2015年9月9日水曜日

チャイナショック(3):向こう1~2年内に成長の危機、中国経済に巣食う「債務」というシロアリ

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ロイター  2015年 09月 7日 17:38 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/09/07/china-imf-idJPKCN0R70S120150907

中国外貨準備、8月は‐939億ドルで過去最大の減少

[北京 7日 ロイター] -
 中国人民銀行が発表したデータによると、8月末時点の外貨準備は「3兆5570億ドル」となり、7月末から939億ドル減少した。
 月間としては過去最大の減少となった。

 金準備は618億ドルで、7月末時点の592億4000万ドルから増加。
 国際通貨基金(IMF)の準備高は47億3000万ドルで、前月の43億7000万ドルから増加した。
 IMF特別引出権(SDR)は105億3000万ドル、前月末は104億6000万ドルだった。

 人民銀は7月からIMFの「特別データ公表基準(SDDS)」に準拠し、外貨準備の公表を毎月行う方針に変更した。
 それまでは四半期ごとに公表していた。



ロイター  2015年 09月 9日 09:10 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/09/09/china-reserve-decline-idJPKCN0R80LZ20150909?sp=true

コラム:中国の外貨準備減少が心配な本当の理由
Peter Thal Larsen

[香港 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
 中国の巨額の外貨準備がわずかながら縮小した。
 8月分は940億ドル減と、絶対額として過去最大の減少を記録し、「3兆5600億ドル」となった。
 このことは、不首尾に終わった人民元切り下げを契機とする資本逃避への懸念を生じさせるが、
 より大きなリスクは国内経済への悪影響だ。

 世界第2位の経済大国の外貨準備が単月で2.6%減少することは、ささいな動きだと片付けられることではない。
 実際、8月にユーロ相場が回復していなければ、減少幅はもっと大きくなっていたはずだ。
 ユーロ高は中国が保有するユーロのドル建て価値を押し上げる。
 中国は8月半ばの人民元切り下げの後始末として、
★.1000億ドルを優に超える資金を投じて通貨防衛に動いた
と見るのが正解だろう。

 人民元が下落する見通しに転じたことで、過去5年間というもの、元は上昇の一途をたどると信じて疑わなかった投資家は衝撃を受けた。
 中国企業がドル建て債務の返済を急ぎ、
 外国の多国籍企業が手元資金をドルに転換し、
 海外投資家が元建て投資の巻き戻しに動いている
のは、このためだ。

 人民元相場が純粋に市場で決められるとすれば、おそらく下落するだろう。
 しかし中国人民銀行は外貨準備に手を付けて元の安定を保とうとしている。
 これは永遠に続けられるものではなく、米金利が上昇してドルの魅力が高まればなおさらだ。
 しかし中国の対外債務が資産と足並みをそろえて縮小するならば、幾らかの恩恵がもたらされる可能性もある。

 とはいえ、大規模な資本流出は2つの難題を突き付ける
 まず心配なのは、
1].中国市民が国外に資金を移動させようとする可能性だ。
 マカオの質屋など、闇の両替商に対して最近取り締まりが実施されたことは、当局が資本逃避に神経を尖らせていることを示している。

2].第2の問題は、人民銀行がドルを売って元を買う度に中国のマネーサプライが縮小することだ。
 人民銀行は、国内銀行の預金準備率引き下げによってこれを相殺することができる。
 しかしそれでも資本逃避のペースに追いつかない恐れがある。
 減速しつつある中国経済にとって、流動性の枯渇は最も避けたい事態だ。

●背景となるニュース

*中国人民銀行が7日公表したデータによると、8月の中国の外貨準備は939億ドル減少して3兆5600億ドルとなり、単月として過去最大の減少を記録した。
 当局が突然の人民元切り下げ後、元の下落に歯止めを掛け、金融市場を安定させようと試みた結果だ。
*外貨準備は2014年7月に3兆9900億ドルでピークを付け、その後は減少を続けている。

