の加重平均値を示した(加重ウェイトはドル換算GDP)。
 景気動向指数の性質として景気がすう勢的な水準より上がっている時は100を超え、下がっている時は100を下回るように作成されている。

 正確な分析結果は省略するが、MSCIエマージングの変化と加重平均された新興国6カ国の景気動向指数の相関度はかなり高い。
 まず注目すべき点は、合成景気動向指数がリーマンショック後に急反発し、2011年前半にはピークをつけてゆっくりと下げのトレンドに入っていることだ。
 これは中国のみならず大型新興国6カ国の景気がすう勢的な鈍化傾向にあったことを示している。

 その一方で、MSCIエマージングはやはり2011年前半にピークを付けた後、上下動をしながらも、すう勢的にはほぼ横ばいのトレンドだった。
 そして今年の6月以降下げ足を速め、7月31日の引け値から8月24日の最安値まで約15.6%もの急落となった。
 実体経済の鈍化傾向を遅れ遅れに反映してきたMSCIエマージングが、8月の中国ショックで最後に損切りなどを誘発しながら急落したように見える。

 もうひとつ今回気づいた点は、中国と他の大型途上国の実質GDP成長率の相関度は1990年代には低かったが、2000年代に入ってから目立って上昇していることだ。
 興味深いことに貿易面では中国との比率がそれほど高くないインドと中国の経済成長率の相関度も2000年以降に上昇している。
 なぜだろうか。

 ご承知の通りBRICSという呼称は2001年にゴールドマン・サックスが使い始め、大型新興国投資ブームに火をつけた。
 これら大型新興国の経済成長率の相関関係の上昇は、貿易などの実体経済面の相互依存というよりは、世界的なBRICS投資ブームという金融・投資面の変化によってもたらされた可能性がある。

 こうしたブーム時の動きが今や逆向きになっている。
 今回の中国ショックは投資家層が中国の経済成長率の将来期待(予想)を下方シフトさせた結果であると同時に、BRICSブームに代表される大型新興国投資の「冬の時代」の到来を示唆していると思われる。

 これら諸国の株価や対ドル為替相場も、アジア通貨危機時のような激発性の暴落は回避されるかもしれないが、軟調基調が続き、高リスク・低リターンを余儀なくされる期間が長期化しよう。
 新興国への株式投資をするのであれば、これからが買い場なのかもしれない。
 ただし、リターンを上げるまでに相当長い期間の辛抱が必要になりそうだ。

 一方で、米国で9月に利上げが行われるかどうか、今回の事態で微妙になったと言われるが、2008年の金融危機から7年を経て、今では米国経済に目立った金融的な不均衡や脆弱性は見られない。

 記述の通り中国の内需低迷、輸入減少の負の影響度も米国は最も軽微である。
 また、日本は追加的な経済対策がなければ対中輸出減少による負の影響をある程度免れない。
 米国経済全般の相対的な優位が持続することになろう。

*竹中正治氏は龍谷大学経済学部教授。1979年東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、為替資金部次長、調査部次長、ワシントンDC駐在員事務所長、国際通貨研究所チーフエコノミストを経て、2009年4月より現職、経済学博士(京都大学)。最新著作「稼ぐ経済学 黄金の波に乗る知の技法」(光文社、2013年5月)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。



2015.9.17(木) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44806

中国発の世界的リセッションは起きるか?
減速感強める中国経済、
新しい輸出品は「景気後退リスク」
(2015年9月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 



 世界経済はリセッション(景気後退)に入りそうなのか。
 もしそうだとしたら、何がその引き金になるのだろうか。
 大手金融機関シティグループのチーフエコノミストで、かつては本紙(フィナンシャル・タイムズ)に「Maverecon*1」と題したブログを書いていたウィレム・ブイター氏は最初の問いに「イエス」と答え、2番目の問いに「中国」と答える。

 同氏の見方は妥当に思える。
 だからと言って、景気後退入りを覚悟しなければいけないわけではない。
 だが、そのようなシナリオの実現も十分に考えられることは認識しておくべきだ。

 ブイター氏は、世界全体の総生産が減少するとは見ていない。
 同氏が予想しているのは
★.「グロース・リセッション」、
 つまり約3%の潜在成長率を大きく下回る経済成長が続く期間の到来だ。
 2%かそれ以下というイメージだ。
 同氏の推計では、そうなる確率は40%だという。

 ブイター氏のシナリオは中国で始まる。
 その他多くの人と同様に、ブイター氏も、中国の公式統計は経済成長率を過大に表示しており、実際は4%程度かもしれないと見ている。
 これも一般に広く受け入れられているとは言えないが、十分に考えられることだ。

■状況が悪化しかねない3つの理由

 この状況はもっと悪くなるかもしれない。
第1に、成長率が7%の経済で投資が国内総生産(GDP)の46%を占めるというのは行き過ぎだ。
 成長率が4%の経済であればなおさらだ。

第2に、この行き過ぎた投資は債務の大幅な拡大を伴っており、その債務の質にも疑問符がつくことが多い。
 おまけに、このレベルの投資を維持するだけでも、さらに多額の借り入れが必要になる。

第3に、良好なバランスシートを持つ唯一の主体である中央政府は、投資減少の穴を埋めることに消極的かもしれない。
 一方で、国民所得における家計の割合やGDPにおける消費の割合は小さく、この穴を埋める力はない。

