2015年9月8日火曜日

抗日戦争勝利70年記念軍事パレード(4):笛吹けど踊らず、「抗日」に飽きてきた中国人?

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JB Press 2015.9.8(火) 姫田 小夏
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44729

中国人宅の軍事パレード鑑賞会がいつの間にか・・・
抗日に飽きた? 
愛国に火がつかない上海の人々


●「抗日」一色に染まった中国の新聞

 9月3日、北京で「抗日戦争勝利70年」の式典が行われた。
 中国で9月3日は「抗日戦勝記念日」である。
 戦後70年の今年は国家的行事の日に格上げされて3連休となり、大規模な式典が開催された。

 中国では式典に先駆け、マスコミが数々の特集を組んだ。
 新聞は数ページを割いて特集記事を作り、テレビは中国の軍事力を解説する特番や90歳代の老兵を取材した番組などを絶え間なく放送した。


●「日本は敵だ」と煽る番組も

 中国政府は、中国全土を再び「抗日一色」に染めようとしていた。
★.2012年9月の反日デモを体験した日本人は、
 当時のつらい記憶を思い出さずにはいられない。
 中国人たちに囲まれて言いがかりをつけられる日本人もいれば、熱いラーメンをぶっかけられた日本人もいた。
 日本語を話すことさえ憚られ、中国にいる日本人たちは隠れるようにして嵐が過ぎ去るのを待ったものだ。

 現地の日本人はあの悪夢が再び現実のものになることを怖れた。
 9月3日の「戦勝記念日」を前に、多くの日本人が上海から退避した。
 日本料理店の従業員は
と話す。
 「日本のお客さんはみんな帰国してしまった」 上海在住20年のベテラン駐在員も、
 「この日は何が起きるか分からない。家からは出ない」
と“戒厳令”を決め込んだ。


■反日特番に反応しないマッサージ店員

 筆者は戦勝記念日直前の街を歩き回った。
 すると、街にはある変化が起こっていた。

 9月2日、上海の徐匯区の足ツボマッサージ店に行ってみた。
 近隣住人のために手軽な料金でツボ押しを提供するサービス施設だ。

 建物は老朽化し、お世辞にも衛生的とは言えないが、なぜか壁に掛けられた液晶テレビだけは大きく立派だ。
 その画面に映し出されていたのは、CCTV(中国中央テレビ)の「日本の戦犯の懺悔備忘録」(原題「日本战犯忏悔备忘录」)という番組だった。

 東条英機にはじまり岸信介や小泉純一郎、安倍晋三など「抗日」のターゲットとなる日本の歴代首相が次々に映し出される。
 その番組は「2013年に企画され、制作に100日をかけた」力作だと宣伝されていた。

 その時、客を含めて20人近くの中国人がこのフロアにいた。
 しかし、不思議なことに誰一人としてこの“力作”を話題にする者はいない。
 安徽省や四川省出身の従業員たちは、マッサージの手を動かしながらあくびを連発し、晩飯の話や他人の噂話を繰り返していた。

 番組が終盤に差しかかったとき、1人の従業員がおもむろに
 「日本は中国の女性や子どもを殺したんだ。
 中国人は日本人に痛めつけられた!」
と声を上げた。
 筆者は内心「来た、来た!」と身構えた。
 しかし、呼応する者は誰もいなかった。

 日本人の客である筆者に遠慮したせいだろうか。
 いや、違う。
 そのあと、従業員は筆者に向かってこう言った。
 「あんたの国もやられたでしょう」。
 彼女たちは筆者を韓国人と思い込んでいたのだ。

■国歌の歌詞があやふや

 9月3日、筆者のスマートフォンには、朝から軍事パレードのニュースが続々と送られてきた。

 多くの国民が生中継の軍事パレードを見るために午前10時から家にこもった。
 上海では道路から車両が消え、店舗は臨時休業となった。
 筆者の乗ったタクシーの運転手も「あんたが最後の客だよ」と言ってそそくさと家路についた。

 筆者は、法曹や教育、実業などの分野で活躍する中国の友人たち(いずれも女性)と一緒に、テレビで軍事パレードを鑑賞することになった。

 10時になった。
 李国強首相の「開始!」という発声と70発の礼砲とともに、軍事パレードが始まった。
 民兵が行進する10年に1回の従来の建国パレードとは異なり、今回は陸海空の1万2000人の兵士が隊列を組んで行進を行った。

 人を殺傷する武器を見せつけながら平和を唱える習近平国家主席。
 パレードの武器と隊列は間違いなく日米を牽制するものでありながら、「日本、日本人に向けたものではない」とする中国政府。
 筆者は違和感を覚えながら、テレビ画面に見入った。

 軍事パレードのプログラムが国歌斉唱に移った。
 正式名は「義勇軍進行曲」、日中戦争中に歌われた抗日歌曲である。

 「さあ、立って」と家の主人に促され、テレビの前で皆が起立した。
 筆者は、軍事パレード鑑賞会はテレビ画面の前に正座するぐらいの謹厳な雰囲気になるのではないかと想像していた。
 やはりその通りになりそうな気配だった。

 ところが、皆の歌が怪しい。
 誰も完璧に歌えないのだ。
 「正確に覚えてない」「私も・・・」。
 テレビに映った多くの国民の口元にも「自信のなさ」が垣間見えた。
 軍事パレード鑑賞会は照れ隠しの笑いに包まれた。

 中国人にとって、軍事パレードは“見どころ満載”である。
 テレビの解説によれば兵器は国産が84%を占め、最新鋭の兵器が次々に初公開される。
 天安門の前の96メートルの距離を128歩、66秒で行進する兵士たちの一糸乱れぬ隊列も、注目すべきポイントの1つだそうだ。
 だが、軍事パレードを鑑賞する友人たちの話題の中心は、いつの間にか「最近の流行」に移っていた。
 巷で流行っている「豆芽花(もやしの花)」というヘアピンを頭に刺し、いつの間にか撮影大会になってしまった。

■「抗日」にはもう飽きている?

