2015年9月24日木曜日

フォルクスワーゲン(VW)事件(2):フォルクスワーゲンはダメだろう、最終的には潰れるだろう

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フォルクスワーゲンはダメだろう。
 やったことが汚さすぎる。
 しばらくの期間は経営立て直しでいろいろやるだろうが、最終的には潰れる
 そして最後は中国に拾われる。
 ドイツの、アメリカの、そして日本の自動車メーカーによる買収は行われないのではないか。
 あまりにもダーテイーすぎるので、手を出しかねるからだ。
 これに手をあげられるのは中国しかないように思える。
 死に体になったフォルクスワーゲンを中国が買収し、数年後には中国の自動車メーカーとしてよみがえるのではないだろうか。
 ここにはまだまだ中国が欲しい技術がうなっている
 安い買い物になるかもしれない。
 なにしろ、日本との関係がギクシャクしてきた今、ドイツは中国にとって技術の大先生である。
 特に自動車には先端技術が詰まっている。
 安く叩けるまで叩いて買おうという腹はあるだろう。


ロイター  2015年 09月 24日 15:06 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/09/24/factbox-diesel-engine-vw-idJPKCN0RO0EU20150924?sp=true

情報BOX:ディーゼルエンジンとVW「不正ソフト」の仕組み

[21日 ロイター] -
 独フォルクスワーゲン(VW)は21日、米国で販売したディーゼル車の一部で、排ガス規制の試験を突破するため不正なソフトウエアを使用していたことを認めた。
 米当局は同日、他の自動車メーカーにも調査を拡大すると発表した。

 以下にディーゼルエンジンについて、また、米環境保護局(EPA)とカリフォルニア州の排ガス規制に対する不正を回避するためVWが使用したとされる不正ソフトウエア「無効化機能」についてまとめた。

■<ディーゼルエンジン>

 ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと比べて圧縮圧力が高く、燃料は点火プラグがなくても自然着火し燃費が良い。
 しかし、オイル、空気、燃料フィルター交換の回数が多くなる。

■<ディーゼル燃料>

 石油製品の1つでガソリンと比べて精製度が低く、熱効率が高い。
 価格もガソリンより安価だが、米国では現在ガソリン価格を上回っている。

■<経済的なディーゼル車>

 ディーゼル車はガソリン車よりも最大3割程度燃費が良いとされ、
 ハイブリッド車よりも経済的になり得る。

■<排気ガス>

 ディーゼル燃料はガソリンよりも重く、黒煙を排出するため汚染度が高くなることがる。
 排出されるのは主に有害物質の窒素酸化物(NOX)であり、一酸化炭素や二酸化炭素(CO2)や炭化水素の排出量はガソリンよりも少ない。

■<汚染制御システム>

 自動車メーカーにとって、NOXの排出をいかにコントロールするかが大きな課題であり、欧米の厳しい基準を満たすために排気ガスに尿素水を吹きかけてNOXを低減させるなどの汚染制御システムが採用されている。

■<VWの「無効化機能」>

 VWの自動車に搭載された電子制御装置内の排ガス抑制を「無効化」する不正ソフトウエアは、
★.試験走行時にはEPAの定める排ガス規制に適合するように、
★.通常走行時にはエンジン性能を最大化するため排ガス低減装置の一部もしくは全部を無効化
するように切り替わる。

 EPAによると、
★.同ソフトはステアリング操作やスピード、エンジン持続時間や圧力などの要因を分析し、
 試験走行なのか、通常走行なのか
を「正確に」判断する
という。

(出典:CarandDriver.com;Carsdirect.com;Dummies.com, AutoRepair For Dummies, 2nd Edition)
問題となったVWの「無効化」システム



●問題となったVWの「無効化」システム



JB Press 2015.9.25(金) 伊東 乾
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44838

環境大国ドイツ赤っ恥、
フォルクスワーゲンの環境不正
米国による弾劾は1社、
1国のみならず欧州全体に影響必至

 ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンのディーゼル車不正は世界に様々な波紋を投げかけることになるでしょう。

 まだ明らかになっている事実は限られており、今後の報道に注目していきたいと思いますが、同時に限られた情報からも察せられる背景や、中長期的な影響の可能性を急ぎ検討して見たいと思います。

