なんとなく習近平の最後の舞台というか、最後の栄光のように見える。
これから中国は混乱の時代へ突入するような予感がする。
パレードに並べられた兵器を基準に、世界はそれに対する防御を指向するだろう。
周辺国は軍事強化に乗りざさざるを得なくなる。
日本は「待ってました」とばかりに中国の脅威を煽り立てて軍事力の増強に走ることになる。
世界不安定にするキッカケを与えたようなものだろう。
習近平にしたらつかの間の絶頂の気分を味わいたかったのかもしれない。
『
ロイター 2015年 09月 3日 16:47 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/09/03/china-xi-parade-idJPKCN0R306520150903
中国は平和的発展の道歩む、軍の規模縮小へ
=習国家主席
中国の習近平国家主席は3日、抗日戦争勝利70年の記念式典で、中国は常に平和的発展の道を歩んでいくと表明するとともに、軍の規模を30万人相当縮小する方針を示した。
現在、中国軍の規模は約230万人。
国家主席は規模縮小の期限は示さなかった。
国家主席は演説で、歴史の繰り返しを許さないと表明。
世界はまだ平和でなく、中国は断固として平和を守る、と語った。
演説後、軍事パレードが開始。中国軍を中心にロシアなどの外国部隊を含む1万2000人以上の兵士が大通りを行進し、複数の大陸間弾道ミサイルも公開された。
式典には、ロシアのプーチン大統領やスーダンのバシル大統領のほか、中国とつながりの深い複数の国家の首脳が参加。
外交筋によると、欧米の首脳は式典への招待を辞退した。
習国家主席にとって今回のパレードは、
中国株の急落や景気減速、約160人の死者が出た天津の倉庫爆発などの国内問題から国民の気をそらすのに好都合のイベント
とみられている。
』
『
2015.9.2(水) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44686
中国にとって危険な軍国主義の誘惑
下手をすれば、経済的成功の土台を破壊する恐れも
(2015年9月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
9月3日に北京で行われる大規模な軍事パレードは過去に関する行事のはずだ。
しかし、アジア太平洋地域の国々の多くは、必然的に、これを未来に関する不穏なメッセージととらえることになるだろう。
中国政府は「日本の侵略戦争での勝利(抗日戦争勝利)」の70周年を記念するためにパレードの実施を決めた。
だが、21世紀には、
★.多くのアジア諸国が心配しているのは中国による侵略の可能性だ。
中国はいくつかの近隣諸国と未解決の領有権問題を抱えている。
ベトナム、インド、日本、そしてフィリピンは、中国がその軍事力を背景に問題の領域に侵入してくるとの不満を表明してきた。
また中国は今年、南シナ海での「埋め立て」プロジェクトにも取り組んだ。
滑走路や軍事施設を備えることになりそうな島をいくつか丸ごと作り出し、本土から何千マイルも離れた海域の領有権の主張を補強しようという試みだ。
こうしたあからさまな軍国主義は、リスクの大きな進路だ。
何か間違いが起これば、過去40年間の中国の目覚ましい経済的成功の土台となった国際秩序を破壊する恐れもある。
■習近平国家主席の指揮下で攻撃的になるアプローチ
1970年代後半以降、中国の歴代の指導者たちは、この国が経済の面で変化を遂げられるか否かはグローバル化次第であり、主要な貿易相手国との平和的な関係次第であることを理解していた。
そのメッセージを伝えるために、「平和的台頭」とか「和諧世界(調和の取れた世界)」といったスローガンを繰り返し唱えていた。
しかし、習近平国家主席の指揮下で、中国は「核心的利益」の一部と見なす領有権問題について、より攻撃的なアプローチを取る方向に傾いているように見える。
このことは強さと弱さの両方を反映している。
一方では、中国はいまや――いくつかの指標によれば――世界最大の経済大国だ。
習近平氏と中国政府は、この国は以前よりも直接的に力を行使できるほど強くなったと感じているのかもしれない。
実際、台湾や南シナ海を巡って中国と衝突するリスクを取るつもりは米国にはないと思うと公言する戦略家もこの国にはいる。
しかし、軍国主義の誘惑は、中国が現在直面している経済的過渡期の困難さによっても強まるかもしれない。
1年にわたって急上昇してきた株価はこの夏に突然終り、景気は減速しつつある。
習近平氏の汚職撲滅キャンペーンには共産党のトップクラスの幹部も不満を抱いている。
天津の産業施設で先日起きたひどい事故と大爆発は、現代の中国に広がっている不満の最大級の原因を2つ浮き彫りにしてみせた。
★.1つは環境対策のひどさであり、
★.もう1つは、裕福な権力者たちが規制をないがしろにしているという感覚だ。
このような状況では、愛国的な軍事パレードはまさに、共産党とその指導者層への国民の支持を取りつける格好のイベントに見えるかもしれない。
今回のパレードは、広く知られる1989年の学生運動弾圧の現場である天安門広場を通る。
共産党はあの日からずっと、自らの正統性を2本の柱で支えてきた。
★.1本目は力強い経済成長。
★.2本目はナショナリズムで、習近平氏が言うところの「中華民族の偉大なる復興」だ。
経済成長が鈍化する中で、明らかに、もっとナショナリズムに依存しようとする強い衝動が存在している。
■ナショナリズムのカードを切るリスク
しかし、ナショナリズムのカードを使えば新たなリスクが生じる。
その証拠は、アジア太平洋地域で緊張が明らかに高まっていることに求められる。
日本では安倍晋三首相が率いる政府が、自衛隊が外国で戦えるように平和主義憲法を改訂しようとする物議を醸すプロセスのさなかにある。
米国海軍はつい先日、アジア太平洋地域に派遣する艦船を増やす計画を発表した。
国防総省の高官は当てつけのように、「南シナ海での役割にぴったりの」艦船を選んだと強調してみせた。
オーストラリアは今週、防衛費の増額と米国との軍事協力強化を発表した。
インドはすでに世界第2位の武器輸入国であり、やはり米国に接近しつつある。
そして今年の初夏にはフィリピンのベニグノ・アキノ大統領が、南シナ海での中国政府の振る舞いに対する世界の反応を、かつてのナチス・ドイツへの宥和政策になぞらえた。