*1=「maverick」と「economist」「economics」をかけた「一匹狼エコノミスト」といった意味の造語

■中国の投資が劇的に縮小したら・・・

 では、需要やバランスシートの制約が効いて投資が劇的に縮小したと想定してみよう。
 この時、世界経済にはどんな影響が生じる可能性があるだろうか。

1].まず考えられるのは資本財の輸入の減少だろう。
 市場価格ベースで見ると、今日では
★.世界の投資の約3分の1が中国国内で実行されているため、その影響は甚大なものとなり得る。
 日本、韓国、そしてドイツが悪影響を被るだろう。

2].これよりも重要なのがコモディティー(商品)の貿易だ。
 コモディティー価格はこれまで下落してきたが、過去の基準に照らせば底値にはまだほど遠い。
 そして現在の価格水準でも、コモディティー輸出国は苦しんでいる。
 オーストラリア、ブラジル、カナダ、ペルシャ湾岸諸国、カザフスタン、ロシア、ベネズエラなどがその主なところだ。
 逆に、コモディティーの純輸入国であるインドやほとんどの欧州諸国は、この価格下落で利益を得ている。

3].貿易へのショックは金融と互いに影響し合う
 悪影響を被る企業の多くは多額の債務を抱えている。
 そのため、財務面にストレスが加わると、企業は借り入れと支出の圧縮を余儀なくされる。
 すると経済に直接ダメージが及ぶ。

4].さらに、金融情勢の変化はそうした圧力を増大させる。
 最も重要なのは金利と為替レートの変動であり、
 国を含む借り手の健全さに対する認識の変化だ。
 資本の流れの変化、リスク・プレミアムの変化、そして重要な中央銀行の政策変更などはストレスを悪化させる。
 現時点で言えば、最も重要な変更は米連邦準備理事会(FRB)が利上げに踏み切ることだろう。

■裸で泳いでいたのは誰?

 ウォーレン・バフェットが語ったように、
 「誰が裸で泳いでいるかは、潮が引いてみて初めて分かる」。
 国際決済銀行(BIS)によれば、米国外の銀行以外の借り手に対する信用供与額は今年の3月末時点で計9兆6000億ドルに達していた。
 ドル高になれば、いかなる通貨のミスマッチも高くつくことになる。

 最初に火の手が上がるのは非金融機関の企業のバランスシートかもしれないが、そこで生じる損失はやがて銀行や政府に打撃をもたらすだろう。
 従って、低利の借り入れで行われている「キャリートレード」の巻き戻しは大損害をもたらすかもしれない。
 交易条件の悪化や資本逃避、かつて流入した資本の引き揚げなどによる外貨準備の減少も、目に見える変化の1つだ。
 このため、中央銀行が安全性の高い長期債の売却に乗り出すことにより、金融の「量的引き締め」が引き起こされる可能性がある。

 すると、ショックが高所得国(米国も例外ではない)に伝播する可能性を備えた経路が1つ開かれる。
 もっともそれは、引き揚げられた資本が何に用いられるか、当事者である中央銀行がどんな政策を取るかによっても変わってくる。

■実体経済と金融の連鎖

 つまり、ここで見られる可能性があるのは実体経済と金融との連鎖である。
 中国で投資とGDP成長率が縮小すると、中国による製品購入を頼みの綱としていたり、中国の買い付けによって決まる価格水準に依存したりしている国の景気が悪化し、為替レートやリスクプレミアムの変動、さらにはキャリートレードの巻き戻しがバランスシートにストレスをもたらすのだ。

 では、政策立案者はどのように対応するのだろうか。
★.中国は外貨準備を減らし続けることはせず、人民元の為替レートを下落するに任せる
と見て間違いないだろう。

 そう考えられる理由の中で特に重要なのは、
★.実際に使用できる外貨は公表されている値よりも少ない
ということだ。

★.中国の外貨準備とされている数字には、
 アフリカなどへのインフラ整備投資など
 すぐには売却できないものが含まれている
のだ。

 ほかの新興国の政策発動余地は昔に比べれば大きいものの、無限ではない。
 ショックに抗うわけにはいかず、それに順応せざるを得なくなるだろう。

■「メード・イン・チャイナ」のグロース・リセッション

 一方、高所得国が採用し得る政策の選択肢には限りがある。
 財政拡張政策はほとんどの国で政治的に排除されているうえに、中央銀行の介入金利は0%に近く、多くの高所得国では民間部門のレバレッジもまだかなり高い水準にある。

 景気の減速が小幅だったら、大した策は講じられないかもしれない。
 逆にもし減速が大幅だったら、最善の対策は「ヘリコプターマネー」になるかもしれない。
 中央銀行がお札を刷ってばらまき、支出を刺激するというやり方だ。

 だが、実際にこれが用いられることはほとんどないと思われる。
 昔からのやり方が幅を利かせているからだ。

 要するに、世界経済が「メード・イン・チャイナ」のグロース・リセッションに陥るシナリオは、実現することが十分に考えられる。
 もし本当に実現したら、FRBが今このタイミングで引き締めに乗り出すことは、完全にばかげた判断に見えるようになるだろう。

 世界金融危機を伴うほどの大きな災いがもたらされると言っているわけではない。
 しかし、中国がもっとバランスの取れた経済成長パターンへの移行を完了するまで、そして高所得国がそれぞれの危機から立ち直るまで、世界経済は逆境に弱い状態が続くことになるだろう。
 この弱さを克服できるのは、まだずっと先の話だ。

By Martin Wolf
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【輝ける時のあと】


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