■不正ソフトウエア搭載

 まず、9月23日時点で明らかになっている容疑事実を確認しておきましょう。

 米国の当局が告発するところによれば、フォルクスワーゲンは2008年以降に出荷された1100万台に及ぶディーゼル車で、実際の走行時には排ガスが環境基準を上回る規制物質を含むのに、検査時のみはそれが下回って表示されるような不正ソフトを搭載した、とされています。

 すでにフォルクスワーゲン側から謝罪が出ており、この事実は動かないものかと思われます。

 米国側は刑事事件としての捜査を検討とのこと、ミスとか過失ではなく、
★.意図的になされた犯罪である
との見方が伝えられています。

 「事件」の真相は今後段階的に明らかになっていくでしょうが、もし報じられるとおりであれば、こうした
★.「ちんけなインチキ」がどうして発生したのか、
★.それはいったいどのレベルで引き起こされた「犯罪」で、社内でもどの範囲までが関わり、また周知の環が広がっていったのか、
といったことが気になります。

 まずもって邪推するなら、
 厳密化する環境基準に対応してエンジン回りなど自動車自体の対応イノベーションに要するコストを<不正削減>したのだろう、
といったことは察せられます。

 2008年という年号はリーマンショック~東西冷戦体制が崩壊した「冷戦後」のレジームが経済の切り口からほぼ完全に崩壊した時期に当たることも注目すべきでしょう。

 「ポスト冷戦期」に拡大した風呂敷の中身を問われ、広げ過ぎた裾野に対応できず贋金を包んでそ知らぬ顔をして過ごさざるを得なかった・・・といった経過が見て取れます。

■環境大国の基幹からの不正

 今回の「不正ソフトウエア」がほかの国を代表する自動車会社であれば、例えばBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)といった新興国など、それはそれで犯罪的な環境負荷など重大な問題と思います。

 が、よりによって環境大国として知られるドイツを名実ともに代表するフォルクスワーゲンで、検査逃れのインチキソフトが意図的に組み込まれていた、とすれば、別種の信用を大きく失墜している点を指摘せねばならないでしょう。

 ドイツは日本の比でなく自然食専門スーパーなどが普及し、環境基準も厳密、さらに、様々な背景があってのことですが、世界に先駆け、いち早く脱原発を打ち出し、循環型の社会経済をリードするエコロジー立国で国際社会をリードしてきました。

 そこで課される高く厳密な基準ハードルは、内外に垂範するものだったはず。

 その信用を土台から崩すような「検査逃れソフトの意図的組み込み」は、単にフォルクスワーゲン1社のみと言わず、ドイツの環境基準とそのチェックそのものが、いったいどうなっているんだ!」と怒鳴り込まれて何も言えないレベルのものです。

 米国の発表では「最高で環境基準の40倍にあたる窒素酸化物」とのことですが、
★.このインチキがどのようなきっかけで明らかになったのか
も非常に気になるところです。

 報道は
 「単なるリコール問題という以上に根深い」
 「部品メーカなど含め影響の拡大は必至」
などと伝えますが、単にフォルクスワーゲンやドイツ車のみならず、かなり広範な
★.ドイツ~欧州の<世界で一番良好なはず>の「品質保証不安」に拡大
しないことを祈るばかりです。

 少なくとも今回の発覚がきっかけで、製品と業種を問わず、様々な検査がより厳密に行われ、信頼のブランドと見られていたものが、疑いの目を向けられる可能性は十分高まるでしょう。

 少なくとも競合するライバルを叩こうという底意があれば、生き馬の目を抜く市場競争、こんなケースが出てきてしまえば、様々な動きがあっても全く不思議ではありません。

 欧州がリードしてきた、人類全体の共通する敵としての「地球環境破壊への戦い」は、1989~90年にかけての冷戦崩壊以降、グローバル社会を1つにまとめる大きなシナリオでありました。

 「京都議定書」などを中心とするグローバル・エコロジーの見通しが立ちにくくなった直後から、値引きできない生産の現場でこのような偽装が進んでいたとすれば、これほど皮肉なことはないと言わねばなりません。

■「米国発」の示すもの

 今回の告発は、もちろん犯罪的な偽装があったために、それが必然の訴追を受けているわけですが、
★.米国がドイツ経済の顔に正面から「バケツの水」をぶっかけている
ことにも注意しておく必要があるように思います。

