日本にとって「オバマはラッキーな存在」だったと思える。
「何もしないオバマ」、あるいは「オバマの裏切り」によって、日本を覆ったムードはどちらかというと衰えゆく大国で、
「アメリカはあてにならない」
というものであろう。
とすれば、日本は中国というギドラを前にしてどうすればいいのか。
答えは早急に
『中国とタイマン勝負できる日本』
を作るということにならざるを得なくなる。
少なくとも2012年9月の中国での反日デモ以降、この3年間はその方向に動いてきた。
と同時に、
そういう動きにオバマは「ノー」とは言わなかった。
日本のあり方に口出ししなかった。
これまでアメリカは日本を抑えこむことを国是にしていきた。
なぜなら過去にアメリカと全面戦争をした唯一の歴史上の国家が日本だったからである。
アメリカにとって日本は、潜在的に非常に危険な国に分類されている。
手綱を緩めると何をしでかすか分からない国、という風にみられている。
それだけ怖い存在でもあるわけである。
よってアメリカは上手に、かつ厳しく日本をコントロールする必要があると判断していた。
そのため逆に日本は常にアメリカの顔色を伺いながら行動しなければならなかった。
これまで日本はアメリカにいいように操られながら、手足をもがれた形でやってきた。
もちろんそれはありがたいことに逆に日本を経済大国に押し上げる基盤にもなっていた。
「失われた20年」というのは、それが踊り場にさしかかった、ということでもある。
日本はこの経済の踊り場で無防備でゆっくりと休んでいたといっていい。
するとここに中国という巨人が出現した。
これに対してアメリカはこれまで通りに日本を危険な国家とみなし、その行動を制約する方向には動けなかった。
少なくとも、オバマはそうだった。
これまでアメリカは日本を抑えこむことを国是にしていきた。
なぜなら過去にアメリカと全面戦争をした唯一の歴史上の国家が日本だったからである。
アメリカにとって日本は、潜在的に非常に危険な国に分類されている。
手綱を緩めると何をしでかすか分からない国、という風にみられている。
それだけ怖い存在でもあるわけである。
よってアメリカは上手に、かつ厳しく日本をコントロールする必要があると判断していた。
そのため逆に日本は常にアメリカの顔色を伺いながら行動しなければならなかった。
これまで日本はアメリカにいいように操られながら、手足をもがれた形でやってきた。
もちろんそれはありがたいことに逆に日本を経済大国に押し上げる基盤にもなっていた。
「失われた20年」というのは、それが踊り場にさしかかった、ということでもある。
日本はこの経済の踊り場で無防備でゆっくりと休んでいたといっていい。
するとここに中国という巨人が出現した。
これに対してアメリカはこれまで通りに日本を危険な国家とみなし、その行動を制約する方向には動けなかった。
少なくとも、オバマはそうだった。
まさにこのことこそ、日本にとっていかにオバマが貴重な存在だったかになる。
また、国内的には
2011年の東北大震災によって自衛隊はその存在を日本国民に認められ受け入れられる
ことになった。
この2つこと、つまり
1].国内的には自衛隊が日本で市民権を得たこと、そして
2].国外的にはアメリカが日本にイチャモンをつけることがなかったこと。
これによって
日本は独り立ちできる環境を得ることができた。
今現在、この2つのことによってもたらされた状況が
日本にとっても「新常態」に
なっている。
「横槍を入れることのないアメリカ」
このことこそが、日本が長年望んできたものではなかったろうか。
オバマはそれだけで日本にとっては価値のある存在であった、
と言うことができる。
ニューズウイーク 2015年9月11日(金)17時55分 シャノン・ティエジー
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/09/post-3906.php
習近平歓迎ムードはゼロ、米中関係改善は望み薄
南シナ海岩礁埋め立てやサイバー攻撃に怒る対中強硬派は「国賓待遇をやめろ」と要求
ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)は先月末、中国を訪れ、今月に予定されている中国の習近平(シー・チンピン)国家主席の訪米に向けて最終的な調整を行った。
2日間の滞在中にライスは楊潔(ヤン・チエチー)国務委員、王毅(ワン・イー)外相らに加え、習主席とも会談した。
ホワイトハウスの発表によると、ライス訪中の目的は
「より有益な2国間関係を築こうとするアメリカの決意を強調し、
9月の習主席の公式訪問を前に、相違がある分野について議論する」
ことだった。
ここ数カ月、「相違がある分野」が「有益な関係」に影を落としている。