もちろん、中東各地の暴力的な混乱は言うまでもなく、ウクライナでの戦闘と比べても、アジア太平洋地域の状況は依然、うらやましいほど落ち着いている。
だが、アジアの緊張は中東より低いものの、利害はより大きい。
★.アジアにおける軍事的な緊張は、
中国、米国、日本という世界3大経済国がかかわっているからだ。
習氏と他の指導部は間違いなく、深刻な軍事衝突が中国にとって悲劇的なミスになることを知っているはずだ。
★.本当のリスクは、中国が戦争を選ぶことではなく、中国の指導部が近隣諸国や米国の反応を読み誤り、領有権紛争や海上での予期せぬ軍事衝突が重大な国際問題に発展することだ。
たとえ、そうした危機がすぐに鎮静化されたとしても、政治的な影響は中国と世界経済の双方に長期的なダメージを与える恐れがある。
■中国の「平和的台頭」を維持できるか
中国の成長モデルに関する危機が盛んに取り沙汰されているが、中国はこの先まだ何年も、ますます繁栄していく可能性が高い。
その見通しを脅かす最大のリスクは、株式市場の暴落でもなければ、信用バブルでもない。
それは近隣諸国との紛争によって中国の「平和的台頭」が妨げられる事態だ。
中国の指導者たちは、3日に敬礼する際に、その危険を見失ってはならない。
By Gideon Rachman
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』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年9月4日(金) 8時13分
http://www.recordchina.co.jp/a118274.html
抗日戦争勝利70周年の祝日で、訪日中国人が増加
=日本メディアの報道に、欧米ネットは「国家のプライドが台無しだ」
「プロパガンダに聞こえる」
2015年9月3日、日本メディアは、中国では抗日戦争勝利70周年の今年は9月3日が祝日となったことから、日本を訪れる中国人観光客が増加していると報じた。
この報道に、欧米のネットユーザーがコメントを寄せている。
中国は3日、抗日戦争勝利70周年の記念行事を行った。
今年は3日が祝日となり、5日までが連休となったことから、この期間を利用して日本を訪れる中国人観光客が増えたと伝えている。
日本メディアの取材に中国人女性は、
「日本に来るのは今回が3度目で、最も好きな旅先の1つ。
短い休暇の今回は、近くて行きやすい日本を選んだ」
と語っている。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年9月4日(金) 14時55分
http://www.recordchina.co.jp/a118311.html
中国の軍事パレードは「出し惜しみ?」、
隠し玉登場せず「ほどほどにプレゼンした」―海外メディア
2015年9月3日、中国の首都・北京で抗日戦争勝利70周年記念式典が行われ、過去最大級の軍事パレードが世界的注目を集めた。
ここでお目見えした兵器の数々は全て国産で、8割超が初公開となる新型兵器だったが、海外の各メディアはこれをどう伝えたか。
中国共産党系新聞・環球時報の報道。
英紙フィナンシャル・タイムズはパレードに次々と登場した中国の軍装備について、
「中国が過去20年にわたり、年に2ケタ単位で増額してきた国防費の成果」
と皮肉った。
同じくロイター通信も、
「世界最高額の国防費を注いでいる国だけある。
パレードでは中国が現段階で見せうる最高の軍備を取りそろえた」
とした。
そのほか、海外複数のメディアは、今回の軍事パレードが
「米国や日本をけん制するもの」
「中国と領土問題で争う周辺国が軍拡を推進するきっかけになる」
などと評した。
ただし、韓国紙・世界日報はパレードで披露されると目されていたステルス戦闘機J-20、J-31や大陸間弾道ミサイルDF-41が見られなかったことについて、
「米国を過度に刺激することを避けた」
と推測した。
また、ある匿名の軍事専門家が環球時報紙に語ったところによると、今回の軍事パレードは
「中国の軍事力をほどほどに示しただけ」
という。
裏を返せば、
「ここまで見せておけば敵対国に恐れを抱かせるのに十分」
と考え、むしろ想像の余白を残したプレゼンテーションだったという。
』
増満もなかなかのものである。
『
ウオールストリートジャーナル 2015 年 9 月 4 日 19:23 JST By Chun Han Wong
http://jp.wsj.com/articles/SB10327460236075474355904581212301235847600?mod=WSJJP_hpp_MIDDLENexttoWhatsNewsSecond
中国軍事パレード、注目すべき5つの要点
中国は3日、抗日戦争勝利70周年を記念する大々的な軍事パレードを開催した。
このパレードの主な観客は国民だったが、国力の誇示は中国軍について多くのことを物語っているだけでなく、中国の指導者たちがそれをどう利用しようと考えているかも明らかにした。
中国の軍事パレードで浮き彫りになった注目すべき5つの要点を挙げてみたい。
1:軍隊のスリム化
中国が通常祝ってこなかった記念日に軍事パレードを行うことについて、近隣諸国は中国による一連の挑発だと受け止めた。
ところが、習近平国家主席は演説で、中国人民解放軍の兵力を30万人削減すると発表した。
外国の軍事専門家らは、中国の現役軍人は230万人と推計している。
ただ専門家は、兵力削減により、中国は浮いた支出を武器や海軍の訓練に回すことができるとみている。
2:最新鋭ミサイルの披露
3日の軍事パレードで、中国はますます強力な弾道ミサイルの保有を誇示することができた。
軍事力では米国がなお優位にあるが、それに対抗する力を中国がさらに強化していることがうかがえる。
パレードでは「東風」ミサイルが披露された。
また、米空母戦闘に脅威になるとされる対艦弾道ミサイル(ASBM)DF-21Dのほか、通常弾頭で初めて中国本土からグアムまで届く飛距離を持つD26弾道ミサイルが今回初めて披露された。
3:外国部隊が参加した軍事行進
中国のこの大々的な勇ましいパレードに参加するため、約17カ国が軍隊を派遣した。
しかし、中国と条約を結ぶ唯一の同盟国、北朝鮮の金正恩第1書記は、この機会に花を添える必要があるとは考えなかったようだ(崔竜海労働党書記が北朝鮮を代表して出席)。
