2015年9月1日火曜日

日本の防衛予算:中国念頭に南西諸島シフト、概算要求5兆円超、防衛費/国防費は、安全保障のための「保険」

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朝日新聞デジタル 9月1日(火)9時15分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150901-00000017-asahi-pol

防衛予算、中国念頭に南西諸島シフト 概算要求5兆円超

 防衛省は31日、2016年度予算案の概算要求を公表した。
 過去最大の5兆911億円(今年度当初予算比2・2%増)で、要求増は4年連続。
 中国を念頭に「南西シフト」を強め、南西諸島周辺の有事の際に部隊を素早く派遣するため、陸上自衛隊の機構改編に着手する。

 離島奪還やゲリラ戦に対処する機動戦闘車(36両)の購入費を初めて計上するなど、南西諸島を中心とした海空の警戒監視機能を強める南西シフトを色濃くしたのが特徴だ。
 安倍晋三首相が安全保障関連法案を審議する参院特別委員会で
 「中国は急速な軍拡を進めている。
 27年間で41倍に軍事費を増やしている」
と述べたように、念頭にあるのは海洋進出を強める中国だ。

 離島での有事に即応するため、全国15の陸自の師団(1カ所約8千人)・旅団(同4千人)のうち、23年度末までに7カ所を「機動師団」「機動旅団」に改編する。来年度は第8師団(熊本市)と第14旅団(香川県善通寺市)を衣替えし、ここに機動戦闘車を配備する。

 機動戦闘車は、8輪タイヤで時速100キロの走行ができ、戦車に匹敵する105ミリ砲を備える。
 空輸も可能で、離島が占拠された際には奪還作戦に使える。

 機動師団や機動旅団の隊員や機動戦闘車などを輸送するために、次期輸送機C2を1機購入する費用も盛り込んだ。
 C2は航続距離6500キロ、最大積載量30トンで、いずれも現行のC1輸送機の4倍の能力がある。
 開発段階にトラブルが続いたが、防衛省は「16年度中の開発完了のめどが立った」としている。


ロイター 2015年 12月 18日 12:53 JST

焦点:東シナ海で日本版「A2AD」、中国の海洋進出を封じ込め

[東京 18日 ロイター] - 
 中国が南シナ海の支配を強める中、
 南西方面に軸足を移す日本の防衛政策が、
地域の軍事バランスにとって重要性を増しつつある。
 中国本土から西太平洋への出口をふさぐように連なる南西諸島を軍事拠点化し、東シナ海に壁を築く日本の戦略は、中国軍の膨張を食い止めたい米国の思惑とも合致する。

  南西諸島に監視部隊やミサイルを置いて抑止力を高め、有事には戦闘機や潜水艦などと連携しながら相手の動きを封じ込める戦略を、日本政府は
 「海上優勢」、「航空優勢」と表現
している。
 しかし、安全保障政策に携わる関係者は、米軍の活動を制限しようとする
 中国の軍事戦略「接近阻止・領域拒否(Anti─Access/Area Denial、A2AD)」の日本版
だと説明する。 

■<重要性増す第一列島線> 

  「事態を遅らせることはできたかもしれない。だが、列車はすでに出発してしまった」──。
 米軍が南シナ海で「航行の自由作戦」に踏み切った今年10月末、アジア情勢に詳しい米軍幹部はロイターにこう語った。 
  南シナ海に滑走路を備えた人工島を造成する中国に対し、米海軍は艦船を派遣し、中国の海ではないとメッセージを送った。
 しかし人工島はほぼ完成しており、関係者の間では、中国が軍事的な支配を確立しつつあるとの認識が広まっている。 

  1996年の台湾海峡危機の際、中国軍は急派された米空母の前に矛を収めざるを得なかった。
 その経験をもとに中国は、有事に米軍が戦力を投入できないよう、南シナ海、東シナ海、さらに西太平洋まで「内海化」することを狙っていると、米国や日本の専門家は分析している。 