南シナ海、サイバーセキュリティー問題、さらに最近では中国の人民元切り下げに対し、米側から「為替操作」と非難する声が上がるなど、経済をめぐっても両国関係はぎくしゃくしている。
有益な関係など望めそうもないのが現状だ。
ライスも中国側の会談相手も、公式の発言では南シナ海やサイバー攻撃についていっさい触れなかった。
双方とも「共通の利益」や「協力の可能性」について語り、前向きな姿勢を打ち出そうと必死だった。
「2国間でも、地域でも、地球規模でも、米中の実際的な協力をさらに強化し、双方の間にある微妙な問題に建設的な方法で対応するため、われわれは話し合う用意がある」
と、習はライスに語った。
ライスも米中関係は強固な土台に支えられていると強調。
「ここ数カ月、2国間関係は進化し、強化された」と述べた。
■サプライズは期待できず
だが、米中のメディアと世論はそうは見ていない。
良好な関係を彼らに印象付けるには、外交上の決まり文句だけでは足りない。
昨年11月の米中首脳会談で打ち出された温室効果ガス削減目標の合意のようなサプライズが必要だ。
残念ながら、今回の習の訪米では大きなサプライズは期待できそうにない。
当初は二国間投資協定(BIT)締結に向けた大幅な進展が期待されていた。
だが、実務レベルでの交渉はさほど順調ではない。
習がライスに迅速な進展を望むと述べたことが、逆に難航ぶりをうかがわせた。
もう1つ、サプライズになり得るのは
「空域で不慮の遭遇をした場合の行動基準」に関する合意
だが、この交渉も大した動きはなさそうだ。
その証拠に中国国防省の報道官は「複数の協議」を通じて「前向きな進展があった」と述べるにとどまり、具体的な内容は明かしていない。
大きなサプライズがなければ、米中関係は急速に悪化しつつあるという見方を覆すのは難しい。
おまけにアメリカでは来年の大統領選に向けて、候補者たちが競ってオバマ政権の対中政策を批判している。
対中強硬派の舌戦がヒートアップすればするほど、習歓迎のムードは冷え込む。
習の公式訪問をキャンセルせよ
と叫んでいるのは、共和党予備選に出馬表明したウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事だ。
「中国のアメリカに対する大規模なサイバー攻撃、
南シナ海の岩礁の要塞化、
依然として続く経済への国家介入、
キリスト教徒や人権活動家への弾圧
を考えるなら、オバマ大統領は習の公式訪問を断るべきだ」
やはり共和党予備選に名乗りを上げているマルコ・ルビオ上院議員は国賓待遇ではなく、公式晩餐会なしの格下げ待遇で迎えるべきだと主張している。
「弱腰外交」批判が高まるなか、オバマ政権は習の訪米日程をにらみつつ、中国のサイバー攻撃に対する制裁発動を検討。
毅然とした姿勢を見せつける構えだ。
From thediplomat.com
[2015年9月15日号掲載]
』
『
ロイター 2015年 09月 11日 06:38 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/09/10/usa-cybersecurity-idJPL4N11G5H220150910
米、中国サイバー攻撃への防御強化必要=国家情報長官
[ワシントン 10日 ロイター] -
ジェームズ・クラッパー国家情報長官は10日、米国の国益を狙った中国のサイバー攻撃に対する防御を強化する必要があるとの考えを示した。
習近平国家主席の訪米を数週間後に控え、サイバー問題で中国側にさらに圧力を加えた格好だ。
長官は下院情報委員会での証言で
「中国のサイバースパイ活動は引き続き、国家安全保障に関する情報や微妙な経済データ、さらには知的財産に至るまで、
米国のあらゆる利益を標的としている」
と語った。
米政府の人事管理局(OPM)がハッカー攻撃を受け、政府職員2000万人超の個人情報が流出した問題については、中国を名指しで非難することを避けたものの、海外での情報収集活動に支障が出る恐れがあるとした。
ただ情報が悪用された兆候はまだみられていないとした。
』
『
2015.9.7(月) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44728
米政府、中国国家主席の訪米前に中国企業制裁へ
サイバー攻撃急増、商業的スパイ行為の取り締まりに本気度示す
(2015年9月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ホワイトハウスは早ければ9月第2週にも米国の知的財産のサイバー窃盗とつながりのある中国企業に制裁を科す準備をしている。
バラク・オバマ大統領率いる米政権は数カ月にわたり、中国発の増大する商業的スパイ行為に対応し、数々の制裁の準備を進めてきた。
