2015年9月11日金曜日

日本とインド(1):限りないインドの脆弱性、ネズミがトラクターを引っ張れるか?

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2015.9.11(金) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44769

中国を追い抜くことを夢見るインドの危うさ
経済成長率で逆転、怪しい統計が誤った安心感を生む恐れ
(2015年9月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 輝くインドが戻ってきた。
 少なくとも、大げさな物言いをする多くのインド人の話を聞けば、そう思える。
 中国経済が減速し、その市場と政策立案の信頼性がひっくり返ったため、世界一急速に成長する大きな経済国としてインドが中国を追い抜くと見ることは可能だろう。

 多くのインド人はナレンドラ・モディ首相のインド人民党(BJP)が10年前に前回政権の座にあった時に使われた「India Shining(輝くインド)」キャンペーンを思わせる言葉を使い、中国の不運に少なからぬチャンスを見いだしている。

■「そこどけ中国」の強気発言

 インドのアルン・ジェートリー財務相は英BBCとのインタビューで次のように語った。
 「インドのように8~9%のペースで成長できる経済は間違いなく、世界経済を支えるしっかりした肩を持っている」
 自分の名を冠した消費財グループを率いるアディ・ゴドレジ氏は、インドが「輝く」いい頃合いだと述べた。
 ジャヤント・シンハ財務担当国務相は特に強烈な「そこどけ中国」発言で、インドは中国から「世界の成長のバトンを引き継ぐ」用意があると語った。
 インドで最も貧しく、最も開発が遅れた州の1つに数えられるビハール州で、シンハ氏は観衆に向かって
 「近々、成長と開発の問題については、インドが中国を追い越す」
と語った。

 表面的には、楽観する余地がある。
 中国は猛烈な投資への依存を断とうとしており、経済は必然的に減速する。
 公式には、中国の成長率は今年、7%まで緩やかに低下する。
 実際には、あっという間に5%かそれ以下に向かう可能性が高い。
 一方、インドは7.7%拡大すると見られている。

 BRICSの仲間であるブラジル、ロシア、南アフリカを含む他の多くの新興国と異なり、インドは値段の高いコモディティー(商品)の輸出に支えられてこなかった。
 つまり、中国が引き起こしたコモディティー急落に足を引っ張られないということだ。
 それどころか、世界第3位の石油輸入国であるインドは、経常収支を改善し、インフレ圧力を和らげる石油価格低迷から大きな恩恵を受ける。

 また、インドは工業製品の大きな輸出国ではない。
 たとえ世界の需要が弱くても、国内総生産(GDP)の57%が家計消費から来ているインド経済は比較的守られている。

■ネズミがトラクターを引っ張れる?

 だが、インドが世界経済のメーンイベントになるという考えは、控えめに言っても欠陥がある。
 もしこれが慢心を引き起こすのだとすれば、全くもって危険だ。
 インドが世界経済の成長のエンジンとして中国に取って代わるという期待は、見当違いだ。
 名目ベース――ある経済国の世界的インパクトを図る際に最も適切な指標――では、インドの経済生産は中国のそれの5分の1だ。
 インドが世界のGDPに占める割合はたった2.5%。
 これに対して中国は13.5%にも上る。

 もし中国が年間5%ずつ成長したら、4年足らずで、すでに大きな経済生産にインド規模の経済を加えることになる。
 インドがこれに匹敵できると言うことは、ネズミがトラクターを引っ張れると言うようなものだ。

 総じて判断すると、人々は中国市場の発作を深読みしすぎた。
 確かに、株式市場を支え、より柔軟な為替相場制へ移行する試みが失敗したことで、絶対確実と見られていた中国の政策立案への信頼が揺らいだ。
 また確かに、最近の混乱は、投資主導から消費主導の経済へと移行する痛みを経験している中国経済の根深い問題の兆候だ。

 中国にとって、比較的容易なキャッチアップ成長の時代は終わった。
 だが、中国を見限るのは、ひどい見当違いだ。
 何しろ中国は、30年間に及ぶ目覚ましい発展の勢いを背に受けている。

■中国と同じくらい怪しいインドの統計

 インドが楽々と中国の成長レベルを越えようとしているという考えは、絶望的なまでに独りよがりだ。
 インドの統計は中国のそれと同じくらい怪しい。
 インドがGDPの算出方法を変更し、成長率が2%以上もかさ上げされたのが、ついこの2月だったことを人は忘れている。
 古い尺度では、インドはまだ立派とは到底言えない5%のペースでもたついている。