パレードの意外な出席者には、民族衣装のスル(巻きスカート)をはいたフィジーの7人の代表団や、外国勢の軍事行進を率いたアフガニスタンの3人の兵士、南太平洋の島国バヌアツの7人の分隊などが含まれていた。
4:習主席の統率力誇示
今回の壮大な軍事パレードで、習国家主席は中国軍に対する統制力を明確に示すことができた。
習主席を乗せたリムジンが長安街のアスファルトの上を滑らかに進むと、1万2000人ほどの兵士が主席を心からの声援で迎えた。
歴代の主席も同じような閲兵式を主催してきたが、抗日戦争勝利70周年を記念する軍事パレードを開催したのは習主席が初めてだ。
5:上級武官が陣頭指揮
当局者らによると、指導力を発揮しモラルを高めるために、50人を超える軍司令官が編隊や戦闘機部隊を率いた。
国営新華社によると、上級クラスの武官が自分たちが指揮する部隊とともにパレードに参加したのは1949年以降初めて。
一方、中国中央テレビ(CCTV)は、前回こうした例が見られたのは1955年の建国記念日のパレードだったと報じた。
』
『
WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2015年09月09日(Wed)
小原凡司 (東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5345
中国の軍事パレード
実は国民向けのPRだった
中国は第二次世界大戦の勝者であり、国際社会を主導する資格と権利がある
2015年9月3日に北京で挙行された軍事パレードは、中国国外から観る者にとっては矛盾を孕むものだった。
中国は、言っていることと、やっていることが違うだろう、ということである。
軍事パレードに先立つ演説で、習近平主席は、「中国は永遠に覇を唱えず、永遠に拡張しない」と述べた。
中国の平和的台頭を主張しているのだ。
国防白書2015「中国の軍事戦略」の前言にも全く同様の表現があるが、実は、この表現は新しいものではない。
「中国は永遠に覇を唱えず、永遠に拡張しない」というフレーズは、2002年の中国共産党第16回全国代表大会において江沢民氏が使用して以降、胡錦濤前主席も使い続けてきた。
■米国に対抗できる能力を誇示した
しかし、これまでの中国の南シナ海における行動等を見て、これを簡単に信じる国はないだろう。
最近でも、中国は、南シナ海においてサンゴ礁を埋め立てて人工島を建設し、軍事施設と思しき建造物の建設を進めている。
さらに、これは、軍事パレードの場で述べられたのだ。
そもそも軍事パレードは、軍の威容を示すものである。
しかも、中国が、今回の軍事パレードにおいて、米国に対抗できる能力を誇示したことは明らかだ。
軍事パレードにおける兵器の披露の仕方が、米国を意識したものだったからである。
航空部隊を率いたKJ-2000は、南シナ海や東シナ海で活動する米軍機を監視し、戦闘機を管制する。
1機300億円とも言われ、5機しか装備されていないと言われるKJ-2000に対して、KJ-500は価格が安く、大量生産が可能だとされる。
機数が揃えば、南シナ海等における監視能力は飛躍的に向上する可能性がある。
また、長剣10巡航ミサイルを発射可能なH-6K長距離爆撃機は、中国では、グアム島の米軍基地を制圧できると宣伝される。
J-15戦闘機は、わざわざ、空母着艦時にアレスティング・ワイヤーに引っ掛けるフックを下して飛行した。
空母艦載機であることを誇示するためである。
中国が、正規空母を運用できることを示したかったのだ。
そして、弾道ミサイル群も、上記の航空機群とともに、西太平洋及びアジア地域における米軍の活動を無力化できることを誇示する、バラエティーに富んだ陣容となった。
射程1000キロメートルとされるDF-16は、第一列島線をターゲットにしていると言われる。
沖縄から南西諸島に所在する米軍基地や、自衛隊基地を狙うと言うのだ。
その技術に各国が疑念を抱きつつも、その能力を否定することもできない、DF-21D対艦弾道ミサイルも披露された。
■対艦弾道ミサイル「空母キラー」
中国の対艦弾道ミサイル(ASBM:Anti-Ship Ballistic Missile)は、単純な放物線を描いて飛翔するのではなく、最終段階で飛翔経路を変えられるという。
この技術が確立しているとすれば、現有の弾道ミサイル防衛(BMD:Ballistic Missile Defense)で撃墜することが極めて難しい。「空母キラー」と呼ばれる所以である。
米国の空母打撃群が中国に進攻して来ても、中国本土から1500~3000キロメートル離れた海域で廃滅させる能力を示したのだ。
中距離弾道ミサイルDF-26の射程は、3000~4000キロメートルと言われ、日本や韓国に所在する米軍基地を全て射程に収める。
そして、中国では、米国と対等な立場を示すものは、やはり核抑止力だと認識されている。
大陸間弾道ミサイル(ICBM:Inter-Continental Ballistic Missile)である。
中国の大陸間弾道ミサイルの射程は、米国のほぼ全土をカバーできると言われる。
TEL(Transporter Erector Launcher:輸送、起立、発射用車両)に搭載された、巨大なDF-31Aは、ゆっくりと、各国首脳及び代表団が居並ぶ観閲台の前を通り過ぎた。
その後ろを、DF-5B大陸間弾道ミサイルが、トレーラーに搭載されて行進した。
DF-5Bは、ミサイル自体は新しいものではなく、液体燃料を使用しているが、多弾頭化され、1基のミサイルに3発の核弾頭を搭載できると言われている。
軍事力を誇示しておきながら、平和を強調することに矛盾を感じるのである。
実は、この矛盾は、中国指導部が、異なるメッセージを軍事パレードに込めたから生じたものだ。
■中国国民に向けたPR
「中国は発展し、国際社会のルールを決めていくのは米中両大国だ」
習近平指導部が中国の軍事力を誇示したかったのは、実は中国国民に対してである。
一方で、国際社会に対しては、中国が平和の支持者であると示したかった。
軍事パレードは、中国国内に向けて、中国が第二次世界大戦の勝者であり、国際社会を主導する資格と権利があり、今や中国にはその能力があると示す場だったのである。
中国国民に、中国の経済発展を信じさせ、社会を安定させるためだ。