  「中国の目標は南シナ海、さらに東シナ海で覇権を取ることだ」と、在日米国大使館の政治軍事部長や米国務省の日本部長を歴任したケビン・メア氏は言う。
 「譲歩すれば中国の挑発的な行動を助長するだけだ」
と、同氏は話す。 

  このうち南シナ海が中国の勢力圏に入りつつある今、鹿児島県・大隅諸島から沖縄県・先島諸島を通り、マレーシアのボルネオ島まで連なる島々が、これまで以上に戦略的な重要性を帯びてくる。
 中国が「第一列島線」と呼び、米国に対する防御線と位置づけているラインだ。 

  「今後5、6年で第一列島線が日米同盟と中国の間の軍事バランスを左右することになるだろう」
と、中谷元防衛相の政策参与で、自身も民主党政権時代に防衛相だった森本敏氏は指摘する。 

■<ミサイルで「拒否力」狙う>

  それまでに態勢を整備しようと、日本は第一列島線のうち、自国領内の南西諸島の軍事拠点化を進めている。 
 鹿児島県の奄美大島に550人、
 沖縄県の与那国島に150人、
 宮古島に700─800人、
 石垣島に500─600人
の部隊を置く予定だ。 

  これまで沖縄本島以南には、宮古島と久米島に航空自衛隊のレーダー基地がある程度だった。
 防衛省は、この空白地帯に警備部隊や監視部隊を編成することで、離島に侵攻された場合の初動態勢を整えると説明している。 

  しかし、配備するのは警備や監視部隊だけではない。
 奄美大島、宮古島、石垣島には対空・対艦ミサイル部隊も展開する。
 日本の防衛政策を南方重視に変えた民主党政権で、党の安全保障調査会事務局長として防衛大綱策定に関わった長島昭久衆院議員は「A2ADというきっちりとした考え方ではなかったが、
 南西方面に拠点を造り、ミサイルを展開して(相手が接近できないようにする)拒否力をつけようとした」
と振り返る。
 旧ソ連の侵攻に備えて開発された射程180キロの地対艦ミサイルなら、沖縄本島と宮古島の間に横たわる350キロの宮古海峡もカバーできるようになると、元陸将で笹川平和財団参与の山口昇氏は言う。 

 中国が構築しているとされる軍事戦略・A2ADは、対空・対艦、弾道ミサイルを沿岸部や内陸に大量に配備。
 潜水艦や戦闘機などと連携し、有事に米軍の艦船や航空機を中国本土に近づけさせない、近づいても自由に活動させないことを狙っている。
 人民解放軍は今年9月の「抗日戦争勝利70周年」軍事パレードで、艦載機と合わせて50億ドルの米空母を破壊可能とされる対艦ミサイル「東風21D」を披露した。 

  米議会は、中国が第一列島線を射程に収める短・中距離ミサイル1200発を保有していると分析する。
 さらに中国は潜水艦を増強、レーダーを回避できる地上発射型の弾道ミサイルの開発にも取り組んでいる。 

■<航空優勢、海上優勢> 

  南西方面の防衛力を強化する方針は、2012年末に発足した第2次安倍晋三政権にも引き継がれたが、新たに策定された防衛大綱の中に「海上優勢」、「航空優勢」という単語が盛り込まれた。
 敵の艦船や航空機の活動を制限した状態を指す軍事用語で、中国が構築を目指しているA2ADと同じ概念だ。 
 「我々はA2ADではなく、航空優勢、海上優勢という言葉を使った」
と、今年10月まで安全保障担当の首相補佐官を務めた礒崎陽輔参院議員は言う。
 「米軍と一体となって一定の海域、空域で優勢が確保できるようにすることを念頭に置いた」
と話す。