3人の米政府高官は、中国の習近平国家主席が月末に初めて国賓として米国を訪問する少し前にあたる9月第2週に制裁が発表される可能性が高いと話している。
米政権が習主席の訪問の前に制裁を科すべきかどうかについて、政府関係者の意見は割れている。
そのような動きを支持する人々は、米国はサイバースパイ行為の問題に取り組むことについて本気だということを中国に示す必要があると主張する。
■政府関係者の間でも割れる意見
だが、消息筋によると、米国務省は習主席の訪問を台無しにする恐れから、制裁を訪問後に実施するよう要請してきた。
しかし、法執行機関の関係者らは、サイバー攻撃の深刻さを理由に、待つべきではないと主張した。
ある政府高官は、制裁は9月第2週の米国のレーバーデーの祝日の後に行われる可能性が高いと言う。
同氏によれば、
ホワイトハウスは習主席がオバマ大統領と会う前に中国に冷静になる時間を与えるために、訪問の直前に制裁を科すことを避けたかった
という。
協議に通じた複数の人物によると、政府関係者らは制裁の計画をまとめるために9月第1週にホワイトハウスでの会議に参加したという。
習主席の訪米はほかの要因によっても複雑になっている。
ローマ法王フランシスコの訪米と、米大統領選挙の遊説での中国に対する攻撃だ。
中国は世界的な指導者としての習主席の地位を高めることを望んでいるが、習主席の訪米はメディアで大々的に報道されるローマ法王の訪米に見劣りし、制裁を科す動きも影を落とすだろう。
「サイバー制裁は本当に事態をぶち壊す恐れがある」。
ある元米政府高官はこう語る。
「中国の国家主席に恥をかかせる理由はない。
訪問を台無しにするだろう」
米戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家、ボニー・グレーザー氏は、制裁は米政府が商業的スパイ行為を取り締まることについて「本当に本気」だというメッセージを送ることになると言う。
制裁は報復を招くと言う人もいるが、グレーザー氏は、中国に対して本気だということを示すために米国は報復のリスクを受け入れる必要があると指摘。
「もし我々が中国の報復を恐れるのだとすれば、我々は自己抑止していることになる」
と言う。
米国が4月に制裁体制を明らかにした時、懐疑的な向きは、米国との深い経済関係を考えると、制裁が中国の当事者に対して使われるかどうかいぶかった。
だが、中国から生じるサイバー事件に関する懸念が高まっており、罰を強化せよという圧力があった。
米連邦捜査局(FBI)は最近、経済スパイ事件が53%増えたことを中国のせいにした。
■制裁でハッキングを抑止できるかどうか
●習近平国家主席は2013年にも訪米しているが、今回は初めて国賓として訪れる〔AFPBB News〕
それでも米政府関係者らは、特に多くのハッカーが身柄引き渡しの手が及ばない場所に住んでいることから、そのような事件に効果的に対応する方法を模索している。
制裁実施はハッカーとその共犯者を抑止できるかどうかのテストケースとなるだろう。
米国は制裁が壊滅的な影響を及ぼすと見ている。
制裁はその標的を世界の金融システムから切り離すことで、最も打撃の大きいところを突くからだ。
米ドルで事業を行う銀行と企業は制裁対象の資産を凍結することを義務づけられ、そうした機関と取引を行うことができない。
「抑止の手段がもっとたくさん必要であり、こうした攻撃のコストを高くしなければならないという認識があった」。
サイバー政策についてホワイトハウスに助言を与えた法律事務所ケイ・ショーラーのサイバー専門家、アダム・ゴロードナー氏はこう話す。
「制裁は強力な手段だ。
ビジネスを行う能力に影響を与えるからだ。
その犯罪から経済的な利益を得た当事者に経済制裁を科すことには、一定量の対称性がある」
一連の事件に通じた人々によると、制裁は個人と企業に打撃を与えると見られ、経済的なスパイ行為と企業秘密の窃取に絡む事件に重点が置かれるという。
中国では、制裁のニュースに対する反応はない。
中国政府はかねて、米国家安全保障局(NSA)の元契約職員、エドワード・スノーデン氏による暴露は、中国は攻撃者というよりも米国のハッキングの被害者であることを証明したと主張している。
By Demetri Sevastopulo and Gina Chon in Washington and Charles Clover in Beijing
© The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. Please do not cut and
paste FT articles and redistribute by email or post to the web.