 軍事パレードの大きな目的の1つは、中国の民族主義を高揚するためである。
 国民の帰属意識を高め、愛国教育の絶好の機会に利用するためのものであることは間違いない。

 だが、上海市民は一定の距離を置いていた。
 2012年の反日デモは政府が焚きつけて、市内や国中に燃え広がったが、
 今回の軍事パレードでは当時のような国民の一体感は見られなかった。

 この時期に売られていても不思議ではない国旗をモチーフにした商品や、「反ファシスト闘争70周年記念グッズ」なども、上海ではほとんど目にすることはなかった。
 百貨店での「抗日記念セール」といった販促活動も皆無だった。

 反日デモは経済損失につながる。
 軍事パレードは予算を食いつぶすだけで経済効果はもたらさない。
 「抗日」「反日」を唱えても自分たちの生活は向上しない――。
 上海市民はそれを見抜いているかのように冷静だった。

 今回、上海市民の「成熟」も強く感じた。
 筆者はタクシーや飲食店などで「私は日本人だ」とあえてアピールしてみた。
 しかし、そこで拒否反応を示されたり、攻撃的な態度をとられることはなかった。

 タクシーの運転手は「我々は同じ民衆だ。戦争中の苦労も同じだ」と、日本人である私にかえって同情の目を向けてくれた。
 飲食店で隣に居合わせた上海人の夫婦は、
 「歴史を忘れないでくれたらそれでいい。
 私たちもいつか日本に行ってみたい」
と日本への関心を語ってくれた。

■笛吹けど踊らない中国人

★.中国人がそうした「大人」の対応を見せるようになった要因の1つは、
 何と言っても訪日旅行客の増加だろう。

 上海では、日本人が想像する以上に訪日旅行が大ブームとなっている。
 訪日旅行者数は、反日デモのあった「2012年は147万人」
 それが2014年は283万人」と拡大の一途
をたどっている。
 市民の間で「抗日」や「反日」がほとんど話題に上ることがないのは、多くの人が実際に日本を訪れてみて、従来の政府やメディアの喧伝とかけ離れていることに気づいたせいかもしれない。

 道端で不動産販売の客引きを行う若い女性従業員がいた。
 筆者が日本人だと知ると
 「私は日本に旅行したくて、ここで働いてお金を貯めているの。
 あなたと『wechat』(『LINE』に相当するメッセージアプリ)をしたい」
と営業そっちのけで誘ってきた。
 中国メディアが煽る抗日は、若い世代にほとんど作用していない。

 確かに「抗日戦勝記念日」を迎えて、上海市民は「過去の歴史は忘れまい」と胸に刻むことだろう。
 だがその一方で、「永遠に日本に敵愾心を抱き続けることは不可能」だということも理解している。

 上海において、今回の軍事パレードは、残念ながら愛国教育の絶好の機会とはならなかったようだ。メディアが連発する「抗日」という言葉も新鮮味を失いつつある。

 笛吹けど踊らず――。
 中国は今、そんな局面に差しかかっている。



ダイヤモンドオンライン 2015年9月11日 姫田小夏 [ジャーナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/78256

「反日一色」ではなくなってきた中国の国民感情

 9月といえば、毎年13億の国民が一斉に「反日感情」を覚醒させる時期である。
 9月3日は「抗日戦勝記念日」。
 戦後70年の今年、この記念日は格上げされ、大規模な国家的行事が計画された。

 他方、中国の9月は在留邦人にとっては悪夢である。
 毎年災いが起こる、この敬遠すべき9月。
 今年は何が起こるのか。
 筆者は中国・上海を訪れた。

 案の定、「抗日戦勝記念日」が三連休に拡大した今年、“火の粉”を怖れた多くの日本人が退避していた。
 2012年9月の反日デモを経験した日本人なら、身の毛もよだつ思いだろう。
 当時、上海の街全体が五星紅旗の赤い渦に覆われ、デモ隊が日本領事館めがけて怒涛の如く集結、反日シュプレヒコールと横断幕に、在留邦人は強烈なショックを受けたものだ。

■ネットでは不穏な雰囲気も、街はまったくの平常通り

 その悪夢の再来を怖れ、今年、在留邦人は外出を控えた。
 在上海日本国総領事館も
 「大規模な反日デモがこの時期に発生するとの徴候は確認されていない」
としながらも
 「日本や日中関係に対して特に高い関心が集まりやすい状況」
とし、注意を喚起していた。

 大規模な国家的行事に格上げされた「抗日戦勝記念日」がどれほど燃え上がるのか。
 日本人は静かに動向を見守っていた。
 ネット空間はやはり想像以上の“盛り上がり”を見せた。
 上海在住の男性はこう語る。
  「微信(『LINE』に相当するメッセージアプリ)のグループチャットでは不気味なぐらいに反日機運が高まった。
 特に地方出身者は相当熱くなっている」

 ところが、現実の世界はそれとは正反対だった。
  「実際、仲間と集まったが反日は話題にならなかった。
 ネット上であれだけ過熱しても、和食を食べたり、日本製品を買ったりしている」
と男性は語る。
 上海の街もいつもと変わらなかった。
 国家の慶事となれば街中に掲げられる国旗も、なぜか今年は目立たなかった。
 この時期売られていても不思議ではない国旗をモチーフにした商品もない。
 「反ファシスト闘争70周年記念グッズ」は、外国人向けのニセモノ専門店でわずかに数種類が売られていたのを目にした程度だ。