  日本は新型哨戒機や無人偵察機の調達のほか、潜水艦部隊を増強することを決定した。
 ステルス性の高いF35戦闘機や新型輸送機オスプレイの取得、水陸機動団の新設も進めている。
 平時の警戒監視を手厚くして軍事的空白を埋める一方、いざとなれば短時間で戦力を集中し、島に配備されたミサイル部隊と連携しながら、中国軍を東シナ海で自由に動けなくするのが狙いだ。 
  中国海軍の動向を研究する米海軍大学のトシ・ヨシハラ教授は、東シナ海から西太平洋にわたる海域で自衛隊が果たす役割の重要性を指摘する。
 有事の際に中国軍の作戦を制限できれば、米軍の活動の自由度が増すだけでなく、米軍が来援する時間を稼げるとみる。
 「日本は情勢をひっくり返そうとしている」
と、ヨシハラ教授は言う。

  国防費を大幅に削減する一方、中東問題から抜け出せない米国が、一国で中国の膨張を止めることは難しくなりつつある。
 アジア太平洋地域の友好国との関係強化が不可欠になっており、米海軍第7艦隊のアーコイン司令官は日本の動きについて、米軍の戦略を補完するものと指摘する。
 「米軍は世界のどこであれ、同盟国・友好国、そして潜在的な敵国の能力と戦力を考慮して作戦を立案する」
と話す。

 一方、中国は警戒を隠さない。
 中国国防省はロイターの取材に
 「いかなる日本の軍事的な動きも、近隣諸国の不安を呼ぶ」
としている。

■<運べなかったミサイル> 

 とはいえ、今はまだ机上の構想にすぎない。
 1つ1つの島が小さな南西諸島には大規模な戦力を常駐させることはできないため、緊急時には本土から素早く部隊を移動させる必要がある。
 輸送手段を持たない陸上自衛隊の部隊や装備を、航空自衛隊と海上自衛隊が効率的に運ぶ統合運用がカギを握る。 

  10月末から11月中旬に陸・海・空の統合訓練を行った自衛隊は、本土のミサイルを南西諸島に初めて空輸しようとした。
 しかし、福岡県の築城基地から沖縄県の那覇基地まで、空自の輸送機が陸自の中距離ミサイルを運ぼうとしたところ問題が発生した。
 危険物の輸送方法を定める国連勧告に従い、陸自が空自に事前申請したのは燃料の入っていないミサイルだったが、実際に運ぼうとしていたのは燃料を搭載したミサイルだった。
 燃料入りのものを運ぶ準備をしていなかったため、カラのまま運ばざるをえなかった。

  「自衛隊は各地に部隊がいるが、輸送、ロジスティクス(兵たん)に問題がある」
と、安倍内閣で14年9月まで防衛相を務め、自衛隊の統合運用を進めた小野寺五典衆院議員は言う。
 「陸・海・空、それぞれ整備や給油の仕方が違う。
 陸だけで使っていれば不便ではなかったことが、共同使うと問題が出てくる」
と指摘する。
 
  南西諸島への基地配備も、本格的に動き出すのはこれからだ。
 与那国島には15年度末までに150人の沿岸監視部隊を配置する予定だが、奄美大島と宮古島はこれから用地取得と造成に取り掛かる。
 石垣島については19年度以降の配備予定だ。 

  一方、中国軍が第一列島線を抜けて西太平洋に出ていく動きは常態化しつつある。
 11月下旬には爆撃機と情報収集機、早期警戒機が宮古海峡の上空を、12月上旬には駆逐艦、フリーゲート艦、補給艦が大隅海峡を通過した。

 「(日本は)常に国会対応ばかりに終始して、安全保障の本質的な議論をすることすらタブーな国だった」
と、小野寺元防衛相のもとで防衛副大臣を務めた武田良太衆院議員は言う。
 「そのツケが今日まで回ってきている」。

*ヘッドラインを修正しました

(久保信博、ティム・ケリー 取材協力:リンダ・シーグ、メグハ・ラジャゴパラン 編集:田巻一彦) 