 例えばウクライナ情勢の緊迫化に伴う和平の模索にあって、ロシアとウクライナ両国の調停にあたったのはドイツ+フランスすなわちEUの中核2国であって「世界の警察官」であったはずの米国は姿を現しませんでした。

 中東にあっても、あるいは私たちの住む東アジアでも、米国はかつての一国超大国時代・・・おおまかに2008年前後に収束してしまった「パックス・アメリカーナ」状況とは大きく異なる振る舞いとならざるを得なくなってしまった。

 右傾化した暴言の続く共和党のドナルド・トランプ氏のような人物が持て囃される程度に内情が変化している米国の姿勢転化とともに、先日来日本の国会で起きている出来事も過不足なく冷静に見つめる必要があると思います。

 そんな中で米国からドイツ車不正の正面から弾劾は、一種の経済戦と言うべき様相を示すと見る必要場あるかもしれません。

 フォルクスワーゲンの
★.不正、その尻尾を掴んでから容疑事実の首根っこを押さえるまで、
 米捜査当局がどれくらいの時間をかけ、
 どのように入念につぶしていったのか、
 今後進んだ報道があると思います。

 一定の腹をくくらねばできないことであるのは間違いなく、単に1社の不正に対するリコールとしてのみ見ることは、こうした観点からもできないように思います。

★.マーストリヒト体制へのボディーブロー

 私が今回の報道に接して最初に感じたのは、特定のメーカー1社とかドイツ車、あるいはドイツというだけでなく、「ユーロ」への打撃という側面です。

 大げさと思われる方もあると思いますが、現在地球上に存在する2つの広域通貨「ユーロ」と「ドル」という観点からすれば「ドル」から「ユーロ」へのパンチであることは間違いなく、ボディーブローのような形でこれが利いてくるのは避けられないかと思います。

 中東から欧州を目指す難民のEU全体で12万人規模で受け入れなど、世界の火消しとしての欧州の役割が期待されるなか、欧州経済全体に加えユーロという通貨自体を支えてきたドイツで、基幹を牽引する「国民的企業」から、このようにグローバルな不正が明らかになったことの持つ意味、類似のリスク、効果波及の食い止めなど、真剣に考え取り組まねばならぬ問題が山のように浮かびます。

 国家規模でのギリシャ経済の粉飾が白日のもとに晒された後、ユーロ圏中央の野放図な融資が批判の対象となりましたが、そのユーロ圏のど真ん中自体がこのような形で実はその場を凌いでいた事実、そこから垣間見える病の根は決して浅くありません。

 日本にとって全く他山の石でない事態の推移を、注意して見守るべきだと思います。



現代ビジネス 2015年09月25日(金) 川口マーン惠美
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45475

フォルクスワーゲンで何があったのか? 
排ガス「不正」の背後に見え隠れする熾烈な権力闘争
ドイツ全土が揺れている


●23日、本社にて社長の辞任を発表する経営陣 〔PHOTO〕gettyimages

■「クリーン・ディーゼル」の嘘

 9月19日、フランクフルトのモーターショーの宴もたけなわな頃、フォルクスワーゲン(VW)社の排ガス試験の不正が報道され、以来、ドイツでは爆弾が落ちたような騒ぎになっている。

 問題となっているのはVW社のディーゼルエンジン車で、アメリカの環境保護局が不正を摘発した。

 このニュースが巷に流されたのが土曜日であったことは、おそらく偶然ではない。
 株式市場の大混乱を防ぐ目的があったはずだ。

 とはいえ21日の月曜日、混乱は十分に起こった。
 フランクフルトの株式市場が開いた途端、VW社の株価は下がり続け、その日の終値は17%のマイナス。
 そして、翌22日はさらにまた17%下がった。
 しかも、株価が転がり落ちたのはVWだけでなく、メルセデスやアウディ、そしてコンチネンタルといった関連会社も同様だ。

 VW社が自ら認めた不正の中身というのは、ものすごくハイテクだ。
 なんと、排ガスの検査の時だけ、窒素化合物などが少なくなるソフトウェアが埋め込んであったらしい。

 アメリカの環境保護局によれば、普通の走行時は、基準値の10倍から40倍もの有毒物質が排出されるという。
 よりによってVWは「クリーン・ディーゼル」と銘打って、これらの車種を大々的に宣伝していた。