■メディアは相変わらずの「抗日大特集」、
ただし論調は3年前より大幅に軟化

 一方、テレビや新聞のメディアは「抗日特集」を頻繁に繰り返していた。
 中国中央テレビ(CCTV)は明けても暮れても「戦後70年」を大々的に特集し、人民日報傘下の「環球時報」も数日間にわたり「抗日戦争」を集中的に掲げた。
 だが、ここにも「トーンの変化」が生じていた。
 「環球時報」といえば、共産党機関紙・人民日報をバックボーンに据える全国紙で、日本人が理解するところの“右傾化メディア”である。
 これまで国民に「反日」を刷り込む急先鋒として、扇動的な役割を果たしてきたその
 「環球時報」が、対日批判を和らげたのである。

3年前の2012年9月の記事と比較してみよう。
 尖閣諸島をめぐって日中関係の悪化が最高峰に達したあのとき、同紙社説はこう述べていた。

 「我々は決心を固め、実力でこの日中間の領土問題を最終的に解決する。
 平和的解決は中国の最高の目標だが、このようなやり方は摩擦をもたらすだけであり、中国は十分な準備を進める必要がある。
 全面対決に至る可能性があるが、自信を持って不退転の決意でやりとおすのだ」

 当時、社説は平和的解決を否定し、短期間のうちに国民の愛国心を焚きつけ、日本との全面対決を国民に覚悟させることに成功した。
 同時にそれはジリジリと日本の立場を追い詰めて行くものでもあった。
 また、連日の社説は、政治、外交、経済、軍事の全方位から対日制裁を強調し、
 “敵国日本”を際立たせ、日本という悪者を退治することで世界の覇者に君臨しようという論法を展開させた。

 当時、経済成長率は2011年の9.3%から2012年は7.76%に鈍化したとはいえ、中国では「下振れは一時的」との見方がまだまだ強く、“過剰な自信”が支配的だった。
 そこには明らかに
 「大国に成長した中国は、もはや日本から得るものはない」という驕り
も垣間見えた。

 ところが、今年9月4日の社説は習近平国家主席の重要演説に倣い、「平和」を強調するようなものにガラリと変化する。

 「中国は敵を作らず、対外平和を求める国家である。
 習近平が『中国は永遠に覇を唱えず、永遠に拡張はしない』と強調したが、これは外交辞令などではなく、中国人の対外(外交)の知恵である」
 「中国の国際民主への渇望とは覇権を強奪するものではない、また中国人も自国が新たな帝国になることを望んでいない」

 中国政府は事前から軍事パレードの目的を「平和維持」だと繰り返したが、好戦的な中国が平和を連発するその変貌ぶりは、むしろ違和感さえ覚えさせるものでもあった。

■国際社会での孤立を怖れた? “中国の強気”の後退

 一方、同社説は日米牽制も忘れていなかったが、その一文は次のようなものだった。

 「米日が中国に圧力をかけ利益の最大化を実現させている、これは打ち破るべき虚偽である。
 平和と安定は事実に基づいて真実を求めるものでなければならない」

 中国語による2700字の原稿中、わずか79字にとどまるものである。

 上海市民もその変化を敏感に感じ取っていた。
 民間企業に勤務する会社員の女性は
 「軍事パレード開催時に行われた習近平国家主席の重要演説からは、日本への恨みや憎しみが薄れたことを感じさせる。
 メディアも民衆に対し扇動的な記事を書かなくなった」
と話す。
 確かに重要演説は「抗日戦争」というキーワードがちりばめられていたものの、現在の日本を名指しで批判する箇所はない。
 中国政府は、9月3日に北京で開催される記念式典について
 「現在の日本や日本人に向けられたものではない」
と繰り返していたが、軍事パレードそのものは、むしろ習近平が政権基盤を固めるための国民向け政治ショーだったということだ。

そこから読み取れるのは“中国の強気”の後退である。
 日中関係を注視する中国人識者は次のように語っている。
  「天津の爆発事故など国内問題は山積みだ。
 軍事パレードには“朋友”のはずの欧州首脳陣が欠席したが、このままでは国際社会での孤立は免れない。
 株価暴落や
 日本企業の中国離れなど、
 経済成長の鈍化とともに中国が失う求心力、
 こうした複数の要素が指導部を変化させた可能性は十分にある」

 戦後70年の節目に行われた「安倍談話」について中国が大きな反応を示さなかったのも、こうした事情によるものだろう。

■対日感情がガラリと変化、市民は「反日」に飽きつつある?

 一方で、軍事パレードと前後してデマも飛んだ。
 「安倍首相が辞任した」というニュースがスマートフォンに着信したり、習近平国家主席の画像に
 「私は国民に3日間の休日を与えたが、これは訪日旅行に行かせるものではない」
など偽のテロップをつけた悪戯も出回った。
 この仮想空間での悪戯に相反して、日本はこの連休も中国人観光客でにぎわった。
 銀座四丁目の化粧品専門店は「軍事パレードのさなかも商品は売れた。
 政治的な動きがあったとしても、もはや日本の商品への信頼を損なうものではない」と手ごたえをつかんだ。
 確かに習近平の演説の核となったのは「抗日」だが、それが「反日」に転化することはなかった。
 上海でも「過去は忘れない」という声はあちこちで聞くことはあったが、「今の日本や日本人を恨む」というような反日的な発言はほとんど耳にしなかった。