 かさ上げされた成長は、誤った安心感を生み出す。
 このことが、モディ氏率いる政権が、盛んに喧伝された改革を通過させるのにこれほど手間取っている理由を説明する助けになるかもしれない。
 インド議会は今会期中に、ほとんど何もしなかった。
 首相は、さまざまな州にまたがって事業を行うのを容易にするとエコノミストらが見ている物品サービス税を導入できなかった。
 農家からの反対に遭い、工場や道路、発電所の建設を容易にしたはずの土地改革もほぼ断念した。インドで事業を行うことは、引き続き、決して容易ではない。

 インドは世界経済から比較的切り離されているが、これは部分的には、他国が買う価値があると思うものをインドがあまり生産していないためだ。
 中国に取って代わり製造業の拠点になりたいと考えている国にとっては、これは強さというより弱さのように見える。

 怪しげな統計がインドが中国より速く成長していることを示しているからと言って、こうした問題が消えることはない。
 インドの当局者はほくそ笑むのをやめた方がいい――そして、意味のある改革を実行し始めるのが賢明だ。

By David Pilling
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サーチナニュース 2015-10-26 14:09
http://news.searchina.net/id/1592326?page=1

インドの高速鉄道計画、
「日本が『受注する決意』示した」と中国メディア

 中国メディアの環球網は23日、インドメディアの報道を引用し、日本がインド高速鉄道の受注に向け、低利での借款をインド側に提供する方針だと伝え、
 「インド初の高速鉄道を受注するための日本の決意を示すもの」
と伝えた。

 記事は、日本政府が14日にインドの首都ニューデリーで鉄道セミナーを開催したことを紹介。
 インドネシア高速鉄道計画では「日本は資金面の条件で中国に敵わず敗れた」と主張し、日本はインドの高速鉄道計画を受注することで巻き返しを狙っていると主張した。

 続けて、日本はムンバイとアーメダバードを結ぶ高速鉄道計画について、日本から車両など全体の30%の設備を購入することを条件に、建設費用総額の80%について資金提供する方針と報じた。

 一方で記事は、インド駐在で鉄道産業にかかわる中国人関係者の話として、
 「インドは世界から入札を募ると同時に、自国の鉄道技術を発展させたいと考えている」
と主張し、そのためインドは技術移転を望んでいると論じた。
 さらに、インドは高速鉄道というインフラの単純な売買は望んでいないとし、技術移転を通じて製造業のレベルを引き上げることがインド政府の長期的な目標だと主張した。

 さらに、インド国内では新幹線と中国高速鉄道の優劣についての議論が行われていると伝えつつ、
 「技術的には新幹線のほうが勝るが、コストパフォーマンスとしては中国高速鉄道が上」
という論調が中心だと報じた。



サーチナニュース 2015-12-09 10:51
http://news.searchina.net/id/1596495?page=1

インドが新幹線採用へ 
「費用高すぎ先行き不明」と中国メディア

 インド西部のムンバイとアーメダバードを結ぶ営業距離505キロメートルの高速鉄道建設に日本の新幹線方式を採用することで、日本とインドの両政府は8日までに合意した。
 中国の主要メディアは同話題について、あまり記事を発表していない。
 そんな中で、中国国営の中国新聞社は8日付で「費用が高すぎて先行き不明」などと否定的な見出しで同話題を紹介した。

 安倍首相は11日にから13日までインドを訪問する。
 12日にはインドのモディ首相との会談で、「新幹線の輸出」を最終合意する見通しだ。
 総事業費は約9800億ルピー(約1兆8020億円)で、日本は1兆円規模の円借款で支援することを検討している。

 日本の国際協力機構(JICA)とインド政府の鉄道部門は2013年12月、インドが建設する「高速鉄道の最もよい方式」の調査研究を開始。
 今年(15年)7月には「日本の新幹線技術によるものが、最もふさわしい」とする最終報告書をまとめた。

 報告書などによると、ムンバイとアーメダバードを結ぶ新幹線の最高時速は320キロメートルで、在来線で8時間かかった所要時間を2時間前後に短縮するという。
 着工予定は2017年で完成は2023年だ。
 インド政府は同路線を含め、高速鉄道7路線を建設する意向だ。