*7日のオフショア市場の人民元相場は1ドル=6.479元で、国内の公式レートを1.8%下回った。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。



ロイター 2015年 09月 9日 14:43 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/09/09/china-stocks-comatose-idJPKCN0R90E820150909?sp=true

アングル:中国株価対策は代償も、「市場の死」招く危険

[上海/香港 9日 ロイター] -
  中国の株価対策は今のところ効を奏しているが、代償も大きくなっている。
 株式や先物の商いは薄くなっており、「市場の死」を招く危険もある。

 中国の取引所が指数の変動を抑える「サーキットブレーカー」の導入を提案し、
★.当局が長期投資に有利な配当課税を
打ち出してから、主要な国内株式市場の日中
 出来高は減少し、株式先物の売買高もほぼ消滅
している。

 一部で当局の措置を歓迎する声があるものの、
 取引の急減は投資家の信頼低下を反映
しているともいえる。

 アルファ・スクエアード・キャピタルのファンドマネジャー兼最高経営責任者(CEO)であるワン・フェン氏は、中国株からの撤退を検討。
 株価指数先物の代わりに商品先物への投資を考えているところだ。

  同氏は当局の投機抑制措置を市場の死をもたらすものだと非難。
 「今はやっているジョークは、
 市場は『植物状態の患者』になったというものだ」
と話す。

 華泰証券のストラテジスト、チウ・ジー氏は、香港の指数先物を取引するための口座開設に関する問い合わせが中国の投資家から増えていると指摘。
 「ゲームのルールは香港のほうが一貫している」と述べた。

■<残るは「国家チーム」取引>

 市場の動揺に対するここ数週間における当局の取り締まりや、サーキットブレーカーといった新たな措置の発動が検討されていることは、一部で売りを食い止める一方、買いも食い止めたかもしれない。

 上海総合指数.SSECの出来高は、7日にサーキットブレーカーの導入が浮上してから4割強も減少し、8日には春節(旧正月)のあった2月以来の低水準にまで沈んだ。
 市場では、こうして残った取引も大半は「国家チーム」と呼ばれる政府系投資家が手掛けているのではないかと見られている。

 また、CSI300指数先物も、4日に約60万枚だった取引高が8日には2万3000枚を下回った。
 ピークの8月下旬には243万枚に達したが、一部の株式指数先物取引を対象に証拠金率が引き上げられたため、大幅に減少した。

 中国にとってのリスクは、安定しているものの非流動的な株式市場だ。
 証券監督当局は新規株式公開(IPO)の再開が難しくなり、間接金融から直接金融への流れも阻害されることになる。

■<何もしないのが安全戦略>

 出来高の減少は、中国株式市場で大きな存在感を示す個人投資家が市場から手を引いていることを示している。
 個人投資家は一貫して、最小の損失で撤退できるなら撤退したいと話している。

 機関投資家にとっては、バイ・アンド・ホールド戦略を取れとの当局の圧力にさらされ、戦略について聞かれることが常態化するなか、全く何も取引をしないほうが安全な戦略となっている。

 中国の消費関連株に特化した香港のヘッジファンドのあるマネジャーは「今のところ株からは手を引いている」と話す。

 フィデリティ・ワールドワイド・マネジメントの株式部門グローバル最高投資責任者(CIO)、ドミニク・ロッシ氏は「株価下支え措置を導入しようとする国を何カ国もみてきたが、長期的にみて効果がある唯一の方法は市場にまかせることだ」と指摘。
 「中国も同じことをすべきだ」と述べた。

(Pete Sweeney記者、Saikat Chatterjee記者 執筆協力:Michelle Chen and Engen Tham 翻訳:川上健一 編集:加藤京子) 



JB Press 2015.9.9(水) ジーン・フリーダ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44746