 こうした態度の軟化には、重要演説の影響があるだろうが、上海ではそれ以上に市民が「反日」に飽きてきた可能性がある。
 もともと政治よりも経済、理屈よりも実利を志向する上海人である。
 反日を唱える以上に、むしろ訪日旅行を軸にした新たな日中関係に活路を見出したとさえいえるのだ。
 その上海は、日本人の想像を上回る「一大日本ブーム」が訪れていた。
 今や日本は中国人が選ぶ三大観光目的地のひとつにまで格上げされ、日本は「行かなければ話題に取り残される」(上海市在住の50代主婦)ほどの人気スポットになった。
 2014年、訪日中国人がもたらした消費は前年比2倍の約5600億円、今年はさらにそれを上回る勢いを示しているが、中国人の生活に日本製品が深く入り込んでいることに、もう疑問の余地はない。
 そして訪日旅行は今や富裕層から中間層に、さらには沿海部から内陸部にまですそ野を広げている。

 滞在中、よく耳にしたのは「民衆は同じ」という意味の言葉だった。
 「戦争は民衆を犠牲にしたという点では、中国人も日本人もない」
と述べる上海市民は少なくなかった。
 数年前、それこそ3年前の9月には、上海でさえこうした寛容さは皆無だった。
 もちろん、中国にはまだまだ反日色が強い地域もある。
 だが、地域差が存在するにせよ、以前のように国民が一律に反日であるとは限らない。
 中国の国民感情はすでに「反日一色」ではなくなってきているのだ。

中国人にとって日本は永遠の敵であり続けることができるのだろうか――。
 そんなことを実感した「抗日戦勝記念日」であった。



レコードチャイナ 配信日時:2015年9月7日(月) 12時52分
http://www.recordchina.co.jp/a118465.html

中国軍事パレードの出費は4000億円超、
香港紙の試算に中国共産党機関紙が反論「それだけの価値ある」―韓国メディア

  2015年9月7日、韓国・亜洲経済(中国語電子版)によると、3日に中国・北京で行われた「抗日戦争勝利70年」を記念する軍事パレードに伴う支出が215億元(約4025億円)に上ったとする香港紙の報道に、中国共産党機関紙の人民日報が「それだけの費用を投じる価値がある」と反論した。

 香港紙・蘋果日報(アップルデイリー)はこのほど、軍事パレードに伴う支出が215億元に上ると試算した。
1].青空の「パレードブルー」を維持するため、北京市内の工場1927カ所の操業を8月いっぱい停止したことにより約192億元(約3594億円)、
2].市内の安全確保のため市民85万人をボランティアとして保安活動に動員したことに伴う交通費が14日間で計12億元(約224億円)、
3].パレードに参加した中国軍1万2000人の1カ月の訓練と外国軍867人の2週間の訓練に伴う食費が計1900万元(約3億5500万円)、
4].北京市中心部の飲食店などの営業停止による損失が約10億元(約187億円)
などに上るとしている。

 一方、人民日報は、「軍事パレードは民衆を酷使し、財貨を浪費するものだ」との主張に反論する文章を掲載し、
 「政府は、軍事パレード開催を理由に貧困者扶助を減らすことはない。
 どの家庭でも祝い事には金と人を使うものだ。
 国家が抗戦勝利70年を盛大に祝うのは言うまでもない。
 それだけの費用を投じる価値がある」
と伝えた。



 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2015年09月06日(Sun) 
西本紫乃 (北海道大学公共政策大学院専任講師)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5337?page=1

「9.3大閲兵式」から垣間見える中国の矛盾

 7/7、9/18、12/13。
 日本人はあまり知らないが、中国では日中戦争の記念日として広く認知されている日だ。
 それぞれ盧溝橋事件、柳条湖事件、南京事件が起こった日である。
 しかし2013年以前は中国の国民でも9/3が何の日か答えられる人は少なかったのではないだろうか。

 中国では2014年から突然9/3が抗日戦争に勝利した記念すべき日となった
 そして戦勝70周年にあたる今年、国家の威信をかけた大閲兵式が挙行された。
 「9.3大閲兵式」の意味と意義はじつのところ明確ではない。
 そこには習近平政権のイデオロギーと内政や外交についての矛盾を含んだ意識や思惑が込められている。

■“中国”と “中華人民共和国”の同一視
中国の歴史を前面に押し出した演出

 「9.3大閲兵式」では、中国の指導者らが天安門に登る前に、習近平夫妻と来賓の各国首脳らとの挨拶が行われた。
 象徴的だったのは、天安門の後ろに広がる故宮(元の紫禁城)を背にした演出が行われたことだ。
 さすがに大和殿で行われたりはしなかったものの、かつての中華帝国の皇帝を彷彿とさせる印象を見る者に与えた。

 共産主義のイデオロギーの中で封建的なものやブルジョア的なものを否定してきたという経緯から、中国共産党は歴代王朝とイメージを重ねられることを嫌ってきた。
 しかし、胡錦濤政権の末期から中国な歴史や伝統の再評価の傾向がみられ、習近平は国家主席に選出された直後から
 「中国の夢」、
 「中華民族の偉大な復興」
というコンセプトを打ち出し、伝統回帰の方向性を示している。

 また、2014年10月には中央政治局の勉強会では「歴史的な国家管理」がテーマに取り上げられたが、習近平はこの勉強会の席上で次のように述べている。
 「今日の中国を管理するには、我が国の歴史と伝統文化についてしっかりと理解し、古代の国家管理からアイディアを模索しそれを積極的に総括しなければならない」、
 「他国の国家の政治理念や制度を模倣するのではなく、我が国の現実的な環境を出発点とする」。