 中国新聞社は、
 「もしもインドが新幹線を採用すれば、日本の円借款の貸与先はインドがインドネシアを抜いて、第1位になるだろう」
と指摘した。

 ただしインドの新幹線について、見出しにある「費用が高すぎ先行き不明」に関連する記述は見あたらない。

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◆解説◆
 中国とインドは、最近では安定した関係構築を念頭に置いているが、潜在的には「厳しい対立関係」と考えてよい。
 まず、両国間には領土問題などがある。
 インドは「チベット亡命政府」の拠点を自国内に置くことも認め続けてきた。
 さらに中国は軍事、政治、経済など各分野で、インドと厳しく対立するパキスタンを優遇しつづけている。

 したがって、インドが国外技術に頼って高速鉄道を建設するなら、中国ではなく日本の新幹線方式を採用することは、さほど意外ではない。

 しかしインドは現時点において、「世界第2の大国」と言える。
 高速鉄道を売り込む市場としての魅力は絶大だ。
 中国にとって「予測はしていたが、やはりショック」というとが、報道の出足を鈍くしている可能性がある。

 さらに中国当局は、自国の高速鉄道を「技術力向上のシンボル」として国内にPRしてきた事情がある。
 「大国であるインドに売り込めなかった」との現実を国民が強く意識することも、中国当局にとって好都合ではない。



毎日新聞2015年12月9日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20151209/ddm/008/020/103000c

新幹線導入見通し 
米・タイ受注に弾み 
価格と安全性、両立課題

 

  インド西部の高速鉄道計画を巡り、同国政府が日本の新幹線方式を採用する見通しになった。
 安全性などが高く評価されたためだ。
 安倍晋三政権は成長戦略の柱の一つとしてインフラ輸出を掲げており、米国やタイなどでの受注獲得につなげたい考え。
 ただ、高速鉄道を巡っては中国や欧州勢も受注を目指しており、競争が激化しそうだ。

 「海外で台湾に続く2例目の受注になり、新幹線の売り込みで弾みがつく」。
 国土交通省幹部は毎日新聞の取材に対し、海外での受注拡大に期待を示した。

 新幹線方式の採用は12日にインドで開かれるモディ首相と安倍首相の首脳会談で合意する見通し。
 高速鉄道は西部のムンバイ−アーメダバード間の505キロを、最速2時間7分で結ぶ計画だ。
 総事業費は9800億ルピー(約1兆8100億円)で、2017年に着工し、23年の開業を予定している。

 インド政府が正式に新幹線方式の採用を決めた後、日本企業の中から入札を実施。
 日本勢は車両や信号、通信システムなどを一括して受注したい考えで、JR東日本などが受注を目指している。
 インドでは他6路線でも高速鉄道の計画があり、日本勢の受注拡大への期待も高まりそうだ。

 日印両国は13年から高速鉄道事業化の可否の調査に着手。
 早い段階から政府間で良好な関係を築いたことも新幹線方式採用の要因になった模様だ。
 ただ、新幹線の海外への売り込みでは07年開業の台湾以外に受注実績がなく、他国に競り負けた事例もある。

 日本政府はインドネシア・ジャワ島の高速鉄道計画で国を挙げた受注活動を展開。
 しかし、今年に入って中国が参入し、インドネシア政府は9月、中国方式の採用を決定した。
 中国が鉄道関連の融資で「政府保証」を求めないという破格の条件を提示したためだ。

 一方、インドで新幹線方式が採用される見通しになったのは、「金銭面の条件より、安全性や定時性が正当に評価された」(国交省幹部)ため。
 安全性能などの評価に力点が置かれれば、日本勢が受注できるとの期待は大きい。
 具体的には、現地企業が新幹線方式の鉄道運営に手を挙げた米テキサス州や、新幹線方式の調査が行われているタイの計画で「日本が受注できる」との観測が出ている。

 一方、米カリフォルニア州やマレーシア−シンガポール間の計画では、インドのように当事国間の話し合いではなく、中国勢や欧州勢も含めた国際入札で事業者を決定する方向。
 価格や金融支援の条件がより重視され、日本勢が競り負ける事態も想定される。