 このソフトが埋め込んであるのは、2009年から15年までにアメリカで販売されたゴルフなど48万2000台のディーゼル車で、制裁金は1台につき37,500ドルとして、単純計算で、合計約180億ドル。

 しかし、火曜日のニュースでは、不正ソフト搭載の車が販売されたのはアメリカだけでなく、全世界で1100万台に上ると報道された。
 そういえばドイツの環境保護団体もすでに長い間、排ガス成分の公表値と実際の測量値が一致しないケースを訴えていた。

 なお今回の不正は、単なる数値の粉飾とは違い、環境、ひいては人の健康に害を及ぼすことを承知の上での犯罪だと見なされる可能性が大で、そうなればアメリカでの刑事訴追も免れない。
 もちろん、すべての車がリコールされ、無償で改善されなければならないので、その経費も莫大だ。

 しかし、何といっても一番の出費は、これから始まるであろう集団訴訟。
 最悪の場合、VWは国に救済してもらわなければならなくなるかもしれない。

 偶然のことながら、つい最近、日本で自動車関係の本の編集者と会ったとき、VWが良いという話になった。
 よく走るし、コンパクトだが高級感もある。
 比較的、値段も安い。
 これぞドイツの底力。
 日本の自動車メーカーも頑張らなければ、というような話だった。

 ドイツの私の友人が、今、問題になっているディーゼルのゴルフに乗っていて、数年前まではこの車でよく遠出をした。
 運転するのはいつも私。
 ドイツを縦断してバルト海へも行ったし、アルプスを超えてイタリアにも行った。

 だから私は、この車のことは十分に知っているつもりだ。
 フロント操作のわかり易さ、運転のしやすさ、馬力、燃費、座り心地の良さ、静かさ、そして、小ぶりなのにゆったりとしていて、何時間運転しても疲れない……etc。

 ただ、前述の編集者の話では、売り上げはトヨタに匹敵するのに(2014年はトヨタが売り上げ世界一、わずかの差でVWが2位)、
 利益率がトヨタよりずっと低いそうだ。
 利益はいったいどこへ消えているのか?

■自動車界の帝王と社長との権力闘争劇

 実はVW社では、今年の4月、不思議なことが起こっていた。
 VWを世界の冠たる企業の一つに育て上げた天才、フェルディナント・ピエヒ氏が泥沼のような権力闘争に敗れ、監査役会会長という役職を電光石火のごとく辞任したのだ。

 ピエヒ氏をこの座から追い落とすために尽力したのが、マーティン・ヴィンターコーン社長。
 ピエヒ氏は、ヴィンターコーン社長の任期延長に反対を表明、それを知ったヴィンターコーン氏が反撃し、あっという間に一騎打ちとなったのだった。

 今年78歳のピエヒ氏の過去は光り輝いている。
 ポルシェ社の創業者、フェルディナント・ポルシェの孫で、生まれた時から血の中に自動車が走っていたらしく、車のエンジニアとしても、企業の経営者としても、めくるめく成功を収め続けた。

 ピエヒ氏は70年代、ポルシェからアウディに移籍し、アウディを大躍進させ、90年代にはVWの会長に就任して、ベントレー、ランボルギーニ、ブガッティ など高級スポーツカーメーカーを次々と買収、労働者の車VWのイメージを一新させた。
 今では、チェコのシュコダも、スペインのセアトも、そしてポルシェも、すべてVW社の傘下だ。

 2002年からは監査役会会長となっていたピエヒ氏だが、いずれにしても、VWはもちろん、ドイツの自動車界では帝王のような存在だった。
 その帝王が権力闘争に巻き込まれ、週刊誌を賑わした挙句、無残に追い落とされた。

 ただ、不思議だったのは、闘争の本当の原因が最後まで分からなかったことだ。
 アメリカ市場での失敗、配当の減少、ヴィンターコーン氏の経営手腕に疑問を呈する意見もあれば、ピエヒ氏の独裁が問題ではないかという記事もあった。

 しかし、どの記事を読んでも核心は書かれておらず、結局、何も分からないまま、私たちはそんな話は忘れてしまった。
 9月5日になって、後任が決まったという小さな記事が出ていたとき、「そんなことがあったっけ」と、ちょっと思い出した程度だった。