』
『
JB Press 2015.9.12(土) 古森 義久
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44770
米国人もげんなり、オバマ外交とは何だったのか
これほどまでにアメリカを弱体化させたオバマの大罪
●人気があと1年4カ月となったオバマ大統領。オバマ外交によって世界でのアメリカの影響力は大きく衰えた。米ボストンの労働評議会で演説するオバマ大統領(2015年9月7日撮影)。(c)AFP/MANDEL NGAN〔AFPBB News〕
米国の外交はどこへ向かうのか――。
後退したとはいえ、なお世界で唯一の超大国、日本にとって唯一の同盟国である米国の外交政策は、日本にとって常に重大な関心の対象である。
特に残りの任期が1年4カ月ほどとなったオバマ政権の外交がどうなるのかは、細心の注意を払う必要があろう。
結論を先に述べるならば、オバマ政権は消極的な外交を継続する。
よくいっても現状の維持、あるいは“漂流”だろう。
同時に、北朝鮮との融和などという驚きの可能性があることも否定はできない。
オバマ大統領に残された任期はすでに短く、内政でも外交でも「レームダック(死に体)」化が語られる。
退場前に外交面での「遺産」を残したいオバマ大統領は、イランとの核合意とキューバとの国交樹立を重点的に推進しようとしている。
だがこの2件とも米国内での反対は激しく、輝ける外交成果として歴史に残る可能性は薄い。
オバマ政権が登場して以来の6年半、米国は世界でのプレゼンスやパワーを大幅に縮小し、米国の対岸に立つ諸勢力を膨張させてきたと総括できる。
米国は中東では大幅に後退し、親米政権は倒れ、混迷が深まった。
欧州ではロシアのウクライナ侵攻を座視したままである。
アジアでは中国の軍事的脅威の増大を許し、北朝鮮の核武装も阻めない。
米国の影響力が世界的に衰えてきたことは、どう見ても否めない。
この基本構図が、オバマ政権の残りの1年余りで変わる見通しはない。
だからこそ日本もそのつもりで、慎重でしたたかな対応が求められる。
■オバマ外交の3つの特徴
これまでのオバマ外交には、少なくとも3つの顕著な特徴があった。
第1に、
歴代の大統領に共通していた、アメリカ本来の民主主義、自由といった普遍的価値観を外交面で投射していくことに極めて消極的である。
米国には指導層にも国民一般にも自国を「例外的な国家」と見る意識がある。
自国を国際社会における特別な国と見なし、建国以来の普遍的な価値観を世界で先導する責務感を抱いている。
そんな思想を「アメリカ例外主義」と呼ぶ。
オバマ氏はそのアメリカ例外主義を事実上否定した初の大統領である。
米国の例外主義を信じるかと問われ、「イギリスにはイギリスの、ギリシャにはギリシャの、それぞれ例外主義がある」と答えて米国の識者を驚かせた。
超大国として世界でリーダーシップを発揮しようという意欲が最初から希薄なのだ。
第2の特徴は一貫した軍事忌避の傾向である。
オバマ大統領は上院議員時代、全議員中でも最もリベラル、最も反軍事の議員として知られ、軍事や防衛を強める目的の法案にすべて反対票を投じていた。
就任後の、財政赤字減らしのため国防費の徹底した削減も、その基本スタンスに沿っていた。
この忌避姿勢は、海外の軍事的関与となるとさらに強くなる。
同氏はそもそも前ブッシュ政権のイラクとアフガニスタンへの軍事介入への反対を強く打ち出して大統領選に立ち、勝利した。
就任後にはイラクから完全撤退、アフガニスタンからも大幅撤退という策を実行した。
オバマ氏はいわば“撤退”大統領であり、「米国は世界の警察官にならない」という姿勢を守り通している。
第3は、
対外的に常に対話や関与の優先を説き、対決や衝突を避ける傾向である。
オバマ政権の第1期における対中政策がまさにその典型だった。
中国は軍事増強、国際規範無視、好戦的威嚇、人権弾圧など米国の外交政策や国益とぶつかる言動を取り続けた。
それにもかかわらず、オバマ政権は対中批判を控えた。
もっぱら協調姿勢を見せて、共通の利益の追求を説いた。