 新幹線を巡っては
 「中国勢と比べ、安全性能などが高いが、価格も割高。資金力の乏しい新興国には過剰な装備」
 「安易に安全性能を落とせば、新幹線のブランド力低下につながる」
などの指摘もある。
 当事国の実情に合わせ、価格の抑制と安全性の確保をどう両立するかが課題になりそうだ。

 ■KeyWord 新幹線

 日本国内の主要都市を結ぶ高速鉄道で、旧国鉄が1964年、東京−新大阪間で東海道新幹線を初めて開業。その後、山陽や東北、上越、北陸、九州で相次いで開業した。現在はJR各社が運営し、6路線の総延長は2388キロ。2016年3月には新青森−新函館北斗間で北海道新幹線が開業する予定だ。これらと別に、在来線の線路を走る山形などの「ミニ新幹線」もある。

 新幹線は最高速度が300キロ前後。在来線が乗り入れない専用線上を走り、旧国鉄やJR側に責任がある死亡事故はこれまで1件もない。東海道新幹線では1列車当たりの平均遅延時間はわずか0.6分(15年3月期)。高い安全性と定時性が新幹線の強みになっている。



読売新聞 2015年12月09日 07時21分
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20151209-OYT1T50003.html

新幹線、売り込み強化…インド採用見通し弾みに



 政府は、インド西部で計画中の高速鉄道(ムンバイ―アーメダバード間、約500キロ)に、日本の新幹線方式が採用される見通しになったことを弾みに、米国や東南アジアでも、新幹線方式の売り込みを強化したい考えだ。

 安倍首相は12日にインドでモディ首相と会談し、新幹線方式の導入で合意する予定だ。

 海外での日本の新幹線方式採用は、2007年に開業した台湾高速鉄道に次いで2例目となる。
 今回の総事業費は約9800億ルピー(約1兆8000億円)に上り、資金調達が課題だったが、日本政府は1兆円規模の円借款供与を行い、支援することを検討している。

 インドは現在7路線の高速鉄道を計画中で、日本や中国、フランスなどが受注を争っている。
 優先整備路線となっているムンバイ―アーメダバード間を受注できる見込みとなり、日本政府内では「新幹線をインド初の高速鉄道としてもアピールできる」(高官)と、他の高速鉄道計画への波及効果を期待する声が出ている。



レコードチャイナ 配信日時:2015年12月9日(水) 16時50分
http://www.recordchina.co.jp/a124725.html

インド、日本の新幹線を採用へ
=ライバル・中国のネットは「日本のアフターサービスにインドは頭を抱えることになる」
とさまざまな反応

 2015年12月9日、インドが計画中の高速鉄道で日本の新幹線方式を採用する見通しだと伝えられ、日本と高速鉄道の受注争いを繰り広げている中国のネットユーザーから数多くのコメントが寄せられている。

 インドは同国西部のムンバイ―アーメダバード間の高速鉄道計画で、新幹線方式の採用を固め、12日の日印首脳会談で合意する見通し。
 総事業費9800億ルピー(約1兆8000億円)のうち、日本政府は約1兆円の円借款の供与を検討している。

 同ニュースは中国でも伝えられ、ネットユーザーからは、
 「仮にインドが低価格な中国の高速鉄道を採用しても、利益を出すのは難しい。
 それなのによりコストが高い新幹線を採用するなんて、インドは選択を間違えた」
と否定的に見る声がある一方で、
 「中国の高速鉄道は日本の技術により成り立っている」
と、日本の新幹線を称える声が聞かれた。

 さらに、
 「日本の新幹線が成功しているのは、日本の環境や日本人の性格に由来している部分が大きい。
 インドは環境も民族性も日本とは大きく異なる。
 日本の新幹線を採用した後、日本人に管理や運営を任せれば問題はないと思うが、自国で管理する場合、高い確率で問題が起きる」
と客観的な意見も寄せられた。

 このほか、2007年に日本の新幹線方式を導入した台湾が、システム更新に100億台湾ドル(約377億円)かかると先月報じられ、日本のアフターサービスのコストが高いと話題となった。
 これに関連したコメントも多く見られ、
 「このままではインドは台湾と同じ状況に陥る。
 コストの高さに破産しかねない」
 「日本のアフターサービスのコストの高さにインドは頭を抱えることになる」
と指摘している。