サーチナニュース 2015-12-22 16:37
http://news.searchina.net/id/1597833?page=1

日本が軍事費を急増させるのは理知的ではない、「民生軽視」の本末転倒だ
=中国メディア怪気炎

 中国共産党中央宣伝部の事実上の機関紙である光明日報は21日、
 「日本が軍事費を急増させるのは理知的ではない」
と題する論説を掲載した。

 記事は、安倍内閣は首相に再任して以来、防衛予算を4年間連続で急増させ、歴史的記録を絶えず更新と紹介。
  共同通信の分析として、防衛費急拡大の理由を
 「中国の海洋活動を懸念し、南西諸島を防衛を強化するため」
と紹介した上で
 「日本は実際には、その企てをまったく隠さずに軍備を強化している。
 中国の固有の領土である釣魚島とその周辺の島(尖閣諸島の中国側呼称)に対する不法な主張を堅持するため」
と論じた。

 記事は、日本が在日米軍のために膨大な予算を捻出していることにも触れ、「最終的に一般の日本国民の負担」と指摘した。

 記事は最後の部分で、朝日新聞の論説を紹介。
 「2016年度が財政健全化計画の初年であり、政府は予算の増額を厳格に抑えている」、
 「教育関連予算の増加も困難」、
 「安倍政権は軍備の強化と民生の軽視に固執している」
として、日本でも安倍内閣の予算について「本末転倒で理知的でない」との見方が出ていると紹介した。

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◆解説◆
 政府による2016年予算案の防衛費は5兆500億円で、初めて5兆円を突破する見込みだ。
 防衛費の急増が続いていることに、日本でも疑問や批判の声があるのは上記記事の指摘通り。
 また、米軍関連予算を含め、防衛費を負担するのは最終的に国民であることも、理の当然だ。

 上記記事で不思議なのは、自国の状況をまったく考慮していないことだ。
 中国では現在も「労働所得とその他の合法的な収入だけに頼ったのでは、基本的な生存を維持できない人や世帯」を意味する「絶対貧困」と呼ばれる人が7000万人以上、存在するとされる。

 その一方で、中国の国防費は2桁成長で増大している。
 現在は日本の3倍超の17兆円規模とされている。
 人口が日本の10倍で国土も大きい割には少ないとも言えるが、最新兵器でも安価に製造できる事情もあり、簡単には「国防費が多い/少ない」と言えない。
 ただし「急増」していることは事実だ。

 防衛費/国防費は、安全保障のための「保険」と理解することもできる。
 従って、「貧困層があるから国防費を伸ばすのはおかしい」とまでは言えないが、自国の状況を無視して、日本の状況だけを批判的に紹介する論調には、どうしても違和感を覚える。



レコードチャイナ 配信日時:2015年12月25日(金) 20時0分
http://www.recordchina.co.jp/a125900.html

日本の来年度の防衛予算、初めて5兆円を突破
=専門家「明らかに中国を目標としている」―中国紙

 2015年12月25日、環球時報によると、日本政府が24日に発表した2016年度の防衛予算が初めて5兆円を突破したことについて、専門家は
 「明らかに中国を目標としたものだ」
との見解を示している。
 報道によると、日本の来年度の防衛費はおよそ5兆500億円で、4年連続の増加となった。
 日本の中谷元防衛相は、
 「国民の生命、財産を守り、世界の大きな期待のなかで積極的平和主義を推進するため、これは極めて重要」
と語った。
 海洋進出を加速させる中国を念頭に、尖閣諸島などの防衛が柱となっているとみられる。

 上海国際問題研究院アジア太平洋研究センターの廉徳瑰(リエン・ダーグイ)副主任は、環球時報の取材に対して、
 「日本の軍備増強の流れは発展的で構造的。
 ここ4年で防衛費は徐々に増加している。
 今回はわずか1.5%の増加だったが、以前に比べればかなり増加しており、日本全体の国防にかける力も徐々に拡大している」
とした。
 また、
 「今回の防衛費の増加は明らかに中国を目標としたものである。
 日本は一貫して中国の台頭に憂慮を示しており、中国を脅威だととらえている」
と分析した





【輝ける時のあと】


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