だが、中国はそうした米国の弱腰につけこむように、南シナ海での領土拡張などを強めていった。
そこでオバマ政権は「仕方なく」という形で、2015年に入ってから対中姿勢を強固にし始めたのである。
中東でもオバマ政権は反米勢力との対決を避け、エジプトでは親米政権の崩壊を許してしまった。
イラクでもイスラム過激派武力集団のIS(イスラム国)の跳梁を長い期間放置した。その結果、中東全域での親欧米勢力は大きく後退した。
■オバマ大統領の優柔不断と言行不一致
こうした3つの特徴をもつ外交によって、米国の影響力、指導力、軍事力はグローバル規模で縮小の一途をたどった。
米国の名声や威信の衰えでもあった。
米国の歴史に特筆されるほどの顕著な後退だったと言ってよい。
さらに、オバマ大統領の優柔不断がこの傾向に拍車をかけた。
オバマ大統領はシリアのアサド政権に対して、大量破壊兵器である化学兵器を使えば米国は必ず軍事力で制裁するとして、その一線を「レッド・ライン(赤い線)」と宣言した。
しかし、いざ化学兵器が使われても行動はとらなかった。
またISに対して、人質となった米人記者の処刑こそがレッド・ラインだと言明したのに、記者が処刑されても行動を起こさなかった。
こうした言行不一致が国内外でオバマ外交への不信を深めた。
共和党の大統領候補のドナルド・トランプ氏が「米国を再び偉大にする」というスローガンを打ち出し、やはり大統領候補のマルコ・ルビオ上院議員が「オバマ氏は米国の対外的な道義を蹂躙した」と非難したのも、こうした背景からである。そうした非難は共和党支持層を越えて、大きく広がってしまった。
■オバマ大統領が残したい歴史的業績とは
では、残された任期中、オバマ大統領はどのような外交を展開するのか。
オバマ政権は、前述のイランとの核合意、キューバとの国交正常化に加えて、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)推進への意欲も強い。
だが、オバマ大統領の構想には、政権与党の民主党の連邦議員の多くが反対してきた。
その反対は米国政府に背後から複雑な形でブレーキをかけ、日本との交渉を含む米国のTPP交渉全体を困難にしてきた。
オバマ大統領の対外政策は、このように与党側からも反発を受けている。
中東では、オバマ政権は民主化運動のアラブの春」に特に関与したり支援したりすることはなかった。
その結果、中東は大騒乱に陥ったが、今もなお消極的な姿勢のままでいる。
ウクライナ問題をめぐるロシアとの軋轢でも、オバマ政権は断固たる対応は見せず現状維持という状態にある。
残された任期中にこの状況が変わる見通しは少ない。
中国に対しては前述のように、その理不尽な言動をさすがに看過するわけにはいかなくなり、中国への抑止として日米同盟を改めて重視することとなった。
日米同盟の強化は、対中政策その他の副産物という皮肉な側面があるにせよ、
外交全体の中で数少ない実績として誇れるだろう。
ただし、たとえ同盟相手への防衛誓約をしたとしても、軍事的行動や衝突を忌避する体質がにじむ傾向は否定できない。
中国が尖閣諸島に大胆な軍事攻勢をかけてきた場合、オバマ政権が中国との軍事対決へと進むかどうかは予断を許さない。
日本にとっては、米国の抑止力を利用し、米国を日本防衛に巻き込むための備えも重要となろう。
オバマ大統領は、イランとの核合意とキューバとの国交樹立を自身の外交の最大の成果にしようとしている。
2つの案件の進め方は、いずれもオバマ政権の特徴である協調や対話、そして融和が基本となっている。
その融和の一環として、
「オバマ政権が北朝鮮との歴史的な和解に踏み切る可能性もある」
とワシントンの一部でささやかれていることも付記しておこう。
』
『
読売新聞 2015年09月21日 10時32分
http://www.yomiuri.co.jp/world/20150921-OYT1T50044.html
中国「法王の訪米ずらして」…習氏と同時期懸念
【ワシントン=大木聖馬】
中国の習近平国家主席が22日から米国を訪問するにあたり、中国政府が同じ時期に訪米するローマ法王フランシスコの日程をずらすよう、米側に再三要請していたことがわかった。