 あたかも歴史を逆走するような印象を受けるこの発言だが、
 集団指導体制から国家主席への権限集中、
 「法に基づく国家管理」と銘打った「法を借りた国家管理」の推進、
 マスメディアの統制強化や
 弁護士や活動家の取締り
といった現政権の一連の動きも、こうした習近平の国家統治のビジョンがベースになっていると考えると、とても納得がいく。

 共産党が統治する“中華人民共和国”を、
 伝統“中国”と重ねあわせる。
 政権と民族・国家を同一視することで建国66周年の国が戦勝70周年を祝うという矛盾が矛盾でなくなるというわけだ。
 日本に対しては軍国主義的、右翼的な勢力と一般国民の「二分論」で日本政府に対する厳しい非難を続ける中国共産党と中国政府だが、自国については「融合論」で様々な矛盾を説明する姿勢が鮮明になりつつある。

■元国民党兵士の再評価

 「9.3大閲兵式」の重要な点の一つとされたのが、元国民党兵士のパレード参加だ。
 かつて八路軍や新四軍の一員として戦争に参加した共産党の老兵士たちといっしょに元国民党兵士たちもオープントップバスに乗ってパレードの隊列に加わった。
 平均年齢90歳、最高齢102歳というおじいちゃんたちの一団は、
 共産党側はグレー、
 国民党側はカーキ色のかつての軍服を着て晴れやかに行進した。
 元国民党の兵士たちに対しては今年8月、政府から国家への貢献に感謝して1人5000元の慰問金も支払われている。

 じつは、こうした元国民党兵士の再評価は中国では画期的なことである。
 元国民党の兵士で戦後中国に残った人は、その後、中国共産党の政治に翻弄された人生を余儀なくされてきた。
 ほとんどの人がスパイとか敵対勢力だといったレッテルを貼られ、コミュニティから疎外されて社会福祉の蚊帳の外の最底辺の生活を送ってきた。
 日本軍との戦いでは彼らの方がより大きな貢献をしたはずだが、元国民党の兵士たちは戦後、英雄として優遇されてきた元共産党兵士とは対照的な扱いを受けてきたのだ。

 2009年にそうした歴史に埋もれた元国民党兵士の取材をまとめた本が中国で出版され、大きな話題になった。
 愛国的な若者の一部は自分たちでそうした元国民党兵士を探し出す活動も始めた。
 私が2012年に広州で取材したそうした民間団体の一つ「関愛老兵」は、全国の元国民党の兵士を探し、金銭面や精神的なサポートを行っていた。
 この団体のメンバーの話では、彼らの活動は政府には歓迎されていないとのことだった。
 共産党や中国政府は人々の愛国心を称揚する一方で、歴史に関する民間活動には警戒をしていた。 
 民間が勝手に元国民党兵士を再評価すると、
 元兵士らを社会的に追い詰めた事実、つまり文化大革命などの負の歴史を掘り起こすことになる
からだ。

 中国共産党にとってタブーでもあった元国民党兵士の再評価は、これまでの中国では大きな矛盾だが、政権と民族・国家を同一視することで矛盾がなくなる。
 「9.3大閲兵式」での元共産党兵士と元国民党兵士との世紀のコラボレーションもまた、“中華人民共和国”を伝統“中国”と重ねあわせることによって可能になったのである。

■国内の求心力を高めるための「9.3大閲兵式」
愛国心を刺激するイベントとして狙いどおりの成功

 結論からいうと、「9.3大閲兵式」は広く国民の愛国心を喚起する点では大きな成功を収めた。
 意味と意義づけは別として盛大で華やかで、そして中国人としてのプライドを刺激する大型イベントとして多くの国民が歓喜したことはまちがいない。

 テロを警戒する中国政府は、8月下旬から閲兵式の会場となる北京市中心部の警備を強化した。9月3日を最高の晴天にするために、北京市のみならず周辺の河北省など合計7つの市と省で建設工事や工場を操業停止にした。
 北京市では1927社が生産縮小の対象になったが、これは昨年秋のAPECの時の約15倍にものぼる。
 ラーメン店で身分証提示、公衆トイレも実名報告、病院の臨時休診などネット上では嘲笑を込めて過剰な警戒の実態が拡散したが、北京の市民はオリンピックやAPECで厳しい警戒も慣れっこになっている。
 「9.3大閲兵式」の豪華な演出によってそうした不満も吹き飛んだかのようだ。

 私自身もすこし意外だったが、当局のネット上の情報操作はあったとしても、それでもやはり多くの中国国民が「9.3大閲兵式」を歓迎し喜んでいた。
 「微信」(中国版「LINE」)の比較的リベラルな人たちのチャット・グループでも、閲兵式が行われている時間帯は式典を祝う国旗であふれた。
 国民の愛国心を刺激するイベントとして「9.3大閲兵式」は党と政府の狙いどおりの効果をあげることができたといえるだろう。

■国民からの冷ややかな批判

 ただし、すべての国民が手放しで「9.3大閲兵式」を祝ったわけではない。
 一部の客観的に政治を評価できる層の人たちはこのイベントを冷やかに捉えていた。
 9月1日に人民日報は閲兵式についての国民の不満に反論し説得する記事を報じている。
 この記事では、閲兵式は
 「力を誇示するためか?」、
 「日本をターゲットとしたものか?」、
 「おカネのムダづかいではないか?」
という国民の声について、
 「閲兵式は他の国でも行われているイベントであり、
 規模や軍の装備は一部の国(日本)のように実戦力をともなっているわけではない。
 また、中国はこれまでも現在も日本の軍国主義と日本国民は分けて考えているため、
 閲兵式は日本そのものをターゲットにしたものではない。
 そして、閲兵式は見栄を張るための予算のムダ遣いで、そのお金は貧しい人たちを救うための福祉に使うべきだ、といった意見は社会的弱者をダシにした鬱憤ばらしに過ぎない」
と切り返している。