■ヴィンターコーン社長の苦しいコメント

 いずれにしても、その権力闘争に打ち勝ったヴィンターコーン氏は、今、VW社始まって以来の危機に際し、その代表者として対処しなければならなくなった。
 ところがまず20日の氏のコメントは、まことにお粗末なものだった。

 そもそもVW社は、不正を認めているのだ。
 なのにヴィンターコーン氏は、「我が社はいかなる法規や法律の違反も許さない!」と言ったので、私は耳を疑った。
 「顧客の信用を取り戻すため、一刻も早く真相を究明したい」
とか。

 氏が不正を追及する側だとすると、では、いったい誰がやったのか? 
 法規の目をくぐり抜けるためのソフトウェアをこっそりと車に仕込むような重大、かつ危険な決定が、下の方のエンジニアだけの独断でなされた? 
 ヴィンターコーン氏が何も知らなかったとは、とても考えにくい。

 ひょっとすると、4月の権力闘争は、本当はこの不正を巡ってのものだったのかもしれないと私は考える。
 情報はすでにあったのではないか。
 どうにかして対処しなくてはならないが、社外に漏らすことは許されない。
 そして、それは実際に漏れなかった。
 そう考えれば、どの記事を読んでも訳が分からなかった謎は解ける。

 さて、その後、案の定、おかしなコメントを出したヴィンターコーン氏への批判は強まり、22日には、彼が全面謝罪するビデオが流された。
 ドイツ人が、このように早い時期、しかも真相究明で責任者が明らかになる前に全面謝罪をするというのは、非常に珍しいことだ。

 たとえば、今年3月のジャーマンウィングスの事故でも、150人もの死者が出たにもかかわらず、当時も今も誰も謝ってはいない。
 "このような不幸なことが起こったことを遺憾に思っ"たり、"遺族とともに深い悲しみに包まれ"たりしただけだ。
 つまり、
 謝罪ビデオが作られたという事実が、VW社が非常に追い詰められている証拠でもある。

 VW社は、ドイツ北部のニーダーザクセン州に本社を持つ大コンツェルンだ。
 フォルクスワーゲンのフォルクは民衆、ワーゲンは車。
 ヒトラー政権下で立ち上げられた。

 戦後は、あやうくソ連に接収されそうになったが、イギリス軍の管理を経て、49年、ドイツの手に戻る。
 以後、VWは経済復興を果たしたドイツ人の国民車となったばかりか、全世界で大成功を収めた。

 有名な「カブトムシ」は、戦前から2003年まで生産が続き、2153万という生産台数を誇る。
 今でも、オールドタイマーとしては貴重品。そ
 の設計者が、前述のピエヒ氏の祖父、フェルディナント・ポルシェ氏だ。

 VW社は、中国への進出も早かった。
 84年に上海汽車との合弁会社を作り、中国市場で大成功を収めている。
 最近では、販売台数の3分の1以上が中国向けなので、中国の景気減退の影響を受けるリスクも非常に高い。

 それだけに、アメリカ市場に力を入れ始めていたのだが、しかし、VWはこれまでもアメリカで成功した試しがなく、今回、その悪夢がさらに増幅されたというしかない。

■VWの醜聞は、ドイツ人自身の醜聞

 いずれにしてもこの事件は、株式市場を見てもわかる通り、問題が一企業に留まらず、ドイツ全体に波及する恐れがある。
 だから、ドイツ人が戦々恐々としているのはわかるが、一つ気になったのは、22日のZDF(第二テレビ)のニュースに出てきた経済専門家という人の話。

 「我々の車が世界中で認められていたのは、安いからではなく、その高品質のせいであった。
 今回の事件でその品質に傷がつけば、他国のメーカーが力を増す」

 そこまではわかる。
 問題はそのあとだ。

 「そうなれば、"ワンダフル!"と言いながら、他のメーカーがその隙間に入り込む。
 たとえば、トヨタ!」

と、トヨタを名指しで、しかも憎々しげに語ったのだった。

 これは非常に示唆的だ。
 すでに日本企業は、人の災いを喜ぶ悪者にされている。
 しかし、言っておくが、日本車も安いから売れているわけではない。
 安くて、しかも品質がよいから売れているのである! 私はドイツでも日本車に乗っている。