中国経済に巣食う債務というシロアリ
気づいた時にはもう手遅れ、蝕まれていく経済成長の基盤

 中国が直面する経済的な試練を表すのに、中国国営中央テレビ(CCTV)の新社屋として設計された未来的な名建築物以上にぴったりの象徴はない。
 2009年にこの象徴的なビルが完成する数カ月前、CCTV幹部らは許可を受けていない花火の打ち上げを行い、火災が発生。
 北京の住民たちが「シロアリの巣」というあだ名をつけた、複雑なくさび形高層ビルに付随する比較的小さい建物がほび全焼した。

 火災のために、CCTV本社の完成は2012年にずれ込むことになった。
 シロアリの巣はまだ未完成で、入居者もいない。

 ビルの構造的完全性が火災で破壊されてしまい、隣接する大きいビルを損なう恐れから、解体することもできない。
 構造物の良い部分は、悪分の負担を払いのけることができないのだ。

■二重の軌道を描く中国経済

 この2つのビルは、二重の軌道を描く中国経済を彷彿させる。
 サービスと消費に基づく新しい軌道が、鉄鋼や鉱業など、非効率で余剰生産能力に苦しむ産業で構成される、古くて遅い軌道に足を引っ張られているのだ。

 2つの軌道をまたぐのが、中小規模の都市での膨大な過剰設備と大都市での堅調な需要を特徴とする中国の不動産市場だ。

 問題を悪化させているのが、
1].高い成長目標――現時点で7%――に固執する中国指導部の姿勢と、
2].その結果、必要不可欠な生産を生み出すために融資に依存
する状況だ。
 信用制度は暗黙の政府保証を軸に設計されているため、融資の大半は中国経済のうち、比較的非効率で多額の債務を抱えたセクターに不適切に配分される。

 その結果、
★.中国の成長の奇跡の基盤が、減退する兆しがほとんど見えない過剰債務によって蝕まれている。

 政府が経済をコントロールできなくなったことが次第に明白になっている。
 中国株式市場の急騰とその後の暴落で、投資家はひどく動転した。
 だが、本当の警鐘になったのは、地方政府の借り入れと不適切な支出を整理する遅まきの努力だった。
 地方政府の債務の規模を推計する審計署(会計検査院に相当)の最初の試みにより、
 2010年末に国内総生産(GDP)の26%に相当する債務残高を明らかになった。
 2013年半ばの2度目の試みでは、債務残高がさらに増加し、GDP比32%
になったことが分かった。
 そして、中国社会科学院による最新の調査では、債務が急増し、
 2014年末時点でGDP比47.5%
達している。

 習近平国家主席は2013年11月に、中国経済における市場の役割を強化すること目指す改革政策を打ち出した。
 この改革は持続不能な債務増加につながっているように見える不適切な資本配分の問題を解決すると期待された。

■テストケースとなった地方政府の債務

 地方政府の債務は大きなテストケースになった。
 2015年前半、中央政府は地方政府が抱える、期限が短く、高金利の銀行融資を長期債に転換する計画を発表した。
 中央政府は、債務の満期を延長することで地方政府の財政上の制約を和らげ、これにより地方政府が財政刺激策を追求できるようになることを期待した。

 中国の市中銀行が新たな債券の低利回りを受け入れることに二の足を踏むと、経済における市場の役割を強化するという目標は捨て去られた。
 政府は銀行に、債務交換の実行を強いた。
 驚くまでもなく、銀行は突如、リスクを嫌うようになった。
 地方政府は、たとえ流動性ポジションが改善しても、銀行が新規融資の実施を渋ることを知る羽目になった。

 一方、不動産市場の落ち込みで、地方政府は土地の売却という主たる歳入源を失った。
 こうして、近代中国の政策立案において特にショッキングな出来事が起きた。
 刺激策を求める政府の要求が、単に無視されたのだ。

 中国は必死に避けようとしてきた罠にはまろうとしているように見える。
 中国が短期的な成長目標を優先して改革を無視するに従い、中国の債務問題は悪化することが確実視される。
 引き続き非効率な企業を破綻から守ることに資源が回され、経済の足かせは大きくなっていく。
 銀行は不良債権を隠し、損失処理を避けようとして、一段とリスクを嫌うようになるだろう。