 こうした記事が報じられる事実は、そのような国民の意見が国内で根強いことを示唆している
 人民日報は今年1月に
 「9.3大閲兵式」を行う4つの理由
を紹介している。
 その4つの理由とは、

  第一に「中国の軍事力を見せつける」
 第二に「日本を震え上がらせる」
 第三に「国民の軍に対する信頼と自信を持たせる」
 第四に「政権の軍事力掌握を示し腐敗分子を一掃する」

 であった。
  当局側の主張は当初いっていたことと比べると、一にも二にも三にも矛盾してきている。

 中国国内では今年の夏、「安全」について国民の関心や意識が高まる出来事が相次いだ。
 ショッピングモールでのエレベーター事故や天津での大規模爆発事故など、国家の威信よりも身近な「安全」の方が大事だという意識が国民の間で広がっている。
 「9.3大閲兵式」についての当局の説明の変化からは、党と政府が中国国内の世論の動向に配慮している実態がうかがえる。

■最大の目的は海外に向けた中国の地位の主張
国際秩序についての中国共産党の新しい論理

 習近平政権が「9.3大閲兵式」を行う最大の目的は、世界に向けた中国の国際的な位置づけのアピールである。
 国家主席として習近平個人の権力掌握は既に相当進んでおり、閲兵式を行って国内の求心力の強化を図ることは今のところそれほど重要ではない。

 習近平政権は国家主席就任直後から積極的に自ら動く外交姿勢を見せていた。
 経済の力を最大の魅力にして、主に中米や中央アジア等で「朋友圏(お友達グループ)」を積極的に拡大していった。
 アジアインフラ投資銀行(AIIB)やBRICS、上海協力機構(SCO)といった欧米を主体としない途上国や中進国による世界の枠組みで主導的な立場を得ようとする中国の姿勢は、世界各国、とりわけ先進国からは既存の国際秩序への挑戦とも受けとめられた。

 そこで昨年後半ごろから打ちだされたのが、第二次世界大戦後の国際秩序を基礎とする各国の国際的地位のランク付けである。
 つまり、大戦の戦勝国であり、国連安保理の常任理事国は一等国として世界をリードする立場にあり、その他の多くの途上国、中進国はそれに準じる位置にあり、そして敗戦国である日本は一番下に位置しているという世界観だ。

 そこで重要になるのが、ファシストに勝利したという歴史観である。
 今年5月の習近平のロシア訪問に際して、中国共産党新聞網は第二次世界大戦のファシストとの戦いにおいて多大な犠牲を払った国だということを強調する記事を報じている。
 その記事では、戦争終結時に中国に投稿した日本軍の兵士の数は128万人で、戦争によって死傷した中国人は3500万人を超える。
 こうした事実から中国は世界のファシストとの戦いにおいて最も大きな貢献をした国であり、ドイツと戦ったロシア、欧米各国と同様に戦勝国として大戦後の世界をリードしていく資格があると述べている。

 今回中国で初めて行われた「9.3大閲兵式」はロシアが毎年行っている軍事パレードを強く意識していたのだと思われる。
 ウクライナ問題で西側諸国との摩擦が大きくなってきたロシアと歩調を合わせることで、中国は西側の枠組みや価値観に与しないという強い姿勢もアピールできるのだ。

■機を逸した「9.3大閲兵式」

 しかし、今年に入って中国の軍事的な脅威について各国から懸念がもたれはじめた。
 南シナ海への中国軍の拡張によってベトナムやフィリピンの間で生じた摩擦が高まり、今年4月末の安倍総理の訪米以降、米国も中国に歩調をあわせない姿勢を明確にした。

 経済力を最大の魅力として世界の途上国のリーダーになりつつあり、先進国も中国に対して世界をリードする国として一目をおきはじめたところであったが、今年7月以降、中国経済の低調化や株価の下落によって中国発の世界恐慌のリスクが取り沙汰されるようになった。
 中国に対する軍事的脅威と経済の先行きの不安について2015年に入ってからそれまでとは少し風向きが変わってきている。

 最終的に、中国の経済的なパワーの魅力の低下と軍事的脅威の増大が影響して、
 主だった主要国の首脳は「9.3大閲兵式」への参加を見合わせた。
 中国外交部は国家の威信を背負って各国のリーダーの出席を呼びかけたが、出席した元首級の来賓は23人で、ロシアと韓国を除くと、先進国や国際援助機関の開発援助を受けている被援助国がほとんどという結果であった。

 8月30日に行われた「9.3大閲兵式」メディアセンターが行った記者会見の席上で、中国中央電視台の若手記者が
 「(それほど世界的意義の大きい閲兵式であるにもかかわらず)世界の主要国からの国家元首の参加がないのはなぜか?」
と、無邪気を装った質問をぶつけ、回答者の顔色が一瞬変わるというワンシーンもあった。

 閲兵式での習近平の重要講話の中で、軍の30万人の人員削減が発表された。
 中国では大規模な軍の人員削減はかつて9回実施されており、最後に行われたのは1997年だった。
 それから18年ぶりの軍の大リストラであるが、閲兵式という軍隊の威容を示す式典での発表は違和感を禁じ得ない。

 しかも、重要講話がまだ終わらぬうちに「軍の30万人の人員削減」の速報が、中国のインターネットのニュースサイトではいち早く報じられた。
 今回の講話の最も重要な点として、強調して伝えるべく事前に用意されていたものと思われる。
 今回の閲兵式での軍のリストラ計画の発表は、国際社会の中国の軍備拡張に対する懸念に応える中国側のメッセージである。

 今回の閲兵式は中国にとってタイミングが少し遅すぎたのかもしれない。
 せめてもう半年早ければ、「9.3大閲兵式」によって中国の国際的な地位をアピールするという対外的な成果も最大限発揮できていたかもしれない。

 中国の党と政府には強大な権力がある。
 その力によって青空さえも意のままに作り出すことができる。
 習近平政権はこれまで力を見せつけることで世界の枠組みを変えようとチャレンジしてきたが、力だけでは乗り切れないものもある。
 今日の国際社会の現実に照らせば、力さえあればリーダーになる資格がある、という発想にこそ、中国の最大の矛盾があるのかもしれない。



ニューズウイーク 2015年9月8日(火)17時00分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/09/post-3895.php

聞け、人民の声!――抗日戦勝軍事パレード
世界に「君臨」するところを見せた習近平も、
ネチズンから見れば裸の王様?