 ドイツ人は、おそらく私が日本車を誇りに思うのと同じく、ドイツ車に対してアイデンティティーを感じている。
 特に国民車VWはドイツの技術であり、ドイツ人の誇りであった。
 VWの醜聞を、ドイツ人は自分自身の醜聞と感じている。

 だから私の勘では、ドイツ人はこの危機を抜け出すため、
★.ドイツの成功を妬んでドイツを陥れようとする国(←アメリカ)
★.、ドイツの不幸を利用する姑息な国(←日本)
といった敵を見出し、久々に一致団結するような気がする。

 ドイツの雇用の7分の1は、自動車とその関連産業で支えられている。
 23日、ヴィンターコーン社長は早くも辞任。この事件が、これからまだまだ深刻な問題に発展していくことは間違いない。



ダイヤモンドオンライン 2015年9月25日 佃 義夫 [佃モビリティ総研代表]
http://diamond.jp/articles/-/78907

VW、ディーゼル車不正の激震
王者転落でエコカー勢力図はどう変わる?

■突然のディーゼル車不正発覚
王者VWにいったい何があったのか?

 日本ではシルバーウィークの連休に入った矢先の9月19日の朝(米現地時間18日)、米環境保護局(EPA)が独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車で排ガス試験のときだけ排ガス量を減らす違法なソフトが使われていたとして、対象となる48万2000台のリコール(回収・無償修理)を同社に命じたというニュースが飛び込んだ。
 加えて米EPAは、VWに対して大気浄化法違反の通知を送り、調査を開始した。

 米国におけるVWへのリコール対象車は、2009年以降2015年までに販売された「ゴルフ」「ビートル」「パサート」「ジェッタ」に、グループ傘下のアウディ「A3」を加えたディーゼル5車種。
 米EPAによると、通常走行時の窒素酸化物(NOx)の排出量は基準値の最大40倍という。

 当事者のVWは、その2日後の20日、独本社のマルティン・ヴィンターコーン社長が「お客様と国民の信用を傷つけ、深くお詫び申し上げます」との声明を発表。
 米EPAの指摘を認めた形で、さらに米国だけでなく、欧州などでも調査が広がり、グローバル戦略全体に影を落とす最悪の状況となりつつある。

 独VWはさらに22日、米EPAによるリコール対象車でディーゼルエンジン「EA189」を搭載したVWグループディーゼルE車において、試験結果と走行時の窒素酸化物(NOx)など排ガス量のデータが異なったことを認めている。

 このエンジンを搭載した車両は世界で1100万台に上り、対策費用として約8700億円を7-9月期決算に特別損出として計上することを発表した。
 そして23日、マルティン・ヴィンターコーン社長・CEOが「VWは心機一転で再出発が必要」と辞意を表明。
 事態はトップの引責辞任にまで至ることになった。

 いったいVWに何があったのか。

 VWは世界の自動車メーカーの中で、リーマンショックを挟んで最も成長を示した企業グループであり、今年上期には日本のトヨタ自動車を抜いて世界トップの販売を示し、世界一の座を奪還したばかり。
 環境技術やモノづくりでも優位性を示す動きを見せてきたが、今回の不祥事は巨額の制裁金が今後発生する可能性もあり、大幅な業績悪化予想と社長の引責辞任で経営面を揺るがされることになる。
 だが、それ以上にVWグループのブランドと信用力の失墜に繋がる打撃が大きい。

 メルケル独首相が「VWは完全な透明性を示すことが重要だ」とのコメントを発し、VWに情報公開の徹底を要求する異例の事態になっており、欧州を代表する自動車大国・ドイツの面子にも影響を及ぼしかねない。
 また、欧州株式市場ではVW株の大幅下落だけでなく、ダイムラーやBMW株も下落、さらに仏ルノー、プジョーシトロエン株も下落するなど、VW問題が欧州株式市場全体に連鎖することにもなった。

 VWは、社内調査と米EPAなど関係機関との協力によって原因を明らかにするとしており、現時点で不明な点を今後の情報公開に委ねることになる。
 それにしても、環境技術でも先行し、かつ欧州市場で高い販売シェアを持ち、実績を積み重ねて「クリーンディーゼル」を環境戦略の最前線に打ち出しているVWが、こんな排ガス規制逃れをする必要があったのか、疑問である。