 政府は資本移動の規制を撤廃することで流動性を高めようとした。
 そうすることは、経済に対する政府の支配力を一段と弱めるだけでなく、近隣諸国や他の新興国を飲み込みかねない全面的な金融危機のリスクも生み出す。

 差し当たっては、ドル高を受けて人民元が地域の他通貨に対して急上昇し、中国の経済問題が増大したことから、当局は昔の本能を頼りにし、通貨切り下げに踏み切った。

 これでも不十分だ。
 中国の不動産市場は落ち込んでいる。
 株式市場は信用を失った。経済は次第に停滞の度合いが強まっている。
 その結果、中国の莫大な国内貯蓄が次第に海外に向かおうとしている。
 中国の対外債務の規模と国外へ移動する可能性のあるマネーの量と比較すると、
★.中国が持つ3兆7000億ドルの外貨準備さえも取るに足りない
ように見え始める。

■向こう1~2年内に成長の危機

 シロアリと同じように、債務には経済の基盤をあっという間に台無しにする独特な力がある。
 侵入が認識される頃には、多くの場合、もう手遅れだ。
 中国が被害を覆すのであれば、債務の圧縮に集中し、資本配分のメカニズムを修復し、資本規制の撤廃を延期する必要がある。

 この国の経済は向こう12~24カ月以内に成長の危機に見舞われる可能性が高い。 
 危機の深刻度は、政府が難しい調整をいま行うか、あるいは――1990年代の日本のように――何もせずにシロアリが消えることを願うだけかによって決まるだろう。

© Project Syndicate, 2015.
www.project-syndicate.org



レコードチャイナ 配信日時:2015年9月9日(水) 11時42分
http://www.recordchina.co.jp/a118600.html

2014年の対中投資は15兆円
=初めて米国抜き世界一、
対外投資も中国はアジアで最大規模―中国メディア

  2015年9月8日、中国・福建省アモイで「中国国際投資貿易商談会」が開かれ、国連が世界投資報告を発表。
 それによると、2014年の対中直接投資(FDI)は1290億ドル(約15兆3900億円)と前年より50億ドル(約6000億円)増加し、米国を抜き初めて世界一となった。
 中国新聞網が伝えた。

 中国の増加に対し欧米は軒並み減少しており、米国は2310億ドル(約円)から920億ドル(約27兆6000億円)に大幅下落した。

 中国はFDIの流入が増加しただけでなく、対外投資も活発。
 すでにアジアの基礎的な施設への投資において最大規模の投資国となっている。
 報道では、
 「一帯一路(中国を起点に21世紀海のシルクロードと陸上のシルクロード経済ベルトでインフラ整備を行う構想)を推進すべく、
 中国の対外投資は今後数年間高い水準の増加を続けるだろう」
と分析している。


 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2015年09月09日(Wed) 
梶谷懐 (神戸大学大学院経済学研究科教授)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5311

デフレ不況に近づく中国
必要なのは中国版リフレ

 6月に急落した上海株式市場は、中国政府の露骨ともいえる「救市」(市場介入)にもかかわらず続落を続け、ついに8月下旬、「世界同時株安」をもたらすこととなった。
 日経平均株価が一時、937円も急落し、ニューヨークのダウ平均株価も一時、過去最大の1089ドルの値下がり幅を記録した8月24日は「ブラックマンデー」とすら呼ばれている。

 中国経済にいったい何が起きているのか。
 重要なのは、株価下落そのものより、それをもたらす原因となったマクロ経済状況の変化である。
 現在中国が陥っているのは「デット・デフレーション」である(これは日本がバブル崩壊後に陥った「デフレ・スパイラル」とほぼ同義)。