「これから中国が発展する番なのだ」というイメージを国民に与えることが重要だったのである。
中国が米国の軍事力を意識した兵器を披露したのは、今後、国際社会のルールを決めていくのは米中両大国であると示したかったからだ。
中国は、米国が中国の発展を妨害するのではないかと恐れている。
その手段には、軍事力も含まれる。
近年、中国が主張している米中「新型大国関係」は、極端に言えば、
★.中国が自由に国益を追求しても、米国が軍事力を行使しない関係である。
中国は、米国との軍事衝突は何としても避けたい。
勝てないからだ。
中国は、米国が中国に対して軍事力を行使しないぎりぎりの落としどころを探りながら、国際ルールを変えていこうとしているのだとも言える。
しかし、当の米中関係は、中国の思いどおりに進展している訳ではない。
5月20日に、米国が、中国の南シナ海における人工島建設の状況をCNNに報道させたのは、中国が力を以て国際規範を変えようとしていることを、世界に知らしめるためだ。
米海軍が監視飛行を繰り返しても、米国と水面下で決着できると考えていた中国にとっては衝撃だっただろう。
米中間の問題ではなく、中国が国際社会に挑戦するという構図になってしまうからだ。
米国および周辺各国との対立の構図が鮮明になる中で、中国はその軍事力を誇示することになってしまった。
不安定化した中国社会を安定させ、共産党に対する求心力を高めるために、軍事パレードは、必要なイベントだった。
しかし、中国の平和的な台頭を信じられない各国は、ますます警戒感を高める結果になってしまった。
■中国が平和の支持者であると主張できるのは
日中関係の改善くらいしかない
習近平主席訪米の際に、米国から種々の問題について非難され、対立ばかりがクローズ・アップされることは、中国にとって好ましい状況ではない。
中国は、現在の国際社会に対抗する新しい政治・経済ブロックを構築しようとしている訳ではないのだ。
そうした状況の下で、中国が、平和の支持者であると主張できるのは、日中関係の改善くらいしかない。
中国では、8月14日に発表された「安倍談話」は極めて不評である。
それでも、非難を抑制したのは、日中関係の改善を期待したからだ。
中国の報道を見れば、9月3日の安倍首相の訪中に期待していたのは明らかである。
安倍首相と習主席の首脳会談が実現していれば、習主席が訪米した際にも、東アジアの安定に寄与していると主張することが出来ただろう。
しかし、安倍首相の訪中は中止された。
中国は、減速する経済を再浮揚させるためにも日本との関係改善が不可欠であるが、外交面でも大きなダメージである。
日本政府には、安保法案の国会審議等、安倍首相が日本を離れられない理由がある。
しかし、日中関係は、日中二国間だけの問題ではない。
中国と韓国は、軍事パレードに先立って行われた中韓首脳会談において、日中韓首脳会談の開催を決定した。
韓国側から提案したと言われるが、中国は、自らが北東アジアの平和のために努力していると主張するだろう。
また、日中関係には、米国も関わってくる。
さらに、もう一国、注目しなければならない国がある。
米中二極に対抗して、第三極として生き残るゲームを、アジアで展開しようとするロシアだ。
現在の日本と中国は、ロシアにとって扱いやすい。
日中間がほぼ断絶状態だからだ。
イランの核開発問題で存在感を見せたロシアに対して、米国は態度を軟化させたと言われる。
こうした状況が、ロシアにとって日本の利用価値を下げた。
北方四島返還の議論のテーブルにロシアを着かせるためには、ロシアに、日本が必要だと認識させなければならない。
日中が種々の問題について直接協議できるようになれば、中ロ関係にも影響を及ぼし、日本のロシアに対するオプションが増えるかも知れない。
日本は、中国との関係を考える際にも、米国やロシアといった他の大国の意図を見ながら難しいかじ取りを迫られる。
中国だけに目を奪われれば、さらに大きな盤でゲームを試みる他の大国に、駒扱いされることになりかねない。
』
『
時事通信 9月10日(木)15時35分配信
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201509/2015091000614&g=int
中国軍の上陸阻止=海上に向け砲撃演習―台湾国防部
●軍事演習で海に向けて砲撃する台湾軍の自走砲=10日、台湾・新竹県
【新竹(台湾北部)時事】台湾の国防部(国防省)は10日、新竹県の演習場で自走砲による砲撃演習を内外メディアに公開した。
中国軍の台湾侵攻を想定した陸海空軍合同の「漢光演習」の一環。
演習場には、M109、M110の38両の自走砲を海に面して配置。
中国軍の船艇による上陸を阻止するとの想定で、7キロ先の沖合の目標に向けて約300発の砲弾を発射した。
馬英九総統も3軍トップとして観閲し、
「両岸(中台)関係が安定しても、台湾防衛を怠ることは絶対にない」
と強調した。
演習は7日から始まり、11日まで行われる。
』
『
毎日新聞 9月10日(木)19時18分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150910-00000076-mai-cn
<台湾>上陸部隊阻止の大規模軍事演習をメディア公開
【新竹(台湾北部)鈴木玲子】
台湾国防部(国防省)は10日、北部・新竹県の演習場で、中国軍の台湾侵攻を想定した大規模軍事演習「漢光31号」を実施し、内外メディアに公開した。
演習は海から侵攻してきた中国軍の艦艇による上陸を阻止するとの想定で、台湾海峡の沿岸部に配置されたM109、M110の自走砲38両が約7キロ沖合の目標に向けて約300発の砲弾を発射した。
陸海空3軍の統帥権を持つ馬英九総統が観閲し
「両岸(中台)関係は最も安定した状態にあるが、防衛はわずかな怠りも決してない」
と強調した。
漢光演習は7日から始まり、11日まで各地で実施される。
一方、中国海事局は10日、福建省沖で11~13日に軍事演習が実施されるため、指定海域への船舶の進入を禁じると発表した。
中国軍は7月に内モンゴル自治区で台湾の総統府や周辺の建物などを再現して演習を実施している。
』
『
サーチナニュース 2015-09-04 18:07
http://news.searchina.net/id/1587677?page=1
習近平主席が左手で敬礼?