 問題となったディーゼル車だが、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べてコストが安い軽油を燃料とし、二酸化炭素(CO2)の排出量が少なく燃費もいいというメリットがある半面、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の排出や騒音が多いというデメリットがあった。

 日本でもディーゼル車に対しては、大気汚染の観点からかなり厳しい見方が多く、過去には石原慎太郎東京都知事時代に「ディーゼル悪玉論」が横行したこともある。
 当時、都知事会見で石原氏が、煤が溜まったペットボトルをかざして、「ディーゼル車がこれだけ大気を汚染しているのだ」と強調したことを思い出す人も多いはずだ。

■欧州ではクリーンディーゼル車が主流
市場に与える打撃は計り知れない

 余談だが、筆者は新聞記者時代、その後の石原都知事にインタビューをした際に、「ディーゼル車の環境対応技術もかなり進化して良くなりましたが」と問うたところ、「結果的に私があの会見で言ったことで、自動車各社が奮起してディーゼルエンジンが良くなったんだ」と、いかにも石原氏らしい答えが返ってきたことを思い出す。

 しかし元来、欧州ではディーゼル車の環境対応への意識が強く、硫黄分の少ない軽油の供給もあり、NOxなどの排出を大幅に削減する技術を使った「クリーンディーゼル車」が、欧州乗用車販売の5割以上を占め、主流になっている。
 必然的に、VWをはじめとする欧州の自動車各社は、環境対応技術の核としてクリーンディーゼルを主流とし、クリーンディーゼルエンジンとのプラグインハイブリッド(PHV)戦略に磨きをかけている。

 ディーゼル車の排ガス規制については、欧州のユーロ5からユーロ6、日本のポスト新長期規制、米国のTier2Bin5といった基準のクリアが求められ、VWは米国戦略としてディーゼル車を前面に押し出した展開を進めてきた。
 VWは2008年4月に、高圧と低圧の2つのEGR(NOx低減のための排ガス再循環装置)を組み合わせたシステムにDPF(ディーゼル微粒子循環フィルター)とNOx吸蔵還元触媒を組み合わせて、米国排出ガス規制をクリアすることを発表している。

 今回、米国で2009年以降のVW及びアウディのディーゼル車がリコール対象になったということは、当時の発表を受けて米市場に投入されたディーゼル車の品質が、全てリコールに該当していたということになるだろう。

■ピエヒ帝国の「お家騒動」で
VWに見え始めていた変調の兆し

 今回の米国でのディーゼル車不正問題は、今後の社内調査や情報公開に委ねられるとして、結果的にVWのグローバル戦略に飛び火する打撃となり、かつ社長CEOの引責辞任という事態にまで追い込まれた。
 このような事態になった遠因を推測してみよう。

 VWは、フォルクスワーゲン(国民車)という社名からわかるように、ドイツの国民車を量産する自動車メーカーが母体となっている、ドイツを代表する企業である。
 VWは、フェルドナンド・ピエヒという人物なくしては語れない。

 氏はVWを創業したポルシェ家とピエヒ家の創業家出身で、1993年当時、大幅な赤字を出す経営危機にあったVWのトップに立つや、再建に向けたコスト改革や競争力改善への改革を一気に推し進めた。
 さらにマルチブランド戦略、プラットフォームを進化させたアーキテクチャー(設計概念)MQV戦略、高級化戦略と、これらを受けての外部成長を獲得するM&A戦略を積極的に推進した。

 ランボルギーニ、ベントレー、ブガッティなどの欧州高級車ブランドを買収し、傘下のアウディ、ポルシェとの協業を推進。
 さらにマン、スカニアといった商用車ブランドから、二輪車のドゥカティ、デザインのジウジアーロまでをも傘下に収め、12のブランドを持つVWグループ帝国を形成するに至っている。
 唯一失敗に終わったのは、日本のスズキとの資本提携だろうか。

 このように、VW帝国を築いたのはフェルドナンド・ピエヒ氏という強烈なリーダーによるものだった。
 2002年に65歳の定年でVW取締役会会長を退任したが、監査役会会長として院政体制に移行し、ピエヒ氏独裁下でマルティン・ヴィンターコーン氏を2007年から社長に就任させ、右腕とした。