■日本の高度経済成長期も超える過剰投資

 中国では株式市場の高騰が昨年から続いてきた。
 だが、実体経済の指標とは全く連動しておらず、株高は不動産市場から流入した資金によって一時的に実現したものに過ぎない、というのが大方の見方だった。

 2008年のリーマンショックによる世界金融危機以降、中国は地方政府による公共事業を中心とした投資をもって潜在的な消費不足を補ってきた。
 13年の公式統計によれば、
 GDPのうち国内投資(在庫投資含む)が占める比率(粗投資率)は「47・8%」
に達している。
 日本の高度経済成長期でも粗投資率は「35%」程度だったことを考えると、この中国全体の数字だけでも投資が過剰な状態にあることは明らかだ。

 しかしより深刻なのは、特に内陸部における投資依存度の高さである。
 例えば同じく13年に粗投資率が80%を超えている省・自治区は、全国で雲南、青海、チベット、内蒙古、寧夏、新疆の6つもある。
 このうちチベットと青海は投資率が100%を超えている。
 これは、
 投資の大部分が中央からの補助金で外の省から資本を購入することに充てられている
ためである。

 これらの国内投資の多くはもともとフローの投資収益率は低く、キャピタルゲインが発生することを前提に行われてきた。
 しかし、14年の中ごろから全国の不動産市場が下落に転じ、資産価値の期待上昇率がしぼむことにより、それらは収益性が低いだけではなく、キャピタルロスをもたらす可能性の高い「無駄な投資」となってしまった。
 まさにデット・デフレーションが視野に入る状態となっていた。

■債務の拡大と不可分な投資の拡大

 デット・デフレーションとは
 企業などが抱える過剰な債務が原因となって経済が目詰まりを起こし、
 不況が拡がっていく現象を指したものである。
 消費や輸出と異なり、投資の拡大は債務の拡大と不可分である。
 特に中国のような投資への依存度が高い経済では、資産価格の下落などによって債務の返済が焦げ付いてしまうリスクを常に抱えているといってよい。

 デット・デフレーションに陥ると、まず、物価の下落などによって資産価値や投資プロジェクトの収益性が徐々に下落し、企業の債務返済が次第に困難になるため、新規の投資を控えたり、従業員をリストラしたりするようになる。
 この状態が長引くと「デフレの罠」、つまり企業や金融機関の連鎖的な倒産が生じ、さらに不況が深刻化する状況に陥る。

 現況においては中国の消費者物価水準はまだプラスだが、不動産価格と投資プロジェクトの収益性の下落は続いており、デット・デフレーションに近い状態にある、と考えられる。

1].デット・デフレーションを打開する一つの方法が「清算主義」である。
 これは低収益、高債務の企業を倒産させてでも債務を整理し、原因を根本からなくしてしまおうというものである。

2].もう一つの処方箋は、政府が積極的な金融緩和を行って物価水準を上昇させるという
 「リフレ政策」を採り、企業の実質的な債務負担を減少させるべきだ、というもので、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ前議長らが唱えたものである。

 清算主義的な主張にも一理はある。
 改革の「痛み」を和らげるために金融緩和を行えばまたしても投資が刺激されてしまうからだ。
 しかしこのような清算主義は、適切な政策割り当ての観点からみると問題が多い。
 今後の持続的な成長を考えれば、同時に、投資の抑制を含め、供給面の生産性を引き上げるための改革を行うことは必須である。

 加えて需要面でのショックを抑えるために、消費や輸出を刺激する政策と組み合わされる必要がある。
 急激に成長率が低下してしまうと、本来高い成長率を見込める民間企業から先に倒産に追い込まれ、人的資源が有効に活用されないため、かえって生産性が低下してしまうからだ。

 以上を踏まえれば、
 不況に陥った中国経済にとって望ましい政策とは
以下のようなものであるはずだ。

 まず、高すぎる投資率を抑制し、資源配分の効率性を高めるための金融市場や社会保障制度などの改革を行う。
 その一方で、需要のショックを和らげるため一定のインフレ率をターゲットにした金融緩和を行い、為替レートを低めに誘導するというリフレ政策を行うのである。