 北京で軍事パレードが行われたことに関して、6億人にのぼる中国のネットユーザが叫びを上げた。
  ここにこそ中国人民の真の声が反映されている。
 中国を知るためにも軍事パレードの分析のためにも、貴重な声を拾ってみた。
 基本情報の解説も含めながら、ネットの声をご紹介する。

■参加国に関して

 本来、習近平(シー・ジンピン)国家主席は西側先進国を軍事パレードに招いて、
 中国人民に「ほら、どうだ、すごいだろう!」
というところを見せ、中国共産党による統治能力と求心力を高めようとした。
 そのためまずは、AIIB(アジアインフラ投資銀行)に西側諸国を中国に引き寄せ、その流れの中で軍事パレードにも参加させようと狙っていた。
 ところが蓋を開けてみると西側先進諸国の首脳は一斉に不参加。
 「経済ではなびいても、軍事では一線を画す」
ことが明瞭となり、習近平はメンツを無くした。
 そのことに関連した声を先ずご紹介する。

 「中国が反ファシスト戦争勝利を祝うのなら、最も来なくてはならないのはアメリカだろう! 
 中華民国の最大の盟友はアメリカだったんだぜ。
 (中略)だというのに、その肝心のアメリカが来ていない。
 来たのは国際刑事裁判所で戦争犯罪人および反人類罪で逮捕状が出ているスーダンのバジル大統領だ!
  反人類罪の容疑者と、少数民族の種族を根絶やしにしようという"国際犯罪者"(筆者注:習近平のこと)が並んでるよ。
 これが世界反ファシスト戦争勝利記念の祝典なのかい?」

 「潘基文(パン・ギムン)って国連事務総長だろう? 
 国連って、バジルの逮捕状を執行することに決めたんじゃないの? 
 このメンバーの"団結"って、なんだい?」

 「安倍(晋三)はたしかに来なかった。
 でも安倍の代理で、キヤノンとソニーとコニカが参加してるよ。
 閲兵式で使ったカメラはすべて日本製。
 CCTVのテレビ中継は日本のソニーのカメラ、
 閲兵式のマイクはソニー、記念撮影に使ったカメラは3台がキヤノン、2台がニコン。
 だって性能がいいだもん」

 「30カ国の首脳が参加したって大宣伝してるけど、目立った国では西側から外されたロシアと、心変わりばかりしている韓国だけじゃないか。
 あとは、あってもなくても、どうでもいいような国ばかり。
 でもこれまで大金を注いできた甲斐があって、習包子(シー・バオズ)はようやく報われたと安心してるんじゃないかい?」
 (筆者注:包子は皮の薄い肉まんのこと。習近平(シー・ジンピン)が「自分がいかに庶民に近いか」を示すために、慶豊包子店に行って包子を食べたことから、「習包子」とか「包子帝」というあだ名が付いている)

 「故事にある"孤家寡人"とは、まさにこのことだ」
 (筆者注:"孤家寡人"とは「大衆から浮き上がって孤立していること」を指す。
 昔の君主が自分のことを「孤」とか「寡人」と称したことから、この故事がある。)

■習近平とファシスト(ヒトラー)を比較して

 「もし反ファシスト戦争勝利なんて謳わなければ、ファシストって何のことか知らなくってすんだのに、ファシスト、ファシストってうるさいからネットでファシストの意味を調べてみたら、なんと、わが中共体制とおんなじじゃない?」

 「ファシストが反ファシスト戦争勝利を祝っているよ」

 「道路をふさぎ、ビルも娯楽施設も公園も病院さえも封鎖して、外出を禁止し工場も停止させる。
 ネットだって"壁越え"を厳重に封鎖して、メディアに強制的に閲兵式を絶賛させる。
 ......ねぇ、ファシストって何だっけ? 
 教えて!」
 (筆者注:壁越えとは、西側のネット情報を見ることができないように、国家が創ったファイヤー・ウォールである「万里の防火壁」を特殊なソフトを使って越え、西側諸国の情報を入手すること)

 「習包子(シー・バオズ)は、自分の地位を高めるために民の血税を使って、反ファシスト記念日をファシスト復活日にしちゃったよ」
 (筆者注:軍事パレードを行うためには莫大な経費が掛かっている。
 ぜいたく禁止令を発布し、節約を呼び掛けながら、この浪費は許されるのかという書き込みは多い)

■人民の自由は?