全世界に向けて「演技」の可能性も<如月の見方>
中国政府が3日に実施した抗日戦争と第二次世界大戦の勝利70周年を記念する大規模な軍事パレードで、
★.習近平国家主席が「左手で敬礼した」ことが、中国で話題になった。
はっきりとした敬礼ではなく、曖昧な動作だが、「計算した上での政治的演出」だった可能性もある。
まず、注目したいのが習近平主席の表情だ。
抗日戦の意義を強調し、勝利を称えた演説でも、最後の部分に「正義は必ず勝つ!」などと唱えた部分以外、表情に乏しかった。
自動車に乗り、立ち上がって閲兵した際にも、胡錦濤前主席が軍事パレードの際に見せた緊張した表情でもなく、かと言って高揚しているのでもない。
★.「つまらなさそうにしていた」との見方もできる
ほどだ。
さらに、習近平主席は車上で、部隊の方を眺めて左手を顔の横まで持ち上げ、斜めにかしげた。「左手で敬礼」したようにも見える。
インターネットでは一時、「敬礼の慣例も知らないのか」などの批判も出たとされる。
多くの中国メディアが同日中に、「単に軍部隊に挨拶しただけ」との記事を掲載した。
まず、“あるネット民”の書き込みを紹介。
同書き込みは「老子」の一節「吉事は左、凶事は右に属する。君子は左を貴ぶ、用兵は右を貴ぶ」を挙げたという。
古い中国の制度では「国をしっかりと治める場合、左側の方向性を好む。
戦いの場合には右側を好む」ことになっていたので、「左手で敬礼をしたのは、武力は用いない意思表示」との見方だ。
ただし人民日報は微博(ウェイボー、中国版ツイッター)の公式アカウントで、「老子」を引用した書き込みに触れた上で、
「実際には撮影の角度で(敬礼との)誤解を招いただけ。
本当は習近平主席は軍の将兵にあいさつをしただけなのです」
と表明。
多くのメディアが次々に「単なるあいさつ」と報じはじめた。
4日午後4時現在(日本時間)、「習近平主席は敬礼の仕方も知らない」との批判の書き込みは見当たらなくなった。
中国全国、さらに全世界から注目を集める場で、習主席に「不用意な振る舞い」があったとは考えにくい。
逆に「計算しつくされた表情や動作」と考えるのが当然だ。
大規模な軍事パレードは、国内向けには共産党の威信を改めて実感させる効果がある。
さらに日本や米国など、中国と対立点のある国に対して「意志と実力を誇示」することになる。
しかし一方では、世界全体に「軍国主義」とのイメージを与えてしまうリスクもある。
国内で当局が対処に苦慮することもある「排他的愛国思想」を煽り立てる可能性も否定できない。
習主席は演説中で、中国は他国に対して永遠に「中国が受けた苦しみを与えることはしない」などと強調。
さらに兵力30万人の削減も宣言した。
中国人民解放軍の現役兵は約220万人と見られているので、1割強の削減ということになる。
仮に習主席が高揚した表情を浮かべていたのでは、「軍事に熱中」との印象を与えかねない。
したがって、各種武器による戦力の誇示とはうらはらに、「熱意のない表情」を浮かべたと考えられる。
“左手の敬礼”についても、事前からの計算があった可能性がある。
ネットである程度話題になってから、老子を引用した上で「武力は用いないとの意思表示」という用意しておいた書き込みをさせる。
メディアは予定通り、同投稿を記事化。
最後に「本当は、単なる挨拶」と追加すれば、「武力不使用の意思表示」説には、当局もメディアも責任を取る必要がなくなる。
しかし、読んだ人には「そういうことかも」というイメージが強く残る。
“左手の敬礼”と関連報道の関係は「仮説」に過ぎないが、軍事パレードに際しての習主席の言動を見るかぎり、中国は同政治イベントが抱えるリスクも十分に認識し、できるかぎり低減しようとしたと考えてよい。
**********
◆解説◆
兵力30万人の削減がイメージアップを狙った宣言であることは間違いないが、実際の思惑は不明。
人件費の削減分で高性能の兵器を増やし、軍事力を向上させることも可能だからだ。
(編集担当:如月隼人)
』
【輝ける時のあと】
ウオールストリートジャーナル 2015 年 9 月 4 日 19:23 JST By Chun Han Wong
http://jp.wsj.com/articles/SB10327460236075474355904581212301235847600?mod=WSJJP_hpp_MIDDLENexttoWhatsNewsSecond
中国軍事パレード、注目すべき5つの要点
中国は3日、抗日戦争勝利70周年を記念する大々的な軍事パレードを開催した。
このパレードの主な観客は国民だったが、国力の誇示は中国軍について多くのことを物語っているだけでなく、中国の指導者たちがそれをどう利用しようと考えているかも明らかにした。
中国の軍事パレードで浮き彫りになった注目すべき5つの要点を挙げてみたい。
1:軍隊のスリム化
中国が通常祝ってこなかった記念日に軍事パレードを行うことについて、近隣諸国は中国による一連の挑発だと受け止めた。
ところが、習近平国家主席は演説で、中国人民解放軍の兵力を30万人削減すると発表した。
外国の軍事専門家らは、中国の現役軍人は230万人と推計している。
ただ専門家は、兵力削減により、中国は浮いた支出を武器や海軍の訓練に回すことができるとみている。
2:最新鋭ミサイルの披露
3日の軍事パレードで、中国はますます強力な弾道ミサイルの保有を誇示することができた。
軍事力では米国がなお優位にあるが、それに対抗する力を中国がさらに強化していることがうかがえる。
パレードでは「東風」ミサイルが披露された。
また、米空母戦闘に脅威になるとされる対艦弾道ミサイル(ASBM)DF-21Dのほか、通常弾頭で初めて中国本土からグアムまで届く飛距離を持つD26弾道ミサイルが今回初めて披露された。
3:外国部隊が参加した軍事行進
中国のこの大々的な勇ましいパレードに参加するため、約17カ国が軍隊を派遣した。
しかし、中国と条約を結ぶ唯一の同盟国、北朝鮮の金正恩第1書記は、この機会に花を添える必要があるとは考えなかったようだ(崔竜海労働党書記が北朝鮮を代表して出席)。
パレードの意外な出席者には、民族衣装のスル(巻きスカート)をはいたフィジーの7人の代表団や、外国勢の軍事行進を率いたアフガニスタンの3人の兵士、南太平洋の島国バヌアツの7人の分隊などが含まれていた。