 景気を下支えするための金融緩和を持続的に行ってきた中国当局の政策スタンスは、一見このような望ましい方向を目指しているように見える。
 確かに、中国人民銀行は預貸比率規制の撤廃や預貸基準金利と預金準備率の引き下げなど、6月下旬から継続的に金融緩和を行い、大都市の不動産指標も次第に上向きつつある。

■中国当局による不可解な元買い介入

 中国人民銀行は8月11日から13日にかけての3日間、人民元レートの基準値を4.5%も切り下げた。
 当局はこの1年ほど、一貫して元買い介入を行い、人民元の対ドルレートは1ドル=6.1元から6.2元台で推移してきた。
 しかし、対ドルの先物レートが14年末から大きく下落し1ドル=6.3元台の後半から6.4元台で推移するなど、市場に強い元安圧力が存在していた。

 しかし、デット・デフレーションの発生により、国内需要の落ち込みが生じている状況のもとでは、このような介入は本来望ましくないものであった。
 元の下落を食い止めるために元買い介入を行うことは、市中から元を引き上げる引き締め効果を持ってしまい、デフレ脱却のための金融緩和を相殺する効果を持つからだ。

 AIIBの設立やシルクロード基金を通じた資本輸出によってアジアにおけるインフラ建設を進めると同時に人民元の国際化を目指す中国政府としては、大幅な元の減価は避けたかった。
 しかし、なかなか反転しない株価を目にした当局は、国内経済が「デフレの罠」に陥っては本末転倒と考え、切り下げに踏み込んだのだろう。

 また、資源配分の効率性という観点からは、金融緩和によって増加する銀行融資が、どのような貸出先に行われるかが問題となる。
 特に内陸部の省に関しては、過剰な投資を一定期間抑制し、その結果ある程度低成長が持続することになってもやむを得ない、という政治的な決断が必要になるかもしれない。

 中国政府は7%という具体的な成長目標にこだわってきた。
 7月15日に中国政府は、4~6月期のGDP成長率が前年比7%に達したことも公表している。
 しかし、それにこだわることは決して得策ではない。
 内陸部を中心に効率性の低い投資が過剰に行われ、成長率を何とか下支えしてきた結果、不動産や株式市場のバブルを誘発してきた「投資過剰経済」の体質が温存されてしまうからだ。

 いずれにせよ、現在の中国政府は、いくつもの異なる課題を同時に解決せねばならず、深刻なジレンマに陥っているようにもみえる。
 その中で、景気を下支えするための一連の経済政策が、生産性上昇のための改革と一体となって行われるのか、それとも非効率な投資を続け、問題を先送りさせる結果に終わるのか。
 そこに今後における中国経済の持続的な成長の可否がかかっていると言っても過言ではない。



レコードチャイナ 配信日時:2015年9月11日(金) 10時22分
http://www.recordchina.co.jp/a118645.html

中国個人投資家の株式資産188兆円が蒸発
=韓国ネット「ハードランディングか?」
「長期不況が始まるのか」

 2015年9月8日、韓国・ニューシスは、6月中旬以降の中国株式市場の暴落で、個人投資家の保有株式資産が10兆元(約188兆円)蒸発したと報じた。

 台湾・中国時報によると、2カ月半で全投資家の85%に達する個人投資家に損失が出た。
 金融公社の経済アナリスト梁紅氏は、
 「7月20日以後の株価下落による中国個人投資家の被害額が4兆4000億ウォン(約4400億円)に達した」
と最近の状況を説明した。
 6月12日、個人投資家の保有株式時価総額は、昨年の中国国内総生産(GDP)の36.6%となる23兆3000億元(約438兆円)だったが、
 9月1日の時価総額は13兆4000億元(約252兆円)となり、
約40%減少した。



サーチナニュース 2015/09/12(土) 06:02
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0912&f=business_0912_004.shtml