 この間、VWは次世代のモジュラー・マトリックス戦略である「MQB」を公表、3つのプラットフォームに集約する一方で、中期経営計画「ストラテジー2018」を推進中である。
 中期計画では、2018年のVWグループ世界販売1000万台達成、税引き前売上高利益率8%確保、最高の品質と顧客満足、最良の雇用者満足という4つの目標を掲げている。
 グループ1000万台については、2014年に前倒しでこの水準に乗せてトヨタに肉薄し、今年2015年上期でトヨタを抜いてトップに立ち、話題を投げかけた。

 ここまでは、ピエヒ独裁によるVW帝国の躍進だった。
 それが今年に入り、異変が起きたのである。
 VW帝国の絶対的なリーダーとして20年以上も君臨してきた「ドクターピエヒ」ことフェルディナント・ピエヒ氏が、4月25日にVWの最高意思決定機関である監査役会会長を辞任。
 これを独メディアは、「VWのお家騒動」と伝えた。

 この時点で「VW内部が揺れ動いているのでは」と伝えられた。
 昨年の米国販売が2%減の59万台に止まったこと、今年に入りトップを走ってきた中国事業が経済停滞の影響を受け、販売シェア首位だった中国販売が減少したことなどが響いて、世界販売が昨年実績を割り込んできている状況で、異変への兆候があった。

 日本市場でも、輸入車トップの座を長らく続けてきたVWブランドが今年上期でベンツブランドにトップを譲り、7月末には日本法人社長の突然の解任という事態も起きた。

■北米市場伸び悩みへの焦りか?
巻き返し策が招いた最悪の事態

 特に、VWグローバル戦略における大きな課題が米国事業だった。
 中経では、米国市場での100万台販売が目標に掲げられており、そこではディーゼル車の浸透策が戦略の柱とされていた。
 だが、昨年は59万台と計画の5割強にとどまり、それによってVW内部に「焦り」が生じたのではないかと推測される。
 VWの米国事業は、1988年のペンシルベニア工場閉鎖によって生産撤退の屈辱を味わっている。
 それだけに、ディーゼル車を中心とした米国事業での巻き返しについては、「何としても成功させたい」という意気込みがあったはずだ。
 その気負いが裏目に出たのだろうか。

 一方、VWの環境技術対応は世界覇権を争う日本のトヨタと一線を画した方向で進められてきた。
 トヨタはハイブリッド車戦略で先行優位性を示し、近く4代目プリウスを市場投入する。
 進化させたハイブリッド技術をプラグインハイブリッド(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)の要素技術を含むコア技術として、パワートレーンの多様化に対応する。
 水素社会到来への先行策として、昨年12月にFCV「MIRAI」を日本市場に投入し、米欧には本年10月から投入予定だ。

 これに対しVWは、ダウンサイジングターボと呼ばれる小排気量過給エンジンやクリーンディーゼルエンジンなど内燃機関の効率化・進化に力を入れてきた。
 さらに高出力ディーゼルを開発し、ダウンサイジングを進めている。
 電化パワートレーンの強化、特にプラグインハイブリッド(PHV)へ注力する方向にある。
 当面目指すロードマップは、エネルギー効率の高いダウンサイズ・ディーゼルエンジンを活用するプラグインハイブリッドだと言われてきた。

■環境技術対応の方向転換も
「好事魔多し」を他山の石に

 それだけに、今回のディーゼル車不正問題が今後、VWにどのような影響やダメージを与えるかによって、環境技術対応の方向転換が迫られることにもなる。
 さらに日本にはデンソー、ドイツにはボッシュというメガサプライヤーの存在があり、クリーンディーゼル技術に大きな役割を果たしていることも関心事項だ。

 また、引責辞任を発表したヴィンターコーン氏の後継トップの行方がどうなるのか、創業家出身で大株主でもあるピエヒ氏のカムバックもあり得るのかといった経営面の建て直し策についても、この難局をどう打開していくかに注目が集まる。

 奇しくも現在、9月15日から27日までフランクフルトモーターショーが開催されており、欧州自動車大国・環境大国を自負するドイツが世界へのアピールを試みている国際モーターショーの最中において、ドイツを代表する企業・VWの不祥事が勃発することとなった。

 まさにVWにとって「好事魔多し」であり、自動車各社はもって他山の石と銘ずべきだろう。





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