4:習主席の統率力誇示
今回の壮大な軍事パレードで、習国家主席は中国軍に対する統制力を明確に示すことができた。
習主席を乗せたリムジンが長安街のアスファルトの上を滑らかに進むと、1万2000人ほどの兵士が主席を心からの声援で迎えた。
歴代の主席も同じような閲兵式を主催してきたが、抗日戦争勝利70周年を記念する軍事パレードを開催したのは習主席が初めてだ。
5:上級武官が陣頭指揮
当局者らによると、指導力を発揮しモラルを高めるために、50人を超える軍司令官が編隊や戦闘機部隊を率いた。
国営新華社によると、上級クラスの武官が自分たちが指揮する部隊とともにパレードに参加したのは1949年以降初めて。
一方、中国中央テレビ(CCTV)は、前回こうした例が見られたのは1955年の建国記念日のパレードだったと報じた。
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WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2015年09月09日(Wed)
小原凡司 (東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5345
中国の軍事パレード
実は国民向けのPRだった
中国は第二次世界大戦の勝者であり、国際社会を主導する資格と権利がある
2015年9月3日に北京で挙行された軍事パレードは、中国国外から観る者にとっては矛盾を孕むものだった。
中国は、言っていることと、やっていることが違うだろう、ということである。
軍事パレードに先立つ演説で、習近平主席は、「中国は永遠に覇を唱えず、永遠に拡張しない」と述べた。
中国の平和的台頭を主張しているのだ。
国防白書2015「中国の軍事戦略」の前言にも全く同様の表現があるが、実は、この表現は新しいものではない。
「中国は永遠に覇を唱えず、永遠に拡張しない」というフレーズは、2002年の中国共産党第16回全国代表大会において江沢民氏が使用して以降、胡錦濤前主席も使い続けてきた。
■米国に対抗できる能力を誇示した
しかし、これまでの中国の南シナ海における行動等を見て、これを簡単に信じる国はないだろう。
最近でも、中国は、南シナ海においてサンゴ礁を埋め立てて人工島を建設し、軍事施設と思しき建造物の建設を進めている。
さらに、これは、軍事パレードの場で述べられたのだ。
そもそも軍事パレードは、軍の威容を示すものである。
しかも、中国が、今回の軍事パレードにおいて、米国に対抗できる能力を誇示したことは明らかだ。
軍事パレードにおける兵器の披露の仕方が、米国を意識したものだったからである。
航空部隊を率いたKJ-2000は、南シナ海や東シナ海で活動する米軍機を監視し、戦闘機を管制する。
1機300億円とも言われ、5機しか装備されていないと言われるKJ-2000に対して、KJ-500は価格が安く、大量生産が可能だとされる。
機数が揃えば、南シナ海等における監視能力は飛躍的に向上する可能性がある。
また、長剣10巡航ミサイルを発射可能なH-6K長距離爆撃機は、中国では、グアム島の米軍基地を制圧できると宣伝される。
J-15戦闘機は、わざわざ、空母着艦時にアレスティング・ワイヤーに引っ掛けるフックを下して飛行した。
空母艦載機であることを誇示するためである。
中国が、正規空母を運用できることを示したかったのだ。
そして、弾道ミサイル群も、上記の航空機群とともに、西太平洋及びアジア地域における米軍の活動を無力化できることを誇示する、バラエティーに富んだ陣容となった。
射程1000キロメートルとされるDF-16は、第一列島線をターゲットにしていると言われる。
沖縄から南西諸島に所在する米軍基地や、自衛隊基地を狙うと言うのだ。
その技術に各国が疑念を抱きつつも、その能力を否定することもできない、DF-21D対艦弾道ミサイルも披露された。
■対艦弾道ミサイル「空母キラー」
中国の対艦弾道ミサイル(ASBM:Anti-Ship Ballistic Missile)は、単純な放物線を描いて飛翔するのではなく、最終段階で飛翔経路を変えられるという。
この技術が確立しているとすれば、現有の弾道ミサイル防衛(BMD:Ballistic Missile Defense)で撃墜することが極めて難しい。「空母キラー」と呼ばれる所以である。
米国の空母打撃群が中国に進攻して来ても、中国本土から1500~3000キロメートル離れた海域で廃滅させる能力を示したのだ。
中距離弾道ミサイルDF-26の射程は、3000~4000キロメートルと言われ、日本や韓国に所在する米軍基地を全て射程に収める。
そして、中国では、米国と対等な立場を示すものは、やはり核抑止力だと認識されている。
大陸間弾道ミサイル(ICBM:Inter-Continental Ballistic Missile)である。
中国の大陸間弾道ミサイルの射程は、米国のほぼ全土をカバーできると言われる。
TEL(Transporter Erector Launcher:輸送、起立、発射用車両)に搭載された、巨大なDF-31Aは、ゆっくりと、各国首脳及び代表団が居並ぶ観閲台の前を通り過ぎた。
その後ろを、DF-5B大陸間弾道ミサイルが、トレーラーに搭載されて行進した。
DF-5Bは、ミサイル自体は新しいものではなく、液体燃料を使用しているが、多弾頭化され、1基のミサイルに3発の核弾頭を搭載できると言われている。
軍事力を誇示しておきながら、平和を強調することに矛盾を感じるのである。
実は、この矛盾は、中国指導部が、異なるメッセージを軍事パレードに込めたから生じたものだ。
■中国国民に向けたPR
「中国は発展し、国際社会のルールを決めていくのは米中両大国だ」
習近平指導部が中国の軍事力を誇示したかったのは、実は中国国民に対してである。
一方で、国際社会に対しては、中国が平和の支持者であると示したかった。
軍事パレードは、中国国内に向けて、中国が第二次世界大戦の勝者であり、国際社会を主導する資格と権利があり、今や中国にはその能力があると示す場だったのである。
中国国民に、中国の経済発展を信じさせ、社会を安定させるためだ。
「これから中国が発展する番なのだ」というイメージを国民に与えることが重要だったのである。