「経済危機から8年目」は危険だ!
・・・中国は乗り越えられるのか?=中国メディア

 中国メディアの都市女報は4日、2015年における世界経済は今なお回復の足取りは鈍く、疲弊の色も見えると伝える一方、中国内外の学者で組織される政策研究機関「Pangoal Institution」の委員を務める程実氏が
 「サブプライムローン危機から8年目にあたる2015年、中国は危機を乗り越えられるのか?」
と疑問を投げかけたことを紹介した。

 記事は、「歴史は簡単には繰り返されない」とする一方、これまでに起きた経済危機は何かしらの共通点があるものと指摘。
 2015年は07年に起きたサブプライムローンの危機から8年目にあたる年だと主張し、現在と比較できる過去の危機は1937年に起きた恐慌だとしたうえで、1937年恐慌の始まりはその8年前にあたる1929年の世界大恐慌だったと論じた。

 また、1929年の世界大恐慌から立ち直りかけていた米国および世界経済は1937年を境に再び景気後退(リセッション)に突入することになったと指摘。
 また、2015年の現代では、世界経済の回復の足取りは「明らかに鈍化している」と指摘し、米国や欧州、日本の経済が苦境に直面していると論じた。

 さらに、新興国の経済成長率も低下傾向にあり、商品価格も下落、株式市場では一時の狂乱の後に世界同時株安が起きたと指摘し、
 「1937年と同じく、サブプライムローンの危機から8年目の年にあたる2015年に過去の危機の影響が顕在化し始めている」
と主張した。

 また記事は、中国経済が今回の危機を乗り越えるうえでは「警戒を緩めてはならない」と主張し、外部環境の悪化が中国経済に波及することを防ぎ、システミックリスクが起きないよう改革と構造転換を進めなければならないと指摘した。



ロイター  2015年 09月 15日 12:57 JST  Andy Mukherjee
http://jp.reuters.com/article/2015/09/15/column-china-local-gov-austerity-idJPKCN0RF08Y20150915?sp=true

コラム:中国の地方発「不都合な財政緊縮」に必要な鎮痛薬

[シンガポール 14日 ロイターBREAKINGVIEWS] -
 中国経済が減速し、財政出動を必要としているまさにこのとき、急増する地方債務がそれに歯止めをかけている。

 最近の公式統計によると、
★.昨年末時点における中国の地方債務は過去18カ月間で34%急増し、計24兆元(約454兆円)に
膨れ上がった。
 このうち、
★.地方政府が直接借り入れているのは約15.4兆元(290兆円)
に上る。
 残りは関連する金融機関によるものだ。

 地方債務の急増は債務のより正確な見直しが一因にあるとはいえ、インフラ建設投資や不動産開発を借入金に頼ってきた地方政府の山積する問題の大きさを露呈している。

 中央政府は、地方債務をより低金利な長期地方債にスワップすることを認めることで地方政府の負担を軽減しようとしている。
 最近この債務スワッププログラムは3.2兆元まで拡大されたが、著しい成果を生むには程遠い。

 たとえ債務返済コストが低下したとしても、地方政府は依然として支出削減の圧力に直面している。
★.財源の3分の1を土地売却による収入に依存しているが、不動産市場が減速しているからだ。
 今年これまでで、土地の譲渡収入は38%減少した。

 中央政府は赤字幅を拡大することで、こうした間の悪い緊縮財政の一部を相殺できるだろうが、フィッチによれば、全体的な緊縮措置は中国の国内総生産(GDP)伸び率を0.8パーセントポイント低下させる可能性があるという。

 では痛みを和らげる「即効薬」はあるのだろうか。
 積極的な金融緩和は選択肢の1つだろう。
 しかしそれはさらなる人民元安と資本流出を招く恐れがある。
 より良い方法は、中央政府が長期ソブリン債を発行して地方債務の一部を引き受けることかもしれない。