外交筋が明らかにした。
法王の訪米に注目が集まり、習氏の訪米が色あせることを懸念した模様だ。
米側は、双方の都合が合う時期を考慮した結果、同時期に受け入れることを決めたとし、中国側の要請を受け入れなかった。
米側の対応は、中国に宗教の自由や人権問題の改善を求めるメッセージとの見方が出ている。
法王は、習氏がワシントンに到着する24日に米議会で演説する予定。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年9月21日(月) 17時13分
http://www.recordchina.co.jp/a119478.html
<習近平訪米>
中国は冷遇される可能性も、ローマ法王訪米とバッティング―仏メディア
2015年9月19日、RFI中国語版は記事
「米中国民が共に相手に失望する中での首脳会談」
を掲載した。
英紙エコノミストは、22日から始まる習近平(シー・ジンピン)国家主席の訪米に関する記事を掲載した。
習主席は国賓待遇で招かれるとはいえ、ちょうど同時期にローマ法王と比べれば見劣りする待遇になるという。
世論の変化も注目される。
中国に対する米国民の好感度は下がっており、最新の世論調査では54%が中国の将来を懸念」と回答している。
一方、中国国民も米国に対する好感を失っている。
チャイナ・デイリーによる青年を対象とした世論調査によると、「米国に好感を持つ」との回答は36.5%にとどまっている。南シナ海問題、人民元国際化、言論の自由などで米国が干渉することに不快感を持っている人が多いようだ。
』
『
JB Press 2015.9.30(水) 堀田 佳男
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44880
世界の警官から秘密警官へ、
米国の恐ろしい急変ぶり
データが如実に示す、オバマ大統領裏の顔は暗殺指令者
知らないことほど恐ろしいものはないと思える事態が世界で進行している。
実は、米国のバラク・オバマ政権はジョージ・ブッシュ前政権よりもはるかに多くの米特殊作戦軍(以下SOCOM:いわゆる特殊部隊)の隊員を、世界中に派遣していることが分かった。
★.複数の情報を総合すると、今年だけでもSOCOMはすでに世界135か国に隊員を送り込み、派遣している隊員数は1万1000人に達している。
SOCOMは特殊部隊を統合する総合軍で、配下に陸軍、海軍、空軍、海兵隊の特殊作戦部隊が入っている。
よく耳にする陸軍デルタフォースや海軍シールズ(SEALs)もSOCOMの指揮下にある。
■2倍に増員された特殊部隊
特殊部隊の活発化は隊員数の推移を見ても分かる。
国外に派遣されている1万1000人を含めた総隊員数は7万人に達する。
2001年には約3万3000人だったので、ほぼ2倍になった。
オバマ大統領がなぜ特殊部隊に力を注いでいるのだろうか。
過去数年、国防総省(ペンタゴン)の規模と予算は縮小傾向にあり、表向きの国防方針と矛盾している。
オバマ大統領はこれまで「米国は世界の警察官ではない」というフレーズをたびたび使ってきた。
例えば2013年9月のテレビ演説では、警察官としての役割を否定し、内戦の激化するシリアには大規模な地上軍(陸軍)は派遣しないと述べた。
その理由の1つは、ブッシュ前政権が始めた対テロ戦争で多数の米兵を中東に派遣しながら、収束できていない現実がある。
テロ組織を壊滅することが容易でないばかりか、戦費拡大と米兵の犠牲が内外から批判されてきたのだ。
すでに世界の警察官の立場を降りたと言える数字もある。
2001年から始まった対テロ戦争で、米国は累計で約1.5兆ドル(約180兆円)もの国防予算を使った。
前政権の国防政策への反省もあり、オバマ政権が誕生してからの対テロ戦費は下降し続け、2013年度以降は年間1000億ドル(約12兆円)を下回っている。
イラクとアフガニスタンに駐留する米兵数も減少し、イラクからは撤退、アフガニスタンからもゆくゆくは撤退する方向だ。