中国が米国の軍事力を意識した兵器を披露したのは、今後、国際社会のルールを決めていくのは米中両大国であると示したかったからだ。
中国は、米国が中国の発展を妨害するのではないかと恐れている。
その手段には、軍事力も含まれる。
近年、中国が主張している米中「新型大国関係」は、極端に言えば、
★.中国が自由に国益を追求しても、米国が軍事力を行使しない関係である。
中国は、米国との軍事衝突は何としても避けたい。
勝てないからだ。
中国は、米国が中国に対して軍事力を行使しないぎりぎりの落としどころを探りながら、国際ルールを変えていこうとしているのだとも言える。
しかし、当の米中関係は、中国の思いどおりに進展している訳ではない。
5月20日に、米国が、中国の南シナ海における人工島建設の状況をCNNに報道させたのは、中国が力を以て国際規範を変えようとしていることを、世界に知らしめるためだ。
米海軍が監視飛行を繰り返しても、米国と水面下で決着できると考えていた中国にとっては衝撃だっただろう。
米中間の問題ではなく、中国が国際社会に挑戦するという構図になってしまうからだ。
米国および周辺各国との対立の構図が鮮明になる中で、中国はその軍事力を誇示することになってしまった。
不安定化した中国社会を安定させ、共産党に対する求心力を高めるために、軍事パレードは、必要なイベントだった。
しかし、中国の平和的な台頭を信じられない各国は、ますます警戒感を高める結果になってしまった。
■中国が平和の支持者であると主張できるのは
日中関係の改善くらいしかない
習近平主席訪米の際に、米国から種々の問題について非難され、対立ばかりがクローズ・アップされることは、中国にとって好ましい状況ではない。
中国は、現在の国際社会に対抗する新しい政治・経済ブロックを構築しようとしている訳ではないのだ。
そうした状況の下で、中国が、平和の支持者であると主張できるのは、日中関係の改善くらいしかない。
中国では、8月14日に発表された「安倍談話」は極めて不評である。
それでも、非難を抑制したのは、日中関係の改善を期待したからだ。
中国の報道を見れば、9月3日の安倍首相の訪中に期待していたのは明らかである。
安倍首相と習主席の首脳会談が実現していれば、習主席が訪米した際にも、東アジアの安定に寄与していると主張することが出来ただろう。
しかし、安倍首相の訪中は中止された。
中国は、減速する経済を再浮揚させるためにも日本との関係改善が不可欠であるが、外交面でも大きなダメージである。
日本政府には、安保法案の国会審議等、安倍首相が日本を離れられない理由がある。
しかし、日中関係は、日中二国間だけの問題ではない。
中国と韓国は、軍事パレードに先立って行われた中韓首脳会談において、日中韓首脳会談の開催を決定した。
韓国側から提案したと言われるが、中国は、自らが北東アジアの平和のために努力していると主張するだろう。
また、日中関係には、米国も関わってくる。
さらに、もう一国、注目しなければならない国がある。
米中二極に対抗して、第三極として生き残るゲームを、アジアで展開しようとするロシアだ。
現在の日本と中国は、ロシアにとって扱いやすい。
日中間がほぼ断絶状態だからだ。
イランの核開発問題で存在感を見せたロシアに対して、米国は態度を軟化させたと言われる。
こうした状況が、ロシアにとって日本の利用価値を下げた。
北方四島返還の議論のテーブルにロシアを着かせるためには、ロシアに、日本が必要だと認識させなければならない。
日中が種々の問題について直接協議できるようになれば、中ロ関係にも影響を及ぼし、日本のロシアに対するオプションが増えるかも知れない。
日本は、中国との関係を考える際にも、米国やロシアといった他の大国の意図を見ながら難しいかじ取りを迫られる。
中国だけに目を奪われれば、さらに大きな盤でゲームを試みる他の大国に、駒扱いされることになりかねない。
』
『
時事通信 9月10日(木)15時35分配信
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201509/2015091000614&g=int
中国軍の上陸阻止=海上に向け砲撃演習―台湾国防部
●軍事演習で海に向けて砲撃する台湾軍の自走砲=10日、台湾・新竹県
【新竹(台湾北部)時事】台湾の国防部(国防省)は10日、新竹県の演習場で自走砲による砲撃演習を内外メディアに公開した。
中国軍の台湾侵攻を想定した陸海空軍合同の「漢光演習」の一環。
演習場には、M109、M110の38両の自走砲を海に面して配置。
中国軍の船艇による上陸を阻止するとの想定で、7キロ先の沖合の目標に向けて約300発の砲弾を発射した。
馬英九総統も3軍トップとして観閲し、
「両岸(中台)関係が安定しても、台湾防衛を怠ることは絶対にない」
と強調した。
演習は7日から始まり、11日まで行われる。
』
『
毎日新聞 9月10日(木)19時18分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150910-00000076-mai-cn
<台湾>上陸部隊阻止の大規模軍事演習をメディア公開
【新竹(台湾北部)鈴木玲子】
台湾国防部(国防省)は10日、北部・新竹県の演習場で、中国軍の台湾侵攻を想定した大規模軍事演習「漢光31号」を実施し、内外メディアに公開した。
演習は海から侵攻してきた中国軍の艦艇による上陸を阻止するとの想定で、台湾海峡の沿岸部に配置されたM109、M110の自走砲38両が約7キロ沖合の目標に向けて約300発の砲弾を発射した。
陸海空3軍の統帥権を持つ馬英九総統が観閲し
「両岸(中台)関係は最も安定した状態にあるが、防衛はわずかな怠りも決してない」
と強調した。
漢光演習は7日から始まり、11日まで各地で実施される。
一方、中国海事局は10日、福建省沖で11~13日に軍事演習が実施されるため、指定海域への船舶の進入を禁じると発表した。
中国軍は7月に内モンゴル自治区で台湾の総統府や周辺の建物などを再現して演習を実施している。
』
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サーチナニュース 2015-09-04 18:07
http://news.searchina.net/id/1587677?page=1
習近平主席が左手で敬礼?