 「一つの国家の本当の国威って、閲兵式によって示せるものじゃない。
 人民の自由とか、平等で公正な法治とか、一般民衆の尊厳と安心感を守ってこそ、国威って言うんじゃないの?
 こういうものが一切なくって、武器を持ちだすなんて、コンプレックスと自信がないことの表れでしかない」

 「最もいい記念の仕方は、敗戦国の国民の生活より、戦勝国の国民の生活が良くなったことを示すことじゃないの?」
 (筆者注:日本国民の生活の方がいいということへの反語的表現)

 「どんなにすさまじい閲兵式をやったって、あの天津大爆発で爆死した百数名の命さえ救えなかったじゃないか! 
 軍の力ってなに? 
 あの爆発をもたらしたのは、この閲兵式で皇帝になっている"包子帝"が君臨する偉大なる中国共産党じゃないのか?」

 「まるでファシストの手段で反ファシスト戦争勝利を祝っているみたいだ。
 (平和の象徴の)鳩の巣さえ締め出してるんだから。
 中華民国・国民党時代に蒋介石が閲兵式をやったことがあるけど(1934年)、みんな自由にワーッと集まって閲兵式を祝ったものだ。
 今はまるでヒトラーのときのように緊張している。
 草木皆兵(草も木もみな敵兵に見える)って言うけど、中国政府はまるで敵から防御するように人民から自分たちを防御している。
 何を怖がってるんだ?」

 「ヒトラーには希特勒(シトラー)という文字を当てずに、今後は習特勒(シトラー)と書くべきじゃない?」

 「毛沢東は日本が侵略してきて国民党軍を追い出してくれたことを感謝した。
 包子帝は大勢の客を北京に呼んで、存在しない戦勝を祝っている
 (筆者注:抗日戦勝の主力は国民党であることを指す)。
 閲兵ブルーで一瞬澄み渡った空を通して、ファシストって何なのかをよく見てみよう。
 温故知新っていうだろう?」

■株式市場を皮肉って

 「(閲兵式の)彼らは緑の帽子を被り、緑の服を身にまとい、(株価が下がることを表す)緑のろうそくチャートを手に持ち、青ざめた顔に千鳥足。
 彼らはパレードに参加するために、標高5,179メートル(上海総合指数の最高点)の山から転落してきた! 
 ほら見ろよ、彼らの心は熱い。
 義侠心を極める者ならば、国のために株式市場を支えるのは当然であるという、かつてない決意を示している! 

首長:股民(グーミン。株式市場の個人投資家)、ご苦労様! 
股民:圏銭(企業)に金を搾られるために頑張ります!
首長:股民よ、みんな頑張って真っ黒に日焼けしたな!
股民:証監会(中国証券監督管理委員会)の方が黒いです!」
(筆者注:圏銭とは「上場企業が投資家の利益を顧みず株式発行などの手段により資本調達をすること」を指す。
 首長と股民の掛け合いは、習近平が閲兵式のときに車の上から中国人民解放軍に向けて「皆さん、ご苦労様!」と声をかけ、兵士が「人民のために頑張ります!」と回答する様をもじったもの)

 「まずは空売り(からうり)の軍勢、つまり空軍が登場し、股民の努力でやっと株市場が持ち直した途端、今度は海外の空売り勢力が登場する。
 そして国家隊がやってきて株市場を救うために(下支えするために)動き出し、空売りの軍勢が一斉出動したら、国家隊がまさかのドタキャンをした!!!」

■天安門事件を指して

 1989年6月4日、天安門広場に集まった民主化を叫ぶ若者たちを、人民解放軍が武力弾圧した。
 それを指示したのは共産党政権である中国政府。
 特に戦車で若者をひき殺したことに対して、ささやかな抗議を書き込んでいる。

 「いまわれわれに向かってきているのは解放軍の戦車隊だ。
 彼らの精神は奮い立ち、意気軒高だ。戦車隊は抗日戦争では活躍していないけど、でも年齢が比較的高い北京市民は、この戦車隊の威力をみんなこの目で見ている。」

 「20数年前に、若者たちがこの天安門広場に集まった。
 でも彼らは二度と戻ってくることはなかった。
 彼らはいま、その場所で眠っている。
 閲兵式の軍隊よ、武器よ、どうか静かに進んでくれ。
 彼らをもう一度踏みつけないでくれ、もう一度ひき殺さないでくれ。
 彼らは人民がここに戻ってくるのを待っている。
 目を閉じながら、後人のために道を示している。
 もう一度、ここに集う若者たちを守るために」

 まだまだあるが、今回はここまでにしたい。

(追記:中国のネットユーザーの書き込みなので、変更してはまずいと思ってそのまま翻訳したが、内容的に正確ではないので、最初の「声」に関して、その部分を削除し「中略」とした。
 省くのは許されると判断した)

[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。



レコードチャイナ 配信日時:2015年9月11日(金) 12時54分
http://www.recordchina.co.jp/a118548.html

<ボイス>「中国人として抗日戦争の勝利を祝うなど恥ずかしい」、
本当に勝ったのは日中のどっちか―中国作家

 2015年9月8日、中国が抗日戦争勝利70周年記念の式典を3日に開き、軍事パレードは各方面から注目を集めた。
 抗日戦争について、中国の歴史小説作家・梁恵王(リアン・フイワン)氏は、独自の見解を語っている。

 梁氏は、
 「抗日戦争は誰が勝利したのか?
 私は日本が勝ったと考える。
 日本は繁栄し、自由や民主、文明を手に入れのだから。
 一方、中国は時代遅れの政治体制を手にし、国民は奴隷思想が根強く退化した。
 日本と中国、果たして戦争の勝者はどちらと言えるのか。
 一中国人として、抗日戦争の勝利を祝うなど、私には恥ずかしくてできない」
と語っている。




●中国崩壊 最新情報2015年9月 三橋貴明「中国で体験した怖い話!!軍事パレードの裏に隠された不気味な実態!!」おはよう寺ちゃん活動中9月8日-侍News
2015/09/08 に公開
中国・韓国 経済 崩壊 最新情報2015





【輝ける時のあと】


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