それではなぜいま特殊部隊を世界中に拡散させ、隊員数も予算も増やしているのか。
ワシントン・ポスト紙によると、
ブッシュ政権時代、特殊部隊が展開した国数は約60か国だったが、2010年には70か国になり、今夏には135か国にまで膨らんだ。
さらに特筆すべきなのは
★.中東に駐留する特殊部隊が減り始め、
それに代わって東欧や日本を含めた極東地域などに隊員を増やしている
ことだ。
■東欧と中南米、極東に注力
SOCOMのジョセフ・ヴォーテル司令官は今年7月、コロラド州アスペンで行われた安全保障フォーラムで次のように発言している。
「東欧に力点を置き始めています。
同時にコロンビアをはじめとする中米諸国、さらに環太平洋地域の重要な同盟国との連携も強化しているところです」
その発言を裏づける数字が米会計検査院(GAO)から公表されている。
2006年、特殊部隊の85%は中東諸国に集中していた。
しかし昨年までに中東での割合は69%に落ちた。
代わって3%だった欧州での比率が6%に、太平洋地域が7%から10%に、中米諸国が3%から4%へと増えている。
ここから見えてくるのは、
★.陸・海・空・海兵隊の米正規軍の隊員に代わって、
秘密警察と呼べる特殊部隊を世界中で増員させている事実だ。
まるで忍者のように、米国に敵対する組織やテロ集団を水面下で制圧しようとしているかに見える。
さらに特徴的なのは、
★.特殊部隊を他国で独自に活動させるのではなく、派遣した国の軍隊と共同訓練の形態を取っている
ことだ。
ほとんどの場合、米特殊部隊が主導的な役割を担うばかりか、他国の隊員を訓練することもある。
つまり
★.米軍は従来型の戦闘機や中距離ミサイルなどを撃ち込む戦闘から、
小規模で臨機応変に対応できる特殊部隊による戦いへと変化しつつある
ということだ。
それには同盟国との連携が必須だ。
分かっているだけで、
★.米特殊部隊が展開する135か国中60か国の軍隊と、米軍は共同訓練を行っている。
★.特に14か国では米大使館に特殊部隊の隊員を武官として置いている。
ちなみに14か国というのは
オーストラリア、ブラジル、カナダ、コロンビア、エルサルバドル、フランス、イスラエル、イタリア、ヨルダン、ケニヤ、ポーランド、ペルー、トルコ、英国
で、日本は入っていない。
■自衛隊とも共同作戦
ただ今年8月12日、沖縄県うるま市伊計島の沖合に米軍ヘリコプターが墜落した時、乗員の中に自衛隊の中央即応集団「特殊作戦群」の隊員もいた。
すでに米特殊部隊と自衛隊が共同訓練している証拠とも言える。
それでもオバマ政権は「米国は世界の警察官ではない」というスタンスでいる。
それは取りも直さず、
★.米国1か国で現在の国際紛争を解決できないことを中東で学んだ
ということである。
前出のヴォーテル司令官はアスペンでのフォーラムで述べている。
「SOCOMは今後、世界の過激派組織と戦うためになくてはならない存在で、大変重要な役割を担っています。
シリアやイラクでの戦で学んだことは、米国だけでは決して勝利することができないということなのです」
こうした背景を眺めると、オバマ大統領は米市民に虚言を吐いているとも解釈できる。
表向きは米軍を縮小させて、大規模な地上軍を派遣しない立場でいながら、実際には特殊部隊を派遣してオサマ・ビンラディンを殺害したような軍事行動を取らせてもいる。
今年5月、過激派組織「イスラム国」のアブ・サヤフ幹部を殺害したのも特殊部隊だった。
オバマ大統領が指示を出し、すべてが終わった後に公表された。
特殊部隊の活動によって世界の平和と安全が約束されるのであればいいが、表面的に世界の紛争に関与しないそぶりを見せながら、実際はほとんどの人の目に触れないところで着実に地歩を固めているのが現実だ。
特殊部隊という秘匿性の高い軍隊であれば、情報を公表しなくて済むという理由もあるかもしれない。
ただそれがオバマ流の世界での戦い方であるのなら、紛争の危険性はより高まったと言えなくないのか。
オバマ大統領の「世界の警察官ではない」発言はいまや「世界の秘密警察官になった」と解釈していいほどである。
』