全世界に向けて「演技」の可能性も<如月の見方>
中国政府が3日に実施した抗日戦争と第二次世界大戦の勝利70周年を記念する大規模な軍事パレードで、
★.習近平国家主席が「左手で敬礼した」ことが、中国で話題になった。
はっきりとした敬礼ではなく、曖昧な動作だが、「計算した上での政治的演出」だった可能性もある。
まず、注目したいのが習近平主席の表情だ。
抗日戦の意義を強調し、勝利を称えた演説でも、最後の部分に「正義は必ず勝つ!」などと唱えた部分以外、表情に乏しかった。
自動車に乗り、立ち上がって閲兵した際にも、胡錦濤前主席が軍事パレードの際に見せた緊張した表情でもなく、かと言って高揚しているのでもない。
★.「つまらなさそうにしていた」との見方もできる
ほどだ。
さらに、習近平主席は車上で、部隊の方を眺めて左手を顔の横まで持ち上げ、斜めにかしげた。「左手で敬礼」したようにも見える。
インターネットでは一時、「敬礼の慣例も知らないのか」などの批判も出たとされる。
多くの中国メディアが同日中に、「単に軍部隊に挨拶しただけ」との記事を掲載した。
まず、“あるネット民”の書き込みを紹介。
同書き込みは「老子」の一節「吉事は左、凶事は右に属する。君子は左を貴ぶ、用兵は右を貴ぶ」を挙げたという。
古い中国の制度では「国をしっかりと治める場合、左側の方向性を好む。
戦いの場合には右側を好む」ことになっていたので、「左手で敬礼をしたのは、武力は用いない意思表示」との見方だ。
ただし人民日報は微博(ウェイボー、中国版ツイッター)の公式アカウントで、「老子」を引用した書き込みに触れた上で、
「実際には撮影の角度で(敬礼との)誤解を招いただけ。
本当は習近平主席は軍の将兵にあいさつをしただけなのです」
と表明。
多くのメディアが次々に「単なるあいさつ」と報じはじめた。
4日午後4時現在(日本時間)、「習近平主席は敬礼の仕方も知らない」との批判の書き込みは見当たらなくなった。
中国全国、さらに全世界から注目を集める場で、習主席に「不用意な振る舞い」があったとは考えにくい。
逆に「計算しつくされた表情や動作」と考えるのが当然だ。
大規模な軍事パレードは、国内向けには共産党の威信を改めて実感させる効果がある。
さらに日本や米国など、中国と対立点のある国に対して「意志と実力を誇示」することになる。
しかし一方では、世界全体に「軍国主義」とのイメージを与えてしまうリスクもある。
国内で当局が対処に苦慮することもある「排他的愛国思想」を煽り立てる可能性も否定できない。
習主席は演説中で、中国は他国に対して永遠に「中国が受けた苦しみを与えることはしない」などと強調。
さらに兵力30万人の削減も宣言した。
中国人民解放軍の現役兵は約220万人と見られているので、1割強の削減ということになる。
仮に習主席が高揚した表情を浮かべていたのでは、「軍事に熱中」との印象を与えかねない。
したがって、各種武器による戦力の誇示とはうらはらに、「熱意のない表情」を浮かべたと考えられる。
“左手の敬礼”についても、事前からの計算があった可能性がある。
ネットである程度話題になってから、老子を引用した上で「武力は用いないとの意思表示」という用意しておいた書き込みをさせる。
メディアは予定通り、同投稿を記事化。
最後に「本当は、単なる挨拶」と追加すれば、「武力不使用の意思表示」説には、当局もメディアも責任を取る必要がなくなる。
しかし、読んだ人には「そういうことかも」というイメージが強く残る。
“左手の敬礼”と関連報道の関係は「仮説」に過ぎないが、軍事パレードに際しての習主席の言動を見るかぎり、中国は同政治イベントが抱えるリスクも十分に認識し、できるかぎり低減しようとしたと考えてよい。
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◆解説◆
兵力30万人の削減がイメージアップを狙った宣言であることは間違いないが、実際の思惑は不明。
人件費の削減分で高性能の兵器を増やし、軍事力を向上させることも可能だからだ。
(編集担当:如月隼人)
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【輝ける時のあと】
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