★.中国の債務総額は近年急速に増加しているが、
 中央政府の債務はGDPの17%
に満たない。
 これは地方政府の同38%に比べると非常に低い。
 確かに、国有銀行の資本増強のために体力を温存しておくことは必要だ。
 だが、たとえそうだとしても、その一部を財政出動に使うことはできるだろう。
 さもなくば、中国経済の前途には一段と困難が待ち受けることになる。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。



サーチナニュース  2015/09/16(水) 15:02
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0916&f=business_0916_035.shtml

中国でシャドーバンキング問題再燃の恐れも
・・・地方政府の「土地売却収入」が前年比38%減=1-8月

 中国中央政府・財政部は16日、中央政府および地方政府(地方自治体)の8月の収支状況を発表した。
 地方政府の大きな財源である土地出譲(土地使用権売却)による収入が1-8月、前年同期比で38.4%減少した。
 地方政府の財政状況が悪化すれば、いわゆる「シャドーバンキング問題」の再燃につながる可能性も否定できない。

★.中国で土地はすべて公有とされ、土地の所有自体は認められていない。
 一方で、数十年から100年程度の長期に渡る「使用権」の売買は認められている。
 事実上は「土地使用」と同様のことになり、不動産市場が成立している。

 地方政府にとって、農地を徴用して使用開発業者に“売却”して得られる収入は、極めて重要な財源だ。
 しかし2015年1-8月の全国における売却収入は、前年同期比32.8%減の1兆7599億元(約33張5812億円)にとどまった。
 不動産市場の冷え込みが影響したとみられる。

 落ち込み幅は1兆元の大台を超え、1兆950億元(約20兆5438億円)だった。

 中国では2013年ごろから、地方政府の「財政赤字」が問題になっていた。
 いわゆる「シャドーバンキング問題」の根源だ。
 さらに、制度上では地方債が厳しく制限されていたにもかかわらず、さまざまな「迂回方法」で事実上の地方債発行を続けてきたことも、大問題になった。

 中央政府は2014年ごろから、地方債の発行条件を緩和するなどで、実態の把握と事態の鎮静化に努めてきたが、不動産市場の冷え込みが、地方政府の財政に重くのしかかっている。
 地方政府の財政が悪化していけば、シャドーバンキング問題の再燃の可能性も、否定できない状況になる。

 中国は共産党が一元的に国を指導・管理する体制ではあるが、実際には地方の“独立性”がかなり高い。
 そのため、中央政府による実態把握や方向性の修正に困難が生じる場合がある。
 地方が「自分の利益」だけを念頭に、物事を進める場合があるからだ。

 中国には支配する側とされる側の関係を「上に政策あれば下に対策あり」と言うが、中央政府と地方政府の関係でも、同様と言える。



Bloomberg 2015/9/17 06:24
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150917-00000014-bloom_st-nb

中国の米国債保有、13年12月以来の大幅縮小-7月は304億ドル減 (1)

    (ブルームバーグ):中国の米国債保有は7月に前月比304億ドル(約3兆6700億円)減と、2013年12月以来の大幅な減少となった。
 国内景気が減速する中、中国当局は人民元買い・ドル売りの介入を実施している。

 米財務省が16日公表した対米証券投資統計によれば、
★.中国の米国債保有残高は1兆2400億ドルとなった。
★.日本の米国債保有は約4億ドル増加して1兆2000億ドル
 中国は米国債保有で首位を保った。

 一段の景気減速を示す兆候が増し、資本流出が加速する中、中国指導部は人民元相場の下支えで外貨準備を活用している。
 中国政府によると、海外資産保有は今年に入って2860億ドル減少し、8月時点で3兆5600億ドル

 米財務省の統計には国際資本フローのデータも含まれており、7月の外国勢による米長期証券投資は77億ドルの買い越しだった。
 財務省短期証券(TB)や株式スワップなどの短期証券を含む全体では1419億ドルの流入となった。




【輝ける時のあと】


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